(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167970
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】プリフォーム、プリフォームの製造方法及びプラスチックボトルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/22 20060101AFI20221027BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20221027BHJP
B29B 11/08 20060101ALI20221027BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20221027BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B29C49/22
B29C49/06
B29B11/08
B29C45/16
B65D1/02 110
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133691
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2018119140の分割
【原出願日】2018-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090893
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 敏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛久
(72)【発明者】
【氏名】関根 章智
(57)【要約】
【課題】ガスバリア性を有するプリフォーム、プリフォームの製造方法及びプラスチックボトルの製造方法を提供する。
【解決手段】プリフォーム1は、口部10、胴部16、及び底部17を軸方向に順次有し、胴部16が中間層を有するように構成されて、中間層20aは外層18aと内層19aとの間にあり、中間層20aは、ガスバリア性等を有する。口天面15から高さ10mmの領域、および、底部17の底から高さH2の領域(H2=3~20mm)は、中間層20aを有さない構成となっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、胴部、底部を備え、
前記口部に外側に向かって突出する環状のサポートリングを有する多層構造のプリフォームにおいて、
中間層は、前記口部の上端から10mmの位置から始まり、前記底部から3~20mmの位置まで、基材層に囲まれ、かつ連続して設けられ、前記中間層は、ガスバリア性、耐熱性、または光の遮断性を有することを特徴とする、プリフォーム。
【請求項2】
前記プリフォームは、前記サポートリングの上方に外側に向かって突出する環状のカブラを有し、
前記中間層は、前記サポートリングと前記カブラの中間位置から前記胴部において、設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のプリフォーム。
【請求項3】
前記中間層は前記ガスバリア性を有するガスバリア層からなることを特徴とする請求項2に記載のプリフォーム。
【請求項4】
前記中間層は、ナイロンと金属錯体との混合材料であり、
前記ナイロンと前記金属錯体の比率が11:1から20:1であることを特徴とする、請求項3に記載のプリフォーム。
【請求項5】
前記中間層の重量は、前記プリフォーム全体の重量に対し、2重量パーセント~7重量パーセントであることを特徴とする、請求項4に記載のプリフォーム。
【請求項6】
前記中間層は、さらに耐熱層を含み、
前記プリフォームは、5層構造(前記基材層/前記ガスバリア層/前記耐熱層/前記ガスバリア層/前記基材層)とすることを特徴とする、請求項5に記載のプリフォーム。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載のプリフォームにおける、
一つの材料を射出するとともに他の材料を射出する共射出成形によるプリフォームの製造方法において、
第一の成形材料を射出開始時から射出終了時まで始終射出しており、
前記第一の成形材料の射出開始の後、あらかじめ定められた時間の間第二の成形材料が射出され、
該第二の成形材料は前記第一の成形材料に挟まれて射出されることを特徴とする、
プリフォームの製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載のプリフォームを、ブロー成形により成形したことを特徴とする、プラスチックボトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリフォーム、プリフォームの製造方法及びプラスチックボトルの製造方法に関し、より詳細には、多層のプラスチックボトルの製造方法、プリフォーム、及びプリフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等が充填される容器として、プラスチックボトル、中でも、PET(PolyEthylene Terephthalate)ボトルが多く用いられる。そして、PETボトルの基材のポリエチレンテレフタレートでは不足する機能を補うための別の材料が積層された多層ボトルも市場の広がりを見せている。
【0003】
特許文献1には、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂から成る内外層、及び少なくとも低結晶性エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂及び芳香族ポリアミド系ガスバリア性樹脂から成る中間層を少なくとも1層有し、低結晶性エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分中7.5~15モル%のイソフタル酸を含有すると共に、多層構造が形成されている部分のヘイズが5%以上である多層プリフォームが開示されている。更に、特許文献1には、多層プリフォームを二軸延伸ブロー成形してなり、胴部のヘイズが3%以下である多層延伸ブロー成形容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-157469号公報
【特許文献2】特開平1-254539号公報
【特許文献3】特開2010-12605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、内外層を結晶性のエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂から構成することにより、延伸特性に劣る低結晶性ポリエステル樹脂を用いた中間層に均一な延伸倍率を付与することが可能になり、優れた機械的強度を有する多層延伸ブロー成形容器を提供できるとされている。更に、特許文献1の多層プリフォームから得られる多層延伸ブロー容器は落下衝撃等による層間剥離(デラミネーション)なども防止することができるとされている。
【0006】
特許文献2には、共出射法を用いることによる、プリフォームの口部及び底部が実質上ポリエステルから成り、それ以外の部分がポリエステルの内外層及びガスバリア性熱可塑性樹脂の積層体から成るプリフォームの製造方法が開示されている。さらに、口部及び底部中心部からガスバリア性熱可塑性樹脂層を取り除き、これらの部分をポリエステル単層から形成したことにより、これらの部分の熱結晶化を十分に行わせることが可能となり、熱水殺菌乃至滅菌に際してこれらの部分の変形や膨張をほぼ完全に抑制することができるとされている。
【0007】
特許文献3には、主材樹脂による基体層に、少なくとも1層の中間層を積層した試験管状の合成樹脂製積層プリフォームであり、口筒部と底部は中間層が積層しない領域とすることにより、口筒部におけるキャップによるシール性、あるいは底部において壜体の起立性が損なわれるという問題を効果的に防ぐことができるとされている。
【0008】
しかし、ガスバリア性の中間層が口部の飲み口上端の部分に施されている場合、割れが発生し、飲用に適さないという不具合があった。また、底面に中間層が施されている場合にも同様に、割れが発生しやすい不具合があった。底面は、延伸成形する際の倍率が低いので、相対的に厚いため、ガスバリア性中間層が不要であるという理由もあった。
【0009】
そこで本発明の目的は、胴部にガスバリア性を持たせ、低コストで可能となるプリフォーム、及びそのプリフォームの製造方法、またそのプリフォームをブロー成型して成るプラスチックボトルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、口部、胴部、底部を備え、前記口部に外側に向かって突出する環状のサポートリングを有する多層構造のプリフォームにおいて、中間層は、前記口部の上端から10mmの位置から始まり、前記底部から3~20mmの位置まで、基材層に囲まれ、かつ連続して設けられ、前記中間層は、ガスバリア性、耐熱性、または光の遮断性を有することを特徴とする。
【0011】
また、前記プリフォームは、前記サポートリングの上方に外側に向かって突出する環状のカブラを有し、前記中間層は、前記サポートリングと前記カブラの中間位置から前記胴部において、設けられていることを特徴とする。
【0012】
更に、前記中間層は前記ガスバリア性を有するガスバリア層からなることを特徴とする。
【0013】
更に、前記中間層は、ナイロンと金属錯体との混合材料であり、前記ナイロンと前記金属錯体の比率が11:1から20:1であることを特徴とする。
【0014】
更に、前記中間層の重量は、前記プリフォーム全体の重量に対し、2重量パーセント~7重量パーセントであることを特徴とする。
【0015】
更に、前記中間層は、さらに耐熱層を含み、前記プリフォームは、5層構造(前記基材層/前記ガスバリア層/前記耐熱層/前記ガスバリア層/前記基材層)とすることを特徴とする。
【0016】
更に、本発明は、本発明に係るプリフォームの製造方法として、一つの材料を射出するとともに他の材料を射出する共射出成形によるプリフォームの製造方法において、第一の成形材料を射出開始時から射出終了時まで始終射出しており、前記第一の成形材料の射出開始の後、あらかじめ定められた時間の間第二の成形材料が射出され、該第二の成形材料は前記第一の成形材料に挟まれて射出されることを特徴とする。
【0017】
さらに、上記記載のプリフォームをブロー成形により成形したことを特徴とするプラスチックボトルの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、口部、胴部、底部を備え、口部に外側に向かって突出する環状のサポートリングを有する多層構造のプリフォームにおいて、中間層は、口部の上端から10mmの位置から始まり、底部から3~20mmの位置まで、基材層に囲まれ、かつ連続して設けられ、中間層は、ガスバリア性、耐熱性、または光の遮断性を有することを特徴とするので、口部および底部に中間層が無いので、このそれぞれの部分に割れの発生しないプラスチックボトルを提供することができる。このように、中間層がブロー成形時の延伸する箇所に施されているが、後述の射出成形法によって、延伸の際の材質の偏りによる形崩れがおこりにくい、優れたプリフォームを提供することができる。さらに、紫外線等の光の遮断性や、水蒸気等のガスバリア性や、耐熱性に優れたプリフォームを提供することができる。
【0019】
また、プリフォームは、サポートリングの上方に外側に向かって突出する環状のカブラを有し、中間層は、サポートリングとカブラの中間位置から胴部において、設けられていることを特徴とするので、口部および底部に中間層が無いので、このそれぞれの部分に割れの発生しないプラスチックボトルを提供することができる。
【0020】
更に、中間層はガスバリア性を有するガスバリア層からなることを特徴とするので、プラスチックボトルに収容した飲料等の酸化及び炭酸ガスが減少していく事を防止し、優れた保管性を有するプラスチックボトルを提供することができる。
【0021】
更に、中間層は、ナイロンと金属錯体との混合材料であり、ナイロンと金属錯体の比率が11:1から20:1であることを特徴とするので、プラスチックボトルに収容した飲料等の酸化を防止し、優れた保管性を有するプラスチックボトルを提供することができる。
【0022】
更に、このような構成を有することで、口天面には中間層が露出していない構成となる。言い換えれば、口天面は、基材層で覆われており、口天面から10mm離隔した位置から底部に向けて、中間層が設けられることとなっている。このような構成を有することで、本発明のプリフォームをプラスチックボトルに成形した場合に、安全な飲料用プラスチックボトルとすることができる。
また、口天面を基材層で覆う構成とすることで、中間層が口天面に露出する構成とする場合よりも、基材層と中間層の剥離を防ぐことができる。口部に対する衝撃等で、口部に剥離が起きた場合、例えば飲料用ペットボトルに本発明のプリフォームを用いる場合には、口部と人の口が接触することとなる。このことから、基材層が口天面を覆っている構成とすることにより、さらに安全性の高いプラスチックボトルの元となる、プリフォームを提供することができる。
【0023】
また、口部から中間層の端部までの10mmは、口部の高さの21mmより小さいので、少なくとも口部の下の肩部全体に中間層があり、ブロー成形時の周方向の延伸性偏りを無くす効果がある。
【0024】
更に、底部から3~20mmまでの範囲は中間層が無い構成であるので、より安定なペットボトルとなる。すなわち、底部に中間層があると、運搬の際の衝撃などにより、中間層がきっかけとなって、割れが発生することがある。底部に割れができると、ペットボトルは安定に起立することが出来なくなる。したがって、本発明では、底部に中間層が無い構成であるので、底部に割れが出来にくいため、安定性の高いペットボトルを提供することができる。
【0025】
更に、中間層の重量は、プリフォーム全体に対し、2重量パーセント~7重量パーセントである構成であるので、中間層のガスバリア性材料の量が少なく、リサイクル性に優れたプラスチックボトルの元となるプリフォームを提供することができる。
【0026】
更に、中間層は、さらに耐熱層を含み、プリフォームは、5層構造(基材層/ガスバリア層/耐熱層/ガスバリア層/基材層)とすることを特徴とするので、ガスバリア性及び耐熱性を有し、中間層の機能をより高めた、プリフォームを提供することができる。
【0027】
さらに本発明の製造方法は、一つの材料を射出するとともに他の材料を射出する共射出成形によるプリフォームの製造方法において、第一の成形材料を射出開始時から射出終了時まで始終射出しており、第一の成形材料を射出開始時の後、あらかじめ定められた時間の間第二の成形材料が射出され、第二の成形材料は第一の成形材料に挟まれて射出されることを特徴とする。この方法により、本発明のプリフォームの効率的な製造を行うことができる。
【0028】
更に、本発明のプリフォームをブロー成形してプラスチックボトルを成形するので、ガスバリア性に優れ、安全性が高く、変形や口部からの液漏れの少ない、優れたプラスチックボトルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施形態に係るプリフォームの一例が示された断面図である。
【
図2】プリフォームの製造装置の一例として、射出成形装置のホットランナーノズルの概略が示された断面図である。
【
図3】共射出される各成形材料の射出率と時間との関係が模式的に示されたグラフである。
【
図4】ホットランナーノズルからキャビティへと各成形材料が流動する状態(ステップS1)の概略が示された断面図である。
【
図5】ホットランナーノズルからキャビティへと各成形材料が流動する状態(ステップS3)の概略が示された断面図である。
【
図6】ホットランナーノズルからキャビティへと各成形材料が流動する状態(ステップS3)の概略が示された断面図である。
【
図7】ホットランナーノズルからキャビティへと各成形材料が流動する状態(ステップS5)の概略が示された断面図である。
【
図8】プリフォームと、ブロー成形後のPETボトルとが模式的に示された断面図である。
【
図9】本実施形態に係るプリフォームから形成されたPETボトルが示された正面図である。
【
図11】
図9のPETボトルの底面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。まず、本実施形態に係るPET(PolyEthylene Terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)ボトル成形用のプリフォーム1(予備成形体)の構成を詳細に説明する。
図1は本実施形態に係るプリフォーム1の一例が示された断面図である。プリフォーム1は、有底筒状であって、口部10、胴部16、及び底部17が軸方向に順次設けられる。プリフォーム1が延伸されることによってボトル状に成形される。この際公知のブロー成形技術を用いるのが好適である。
図1には、口部10から底部17までが軸方向と平行にプリフォーム1の中心で切断された面が示されている。
【0031】
なお、以下では、説明の便宜上、
図1の状態のプリフォーム1において底部17に対する口部10の方向を上とする。
【0032】
口部10は、軸方向の上端に、円形に開放された開口部11を有している。開口部11は、環状の口天面15と円形の穴部11aを有している。そして、口部10は、その外周面に、おねじ12と、カブラ13と、サポートリング14とを有している。図示せぬ蓋を取り付けるためのおねじ12は口部10の外周面から、プリフォーム1の径方向の外側に向かってらせん状に突出している。カブラ13は、おねじ12の下方で、径方向外側に向かって周回状に突出している。サポートリング14は、カブラ13の下方で周回状に、カブラ13よりも径方向外側まで突出している。
【0033】
一般的に、サポートリング14から軸方向の上側の箇所ではプリフォーム1からボトル状に成形される際にその形状が変化しない。一方で、サポートリング14よりも下側の最大20mmの範囲でもボトル状に成形される際にほとんど延伸されない。この範囲は10mmである事が好ましい。したがってここでは、プリフォーム1からボトル状に成形される際にその形状がほとんど変化しない範囲を口部10と定義することとする。そして、口部10は、
図1に例示されるように、サポートリング14よりも軸方向下側の箇所の内径、及び外径が軸方向の上下において略同寸の略真円筒形状であっても良い。
【0034】
このように、口部10は、ブロー成形機による成形後もその形状が変化しない。ここで、プリフォーム1の口部10の内径や外径(ねじ谷径に相当)、ねじ山径といった各部の寸法に特に限定はない。しかしながら、飲料用ボトルで標準的に用いられている寸法とされることが、既存の蓋の汎用性や、飲料用ボトルの密封性を確保できる点で好ましい。このため、口部10は例えば、PCO1810規格や、PCO1881規格に対応した寸法とされると良い。
【0035】
胴部16は、内径、及び外径が、軸方向の上下において略同寸の略真円筒形状に構成されている。ただし、胴部16には、プリフォーム1の作製の際に用いられる型からの取り出し、すなわち離型を容易にするための傾斜である抜き勾配が設けられていても良い。更に、胴部16の内径、及び外径が軸方向の上下でわずかに変化していても良い。更に、軸方向の上下において、胴部16の特に外径を略同寸に構成することもできる。
【0036】
底部17は、外方に湾曲した略半球状に構成されている。底部17は、円錐形状であったり、角に丸みを持った円柱形状であったり、その他の形状であっても良い。
【0037】
なお、胴部16の外径は、12mm以上、30mm以下であることが既存の装置を用いることができる点で好ましい。更に、サポートリング14の下面から底部17の下端までの長さが35mm以上、105mm以下であることが、既存の装置、特にブロー成形機を用いることができる点で好ましい。
【0038】
プリフォーム1は、胴部16が多層に構成されて、外層18aと内層19aとの間に中間層20aを有する。
図1に例示されるプリフォーム1はサポートリング14の近傍から、底部17の手前までの領域に中間層20aを有している。口天面11aから高さH1の領域(H1=5~20mm)、および、底部17の底から高さH2の領域(H2=3~10mm)は、中間層20aを有さない構成となっている。このように口部のサポートリングより上の領域に中間層を有さない構成とすることで、口部の割れを防ぐことができる。また、底部に中間層を有さない構成とすることで、割れを防止することができる。底部は、延伸成形する際の倍率が低く、厚いため、例えばガスバリア性が担保されているという特徴もある。
【0039】
プリフォーム1は、中間層20aと、外層18a、及び内層19aのそれぞれとの間に接着層や接着剤を有していない。このため、プリフォーム1は使用後に、再資源化が妨げられることがない。一方で、各層の間が固く接着されているわけではないので外力によって層間剥離が起きてしまう可能性がある。そこで、中間層20aが口部10の端まで延びずに構成されていることによって破壊の起点になりやすい各層の界面の端が口天面15にて露出せず層間剥離が生じにくくされている。
【0040】
プリフォーム1は、
図1に例示されるように、中間層20aが、口部10のサポートリング近傍の高さH1から底部の高さH2までの領域にかけて連続して設けられている。このとき、中間層20aが例えばガスバリア性を有すると、優れたガスバリア性のプラスチックボトルを提供することができる。
【0041】
中間層20aの厚みは、均一に設けられている。均一に設けられていることにより、熱が加わり基材層が変形する場合であっても、ゆがむことが少ない。ただし、口部10のサポートリング14の基材層中に、中間層20aが、口部10から径方向に突出して設けられていてもよい。このようにするほうが容易にプリフォーム1を製造することができる。口部10の構成としては、基材層に囲まれて、中間層がフランジのように、サポートリング14の基材層中に突出して設けられ、そのほかの部分の中間層20aの厚みは、均一であるとの構成を有していてもよい。
【0042】
中間層20aは、全体の重量から中間層20aの重量を除した値に対して、280ミリリットルペットボトル用のプリフォーム1においては、2重量パーセント~7重量パーセントであることが好ましい。これにより、プリフォーム1をブロー成形などにより成形したペットボトル2のリサイクル性が向上する。ペットボトルのサイズによってこの比率は異なりうる。2リットルペットボトル用においても、3重量パーセントであればリサイクル性としては、上記の280ミリリットルペットボトル用のプリフォーム1と、異なるところはない。
【0043】
中間層20aには、各種機能を発揮する材料を選択することができる。例えば、中間層20aには、紫外線等の光の遮断性や、水蒸気等のガスバリア性を付与する材料を用いることができる。ここでの中間層20aは、ガスバリア性材料を用いることが好適である。ここでガスバリア性材料とは、ナイロンと金属錯体の混合材料であり、ナイロンと金属錯体の比率が、11:1から20:1の材料を用いてもよい。また、熱可塑性ポリエステル樹脂で耐熱性に優れたものも、本発明の中間層20aの材料に用いることができる。
【0044】
例示されたプリフォーム1の基材層20の外層18a、及び内層19aの材料としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、エチレン-ビニルアルコール共重合体、植物等を原料としたポリ乳酸等のブロー成形が可能な種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。しかしながら、外層18a、及び内層19aは、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等のポリエステル、特に、ポリエチレンテレフタレートが主成分のPET層とされることが好ましい。なお、上述された樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤を配合することができる。
【0045】
プリフォーム1の外層18a、及び内層19aを構成するエチレンテレフタレート系熱可塑性樹脂としては、エステル反復部分の大部分、一般に70mol%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50℃以上、90℃以下であり、融点(Tm)が200℃以上、275℃以下の範囲にあるものが好適である。エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートが耐圧性等の点で特に優れているものの、エチレンテレフタレート単位以外に、イソフタル酸や、ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸と、プロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位を少量含む共重合ポリエステルも使用することができる。
【0046】
ポリエチレンテレフタレートは熱可塑性の合成樹脂の中では生産量が最も多い。そして、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、耐熱性、耐寒性や、耐薬品性、耐摩耗性に優れる等の種々の特性を有する。更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂はその原料に占める石油の割合が他のプラスチックと比べて低く、リサイクルも可能である。このように、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする構成によれば、生産量の多い材料を用いることができ、その優れた種々の特性を活用することができる。
【0047】
ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール(エタン-1,2-ジオール)と、精製テレフタル酸との縮合重合によって得られる。ポリエチレンテレフタレートの重合触媒として、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、及びアルミニウム化合物の少なくとも一つが用いられることが好ましい。これらの触媒が用いられることによって、アンチモン化合物が用いられるよりも、高い透明性を有し、耐熱性に優れた容器を形成することができる。
【0048】
プリフォーム1の全体に対する中間層20aの量が多すぎるとプリフォーム1の使用後に再資源化が妨げられてしまう。一方で、プリフォーム1の全体に対する中間層20aの量は少なすぎると、射出成形性が低下してしまう。より詳細には、プリフォーム1の成形の際に中間層20aが充填されにくくなり、これを無理やり押し込むと変質や偏肉が生じて好ましくない。したがって、プリフォーム1の全体に占める中間層20aの割合は少なくとも0.5重量パーセント以上必要である。さらに言えば、2重量パーセント~7重量パーセントであることが好ましい。
【0049】
なお、中間層20aは単層に限らず多層で構成されていても良く、例えば酸素吸収素材を含むガスバリア層の他に、耐熱層を複数含んで構成されていても良い。例えば、プリフォーム1は、5層構造(PET層(外層18a)/酸素バリア層/耐熱層/酸素バリア層/PET層(内層19a))とされていても良い。中間層20aの層数が更に増やされていても良く、プリフォーム1を最大で、7層構造とすることもできる。中間層20aが多層で構成されることによって、中間層20aの機能をより高めたり、中間層20aに複数の機能を持たせたりすることができる。
【0050】
そこで、次に、プリフォーム1の製造方法の一例を詳細に説明する。
図2は、プリフォーム1の製造装置の一例として、射出成形装置30のホットランナーノズル31の概略が示された断面図である。射出成形装置30は、内部にスクリュを備える図示せぬ加熱シリンダと、ホットランナーノズル31と、金型32とを備えている。射出成形装置30は、成形材料が、加熱シリンダで、例えば270℃~300℃に加熱されることによって溶融可塑化され、スクリュによって、ホットランナーノズル31を介して金型32に送り出されるように構成されている。
【0051】
ホットランナーノズル31は軸方向に長い構成である。ホットランナーノズル31は、直線状流路33aと、第1の円筒状流路33bと、第2の円筒状流路34と、開閉弁の一例であるチェック弁35とを有している。各流路は、略軸方向に延びている。ホットランナーノズル31は、第1の注入口36と、第2の注入口37と、射出口38とを更に有している。
【0052】
射出口38は、ホットランナーノズル31の一端の中心に形成されている。そして、射出口38は金型32と連通している。一方で、第1の注入口36、及び第2の注入口37はホットランナーノズル31の他端寄りの側面にそれぞれ形成されている。そして、第1の注入口36、及び第2の注入口37のそれぞれは別々の加熱シリンダと接続されている。すなわち、ホットランナーノズル31は、第1の注入口36、及び第2の注入口37からそれぞれ第1の成形材料、及び第2の成形材料を注入することができるように構成されている。成形材料は、第1の注入口36、及び第2の注入口37から射出口38に向かって流れる。
【0053】
直線状流路33aは、第1の注入口36から径方向に延びる流路と連通し、ホットランナーノズル31の中央部を射出口38まで直線状に延びている。第1の円筒状流路33bは、直線状流路33aから分岐した後に、直線状流路33aの径方向外方を通り、射出口38に近い第1の合流点39aで直線状流路33aと合流している。第2の円筒状流路34は、第2の注入口37から径方向に延びる流路と連通し、直線状流路33aと、第1の円筒状流路33bとの間に延びて第1の合流点39aよりも上流の第2の合流点39bで直線状流路33aと合流している。
【0054】
ホットランナーノズル31は、第2の合流点39bに、第2の円筒状流路34を閉鎖するチェック弁35を有している。チェック弁35は、第2の合流点39bにおける直線状流路33aを通過する第1の成形材料と第2の円筒状流路34を通過する第2の成形材料との射出圧の差に応じて軸方向に動くように構成されている。そして、チェック弁35は、第2の成形材料の射出圧が高い場合には第2の円筒状流路34を開放するように構成されている。このような作用を果たすのであればチェック弁35は、他の構成であっても構わない。
【0055】
複数に分割されて構成される金型32は、プリフォーム1に対応する形状の空隙であるキャビティ32a、及びプリフォーム1の底部17に対応する位置にゲート32bを有している。キャビティ32aは、ゲート32bを介して、ホットランナーノズル31の射出口38に連通している。金型32には、金型32を加熱する図示せぬヒータと、金型32を冷却する図示せぬ冷却機とが設けられている。金型32は、ヒータによって加熱されたキャビティ32aに溶融した成形材料が注入、及び加圧された後に冷却機によって冷却され、プリフォーム1が成形されるように構成されている。
【0056】
図3は、共射出される各成形材料の射出率と時間との関係が模式的に示されたグラフである。射出率は、単位時間[s]当たりに射出される各成形材料の質量[g]で示されている。
図3において、第1の成形材料aは実線で示され、第2の成形材料bは破線で示されている。そして、ここでは、第1の成形材料には、ポリエチレンテレフタレート(以下では、PET樹脂aと称す)が注入され、第2の成形材料には、ナイロンと金属錯体の混合物(以下では、ガスバリア性樹脂bと称す)が注入される例が示されている。そして、例えば、プリフォーム1の製造方法は、
図3に示されるように、第1の成形材料を射出する工程(ステップS1)と、第1の成形材料より高い射出率で第2の成形材料を射出する工程(ステップS3)と、第2の成形材料より高い射出率で第1の成形材料を射出する工程(ステップS5)とを有する。そして、この方法によれば、製造されたプリフォーム1の中間層20aの延伸後においてもその機能を確保しつつ、中間層20aの成形材料の量を減少することができる。この図の射出タイミングに従い射出成形を行うことで、サポートリング近傍から胴部において中間層20aが存在する、本発明のプリフォームの一形態を成形することができる。
【0057】
まず、PET樹脂aが射出される(ステップS1)。
図4は、ホットランナーノズル31からキャビティ32aへと各成形材料が流動する状態(ステップS1)の概略が示された断面図である。PET樹脂aは、第1の注入口36(
図2参照)から、直線状流路33a(PET樹脂a1)、及び第1の円筒状流路33b(PET樹脂a2)のいずれかを経由して第1の合流点39aで合流し、その後、射出口38、ゲート32bの順に流動してキャビティ32aに充填される。
図4に例示されるように、直線状流路33a(PET樹脂a1)、及び第1の円筒状流路33b(PET樹脂a2)のそれぞれを経由したPET樹脂aの流れがPET樹脂層A1、及びPET樹脂層A2を構成し、PET樹脂層Aとしてキャビティ32aに充填されている。
【0058】
この段階では、ガスバリア性樹脂bは射出されておらず、PET樹脂a1の射出圧を受けるチェック弁35によって第2の円筒状流路34は閉鎖されている。
【0059】
次に、PET樹脂aが、予め定められた射出率まで下げられて射出される(ステップS2)。この下げられた射出率は、次の段階において射出されるガスバリア性樹脂bの射出率との兼ね合いで決まる。ここで、この予め下げられた射出率でPET樹脂aが射出された場合に口部10の寸法不良やヒケ等の賦形不良が生じないのであれば、ステップS2が省略されても良い。
【0060】
次に、PET樹脂aより高い射出率でガスバリア性樹脂bが射出される(ステップS3)。
図5は、ホットランナーノズル31からキャビティ32aへと各成形材料が流動する状態(ステップS3)の概略が示された断面図である。ガスバリア性樹脂bが射出される圧力によってチェック弁35が動き、第2の円筒状流路34は開放される。そして、
図5に例示されるように、直線状流路33aを経由したPET樹脂層A1と、第1の円筒状流路33bを経由したPET樹脂層A2との間にガスバリア性樹脂層Bが形成されている。ガスバリア性樹脂層Bは、成形型に接触せずに流動して温度の低下が少なく粘度が高まらないのでPET樹脂層A1、及びA2よりも高い速度で流動している。
【0061】
次に、ガスバリア性樹脂bの射出率が同程度に保たれながら射出される(ステップS3)。
図6は、ホットランナーノズル31からキャビティ32aへと各成形材料が流動する状態(ステップS3)の概略が示された断面図である。
【0062】
次に、ガスバリア性樹脂bの射出率が漸減して零となるまで射出されるとともにPET樹脂aの射出率が漸増するように射出される(ステップS4)。ガスバリア性樹脂bの射出率が漸減することによってガスバリア性樹脂層Bが徐々に薄くなるように射出された後に途切れる。そして、ガスバリア性樹脂bの射出率が零となることによってチェック弁35が動き、第2の円筒状流路34が閉鎖される。
【0063】
次に、PET樹脂aが予め定められた射出率に維持されて射出される(ステップS5)。
図7は、ホットランナーノズル31からキャビティ32aへと各成形材料が流動する状態(ステップS5)の概略が示された断面図である。
図7に例示されるように、ガスバリア樹脂層BがPET樹脂層Aによって押し込まれていく。
【0064】
最後に、キャビティ32aの内部が充満されるまでPET樹脂aが射出される。PET樹脂aの射出率が漸減し、そして、キャビティ32aの内部が充満されるとPET樹脂aの射出率が零となり、その後は、PET樹脂aが逆流しないように保圧が行われる(ステップS6)。そして、キャビティ32aの内部で成形材料が冷却された後に、金型32が開き、成形されたプリフォーム1が取り出される。
【0065】
なお、各成形材料を射出する圧力や、射出率はそれぞれの粘度の差等に応じて適宜設計される。
【0066】
以上のように、本実施形態に係るプリフォーム1の製造方法は、中間層20aを均一に成形する手順を含んで構成される。
【0067】
なお、製造方法は、他の方法であっても構わない。例えば、PET樹脂a、ガスバリア性樹脂b、PET樹脂aの順に可塑化して押し出してガスバリア性樹脂bがU字状に内包された溶融樹脂塊(ビレット)を生成し、これを圧縮成形することでプリフォーム1が製造される方法であっても良い。
【0068】
成形されたプリフォーム1は、箱積み、いわゆるパレタイジングされて倉庫等でいったん保管されても良く、そのまま、引き続き、次の工程へと進められても良い。すなわち、プリフォーム1の成形と、ブロー成形とが別の場所や装置で行われる、いわゆるコールドパリソン方式(2ステージ方式)であっても良く、プリフォーム1の成形と、ブロー成形とが同じの場所や装置で行われる、いわゆるホットパリソン方式(1ステージ方式)であっても良い。更に、プリフォーム1の成形から内容物の充填等に至るまでの製造工程がインラインで連続的なものであっても良い。
【0069】
次に、本実施形態に係るプリフォーム1からボトル状に成形する方法の一例を詳細に説明する。プリフォーム1がボトル状に成形されるにあたってまず、プリフォーム1の加熱が行われる。
【0070】
加熱装置は、搬送装置と、ヒータとを備えている。搬送装置は、プリフォームを周方向に均等に加熱するために、プリフォームの軸を中心に回転させながら搬送するように構成されている。ヒータは、複数の例えばハロゲンランプによって構成され、ブロー成形に適した温度例えば80℃~140℃にプリフォームを加熱するように構成されている。更に、加熱装置は、ヒータからの熱をプリフォームに反射させるための反射板や、ヒータからの熱を加熱装置の外方へ逃がさないようにするための遮蔽部材等を備えていても良い。
【0071】
加熱されたプリフォーム1は次に、ブロー成形機によって、プラスチックボトル例えばPETボトル2に成形される。
図8は、プリフォーム1と、ブロー成形後のPETボトル2とが模式的に示された断面図である。ブロー成形機の一例としての二軸延伸ブロー成形装置50は、金型51と、延伸ロッド52と、図示せぬ高圧エア供給装置と、これらを制御する図示せぬ制御装置とを備えている。なお、
図8には、下向きのブロー成形方法が例示されているものの、材料が重力の影響を受けにくい上向きのブロー成形方法が用いられても良い。
【0072】
ここで、PETボトル2は、上部30と、胴部70と、底部80とを有する。ブロー成形の前後においておおよそ、プリフォーム1の口部10がPETボトル2の上部30に対応し、プリフォーム1の底部17がPETボトル2の底部80に対応する。
【0073】
金型51は、形成されるPETボトル2に対応した形状を有しており、例えば、胴部70に対応して半割りで構成される胴金型51aと、底部80に対応した底金型51bとを有する。金型51の表面の温度は、PETボトル2の用途、特に耐熱性に応じて例えば30℃~130℃に制御されるように構成されている。
【0074】
延伸ロッド52は金型51内を伸縮自在に構成される。そして、延伸ロッド52は、金型51に口部10の取り付けられたプリフォーム1の胴部16を縦(軸)方向に延伸するように構成される。高圧エア供給装置からは、温度調節された高圧エアhが吹き出されるように構成される。高圧エアhは、金型51に取り付けられたプリフォーム1の内部に供給されれば良く、延伸ロッド52から吹き出されても良く、延伸ロッド52とは別の部材から吹き出されても構わない。高圧エアhは、プリフォーム1の胴部16を横(径)方向に延伸するとともに、延伸の後に胴部16の表面温度を下げるように構成される。
【0075】
加熱されたプリフォーム1は、二軸延伸ブロー成形装置50の金型51に装着される。その後には、金型51に装着されたプリフォーム1の胴部16が延伸ロッド52によって縦方向に延伸される。この際のプリフォーム1からPETボトル2への縦延伸倍率は1.8倍以上、4.0倍以下であることが好ましい。
【0076】
ここで、縦延伸倍率とは、プリフォーム1のサポートリング14の下面から底部17の下端までの長さに対するPETボトル2のサポートリング14の下面から底部80の下端までの長さの比である。非晶部と、結晶部との集合体であるアモルファス構造を有するプリフォーム1の分子は延伸によって配向結晶化がおこり、その結果として、PETボトル2の強度や、剛性、耐熱性等が上がる。縦延伸倍率が1.8未満の場合にはPETボトル2(プリフォーム1)の分子の配向性が上がらず、一方で、縦延伸倍率が4.1以上の場合にはPETボトル2が成形しにくくなる。
【0077】
更に、縦方向に延伸されたプリフォーム1の胴中部16が高圧エアhによって横方向に、金型51に当たるまで延伸される。この際のプリフォーム1からPETボトル2への横延伸倍率は1.5倍以上、6.0倍以下であることが好ましい。
【0078】
ここで、横延伸倍率とは、プリフォーム1の胴中部16における胴径に対するPETボトル2の胴部70における胴径の比である。なお、胴部70の対向するそれぞれの壁面における肉厚の中心間の距離が胴部70の胴径とされる。プリフォーム1の分子は横方向の延伸によっても同様に配向結晶化がおこり、その結果として、PETボトル2の強度や、剛性、耐熱性等が上がる。横延伸倍率が1.5未満の場合にはPETボトル2(プリフォーム1)の分子の配向性が上がらず、一方で、横延伸倍率が6.1以上の場合にはPETボトル2が成形しにくくなる。
【0079】
このように、二軸延伸ブロー成形装置50による成形が、縦方向の延伸倍率が1.8倍以上、4.0倍以下、横方向の延伸倍率が1.5倍以上、6.0倍以下の二軸延伸ブロー成形である構成によれば、プリフォーム1からより良好なブロー成形性で軽量化されたPETボトル2を成形することができる。
【0080】
以上のように、本実施形態に係るPETボトル2はプリフォーム1が、二軸延伸ブロー成形装置50でボトル状に成形される。そして、二軸延伸ブロー成形装置50が用いられることによって効果的に、本実施形態に係るプリフォーム1から良好なブロー成形性で軽量化されたPETボトル2を成形することができる。
【0081】
なお、本実施形態においては、成形されるPETボトル2の用途が限定されない。したがって、PETボトル2は、耐圧性や酸素バリア性等を有するように成形されても良い。
【0082】
次に、本実施形態に係るプリフォーム1から形成されるPETボトル2の構成を詳細に説明する。
図9は、本実施形態に係るプリフォーム1から形成されたPETボトル2が示された正面図である。
図9に例示されたPETボトル2は軸方向とは垂直方向の断面視が略円形の丸ボトルである。上述されたように、PETボトル2は、上部30と、胴部70と、底部80とを有する。そして、上述されたように、PETボトル2の上部30の構成はプリフォーム1の口部10の構成と同様である。
【0083】
上部30は、内容物の充填口、及び注出口となり、上部30に、図示せぬ蓋が取り付けられることによってPETボトル2が密閉される。
【0084】
胴部70は、上部と隣接する部分が上方から下方に向かって拡径する略円錐台の形状を有している。胴部において、該略円錐台の形状の部分と底部の間の部分は、円筒の形状を有している。胴部70は、圧力吸収パネルや、横溝、縦溝を有していても良い。
【0085】
底部80はその上側が、胴部70の下側に連なる。
図11に例示された底部80はいわゆるペタロイド形状である。底部80は、凹部81や、脚部82、谷部83等を有している。底部80の径方向中央に位置する凹部81は、PETボトル2の内側(軸方向上側)に向かって突出するように構成されている。脚部82は、凹部81から径方向外側に放射状に、軸方向の下側に向かって延びている。脚部82は、PETボトル2の接地面となる。隣り合う脚部82の間には谷部83が形成されている。谷部83は、凹部81から、径方向外側、かつ軸方向の上側に向かって延びている。底部80の構成は、
図11の例示に限らず、内容物に対応した形状、例えば放射状にリブが設けられた形状であっても良い。
【0086】
図10は、PETボトル2の断面図である。更に、
図10では、上部30の領域Aが拡大されて示されている。PETボトル2は、サポートリング14近傍から胴部70にかけて多層に構成されて、外層18と内層19との間に中間層20を有する。口天面より15mm下のサポートリング14近傍からから中間層が始まり、胴部まで中間層が存する構成である。
【0087】
胴部にガスバリア性の中間層を設けることにより、内容物の酸化を抑制することができるPETボトルとすることができ、好適である。
【0088】
なお、中間層20の種類や、材料、量、層構成等については上述されたプリフォーム1と同様である。
【0089】
PETボトル2の特にサポートリング14よりも下の形状は、
図9等の例示に限らず、プリフォーム1がブロー成形されることによって形成されるものであればどのような形状であっても良い。例えば、本実施形態においては、
図9に示された丸ボトルを好適に形成することができる。しかしながら、本実施形態において形成されるプラスチックボトルは丸ボトルには限定されず、角ボトルであっても良い。更に、胴部70の幅が下方に向けて拡開する形状であっても良い。そして、胴部70に形成される圧力吸収パネルや、横溝、縦溝の形状についても自由に設計することができる。
【0090】
本実施形態に係るPETボトル2にはサイズによる限定はなく、種々のサイズに対して適用することができる。例えば、PETボトル2の容積が100ml以上、1000ml以下であっても良く、特に、容積が200ml以上、700ml以下であるPETボトル2に対して好適である。PETボトル2の全高は120mm以上、260mm以下であっても良く、胴部70の胴径は40mm以上、75mm以下であっても良い。
【0091】
更に、本実施形態に係るPETボトル2は軽量化ボトルを対象として好適に用いることができる。PETボトル2の質量は例えば、200mlの内容積に対しては8g以上、16g未満、550mlの内容積に対しては10g以上、20g未満であると良い。そして、特に、軽量性を有し、中間層20の機能を確保しながらPETボトル2の強度を保つ観点から、PETボトル2の内容積に対する質量の比の値が0.0180g/ml以上、0.0800g/ml以下であることが好ましい。
【0092】
上述された材料が射出成形されたプリフォーム1がブロー成形されることによってプラスチックボトルを作製することができる。そして、材料として、ポリエチレンテレフタレートが用いられることによって、本実施形態に係るプラスチックボトルの一例としてのPETボトル2が作製される。そして、PETボトル2と、充填される液体とによって充填体が構成される。充填体は、PETボトル2の上部30から飲料や調味料等の液体が充填され、上部30に装着される図示せぬ蓋によって密封されることによって製造される。
【0093】
なお、PETボトル2への内容物の充填方法についても限定されない。したがって、PETボトル2は、ホット充填に用いられても、アセプティック充填に用いられても良い。
【0094】
以上のように、PETボトル2は、上部30、胴部70、及び底部80を軸方向に順次有し、胴部70が多層に構成されて、外層18と内層19との間に中間層20を有する。このような構成によれば、中間層20の機能を確保しつつ、中間層20の成形材料の量を減少することができる。
【実施例0095】
以下に、実施例を示して、本開示を更に詳細、かつ具体的に説明する。しかしながら、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0096】
<材料、及び製造方法>
[実施例1]
外層18、及び内層19にはポリエチレンテレフタレート(PET樹脂a)が用いられ、中間層20には、ナイロンと金属錯体の混合物(ガスバリア性樹脂b)が用いられ、全体で22gのプリフォーム1が
図3等本明細書に示される方法によって作製された。プリフォーム1の全体に占めるガスバリア性樹脂bの割合は3重量パーセントとされた。プリフォームの重量は22gであった。
【0097】
そして、プリフォーム1から、
図9等に示される満注容量が295mlのPETボトル2がブロー成形によって作製された。PETボトル2には、280mlの水が充填された後に蓋が装着され、充填体が作製された。
【0098】
実施例1に係るプリフォーム1の中間層20は、口天面から約10mmの位置から、胴部70にかけて、連続して設けられていた。
【0099】
[比較例1]
比較例1では、ガスバリア性樹脂bを使用せず、PET樹脂aのみを用いて単層のプリフォームが作製された。プリフォームの重量は22gであった。そして、
図9等に示される満注容量が295mlのPETボトル2がブロー成形によって作製された。PETボトル2には、280mlの水が充填された後に蓋が装着され、充填体が作製された。
【0100】
[比較例2]
比較例2では、ガスバリア性樹脂bを使用し、その割合は25重量パーセントであった。中間層20は、口天面15から約10mmの位置から、胴部70にかけて、連続して設けられた。
【0101】
[比較例3]
比較例3では、ガスバリア性樹脂bを使用し、その割合は3重量パーセントであった。中間層20は、口天面15から約2mmの位置から、胴部70にかけて、連続して設けられた。
【0102】
<評価方法>
(ガスバリア層の材料の使用量)
実施例1、並びに比較例1~3の各PETボトルに使用されたガスバリア層の材料の質量によって使用量の削減が達成できているか否かが判定された。使用量の削減の判定には、各PETボトル(各プリフォーム)の全体に占めるガスバリア性樹脂bの割り合いが20wt%より大か、以下か、が閾値として設定された。表1には、各PETボトルにおけるガスバリア層の材料使用量の削減率についての評価の結果が示され、◎:削減率が極めて高い、○:削減率が高い、×:削減率が低い、で表記されている。
【0103】
(ガスバリア性)
実施例1並びに比較例1~3の各ペットボトルで、ガスバリア性が十分に達成できているか否かが判定された。ガスバリア性の判定には、各ペットボトルに緑茶を充填し、キャップをしめ、40度で保温庫に1ヵ月保存した。その後、その色差ΔEを測定した結果を表1に示す。色差が5以上の場合×、5未満の場合〇、で表記されている。
【0104】
(口部の割れ)
実施例1、並びに比較例1~3の各PETボトル100本に緑茶を充填し、キャッパーで巻き締めし、口部の割れを判定し、結果を表1に示した。割れが0本の場合は〇、1本以上の場合は×、で表記されている。
【0105】
(総合評価)
上述されたガスバリア層の材料の使用量、ガスバリア性に基づいて、実施例1並びに比較例1~3の各PETボトル(各充填体)の総合評価がなされた。表1には、総合評価の結果が示されている。総合評価は、◎:極めて良好、○:良好、×:適性なし、で表記されている。実施例1、並びに比較例1~3についての評価の結果を示す。wt%はガスバリア層の使用量で重量パーセントである。tはガスバリア層の口部からの位置でmm単位である。
【0106】
本発明は、中身として液体が充填される種々のプラスチックボトルに好適に利用することができる。しかしながら、本発明は、上述された実施形態や実施例に限定されるものではない。本発明のプラスチックボトルは、例えば、水、緑茶、ウーロン茶、紅茶、コーヒー、果汁、清涼飲料等の各種非炭酸飲料や、炭酸飲料、あるいはしょうゆ、ソース、みりん等の調味料、食用油、酒類を含む食品等、洗剤、シャンプー、化粧品、医薬品、その他のあらゆる中身の収容に有用である。また、本開示では特に、内容物の酸化を防止するためのガスバリア性中間層を設けてあり、内容物の酸化防止に優れた、生産性の高いプラスチックボトルの製造方法を提供することができる。