(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016799
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】健康状態改善支援システムおよび健康状態改善支援方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20220118BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119740
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】593230202
【氏名又は名称】株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・セキスイシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花田 宏司
(72)【発明者】
【氏名】浅原 一行
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】汎用性に優れ、実用性および学習効果に優れる健康状態改善支援システムを提供する。
【解決手段】睡眠改善支援システムAは、睡眠状態の改善を図る生活行動項目による初期生活行動状態データを取得するステップS101と、目標生活行動を取得するステップS102と、改善基準期間の毎日のユーザの睡眠に関する主観データを取得するステップS103と、ユーザの目標生活行動の達成状態を取得するS105と、改善基準期間の経過毎に最新の生活行動状態データを取得して更新するステップS106と、改善基準期間が経過するたびに、主観データの変化を算出し、更新前後の生活行動状態データの変化に対する、主観データの変化を報酬として付与してる強化学習を行って学習結果を蓄積し、健康状態の改善に効果的な生活行動項目を分析するステップS107と、分析結果に基づいて、レコメンド行動として決定し出力するS108と、を実行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力装置から入力されたユーザの生活行動状態に関するデータを記録部に蓄積するとともに、前記生活行動状態に関するデータに基づいて、前記ユーザの健康状態の改善を図るために推奨する生活行動を出力装置により出力可能な制御装置を備えた健康状態改善支援システムであって、
前記制御装置は、
前記ユーザの目的とする前記健康状態の改善を図ることが可能な生活行動として、予め設定された複数の生活行動項目のそれぞれについて、少なくとも、達成できているか、達成できていないかの違いを表した初期生活行動状態データを取得する生活行動状態データ取得部と、
複数の前記生活行動項目のうちで、達成できていない項目の中から達成目標として前記ユーザが選択した所定数の項目を目標生活行動として取得する目標生活行動取得部と、
予め設定された長さの改善基準期間の毎日の前記ユーザの改善対象の前記健康状態を示す健康状態データを取得する健康状態データ取得部と、
前記改善基準期間を経過した後の、前記ユーザの前記目標生活行動の達成状態を示す達成状態データを取得する目標生活行動データ取得部と、
前記初期生活行動状態データを、前記改善基準期間の経過毎に前記達成状態データを含む最新の生活行動状態データを取得して更新する更新生活行動状態データ取得部と、
前記改善基準期間が経過するたびに、前記改善基準期間の前後の前記健康状態データの変化を算出する状態変化演算部と、
前記更新前後の前記生活行動状態データの変化に対する、前記健康状態データの変化を報酬として付与して前記生活行動と前記健康状態との相関関係を求める強化学習を行うとともに学習結果を蓄積し、前記健康状態の改善に効果的な生活行動項目を分析する分析・学習部と、
前記分析の結果に基づいて、前記最新の生活行動状態の全項目のうちで達成できていない項目の中から、前記健康状態を改善する前記生活行動項目をレコメンド行動として生成し出力するレコメンド生成出力部と、
を備える健康状態改善支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の健康状態改善支援システムにおいて、
前記生活行動状態データ取得部では、前記達成できていない生活行動は、さらに、達成できていないが達成可能な行動と、達成不可能な行動とに判別されており、前記所定数の前記目標生活行動は、前記達成できていないが達成可能と判別された生活行動の中から選択されたものである健康状態改善支援システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の健康状態改善支援システムにおいて、
前記改善対象の健康状態は、前記ユーザの睡眠状態であり、
前記目標生活行動取得部が取得する前記生活行動は、睡眠を改善できる可能性を有する行動であり、
前記更新生活行動状態データ取得部が取得する最新の生活行動状態データには、前記ユーザの睡眠行動に関する睡眠行動データが含まれ、
前記健康状態データ取得部が取得する健康状態データには、前記ユーザの睡眠後の睡眠に関する主観を表す主観データが含まれ、
前記分析・学習部は、前記更新前後の前記睡眠行動データを含む前記生活行動状態データの変化に、前記主観データの変化を報酬として付与して、前記ユーザの前記生活行動および前記睡眠行動と、前記主観データとの相関関係を分析し、
前記レコメンド生成出力部は、前記ユーザの前記生活行動および前記睡眠行動と、前記主観データとの相関関係に基づいて、前記レコメンド行動を決定する健康状態改善支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載の健康状態改善支援システムにおいて、
前記睡眠行動データには、前記ユーザの就寝時刻と、前記就寝時刻から起床時刻までの睡眠時間とが含まれる健康状態改善支援システム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の健康状態改善支援システムにおいて、
前記主観データには、前記ユーザが起床時に感じる、眠気の程度を点数化した眠気データと、熟睡出来たかの程度を点数化した睡眠維持データと、疲労回復度を点数化した疲労回復データとが含まれる健康状態改善支援システム。
【請求項6】
請求項5に記載の健康状態改善支援システムにおいて、
前記分析・学習部は、前記報酬を、前記改善基準期間の前後における前記主観データに含まれる各データの中央値の差分の合計値に基づいて付与する健康状態改善支援システム。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか1項に記載の健康状態改善支援システムにおいて、
前記睡眠行動データを含む前記生活行動状態データを多次元の配列とし、その配列の元で前記目標生活行動の数値データを変化させたときの前記報酬に基づいて前記相関関係の前記分析を行う健康状態改善支援システム。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の健康状態改善支援システムにおいて、
前記改善対象の健康状態は、前記ユーザを適正体重とするためのダイエット状態であり、
前記目標生活行動取得部が取得する前記生活行動は、前記ユーザを適正体重に改善できる可能性を有する行動であり、
前記健康状態データ取得部が取得する前記健康状態データには、前記ユーザの体重データおよび体脂肪率データが含まれ、
前記分析・学習部は、前記更新前後の前記生活行動状態データの変化に対し、前記健康状態データの変化を報酬として付与して、前記ユーザの前記生活行動と、前記健康状態データとの相関関係を分析し、
前記レコメンド生成出力部は、前記ユーザの前記生活行動と、前記ユーザのダイエット状態を示す前記健康状態データとの相関関係に基づいて、前記レコメンド行動を決定する健康状態改善支援システム。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載の健康状態改善支援システムにおいて、
前記改善対象の健康状態は、前記ユーザのストレスの状態であり、
前記目標生活行動取得部が取得する前記生活行動は、前記ユーザの前記ストレスを低減できる可能性を有する行動であり、
前記健康状態データ取得部が取得する前記健康状態データには、前記ユーザの疲労度およびストレス度を計測する疲労ストレス計により検出したストレスデータが含まれ、
前記分析・学習部は、前記更新前後の前記生活行動状態データの変化に対し、前記ストレスデータの変化を報酬として付与して、前記ユーザの前記生活行動と前記ストレスデータとの相関関係を分析し、
前記レコメンド生成出力部は、前記ユーザの前記生活行動と、前記ストレスデータとの相関関係に基づいて、前記レコメンド行動を決定する健康状態改善支援システム。
【請求項10】
入力装置から入力されたユーザの生活行動に関するデータを記録部に蓄積するとともに、前記生活行動に関するデータに基づいて、前記ユーザの健康状態の改善を図るために推奨する生活行動を出力装置により出力可能な制御装置により実行する健康状態改善支援方法であって、
前記ユーザの目的とする健康状態の改善を図ることが可能な生活行動として、予め設定された複数の生活行動項目のそれぞれについて、少なくとも、達成できているか、達成できていないかの違いを表した初期生活行動状態データを取得するステップと、
複数の前記生活行動項目のうちで、達成できていない項目の中から達成目標として前記ユーザが選択した所定数の項目を目標生活行動として取得するステップと、
予め設定された長さの改善基準期間の毎日の前記ユーザの改善対象の健康状態を示す健康状態データを取得するステップと、
前記改善基準期間を経過した後の、前記ユーザの前記目標生活行動の達成状態を示す達成状態データを取得するステップと、
前記初期生活行動状態データを含む生活行動状態データを、前記改善基準期間の経過毎に前記達成状態データに基づいて更新した最新の生活行動状態データを取得するステップと、
前記改善基準期間が経過するたびに、前記改善基準期間の前後の前記健康状態データの変化を算出するステップと、
前記更新前後の前記生活行動状態データの変化に対する、前記健康状態データの変化を報酬として付与して前記生活行動と前記健康状態との相関関係を求める強化学習を行うとともに学習結果を蓄積し、前記健康状態の改善に効果的な生活行動項目を分析するステップと、
前記分析の結果に基づいて、前記最新の生活行動状態の全項目のうちで達成できていない項目の中から、前記健康状態を改善する前記生活行動項目をレコメンド行動として生成し出力するステップと、
を実行する健康状態改善支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康状態改善支援システムおよび健康状態改善支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの健康状態の改善支援として、ユーザの快眠が得られるように、ユーザに適した効果的な睡眠に関するアドバイスを提供することができる睡眠アドバイスシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来技術は、室温、湿度、照度などを含む睡眠環境データと、入浴の有無、飲酒の有無、運動の有無などを含む生活行動データと、アドバイス対象者であるユーザが感じる目覚めの良さ、熟睡感、日中の眠気データとの関連性(前記各項目がそれぞれ睡眠質データに与える影響)に関する関連性データを対象者が日々入力する。そして、これらの入力されたデータに基づいて、分析部が、睡眠質データに対する影響因子データの各項目の寄与率を分析する。さらに、アドバイス生成部が、関連性データおよび寄与率に基づいてユーザの睡眠の質を向上させるためのアドバイスを生成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された快眠アドバイスシステムは、改善対象のユーザの健康状態として睡眠状態の改善に限られ、汎用性に劣る。
【0006】
また、睡眠状態の改善にあたり、ユーザが、全ての項目について毎日データを入れる必要があり、手間がかかるため実用性に問題がある。また、変化する生活行動が多い場合には、それによる改善効果との関連性を特定しにくく、高い学習効果を得るのが難しい。
【0007】
本開示は、汎用性に優れ、実用性および学習効果に優れる健康状態改善支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の健康状態改善支援システムは、入力装置から入力されたユーザの生活行動に関するデータを記録部に蓄積するとともに、前記生活行動に関するデータに基づいて、前記ユーザの健康状態の改善を図るために推奨する生活行動を出力装置により出力可能な制御装置を備えた健康状態改善支援システムである。
そして、前記制御装置は、前記ユーザの目的とする健康状態の改善を図ることが可能な生活行動として、予め設定された複数の生活行動項目のそれぞれについて、少なくとも、達成できているか、達成できていないかの違いを表した初期生活行動状態データを取得する生活行動状態データ取得部と、複数の前記生活行動項目のうちで、達成できていない項目の中から達成目標としてユーザが選択した所定数の項目を目標生活行動として取得する目標生活行動取得部と、予め設定された長さの改善基準期間の毎日の前記ユーザの改善対象の健康状態を示す健康状態データを取得する健康状態データ取得部と、前記改善基準期間を経過した後の、前記ユーザの前記目標生活行動の達成状態を示す達成状態データを取得する目標生活行動データ取得部と、前記初期生活行動状態データを、前記改善基準期間の経過毎に前記達成状態データを含む最新の生活行動状態データを取得して更新する更新生活行動状態データ取得部と、前記改善基準期間が経過するたびに、前記改善基準期間の前後の前記健康状態データの変化を算出する状態変化演算部と、前記更新前後の前記生活行動状態データの変化に対する、前記健康状態データの変化を報酬として付与して前記生活行動と前記健康状態との相関関係を求める強化学習を行うとともに学習結果を蓄積し、前記健康状態の改善に効果的な生活行動項目を分析する分析・学習部と、前記分析の結果に基づいて、前記最新の生活行動状態の全項目のうちで達成できていない項目の中から、前記健康状態を改善する前記生活行動項目をレコメンド行動として生成し出力するレコメンド生成出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の健康状態改善支援システムおよび健康状態改善方法では、睡眠状態に限らず、健康状態全般に対応可能であり、汎用性に富む。
加えて、目標生活行動データ取得部は、所定の改善基準期間を経過した後に、複数の生活行動項目の中からユーザが選択した目標生活行動の達成状態を取得するため、ユーザは、生活行動項目のうちの一部を、所定の改善基準期間毎に入力すればよい。このため、複数の生活行動項目の全てについて毎日入力するものと比較して、ユーザの手間を省くことができ、実用性を高めることができる。
【0010】
しかも、目標行動の実際の行動結果と、健康状態改善結果との関連性を、健康状態改善効果の高い行動に対して報酬を与える強化学習を用いて学習し、生活行動項目のうちで報酬の高い所定数の行動を目標行動として勧める表示を行う。よって、ユーザは、限られた数の目標行動の達成を目標として生活行動を行えばよく、全ての生活行動項目の達成を目標とするものと比較して、達成が容易で、実用性が高い。さらに、このように数が限られた生活行動(目標生活行動)の変化に基づいて報酬を付与する強化学習を行うため、複数の全ての生活行動の変化と健康状態改善結果との関連性に基づいて学習を行うものと比較して、生活改善に効果的な生活行動の変化を高精度に学習することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施の形態1の睡眠改善支援システムを示すブロック図である。
【
図2B】
図2Bは、目標生活行動の評価値一例を示す図である。
【
図3】
図3は、生活行動状態のベクトルの説明図で、(a)は生活行動の22項目を示し、(b)は睡眠行動データの離散値一例を示す。
【
図4】
図4は、本実施の形態1の睡眠改善支援システムの処理流れを、ユーザの操作と併せて示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、生活行動状態の変化一例を示す図であり、(a)は改善基準期間の経過前の生活行動状態の一例を示し、(b)は改善基準期間の経過後の生活行動状態を示す。
【
図6】
図6は、主観データの評価値の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、2期の改善基準期間に亘る主観データの変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
本開示の健康状態改善支援方法を実行する健康状態改善支援システムの実施の形態1としてユーザの睡眠の改善を支援する睡眠改善支援システムAを示す。
【0013】
この睡眠改善支援システムAは、例えば、クラウド上に構築されたサーバや、あるいはユーザなどが所有するパーソナルコンピュータなどの情報処理装置(制御装置)を用いることができる。
【0014】
実施の形態1の睡眠改善支援システムAは、
図1に示すように、睡眠行動データ取得部11、睡眠行動データ記録部12、主観データ取得部21、主観データ記録部22、生活行動状態データ取得部31、生活行動状態データ記録部32、分析・学習部40、学習データ記録部50、レコメンド生成出力部60を備える。
【0015】
また、睡眠改善支援システムAは、データなどを入力する入力装置70に接続され、かつ、画像や音声などを出力する出力装置80に接続されている。入力装置70は、後述する各種データを入力するのに用いる。また、出力装置80は、後述するレコメンドや目標行動などを利用者に出力するのに用いる。
【0016】
睡眠改善支援システムAとして、クラウド上のサーバを用いた場合、入力装置70および出力装置80は、通信ネットワークを介してサーバに接続可能な情報処理装置の入出力装置を用いることができる。ここで、情報処理装置としては、タブレットやスマートフォンなどの多機能端末や、ノートパソコンやデスクトップパソコンなどのパーソナルコンピュータなどの情報処理装置を使用することができる。また、入力装置70としては、情報処理装置に付属のマウス、キーボード、タッチパネル、音声入力装置などを用いることができる。すなわち、ユーザは、分析に必要なデータを、これらの情報処理装置に入力し、通信ネットワークを介してサーバに送信するこができる。
【0017】
また、睡眠改善支援システムAが、ユーザなどが所有する情報処理装置である場合は、情報処理装置に接続されたキーボードやタッチパネルなどの入力装置70から情報処理装置の制御を行うコントローラ部分にデータなどを直接入力することができる。
【0018】
また、出力装置80は、上記の情報処理装置のディスプレイ装置やスピーカやプリンタ装置などを用いることができる。すなわち、サーバから必要な情報をユーザが所有する情報処理装置に送信し、情報処理装置に接続された出力装置80により出力することができる。あるいは、ユーザが所有する情報処理装置から直接この情報処理装置の出力装置80に出力することもできる。
【0019】
以下に、睡眠改善支援システムAの各構成について説明する。なお、以下の説明では、睡眠改善支援システムAは、サーバに組み込まれたシステムとして説明する。
睡眠行動データ取得部11は、入力装置70から睡眠行動データを取得する。この睡眠行動データとしては、本実施の形態1では、就寝時刻、睡眠時間を用いる。なお、この睡眠行動データは、ユーザが、入力装置70を用いて毎日入力する。
【0020】
睡眠行動データ記録部12は、睡眠行動データ取得部11が取得した睡眠行動データを日付ごとに記録する。
【0021】
主観データ取得部21は、ユーザの睡眠に対する主観に関するデータである主観データを取得する。なお、この主観データは、ユーザの改善対象の健康状態である睡眠状態を示す状態データとして取得する。
主観データとしては、本実施の形態1では、ユーザの目覚め時の気分(主観)に基づく、眠気、睡眠維持度、疲労回復度の状態を、それぞれ、ユーザ自身が0~100の値で評価して点数化する。また、これらの主観データは、ユーザが、毎日、起床時などに、入力装置70を用いて入力したものを取得する。
【0022】
眠気は、目覚めのスッキリ度を評価するもので、
図6に示すように、眠気を、「眠気が残っていますか」との質問に対する回答として、「頭がボーとしている」を「0」、「頭がはっきりしている」を100とする値により評価する。
【0023】
睡眠維持度は、熟睡感を評価するもので、熟睡感を、「ぐっすり眠れましたか」との質問に対する回答として、「ぐっすり眠れなかった」を「0」、「ぐっすり眠れた」を100とする値により評価する。
【0024】
疲労回復度は、睡眠による疲労回復度を評価するもので、疲労回復度を、「疲れが残っていると感じますか」との質問に対する回答として、「疲れが残っている・不快」を「0」、「疲れが取れている・爽やか」を「100」とする値により評価する。
【0025】
なお、主観データ記録部22は、主観データ取得部21が取得した各主観データを日付ごとに記録する。
【0026】
生活行動状態データ取得部31は、ユーザの生活行動に関する生活行動データを取得する。
【0027】
ここで、生活行動は、快眠を招く行動として予め設定されたもので、本実施の形態1では、
図2Aに示すように、22項目の生活行動が生活行動のチェックリストとして設定されている。
【0028】
生活行動状態データは、ユーザが、入力装置70を用いて、出力装置80により画面に表示された22項目の状態を示す状態値を生活行動状態データとして入力したものを読み込んだデータである。また、生活行動状態データには、前述した睡眠行動データ取得部11が取得した睡眠行動データが含まれる。
【0029】
さらに、生活行動状態データとしては、初期生活行動状態データと後述する達成状態データとが含まれる。初期生活行動状態データは、生活改善制御を開始する際に、22項目の生活行動について予めユーザがチェックして入力する初期の生活行動状態を示すデータである。達成状態データは、後述する所定の(本実施の形態では2週間)の生活改善基準期間が経過するごとに、22項目の生活行動の中から選択された後述する目標生活行動の達成度を示すデータであり、生活行動の変化の有無を示す。すなわち、生活行動状態データは、初期生活行動状態データから、生活改善基準期間が経過するごとに、目標生活行動の変化に基づいて更新される。
【0030】
初期生活行動状態データの状態値は、上述した22項目についてユーザがそれぞれチェックするもので、各項目の状態を、
図2Aに示すように、「1」「0」「-1」のフラグで表す。なお、各項目の行動に対し、「1」は、既にできている、「0」は頑張ればできる、「-1」は、できそうもない、を表す。
【0031】
なお、上記のように22項目の生活行動は、睡眠状態を改善できるとされる生活行動である。具体的には、以下に列挙する行動を含む。
「毎朝ほぼ決まった時間に起きる」「朝食は毎朝食べる」「午前中は太陽の光をしっかり浴びる」「日中はできるだけ人と会う」「日中はたくさん歩いて活動的に過ごす」「趣味などを楽しむ」「日中は太陽の光に当たる」「昼食後から午後3時の間で30分以上の昼寝を取る」「夕方に軽い運動、体操や散歩をする」「夕方以降は居眠りをしない」「夕食以降、コーヒー、お茶を控える」「寝床につく1時間前はタバコを吸わない」「床に入る2時間前には部屋の明かりを少し落とす」「ぬるめのお風呂に就床1時間前までにゆっくり入る」「寝床でテレビを見たり、仕事はしない」「寝室は静かで適温にする」「寝る前にリラックス体操(腹式呼吸)を行う」「寝るために、お酒を飲まない」「床で悩み事をしない」「眠くなったら寝床に入る」「8時間睡眠にこだわらず、自分に合った睡眠時間を規則的に守る」「睡眠時間帯が不規則にならないようにする」
なお、生活行動としては、上記の行動に限定されるものではない。
【0032】
一方、達成状態データは、22項目の中から選択された所定数(本実施の形態1では、「3」)の目標生活行動の達成度を、「-1」「0」「1」の評価値により示す。これらの評価値は、
図2Bに示すように、「1」は出来た、「0」は時々出来た、「-1」は出来なかった、を表す。これらの評価値は、状態値と同様に、ユーザが入力装置70により入力した値である。
【0033】
上述のようにユーザが入力装置70を用いて入力した生活行動状態データ(状態値、評価値)は、生活行動状態データ取得部31(初期生活行動データ取得部、更新生活行動データ取得部)が取得する。そして、生活行動状態データ記録部32は、生活行動状態データ取得部31が取得した生活行動データを日付ごとに記録する。また、睡眠行動データ取得部11が取得した睡眠行動データについても、睡眠行動データ記録部12において、日付と関連付けて記録される。
【0034】
分析・学習部40は、生活行動状態データ、睡眠行動データ、主観データに基づいて、生活改善対象のユーザの快眠が得られる睡眠状態(健康状態)と生活行動との関係を分析および学習する。なお、この分析および学習の詳細については後述する。
【0035】
学習データ記録部50は、分析・学習部40における学習結果のデータを記録し、蓄積する。
【0036】
レコメンド生成出力部60は、分析・学習部40による分析結果および学習結果に基づき、前述の22項目の生活行動の中で未達成のものから、ユーザが快眠を得るの好ましい生活行動を選択し、レコメンド生活行動として出力装置80に出力する。
【0037】
(睡眠支援処理の流れ)
次に、
図4のフローチャートに基づいて、本実施の形態1の睡眠改善支援システムAによる処理の流れを、睡眠改善対象のユーザの行動と併せて説明する。なお、
図4では、S101~S112が睡眠改善支援システムAによる処理の流れを示し、S201~S205が、ユーザの操作や行動を示す。
【0038】
最初のステップS101は、ユーザの初期生活行動状態データを取得する。初期生活行動状態データとは、この睡眠改善支援システムAによる睡眠支援制御の開始時点のユーザの生活行動状態を示すデータである。また、初期状態生活状態データは、ユーザが入力装置70により入力したもの(S201)を生活行動状態データ取得部31が取得する。
【0039】
この初期生活行動状態データの取得では、まず、生活行動状態データ取得部31が、出力装置80に、
図2Aに示す生活行動チェックリストを表示する。そして、ユーザは、マウスやタッチパネル機能を使用し、各項目の状態に応じて「1」「0」「-1」の状態値(フラグ)にチェックを入れて睡眠改善支援システムAに送信する(S201)。そして、生活行動状態データ取得部31は、この22項目の生活行動の状態値を取得する。
【0040】
なお、ステップS201の22項目の生活行動チェックおよび入力は、ユーザ以外の例えばアドバイザなどの第三者が行ってもよい。この場合、ユーザが、紙などに22項目の生活行動にチェックを入れたものを、第三者が、入力装置70から入力するようにしてもよい。
【0041】
また、生活行動状態データ取得部31が読み込んだ初期生活行動状態データは、生活行動状態データ記録部32に記録する。
【0042】
ステップS102では、目標生活行動のデータを取得する処理を行う。ここで目標生活行動は、ユーザ自身が入力装置70の操作により「0」とチェック入れた生活行動(頑張ればできる行動)の項目の中から、ユーザが「1」とすること、つまり、「出来た」を達成目標として選択し入力した(S202)3項目の生活行動である。
【0043】
ステップS103では、睡眠行動データ、主観データを取得する処理を行う。このステップS103の処理は、所定の改善基準期間(本実施の形態1では、2週間であり、少なくとも複数の日にち)の毎日(望ましくは毎朝)行う。この場合、睡眠改善支援システムAは、出力装置80の画面に、睡眠行動データおよび主観データを入力する画面を表示し、ユーザが入力装置70を用いて各データを入力する(ステップS203)。そして、睡眠改善支援システムAは、これらの入力された各データを取得する。
【0044】
なお、出力装置80に睡眠行動データ、主観データの入力用の画面を表示する場合、所定の時刻に、睡眠改善支援システムAが自動的に表示するようにしてもよいし、ユーザが入力装置70を操作することで、入力用の画面を表示するようにしてもよい。
【0045】
また、データの入力は、ユーザが、画面上で、マウス操作、タッチ操作、キーボード操作などの周知の入力操作を行って入力を行う。
【0046】
ここで、睡眠行動データは、就寝時刻と睡眠時間とのデータである。睡眠行動データ取得部11では、ユーザが入力した就寝時刻と睡眠時間を取得し、睡眠行動データ記録部12に記録する。ここで、睡眠行動データは、改善基準期間の経過毎に更新する生活行動データに含まれる。
【0047】
なお、就寝時刻と睡眠時間のデータは、学習に用いるにあたり、分析・学習部40において、所定期間(改善基準期間=2週間)の平均値を算出し、離散値化する。
【0048】
就寝時刻は、
図3(b)に示すように、22時前を1とし、25時以降を8とした、1時間刻みの1~8の離散値に変換する。
【0049】
また、睡眠時間のデータは、同様に、所定期間(改善基準期間=2週間)の平均値を算出し、5時間未満を1とし、8時間以上を8とした、1時間刻みの1~8の離散値に変換する。
【0050】
主観データについても、睡眠行動データと同様に、ユーザは、毎日、目覚めた後に、入力装置70により入力する(S203)。なお、主観データは、前述したように、眠気、睡眠維持度、疲労回復度を、それぞれ、0~100の数値を用いて入力する。ここで、主観データは、改善対象の健康状態としての睡眠状態を示す健康状態データに相当する。
【0051】
ステップS104では、改善基準期間(2週間)が経過したか否か判定し、改善基準期間が経過するまでは、ステップS103(S203)の処理を繰り返し、睡眠行動データおよび主観データを取得し記録する。ここで、改善基準期間は、健康状態としての睡眠状態の改善を図るために、生活行動の変化を図るとともに、その生活行動の変化による睡眠状態(健康状態)の改善の有無を分析するための期間であり、少なくとも複数の日数を要し、本実施の形態では、2週間とするが、これよりも短くてもよいし、長くてもよい。
【0052】
一方、ステップS104において、改善基準期間が経過したら、ステップS105に進む。すなわち、改善基準期間(2週間)が経過するまでの間は、睡眠行動データと主観データを毎日(毎朝)取得することを繰り返し、改善基準期間(2週間)が経過した後、ステップS105の処理に進む。
【0053】
ステップS105では、目標生活行動の達成状態を示す評価データ(達成状態データ)を取得する。ここで目標生活行動とは、前述したステップS102において取得した目標生活行動、あるいは、後述するステップS109において取得した3項目の目標生活行動である。
【0054】
また、評価データは、所定の改善基準期間の経過毎に、ユーザが入力装置770により入力したデータである。この場合、睡眠改善支援システムAは、出力装置80に行動評価を行う画面を表示する。そして、ユーザは、2週間の改善基準時間における実際の行動を振り返って、
図2Bに示すように、目標生活行動を達成出来た場合は「1」、時々達成出来た場合は「0」、達成できなかった場合は「-1」の各評価値を、入力装置70を用いて入力する(S204)。
【0055】
睡眠改善支援システムAは、達成度の評価値を生活行動状態データ取得部31により取得し、生活行動状態データ記録部32に記録する。
【0056】
ステップS106では、生活行動状態データを更新する。この生活行動状態のデータは、ステップS101で読み込んだ22項目の初期生活行動状態データにおける3項目の目標生活行動のデータを、2週間の改善基準期間の経過後の評価値に更新するとともに、睡眠行動データを加えたものである。また、この更新は、2週間の改善基準期間が経過する毎に繰り返し行う。
【0057】
生活行動状態データの更新の一例を、
図5に示す。
図5において、(a)が更新前の生活行動状態データの配列(ベクトル)を示す。また、
図5(a)において、丸により囲んだ、8、13、21の項目が、目標生活行動の項目である。そして、
図5(b)が、更新後の生活行動状態データの配列(ベクトル)を示す。この例では、8、21の項目が、「0」(頑張ればできる)から、「1」(達成出来た)に変化し、13の項目が、達成できずに「0」のままとなっている。また、
図5の例では、改善基準期間の前後で、23項目、24項目の睡眠行動データは、変化がない場合の例を示している。
【0058】
次のステップS107では、ステップS106において更新した生活行動状態データと主観データとに基づいて、分析・学習処理を実行する。
【0059】
この分析・学習処理は、詳細については後述するが、目標生活行動の評価値の変化と、主観データの推移に基づいて、生活行動状態データのベクトル(24項目の-1,0,1の値の組み合わせ)に対して報酬を付与し、報酬の高い生活行動状態を求める。すなわち、
図5の例では、
図5(a)の生活行動状態から、
図5(b)の生活行動状態への変化に対して報酬を付与する。
【0060】
ステップS108では、ステップS107の学習処理による学習結果の有無を判定し、学習結果があれば、ステップS110に進み、学習結果が無ければ、ステップS109に進む。また、ステップS110の処理を行った後もステップS109に進む。なお、学習結果の有無については、後述のステップS111の説明と共に説明する。
【0061】
ステップS110では、学習結果に基づいて、時々実行可能である評価値が「0」の生活行動の中から、睡眠状態の改善にお勧め(レコメンド)の生活行動を選択し、レコメンドとして出力装置80により表示する処理を行う。
【0062】
ステップS109では、次回の改善基準期間における目標生活行動を取得する。この目標生活行動は、ステップS102と同様に、ユーザが入力装置70を用いて選択した3項目の目標生活行動を取得する。
【0063】
この場合、ユーザは、ステップS110により出力装置80にレコメンドの生活行動が表示されている場合は、これを参照しつつ、頑張ればできる「0」の生活行動の中から選択する(S205)。
【0064】
次のステップS111では、所定のリセット期間が経過したか、あるいは所定のリセット信号が入力する否か判定する。そして、リセット期間が経過していない場合およびリセット信号の入力が無い場合は、ステップS103に戻る。一方、リセット期間が経過した場合は、ステップS112に進んで、分析・学習のために蓄積した最新の生活行動状態データを削除してリセットし、ステップS101に戻る。
【0065】
ここで、リセット期間は、少なくとも、分析および学習に必要な期間であって、1か月以上の期間であり、例えば、ユーザの生活環境に影響を与える季節などに応じて1年を複数に分けた期間とすることができる。また、例えば、睡眠に関する状況(例えば、部屋の模様替えをしたり、仕事や学校が変わって起床時間が変わった場合など)が変化したりした場合は、ユーザが任意にリセット信号を出力させてリセットできるようにする。
【0066】
すなわち、1回目のリセット期間が経過するまでの間に取得した生活行動状態データおよび主観データに基づいて、24項目のデータのベクトルと、それによる報酬との関係を分析、学習する。そして、次回のリセット期間から、学習結果に基づくリコメンドを表示する。
【0067】
ここで、初回のリセット期間では、ステップS101、S102の処理を行った後は、ステップS103~ステップS109の処理を繰り返す。したがって、ユーザは、初回の改善基準期間から改善基準期間が経過する毎に、22項目の生活行動の中で、「0」の状態値の生活行動の中から、3つの目標生活行動を選択し、これらの目標生活行動を達成することを目指して行動する。これにより、改善基準期間が経過する毎に、「0」から「1」への生活行動の変化が生じ(生じない場合もあり得るが)、その変化に基づく報酬を付与する。
【0068】
これを繰り返すことにより、時々出来る「0」の評価を出来た「1」に変化させることにより得られる睡眠状態の改善(改悪もあり得る)に対する報酬を得ることにより、生活行動の変化による睡眠状態の改善効果を分析および学習することができる。
【0069】
そこで、初回のリセット期間では、この分析、学習を繰り返して蓄積し、この間は、ステップS108の処理では、NOと判定することになる。
【0070】
そして、次回のリセット期間以降は、その前回以前のリセット期間における蓄積した学習結果に基づいて、ステップS108において学習データ有りと判定し、ステップS110に進み、学習結果に基づいて、レコメンド生活行動を生成し出力する。
【0071】
(学習処理の説明)
次に、ステップS107の学習処理について説明する。
学習処理では、ステップS102、S109において設定した目標生活行動の評価値の変化と、主観データの中央値の変化との相関を、報酬として数値化する。
【0072】
まず、報酬の数値化について説明する。
この報酬は、改善基準期間(2週間)における3つの主観データの各値に基づいて、算出する。具体的には、主観データとしての、眠気、睡眠維持度、疲労回復度を、それぞれ0~100の値で評価したデータの、中央値の差分を求め、その値を、改善基準期間における24項目のベクトルの変化の報酬とする。
【0073】
図7は、第1の改善基準期間P1と、第2の改善基準期間P2との3つの主観データの変化の一例を示している。
【0074】
図7において、中央値Mds1は、眠気の主観データの値である主観値dsの、第1の改善基準期間P1の最大値maxds1と最小値minds1との中央の値である。また、中央値Mds2は、眠気の主観データの値である主観値dsの、第2の改善基準期間P2の最大値maxds2と最小値minds2との中央の値である。
【0075】
そして、第1の改善基準期間P1の中央値Mds1と、第2の改善基準期間P2の中央値Mds2との差分Dds1-2を求める。
【0076】
さらに、疲労回復度、熟睡度についても、上記と同様に、第1の改善基準期間P1の中央値と、第2の改善基準期間P2の中央値とを、それぞれ求め、3つの主観データの差分の合計値を、第1の改善基準期間P1と第2の改善基準期間P2との生活行動の変化の報酬とする。
【0077】
本実施の形態では、生活活動の変化とは、3項目の目標生活行動のうちで、時々出来た(頑張ればできる)「0」から、出来た「1」への変化を指す。例えば、
図5(a)の24項目のベクトルから、
図5(b)の24項目のベクトルの変化(3の項目と21の項目との「0」から「1」への変化)を指す。そして、このベクトルの変化に対して、3つの主観データの変化の差分の合計値を報酬として付与する。
【0078】
なお、3種類の主観データの中央値の差分の合計値である報酬は、プラス、0、マイナスのいずれの場合もあり得る。
【0079】
報酬がプラスの場合は、
図5(a)の生活行動状態(ベクトル)において、3の項目と、21の項目の「1」への変化が、睡眠として良い方向、つまり、快眠に繋がったと分析し、学習する。逆に、報酬がマイナスの場合は、
図5(a)の生活行動状態(ベクトル)において、3の項目と、21の項目の「1」への変化が、睡眠として悪い方向に繋がったと分析し、学習する。また、報酬が0の場合は、
図5(a)の生活行動状態(ベクトル)において、3の項目と、21の項目の「1」への変化が、快眠に繋がらなかったと分析し、学習する。なお、合計値に必要な係数を乗じたりして、行動と報酬との関連性を適正化することもできる。
【0080】
学習データ記録部50では、上記の24項目の生活行動状態(ベクトル)と報酬との関係を、学習データとして記録し、これを蓄積する。すなわち、改善基準期間が経過する毎に、「0」の生活行動の中から、3項目の目標生活行動を設定し、改善基準期間の経過後の生活行動状態の変化と、報酬との関係を学習し、記録することを繰り返す。
【0081】
このように、生活行動に基づく、学習を繰り返して24項目の生活行動のベクトルと報酬とに基づいて、ユーザの一人一人にとって、快眠に繋がる効果的な、つまり、高い報酬が得られる生活行動の状態を学習する。
【0082】
そして、レコメンド生成出力部60では、学習結果に基づいて、記録されたベクトルと同様の生活行動状態の場合に、その生活行動状態に対して、過去に報酬が高かった生活行動を、レコメンドする3項目として選択し、出力装置80を用いて、ユーザに提示する。つまり、前回以前のリセット期間においてプラスの報酬が得られた際の、変化前の生活行動状態データと同じ、あるいは類似した生活行動状態が生じた際には、その際に変化した生活行動を、報酬が期待できる目標生活行動としてレコメンドする。
【0083】
したがって、例えば、
図5に示すベクトルの変化に対して、相対的に高い報酬を付与した場合、その次のリセット期間において、
図5(a)に示す生活行動状態のベクトルが生じた場合、3項目の生活行動をレコメンドとして表示する(ステップS110)。
【0084】
なお、ユーザは、レコメンドとして表示された項目を参照した上で、「0」の評価値の生活行動の中から、3つの項目を目標生活行動として選択し、入力する(S205)。
【0085】
(実施の形態1の作用効果)
以下に、実施の形態1の作用効果を列挙する。
(1)実施の形態1の睡眠改善支援システムAは、入力装置70から入力されたユーザの生活行動に関するデータを各記録部12,22,32に蓄積するとともに、生活行動に関するデータに基づいて、ユーザの健康状態の改善を図るために推奨する生活行動を出力装置80により出力可能な制御装置としてのサーバを備えた健康状態改善支援システムである。
そして、サーバは、
ユーザの目的とする健康状態としての睡眠状態の改善を図ることが可能な生活行動である予め設定された22の生活行動項目のそれぞれについて、少なくとも、達成できているか、達成できていないかの違いを表した初期生活行動状態データを取得する生活行動状態データ取得部(ステップS101の処理を行う部分)と、22項目の生活行動項目のうちで、達成できていない項目の中から達成目標としてユーザが選択した3つの項目を目標生活行動として取得する目標生活行動取得部(ステップS102の処理を行う部分)と、2週間の改善基準期間を経過した後の、ユーザの目標生活行動の達成状態を示す達成状態データを取得する目標生活行動データ取得部(S105の処理を行う部分)と、初期生活行動状態データを、改善基準期間の経過毎に3項目の達成状態データおよびユーザの睡眠行動に関する2項目の睡眠行動データを含む最新の生活行動状態データを取得して更新する更新生活行動状態データ取得部(ステップS103の一部およびステップS106の処理を行う部分)と、を兼ねる生活行動状態データ取得部31および睡眠行動データ取得部11と、
予め設定された長さの改善基準期間の毎日のユーザの睡眠後の睡眠に関する主観を表す睡眠状態データとしての主観データを取得する主観データ取得部21(ステップS103の一部の処理を行う部分)と、
改善基準期間が経過するたびに、改善基準期間の前後の主観データの変化を算出し、更新前後の生活行動状態データの変化に対する、主観データの変化を報酬として付与して生活行動と睡眠状態との相関関係を求める強化学習を行うとともに学習結果を蓄積し、健康状態の改善に効果的な生活行動項目を分析する分析・学習部40(ステップS107の処理を行う部分)と、
分析結果に基づいて、最新の生活行動状態の全項目のうちで達成できていない項目の中から、健康状態を改善する生活行動項目をレコメンド行動として生成し出力するレコメンド生成出力部60(S108の処理を行う部分)と、
を備える。
【0086】
したがって、ユーザは、22項目の予め設定された生活行動に対して、所定の2週間の改善基準期間が経過した後に、3項目の目標生活行動の達成状態を入力すればよい。よって、22項目の生活行動項目の全ての達成状態を毎日入力するものと比較して、ユーザの手間を省くことができ、ユーザの負担を抑え、実用性を高めることができる。
【0087】
しかも、目標行動の実際の行動結果と、睡眠状態改善結果との関連性を、睡眠状態改善効果の高い行動に対して主観による報酬を与える強化学習を用いて学習し、生活行動項目のうちで報酬の高い所定数の行動を目標行動として勧める表示を行う。よって、ユーザは、限られた数の目標行動の達成を目標として生活行動を行えばよく、全ての生活行動項目の達成を目標とするものと比較して、達成が容易であるから実用性が高い。
【0088】
さらに、このように数が限られた3つの目標生活行動の変化に基づいて報酬を付与する強化学習を行うため、複数の全ての生活行動の変化と睡眠状態改善結果との関連性に基づいて学習を行うものと比較して、生活改善に効果的な生活行動の変化を高精度に学習することができる。加えて、ユーザの主観データに基づいて報酬を与えるため、ユーザの個々に合った報酬を与えることができ、これにより、ユーザの個々に応じた分析、学習を行い、ユーザにとって効率的に睡眠改善を図ることができる目標行動を生成し、勧めることができ。これにより、効率的にユーザの生活改善としての睡眠改善を図ることができる。
【0089】
(2)実施の形態1の睡眠改善支援システムAは、生活行動状態データ取得部31では、達成できていない生活行動は、さらに、達成できていないが達成可能な行動と、達成不可能な行動とに判別されており、目標生活行動は、達成できていないが達成可能と判別された生活行動の中から選択されたものとした。
【0090】
したがって、達成不可能な生活行動を目標生活行動とするものと比較して、改善基準期間が経過する間に、達成状態の変化、つまり生活行動の変化が生じやすく、その変化に基づく報酬を得やすい。よって、報酬に基づく強化学習結果を得やすく、生活行動の変化に対する睡眠状態の変化を把握して、実効性の高い学習を行うことができる。
【0091】
(3)実施の形態1の睡眠改善支援システムAにあっては、睡眠行動データには、ユーザの就寝時刻と、就寝時刻から起床時刻までの睡眠時間とが含まれる。
したがって、生活改善としての睡眠改善を図るにあたり、睡眠行動としての就寝時刻、睡眠時間(起床時刻を含む)を把握し、これらのデータと、主観データとの関連性を分析することができる。これにより、睡眠改善をより高精度に図ることが可能である。
【0092】
さらに、本実施の形態1では、就寝時刻、睡眠時間を、それぞれ、1~8の数値により離散値化し、報酬に対する生活行動をベクトル化することを可能とした。これにより、時刻や時間などの連続したデータがあっても、生活行動状態と報酬との関連付けをより詳細に行うことができる。
【0093】
(4)実施の形態1の睡眠改善支援システムAにあっては、主観データには、ユーザが起床時に感じる、眠気の程度を点数化した眠気データと、熟睡出来たかの程度を点数化した睡眠維持データと、疲労回復度を点数化した疲労回復データとを含む。
したがって、ユーザの主観を数値化して、生活行動および生活行動変化に対して、主観を報酬として付与して、強化学習を行うことができる。
【0094】
(5)実施の形態1の睡眠改善支援システムAにあっては、分析・学習部40は、報酬を、改善基準期間の前後における主観データに含まれる各データの中央値の差分の合計値に基づいて付与する。
したがって、改善基準期間の前後の生活行動の変化によって、ユーザの睡眠に対する総合的な主観がどのように変化したかを数値化し、その生活行動の変化が、睡眠状態に対して、どのように影響を与えたか、つまり、良い影響を与えたか、悪い影響を与えたか、さらにその程度を、正確に分析することができる。
【0095】
(6)実施の形態1の睡眠改善支援システムAにあっては、睡眠行動データを含む生活行動状態データを多次元の配列である24項目のベクトル化する。そして、そのベクトルの配列の元で目標生活行動の数値データを変化させたときの報酬に基づいて生活行動と睡眠状態との相関関係の分析を行う。
したがって、ある生活行動状態が再現された際に、効果的に改善できる目標生活行動をレコメンド表示することが可能となり、ユーザの一人ひとりに的確に沿ったレコメンド表示が可能となる。
【0096】
(7)実施の形態1の睡眠改善支援方法は、入力装置70から入力されたユーザの生活行動に関するデータを各記録部12,22,32に蓄積するとともに、生活行動に関するデータに基づいて、ユーザの健康状態の改善を図るために推奨する生活行動を出力装置80により出力可能な制御装置としてのサーバにより実行する睡眠改善支援方法である。
そして、サーバは、
ユーザの目的とする健康状態としての睡眠状態の改善を図ることが可能な生活行動である予め設定された22の生活行動項目のそれぞれについて、少なくとも、達成できているか、達成できていないかの違いを表した初期生活行動状態データを取得するステップ(S101)と、
22項目の生活行動項目のうちで、達成できていない項目の中から達成目標としてユーザが選択した3つの項目を目標生活行動として取得するステップ(S102)と、
予め設定された長さの改善基準期間の毎日のユーザの睡眠後の睡眠に関する主観を表す睡眠状態データとしての主観データを取得するステップ(S103)と、
2週間の改善基準期間を経過した後の、ユーザの目標生活行動の達成状態を示す達成状態データを取得するステップ(S105)と、
初期生活行動状態データを、改善基準期間の経過毎に3項目の達成状態データおよびユーザの睡眠行動に関する2項目の睡眠行動データを含む最新の生活行動状態データを取得して更新するステップ(S103の一部およびS106)と、
改善基準期間が経過するたびに、改善基準期間の前後の主観データの変化を状態変化演算部として算出し、更新前後の生活行動状態データの変化に対する、主観データの変化を報酬として付与して生活行動と睡眠状態との相関関係を求める強化学習を行うとともに学習結果を蓄積し、健康状態の改善に効果的な生活行動項目を分析するステップ(S107)と、
分析結果に基づいて、最新の生活行動状態の全項目のうちで達成できていない項目の中から、健康状態を改善する生活行動項目をレコメンド行動として生成し出力するステップ(S108)と、
を実行する。
したがって、上記(1)の作用効果を得ることができる。
【0097】
以上、図面を参照して、実施の形態1の睡眠改善支援システムを実施するための形態を詳述してきたが、本発明の具体的な構成は、実施の形態1に限らない。
【0098】
例えば、実施の形態では、生活改善として、睡眠支援を例に挙げたが、生活改善は、睡眠支援に限定されるものではない。
例えば、ダイエットの支援、ストレス軽減支援などの生活行動改善に用いることができる。
【0099】
(実施の形態2)
そこで、本発明を、ダイエット支援に適用した例を実施の形態2として説明する。なお、実施の形態2において実施の形態1との相違点は、生活改善対象が異なるもので、サーバやパーソナルコンピュータなどの主たる構成は、実施の形態1と同様であり、以下、実施の形態1と相違する構成を説明する。
【0100】
実施の形態2では、実施の形態1で示した22項目の生活行動に代わり、生活行動状態を判断する生活行動項目として、ユーザを適正体重とするダイエットに効果的とされる生活行動項目を設定している。
【0101】
このダイエットに効果的な生活行動項目として、以下の項目を含む。
「間食をしない」「3食しっかり食べる」「肉類、魚介類、野菜、豆類をとる」「ご飯のお代わりをしない」「甘いお菓子を控える」「夜更かしをしない」「1時間以上歩く」「20分の有酸素運動をする」「就寝3時間前には夕食を終える」
【0102】
なお、この他にも、ダイエットに効果的な生活行動を任意に加えることができる。例えば、「飲み物として甘い飲み物を控え、水やお茶にする」「揚げ物を食べない」「食事は腹八分目にする」など適宜設定することができる。
【0103】
また、実施の形態1で示したステップS201では、上記のダイエットに効果的な生活行動項目について、出来ない「-1」、努力すれば出来そう「0」、出来ている「1」のフラグを入力する。
【0104】
よって、ステップS101では、ダイエットに効果的な生活行動について、ステップS201において入力したデータを取得し、これを初期生活行動状態データとする。
【0105】
また、ステップS202の目標生活行動の選択においは、上記のダイエットに効果的な生活行動項目において評価値が「0」の項目の中から3項目選択する。よって、ステップS102では、ステップS202において選択された目標生活行動を取得する。
【0106】
そして、実施の形態2では、ユーザの改善対象の健康状態を示す状態データとしては、主観データに代わり、ダイエット状態を示す体重データ、体脂肪率データを用いる。そこで、実施の形態1で示したステップS103では、所定の改善基準期間(例えば、1~2週間)、毎日、体重、体脂肪率の測定データを取得する。
【0107】
ステップS105では、実施の形態1と同様に、ステップS102で取得した目標生活行動の達成状態を示す達成状態データであり生活行動の変化を示す評価データを取得し、ステップS106において更新する。
【0108】
また、ステップS107の分析・学習処理では、2期に亘る改善基準期間のそれぞれの期間の体重の中間値あるいは平均値と、体脂肪率の中間値あるいは平均値のそれぞれの差分の合計値を求める。そして、合計値がマイナスであればプラスの報酬を付与し、差分がプラスであれば、マイナスの報酬を付与する。また、この場合、合計値に必要な係数を乗じたりして、関連性を適正化することもできる。
【0109】
したがって、実施の形態2では、ダイエットに効果的な生活行動の各項目の変化を含むベクトルと、それに対する報酬との関係から、ユーザの一人一人に応じたダイエットに効果的な生活行動を学習する。そして、その学習結果に基づいて、レコメンドの生活行動を生成し出力する(S108)ことができる。
【0110】
(実施の形態3)
次に、本発明を、健康状態の改善としてストレスを低減するために用いた例を実施の形態3として説明する。
【0111】
実施の形態3では、生活行動状態を判断する生活項目として、ストレス低減に効果的とされる生活行動項目を設定する。
【0112】
ストレスの低減を図るための生活行動として、例えば、以下の項目を含む。
「行動変容に関心を持つ」「自分のストレスが他の人にどんな影響を与えるかを考える」「問題行動が健康に及ぼすことを経験する」「ストレスマネジメント行動に関して自分でイメージする」「ストレスマネジメント行動を積極的行うことを宣言する」「ストレスマネジメント行動を維持するためにご褒美を準備する」「ストレスを感じる時にストレスマネジメント行動を行う」「ストレスマネジメント行動に協力してくれる人を見つける」
【0113】
ここで、ストレスマネジメント行動は、ユーザのストレスを抑制できるとされる行動であって、容易に実施可能なものとする。例えば、深呼吸をする、入浴する、音楽を聴く、喫煙する、飲み物を飲む、ストレッチをする、体操をする、運動をする、マッサージを受けるなどが挙げられる。
【0114】
また、生活行動の項目としては、他にも、十分な睡眠をとる、規則正しい食事をとる、人と会話する、などが挙げられる。
【0115】
ステップ201では、ユーザは、これらの生活行動に対し、実施の形態1,2と同様に、出来ない「-1」、努力すれば出来そう「0」、出来ている「1」のフラグを与える。また、ステップS101では、これらの値を初期生活行動状態データとして取得する。
【0116】
また、ステップS102、S202では、実施の形態1,2と同様に、ストレス抑制に効果的として設定された複数の生活行動の中から、任意の数、例えば、3の生活行動を目標生活行動として設定する。なお、この数は、3に限定されるものではなく、1~5程度の数を設定することができるが、ユーザが実施可能な数としては、3が好適である。
【0117】
また、ステップS203、S103において、取得、入力する状態データ(ストレスデータ)としては、既存の疲労ストレス計による計測値を用いることができる。すなわち、ユーザは、所定の改善基準期間の間、毎日、疲労ストレス計により測定したストレスの計測値を入力し、システムは、これを取得する。なお、疲労ストレス計による計測値は、ストレスが大きいほど、大きな数値になりストレス度が高いものとする。
【0118】
そして、ステップS107の分析・学習処理では、2期に亘る疲労ストレス計による計測値の中央値あるいは平均値どうしの差分を求め、差分がマイナスであればプラスの報酬を付与し、差分がプラスであれば、マイナスの報酬を付与する。
【0119】
したがって、実施の形態3では、ストレス抑制に効果的な生活行動の変化(目標生活行動の達成)を含む各項目のベクトルと、それに対する報酬との関係から、ユーザの一人一人に応じたストレス抑止に効果的な生活行動を学習する。そして、その学習結果に基づいて、レコメンドの生活行動を生成し出力する(S108)ことができる。
【0120】
以上、実施の形態1~3について説明したが、生活改善の対象としては、上述した睡眠、ダイエット、ストレス抑制に限定されるものではない。
【0121】
また、生活改善支援システムを実行するものとして、サーバを示したが、これに限定されるものではなく、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置を用いることができる。
【0122】
また、レコメンドの出力としては、画面に表示するものに限らず、音声などを用いることができる。そして、出力装置としては実施の形態で例示した、情報端末の他に、支援ロボットなどの他の機器を用いることもできる。
【符号の説明】
【0123】
11 睡眠行動データ取得部
12 睡眠行動データ記録部
21 主観データ取得部
22 主観データ記録部
31 生活行動データ取得部
32 生活行動データ記録部
40 分析・学習部
50 学習データ記録部
60 レコメンド生成部
70 入力装置
80 出力装置
80 周力装置
770 入力装置
A 睡眠改善支援システム