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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168080
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】歯列矯正具の提供方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/08 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A61C7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142030
(22)【出願日】2022-09-07
(62)【分割の表示】P 2019216619の分割
【原出願日】2019-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】514306629
【氏名又は名称】株式会社DSi
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩志
(57)【要約】
【課題】精密に、高自由度かつ高効率で歯列矯正を行うことが可能な歯列矯正具の提供方
法を提供する。
【解決手段】歯列矯正具の提供方法は、口腔内形状と、矯正対象歯に接着すべき突起片1
の形状及び接着位置と、に基づいて、補助マウスピース2の3次元データ及び矯正用マウ
スピース3の3次元データを作成するステップと、前記補助マウスピース2の3次元デー
タに基づいて、前記突起片1に対応する凹部21を有する前記補助マウスピース2を作成
するステップと、前記矯正用マウスピース3の3次元データに基づいて、前記突起片1と
接触する押圧部32を有する前記矯正用マウスピース3を作成するステップと、を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内形状と、矯正対象歯に接着すべき突起片の形状及び接着位置と、に基づいて、補
助マウスピースの3次元データ及び矯正用マウスピースの3次元データを作成するステッ
プと、
前記補助マウスピースの3次元データに基づいて、前記突起片に対応する凹部を有する
前記補助マウスピースを作成するステップと、
前記矯正用マウスピースの3次元データに基づいて、前記突起片と接触する押圧部を有
する前記矯正用マウスピースを作成するステップと、を含む
歯列矯正具の提供方法。
【請求項2】
口腔内形状と、矯正対象歯に接着すべき突起片の形状及び接着位置と、に基づいて、前
記突起片に対応する凹部を有する補助マウスピースを作成するステップと、
前記口腔内形状と、前記矯正対象歯に接着すべき前記突起片の形状及び接着位置と、に
基づいて、前記突起片と接触する押圧部を有する矯正用マウスピースを作成するステップ
と、を含む
歯列矯正具の提供方法。
【請求項3】
矯正対象歯に接着すべき突起片に対応する凹部を有する補助マウスピース。
【請求項4】
矯正対象歯に接着された突起片と接触して、前記矯正対象歯にかかる力を発生させる押
圧部を有する矯正用マウスピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯列矯正具の提供方法に関し、特にマウスピースを用いた歯列矯正を精密に
、高自由度かつ高効率で実施する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりマウスピース型の歯列矯正具が提供されている。マウスピースは、歯列の全部
または一部に被せるように装着される。このとき、一部の歯には予め意図された方向に圧
迫力が加わる。マウスピースをある程度の期間にわたり装着することで、歯の位置は徐々
に調整される。通常、歯科医師が複数のステップからなる一連の矯正計画を策定し、サプ
ライヤは計画に従って各プロセスで使用されるマウスピースを作製する。患者はステップ
ごとにマウスピースを次々に交換し、歯列を徐々に正しい位置へ調整していく。
【0003】
マウスピースの作成過程はおおむね次のとおりである。歯科医師は、患者の口腔内スキ
ャンデータや歯科模型を取得するとともに、矯正計画を作成する。サプライヤは、口腔内
スキャンデータ又は歯科模型の3次元データと、矯正計画とに従って、矯正計画の各ステ
ップで使用するマウスピースの3次元CADデータをそれぞれ作成する。3次元CADデ
ータに基づき、例えば光硬化性樹脂を使った光造形方式の3Dプリンタ等を使用してマウ
スピースが作製される。
【0004】
マウスピースを用いた歯列矯正においては、矯正対象となる歯に効率良く矯正力を付与
することが難しいという課題がある。この点、特許文献1には、矯正しようとする歯のス
ポットにおいてはマウスピースの厚みを変化させることで、歯にかかる力の大きさや方向
を自由に調整できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-94245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のマウスピースは、設計に特別なノウハウが必要である
とうい問題がある。また、材料の厚みを局所的に変化させることで得られる、歯にかかる
力の大きさや方向の調整幅には限界があり、矯正計画もこの限界を考慮して策定する必要
がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、精密に、高自由度
かつ高効率で歯列矯正を行うことが可能な歯列矯正具の提供方法を提供することを目的と
する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態に係る歯列矯正具の提供方法は、口腔内形状と、矯正対象歯に接
着すべき突起片の形状及び接着位置と、に基づいて、補助マウスピースの3次元データ及
び矯正用マウスピースの3次元データを作成するステップと、前記補助マウスピースの3
次元データに基づいて、前記突起片に対応する凹部を有する前記補助マウスピースを作成
するステップと、前記矯正用マウスピースの3次元データに基づいて、前記突起片と接触
する押圧部を有する前記矯正用マウスピースを作成するステップと、を含む。
【0009】
本発明の一実施の形態に係る歯列矯正具の提供方法は、口腔内形状と、矯正対象歯に接
着すべき突起片の形状及び接着位置と、に基づいて、前記突起片に対応する凹部を有する
補助マウスピースを作成するステップと、前記口腔内形状と、前記矯正対象歯に接着すべ
き前記突起片の形状及び接着位置と、に基づいて、前記突起片と接触する押圧部を有する
矯正用マウスピースを作成するステップと、を含む。
【0010】
本発明の一実施の形態に係る補助マウスピースは、矯正対象歯に接着すべき突起片に対
応する凹部を有する。
【0011】
本発明の一実施の形態に係る矯正用マウスピースは、矯正対象歯に接着された突起片と
接触して、前記矯正対象歯にかかる力を発生させる押圧部を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、精密に、高自由度かつ高効率で歯列矯正を行うことが可能な歯列矯正具
の提供方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】対象歯に突起片1を接着するプロセスを示す模式図である。
図2】突起片1の上から矯正用マウスピース3を装着するプロセスを示す模式図である。
図3】矯正用マウスピース3の他の形態を示す図である。
図4】矯正用マウスピース3の他の形態を示す図である。
図5】突起片1の一例を示す斜視図である。
図6】突起片1の一例を示す斜視図である。
図7】補助マウスピース2の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明
する。
【0015】
図1及び図2は、本発明にかかる歯列矯正具を使用した歯列矯正プロセスを説明するた
めの模式図である。歯列矯正は、大きく2つのプロセスからなる。
(1)矯正対象の歯(以下、単に対象歯という)に突起片1を接着するプロセス
(2)突起片1の上から矯正用マウスピース3を装着するプロセス
【0016】
まず、図1を用いて、(1)矯正対象の歯(以下、単に対象歯という)に突起片1を接
着するプロセスについて説明する。
【0017】
図1(a)は、矯正前の対象歯を横方向から見た断面図である。図の右側が対象歯の外
側、左側が内側にあたる。
【0018】
本プロセスでは、まず対象歯の表面に突起片1を接着する。図5及び図6に突起片1の
外観を示す。図5に示すように、本実施の形態における突起片1は、半球状の突起11と
基部13を有する。図6に示すように、基部13の裏側は接着面131となっており、接
着剤が塗布されている。接着面131を対象歯の表面に密着させることにより、突起片1
が対象歯に接着する。
【0019】
図1(b)は、補助マウスピース2を歯列に装着する前の状態を示す図である。また図
7に、この状態の斜視図を示す。補助マウスピース2は、突起片1を対象歯に接着する目
的で使用されるマウスピースである。補助マウスピース2の内面形状は、矯正前の歯列に
フィットするように形成される。補助マウスピース2の一部には、突起片1がちょうど納
まる形状の凹部21が形成される。凹部21の内部には、接着面131が対象歯表面に対
抗するように突起片1がセットされる。このように、突起片1は補助マウスピース2にセ
ットされた状態で患者に提供される。
【0020】
図1(c)は、補助マウスピース2を歯列に装着した状態を示す図である。この状態に
おいて、突起片1の接着面131が対象歯表面に密着し、突起片1は対象歯の所定の位置
に接着する。
【0021】
図1(d)は、補助マウスピース2を歯列から取り外した状態を示す図である。突起片
1は対象歯表面に接着しているため、取り外しの際、補助マウスピース2は突起片1から
離脱する。
【0022】
補助マウスピース2の材料は、歯列への装着や突起片1の離脱がスムーズかつ確実にで
きるよう、適度な剛性及び弾性を有するものであることが好ましい。例えば、生体適合性
のある透明樹脂等、例えばレジンを用いることができる。補助マウスピース2の形状は、
突起片1を対象歯の所定位置に位置決めできる程度に対象歯周辺にフィットするようなも
のであれば任意である。例えば、歯列全体を覆うものであっても良く、歯列の一部、ある
いは歯列の表面又は裏面のみを覆うものであっても良い。
【0023】
補助マウスピース2の典型的な作製方法は次のとおりである。まず、口腔内の形状を示
すデータに基づいて、補助マウスピース2の基となる3次元CADデータを作成する。口
腔内の形状を示すデータは、例えば口腔内の3次元スキャンデータ、CTデータ、レント
ゲンデータ、及び歯科模型の3次元スキャンデータ等を含む。次に、使用予定のの形状及
び対象歯への接着予定位置に基づいて、凹部21を備えた補助マウスピース2の3次元C
ADデータを作成する。最後に、作成した3次元CADデータを3Dプリンタに転送し、
補助マウスピース2を出力する。
【0024】
突起片1の材料についても、生体適合性のある透明樹脂等を用いることができる。突起
片1は、上述の半球状の突起11に限らず、方形など任意の形状の突起11を有していて
も良い。接着面131の形状も矩形に限定されず、適宜変更されて良い。
【0025】
次に、図2を用いて、(2)突起片1の上から矯正用マウスピース3を装着するプロセ
スについて説明する。
【0026】
図2(a)は、矯正用マウスピース3を歯列に装着する前の状態を示す図である。対象
歯には既に突起片1が接着されている。矯正用マウスピース3は、対象歯に所定の力をか
けて矯正するためのマウスピースである。矯正用マウスピース3の内面形状は、従来の矯
正用マウスピースのように対象歯に何らかの矯正力を与えるように形成されていても良く
、矯正力は発生させずに現在の歯列にフィットするように形成されていても良い。矯正用
マウスピース3の一部には、突起片1に対応する凹部31が形成される。凹部31には押
圧部32が設けられている。本実施の形態では凸状に形成された押圧部32を複数設けて
いるが(押圧部32aおよび押圧部32b)、押圧部32の形状や数は任意である。すな
わち、矯正用マウスピース3の一部が突起11と接触するように形成されていれば良く、
その接触点が押圧部32となる。
【0027】
図2(b)は、矯正用マウスピース3を歯列に装着した状態を示す図である。押圧部3
2aおよび押圧部32bが突起片1の突起11と接触することで、矯正力M(M1および
M2)が発生し、対象歯を矯正する。
【0028】
矯正力Mの方向および大きさは、本実施の形態のような凸状の押圧部32を設ける場合
であれば、押圧部32の位置および大きさを変えることで容易に調整可能である。また、
凹部31の厚みや形状によっても矯正力Mを調整できる。
【0029】
図3は、矯正用マウスピース3の他の形態を示す図である。この例では、突起片1の少
なくとも一部を覆うように凹部31が形成され、突起11と凹部31の接触点(または接
触面)が押圧部32として機能し、矯正力Mを発生させている。
【0030】
図4は、矯正用マウスピース3の他の形態を示す図である。この例では、凹部31の内
部が、1以上の接触点(または接触面)において突起11と接触し、1以上の押圧部32
を形成している。図4の例では2か所の押圧部32が形成されて矯正力M1、M2を発生
させている。
【0031】
矯正用マウスピース3の典型的な作製方法は次のとおりである。まず、口腔内の形状を
示すデータに基づいて、矯正用マウスピース3の基となる3次元CADデータを作成する
。口腔内の形状を示すデータは、例えば口腔内の3次元スキャンデータ、CTデータ、レ
ントゲンデータ、及び歯科模型の3次元スキャンデータ等を含む。次に、突起片1の接着
位置及び形状に基づいて、凹部31及び押圧部32を備えた矯正用マウスピース3の3次
元CADデータを作成する。最後に、作成した3次元CADデータを3Dプリンタに転送
し、矯正用マウスピース3を出力する。
【0032】
矯正用マウスピース3の材料は、生体適合性のある透明樹脂等、例えばレジンを用いる
ことができる。少なくとも凹部31及び周辺において材料の厚みを調整することにより、
矯正力を調整することができる。材料の厚みを増せば、突起片1を介して対象歯に与えう
る矯正力が大きくなるため、対象歯をより大きく動かすことができる。
【0033】
本実施の形態によれば、対象歯に接着された突起片1が、矯正用マウスピース3の押圧
部32と接触することにより、対象歯に対し矯正力Mをかけることができる。矯正力Mは
、突起片1の接着位置や、押圧部32の形成位置を調整することにより、精密かつ柔軟に
設計することが可能である。これにより、従来の矯正用マウスピースでは実現し得なかっ
た精密に、高自由度かつ高効率で歯列矯正を行うことができる。
【0034】
例えば、従来のマウスピース矯正では、図2(b)及び図4のM1のような、咬合面側
に向かう矯正力を発生させることは困難又は不可能であった。このような矯正を行うため
には、ワイヤー矯正を採用する必要があった。しかしながら、本実施の形態によれば、マ
ウスピース矯正においても咬合面側への矯正力を発生させることができる。同様に、本実
施の形態では、従来のマウスピース矯正では困難又は不可能であった、歯軸をほぼ中心と
するモーメントを対象歯に与えることもできる。これにより、対象歯を回転させる矯正が
可能である。
【0035】
また、本実施の形態によれば、矯正用マウスピース3は対象歯に効率的に矯正力を伝え
ることができる。そのため、従来の矯正用マウスピースよりも高い矯正力を持たせること
ができる。又は、従来と同等の矯正力をより薄い材料で実現することができる。
【0036】
また、本実施の形態によれば、仮に突起片1が対象歯から離脱してしまった場合でも、
補助マウスピース2の最新の設計データがあれば、補助マウスピース2及び突起片1を再
提供することが容易である。これにより、全く同じ位置に再度突起片1を設置することが
できる。
【0037】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨を損なわない
限りにおいて任意に変更されて良い。例えば、突起片1の形状、凹部21又は31の形状
、突起片1と凹部31との接触位置及び接触部の形状、及び各部材の材料等は、矯正の目
的等に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 突起片
11 突起
13 基部
131 接着面
2 補助マウスピース
21 凹部
3 矯正用マウスピース
31 凹部
32(32a,32b) 押圧部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7