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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168098
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6554 20140101AFI20221027BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20221027BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20221027BHJP
【FI】
H01M10/6554
H01M10/617
H01M10/625
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142590
(22)【出願日】2022-09-07
(62)【分割の表示】P 2021070680の分割
【原出願日】2017-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】織田 将成
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏文
(72)【発明者】
【氏名】牧野 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 航
(72)【発明者】
【氏名】西森 独志
(57)【要約】
【課題】電池群間の温度差を小さくした電池パックを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に記載の電池パックは、電池缶側面と電池缶側面とつながる電池缶底面を有する蓄電池を複数個電池缶側面を対向させて積層させた第一の電池群と、電池缶側面と電池缶側面とつながる電池缶底面を有する蓄電池を複数個電池缶側面を対向させて積層させた第二の電池群と、第一の電池群及び第二の電池群を収納する筐体を備え、第一の電池群と第二の電池群とは互いに対向面を同士が直接または間接的に熱的に接続されることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池缶側面と前記電池缶側面とつながる電池缶底面を有する蓄電池を、複数個前記電池缶側面を対向させて積層させた第一の電池群と、
電池缶側面と前記電池缶側面とつながる電池缶底面を有する蓄電池を、複数個前記電池缶側面を対向させて積層させた第二の電池群と、
前記第一の電池群及び第二の電池群を収納する筐体を備えた電池パックにおいて、
前記第一の電池群と前記第二の電池群とは互いに対向面を同士が直接または間接的に熱的に接続されることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックにおいて、
前記第一の電池群と前記第二の電池群との間には第一の熱伝達部材が配置され、
前記熱伝達部材は、前記第一の電池群と前記第二の電池群とに互いに密着されることを特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項1または2に記載のいずれかに記載の電池パックにおいて、
当該電池パックは、第二の熱伝達部材と、第三の熱伝達部材を有し、
前記第一の電池群は前記第一の熱伝達部材と前記第二の熱伝達部材に挟持され、
前記第二の電池群は、前記第一の熱伝達部材と前記第三の熱伝達部材に挟持され、
前記第二の熱伝達部材及び前記第三の熱伝達部材は、前記第一の熱伝達部材よりも厚さが厚いことを特徴とする電池パック。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電池パックにおいて、
当該電池パックは、第二の熱伝達部材と、第三の熱伝達部材を有し、
前記第一の電池群は前記第一の熱伝達部材と前記第二の熱伝達部材に挟持され、
前記第二の電池群は、前記第一の熱伝達部材と前記第三の熱伝達部材に挟持され、
前記前記第一の熱伝達部材は、第二の熱伝達部材及び前記第三の熱伝達部材よりも厚さが薄いことを特徴とする電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境規制を背景に車載用二次電池への需要が高まっている。この中で、リチウムイオン二次電池は一般に、鉛電池やニッケル水素電池などに比べて放電電位が高いため、小型・高エネルギー密度化が可能であるため有望視されている。本格適用に向けてリチウムイオン二次電池に求められる点には例えば、更なる高エネルギー密度化、高出力密度化、長寿命化等があげられる。電池を高出力化するためには高電位化とともに、例えば、大電流を電池から入・出力させる事が有効である。しかし大電流を電池から入・出力させる場合、電池の内部抵抗に由来する発熱が電池内部で生じる。発生した熱を十分に電池から取り除く事ができなかった場合、電池温度が上昇する。リチウムイオン電池の電池容量や内部抵抗等の電池特性は、電池温度によって劣化傾向が異なり、特に電池温度が高ければ高いほど電池特性が低下する事が多い。そこで、電池の放熱性能を向上させる技術開発が必要となっている。
【0003】
複数のリチウムイオン単電池(以下、単電池と呼ぶ)が組み合わされ、電池群として用いられる場合(例えば、電池モジュール、電池パックとして使用する場合)、電池群中の単電池間の温度差を小さくする事が望まれる。これは、単電池間での温度差が大きい場合、単電池間で劣化の差が生じやすいためである。電池群の特性は、電池群に含まれる単電
池の中で最も劣化した電池の特性に律速される傾向があるため、特定の電池が劣化する構造をさけた電池群の設計が必要である。
【0004】
そこで、複数の単電池が組み合わされて形成された電池群において、単電池間の温度差を小さくする技術が開発されている。具体的には特許文献1には単電池を収容した電槽が幅の狭い短側面と幅の広い長側面とからなる直方体に形成されてなり、この電槽の前記短側面間で隣接させて複数の単電池を連結して所要電力容量の集合電池に形成した蓄電池が記載されている。
【0005】
一方で大電流を電池から入・出力させる場合、電池に接続するケーブルの断面積も大きくする必要がある。ケーブルに用いられる部材としては銅に代表される金属が用いられているが、金属は一般に熱伝導率が高いために放熱性能が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-164186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術においては、それぞれの単電池の電槽の長側面に複数のリブが形成されている。そして、このリブ間に空気等を強制流通させることにより、単電池の冷却が行われている。このような構成では、冷却効率が低下した場合(例えば強制流通させる空気の流量が小さい場合や、入出力電流が大きく単電池の発熱量が大きい場合)、構成される電池群内の電池温度に分布が生じ、特に電池群の長側面の中心付近に配置された単電池の電池温度が高く、劣化が進む恐れがある。本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、電池群間の温度差が小さい電池パックを提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に記載の電池パックは、電池缶側面と電池缶側面とつながる電池缶底面を有する蓄電池を複数個電池缶側面を対向させて積層させた第一の電池群と、電池缶側面と電池缶側面とつながる電池缶底面を有する蓄電池を複数個電池缶側面を対向させて積層させた第二の電池群と、第一の電池群及び第二の電池群を収納する筐体を備え、第一の電池群と第二の電池群とは互いに対向面を同士が直接または間接的に熱的に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電池群間の温度差を小さくした電池パックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における電池群の具体的な構成の一例を説明するための図。
図2】実施例2における電池群の具体的な構成の一例を説明するための図。
図3】実施例5における電池群の具体的な構成の一例を説明するための図。
図4】実施例6における電池群の具体的な構成の一例を説明するための図。
図5】実施例7における電池群の具体的な構成の一例を説明するための図。
図6】比較例1における電池群の具体的な構成の一例を説明するための図。
図7】比較例2における電池群の具体的な構成の一例を説明するための図。
図8】実施例1,2の構成と従来構成との各単電池温度の環境温度からの温度上昇を、電池群の中での最低温度からの比率で示した温度上昇比率図。
図9】実施例3,4の構成と従来構成との各単電池温度の環境温度からの温度上昇を、電池群の中での最低温度からの比率で示した温度上昇比率図。
図10】実施例5,6の構成と従来構成との各単電池温度の環境温度からの温度上昇を、電池群の中での最低温度からの比率で示した温度上昇比率図。
図11】実施例7の構成と従来構成との各単電池温度の環境温度からの温度上昇を、電池群の中での最低温度からの比率で示した温度上昇比率図。
図12図2の電池パックを上面から見た図。
図13図12の一つ目の変形例。
図14図12の二つ目の変形例。
図15】本発明の二次電池の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態について説明する。ただし、本実施形態は以下の内容に何ら制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施可能である。
【0012】
本実施形態について詳細に説明する。本実施形態における二次電池には、リチウムイオン二次電池を用いたが、本構成を他の種類の蓄電池に対しても適用できる。またリチウムイオン二次電池の構成部材はどのようなものであっても効果が得られる。つまり本発明では正極としてAl集電箔と層状構造を持つ正極材などからなる電極と、負極としてCu集電箔と炭素材料からなる電極を用いているが、その他の構成でも良い。例えば実施例3,4にも記載のとおり、負極にAl箔を用いた場合においても放熱性を向上可能である。冷却環境は例示でありその他の冷媒を用いた場合にも適用できる。またリチウムイオン電池の形状として本実施例では角形電池を用いたが、その他の形状として知られる例えばラミネート型、円筒型等電池であっても効果が得られる。
【0013】
単電池を電池群とする際には単電池同士を直列あるいは並列接続する。この際、安全性を担保するため、単電池の周囲に対し、例えば実施例7に示すように、電池間に絶縁を確保できる部材を導入してもよい。前記部材の形状は自由であり、素材も自由に選択することができるが、好ましくは熱伝達部材が含まれると良い。単電池同士を直列あるいは並列接続する場合、用いる配線は特に限定されないが、例えばバスバーが挙げられる。直列あるいは並列接続の形式がどの様であっても、本発明にかかる電池配置および外部端子の構成を用いれば効果が現れる。例えば、2並列にした電池群を6直列にしたような電池群であっても本発明における効果が得られる。また電池群は、単電池同士を電気的に直列あるいは並列接続することに加え、固定用の治具を用いて単電池同士を物理的に拘束することが好ましい。ただし拘束の方法には本発明は限定されない。例えば、二つの電池群を固定用の治具一セットを用いて固縛した場合でも、固縛用の治具2セットを用いて固縛した場合でも効果が表れた。
【0014】
本発明では上述する手段で接続されてなる第一の電池群と第二の電池群を基本構成として電池パックを構成するが、電池パックにはこれらに加えてさらに、電池の制御装置(例えば、Battery Management System;BMSなどがあげられる)や、安全機構(例えばヒューズなど)を具備しても良く、これらを前記電池群中の配線に接続しても本発明における効果が得られる。
【0015】
筐体底面と電池群同士の接触方法は特に限定されず、例えば接着剤などによる接着や、ボルトやナットを用いて固定器具を介しての接続でも本発明における効果はあらわれる。筐体の形状は本実施形態においては直方体を例示するが、その形状は特に限定されない。また本発明における効果は電池パックへの電流印加条件や冷却条件に限定されない。
【0016】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。図1は本発明の電池パック100の分解斜視図である。なお、以降の説明で上下左右前後という場合には
、各図面の左下に記載の方向に従うものとする。
【0017】
電池パック100は、第一の電池群10Aと第二の電池群10Bと、第一の電池群10A及び第二の電池群10Bを収納する筐体5(5a、5b)からなる。この筐体5は、ケース5aとケース開口を塞ぐ蓋5bからなる。なお、本実施形態では底面5bを別部材としたが、ケース5aに底面を設けて上面に開口を備える構造として、上面側に蓋5bを配置する構造としてもよい。
【0018】
図15は本発明で使用される蓄電池1を示す図である。蓄電池1は一対の幅広面1a、一対の幅狭面1b、底面1c、蓋1dからなる。蓋1dには正極外部端子2a及び負極外部端子2bが設けられる。
【0019】
再び図1に戻って、第一の電池群10A、第二の電池群10Bをそれぞれ説明する。第一の電池群10Aは蓄電池1の幅広面1aを互いに対向させて複数個(本実施形態では6個)積層させたものである。第二の電池群10Bについても第一の電池群10A同様、蓄電池の幅広面を対向させて積層した構造となっている。
【0020】
第一の電池群10Aを構成する蓄電池1は、バスバー2で互いに直列に接続されている。また、第二の電池群10Bも同様に、蓄電池1がバスバー2で互いに直列に接続されている。また、第一の電池群10Aの底面5b側の蓄電池1と、第二の電池群10Bno底面5b側の蓄電池1は互いにバスバー2で接続される構造となっている。そして二つの電池群10A、10Bはそれぞれ電池パック100の上面中央側に電池パック100に収納されるその他の電子部品(たとえばジャンクションボックス等)と接続される外部端子3が配置されるようになっている。本発明ではいくつかの置き方(図1から図7)で電池パック100の温度変化を測定した。
【0021】
(実施例1)
まず実施例1について説明する。第一の電池群と第二の電池群を図1のように平置きにした後に、熱的に直接接続させた後、正極外部端子及び負極外部端子の先に直径95mmの銅製のHVケーブルを取り付けて電流を印加した。この際の電池からの発熱量は平均して3Wであった。
【0022】
また、冷却条件としては電池群下部にある筐体を介した底板にのみ5m/secの風速の空気をあてた。図1では筐体上面を示す。図8に本条件を電池パックに与えた後、ほぼ定常状態となった際の結果を示す。
【0023】
(実施例2)
続いて実施例2について説明する。実施例2は実施例1と比較して、第一の電池群と第二の電池群を平置きにした後に、平板状の熱伝導部材4を介している点が異なる。
【0024】
図2に本実施例の構造を示す。本実施例では上述の通り、第一の電池群10Aと第二の電池群10Bとの間に熱伝導部材4を配置した。この熱伝導部材の厚みは厚さ3mmと15mmの2つを用意し、それぞれを用いた場合の電池パック100の温度上昇を測定した。その結果は図8に示す。なお、冷却条件や電流印加条件は実施例1と同様である。
【0025】
(実施例3)
続いて実施例3について説明する。実施例3は実施例1と比較して、負極集電箔の材料を銅箔からアルミ集電箔を用いた点が異なる。
【0026】
具体的な電池パック100の構造は図1と同様の配置関係なので説明を省略する。電池
パック100の温度上昇の結果は図9に記載する。なお、冷却条件や電流印加条件は実施例1と同様である。
【0027】
(実施例4)
続いて実施例4について説明する。実施例4は実施例2と比較して、負極集電箔の材料を銅箔からアルミ集電箔を用いた点が異なる。具体的な電池パック100の構造は図2と同様の配置関係なので説明を省略する。本実施形態では、熱伝導部材4には厚さ15mmの部材を用いている。電池パック100の温度上昇の結果は図9に記載する。なお、冷却条件や電流印加条件は実施例1と同様である。
【0028】
(実施例5)
続いて実施例5について説明する。実施例5は実施例1と比較して、第一の電池群10Aと第二の電池群10Bを図3のように縦置きにして電池群を構成する蓄電池の幅狭側面を電池パック100の筐体5の底面に接触させた点が異なる。電池パック100の温度上昇の結果は図10に記載する。なお、冷却条件や電流印加条件は実施例1と同様である。
【0029】
(実施例6)
続いて実施例6について説明する。実施例6は実施例2と比較して、第一の電池群と第二の電池群を図4のように縦置きにし、電池群を構成する蓄電池の幅狭側面を電池パック100の筐体5の底面に接触させた点が異なる。また、本実施例では熱伝導部材4の厚みは実施例2と同様、厚さ3mmのものと厚さ15mmのものを2つ用意し、それぞれの測定結果を図10に示す。なお、冷却条件や電流印加条件は実施例1と同様である。
【0030】
(実施例7)
続いて実施例7について説明する。本実施例は実施例1から6とは異なり、蓄電池1をそれぞれ6直列にした第一の電池群と第二の電池群を互いに直列に接続し、蓄電池1の底面が電池パック100の筐体の底面5bと接触するように設けられた構造となっている。なお、本実施形態でも第一の電池群10Aと第二の電池群10Bの間には熱伝導部材4を配置する。熱伝導部材4に板厚15mmのアルミニウム平板を用いている。電池パック100の温度上昇の結果は図11に記載する。なお、冷却条件や電流印加条件は実施例1と同様である。
【0031】
(比較例1)
続いて比較例1について説明する。比較例1は実施例1から7とは異なり、電池群を2つに分けず、単一の電池群として積層させている点が異なる。
【0032】
図6は比較例1の電池パック100の図である。12個の電池1を直列につなげることで単一の電池群とし、それを単電池1の幅広面1aが筐体5の底面5bに接触するように配置している。電池パック100の温度上昇の結果は図8及び図9に記載する。なお、冷却条件や電流印加条件は実施例1と同様である。
【0033】
(比較例2)
続いて比較例2について説明する。比較例2は実施例1から7とは異なり、電池群を2つに分けず、単一の電池群として積層させており、さらに単電池1の幅狭面1bが筐体5の底面5bと接触している点が異なる。
【0034】
図7は比較例2の電池パック100の図である。12個の電池を直列につなげることで
単一の電池群とし、それを単電池1の幅狭面1bが筐体5の底面5bに接触するように配置している。電池パック100の温度上昇の結果は図10及び図11に記載する。なお、冷却条件や電流印加条件は実施例1と同様である。以下、実施例と比較例の結果に基づき本特許の効果を説明する。
【0035】
本実施例や比較例に示す条件を電池群に与えた結果、電池群の温度はほぼ定常状態に達した際に、環境温度に比べて電池温度が上昇した。図8~11は、電池群中の各単電池が、環境温度に対する上昇温度を、温度上昇が最も小さかった単電池の上昇温度との比率を電池毎に示した図である。図中のセルNoは、それぞれの実施例や比較例に対応する図に記載されているセルNoと対応している。この際、実施例における二つの電池群について、電池群同士で対向した場所に存在する単電池同士は、温度がほぼ同じであったために簡単のために記載を省略した。以下に各図の結果について詳細に説明する。
【0036】
図8には比較例1とおなじく平置きにした電池配置に対し本発明を適用した例である、実施例1~2の構成の温度上昇比率を示す。図から従来の構成である比較例では電池を積層させた中心部分であるセルNo.7の温度が最大となる事が分かる。これはセルNo.7付近の電池では、周囲の電池で発生した熱量が放熱されないため、自身の電池温度だけでなく周囲の電池温度も高くなっており、温度差がつかないために熱が流れにくくなり、結果として電池温度が高くなっているためである。一方で筐体底面に接しているセルNo1の単電池や外部端子が存在するセルNo12の電池は放熱経路が存在するために温度上昇が抑制されている。以上の結果から、セルNo1やセルNo12とセルNo7の上昇温度に差が表れたため、比較例1では同じ電池群の中でも温度上昇比率が大きく変化した。従って比較例1では単電池間の温度に差が表れやすい事が分かる。
【0037】
一方で、図8には同時に、本発明の実施例を示す。本発明では電池間の温度上昇率を同じ配置に存在する全セルにおいて比較することから比較例に比べ全セルにおいて温度上昇率が低減できると分かる。また実施例2に示すように電池群の間に熱伝達部材を配置することでさらにその効果が現れ、電池間の温度差が緩和されることが分かる。これは、外部端子を最も温度が高くなるセルNo6に配置することで効果的に放熱経路が確保できていることを意味している。加えて、実施例2ではAl板を導入することでも放熱経路が確保できるため有効に電池間の上昇温度差を低減できたことが分かる。
【0038】
図9には比較例1と同じく平置きにした電池構成に対して本発明を適用した例である、実施例3~4の構成の温度上昇率を示す。図から負極集電箔をAlとした場合にも図8で示したのと同様に、電池間の温度差が緩和される傾向があることが分かる。図9で起きた熱挙動は図8で起きたのと同じ現象に起因するものである。
【0039】
図10は比較例2と同じく縦置きにした電池構成に対して本発明を適用した例である、実施例5~6の構成を示す。図から、従来の構成である比較例では電池を積層させた中心部分であるセルNo.6の温度が最大となる事が分かる。ここで起きている温度上昇は図8に示した比較例1であらわれた挙動と同じ現象に起因するものである。
【0040】
更に図から、縦置きとした場合にも図8~9と同様に電池間の温度差が緩和されることが分かる。平置きではなく縦置きにした場合も、長側面の中心付近の温度が高くなる傾向がある。その部分に外部端子および外部端子を配置することで、図8,9と同様の効果が得られ、上昇温度差が低減できたと分かる。
【0041】
図11は比較例2と同じく縦置きにした電池構成に対して、実施例7に示した構成で本発明を適用した場合の温度差を比較する。図から、本発明でも温度差が緩和される傾向があることが分かる。実施例7でも、電池温度が最も高温となるセルNo6に外部端子を設置することで電池群外部に有効に放熱できたためであると分かる。
【0042】
本発明に記載の電池パックは、電池缶側面(1a、1b)と電池缶側面(1a、1b)とつながる電池缶底面(1c)を有する蓄電池(1)を複数個前記電池缶側面(1a、1b)を対向させて積層させた第一の電池群(10A)と、電池缶側面(1a、1b)と電池缶側面(1a、1b)とつながる電池缶底面(1c)を有する蓄電池(1)を複数個前記電池缶側面(1a、1b)を対向させて積層させた第二の電池群(10B)と、第一の電池群(10A)及び第二の電池群(10B)を収納する筐体(5)を備え、第一の電池群(10A)と第二の電池群(10B)とは互いに対向面を同士が直接または間接的に熱的に接続されることを特徴とする。このような構造にすることによって、電池群間の温度差を小さくした電池パックを提供することができる。
【0043】
また、本発明では二つの電池群の幅広面(1a)を筐体(5)の底面と対向させるような構造にした。このような構造にすることによって、冷却面積が大きくなり、幅狭面1bを筐体5と接触させるよりも冷却性能が向上する。
【0044】
また、本発明に記載の電池パックでは、電池1の幅広面1aを下にした場合、外部端子3を電池パックの中央側とすることによって、より熱が逃げにくい電池パックの中央側の冷却を、外部端子を介して行うことができる。そのため、より放熱性が向上し、電池群間の温度差を小さくした電池パックを提供することが可能となる。
【0045】
また、図12に示す通り、本発明に記載の電池パックでは、第一の電池群(10A)と前記第二の電池群(10B)との間には第一の熱伝達部材(6)が配置され、熱伝達部材(6)は、第一の電池群(10A)と第二の電池群(10B)とに互いに密着される。このような構造にすることによって、熱伝達部材により、より熱拡散を促し、電池群間の温度差を小さくした電池パックを提供することができる。なお、図12図2を上面から見た図である。
【0046】
また、本発明に記載の電池パックでは、図13に示す通り、第一の電池群10Aと第二の電池群10Bの両脇に第二の熱伝達部材61及び第三の熱伝達部材62を配置してもよい。この場合、第一の電池群10Aは熱伝達部材6と第二の熱伝達部材61で挟まれ、第二の電池群10Bは熱伝達部材6と第三の熱伝達部材10Bで挟まれることとなり、電池群10A及び10Bの両側でも放熱性が向上し、より電池群間の温度差を小さくした電池パックを提供することが可能となる。
【0047】
また、本発明に記載の電池パックでは、第二の熱伝達部材61と第三の熱伝達部材62が共に第一の熱伝達部材6よりも幅が大きなものを用いる構造となっている。このような構造にすることによって、筐体5と熱伝達部材61及び62をねじ等で止められるだけ大きな構造となり、筐体5と熱伝達部材61、62をよりしっかりと密着させることができる。そのため、電池1の発熱をより筐体5に伝達しやすくなり、冷却性能が向上した電池パックを提供することが可能となる。
【0048】
また、本発明に記載の電池パックでは、図14に示すように他の形態として、第一の熱伝達部材6が第二の熱伝達部材61及び第三の熱伝達部材62よりも厚みが厚くなっている。このような構造にすることによって、最も放熱性が悪くなる二つの電池群間において、より熱拡散が促進され、冷却性能が向上した電池パックを提供することが可能となる。なお、本発明においては、上述した電池1の幅広面1aを筐体5の底面と接触させるタイプの電池パックが、電池群間や単電池間に冷却風を流さないような自然冷却で使用した場合に非常に効果を発揮する。したがって、本発明は電池1を横置きにする構造に非常に適した発明となっている。また、本発明は、幅広面と幅狭面とからなる直方体に、夫々、形成されてなる複数の蓄電池を、前記幅広面を互いに対向させて積層させた電池群であって、第一の電池群と第二の電池群とを備え、前記第一の電池群と前記第二の電池群とを並べて、前記蓄電池の幅狭面が対向するように、筐体に収納させた電池パックであって、前記第一の電池群と前記第二の電池群との間には第一の熱伝達部材が配置され、前記第一の熱伝達部材は、前記第一の電池群と前記第二の電池群とに互いに密着され、前記第一の電池群と前記第二の電池群夫々の上面の蓄電池において、前記電池パックの中央側に、当該第一の電池群と当該第二の電池群夫々を前記筐体内の電子回路に接続する外部端子を設け、当該外部端子を介して放熱されるようにした電池パックであり、本発明は、さらにまた、この電池パックにおいて、第二の熱伝達部材と、第三の熱伝達部材を有し、前記第一の電池群は前記第一の熱伝達部材と前記第二の熱伝達部材に挟持され、前記第二の電池群は、前記第一の熱伝達部材と前記第三の熱伝達部材に挟持され、前記第二の熱伝達部材及び前記第三の熱伝達部材は、前記第一の熱伝達部材よりも厚さが厚いことを特徴とする電池パックであり、本発明は、また、さらに、前記第一の電池群は前記第一の熱伝達部材と前記第二の熱伝達部材に挟持され、前記第二の電池群は、前記第一の熱伝達部材と前記第三の熱伝達部材に挟持され、前記第一の熱伝達部材は、前記第二の熱伝達部材及び前記第三の熱伝達部材よりも厚さが薄いことを特徴とする電池パックである。
【0049】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 単電池
2 配線
3 外部端子
4 筐体の底面
5 筐体上面
6、61、62 熱伝達部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2022-10-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の幅広面と複数の幅狭面とを含み直方体に形成された蓄電池が前記幅広面同士を対向して並べられて複数の前記蓄電池が物理的に拘束された第一の電池群と第二の電池群とを筐体に収容させた電池パックであって、
前記幅狭面は、外部端子を有する第1の幅狭面と、前記第1の幅狭面に対向する第2の幅狭面と、前記第1の幅狭面と前記第2の幅狭面以外の第3の幅狭面と、を含み
前記第一の電池群と前記第二の電池群とは、熱伝達部を介して、前記第一の電池群の前記第3の幅狭面と、前記第二の電池群の前記第3の幅狭面とが相対し、前記筐体のケースに収容され、
前記ケースは蓋で塞がれている、
電池パック。
【請求項2】
一対の幅広面と複数の幅狭面とを含み直方体に形成された蓄電池が前記幅広面同士を対向して並べられて複数の前記蓄電池が物理的に拘束された第一の電池群と第二の電池群とを筐体に収容させた電池パックであって、
前記幅狭面は、外部端子を有する第1の幅狭面と、前記第1の幅狭面に対向する第2の幅狭面と、前記第1の幅狭面と前記第2の幅狭面以外の第3の幅狭面と、を含み、
前記第一の電池群と前記第二の電池群とは、前記第一の電池群の前記第3の幅狭面と、前記第二の電池群の前記第3の幅狭面とが相対し、前記筐体のケースに収容され、
前記ケースは蓋で塞がれており、
前記電池パックの中央側に、前記第一の電池群及び前記第二の電池群の夫々と電池外機器とを接続する端子を、前記外部端子とは別に設けた、
電池パック。
【請求項3】
前記第一の電池群と前記第二の電池群の夫々の前記蓄電池は隣接する蓄電池と接続部材により接続されている、
請求項1又は2記載の電池パック。
【請求項4】
熱伝達部を有し、
前記熱伝達部は前記第一の電池群及び前記第二の電池群から熱伝導される、
請求項2記載の電池パック。