(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168008
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】屋根材の接続構造
(51)【国際特許分類】
E04D 3/38 20060101AFI20221027BHJP
E04D 1/36 20060101ALI20221027BHJP
E04B 1/684 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
E04D3/38 B
E04D1/36
E04B1/684 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138551
(22)【出願日】2022-08-31
(62)【分割の表示】P 2017159819の分割
【原出願日】2017-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222990
【氏名又は名称】株式会社テクノアソシエ
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 龍美
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昌司
(72)【発明者】
【氏名】谷口 純
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 和弘
(72)【発明者】
【氏名】福留 隆起
(57)【要約】
【課題】複数の部材間の高い密着性を確保することができるとともに、優れた防水性を有する屋根材の接続構造を提供する。
【解決手段】屋根の傾斜方向で隣接する屋根材の接続構造であって、屋根の傾斜方向で上方に配置される第一の屋根材50は、その下端部に接続部52が突設され、屋根の傾斜方向で下方に配置される第二の屋根材60は、その上端部が接合部62として形成されている。接合部62の表面には、防水パッキン1と柔軟性パッキン100とが設けられている。防水パッキン1は、樹脂発泡体2と、芯材層3と、粘着層4とを備え、これらがこの順で積層して形成されている。接続部52は、その裏面が防水パッキン1に密着して接合部62の表面に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の傾斜方向で隣接する屋根材の接続構造であって、
屋根の傾斜方向で上方に配置される第一の屋根材は、その下端部に接続部が突設され、
屋根の傾斜方向で下方に配置される第二の屋根材は、その上端部が接合部として形成され、
前記接合部の表面には、防水パッキンと柔軟性パッキンとが設けられ、
前記防水パッキンは、樹脂発泡体と、芯材層と、粘着層とを備え、これらがこの順で積層して形成され、
前記芯材層は、不織布又は織布の少なくとも一方を含み、
前記樹脂発泡体は、連続気泡体の発泡材料であり、
前記不織布又は織布は、前記樹脂発泡体及び前記粘着層より伸張しにくく、
前記接続部は、その裏面が前記防水パッキンに密着して前記接合部の表面に配置される、
屋根材の接続構造。
【請求項2】
前記粘着層は、ブチルゴム系粘着剤を含む、
請求項1に記載の屋根材の接続構造。
【請求項3】
前記柔軟性パッキンは、前記防水パッキンの設けられる位置よりも屋根の傾斜方向で下方側に配置されている、
請求項1又は2に記載の屋根材の接続構造。
【請求項4】
前記第一の屋根材及び前記第二の屋根材は、表面金属外皮と芯材と裏面金属外皮とを備え、
前記表面金属外皮は、前記芯材の表面に全面にわたって設けられており、
前記裏面金属外皮は、前記芯材の裏面に全面にわたって設けられている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の屋根材の接続構造。
【請求項5】
前記第一の屋根材及び前記第二の屋根材における前記表面金属外皮は、複数の山部を備え、前記複数の山部において隣り合う山部との間には平坦部が形成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の屋根材の接続構造。
【請求項6】
前記第一の屋根材及び前記第二の屋根材における前記裏面金属外皮は、複数の溝部を備える、
請求項1から5のいずれか一項に記載の屋根材の接続構造。
【請求項7】
前記第一の屋根材及び前記第二の屋根材の各々は、前記傾斜方向に直交する方向において一方の端部にかぶせ側端部を有し、かつ他方の端部に敷き込み側端部を有し、
前記かぶせ側端部にはかぶせ片が形成されており、かつ前記敷き込み側端部には連結部が設けられており、
前記連結部上に前記かぶせ片が被せられている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の屋根材の接続構造。
【請求項8】
前記防水パッキンは、前記かぶせ片と前記連結部との間で挟持されている、
請求項7に記載の屋根材の接続構造。
【請求項9】
前記第一の屋根材における前記表面金属外皮の前記かぶせ片は、前記接合部において一部が切除されている、
請求項7又は8に記載の屋根材の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根材の接続構造に関し、詳細には防水パッキンを備える屋根材の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用、土木建築用、建材用のシーリング材として、パッキンが利用されている。例えば、建築用の部材を組み立てる際には、隣接して接続される部材間に隙間が生じることがあり、その隙間にパッキンを配設することにより、建物外部から隙間を通じて雨水、あるいは外気(特に冷気)が建物内部に侵入しないように気密性を向上させることが行われている。
【0003】
特許文献1では、シートと、そのシートの片面に固定される弾性変形可能なパッドと、シートを固定するための接着材を備える建築用のパッキンが提案されている。このようなパッキンをパネル材に取り付けることでパッキン付きパネル材を作製し、このパッキン付きパネル材を隣接する建築物に取り付けて、パネル材の隣接面間での密着性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、屋根材等の部材に対して部材の形状に沿わせ(追随させ)ながら、パッキンを配設する場合には、パッキン全体が引っ張られて接着材の接着面が部材に配設されることがある。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、パッキンを構成するパッド及び接着材はそれぞれの部材が有する伸縮性により、部材にこのパッキンを配設した後に、接着材が部材から剥離したり、あるいはパッキン中のパッドと接着材とが剥離したりすることがあった。そのため、部材とパッキンとの密着性や防水性が損なわれるといった問題があった。
【0007】
本発明の目的は、複数の部材の隣接する部材同士間をシーリングする場合において、引っ張りながら配設しようとしても、その伸張を抑制するとともに部材からの剥離を抑制し、隣接する部材間の高い密着性を確保することができ、優れた防水性が得られる防水パッキンを提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、上記の防水パッキンを配設することで高い密着性を有して、優れた防水性を備える屋根材の接続構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る防水パッキンは、樹脂発泡体と、芯材層と、粘着層とを備え、これらがこの順で積層して形成され、前記芯材層は、不織布又は織布の少なくとも一方を含み、前記不織布又は織布は、前記樹脂発泡体及び前記粘着層より伸張しにくい。
【0010】
本発明の一態様に係る屋根材の接続構造は、屋根の傾斜方向で隣接する屋根材の接続構造であって、屋根の傾斜方向で上方に配置される第一の屋根材は、その下端部に接続部が突設され、屋根の傾斜方向で下方に配置される第二の屋根材は、その上端部が接合部として形成され、前記接合部の表面には、前記防水パッキンが設けられ、前記接続部は、その裏面が前記防水パッキンに密着して前記接合部の表面に配置される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、芯材層で樹脂発泡体及び粘着層の伸張を抑制するとともに部材からの剥離を抑制することで、隣接する部材間の高い密着性を確保することができるとともに、優れた防水性を有する防水パッキンが得られる。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、複数の部材の隣接する部材同士間において、高い密着性を確保でき、優れた防水性を有する屋根材の接続構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る防水パッキンの構造の側面の一部を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る屋根材の接続構造を示す概略図である。
【
図4】水下側屋根材の一例を示す一部の斜視図である。
【
図5】水上側屋根材の一例を示す一部の斜視図である。
【
図6】横方向で隣接する水下側屋根材の一例を示す一部の平面図である。
【
図7】横方向で隣接する屋根材の一例を示す一部の断面図である。
【
図8】
図8Aは、横方向で隣接する水下側屋根材の一例を示す一部の斜視図であり、
図8Bは、縦横方向で隣接する屋根材の一例を示す一部の平面図である。
【
図9】横方向で隣接する水下側屋根材と水上側屋根材の一例を示す一部の平面図である。
【
図10】横方向で隣接する水下側屋根材と、横方向で隣接する水上側屋根材の一例を示す一部の平面図である。
【
図11】縦方向で隣接する屋根材の一例を示す一部の断面図である。
【
図13】
図13Aは、実施例における屋根の試験体における止水性試験の概略を示す斜視図であり、
図13Bは、その平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本実施の一形態に係る防水パッキンの構造について説明する。
【0015】
防水パッキン1は、
図1に示すように、樹脂発泡体2と、芯材層3と、粘着層4とを備え、これらがこの順で積層して形成されている。以下の説明においては、上記の積層する方向を「厚み方向」ともいう。また「長手方向」とは、例えば
図1の断面視において、上述の厚み方向に直交する方向を意味する。
【0016】
樹脂発泡体2は、例えば発泡ウレタン系、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)系、並びにポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、フェノール樹脂(PF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)、及びポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)樹脂等の発泡材料(樹脂材料)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。また、発泡材料は、連続気泡体であることが好ましい。この場合、発泡材料は、圧力を加えることによって収縮し、またその圧力が解放されることによって膨張して元の厚みにまで戻すことができる。このため、重なり合う部材間にこの防水パッキン1を介在させる場合において、部材間の規定の施工幅に合わせるために、一方の部材に配設された防水パッキン1が他方の部材によって圧縮されても、防水パッキン1は膨張することで重なり合う部材間のより高い密着性を確保することができる。
【0017】
発泡材料は、具体的には連続気泡軟質発泡ウレタン(日本発条株式会社製 製品名:スーパーシール/スーパーシート)あるいはTremco Illbruck(トレムコ イルブルック社(ドイツ))社が製造するイルモドエコ等が挙げられる。なお、発泡材料は、上記の連続気泡発泡の樹脂材料以外にも、例えば上記のスーパーシール/スーパーシートと同等か又はそれ以上の止水性を有する独立気泡発泡の樹脂材料であってもよい。
【0018】
樹脂発泡体2の厚みは、例えば3~30mmとすることができるが、これに限定されない。
【0019】
芯材層3は、不織布又は織布の少なくとも一方を含む。すなわち、芯材層3は、不織布又は織布のいずれか一方のみを含んでもよく、不織布及び織布の両方を含んでもよい。本実施形態に係る不織布又は織布は、樹脂発泡体2及び粘着層4より伸張しにくい。これにより、芯材層3は、その芯材層3の表面3aに接着する樹脂発泡体2、及び表面3aの反対側の面3b(以下、芯材層3の裏面3b、ともいう)に接着する粘着層4の長手方向の伸張を抑制することができる。そのため、防水パッキン1を引っ張って伸ばしながら配設しようとしても、防水パッキン1が過度に伸びることを抑制することができる。また、引張によって生じる長手方向の伸張及び収縮が抑制されることで、部材から防水パッキン1(の粘着層4)が剥離することを抑制することができる。これにより、防水パッキン1が部材から剥離することを抑制できるため、防水パッキン1は、隣接する部材間の高い密着性を確保することができ、優れた防水性を有する。
【0020】
なお、防水パッキン1の伸張のしやすさについて、防水パッキン1を介在させて部材を重ね合わせる場合において、第一の部材(重ねる側の部材)と第二の部材(重ね合わせられる側の部材)との間に介在する防水パッキン1の厚み方向の伸縮にはほとんど影響を与えるものではない。そのため、第二の部材に配設された防水パッキン1を、第一の部材を縦方向から圧縮して配置する際の防水パッキン1の厚み方向における収縮力及び膨張力は維持されうる。したがって、防水パッキン1は、厚み方向から圧縮されても時間とともに縦方向に膨張できるため、高い密着性は依然として確保される。
【0021】
芯材層3が不織布を含む場合は、織布に比べて防水パッキン1の直交方向における伸張がより抑制される。すなわち、防水パッキン1は、直交方向において、より伸びにくくなる。このため、施工性をより向上させることができ、より高い密着性(気密性)及び防水性を確保することができる。
【0022】
不織布の例は、綿、羊毛、麻、パルプ、絹、鉱物繊維などの天然繊維;レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル繊維、ビニロン、アラミド繊維などの化学繊維;炭素繊維、及びガラス繊維を挙げることができる。不織布は、これらの群から選択される少なくとも一種の材料を含むことができる。
【0023】
織布の例は、上記不織布と同様の繊維からなる群から選択される少なくとも一種の材料を含む。
【0024】
芯材層3は、その両面(すなわち表面3a及び裏面3b)に予め粘着材を備えていてもよい。この場合、芯材層3と樹脂発泡体2、及び芯材層3と粘着層4とのそれぞれの密着性を、より向上させることができ、防水パッキン1の更に高い密着性及び防水性に寄与することができる。粘着材は、例えばアクリル系粘着材を挙げることができる。
【0025】
芯材層3が上記の粘着材を備える場合、芯材層3の、引張速度300mm/minの条件で測定される引張強さは、例えば0.8~2.0N/mmの範囲内であり、伸びは、例えば100~110%/mmの範囲内である。ただし、粘着材の引張強度、及び伸びは、これらに限定されず、芯材層3の材質、性質、特性、あるいは隣接する樹脂発泡体2、及び粘着層4の材質、性質等に応じて適宜設定することができる。
【0026】
芯材層3としては、例えば積水化学工業株式会社製のセキスイ・ダブルタックテープ等の両面テープが挙げられる。
【0027】
なお、芯材層3は、吸水がしにくい材質であることが好ましい。芯材層3が、吸水しやすい材質の場合には、水分が浸透してしまい、防水パッキン1の防水性が低下するおそれがある。そのため、防水性をより向上させるためには、芯材層3は、水への浸透性、親水性を有する材質を含有しない方が好ましい。
【0028】
芯材層3の厚みは、例えば0.12~0.2mmとすることができるが、これに限定されない。
【0029】
粘着層4は、上記の芯材層3上に積層して形成される。粘着層4は、例えばブチルゴム系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、クロロプレンゴム系からなる群から選択される少なくとも一種の成分(粘着剤)を含む。粘着層4は、ブチルゴム系粘着剤であることが好ましい。ブチルゴム系とは、イソプレンとイソブチレンとの共重合体を含有するものである。この場合、防水パッキン1は、シーリング材として、更に高い防水性を有することができ、重ね合わせられる部材の接触面との、より良好な密着性を確保することができる。また、ブチルゴム系は耐久性に優れるため、防水パッキン1もシーリング材として優れた耐久性を有することができる。
【0030】
粘着層4の例は、具体的には、例えば日立マクセル株式会社製の商品名スーパーブチルテープ等が挙げられる。
【0031】
粘着層4の厚みは、例えば0.6~1.0mmとすることができるが、これに限定されない。
【0032】
上記のように構成される防水パッキン1は、例えば長尺に形成することができる。また、防水パッキン1を細長の長尺状に形成してから、粘着層4の樹脂発泡体2の表面2aとは反対側の面4bに剥離紙を介在させて、樹脂発泡体2が内側になるように巻いてロール状にして保管することもできる。この場合、厚み方向に圧縮させて巻くことで防水パッキン1を厚み方向で収縮させた状態を維持することができ、嵩張りを抑制して保管することも可能である。このロール状の防水パッキン1を解いて被着体に貼付することにより力が解放され、膨張するものである。防水パッキン1の厚みは、上記樹脂発泡体2、芯材層3、及び粘着層4の厚みに応じて適宜設定することができ、例えば、11~32mmとすることができる。
【0033】
このように、本実施の一形態に係る防水パッキンは、樹脂発泡体と、不織布又は織布の少なくとも一方を含む芯材層と、粘着層と、をこの順で積層して形成されるといった三層構造とし、不織布又は織布が樹脂発泡体及び粘着層よりも伸張しにくいものとすることで、部材の間に設置した場合には、部材間の密着性を確保し優れた防水性を達成できる。また、防水パッキン内における隣接する層との伸張が起こりにくいため、部材からの剥離を抑制することができるとともに、防水パッキン自身の剥離を抑制することもできるものである。
【0034】
本実施の一形態に係る防水パッキンは、屋根材、内装材や外装材等の建築用部材、自動車用部材、あるいは電気機器・電気機械等の機械機器などの部材に好適に適用することができる。
【0035】
次に、本発明に係る屋根材の接続構造について、具体的に説明する。屋根は母屋等の屋根下地材70の上に複数枚の屋根材5を設置することにより形成される。
【0036】
本実施の形態に係る屋根材の接続構造は、屋根の傾斜方向で隣接する屋根材の接続構造であって、屋根材5と防水パッキン1とを備える。具体的には、
図2に示すように、屋根の傾斜方向で上方に配置される第一の屋根材50は、その下端部に接続部52が突設されている。屋根の傾斜方向で下方に配置される第二の屋根材60は、その上端部が接合部62として形成されている。接合部62の表面62aには、上記の防水パッキン1が設けられている。接続部52は、その裏面52bが防水パッキン1に密着して接合部62の表面62aに配置されている。
【0037】
このように、第一の屋根材50と第二の屋根材60との間に上記の防水パッキン1が介在し、防水パッキン1は、厚み方向に直交する方向(長尺方向)の伸張が抑制されて第二の屋根材60上に配設できるとともに、第一の屋根材50によって厚み方向には上方から押えられて配設できるため、隣接する屋根材同士間の高い密着性を確保することができ、優れた防水性を有する屋根の接続構造とすることができる。
【0038】
屋根材5は、雨水が流れやすいように傾けて設置されており、この傾きが屋根の傾斜方向となる。屋根は、複数枚の屋根材を屋根の傾斜方向あるいはそれと平行な方向(以下、縦方向ともいう)と、屋根の傾斜方向と直交する方向(以下、横方向ともいう)とに並べて形成される。
【0039】
以下の説明では、屋根の傾斜方向に隣接する屋根材5のうち、屋根の傾斜方向で上側に位置する第一の屋根材50を水上側屋根材51ともいう。また、屋根の傾斜方向に隣接する屋根材5のうち、屋根の傾斜方向で下側に位置する第二の屋根材60を水下側屋根材61ともいう。通常、水上側屋根材51は水下側屋根材61の棟側に位置する。逆に水下側屋根材61は水上側屋根材51の軒側に位置する。また、第一の屋根材50は、一つ以上の水上側屋根材を含み、第二の屋根材60は、一つ以上の水下側屋根材を含む。
【0040】
屋根材5は、
図3のように、芯材6の表面に表面金属外皮7を全面にわたって設けて形成されている。また、芯材6の裏面には、裏面金属外皮8が全面にわたって設けられている。芯材6は断熱性と耐火性を備えるものが好ましく、例えばポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォームなどの発泡性の樹脂材料で形成されている。屋根材5、すなわち第一の屋根材50及び第二の屋根材60は、山部9を有することができる。この場合、芯材6の厚みは、山部9の部分で70~80mm、平坦部19の部分で30~40mmとすることができるが、これらに限定されるものではない。表面金属外皮7及び裏面金属外皮8は耐食性を備えるものが好ましく、例えばガルバリウム鋼板(登録商標)、塗装鋼板、塩ビ鋼板などで形成されている。表面金属外皮7及び裏面金属外皮8の板厚は、0.3~0.8mmとすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
屋根材5は、縦方向に長く形成されている。屋根材5の表面(上面)には、複数の山部9が突設されている。山部9は屋根材5の縦方向の全長にわたって長尺に形成されている。屋根材5の隣り合う山部9の間は、平坦部19として形成されている。
【0042】
屋根材5の横方向の一方の端部は、かぶせ側端部10として形成され、他方の端部は、敷き込み側端部11として形成されている。かぶせ側端部10には、かぶせ片12が形成されている。かぶせ片12は、表面金属外皮7に一体に形成されている。かぶせ片12は、芯材6の側端面(かぶせ側端部10の端面)よりも外側に突出して形成されている。かぶせ片12は、屋根材5の縦方向の全長にわたって設けられている。かぶせ片12の裏面(下面)にはシーリングテープ13が設けられている。シーリングテープ13は屋根材5の縦方向の全長にわたって設けられている。敷き込み側端部11には連結部14が設けられている。連結部14は、屋根材5の表面に突出して設けられている。連結部14は、屋根材5の縦方向の全長にわたって長尺に形成されている。敷き込み側端部11の芯材6の側端面にはシール材15が設けられている。屋根材5の裏面には複数の溝部16が形成されている。溝部16は、屋根材5の縦方向の全長にわたって長尺に形成されている。溝部16は、山部9と対応する位置に設けられている。
【0043】
上記の屋根材5から水下側屋根材61と水上側屋根材51とが形成される。
【0044】
水下側屋根材61は屋根の傾斜方向における上端部(水上側の端部)が接合部62として形成されている。接合部62は、水下側屋根材61の横方向の全長にわたって形成されている。
【0045】
水下側屋根材61は、接合部62において、かぶせ片12の一部が切除されている。
図4のように、かぶせ片12は、第二の屋根材60の平坦部19から斜め上方に向かって突出する立ち上がり片120と、立ち上がり片120の上端から第二の屋根材60の側方(外側)に向かって突出する覆い片121と、覆い片121の先端から斜め下方に向かって突出する係止片122とで形成されている。そして、かぶせ片12の上端部(接合部62の部分)において、覆い片121の一部と係止片122とが切除されて上切除部123が形成される。すなわち、かぶせ片12の上端から約400mmの寸法、好ましくは約380mmの寸法(
図4,6,9,10にL1で示す)で覆い片121の一部と係止片122とが切除される。この場合、残った覆い片121の切断端縁からシーリングテープ13が3mm程度突出するようにする。シーリングテープ13は切断されないように、覆い片121から一部を剥がした状態で覆い片121の一部を切除する。
【0046】
水上側屋根材51は、屋根の傾斜方向における下端部(水下側の端部)において、第一の屋根材50の芯材6と裏面金属外皮8が切除されて形成される。そして、水上側屋根材51の水下側の端部に残った表面金属外皮7で接続部52が形成される。接続部52は、水上側屋根材51の横方向の全長にわたって形成されている。接続部52は、第一の屋根材50の下端から約400mmの寸法で形成されている。水上側屋根材51は、接続部52において、連結部14を構成する表面金属外皮7の一部が切除されている。
図5のように、連結部14の表面金属外皮7は、第一の屋根材50の平坦部19から斜め上方に向かって突出する傾斜片141と、傾斜片141の上端から第一の屋根材51の側方(外側)に向かって突出する上片142と、上片142の先端から斜め下方に向かって突出する角片143と、で形成されている。そして、接続部52において、上片142の一部と角片143とが切除されて下切除部144が形成される。すなわち、接続部52の下端から約400mmの寸法(
図5,9,10にL2で示す)で上片142の一部と角片143とが切除される。この場合、残った上片142の幅寸法は元の上片142の幅寸法の約2/3である。また、残った上片142の更に下端部が切除されて切欠部145が形成される。切欠部145の寸法(
図5,9,10にL3で示す)は接続部52の下端から約20mmに形成される。
【0047】
上記のような上切除部123や下切除部145は、後述のように屋根材5を設置したときに、隣接する屋根材5の接続部分で、かぶせ片12や連結部14における表面金属外皮7が重なり合うのを少なくするためである。表面金属外皮7の重なり合いが多くなると、鋼板等の金属板同士の馴染みが悪くなり、表面金属外皮7の浮きが発生し、表面金属外皮7の間に隙間が発生することから、水密性が低下するおそれがある。
【0048】
そして、複数枚の屋根材5で屋根を形成するにあっては、次のようにして行う。
【0049】
まず、複数枚の水下側屋根材61を横方向に並べて接続する。この場合、
図6のように、横方向で隣接する水下側屋根材61は、一方の水下側屋根材61(以下、第一の水下側屋根材601という)の連結部14の上に、他方の水下側屋根材61(以下、第二の水下側屋根材602という)のかぶせ片12が被せられる。この場合、かぶせ片12の裏面のシーリングテープ13は、連結部14の上片142の表面(上面)に密着する。
図6のように、シール材15は第一の水下側屋根材601の敷き込み側端部11と第二の水下側屋根材602のかぶせ側端部10との間で挟持される。また、接合部62においては、上切除部123から連結部14が露出する。
【0050】
次に、
図8Aのように、接合部62に防水パッキン1が配設される。防水パッキン1は、山部9及び平坦部19の形状に追随させて変形させながら、防水パッキン1の粘着層4を接合部62の表面金属外皮7の表面に密着して設けられる。防水パッキン1は、横方向に並ぶ複数枚の水下側屋根材61にわたって設けられる。防水パッキン1は、例えば、水下側屋根材61の上端から10~30mmの箇所を横切るように設けられる。防水パッキン1は、例えば水下側屋根材61の上端から10~30mmの箇所を横切るように設けられる。
【0051】
また、
図8Aのように、接合部62の、防水パッキン1の配設する位置よりも水下側に、更に柔軟性パッキン100を配設してもよい。この場合、隣接する屋根材の接続部分での防水性を特に向上させることができる。柔軟性パッキン100は、通常のパッキンよりも柔らかくて任意の形状に変形しやすいものである。柔軟性パッキン100の柔らかさは、JIS K 2207に準拠する針入れ度で表すことができる。この針入れ度は、アスファルトの硬さの尺度、試験条件下で規定の針が試料中に垂直に進入した長さ0.1mmを1で表している。したがって、柔軟性パッキン100においても、100gの荷重を掛けた針が、5秒間の間に5.5~7.5mm(針入れ度55~75)進入する柔らかさをもったものが好ましい。通常のパッキンは加硫されたブチルゴムなどで形成されるが、柔軟性パッキン100は非加硫のブチルゴムなどで形成される。柔軟性パッキン100は、例えば、早川ゴム株式会社が製造するサンタックシーラーQなどが挙げられる。柔軟性パッキン100は、例えば、幅10~20mmで厚み3~10mmの帯状に形成される。
【0052】
柔軟性パッキン100を配設する場合、柔軟性パッキン100は、防水パッキン1と同様に、山部9及び平坦部19の形状に追随させて変形させながら、接合部62の表面金属外皮7の表面に密着して設けられる。柔軟性パッキン100は横方向に並ぶ複数枚の水下側屋根材61にわたって設けられる。柔軟性パッキン100は上切除部123の下端の直ぐ水上側(10~30mm水上側)の箇所を横切るように設けられる。柔軟性パッキン100は接着しやすいため、その上面には離型フィルム101が設けられている。
【0053】
次に、複数枚の水上側屋根材51を横方向に並べて配設する。この場合、水上側屋根材51は水下側屋根材61の水上側(縦方向における上側)に配置される。水上側屋根材51の接続部52は水下側屋根材61の接合部62の表面62aに被せられる。ここで、接合部62における山部9の上には接続部52の表面金属外皮7の山部9に相当する部分が被さるようにする。接合部62における平坦部19の上には接続部52の表面金属外皮7の平坦部19に相当する部分が被さるようにする。接続部52は防水パッキン1及び/又は柔軟性パッキン100の上に載置される。防水パッキン1における樹脂発泡体2は、既に述べた通り、圧縮されることで収縮した後、時間の経過と共に徐々に膨張し、接続部52と接合部62の間の隙間をほとんど塞ぐことができる。
【0054】
ここで、柔軟性パッキン100の上面には離型フィルム101が設けられているので、接続部52の裏面52b(下面)と柔軟性パッキン100とが接着されない。したがって、水上側屋根材51は水下側屋根材61に対して縦方向及び横方向に多少動かすことができ、水上側屋根材51の位置合わせ(設置位置の調整)が容易に行える。
【0055】
また、防水パッキン1は、厚み方向に大きく膨張する前の状態であり、接続部52の裏面52bと、防水パッキン1の厚み方向で上側の面とは強く密着していない。したがって、水上側屋根材51は水下側屋根材61に対して縦方向及び横方向に多少動かすことができ、水上側屋根材51の位置合わせ(設置位置の調整)が容易に行える。
【0056】
複数枚の水上側屋根材51は横方向に順次並べて設置していく。この場合、まず、
図9のように、第一の水上側屋根材501の接続部52が第一の水下側屋根材601の接合部62の上に被せられる。このとき、第一の水上側屋根材501の接続部52における上片142は、第二の水下側屋根材602の覆い片121の上に載置される。また、第一の水上側屋根材501の接続部52の先端(水下側端部)511が、第一の水下側屋根材601の接合部62の下端位置Hと同じか、この下端位置Hよりも下側(水下側)に突出する。接合部62の下端位置Hに対する上記接続部52の先端511の位置は、第一の水上側屋根材501を屋根の傾斜方向に移動させることにより、調整することができる。第一の水上側屋根材501を屋根の傾斜方向に移動させることにより、隣り合う屋根下地材70の間隔の寸法誤差や、屋根材5の設置位置(施工位置)の誤差、屋根材5の縦方向の寸法誤差などを吸収することができる。第一の水上側屋根材501を屋根の傾斜方向に移動させる寸法は、屋根の傾斜方向における切欠部145の寸法L3と同じである。したがって、第一の水上側屋根材501の切欠部145と、第二の水下側屋根材602の上切除部123とが重なる場合があり、この重なり部分が隙間72として形成される。
【0057】
このようにして、第一の水上側屋根材501を配置した後、第一の水上側屋根材501の敷き込み側端部11の側方に、第二の水上側屋根材502を配置する。
図10のように、第二の水上側屋根材502の接続部52は第二の水下側屋根材602の接合部62の上に被せられる。このとき、第二の水上側屋根材502の接続部52におけるかぶせ片12は、第一の水上側屋根材501の連結部14の上に被せられる。また、第二の水上側屋根材502の接続部52の先端(水下側端部)512と、第一の水上側屋根材501の接続部52の先端511とが、横方向で一直線上に並ぶようにする。これにより、複数枚の水上側屋根材51の水下側端部がガタガタに並ばずに、一直線に並んだ外観を形成することになり、屋根の外観が低下しにくくなる。また、上記の隙間512が第二の水上側屋根材502の接続部52におけるかぶせ片12で覆われて見えにくくなり、これにより、屋根の外観が低下しにくくなると共に隙間72から雨水が侵入しにくくなって、屋根の防水性が向上する。このようにして複数枚の水上側屋根材61を横方向に並べて設置する。防水パッキン1は、第一の水上側屋根材501の敷き込み側端部11と第二の水上側屋根材502のかぶせ側端部10との間で挟持される。
【0058】
上記のようにして、水下側屋根材61と水上側屋根材51とを設置した後、剥離フィルム101を柔軟性パッキン100から除去する。これにより、柔軟性パッキン100と接続部52の裏面52bとを密着させて防水性を高めることができる。剥離フィルム101を除去するにあたっては、
図8Bのように、水上側屋根材51を設置する際に、剥離フィルム101の一部を、表裏に重なり合う接続部52と接合部62の隙間から、接続部52の先端511,512よりも下側に引き出しておく。そして、水下側屋根材61と水上側屋根材51を設置した後、引き出した剥離フィルム101の一部を引っ張って、剥離フィルム101の全部を引き出すようにする。
【0059】
上記のようにして、複数本の固定具(テクスやビスや釘など)75で水下側屋根材61と水上側屋根材51とを屋根下地材70に固定する。複数本の固定具75は、山部9を貫通して屋根下地材70にまで打ち込まれたり、ねじ込まれたりして固定される。また、他の複数本の固定具75は、かぶせ片12とこのかぶせ片12が被せられた連結部14とを貫通して屋根下地材70にまで打ち込まれたり、ねじ込まれたりして固定される。複数本の固定具72は、防水パッキン1の直ぐ水上側の部分に打ち込まれたり、ねじ込まれたりして固定される。また、他の複数本の固定具72は防水パッキン1の水上側の部分に打ち込まれたり、ねじ込まれたりして固定される。また、固定具の固定位置には、山部9の表面やかぶせ片12の表面に座金76を設けても良い。また防水パッキン1は水下側屋根材61と水上側屋根材51を固定具75で固定した後、徐々に膨張していき、表裏に重なり合う接続部52と接合部62の隙間の一部を埋めるようになる。
【0060】
本実施の形態は、屋根の傾斜方向で隣接する屋根材5の接続構造に関する。
【0061】
屋根の傾斜方向で上方に配置される第一の屋根材50はその下端部に接続部52が突設される。屋根の傾斜方向で下方に配置される第二の屋根材60はその上端部が接合部62として形成される。接合部62の表面には防水パッキン1の粘着層4が設けられる。接続部62は、その裏面が防水パッキン1の樹脂発泡体2に密着させて接合部62の表面62aに配置される。防水パッキン1は、上述の通り、樹脂発泡体2と、芯材層3と、粘着層4とを備え、これらがこの順で積層して形成されている。このような屋根材1の接続構造では、樹脂発泡体2及び粘着層4の厚み方向と長手方向の伸張が、芯材層3によって抑制されることで、屋根の傾斜方向で隣接する屋根材5同士の接続部分における高い密着性を長期にわたって確保することができ、優れた防水性を維持することができる。
【0062】
また、防水パッキン1により、防水性を得るための施工の手間を軽減することができるので、大幅な作業性の向上と防水性が向上するとともに、施工コストの低減、並びに意匠性の向上も合わせて図られる工法とすることが可能となった。
【0063】
また、上記の通り、第一の屋根材50及び第二の屋根材60は、山部9を有し、防水パッキン1の粘着層4が、第二の屋根材60の山部9に沿って接合部62の表面62aに配設され、第一の屋根材50が、防水パッキン1の樹脂発泡体2上に配設されることが好ましい。この場合、屋根構造において、山部のような凹凸を有する屋根材同士を重ね合わせて接続する場合であっても、その凹凸部分における防水パッキン1の剥離を抑制することができるため、高い密着性を長期にわたって確保することができ、より優れた防水性を維持することができる。
【0064】
また、本実施の形態では、屋根の傾斜方向と直交する方向で隣接する屋根材5のうち、一方の屋根材5には表面金属外皮7の下端部に切欠部145が形成されているため、表面金属外皮7の重ね合わせを少なくすることができる。また、切欠部145は他方の屋根材5の表面金属外皮7の下端部で覆われるため、切欠部145が見えにくくなって、屋根の外観が低下しにくくなる。また、隣接する屋根材5の下端は屋根の傾斜方向と直交する方向で一直線上に揃っているので、屋根の外観が低下しにくい。
【実施例0065】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0066】
(1)防水パッキンの作製
[実施例1]
厚み10mm、幅15mmの樹脂発泡体(日本発条株式会社製 製品名「スーパーシートHP」)を、厚み0.12mm、幅15mmの、両面に粘着材を備える不織布(積水化学工業株式会社製 製品名「#5762E」)の一方の面にラミネーターで圧着して積層した。続いて、上記不織布の他方の面に、厚み1mm、幅15mmの粘着層(日立マクセル株式会社製 製品名「スーパーブチルテープNo.5001」)をラミネーターで圧着することにより積層し、厚み11.12mm、幅15mmの防水パッキンを得た。
【0067】
[比較例1]
上記の両面に粘着材を備える不織布を、両面に粘着材を備える薄葉紙(恵比寿化成株式会社製 製品名「751EVT」)に変更した以外には、同様にして積層し、厚み11.12mm、幅15mmの防水テープを得た。
【0068】
(2)防水パッキンの評価
(2-1)U字止水性試験(防水性)
図12A及び12Bのように、寸法320mm×180mmのアクリル板20上の略中央部に、上記(1)で作製した防水パッキン1をU字状にして配置した後、同じ寸法のアクリル板20を防水パッキン1上に載置して挟み込んだ。アクリル板20の四隅にそれぞれ固定具21をスペーサー23を介して挿通し、圧縮条件25%及び50%で防水パッキン1を固定させた。防水パッキン1のU字状の部分に水100mmを注ぎ、温度約15℃、湿度約45%RHで、24時間静置させた後、防水パッキン1からの漏水の有無を確認した。
【0069】
この結果、実施例1においては、防水パッキンからの漏水は認められなかった。これに対して、比較例1においては、両面に粘着材を備える薄葉紙と粘着層との間から水が滲み出ており、漏水が認められた。したがって、実施例1の防水パッキンは、高い防水性を有することが示唆される。
【0070】
(2-2)接着性
屋根材(日鉄住金鋼板株式会社製 製品名「イソダッハR」)の山部及び平坦部に沿わせるように、防水パッキン(の粘着層)を貼付け、時間の経過による屋根材からの剥離の有無を観察した。
【0071】
貼付け完了後、63時間経過時において、実施例1及び比較例1の各防水パッキンと、屋根材の山部及び平坦部との接着状態を維持しており、剥離は認められなかった。したがって、実施例1の防水テープは、比較例1と同等の高い接着性を有することが示唆される。
【0072】
(3)隣接する屋根材間に防水パッキンを介在させた屋根の試験体の作製
山部及び平坦部を交互に有する、4枚の屋根材(日鉄住金鋼板株式会社製 製品名「イソダッハR」)を用意し、第一の水下側屋根材601と第二の水下側屋根材602とを嵌合した屋根材の接合部に上記(1)で作製した防水パッキンを配設した後、第一の水上側屋根材501の接続部を第一の水下側屋根材601の水上側に重ね合わせ、更に第二の水上側屋根材502の接続部を第一の水上側屋根材501に嵌合し重ね合わせてから、ドリルビス34により所定の位置で固定させた。これにより、寸法600mm×1000mmの試験体を作製した。なお、この屋根の試験体の詳細な構造は、既に説明した
図10に示す構造と同様である。
【0073】
(4)屋根の試験体における止水性試験(防水性)
(3)で作製した屋根の試験体を、
図13に示すように、所定の間隔に置いた鉄骨枠32上に載置した後、厚み約5mm×寸法600mm×高さ500mmのアクリル板30、及び厚み約5mm×寸法1000mm×高さ500mmのアクリル板31を各2枚ずつ用意し、鉄骨材32上に載置した屋根の試験体の4辺それぞれを、アクリル板30,31で挟み込み、
図13Aに示すような水槽を作製した。なお、水槽内面における屋根の試験体とアクリル板30,31との隙間にはシーリング材33を挟み込んで隙間を埋めている。この屋根の試験体の止水性の評価は以下のように行った。
【0074】
まず、この水槽の中に水深が30mmとなるように水を注入し、24時間静置させた直後に、
図14Aにおいて屋根材の接続部分における防水パッキン1の下方における漏水の有無を確認した。
【0075】
続いて、水深が40mmとなるように水を注入してから24時間静置させた後、
図14Aにおいて屋根材の接続部分の防水パッキン1の下方での漏水の有無を確認した。続いて、同様に、水深が60mmとなるように水を注入してから24時間静置させた後、
図14Aにおいて屋根材の接続部分の防水パッキン1の下方での漏水の有無を確認した。
【0076】
さらに、続いて、水深が100mmとなるように水を注入してから144時間静置させた後、
図14Aにおいて屋根材の接続部分の防水パッキン1の下方での漏水の有無を確認した。
【0077】
なお、
図13及び14に示す屋根材は、それぞれ
図10における第一の水下側屋根材601、第二の水下側屋根材602、第一の水上側屋根材501、及び第二の水上側屋根材502に対応するものであるが、
図13及び14において屋根材の詳細な内部の構造については省略している。
【0078】
その結果、比較例1では、水深40mm以上の試験での防水性が低下することが確認されたのに対して、実施例1では、いずれの水深、保持時間においても、漏水は認められなかった。そのため、実施例1の屋根構造の接続部分は、比較例1の屋根構造の接続部分に比べて、十分に高い密着性が維持され、優れた防水性が確保されることがわかった。
【0079】
以上のように、この防水パッキンによれば、防水パッキンの伸張が抑制され、部材からの剥離を抑制することができるため、屋根材の形状に追随させながら、配設する場合にも、高い密着性を確保でき、優れた防水性を有する屋根の接続構造とすることが可能である。