(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168131
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】強化された安定性フィルタの完全性試験
(51)【国際特許分類】
G01N 15/08 20060101AFI20221027BHJP
G01M 3/00 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
G01N15/08 A
G01M3/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143234
(22)【出願日】2022-09-08
(62)【分割の表示】P 2020106603の分割
【原出願日】2016-09-12
(31)【優先権主張番号】62/257,830
(32)【優先日】2015-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】サルバトーレ・ギグリア
(72)【発明者】
【氏名】デービッド・ニィエム
(57)【要約】
【課題】比較的遅い透過ガス対の使用を可能にするが、過度の試験時間を必要とせず、試験中にフィルタが乾燥する危険性を最小限に抑える又は排除するフィルタの完全性試験方法の提供。
【解決手段】この課題は、多孔質材料の完全性試験の方法であって、試験される多孔質材料を準備し、前記多孔質材料は、第1表面と第2表面とを有し、前記多孔質材料を湿潤用液体で湿潤させ、前記湿潤用液体により前記湿潤用液体の飽和蒸気圧以下に加湿された少なくとも第1ガス及び第2ガスを含むガス流を準備し、前記加湿されたガス流は50~99%の湿度を有し、前記ガス流を前記多孔質材料の前記第1表面に導入し、前記第1ガス及び前記第2ガスを前記多孔質材料に通し、前記多孔質材料の前記第2表面を出る透過流における前記第1ガス及び前記第2ガスの少なくとも一方の濃度を測定し、及び前記測定された濃度を所定の濃度と比較することを含み、前記測定された濃度と前記所定の濃度の差異は、前記多孔質材料が不完全であることを示す方法によって解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料の完全性試験の方法であって、
ろ過に適した試験される多孔質材料を準備し、前記多孔質材料は、第1表面と第2表面とを有し、
前記多孔質材料を湿潤用液体で湿潤させ、
前記湿潤用液体により前記湿潤用液体の飽和蒸気圧以下に加湿された少なくとも第1ガス及び第2ガスを含むガス流を準備し、前記加湿されたガス流は50~99%の湿度を有し、
前記ガス流を前記多孔質材料の前記第1表面に導入し、
前記第1ガス及び前記第2ガスを前記多孔質材料に通し、
前記多孔質材料の前記第2表面を出る透過流における前記第1ガス及び前記第2ガスの少なくとも一方の濃度を測定し、及び
前記測定された濃度を所定の濃度と比較すること
を含み、
前記測定された濃度と前記所定の濃度の差異は、前記多孔質材料が不完全であることを示す方法。
【請求項2】
前記ガス流を約15psia~約100psiaの供給圧力で導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス流を約40psia~約70psiaの供給圧力で導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記完全性試験を約4℃~約40℃の温度で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記完全性試験を約22℃~約24℃の温度で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記湿潤用液体が前記ガス流において飽和蒸気圧にある、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1ガスが酸素であり、前記第2ガスが窒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1ガスが酸素であり、前記ガスの一方の前記濃度を酸素分析器で測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記湿潤用液体が水、イソプロピルアルコール又は水とイソプロピルアルコールとの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記多孔質材料が滅菌等級フィルタである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記多孔質材料が膜を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
フィルタの完全性試験方法であって、
ろ過に適した試験される複数の多孔質材料を準備し、前記多孔質材料のそれぞれは、第1表面と第2表面とを有し、
前記多孔質材料のそれぞれを湿潤用液体で湿潤させ、
前記湿潤用液体により前記湿潤用液体の飽和蒸気圧以下に加湿された少なくとも第1ガス及び第2ガスを含むガス流を準備し、前記加湿されたガス流は50~99%の湿度を有し、
前記ガス流を前記多孔質材料のそれぞれの前記第1表面のそれぞれに導入し、
前記第1ガス及び前記第2ガスを前記多孔質材料のそれぞれに通し、
前記多孔質材料のそれぞれの透過流における前記第1ガス及び前記第2ガスの少なくとも一方の濃度を連続的に又は選択的に測定し、
前記測定された濃度のそれぞれを所定の濃度と比較すること
を含み、
前記測定された濃度のそれぞれと前記所定の濃度との差異は、前記多孔質材料のそれぞれが不完全であることを示す方法。
【請求項13】
前記加湿されたガス流が約90~99%の湿度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1ガスが酸素であり、前記第2ガスが窒素である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ガス流を約15psia~約100psiaの供給圧力で導入する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ガス流を約40psia~約70psiaの供給圧力で導入する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
ろ過に適した多孔質材料の完全性試験用システムであって、
湿潤用液体により、前記湿潤用液体の飽和蒸気圧以下に加湿された少なくとも第1ガス及び第2ガスを含み、前記加湿されたガス流は90~99%の湿度が有するガス流源と、
前記湿潤用液体で湿潤された第1表面及び第2表面を有する多孔質材料を備え、前記ガス流源と連体流通するハウジングと、
前記多孔質材料の前記第2表面を出る透過流における前記第1ガス及び前記第2ガスの少なくとも一方の濃度を測定するための分析器と
を備えるシステム。
【請求項18】
前記第1ガスが酸素であり、前記第2ガスが窒素である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記分析器が酸素分析器である、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記湿潤用液体が水、イソプロピルアルコール又は水とイソプロピルアルコールとの混合物を含む、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2015年11月20日に出願された米国仮特許出願第62/257,830号の優先権を主張するものであり、その開示内容は、その全体において参照により本明細書において援用される。
【0002】
本発明の分野
本発明は、一般に、液体滅菌等級フィルタなどのフィルタの完全性試験方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
例えば、バイオテクノロジー、化学、電子工学、医薬、及び飲食産業の分野において、水性媒体の高純度ろ過には、高度の分離が可能なだけでなく、環境、被ろ過媒体、及び生じたろ液の汚染を防止するのに役に立つ高性能フィルタモジュールを使用することが必要である。このものは、バクテリアやウイルスなどの危険な場合が多い望ましくない有機体だけでなく、ダストや埃などの環境汚染物質が処理流れ及び最終製品に混入するのを防止するように設計されている。完全性試験は、ろ過に関与する多孔質材料の無菌性及び/又は保持能力が損なわれないことを確保するために、重要なプロセスろ過用途の基本要件である。例えば、FDAガイドラインでは、使用前及びろ過後にフィルタモジュールを完全性試験することが推奨されている。典型的には、この試験をまず蒸気滅菌後に実施して、フィルタが損傷を受けていないことを保証する;したがって、細心の注意を払ってフィルタ、すなわち、ろ液の無菌性が損なわれていないことを保証しなければならない。処理後に、フィルタの完全性試験をその場で再度実施して、使用中にフィルタが損傷を受けたかどうかを検出する。この情報を使用して、処理直後に潜在的な問題を作業者に警告し、迅速に是正措置を採ることができる。さらに、FDAガイドラインでは、完全性試験文書にはバッチ製品記録を含めることが要求される。
【0004】
粒子負荷試験、液体-液体ポロメトリ試験、拡散試験、バブルポイント試験、気体-液体拡散試験、及び、トレーサ成分を測定する拡散試験を含めて、多孔質材料の保持能力を損なう可能性のある大型の孔又は欠陥の存在を検出するために様々な完全性試験方法がある。粒子負荷試験などのこれらの試験のいくつかは破壊的であるため、使用前テストとして使用することはできない。気体-液体拡散試験は、これらの試験における固有のバックグラウンドノイズのため、小さな欠陥を検出するための感度が欠けていることが多い。液体-液体ポロメトリ及びバブルポイント試験は、適切な公称孔径の膜が設置されることを確保するのに有用であるが、少数の小さな欠陥を特定するための感度が欠けている。
【0005】
当該技術分野では、2成分ガス試験も知られており、この試験では、異なる透過性の2種のガスを湿潤フィルタの液体層に通過させる。この試験により、単一ガス拡散試験及び他の完全性試験と比較して、欠陥検出感度を改善させることが可能となる。フィルタの上流(入口)側で一定の組成を維持するために、膜の上流側の2成分ガス対の掃引流を使用する。入口ガスの圧力を上昇させることによって、フィルタの上流側と下流側との間の圧力差を確立させる。次いで、フィルタの下流(透過)側のガス(より速い透過ガスにおいて濃縮されている)の濃度を測定し、この測定値を完全なフィルタからの既知の期待値と比較する。期待値からの逸脱は、試験されたフィルタの欠陥を示す。
【0006】
2成分ガス試験は、典型的には、2成分ガス対としてのCO2及びC2F6と、湿潤用液体としての水とを使用する。CO2の使用は、CO2が水中への透過性が高く、湿潤フィルタを通る高い流量及び透過濃度の迅速な測定をもたらすという点で有利である。しかしながら、CO2は、特に、好ましいガス対C2F6との2成分ガス混合物という点で高価である。さらに、この2成分ガス対の使用は温室効果ガスの観点から望ましくない。透過物及び掃引ガスが放出される又は周囲空気への放出を防ぐために捕捉されなければならないからである。
【0007】
O2及びN2といった他の2成分ガス対も使用されている。この対は、これらのガスが空気中に存在し、低コストであり、環境に優しいという点で便利である。室温では、酸素は窒素の約2倍の速さで水に透過する。しかしながら、水への酸素の透過性は、二酸化炭素よりも約30倍遅く、CO2が2成分ガスの一つである場合と比較して、試験を完了するのに必要な時間が増加する。
【0008】
空気の低い透過流量は、フィルタの下流の容量と、ガス成分分析器までの容量と、該分析器を含む容量とをフラッシュするのに長い時間が必要であることを意味する。フラッシュは、試験の開始前に、下流容量に存在するガスと混合することによって測定組成が損なわれないようにするために必要である。長い試験時間は、それ自体に問題があるが、フィルタの上流側及び下流側の両方からの液体の蒸発のため、フィルタに含有される液体が乾燥しやすいという二次的な問題をも引き起こす。孔が乾燥した場合には、試験はもはや実施することができない。
【0009】
上記に照らして、比較的遅い透過ガス対の使用を可能にするが、過度の試験時間を必要とせず、試験中にフィルタが乾燥する危険性を最小限に抑える又は排除するフィルタの完全性試験方法に関する要望が存在する。
【発明の概要】
【0010】
概要
上記従来技術の問題は、本明細書に開示された実施形態によって対処され、その実施形態は、試験される材料に対して非破壊的である多孔質材料の完全性試験方法を含む。所定の実施形態では、この方法は、入口ガス流を加湿して、多孔質材料が乾燥するのを最小限に抑える又は防止することを含む。所定の実施形態では、入口ガス流は少なくとも2種のガスを含み、該ガスの一方は、多孔質材料を湿潤させるために使用される液体(例えば、水)への透過性が他方とは異なる。所定の実施形態では、少なくとも2種のガスは、酸素及び窒素を含む。所定の実施形態では、入口ガス流は空気である。所定の実施形態では、透過ガス流は、減圧などの駆動力を受けて、ガス流れを増加させ、試験時間を短縮する。いくつかの実施形態では、複数の多孔質材料を、例えば複数の多孔質材料を一緒にマニホールドすることによって、同時に完全性試験することができる。完全性試験は、多孔質材料の保持能力を損なう可能性のある過大な孔又は欠陥の存在を検出することができる。所定の実施形態では、多孔質材料は、滅菌等級フィルタである。
【0011】
いくつかの実施形態では、多孔質材料の完全性試験用システムが提供され、該システムは、湿潤用液体により該湿潤用液体の飽和蒸気圧又はその付近で加湿された少なくとも第1ガス及び第2ガスを含むガス流源と、湿潤用液体で湿潤された第1表面及び第2表面を有する多孔質材料を含み、ガス流源と流体連通するハウジングと、該ハウジングと流体連通する真空ポンプ等と、多孔質材料の第2表面を出る透過流における第1ガス及び第2ガスの少なくとも1つの濃度を測定するための分析器とを備える。
【0012】
所定の実施形態では、完全性試験は、迅速で、感度が高く、非破壊的で、安価で、環境に無害で、しかも実施が容易である。これにより、多孔質材料又は要素の完全性について信頼性の高い評価が得られると共に、非常に安定な完全性信号を維持し、低い透過性であるが非常に便利で低コストのガスを、感度の高い2成分ガス試験法と組み合わせて使用することが可能になる。
【0013】
本発明をさらに良く理解するために、参照により援用する添付の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、従来技術に係る完全性試験構成の概略図である。
【
図2】
図2は、従来技術に係る時間に対する酸素透過率のグラフである。
【
図3】
図3は、所定の実施形態に係る完全性試験構成の概略図である。
【
図4】
図4は、所定の実施形態に係る時間に対する酸素透過率のグラフである。
【
図5】
図5は、所定の実施形態に係る完全性試験構成の概略図である。
【
図6】
図6は、所定の実施形態に係る時間に対する酸素透過率のグラフである。
【
図7】
図7は、所定の実施形態に係る複数のフィルタの完全性試験構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
実施形態をさらに詳細に説明する前に、用語を定義する。
【0016】
本明細書で使用されるときに、単数形「a」、「an」及び「the」には、文脈上、他に明確に示されない限り、複数の指示物が含まれる。
【0017】
本明細書で使用されるときに、多孔質単層若しくは多孔質膜、多孔質多層膜又は複数の多孔質膜などの多孔質材料に言及する場合の用語「完全性」とは、欠陥のない多孔質材料を意味する。
【0018】
多孔質単層若しくは多孔質膜、多孔質多層膜及び複数の多孔質膜などの多孔質材料に言及する場合に本明細書において使用されるときに、用語「不完全性」とは、欠陥のある多孔質材料を意味する。多孔質層又は膜の欠陥における例としては、過大な孔、多層の要素を形成するように共に結合された複数の多孔質層又は膜間の不適切な結合(例えば、層間剥離又は分離)、及び多孔質層又は多孔質膜上の欠陥が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書で使用されるときに、用語「多孔質材料」としては、1種以上の多孔質膜、シート、ロッド、ディスク、チューブ、層、フィルタ、フィルタ要素、ろ過媒体、容器、シリンダ、カセット、カートリッジ、カラム、チップ、ビーズ、プレート、モノリス、中空繊維、及びそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。多孔質材料は、ひだ状、平坦状、螺旋状に巻かれたもの、及びそれらの組み合わせとすることができる。このものは、単層又は多層の膜装置であってもよい。膜は、対称又は非対称であることができる。多孔質材料は、入口及び出口を有することができるハウジングに収容できる。多孔質材料は、感染性生物及びウイルス並びに環境毒素及び汚染物質などの混入物を含めて、望ましくない物質のろ過のために使用できる。多孔質材料は任意の好適な材料から構成でき、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、例えばナイロン、セルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、フルオロカーボン、例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン-コ-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル))、ポリカーボネート、ポリエチレン、ガラス繊維、ポリカーボネート、セラミック、及び金属が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書で開示される実施形態は、多孔質単層材料、多層構造を有する多孔質材料、多孔質膜及びフィルタを含めた多孔質材料の完全性試験方法を含む。多孔質材料は、供給又は入口側と透過又は出口側とを備えるハウジング内にあることができる。所定の実施形態では、圧縮空気を介して利用可能な酸素及び窒素といった低コストの2成分ガス対などの複数のガスを入口ガスとして使用して試験を実施する。所定の実施形態では、多孔質材料を、水などの液体で湿潤させ(すなわち、材料内の孔に充填させる)、試験対象の湿潤多孔質材料の第1表面を加圧下で加湿ガスと接触させる。所定の実施形態では、ガスを加湿するために使用される液体は、多孔質材料を湿潤させるために使用される液体と同一である。多孔質材料の第2表面近くの(例えば、多孔質材料の透過流中の)少なくとも1種のガスの濃度を測定する。いくつかの実施形態では、測定された濃度を所定の濃度と比較して、多孔質材料が完全であるか不完全であるかを決定する。いくつかの実施形態では、所定の濃度は、完全多孔質材料又は装置から予想される濃度である。所定の実施形態では、透過流に真空を加えて、多孔質材料を含む装置の下流容量のフラッシュを加速させる。好適な真空レベルとしては、大気圧より低い任意の下流圧力が挙げられる。所定の実施形態では、約1psia~5psiaの間の下流圧力が好適である。
【0021】
各ガスの好適な量は特に限定されない。ガスは、多孔質材料を湿潤するために使用される液体を通して異なる透過速度を有していなければならない。ガス混合物における遅い透過ガスに対する速い透過ガスの比は、組成測定の容易さ、膜を通るガス流量、及び経済的理由などの多数の要因に影響を受ける。空気の場合、組成は周囲条件によって一定である。乾燥基準での空気組成は、O2が20.95%、N2が78.09%、Arが0.93%、CO2が0.04%、及び、微量の他のガスである。
【0022】
所定の濃度は、所与の温度及び圧力で、完全な(すなわち、欠陥のない)湿潤多孔質材料を通って拡散するように算出されたガスの濃度であってもよいし、所定の温度及び圧力で完全な湿潤多孔質材料を通って拡散されるガスの実際の濃度であってもよい。
【0023】
所定の実施形態では、多孔質材料を液体で飽和させることによって、多孔質材料を液体(「湿潤用液体」)で湿らせる。好適な液体としては、水、イソプロピルアルコール、及びイソプロピルアルコールと水との混合物が挙げられる。他の液体も使用することができるが、コスト及び/又は利便性のために理想的ではない場合がある。
【0024】
別の実施形態では、多孔質材料の完全性を評価するための装置又はシステムが提供され、該装置は、第1ガス源及び第2ガス源と、ガス入口圧力調整器と、加湿器と、多孔質材料試料と、ガス分析器とを備える。好適な加湿器としては、液体を気体に移すのを促進させる任意の装置が挙げられる。用語「湿度」とは、具体的には、気体(通常は空気)に含まれる水蒸気量をいうが、本明細書で使用するのに好適な加湿器は、これに限定される必要はなく、より一般的には、液体が飽和蒸気圧となるように液体の蒸発を促進する任意の装置が挙げられる。好適な分析器は、測定される成分に依存し、酸素濃度を測定するための酸素分析器、質量分析計、及びフーリエ変換赤外(FTIR)分光計が挙げられる。この装置は、好ましくは、多孔質材料試料の透過流に真空を加えるための真空ポンプなどをさらに備えてもよい。複数の多孔質材料を共にマニホールドする場合には、装置は、それぞれの透過流をガス分析器に連続的に向けるための好適なバルブを備えることができる。その代わりに又はそれに加えて、複数のガス分析器を使用することができる。
【0025】
完全性試験を実施するのに好適な温度は、約4℃~約40℃、好ましくは約22℃~24℃の間の範囲である。好適な供給圧力は、約15psia~約100psia、好ましくは約40~70psiaの範囲である。
【0026】
図1は、入口ガス流の加湿を含まない完全性試験を実施するための従来の実験構成を示す。このように、好適な供給源からの圧縮空気12を、ハウジングに収容されたフィルタ15の入口側又は上流側に導入する。圧力調整器13を使用して圧縮空気の圧力を調整し、圧力トランスデューサ14で測定する。図示するように、流量計16がフィルタの上流側の出口に連通している。酸素分析器17がフィルタ15の透過流出口と流体連通している。所定の実施形態では、酸素分析器17の上流に乾燥剤18を設けて、流体流が酸素分析器17に流入する前に流体流から水分を除去することができる。
【0027】
図2は、2つの水湿潤ウイルス膜フィルタ装置(イーエムディー・ミリポア・コーポレーションから市販されているMagnus 2.1)についての試験時間に対する透過側酸素濃度の図を示し、一方は完全なものであり、他方は膜層を貫通する穴をレーザ穿孔することによって生成された、制御された5μmの欠陥を含むものである。O
2は、N
2の約2倍の速度で水に透過するため、透過流は、O
2が大気空気中の約21%の値と比較して高濃度である。例えば、21%の酸素の空気供給に関して、透過液の酸素濃度は、
図2に示された条件では約31%になる。31%の酸素透過流への酸素の漏出は欠陥を示す。
【0028】
空気を入口成分として、50psigの供給圧力及び22~24℃の温度で使用した。透過圧力は0psigであり、掃引率(透過ガスの流量に対する保持(非透過)ガスの流量)は500であった。
図2に示すように、測定された濃度は、フィルタ15の下流側と酸素分析器17との間の容量において予め存在する大気空気が流出するため、初めは時間とともに上昇する。試験の約50~60分後に、欠陥のある装置を完全装置と区別することができる。欠陥のある装置は、入口空気(約21%O
2)が欠陥を通ってO
2高濃度透過流に漏出するため、より低い透過O
2濃度を示す。試験の継続により、最終的には、膜孔に含まれる液体が蒸発し、入口空気が透過流に漏出する。この漏出は、O
2透過濃度を低下させるところ、これは、真の欠陥により生じる漏出の影響と区別できない影響であり、偽陽性(欠陥として特定される完全装置)の試験結果につながる可能性がある。フィルタの最終的な乾燥により、フィルタの完全性を評価するための不確実な時間窓が残り、評価が早すぎる又は遅すぎる場合には不正確な結果をもたらす危険性がある。ウイルス膜フィルタのために一般に使用される完全性試験は、典型的には30分以内に完了することができるので、比較的長い試験時間も欠点であるとみなされる。
【0029】
図3は、所定の実施形態に係る試験構成を示す。多孔質材料の早すぎる乾燥を防ぐために、入口ガスを好適な加湿器19などで加湿する。図示した実施形態では、加湿器は水を収容する圧力ポットであるが、当業者であれば、液体がその飽和蒸気圧又はその付近にある状態となるように、液体が気体に移るのを促進することができる他の装置も、本明細書に開示された実施形態の範囲内にあることが分かるであろう。所定の実施形態では、湿度は、約50~100%の少し下(100%湿度には結露の危険性がある)の間である。いくつかの実施形態では、湿度は、約90~99%の間である。例えば100%付近の湿度レベルにまで多孔質材料に入る入口ガスを加湿することにより、多孔質材料における掃引流への水分蒸発用推進力が本質的に排除される。試験の条件は、
図3と同じであり、
図3からのデータを、比較のために
図4で繰り返す。
図4に示すように、加湿された入口空気は、実用上不確定の安定性の高い完全性試験信号を可能にする。これにより、完全装置と不完全装置との信頼の非常に高い差別化が可能になる。
【0030】
所定の実施形態では、下流容量のフラッシュを加速するために、
図5に示すように、多孔質材料の下流側に真空などの駆動力を加えることができる。したがって、所定の実施形態では、真空ポンプ25を、酸素分析器17の上流の透過流と流体連通した状態で配置する。真空ポンプ25の存在のため、透過流における好適な圧力は、約1~15psiaである。これよりも低い圧力では、同じ質量流量について速度が増加し、それによって、フラッシュ時間が短縮されるところ、これは、直接的に、試験時間を短縮する。
図6は、真空を透過流に加えると(透過圧力2psia)、大気圧での透過流と比較して、試験時間(欠陥のある装置を完全装置と区別できる時間)が大幅に短縮することを示す。試験時間は、できるだけ短いほうが好ましい。加湿された入口流は、真空浸透操作と同様に安定な信号を維持する。なお、多孔質材料にわたる圧力差を、大気及び真空アシスト(52psia供給圧力、2psia透過圧力)条件の両方について50psiに維持したため、膜にわたる拡散流量は、両方の条件設定についてほぼ同じであった。真空アシスト条件でのより高い圧力比(入口圧力対透過圧力比)によって、有意に高い透過O
2濃度が生じた。この高い完全透過流O
2濃度は、真空アシスト条件の追加の利点である。試験が漏出に対してより好感度になり得るからである。
【0031】
所定の実施形態によれば、
図7に例示するように、複数のフィルタ装置を共にマニホールドすることができ、透過流を連続的にサンプリングすることができる。図示された実施形態では、3つのフィルタ15a、15b及び15cがあるが、それより少ない又は多くマニホールドされていてもよい。共通入口供給12’は、加湿された2成分ガスをフィルタ15a、15b、15cのそれぞれに供給することができる。各フィルタ15a、15b、15cからの透過流を好適なバルブ30に送ることができ、バルブ30は透過濃度を連続的にサンプリングし、各流を酸素分析器17に選択的に送る。このようにして、各フィルタの下流容量を同時にフラッシュし、フラッシング後に、各透過流のサンプルを迅速に得ることができる。この実施形態では、真空の使用が望ましい場合には、フィルタ毎別々の真空ポンプを設けることができる。
【0032】
複数のフィルタが同時に平衡化しているため、各フィルタの平均試験時間が短縮される。例えば、装置を出る透過濃度が定常状態値に達するのに60分要する場合、そして、5個の装置を同時に平衡化し、かつ、各装置をサンプリングするのに10分を要する場合には、単一の酸素分析器により、単独の装置として連続的に試験した場合における1個の装置当たり70分と比較して、5個の装置を試験するのに110分又は1個の装置当たり平均22分を要するであろう。この実施形態は、加湿入口流のみによって保証される、長時間にわたって安定な透過物濃度を維持することに依拠する(多孔質材料の乾燥なし)。
【0033】
本発明は、本明細書に記載される所定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際に、当業者であれば、本明細書に記載された実施形態に加えて、本発明の他の様々な実施形態及び改変が上記説明及び添付の図面から明らかであろう。したがって、このような他の実施形態及び改変は、本発明の範囲内にあるものとする。さらに、本発明を特定の目的のために特定の環境での特定の実施の文脈で本明細書に記載してきたが、当業者であれば、その有用性はそれらに限定されず、本発明は任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実施されることが分かるであろう。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に記載される本発明の全範囲及び精神を考慮して解釈すべきである。
【符号の説明】
【0034】
12 圧縮空気
13 圧力調整器
14 圧力トランスデューサ
15 フィルタ
16 流量計
17 酸素分析器
18 乾燥剤
19 加湿器
25 真空ポンプ