(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016817
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ボールジョイント
(51)【国際特許分類】
F16C 11/06 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
F16C11/06 N
F16C11/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119773
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 茂
(72)【発明者】
【氏名】永田 裕也
【テーマコード(参考)】
3J105
【Fターム(参考)】
3J105AA23
3J105AB49
3J105AC10
3J105CA05
3J105CB42
3J105CD02
3J105CE03
3J105CE04
(57)【要約】
【課題】ボールジョイントをインサート成形するためのハウジング型の型幅を小さくすること。
【解決手段】ボールジョイントJ1は、構造体に一端部が連結されるスタッド部10sの他端部に、ボール部10bが一体に接合されて成るボールスタッド10と、ボール部10bをボールシート30を介して包含する内球面21aを有し、ボール部10bに接合されたスタッド部10sが突き出る開口空間を有する樹脂製のハウジング21とを備える。ハウジング21は、内球面21aを有する胴部21bと、胴部21bの外周面に環状に突き出るフランジ部21dと、フランジ部21dの下側に半球状に突き出るドーム部21gと、フランジ部21dに接続される接続部21hを有するバーグリップ部21jとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体に一端部が連結されるスタッド部の他端部に、金属製の球体部が一体に接合されて成るボールスタッドと、前記球体部を包含する内球面を有し、当該球体部に接合されたスタッド部が突き出るように開口した空間を有する樹脂製のハウジングとを備えるボールジョイントであって、
前記ハウジングは、
前記球体部を前記開口の位置まで包含する内球面を有する胴部と、
前記胴部の外周面において前記球体部の中心を仮想的に通る水平線に沿って配置され、環状に周回して突き出るフランジ部と、
前記フランジ部の下側に、前記内球面に沿って半球状に突き出るドーム部と、
他方のボールジョイントと接続されるサポートバーが固定されるバーグリップ部と、を備え、
前記バーグリップ部は、
円筒形状を成し、内部に前記サポートバーが挿入される円筒部と、
前記フランジ部及び前記ドーム部と前記円筒部とを前記水平線に沿って接続する接続部と、
前記接続部の上側又は下側に沿って前記円筒部から前記フランジ部まで延設された少なくとも二条のステー部と、を備える
ことを特徴とするボールジョイント。
【請求項2】
前記二条のステー部は、前記接続部の下側に沿って前記円筒部から前記フランジ部及び前記ドーム部まで延設されている
ことを特徴とする請求項1に記載のボールジョイント。
【請求項3】
前記二条のステー部は、前記接続部の上側及び下側の双方に沿って前記円筒部から前記胴部まで延設されている
ことを特徴とする請求項1に記載のボールジョイント。
【請求項4】
前記ボールスタッドの前記球体部から前記構造体の側へ離間した位置と、前記フランジ部の前記構造体の側に向かう環状面との間にダストカバーを備え、
前記フランジ部は、前記水平線の線上に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のボールジョイント。
【請求項5】
前記バーグリップ部の接続部は、前記開口の側より前記水平線に向かって傾斜する傾斜面を備え、
前記二条のステー部は、前記傾斜面に沿って傾斜状に設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載のボールジョイント。
【請求項6】
前記二条のステー部の前記傾斜状の上面は、他方のステー部の側に前記水平線に向かって傾斜するテーパ面を有する
ことを特徴とする請求項5に記載のボールジョイント。
【請求項7】
前記ドーム部の半球状の外周面に、当該半球状の中心に対する同心円上から放射状に突出して延びる複数のリブ
を備えることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のボールジョイント。
【請求項8】
前記複数のリブは、放射線状に拡がる円周方向の両端側のリブ間の角度が少なくとも180度以上である
ことを特徴とする請求項7に記載のボールジョイント。
【請求項9】
前記複数のリブは、前記ドーム部の半球状の周回方向に均等間隔で設けられている
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のボールジョイント。
【請求項10】
前記バーグリップ部の接続部は、前記開口の側より前記水平線に向かって傾斜する傾斜面を備え、
前記二条のステー部は、前記接続部の前記水平線と水平方向に直交する幅方向の両側部から、前記フランジ部の前記水平線と水平方向に直交する直径位置まで延在して設けられている
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のボールジョイント。
【請求項11】
前記二条のステー部は、前記バーグリップ部から前記フランジ部に向かうに従い、前記開口の側である上端側と、この上端側と反対側の下端側とが、互いに前記水平線に向かって狭まるように傾斜する三角形状を成す
ことを特徴とする請求項10に記載のボールジョイント。
【請求項12】
前記接続部の傾斜面の前記二条のステー部の間に、当該二条のステー部と平行に、前記胴部と離間して前記バーグリップ部から前記フランジ部の周回縁部に接続されるように延在する上側中間ステー部を備え、
前記上側中間ステー部の前記胴部と離間した端面が、前記水平線に向かって傾斜するテーパ端面となっている
ことを特徴とする請求項11に記載のボールジョイント。
【請求項13】
前記接続部の傾斜面の裏面に、前記二条のステー部の間に当該二条のステー部と平行に、前記バーグリップ部から前記ドーム部に接続されるように延在する下側中間ステー部を備える
ことを特徴とする請求項11又は12に記載のボールジョイント。
【請求項14】
前記球体部を包含して、当該球体部と前記内球面との間に設けられるボールシート
を更に備えることを特徴とする請求項1~13の何れか1項に記載のボールジョイント。
【請求項15】
前記フランジ部の前記ドーム部側の下面に、複数の窪みを設けた
ことを特徴とする請求項1~14の何れか1項に記載のボールジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における路面からの衝撃軽減等の役割を果たすボールジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のサスペンションは、路面から車体に伝わる衝撃を軽減し、スタビライザは、車体のロール剛性(捩れに対する剛性)を高める。このサスペンションとスタビライザは、スタビリンクを介して連結されている。スタビリンクは、棒状のサポートバーの両端にボールジョイントを備えて構成されている。
【0003】
このボールジョイントとして、例えば
図18に縦断面で示すボールジョイントJがある。このボールジョイントJは、樹脂製でカップ状のハウジング11内に、ボールシート30を介在して、金属製のボールスタッド10のボール部10bを回転自在に収容(包含)した構成となっている。
【0004】
ハウジング11は、この開口11cの位置までボール部10bを包含する球形湾曲形状の内球面11aを有する胴部11bを備える。内球面11aをハウジング内球面11aとも称す。胴部11bは、外周面がハウジング内球面11aに沿った概略球形状を成す。これに加え、胴部11bの外周面において、ボール部10bの中心を仮想的に通る水平線Hよりも上側の位置と、下側の位置との双方に、環状に周回する上下のフランジ部11g,11kを備える。
【0005】
上下のフランジ部11g,11kは、互いに平行に離間して外方へ突き出ており、各フランジ部11g,11kの間が環状に周回する溝部11jとなっている。また、ハウジング11の周回する上端部11fの上側部分は、水平線Hと平行に外側に環状に突き出た突出部11f2となっている。この突出部11f2と、上側フランジ部11gとの間は、環状に周回する溝部11iとなっている。
【0006】
ハウジング11は、図示せぬハウジング型に樹脂を流し込んで、ボール部10bをボールシート30を介して覆うようにインサート成形され、且つ、ハウジング11の外周面と、水平線Hに沿って配設されるサポートバー(
図2のサポートバー100参照)の先端部とが一体結合するようにインサート成形されている。サポートバー100を水平線Hに沿って水平とした際に、ボールスタッド10の軸芯が水平線H(赤道Hともいう)に対して垂直線Vで示す垂直となるように構成されている。
【0007】
上記インサート成形では、まず、ボール部10bを、上端側部に周回する凸部30aを有するボールシート30で包含する。この包含されたボール部10bを、ハウジング型にセットし、樹脂を流入すると、胴部11bの上側フランジ部11gを水平方向に仮想延長したハウジング内球面11aの位置に、上記凸部30aにより凹んだ凹部11qが周回状に形成される。つまり、ハウジング内球面11aの凹部11qに、ボールシート30の凸部30aが嵌合された状態となる。この嵌合状態で胴部11bに固定されたボールシート30でボール部10bが包含されてボールジョイントJが構成される。
【0008】
ボールスタッド10は、棒状のスタッド部10sの一端に球状のボール部10bが一体に連結された構造となっている。スタッド部10sには、雄ねじ10nが螺刻されており、この雄ねじ10nよりも先端側(ボール部10b側)に、周回状に拡がる鍔部10a1と小鍔部10a2とが離間して形成されている。鍔部10a1とハウジング11の上端部11fとの間には、防塵用のダストカバー13が配設されている。ダストカバー13の上端部は、鍔部10a1と小鍔部10a2との間に挟まれて固定され、下端部は、ハウジング11の上端部11fの溝部11iに固定されている。
【0009】
ハウジング11の周回する上端部11fは、上端面から内周側に傾斜するテーパ面11f1を有する。テーパ面11f1の傾斜角は、ボールスタッド10が揺動(矢印α1)した際に、ボールスタッド10の予め定められた揺動角を満たす角度となっている。
【0010】
このようなボールジョイントJでは、車両のサスペンションがストロークするに伴い、ボール部10bがボールシート30を介してハウジング内球面11aで揺摺動するが、この揺摺動する際の特性が、揺動トルク及び回転トルク(各トルクともいう)と定義づけられる。ボール部10bの回転時に、ハウジング内球面11aへの摩擦力が増加して各トルクが高まると、乗り心地が悪化する。
【0011】
ハウジング11内においてボール部10bに対するハウジング内球面11aの締め代を減少させると、各トルクを下げることができるが、同時に弾性リフト量が上がる。弾性リフト量とは、ハウジング内球面11aにおけるボールシート30を介したボール部10bの移動量である。弾性リフト量が大きくなると、ボール部10bがハウジング11内で大きく移動し、ボールジョイントJにガタが発生し、車両走行中の異音の発生に繋がる。つまり、各トルクと弾性リフト量との間には、各トルクが低下すると、弾性リフト量が増大するといった相反関係がある。この種のボールジョイントとして、例えば特許文献1,2,3に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許3168229号公報
【特許文献2】特許3369659号公報
【特許文献3】特開2014-028984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したようにボールジョイントJは、ハウジング11の外周に、赤道Hを挟んで上下に平行に外方へ突き出たフランジ部11g,11kを備えるダブルフランジ構造となっている。この構造では、上下のフランジ部11g,11kの間に環状に周回する溝部11jが存在する。このような赤道H方向に凹凸に突き出た構造のため、ハウジング型がハウジング11を形成可能な空洞を有するのみでは、ハウジング型に流し込んだ樹脂が固化するとハウジング型が外れなくなる。
【0014】
そこで、ハウジング型は、上下方向に2分割でき、赤道Hに沿った左右方向(反対方向)にスライドできるスライド型を有する構成となっている。このスライド型を有するハウジング型を用いれば、流し込んだ樹脂が固化した後は、スライド型を赤道Hに沿ってスライドさせることで、ハウジング型を外すことができる。
【0015】
しかし、スライド構成のハウジング型は、赤道Hに沿って左右方向にスライドさせる横幅が必要となる。このため、ハウジング型の横幅が具体例として約300mm等と大きくなり、この結果、型幅(又は平面積)が大きくなるという課題があった。ハウジング型の型幅が大きくなると、1つの土台に配置できるハウジング型の数が減少する。このため、一度にインサート成形できるボールジョイント数が少なくなり、設備コストや生産タクトが増加してしまう。
【0016】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、ボールジョイントをインサート成形するためのハウジング型の型幅を小さくできるボールジョイントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記した課題を解決するため、本発明のボールジョイントは、構造体に一端部が連結されるスタッド部の他端部に、金属製の球体部が一体に接合されて成るボールスタッドと、前記球体部を包含する内球面を有し、当該球体部に接合されたスタッド部が突き出るように開口した空間を有する樹脂製のハウジングとを備えるボールジョイントであって、前記ハウジングは、前記球体部を前記開口の位置まで包含する内球面を有する胴部と、前記胴部の外周面において前記球体部の中心を仮想的に通る水平線に沿って配置され、環状に周回して突き出るフランジ部と、前記フランジ部の下側に、前記内球面に沿って半球状に突き出るドーム部と、他方のボールジョイントと接続されるサポートバーが固定されるバーグリップ部と、を備え、前記バーグリップ部は、円筒形状を成し、内部に前記サポートバーが挿入される円筒部と、前記フランジ部及び前記ドーム部と前記円筒部とを前記水平線に沿って接続する接続部と、前記接続部の上側又は下側に沿って前記円筒部から前記フランジ部まで延設された少なくとも二条のステー部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ボールジョイントをインサート成形するためのハウジング型の型幅を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る実施形態のボールジョイントの構成を示す側面図である。
【
図3】本実施形態のボールジョイントの構成を示す斜め上から見た斜視図である。
【
図4】本実施形態のボールジョイントの構成を示す斜め下から見た斜視図である。
【
図5】本実施形態のボールジョイントの構成を示す上から見た斜視図である。
【
図6】本実施形態のボールジョイントの構成を示す下から見た斜視図である。
【
図7】本実施形態のボールシートを備えないボールジョイントの構成を示す断面図である。
【
図8】本実施形態の変形例1のボールジョイントの構成を示す側面図である。
【
図9】変形例1のボールジョイントの構成を示す斜め上から見た斜視図である。
【
図10】変形例1のボールジョイントの構成を示す斜め下から見た斜視図である。
【
図11】変形例1のボールジョイントの構成を示す上から見た斜視図である。
【
図12】変形例1のボールジョイントの構成を示す下から見た斜視図である。
【
図13】本実施形態の変形例2のボールジョイントの構成を示す側面図である。
【
図14】変形例2のボールジョイントの構成を示す斜め上から見た斜視図である。
【
図15】変形例2のボールジョイントの構成を示す斜め下から見た斜視図である。
【
図16】変形例2のボールジョイントの構成を示す下から見た斜視図である。
【
図17】本実施形態の変形例3のボールジョイントの構成を示す下から見た斜視図である。
【
図18】従来のボールジョイントの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本明細書の全図において互いに対応する構成部分には同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
<実施形態>
図1は、本発明に係る実施形態のボールジョイントの構成を示す側面図である。
図2は
図1に示すII-II断面図である。
【0021】
但し、ボールジョイントJ1のスタッド部10sは、前述したサスペンション又はスタビライザに固定されている。サスペンション又はスタビライザは、請求項記載の構造体を構成する。
図1及び
図2に示すボールジョイントJ1において、スタッド部10sの先端側が「上」、ハウジング21のドーム部21g(後述)側が「下」であるとする。
【0022】
図1に示す実施形態のボールジョイントJ1が、従来のボールジョイントJ(
図18)と異なる点は、ハウジング21を次の形状としたことに有る。
【0023】
ハウジング21は樹脂製であり、金属製のボールスタッド10のボール部(球体部)10bを包含するカップ状(
図2参照)の胴部21bと、胴部21bの外周面を周回する環状のフランジ部21dと、フランジ部21dの上側に円筒状に突き出た上端部21fと、フランジ部21dの下側に突き出たドーム部21gとを備える。ドーム部21gは、フランジ部21dの下側に突き出た半球面を成し、この半球面に放射状に延びる複数のリブ21kを有する。更に、ハウジング21は、フランジ部21dに接続部21hを介して接続され、ボールジョイント連結用のサポートバー100が挿入されたバーグリップ部21jを備えて構成されている。
【0024】
但し、ボール部10bの中心を通る水平線Hに対して垂直に通る軸線(垂直線)Vは、ボールスタッド10の軸芯と一致している。また、水平線Hは、ボール部10bの中心と、水平に配置されたサポートバー100の軸芯と、フランジ部21dの厚み幅の中心を径方向に通る軸(フランジ軸ともいう)とに一致する。水平線Hは、サポートバー100の軸心と平行であり、ボール部10bの中心を水平に通ることから赤道Hとも称す。
【0025】
ハウジング21は、胴部21b、フランジ部21d、上端部21f、ドーム部21g及びバーグリップ部21jを形成するためのハウジング型に、樹脂を流し込んでインサート成形される。このインサート成形の際、ボールスタッド10のボールシート30で包含されたボール部10bが、ハウジング型に垂直線Vに沿って組み合わされる。更に、サポートバー100の先端部がハウジング型に水平線Hに沿って組み合わされ、ハウジング21に一体結合するようにインサート成形される。
【0026】
但し、ハウジング型は、ボールジョイントJ1の水平線Hに沿った上下で分割できるようになっている。
【0027】
ボールスタッド10は、ボール部10bとスタッド部10sとが抵抗溶接にて一体化されていることで、高真球度を達成でき、低トルク且つ滑らかな動きが可能となっている。但し、ボール部10bの真球加工が可能であれば、ボール部10bとスタッド部10sとが1つの金属材料による一体のボールスタッド10でも構わない。
【0028】
ボールスタッド10は、棒状のスタッド部10sの一端に球状のボール部10bが一体に連結されている。スタッド部10sには、雄ねじ10nが螺刻されており、この雄ねじ10nよりも下側(ボール部10b側)に、周回状に拡がる鍔部10a1と小鍔部10a2とが離間して形成されている。鍔部10a1及び小鍔部10aの間と、ハウジング21の上端部21f及びフランジ部21dの上面の間とに、ダストカバー13が配設されている。
【0029】
図2に示すように、球状のボール部10bを包含するハウジング21の内球面(ハウジング内球面)21aは、ボール部10bの球状に沿った球形湾曲状となっている。ボール部10bに密着成形されたハウジング内球面21aは成形収縮により、ボール部10bを締めつけている。
【0030】
ボール部10bを包含するハウジング21の胴部21bは、外周面が内球面に沿う形状を有するので、フランジ部21d以外の部分の厚みが略均一又は均一となっている。言い換えれば、胴部21bは、フランジ部21dを除いた場合の球形湾曲形状の厚みが略均一となっている。
【0031】
このようなハウジング内球面21aとボール部10bとの摩擦力は、低トルクスタビリンクを実現する適正範囲であることが望ましい。言い換えれば、その摩擦力は、ボールスタッド10の揺動トルク及び回転トルク(各トルク)を、車両の乗り心地が向上するように低下させ、弾性リフト量を、ボールジョイントJ1にガタが発生しないように小さくできることが望ましい。
【0032】
上述したハウジング21の胴部21bでは、ボール部10bの中心に向かう肉厚が均一又は略均一となるので、ボール部10bの締付力が均等又は略均等となり、低トルク化を図ることが可能となる。更に、シングルのフランジ部21dとしたのでボール部10bを締め付ける成形収縮が低減され、低トルク化が達成される。
【0033】
ここで、車両のサスペンションは、路面から車体に伝わる衝撃を軽減し、スタビライザは、車体のロール剛性を高めるものであり、サスペンションとスタビライザは、スタビリンクを介して連結されている。スタビリンクは、棒状のサポートバー100の両端に、上述したボールジョイントJ1を備えて構成されている。
【0034】
サポートバー100は、金属材料として例えば、鋼管が使用されており、先端部(
図2参照)はボールスタッド10が延在する方向にプレスされて平板状に変形されている。なお、サポートバー100は、金属製以外に、樹脂製やこの他の材料であってもよい。更に、サポートバー100が樹脂製である場合、ハウジング21と一体に構成してもよい。
【0035】
次に、ハウジング21について詳細に説明する。
ハウジング21の胴部21bは、
図2に示すように、ボール部10bの回転時に損傷しない設計の肉厚を有し、胴部21bの外周面には、外方へ突出して環状に周回する1つのフランジ部21d(
図1)を備える。フランジ部21dよりも上側の上端部21fは、断面形状が、外周側がストレート形状、内周側がテーパ形状(テーパ面1f1)となっている。
【0036】
つまり、胴部21bの周回する上端部21fは、上端面から内周側に傾斜するテーパ面1f1を有し、このテーパ面1f1の傾斜角が、ボールスタッド10が揺動(矢印α1)した際に、ボールスタッド10の予め定められた揺動角を満たす角度となっている。
【0037】
バーグリップ部21jは、赤道Hに軸心が沿って延びる円筒形状を成し、胴部21bのフランジ部21d及びドーム部21gに接続部21hを介して接続されている。バーグリップ部21jの円筒形状の内部には、サポートバー100が、この先端をハウジング21に向け挿入固定されている。サポートバー100は、上下に潰れた先端部から後端側に向かって上り傾斜する楕円錐形状となっている。
【0038】
バーグリップ部21jの接続部21hは、サポートバー100の楕円錐形状の上の傾斜に沿った上側の傾斜面(上側傾斜面ともいう)1h1と、下の傾斜に沿った下側の傾斜面(下側傾斜面ともいう)1h2とを備える。上下の傾斜面1h1,1h2の先端がフランジ部21dに接合されている。このフランジ部21dと、接続部21hを有するバーグリップ部21jと、サポートバー100との中心軸が、赤道Hに一致している。なお、上側傾斜面1h1は、請求項記載の下り傾斜面を構成する。
【0039】
接続部21hの上側傾斜面1h1は、赤道Hに沿ったバーグリップ部21jの外周面に対して角度θ1で傾斜している。この傾斜面1h1は、ボールスタッド10が揺動して傾いた際にダストカバー13がバーグリップ部21jとボールスタッド10との間に挟まって、ボールスタッド10が必要な揺動角で揺動不能となることを防止(スタッド揺動不能防止という)するために形成されている。また、接続部21hの下側傾斜面1h2も、上側傾斜面1h1と同じ角度で傾斜している。つまり、接続部21hの外周は楕円錐形状の外周となっている。
【0040】
図3又は
図4に示すように、接続部21hの平面視で見た両側には、上下幅を有して赤道H方向に延在するステー1j1,1j2が設けられている。両側のステー1j1,1j2(2条のステー部)は、ハウジング21に向かう先端がフランジ部21d及びドーム部21gの双方に接続され、後端がバーグリップ部21jの円筒形状部分に接続されている。また、両側ステー1j1,1j2は、先端側が、フランジ部21dの上面(
図3)に接合する部位と、フランジ部21dの下面(
図4)に当接する部位とに分かれている。即ち、各ステー1j1,1j2は、バーグリップ部21jと、フランジ部21d及びドーム部21gとを、平行に延在して接続するダブルステー構造となっている。
【0041】
両側ステー1j1,1j2の上端側は、
図3に示すように、上側傾斜面1h1に沿って傾斜しており、更に、
図5に示すように、他方のステーに向かって下り傾斜するテーパ面1a,2aを有する。各ステー1j1,1j2の上側傾斜面1h1に沿った傾斜並びにテーパ面1a,2aは、上述したスタッド揺動不能防止のために形成されている。
【0042】
図3に戻って、バーグリップ部21jの接続部21hの上側傾斜面1h1には、両側ステー1j1,1j2の中間に、これらと平行に延在するステー1j3(上側中間ステー1j3ともいう)が設けられている。この上側中間ステー1j3は、断面凸状を成し、傾斜面1h1から同じ高さ及び幅で凸状に突出して延在している。更に、上側中間ステー1j3は、高さが、両側ステー1j1,1j2よりも低くなっている。これは上述したスタッド揺動不能防止のためである。
【0043】
図4に示すように、バーグリップ部21jの接続部21hの下側傾斜面1h2には、両側ステー1j1,1j2の中間に、これらと平行に延在するステー1j4(下側中間ステー1j4ともいう)が設けられている。この下側中間ステー1j4は、断面凸状を成し、両側ステー1j1,1j2よりも高い寸法で、バーグリップ部21jからドーム部21gまで延びている。
【0044】
言い換えれば、
図1に示すように、赤道Hと平行に延びるバーグリップ部21jの下端線と同じ高さで、下側中間ステー1j4の下端線が延びている。この下側中間ステー1j4の下端線は、両側ステー1j1,1j2の下端線よりも低い位置にある。このため、下側中間ステー1j4自体の絶対的な高さが高いので、その分、強度が強くなっており、バーグリップ部21jとドーム部21gとを接続する強度が、より増強される。
【0045】
このように、両側ステー1j1,1j2、上側中間ステー1j3及び下側中間ステー1j4は、ハウジング21の胴部21bとバーグリップ部21jとの接続を補強している。
【0046】
但し、各ステー1j1~1j4の赤道Hと直交する横幅の厚み、例えば
図5に上側中間ステー1j3に代表して示す横幅の厚みt1は、3mmを基本とし、2~4mm間の厚みが好ましい。ステーは、少なくとも、上述したダブルステー構造を構成する両側の合計2本のステー1j1,1j2を必要とする。
【0047】
また、各ステー1j1,1j2は、接続部21h(
図3参照)の上側が胴部21bのフランジ部21d及び上端部21fまで延設された構成としてもよい。
【0048】
なお、両側ステー1j1,1j2が赤道Hの上下で分かれている場合は、赤道Hの上側に両側合計2本、下側に両側合計2本のステーを必要とする。この両側のステーに加え、上側中間ステー1j3と、下側中間ステー1j4とを用いて上下3本ずつのステーとすれば、より補強強度が高まる。この他、赤道Hの上側に両側合計2本、下側の中間に1本のステーを設ける構成としてもよい。
【0049】
次に、
図4に示すように、ドーム部21gには、放射状(
図6参照)に細長く突出して延びる複数の補強用のリブ21kを設けている。このリブ21kは、従来のダブルフランジ部11g,11k(
図18)のダブルフランジ構造から、シングルフランジ部21dのシングルフランジ構造としたことによりドーム部21gの強度が低下したことを補強するための役割を果たす。
【0050】
各リブ21kは、
図2に示すように、ドーム部21gの中心(矢印Y1で指示)から所定長さ離間した同心円上の位置(矢印Y2で指示)より、フランジ部21dの周回縁まで延びる接線k1と、ドーム部21gの半球面と、フランジ部21dの下面とで囲まれる側面三角形状(峡間隔の斜線部分)を成す。この側面三角形状のリブ21kを半球面の中心から放射線状に設けることでドーム部21gの強度が増強される。
【0051】
本例の場合、
図6に示すように、リブ21k間の角度θ2が25度であり、放射線状に拡がる円周方向の両端側のリブ21k間の角度θ3が200度である。つまり、各リブ21kは周回方向に均等間隔で設けられている。また、角度θ3は、少なくとも180度以上であって、放射線状の両端側のリブ21kが、両側ステー1j1,1j2に当たらない角度であればよい。また、リブ21k間の角度θ2は、ボール部10bの揺動時にドーム部21gが破損しない補強強度が得られる角度であればよい。このような角度θ2,θ3を変えることで、配設されるリブ21kの数が変わる。
【0052】
一例としては、リブ21kの角度θ2に応じた配置間隔を10mm以下とすることで、ドーム部21gを外的衝撃から効果的に保護することが可能となる。リブ21kの厚みt2は、1~3mmを基本として、必要な補強強度に応じて変更することが好ましい。
【0053】
<ボールシート無しの構成>
上述したボールジョイントJ1を、
図7に示すように、ボールシート30が無いボールジョイントJ2としてもよい。
【0054】
ボールジョイントJ2は、ハウジング21の胴部21bが、ボール部10bを直接、開口21cの位置まで包含するハウジング内球面21aを有する。また、胴部21bの上端部21fの内側に周回するテーパ部1f1の下には、水平に周回する水平面1f2が設けられている。水平面1f2は、ボール部10bの離脱を抑制する。
【0055】
このように、ボールシート30が内包されていない場合のハウジング21は、PA66(Polyamide 66)+GF30(PA66に重量比30%のガラス繊維を入れた材料)が用いられる。この材料を用いることにより、ハウジング21で、ボール部10bを直接保持した際に、低トルク化により低面圧化されるので、グリース蔓延性が向上する。
【0056】
但し、ハウジング21の材料は強度要件が満たされるものであればよい。例えば、PEEK(polyetheretherketone)、PA6(Polyamide 6)、PPS(Poly Phenylene Sulfide Resin)、POM(polyoxymethylene)等のエンジニアリングプラスティック、スーパーエンジニアリングプラスティック、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスティック)等が使用される。
【0057】
また、ハウジング21に、GF(Carbon Fiber)50を使用することで同形状でも成形収縮量を低減でき、更なる低トルク化が達成される。
【0058】
このような熱可塑性樹脂によりインサート成形されるハウジング21の内球面21aは、ボールスタッド10のボール部10bが揺摺動するため、所定の摩耗耐久性を有している。
【0059】
<実施形態の効果>
このような実施形態によるボールジョイントJ1(又はJ2)の効果について説明する。ボールジョイントJ1は、構造体に一端部が連結されるスタッド部10sの他端部に、金属製のボール部10bが一体に接合されて成るボールスタッド10と、ボール部10bを包含する内球面21aを有し、当該ボール部10bに接合されたスタッド部10sが突き出るように開口した空間を有する樹脂製のハウジング21とを備える。
【0060】
(1)ハウジング21は、ボール部10bを開口の位置まで包含する内球面21aを有する胴部21bと、胴部21bの外周面においてボール部10bの中心を仮想的に通る赤道H上に配置され、環状に周回して突き出るフランジ部21dと、フランジ部21dの下側に、内球面21aに沿って半球状に突き出るドーム部21gとを備える。更に、ハウジング21は、他方のボールジョイントと接続されるサポートバー100が固定されるバーグリップ部21jとを備える。
【0061】
バーグリップ部21jは、円筒形状を成し、内部にサポートバー100が挿入される円筒部と、フランジ部21dを水平線Hに沿って接続する接続部21hと、接続部21hの上側又は下側に沿って円筒部からフランジ部21d及びドーム部21gまで延設された少なくとも2本のステー1j1,1j2(2条のステー部)とを備える構成となっている。
【0062】
この構成によれば、ハウジング21において胴部21bの外周面に突き出た環状のフランジ部21d及びドーム部21gと、バーグリップ部21jとを赤道Hに沿って接続する少なくとも2本の離間したステー1j1,1j2を設けた。このステー1j1,1j2により、胴部21b(フランジ部21d及びドーム部21g)と、バーグリップ部21jとの接続を補強できる。各ステー1j1,1j2は、赤道Hに沿って延設されているので、ボールジョイントJ1をインサート成形するためのハウジング型を、赤道Hに沿って上下方向に2分割して形成できる。
【0063】
従来は、ハウジング型が上下方向に2分割でき、赤道Hに沿って左右方向にスライドできるスライド型を有する構成となっていた。このスライド型を必要とする分、横幅が必要であった。横幅は具体例として約300mmとなっている。
【0064】
しかし、本実施形態では、ボールジョイントJ2(
図7)をインサート成形するためのハウジング型を、赤道Hに沿って上下方向に2分割して形成できる。このため、従来のように横方向へのスライドが不要となるので横幅を狭くできる。この横幅は具体例として約100mmとできる。このように、本実施形態のボールジョイントJ2によれば、ボールジョイントJ2をインサート成形するためのハウジング型の型幅を小さくできる。
【0065】
このため、1つの土台に配置できるハウジング型の数を増やすことができるので、一度にインサート成形できるボールジョイント数を多くすることができ、設備コストや生産タクトを減少させることができる。
【0066】
(2)2本のステー1j1,1j2は、接続部21hの下側に沿ってバーグリップ部21jの円筒部からフランジ部21d及びドーム部21gまで延設されている構成とした。
【0067】
この構成によれば、ステー1j1,1j2により、フランジ部21d及びドーム部21gと、バーグリップ部21jとを接続するので、バーグリップ部21jと胴部21bとの接続強度を、より補強できる。
【0068】
(3)2本のステー1j1,1j2は、接続部21hの上側及び下側の双方に沿ってバーグリップ部21jの円筒部から胴部21bまで延設されている構成とした。
【0069】
この構成によれば、ステー1j1,1j2により、バーグリップ部21jと胴部21bとの接続強度を、より補強できる。
【0070】
(4)ボールスタッド10のボール部10bから構造体の側へ離間した上方位置と、フランジ部21dの構造体の側に向かう環状面との間に防塵用のダストカバー13を備えている。フランジ部21dは、赤道Hの線上に配置されている構成とした。
【0071】
この構成によれば、フランジ部21dを赤道Hの線上に配置することで、ダストカバー13の下側のフランジ部21dへの取付位置を、ボール部13bの中心と合わせることができる。このボール部13bの中心と合わせたシングルのフランジ部21d(
図2)の場合、従来のダブルフランジ構造(
図18参照)よりもボール部10bの中心から開口21cまでの長さを短くできる。
【0072】
このため、ハウジング型によるハウジング成型終了時に、スタッド部10sを持ち上げてボール部10bに対応する中ゴマを持ち上げる際に、従来のダブルフランジ構造よりも持ち上げ長さが短くなる。これによって、スタッド部10sを持ち上げる際のトルクを減少できる。
【0073】
また、ダストカバー13を取り付けるための、ボールスタッド10のボール部10bよりも上方位置とフランジ部21dの上面位置との間を、従来のダブルフランジ構造よりも短くできる。このため、ダストカバー13をコンパクト化できる。
【0074】
(5)バーグリップ部21jの接続部21hは、フランジ部21d及びドーム部21gへ向かって下り傾斜する下り斜線面(上側傾斜面1h1)を備え、2本のステー1j1,1j2は、その下り傾斜面に沿って下り傾斜状に設けられている構成とした。
【0075】
この構成によれば、ボールスタッド10が揺動して傾いた際に、ダストカバー13がバーグリップ部21jとボールスタッド10との間に挟まり、ボールスタッド10が必要な揺動角で揺動不能となることを防止(スタッド揺動不能防止)できる。
【0076】
(6)2本のステー1j1,1j2の下り傾斜状の上面は、他方のステー1j1,1j2の側に水平線Hに向かって下り傾斜するテーパ面1a,2aを有する構成とした。
【0077】
この構成によれば、各ステー1j1,1j2の下り傾斜状の上面に、上記テーパ面1a,2aを備えることで、上述したスタッド揺動不能防止を、より適正に実現できる。
【0078】
(7)ドーム部21gの半球状の外周面に、当該半球状の中心に対する同心円上から放射状に突出して延びる複数のリブ21kを備える構成とした。
【0079】
この構成によれば、複数のリブ21kは、ドーム部21gの外周面に放射状に突出して延びるので、アーチ状となっており強度が強い。このため、複数のリブ21kでドーム部21gを補強できる。また、リブ21kは、ボールジョイントJ1,j2の下側に突き出るドーム部21gの半円球状に沿って放射状(
図4、
図10参照)に設けてあるので、上述したハウジング型の上下方向の分割機能を妨げるものではない。
【0080】
(8)複数のリブ21kは、放射線状に拡がる円周方向の両端側のリブ21k間の角度が少なくとも180度以上である構成とした。
【0081】
この構成によれば、放射線状に拡がるリブ21kが、半球状のドーム部21gの少なくとも半分の範囲に形成される。このため、リブ21kによるドーム部21gの補強強度を高めることができる。
【0082】
(9)複数のリブ21kは、ドーム部21gの半球状の周回方向に均等間隔で設けられている構成とした。
【0083】
この構成によれば、放射線状に拡がるリブ21kが、ドーム部21gの半球状の周回方向に均等間隔で設けられているので、各リブ21kのドーム部21gを補強する力が均等となる。このため、ドーム部21gの補強強度を、より高めることができる。言い換えれば、外的衝撃からドーム部21gを保護する強度を、より高めることができる。
【0084】
(10)ボールジョイントJ1(
図2)のように、ボール部10bを包含して、ボール部10bとハウジング内球面21aとの間に設けられるボールシート30を更に備える構成とした。
【0085】
この構成によれば、
図2に示すボールシート30を有するハウジング21を備えるボールジョイントJ1においても、上記ボールジョイントJ2(
図7)と同様の作用効果を得ることができる。
【0086】
<実施形態の変形例1>
図8は、本発明に係る実施形態の変形例1のボールジョイントの構成を示す側面図である。
【0087】
図8に示す変形例1のボールジョイントJ2が、実施形態のボールジョイントJ1(
図1)と異なる点は、
図9又は
図10に示すように、両側のステー1j5,1j6と、これらステー1j5,1j6間の上側中間ステー1j7(
図9参照)及び下側中間ステー1j8(
図10参照)との形状を、次のようにしたことにある。但し、符号21Aはハウジングを示す。
【0088】
両側ステー1j5,1j6は、バーグリップ部21jの
図8に破線で示す接続部21hの上側傾斜面1h1及び下側傾斜面1h2の両側部{赤道Hと水平方向に直交する幅方向の両側部(
図11及び
図12参照)}から、フランジ部21dの赤道Hと水平方向に直交する直径位置まで次のように延在して設けられている。
【0089】
即ち、両側のステー1j5,1j6は、
図11又は
図12に示すように、バーグリップ部21jの円筒部から離れる程に互いの間隔が離間している。更に、各ステー1j5,1j6は、バーグリップ部21jの両側部から上側傾斜面1h1及び下側傾斜面1h2の両側部を通って延在し、更に、フランジ部21dの環状の上面及び下面の縁部分を通って、環状の上記直径位置まで延在して設けられている。また、
図12に示すように、フランジ部21dの下側に接合(接続)されるステー1j5,1j6の先端部は、放射状の両端側のリブ21kに組み合って接合され、上記直径位置まで延在している。
【0090】
各ステー1j5,1j6の側面形状は、次のような三角形状(
図9参照)を成す。即ち、
図8に示すように、バーグリップ部21jの上下間の幅よりもやや狭い幅で、フランジ部21dに向かうに従い、上端線が下り傾斜し、下端線が上り傾斜して狭まる三角形状を成す。この三角形状のステー1j5,1j6は強度が高いので、フランジ部21dとバーグリップ部21jとの接続強度を、より高めることができる。
【0091】
各ステー1j5,1j6の上端側は、
図9に示すように、上側傾斜面1h1に沿って傾斜しており、更に、
図11に示すように、他方のステーに向かって下り傾斜するテーパ面5a,6aを有する。各ステー1j5,1j6の上側傾斜面1h1に沿った傾斜並びにテーパ面5a,6aは、上述したスタッド揺動不能防止のために形成されている。
【0092】
また、各ステー1j5,1j6の下端側は、
図10に示すように、下側傾斜面1h2に沿って傾斜しており、更に、
図12に示すように、他方のステーに向かって下り傾斜するテーパ面5b,6bを有する。
【0093】
上側中間ステー1j7は、
図9に示すように、接続部21hの上側傾斜面1h1の両側ステー1j5,1j6の中間に、これらと平行に延在して設けられている。この上側中間ステー1j7は、断面凸状を成し、両側ステー1j5,1j6の高さより高く(
図8参照)、胴部21bの上端部21fと離間してフランジ部21dの周回縁部に接続されるように延在して設けられている。この上端部21fと離間した上側中間ステー1j7の端面7aは、上端部21fに向かって下り傾斜するテーパ端面7aとなっている。
【0094】
両側ステー1j5,1j6のフランジ部21dよりも上面側の下り傾斜と、テーパ端面7aとは、前述したスタッド揺動不能防止のために形成されている。
【0095】
次に、下側中間ステー1j8は、
図10に示すように、接続部21hの下側傾斜面1h2の両側ステー1j5,1j6の中間に、これらと平行に延在して設けられている。この下側中間ステー1j8は、断面凸状を成し、両側ステー1j5,1j6よりも高い高さで、バーグリップ部21jからドーム部21gまで延びている。
【0096】
言い換えれば、
図8に示すように、赤道Hと平行に延びるバーグリップ部21jの下端線と同じ高さで、下側中間ステー1j8の下端線が延びている。この下端線は、両側ステー1j5,1j6の下端線よりも低い位置にある。このため、下側中間ステー1j8自体の絶対的な高さが高いので、その分、強度が強くなっており、バーグリップ部21jとドーム部21gとを接続する強度が、より増強されている。
【0097】
但し、各ステー1j5~1j8の赤道Hと直交する横幅の厚み、例えば
図11に上側中間ステー1j7に代表して示す横幅の厚みt3は、3mmを基本とし、2~4mm間の厚みが好ましい。ステーは、少なくとも、上述したダブルステー構造を構成する両側の合計2本のステー1j5,1j6を必要とする。
【0098】
このように、ボールジョイントJ2の両側ステー1j5,1j6、上側中間ステー1j7及び下側中間ステー1j8は、ハウジング21の胴部21b(フランジ部21d及びドーム部21g)とバーグリップ部21jとの接続を補強している。
【0099】
このボールジョイントJ2の両側ステー1j5,1j6は、上述したボールジョイントJ1のステー1j1,1j2(
図1)よりも長く且つ側面の面積が広く、更にフランジ部21dへの結合面積がより広い。このため、ボールジョイントJ2のステー1j5,1j6は、ボールジョイントJ1,J2のステー1j1,1j2よりも、より強固に、ハウジング21の胴部21b(フランジ部21d及びドーム部21g)とバーグリップ部21jとの接続を補強できる。
【0100】
<実施形態の変形例2>
図13は、本発明に係る実施形態の変形例2のボールジョイントの構成を示す側面図である。
【0101】
図13に示す変形例2のボールジョイントJ3が、変形例1のボールジョイントJ2(
図8)と異なる3つの点について説明する。但し、符号21Bはハウジングを示す。
【0102】
1点目は、ボールジョイントJ3のフランジ部21dBの上下の厚みt1を、ボールジョイントJ2のフランジ部21d(
図8)よりも厚くした点にある。
【0103】
2点目は、
図14に示すように、胴部21bの上端部21fBの径D1を、ボールジョイントJ2の上端部21fよりも大きくし、上端部21fBの厚みt2を厚くした点にある。
【0104】
3点目は、
図13に示すバーグリップ部21jの各ステー1j5B,1j6B(
図16参照)の側面三角形状の面積を、ボールジョイントJ2の側面三角形状の面積よりも大きくした点にある。
【0105】
図13に示すように、フランジ部21dBは、上側に嵩上げして厚みt1を厚くしてある。この嵩上げした分、上端部21fBの高さが低くなっている。
【0106】
更に、バーグリップ部21jの各ステー1j5B,1j6Bは、バーグリップ部21jの上端及び下端からフランジ部21dBの垂直線Vが通る中心の上下面に向かって、上端線が下り傾斜し、下端線が上り傾斜して狭まる三角形状を成す。この三角形状は、バーグリップ部21jの上端及び下端と、厚みt1を厚くしたフランジ部21dBの中心の上下面とを結ぶ形状なので、ボールジョイントJ2の三角形状よりも面積が大きくなっている。
【0107】
図14に示すように、ステー1j5B,1j6Bの上端側は、バーグリップ部21jの上端からフランジ部21dBの上面まで傾斜し、中央部に窪み傾斜部1h3を有する傾斜面1j10となっている。窪み傾斜部1h3の両側は、幅広のスロープ面となっている。この傾斜面1j10は、上述したスタッド揺動不能防止のために形成されている。
【0108】
図15に示すように、ステー1j5B,1j6Bの下端側は、バーグリップ部21jの下端から、両端側のリブ21kに接合されるように傾斜し、中央部に窪み傾斜部1h4を有する傾斜面1j11となっている。窪み傾斜部1h4の両側は、幅広のスロープ面となっている。傾斜面1j11には、
図16に示すように、バーグリップ部21jの下端から窪み傾斜部1h4の中央を通ってドーム部21gまで繋がる下側中間ステー1j8Bが設けられている。
【0109】
このような構成のボールジョイントJ3によれば、フランジ部21dBの厚みt1及び胴部21bの上端部21fBの厚みt2を増加して厚くし、バーグリップ部21jとハウジング21Bとを接続するステー1j5B,1j6Bも全体的に増加して大きくしてある。このため、ボールジョイントJ3全体の強度を、より高めることができる。
【0110】
<実施形態の変形例3>
図17は、本発明に係る実施形態の変形例3のボールジョイントの構成を示す側面図である。
【0111】
図17に示す変形例3のボールジョイントJ4が、変形例2のボールジョイントJ3(
図16)と異なる点は、フランジ部21dCのドーム部21g側の下面に、複数の六角形の窪み21mをハニカム状に設けたことにある。但し、窪み21mは、孔又は穴とも表現できる。また、窪み21mは、六角形以外の多角形や楕円を含む円形状、この他の形状であってもよい。
【0112】
このように窪み21mを設けた場合、ハウジング型に樹脂を流し込んでハウジング21Cをインサート成形する際に、加圧力を高めることができる。このため、密度がより高い丈夫なハウジング21Cを形成できる。
【0113】
その他、具体的な構成について、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
本発明のボールシート固定構造のボールジョイントJ1~J4は、産業用ロボットや人型ロボット等のロボットアームの関節部分や、ショベルカーやクレーン車等のアームが関節部分で回転する装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0114】
10 ボールスタッド
10b ボール部
10s スタッド部
13 ダストカバー
21 ハウジング
21a ハウジング内球面
21b 胴部
21c 開口
21d,21dB,21dC フランジ部
21f 上端部
21f1 テーパ面
21g ドーム部
21h 接続部
1h1 上側傾斜面(下り斜線面)
1h2 下側傾斜面
21j バーグリップ部
1j1,1j2,1j5,1j6,1j5B,1j6B ステー
1a,1b,5a,5b,6a,6b テーパ面
1j3,1j7 上側中間ステー
7a テーパ端面
1j4,1j8,1j8B 下側中間ステー
21k リブ
21m 窪み
30 ボールシート
100 サポートバー
J1,J2,j3,J4 ボールジョイント