IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パイオニア株式会社の特許一覧 ▶ 東北パイオニア株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-スピーカ装置 図1
  • 特開-スピーカ装置 図2
  • 特開-スピーカ装置 図3
  • 特開-スピーカ装置 図4
  • 特開-スピーカ装置 図5
  • 特開-スピーカ装置 図6
  • 特開-スピーカ装置 図7
  • 特開-スピーカ装置 図8
  • 特開-スピーカ装置 図9
  • 特開-スピーカ装置 図10
  • 特開-スピーカ装置 図11
  • 特開-スピーカ装置 図12
  • 特開-スピーカ装置 図13
  • 特開-スピーカ装置 図14
  • 特開-スピーカ装置 図15
  • 特開-スピーカ装置 図16
  • 特開-スピーカ装置 図17
  • 特開-スピーカ装置 図18
  • 特開-スピーカ装置 図19
  • 特開-スピーカ装置 図20
  • 特開-スピーカ装置 図21
  • 特開-スピーカ装置 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168211
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】スピーカ装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/02 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
H04R9/02 101C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144442
(22)【出願日】2022-09-12
(62)【分割の表示】P 2020212251の分割
【原出願日】2010-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 研也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和昭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正規
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英喜
(57)【要約】
【課題】スピーカ装置の薄型化又は小型化を図る。
【解決手段】外周筒部11Aを有するフレーム11と、ヨーク33を有し、少なくとも一部がフレーム11の内側に位置する磁気回路30と、を備え、外周筒部11Aは、1つ又は複数の凹部11A2を有し、ヨーク33の一部は、凹部に位置している。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周筒部を有するフレームと、
ヨークを有し、少なくとも一部が前記フレームの内側に位置する磁気回路と、
を備え、
前記外周筒部は、1つ又は複数の凹部を有し、
前記ヨークの一部は、前記凹部に位置していることを特徴とするスピーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピーカ装置は、振動板、ボイスコイル、磁気回路を基本構成として備えている。下記特許文献1に記載された従来のスピーカ装置は、振動板が発泡マイカなどからなる比較的平板な振動板本体を備えており、エッジを介して振動板の外周部がフレームに支持されている。振動板本体の下面にはボイスコイルが設けられ、ボイスコイルは、磁気回路の磁気ギャップ内に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62-147991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スピーカ装置は、音を発生する各種の電子機器に装備されている。この際、例えば、携帯用電子機器に装備される場合には、その携帯保持性を向上するために、スピーカ装置の薄型化や小型化が求められる。
【0005】
スピーカ装置の薄型化又は小型化を図ることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明によるスピーカ装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
外周筒部を有するフレームと、ヨークを有し、少なくとも一部が前記フレームの内側に位置する磁気回路と、を備え、前記外周筒部は、1つ又は複数の凹部を有し、前記ヨークの一部は、前記凹部に位置していることを特徴とするスピーカ装置。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係るスピーカ装置を説明する説明図である(同図(a)が縦断面図、同図(b)がA部拡大図)。
図2】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の振動部の他の形態を示した説明図である。
図3】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の全体構成を示した断面図。
図4図1の部分拡大図断面図。
図5】本発明の実施形態に係るスピーカ装置のエッジの詳細を示す説明図。
図6図3のX1-X1断面図。
図7】本発明の実施形態に係るスピーカ装置における磁気回路の全体構成を示した説明図(同図(a)が平面図、同図(b)が斜視図)。
図8】本発明の実施形態に係るスピーカ装置における磁気回路を示す説明図。
図9】本発明の実施形態に係るスピーカ装置における磁気回路を静止部に取り付ける取付構造を示した説明図。
図10】本発明の実施形態に係るスピーカ装置における磁気回路を静止部に取り付ける取付構造を示した説明図。
図11】本発明の実施形態に係るスピーカ装置における磁気回路を静止部に取り付ける取付構造を示した説明図。
図12】本発明の実施形態に係るスピーカ装置における磁気回路を静止部に取り付ける取付構造を示した説明図。
図13】本発明の実施形態に係るスピーカ装置における端子部の構造を示した説明図。
図14】本発明の実施形態に係るスピーカ装置における端子部の構造を示した説明図。
図15】本発明の実施形態に係るスピーカ装置における端子部の構造を示した説明図。
図16】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の全体構成を示した外観斜視図。
図17】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の全体構成を示した外観斜視図。
図18】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の適用例を示した説明図。
図19】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の適用例を示した説明図。
図20】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の電子機器への搭載例を示した説明図である。
図21】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の電子機器への搭載例を示した説明図である。
図22】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の電子機器への搭載例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。以下の各図は本発明の実施形態に係るスピーカ装置を説明する説明図である。各図の符号は共通する部位には同一符号を付して、一部重複説明を省略する。図示のX方向が音響放射方向であり、図示のY方向がスピーカ装置の径方向(幅方向)である。
【0009】
図1は本発明の実施形態に係るスピーカ装置の基本構成を示した説明図であり、同図(a)が縦断面図、同図(b)が同図(a)におけるA部の拡大図である。
【0010】
スピーカ装置1は、静止部10と、振動部20と、磁気回路30とを備える。振動部20は、外周部21Aを有する振動体21と、振動体21を静止部10に支持するエッジ22と、振動体21に直接又は他の部材を介して支持されるボイスコイル25とを備える。振動体21とエッジ22は、互いに異なる部材で構成されている。エッジ22は、樹脂フィルムで構成される樹脂層22a1,22a2が複数積層された積層構造を備えている。振動体21の剛性は、エッジ22の剛性より大きい。
【0011】
エッジ22の樹脂層22a1,22a2は図示の例では2層であるが、これに限られない。例えば、エッジ22は、複数の層を備えても構わない。エッジ22は、複数の樹脂層22a1,22a2のみで形成することもできる。また、後述するようにエッジ22は、他の層と組み合わせて構成することもできる。磁気回路30は、後述する、プレート,ヨーク,磁石などからなり、磁気ギャップ30Gを形成して、その磁気ギャップ30G内にボイスコイル25が配置されている。
【0012】
スピーカ装置1は、振動体(振動板)21とエッジ22とを別部材とすることで、エッジ22より大きい剛性を備える振動体21と、所定の内部損失を備える振動体21およびエッジ22を備えることができる。このようなスピーカ装置1は、振動体21にリブ等の補強部を設けなくても、振動部20(振動体21、エッジ22)を比較的薄くすることができる。なお、必要に応じて、後述する図3に示されるような、リブ等の補強部を振動体21に設けても構わない。また、エッジ22は、多層構造を備えることで、振動体21を振動自在に支持できる剛性を備えつつ、比較的大きい内部損失を備えることができる。
【0013】
薄型化・小型化されたスピーカ装置では、振動板とエッジとを一体に形成することが行われる場合がある。振動板とエッジとを一体に形成すると、振動板とエッジの共通部材が比較的柔らかい材料で構成される場合には高域側における音響特性が低下する場合がある。これに対して、振動板とエッジの共通部材を硬くすると、低域側における音響特性が低下する場合がある。また、振動板とエッジの共通部材を比較的柔らかい材料で構成して振動体にリブ等の補強部を設けて剛性を大きくすることも考えられる。しかし、このような補強部を振動体に設けると振動体の厚さが比較的大きくなり、スピーカ装置の薄型化・小型化を達成することが難しい。一方、本実施形態に記載するスピーカ装置1では低域及び高域における音響特性を向上することができる。
【0014】
スピーカ装置1によると、振動体21が比較的大きい剛性を備えることで高域限界周波数を可聴域外へシフトさせることができる。また、エッジ22が比較的大きい内部損失を備えることで、低域再生周波数におけるピークを比較的小さくできる。また、比較的大きい内部損失を振動体21が備えることで、高域限界周波数近傍におけるピーク値を比較的小さくでき、低域から高域にかけて音響特性を平坦化することができる。
【0015】
図1(b)に示す例では、エッジ22は、複数の樹脂層22a1,22a2と、樹脂層22a1,22a2に対して軟質である軟質層22bを備える。この例では、軟質層22bの厚さ(b)は、複数の樹脂層22a1,22a2の厚さ(a1+a2)に対して大きい。エッジ22のヤング率は、樹脂層22a1,22a2と同じ材料で構成された単一層からなる比較用エッジ(比較対象のエッジ22の厚さと同じ厚さを有する)のヤング率に対して小さい。エッジ22の内部損失は、前述した比較用エッジの内部損失に対して大きい。
【0016】
複数の樹脂層22a1,22a2と軟質層22bで構成されるエッジ22において、軟質層22bが樹脂層22a1,22a2より厚いので、軟質層の物性が樹脂層22a1,22a2より、エッジ22の物性に対する影響が大きい。すなわち、軟質層22bの物性はエッジ22の物性の支配的要因になり、エッジ22の内部損失を比較的大きくすることができる。これによって、音響特性に現れる低域共振周波数近傍におけるピーク値を小さくすることができ、音響特性を平坦化することができる。
【0017】
エッジ22が有する複数の樹脂層22a1,22a2は、互いに共通する樹脂部材、又は樹脂部材を互いに共通する樹脂材料で構成することができる。共通する樹脂材料として、複数の樹脂層22a1,22a2を構成する樹脂部材を構成する複数の異なる樹脂材料のうち、少なくとも1つの樹脂材料が共通であれば構わない。ここで、共通する樹脂部材とは、互いに密度が実質的に同じである樹脂部材であること、ヤング率、内部損失が実質的に同じである樹脂部材であることをいう。また、共通する樹脂材料とは、樹脂部材と同様に、互いに密度が実質的に同じである樹脂材料であること、ヤング率と内部損失が実質的に同じである樹脂材料であることをいう。これによると、例えば、エッジ22の複数の樹脂層22a1,22a2が、共通する樹脂部材(互いに、ヤング率、内部損失および密度が実質的に同じ樹脂部材)で構成されている場合、樹脂材料の収縮等に伴う変形により、樹脂層間の剥がれを抑止することができる。
【0018】
また、必要に応じて、エッジ22が有する複数の樹脂層22a1,22a2は、互いに異なる樹脂部材で構成することができる。樹脂層22a1,22a2は、例えば、樹脂層22a1の樹脂部材のガラス転移温度が、樹脂層22a2のガラス転移温度より高くなるように、樹脂部材を選定しても構わない。具体的には、樹脂層22a1にはPEEKを樹脂材料とする樹脂部材で構成し、樹脂層22a2にはPETを樹脂材料とする樹脂部材で構成しても構わない。また、ガラス転移温度が比較的高い樹脂材料を有する樹脂層をボイスコイル25側に配置し、ガラス転移温度が比較的低い樹脂材料を有する樹脂層を振動体21側に配置したエッジ22を用いても構わない。
【0019】
図示の例は、エッジ22の内周部22Aは、磁気回路30側における振動体21の面(磁気回路30に対面する面;背面)に取り付けられている。ボイスコイル25は、エッジ22の内周部22Aを介して振動体21に連結されている。ボイスコイル25の上端部は、エッジ22の内周部22Aに連結されている。
【0020】
この例では、エッジ22のボイスコイル側に配置される樹脂層22a2を構成する樹脂フィルムは、ガラス転移温度が100℃以上である。また、樹脂フィルムは、ガラス転移温度が100℃以上である樹脂材料で主に構成されている。樹脂フィルムは、具体的には、PEN(ポリエーテルナフタレート、ガラス転移温度=155℃)、PEEK(ポリエーテル・エーテルケトン、ガラス転移温度=143℃)、PET(ポリエステル、ガラス転移温度=115℃)などを用いることができる。
【0021】
図示の例では、振動体21は平板状であるとともに、振動体21は、セラミック系の剛性振動部材で構成されている。セラミック系の剛性振動部材を振動体21に用いるので、ボイスコイル25のジュール熱がエッジ22、振動体21へと伝播し、振動体21にジュール熱が蓄熱される。振動体21にジュール熱が蓄熱されるので、エッジ22の内周部22Aの温度が上昇し、エッジ22の材料を適正に選択しないとエッジ22が振動体21に追随できなくなる。これに対して、スピーカ装置1は、エッジ22の樹脂層22a2として、ガラス転移温度が比較的高い樹脂フィルムを用いているので、振動体21にジュール熱が蓄熱しても、エッジ22が振動体21に追従できる。また、エッジ22にガラス転移温度が比較的高い樹脂フィルムを用いることで、エッジ22の温度が比較的高くなり、エッジ22の物性が温度変化しても、振動体21を静止部10に振動自在に支持することができる。また、エッジ22にガラス転移温度が比較的高い樹脂フィルムを用いることで、スピーカ装置を駆動している間、ボイスコイル25を磁気回路30に対して、所定の位置に配置することができる。また、エッジ22にガラス転移温度が比較的高い樹脂フィルムを用いることで、スピーカ装置を駆動している間、振動体21の振動を規制できる。
また、振動体21をセラミック系の剛性振動部材で構成すると、軽量になるので、音圧を比較的大きくできる。
【0022】
スピーカ装置1では、振動体21より比較的柔軟なエッジ22を振動体21とボイスコイル25との間に介在させることで、外部からの衝撃に対して比較的強度が小さいセラミック系の剛性振動部材を振動体21に用いることができる。これによると、例えば、スピーカ装置1を搭載した電子機器(携帯用電子機器など)が落下して衝撃が加わる場合がある。この時、ボイスコイル25が磁気回路30が有する後述するヨークに接触するとともに、ボイスコイル25が振動体21に比較的大きな外力(衝撃)を与える場合がある。この時、振動体21がエッジ22を介してボイスコイル25に連結していることで、振動体21に割れ等の不具合が発生することを抑止できる。また、エッジ22は、ボイスコイル25による外力を緩和する緩衝部材となる。
【0023】
剛性振動部材は、実質的に炭素(例えば、カーボンセラミックスなど)で構成することができる。また、剛性振動部材は、発泡構造を有する発泡層と、この発泡層を覆う被覆層とを有する構成部材で構成できる。この剛性振動部材が有する被覆層は、連続的に形成される層である。被覆層の密度は、発泡層の密度より大きい。また、被覆層の空隙率は、発泡層の密度より小さい。ここでいう空隙率(%)は、(1―[発泡層もしくは被覆層の重量(g)]/[構成材料の密度(g/m3)]/[発泡層もしくは被覆層の体積(m3)])×100で表される。
【0024】
エッジ22の複数の樹脂層22a1,22a2における共通の樹脂部材、又は共通の樹脂材料は、ポリエーテル・エーテルケトン樹脂又はポリエーテルイミド樹脂、ポリエステル系樹脂とすることができる。また、エッジ22の軟質層22bは、例えばアクリル系樹脂で構成することができる。必要に応じて、軟質層22bは、水分散型の樹脂材料(エマルジョン系樹脂)、又は粘着剤で構成することができる。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係るスピーカ装置に装備される振動部の他の形態を示す説明図である。この振動部20は、振動体21とエッジ22がボイスコイル支持部27を介して連結している。ボイスコイル支持部27にはボイスコイル25が支持されている。ボイスコイル支持部27の構成部材の密度を、振動体21とエッジ22の構成部材の密度より小さくしている。
【0026】
図示の例では、振動体21の形態はドーム型であり、その外周部にボイスコイル支持部27の上端部が連結されている。この振動体21としては、例えばエッジ22と異なる材料として、アルミニウム又はマグネシウム等の金属材料を用いることができる。エッジ22の内周部がボイスコイル支持部27の外周側面に連結され、エッジ22の外周部が静止部10に連結されている。エッジ22は、前述したように複数の樹脂層22a1,22a2と軟質層22bによって構成することができる。ボイスコイル支持部27としては、例えば紙などの軽量の部材を用いることができる。これによると、スピーカ装置1の小型・軽量化を図りながら、音響特性を向上させることができる。
【0027】
図3は本発明の実施形態に係るスピーカ装置の全体構成を示した断面図であり、図4は、その部分拡大断面図である。スピーカ装置1は、静止部10と、振動部20と、磁気回路30とを備えている。振動部20は、振動体21と、振動体21を静止部10に支持するエッジ22と、振動体21に直接又は他の部材を介して支持されるボイスコイル25とを備えている。磁気回路30は、第1の磁極部31と第2の磁極部32とで構成される磁気ギャップ30Gと、磁石35(内側磁石35B)とを備えている。磁気ギャップ30G内にボイスコイル25が配置される。振動部20は、静止部10に振動自在に支持されている。図3においては、第1の磁極部31がプレート34であり、第2の磁極部32がヨーク33によって構成されている。エッジ22は振動体21と別体に形成され、振動体21に直接又は接着剤等の他の部材を介して接合されている。なお、図3にはエッジ22は振動体21の上面に対して磁気回路30側に配置されていることが示されている。特にエッジ22の内周部は、振動体21の下面に直接又は接着剤等の他の部材を介して接合されている。
【0028】
[振動部の構造及び振動部と他部との位置関係]
振動体21は、それ自身が剛性を備えており、剛性を備える振動体21の外周部21Aがボイスコイル25の外側に突出している。このように、外周部21Aをボイスコイル25の外側に突出させることで、振動体21に支持されるボイスコイル25から外周部21Aの突出分だけ離れた位置からエッジ22がヨーク33に近づくように湾曲することになる。そのため、ボイスコイル25が磁気ギャップ30G内で振動するとき、エッジ22の湾曲部が第2の磁極部32(ヨーク33)の上部に干渉しにくいという構造を、振動体21は備える。
【0029】
また、図示の例では、振動体21の外周部21Aは、径方向(図示Y方向)における第2の磁極部32の位置近傍又は外側に配置されている。すなわち、振動体21の外周部21Aは、図4及び図5に示すように、第2の磁極部32となるヨーク33の壁部33B上に配置されている。また、振動体21の外周部21Aは、ヨーク33の壁部33Bの位置近傍又は外側へ延在している。図示の例では、振動体21の外周部21Aは、壁部33Bの内側側面の位置近傍又は外側に配置されている。また、図示の例に限定されることなく、壁部33Bの外側側面の位置近傍又は外側に配置しても構わない。これによると、外周部21Aからエッジ22の湾曲部が形成される際、磁気ギャップ30Gを越える外側の位置にてエッジ22の湾曲部が形成される。このため、エッジ22の湾曲部が磁気ギャップ30Gを形成する第2の磁極部32(ヨーク33)に干渉しにくくなる。
【0030】
図5は、エッジ22の詳細を示している。エッジ22は、第2の磁極部32の上に配置され、音響放射方向(図示X方向)に向かって凸状の形状を有する第1の湾曲部23と、凹状の第2の湾曲部24とを備えている。この第2の湾曲部24は、第1の湾曲部23に連続して設けられている。このように、第1の湾曲部23に連続する第2の湾曲部24の一部は、第2の磁極部32に干渉しにくくなる。具体的には、第2の湾曲部24は、径方向における第1の湾曲部23の大きさだけヨーク33の壁部33Bから離れるので、第2の磁極部32に干渉しにくくなる。
【0031】
第1の湾曲部23は第2の磁極部32の上で且つその近傍に配置され、第2の湾曲部24は第1の湾曲部23の外側に配置されている。これによって、第2の湾曲部24の頂部24Cを第2の磁極部32より外側(Y方向側)に位置させることができ、最も干渉しやすい頂部24Cを第2の磁極部32(ヨーク33)から離れた位置に設けることが可能になる。
【0032】
第1の湾曲部23の内周部23Aは、振動体21を支持している。また、第1の湾曲部23の内周部23Aは、第2の湾曲部24の内周部24Aより、第2の磁極部32に対して高い位置に配置されている。すなわち、第2の磁極部32から第2の湾曲部24の内周部24Aまでの高さh1と第2の磁極部32から第1の湾曲部23の内周部23Aまでの高さh2を比較すると、h1<h2になっている。このようにして、第2の磁極部32と第1の湾曲部23の内周部23Aとの間に、比較的大きい間隙を設けることができる。
【0033】
エッジ22は、第1の湾曲部23の内周部23Aと外周部23Bとの間に設けられる頂部23Cを備える。この第1の湾曲部23の頂部23Cは、振動体21の外周部21A近傍に配置されている。また、第1の湾曲部23の頂部23Cは、磁気回路30に対して、振動体21と実質的に同じ高さに配置されており、第1の湾曲部23の内周部23Aは、第1の湾曲部23の頂部23Cに対して実質的に同じ高さに配置されている。このように頂部23Cを有する第1の湾曲部23を形成することで、第2の湾曲部24の内周部24Aを第2の磁極部32から振動体21側であって、離れた位置に設けることができる。
【0034】
また、第1の湾曲部21は径方向に沿った長さL1を有する。第2の湾曲部24は、径方向に沿った長さL2及びL3を加算した長さを有する。ここで、長さL2は第2の湾曲部24の内周部24Aから頂部24Cまでの長さであり、長さL3は第2の湾曲部24の頂部24Cから外周部24Bまでの長さである。第2の湾曲部24と振動体21との間に第1の湾曲部23が設けられることで、第2の湾曲部24の頂部24Cは、長さL1だけ、第2の磁極部32から離れた位置に設けることができる。このため、高さ方向にて第2の湾曲部24の一部と第2の磁極部32との間に比較的大きい間隙を設けることができ、第2の湾曲部24が第2の磁極部32に干渉することを抑止できる。
【0035】
振動体21の静止時(ボイスコイル25に音声電流が入力されていない時)には、エッジ22の外周部22Bは、エッジ22の内周部22Aに対して高い又は実質的に同じ高さに配置されている。ボイスコイル25の振動に伴って、エッジ22の内周部22Aは、エッジ22の外周部22Bより上下に振動することになる。このように、エッジ22の外周部22Bから音響放射側にエッジ22の内周部22Aが突出しない構造にすることで、スピーカ装置1の薄型化が可能になる。
【0036】
第2の湾曲部24は、その内周部24Aと外周部24Bとの間に設けられる頂部24Cを有する。この第2の湾曲部24の頂部24Cは、第2の磁極部32の位置に対して外側に配置されるとともに、第2の磁極部32に対して高い位置に設けられている。このように配置することで、ボイスコイル25の振動に伴って、第2の湾曲部24の頂部24Cが第2の磁極部32に近づくことはあるが、第2の湾曲部24の一部が第2の磁極部32に接触することがないように配置することができる。
【0037】
径方向(図示のY方向)における第2の磁極部32とエッジ22を支持する静止部10の一部との間の距離S1は、エッジ22の内周部22Aと外周部22Bとの間の距離S2に対して小さく形成されている。ボイスコイル25の振動方向における第2の磁極部32の高さは、第1の磁極部31の高さより低く設けられており(図4においてΔhの高さの差がある)、振動体21から第2の磁極部32までの距離(h3+Δh)は、振動体21から第1の磁極部31の距離(h3)より大きく形成されている。
【0038】
第1の湾曲部23の湾曲径R1は、第2の湾曲部24の湾曲径R2に対して小さく、第1の湾曲部23は第2の湾曲部24より大きい曲げ剛性を備えている。第1の湾曲部23の湾曲径R1が比較的大きい場合、第1の湾曲部23が屈曲しやすくなり(変形しやすい)、第2の磁極部32に干渉しやすくなる場合がある。また、不要な共振(分割共振、逆共振も含む)が発生する場合がある。また、この不要な共振の発生に伴って、ローリング現象が誘発する場合がある。上記のような、第1の湾曲部23の湾曲径R1を比較的小さくした場合、不要な共振が発生することを抑止でき、音響特性を向上できる。
【0039】
エッジ22の第2の湾曲部24は、その径方向に沿って、第2の湾曲部24の表面24Dから突出する補強部24Eを備え、第2の湾曲部24の補強部24Eは、第2の湾曲部24の外周部24Bと内周部24Aとの間に配置されると共に第1の湾曲部23の外周部23B近傍まで延在している。図示の例では、補強部24Eは、第2の湾曲部24が有する内周部24Aの位置近傍から外周部24Bの位置近傍にまで延びている。これによると、補強部24Eは、湾曲径の大きい第2の湾曲部24によって振動体21の振幅を有効に確保できる。また、補強部24Eは第2の湾曲部24に適度な剛性を付与するので、エッジ22は振動体21を所定の位置に支持できる。また、ボイスコイル25にローリング現象(横揺れ)が生じることを抑止できる。また、振動体21が振動した際、エッジ22が周方向にて変形することで、エッジの角部にしわが生じる場合がある。また、このしわの発生により、ボイスコイル25にローリング現象が発生する場合がある。この補強部24Eは、周方向に沿って、その形状を伸縮する形状を備えている。具体的には、補強部24Eは頂部を備え、この頂部にて補強部24Eが屈曲又は屈折運動することで、その形状を伸縮する。この補強部24Eの屈曲運動又は屈折運動により、エッジ22の角部にしわが生じることを抑止できる。また、ボイスコイル25のローリング現象の発生を抑止できる。
【0040】
一般に、スピーカ装置を薄型化又は小型化する場合には、振動板と磁気回路を相互に近接させて薄型化することや、フレームを磁気回路に接近させて小型化することが考えられる。このとき、凹状のエッジが磁気回路のヨークに接近した状態で配置されるため、振動板が振動する際に、エッジがヨークに接触する不具合が生じることがある。また、このような接触により異音が生じる場合がある。
【0041】
スピーカ装置1は、前述した構造を備えることで、振動体21の振動時に、エッジ22が磁気回路30の構成部材である第2の磁極部32(ヨーク33)に接触しにくい構造を備える。したがって、振動体21を磁気回路30に近接させることでスピーカ装置1の薄型化を図った場合であっても、エッジ22とヨーク33の接触やこの接触による異音の発生を抑止することが可能になる。
【0042】
すなわち、スピーカ装置1は、エッジ22とヨーク33の接触を抑止すると共に、スピーカ装置1の薄型化又は小型化を図るために、剛性を有する振動体21と、ボイスコイル25との連結位置より外側に突出すると共に、第2の磁極部32の近傍に配置される振動体21の外周部21Aを備える。また、スピーカ装置1は、凸状の湾曲部である第1の湾曲部23と、第1の湾曲部23より外側に配置されると共に、凹状の湾曲部である第2の湾曲部24とを有するエッジ22を備える。このような振動部20をスピーカ装置1が備えることで、スピーカ装置1の小型化、薄型化を図ることができると共に、エッジ22がヨーク33に接触すること及びその接触による異音の発生を抑止することができる。
【0043】
図示のエッジ22は内周部22Aを持つが、これに限らずエッジ22が外周部22Bだけを持つ場合もある。具体的には、エッジ22と振動体21とが一体に形成されていてもよい。また、振動体21がエッジ22と一体に形成されている弾性を有する部材と剛性を有する部材との2層構造になっていてもよい。この場合、弾性を有する部材は、剛性を有する部材に対し、磁気回路30側に配置されることで、弾性を有する部材が剛性を有する部材に対し音響放射側に配置された場合と比較して、スピーカ装置1を薄型化できる。
【0044】
第1の湾曲部23の頂部23Cが、剛性を有する振動体21の外周部21A近傍に設けられることで、振動体21が振動している間でも、第1の湾曲部23の一部が振動体21と略同じ高さを維持でき、第2の磁極部32との接触を抑止することができる。また、第1の湾曲部23と第2の湾曲部24との間の距離を比較的大きくできるので、振動体21の振幅を比較的大きくすることができる。
【0045】
スピーカ装置を小型化するに伴い、振動体の有効振動面積も小さくなるという問題がある。振動体21の外周部21Aをボイスコイル25より外側に配置し、さらに第1の湾曲部23の頂部23C近傍にまで延在することで、比較的大きい振動体21の有効面積を得ることができる。また、第1の湾曲部23の湾曲径R1を比較的小さくしつつ(剛性を維持しつつ)、頂部23Cを振動体21の外周部21Aから離れた位置であって、振動体21と実質的に同じ高さに配置することで、第1の湾曲部23の一部を振動体21の一部とすることができる。この場合、スピーカ装置1が有する有効振動面積を比較的大きくすることができる。
【0046】
前述の説明に限らずエッジ22の内周部22Aはエッジ22の外周部22Bより高くすることもできる。この場合は、エッジ22と第2の磁極部32との距離を大きくでき、両者の接触を抑止することができ、また振動体21の振幅を比較的大きくすることができる。
【0047】
第2の湾曲部24の頂部24Cを第2の磁極部32より外側に配置することで、第1の湾曲部23と第2の磁極部32との距離を比較的大きくできる。これによっても、エッジ22と第2の磁極部32との接触を抑止することができる。また、第1の湾曲部23と第2の磁極部32との間の距離を比較的大きくできるので、第1の湾曲部23と第2の磁極部32との接触を抑止することができる。
【0048】
振動体21は、剛性を有する剛性振動部材21Bを備え、剛性振動部材21Bは、炭素を構成要素とする。剛性振動部材21Bは、図6に示すように、発泡構造を有する発泡層21Cと、発泡層21Cを覆う被覆層21Dとを有する。
【0049】
エッジ22は樹脂部材で構成される。また、剛性振動部材21Bを有する振動体21は、図示の例では剛性振動部21Bと実質的に同じ形状であり、且つポリエーテルイミドで構成され、密度が約1.27g/cm3、ヤング率が約4MPaである比較用振動体に対して、小さい密度と大きい剛性を有する。また、振動体21の厚さは、エッジ22の全高に対して小さく形成されている。
【0050】
振動体21におけるヤング率を密度で除算した大きさは、前述した比較用振動体におけるヤング率を密度で除算した大きさに対して大きくなっている。また、炭素のみで実質的に構成される剛性振動部材21Bは、その密度が約0.5g/cm3、そのヤング率が約7GPa、その曲げ強度が約25MPa、その厚さが約0.3mmである。
【0051】
振動体21を、炭素を主成分とする部材で構成することで、軽量で且つ薄くすることができる。また、エッジ22を構成する樹脂部材で構成された前述した比較用振動体に対して、軽量であり、剛性が高くなっている。剛性振動部材21Bは、図示の例では、発泡構造を有する発泡層21Cと、発泡層21Cの表面及び裏面を覆う2つの被覆層21Dとを有する。この被覆層21Dは、実質的に連続面を形成している。このため、発泡層21Cの表面に被覆層21Dが設けられることで、振動体21の背面側(磁気回路30側)から伝播する音波が振動体21を通過して音響放射方向に放出されることを抑止でき、音響特性を向上させることができる。
【0052】
[磁気回路の構造]
図3に示すように、磁気回路30は、ヨーク33、ヨーク33に支持される磁石35とプレート34とを備え、ヨーク33は、磁石35と磁気的に連結される底面部33Aと、底面部33Aから立設される壁部33Bとを備えている。そして、第1の磁極部31としてのプレート34と、第2の磁極部32としてのヨーク33の壁部33Bとの間に、磁気ギャップ30Gが配置されている。図示の例では、ヨーク33の底面部33Aは平板形状を備える。
【0053】
また、図3のX1-X1断面図である図6に示されるように、磁気回路30は、ヨーク33、ヨーク33に支持される内側磁石35A、外側磁石35B、1つ又は複数のプレート34を備えている。ヨーク33は、磁石35と磁気的に連結される底面部33Aを備え、ボイスコイル25の内側に内側磁石35Aが配置され、ボイスコイル25の外側に外側磁石35Bが配置され、プレート34は、内側磁石35A又は外側磁石35Bの一方の上に配置され、第1の磁極部31がプレート34又は内側磁石35Aであり、第2の磁極部32が外側磁石35B上のプレート又は外側磁石35Bである。図示の例では、プレート34が第1の磁極部31であり、外側磁石35Bが第2の磁極部32になっている。
【0054】
図7は、磁気回路の全体構成を示したものである(同図(a)が平面図、同図(b)が斜視図)。図7に示すように、複数(一対)の外側磁石(他方の磁石)35Bは、内側磁石(一方の磁石)35Aを挟んで、対向する位置に配置されている。また、ヨーク33は対向する複数の壁部33Bを備えている。そして、周方向におけるヨーク33の壁部33Bの間に、外側磁石(他方の磁石)35Bが配置されており、各外側磁石35Bはヨーク33の底面部33Aに磁気的に連結して配置されている。
【0055】
磁石35の配向は磁石35の厚さ方向に沿って形成されているが、一例として、図8に示すように、厚さ方向に対して斜めに形成することもできる。ここでは、内側磁石35A又は外側磁石35Bのうち、一方の磁石35A(35B)は磁石35A(35B)の配向の向きが、磁石35A(35B)の厚さ方向に沿っており、他方の磁石35B(35A)は磁石35B(35A)の配向の向きが、磁石35B(35A)の厚さの方向に対して斜めの方向になっている。図示の例では、外側磁石35Bが厚さ方向に対して斜めに配向されているが、この外側磁石35Bの配向を厚さ方向にして、内側磁石35Aの配向を厚さ方向に対して斜めにしてもよい。内側磁石35Aの配向を斜め方向にする場合には、例えば棒状で複数の内側磁石35Aをヨーク33の上に、環状に配置する。また、内側磁石35A及び外側磁石35Bの配向を厚さ方向に対して斜め方向にしても構わない。この場合には、棒状で複数の内側磁石35A、棒状で複数の外側磁石35Bをヨーク33の上に、環状に配置する。また、内側磁石35A及び外側磁石35Bの配向を厚さ方向に沿って形成しても構わない。その場合には、内側磁石35Aの上に内側プレートを配置し、外側磁石35Bの上に外側プレートを配置する。いずれの場合であっても、内側磁石35A及び外側磁石35Bのそれぞれの磁石の配向の向きは、磁石の厚さ方向において、実質的に一定の方向である。すなわち、磁石の厚さ方向で配向の向きが実質的に大きく変わることがない。また、図示の例では、外側磁石35Bの配向の向きは右斜め下の方向であるが、これに限定されない。例えば、内側磁石35Aの配向が厚さ方向に沿って下方である場合には、外側磁石35Bの配向の向きは左斜め上方向である。このように、磁石35から発せられる磁束が磁石35及びヨーク33を通過して磁気ループ(閉回路)を構成するよう、適宜磁石35の配向の向きを変更することができる。
【0056】
この際、外側磁石(他方の磁石)35Bが発する磁束は、ヨーク33から離れた位置を通過しており、磁束が通過する位置近傍に磁気ギャップ30Gが形成されている。すなわち、磁気ギャップ30Gは、磁束が通過する位置であって、磁極部としての外側磁石(他方の磁石)35Bと、外側磁石(他方の磁石)35Bの位置とは異なるヨーク33の一部の上に設けられた磁極部(プレート34)との間に形成されている。
【0057】
また、図示の例では、磁気回路30は内側磁石35Aと外側磁石35Bとヨーク33とプレート34とを有しているが、外側磁石35Bに代えて、ヨーク33の壁部33Bを配置しても構わない。
【0058】
スピーカ装置1を駆動する際、ボイスコイル25に音声信号が入力される。この音声信号の入力に伴い、ボイスコイル25にはジュール熱が発生する。このジュール熱により、磁気回路30内の温度が高まる場合がある。一般に磁気回路内の温度が高まると高温減磁の問題が生じることがある。
【0059】
また、ジュール熱がボイスコイル25から輻射熱として充分に放熱されない場合、ボイスコイル25や引出線26の温度が比較的大きくなる場合がある。一般にボイスコイルや引出線の温度が比較的大きくなるとこれらが断線する問題が生じることがある。
【0060】
さらに、スピーカ装置1の駆動を繰り返すことで、ボイスコイル25や引出線26が高温状態又は常温状態になる場合がある。また、スピーカ装置1を使用する環境では、ボイスコイル25又は引出線26は低温状態になる場合がある。このような、高温状態と常温状態又は高温状態と低温状態のサイクルが繰り返されることで、一般にボイスコイル又は引出線に負荷が作用し、これらに断線が生じる懸念がある。
【0061】
本発明の実施形態としては、ボイスコイル25又は引出線26の熱を磁気回路30の構成部材、又は静止部10としてのフレーム11に伝播させることで放熱させることができ、前述した高温減磁や断線の問題の解消に寄与できる場合がある。熱の伝播径路として、例えばボイスコイル25(引出線26も含む)、プレート34、磁石35A、35B、ヨーク33、フレーム11の順序とする伝播径路が挙げられる。さらに、ヨーク33の壁部からフレーム11に伝播する伝播径路も考えられる。熱の伝播径路としては、これに限定されず、ボイスコイル25又は引出線26の近傍に配置される磁気回路30の構成部材又は振動部20の構成部材、他の構成部材、外部へと熱が伝播する径路も考えられる。
【0062】
また、磁石は熱容量が比較的大きいので、ボイスコイル25や引出線26の熱を効率良く伝播することに寄与できる。特に、磁気回路30が内磁型及び外磁型を併用する併用型である磁気回路30は、内磁型の磁気回路に対し、外側磁石を備える。このため、併用型の磁気回路は、内磁型の磁気回路に対して、磁石の個数の点で多く、磁石の表面積の点で大きくなる。この時、磁気回路30全体の熱容量が比較的大きくなって、ボイスコイル25又は引出線26の熱をより多く放出できる場合がある。
【0063】
また、磁気回路30が外磁型又は併用型である場合、内磁型の磁気回路より、ヨーク33の外径が大きくなる場合がある。この時、磁気回路30全体の熱容量が比較的大きくなって、ボイスコイル25又は引出線26の熱の放出により大きく寄与できる場合がある。
【0064】
図7に示した例では、外側磁石(他方の磁石)35Bは、長軸及び短軸で規定される形状(一方向に長い矩形状)を備える。また、外側磁石(他方の磁石)35Bには、切欠部35B1によって形成される配向判別部36が設けられている。配向判別部36(切欠部35B1)は、厚さ方向に対して斜めに形成された配向の向きを明示するために設けられている。ここでは、切欠部35B1が形成されていない面を磁気ギャップ30G側に向けている。また、切欠部35B1が形成された面を、ヨーク33の壁部33B側で且つヨーク33の外側に配置させることで、磁石の配向を適切な向きに沿って配置できる。
【0065】
外形が実質的に同じである外側磁石(他方の磁石)35B,35Bを用いる場合、磁石の配向がどの方向であるかを識別できないという問題がある。そこで、磁石の配向の向きを識別して、適切な位置に他方の磁石を配置すべく、配向の向きを判別する配向判別部36を設けている。この配向判別部36は、前述したように磁石35に設けられる切欠部35B1などによって形成できるが、それに限らず磁石の表面に矢印などの表示を付与ことによって形成することもできる。
【0066】
スピーカ装置1の磁気回路30における磁石35は、前述したように、第1の磁石(内側磁石35Aと外側磁石35Bのいずれか)の配向が厚さ方向であり、第2の磁石(外側磁石35Bと内側磁石35Aのいずれか)の配向は厚さ方向に対して斜めの方向になっている。なお、着磁方向は、磁石の配向の向きに沿わせても良く、或いは磁石の配向の向きに対し異なる向きにしても構わない。配向が斜め方向である磁石を用いることで、磁気漏洩(磁束が下方にあるヨーク33へ向かい、磁気ギャップ30G内を通過しない)の発生を抑止でき、磁気ギャップ30G内の磁束密度を比較的大きくできる。また、磁気ギャップ30G内における磁束密度のピーク位置をヨーク33に対して離れた位置であって、比較的高い位置に設定することができる。そのため、磁気回路30Gを薄型化しても、比較的高い磁束密度を有する磁気回路30を使用することができ、ボイスコイル25に作用する電磁気力を比較的大きくできる。
【0067】
配向判別部36について付言すると、配向が斜め方向である磁石を用いる場合、配向が厚さ方向である磁石をも同時に用いると、生産時に両者を区別することが困難になる。また、斜めの方向とは磁石のどの方向かを確認するのに不要な時間を要する。そこで、例えば、第2の磁石(外側磁石35B)として配向が斜め方向である磁石を用いる場合、第2の磁石(外側磁石35B)の端面に切欠部35B1を設け、磁石の種別を判断する目印としている。
【0068】
[磁気回路の取付構造]
図9図11は、磁気回路を静止部に取り付ける取付構造を示している。図9は、静止部内に磁気回路を取り付けた状態の平面斜視図、図10(a)は図9におけるX2-X2断面図、図10(b)は図9におけるX3-X3断面図、図11は、静止部内に磁気回路を取り付けた状態の背面斜視図をそれぞれ示している。スピーカ装置1は、静止部10としてのフレーム11を備えており、フレーム11は、磁気回路30のヨーク33が取り付けられる外周筒部11Aと、開口部11B1を有する底面部11Bとを備えている。
【0069】
フレーム11の外周筒部11Aは、その下端部11A1に1つ又は複数の凹部11A2を備える。また、ヨーク33は、底面部33Aからフレーム11に向かう方向に突出する突出部33Cを備えている。ヨーク33の一部がフレーム11の開口部11B1に配置され、ヨーク33の突出部33Cがフレーム11の凹部11A2内に配置されて、ヨーク33とフレーム11とが取り付けられる。ヨーク33の下面33Eは、フレーム11の下面11Cに対して、振動体21側の位置又は実質的に同じ位置に配置されている。フレーム11は、樹脂部材等で形成することができる。
【0070】
フレーム11と外側磁石35Bとの間には、フレーム11と外側磁石35Bとを接合する接合部材50を溜める接合部材溜め部51が設けられている。接合部材溜め部51は、所定の間隙52を備える。この間隙52は、フレーム11の突出部11Eと外側磁石35Bとの間に設けられる第1の間隙と、フレーム11の内側側面11Dと外側磁石35Bとの間に設けられる第2の間隙とで構成される。フレーム11は、外側磁石に対面する側面としての、内側側面11Dを有する。第1の間隙を構成する突出部11Eは、外側磁石35Bに対面するフレーム11の内側側面11Dから、内側に向かって突出し、外側磁石35Bの上に設けられている。第2の間隙は、第1の間隙に対してヨーク33側に配置され、径方向における第1の間隙の幅より大きい幅を有する。そして、間隙52には、フレーム11と外側磁石35Bとを接合する接合部材50が充填されている。
【0071】
磁気回路30とフレーム11との間には、外側磁石35Bの下面側に、通路37が設けられている。この通路37は、フレーム11と外側磁石35Bとの間に設けられる間隙52と外部とを連通させている。
【0072】
スピーカ装置1を搭載する電子機器などでは、機器内部のスペースに制限がある。スピーカ装置1の背面側には、スピーカ装置1が有する端子部12に電気的に接触する電子機器の外部端子が設けられる。ここで、磁気回路30を構成する構成部材として、例えばヨーク33がフレーム11に対し電子機器側に突出している場合を想定する。なお、ヨーク33は導電性を有する部材で構成されており、フレーム11は樹脂などの絶縁性部材で構成されている。この場合、導電性を有するヨーク33と、外部端子との電気的な接触が生じ、電子機器の動作不良となる問題が生じる場合がある。特に、携帯電話用のスピーカ装置は比較的小さいので、ヨーク33の形状の公差が大きいと、フレーム11からのヨーク33の一部が突出してしまう場合がある。そこで、フレーム11に凹部11A2を設け、この凹部11A2にヨーク33の突出部33Cを配置することで、ヨーク33の一部が突出することを抑止できる。これにより、スピーカ装置1を所定のスペース内に配置でき、ヨーク33と外部端子との接触を回避しながら電子機器の薄型化が可能になる。
【0073】
より具体的には、フレーム11の凹部11A2は、径方向におけるフレーム11に対するヨーク33の位置を決める位置決め部になっている。フレーム11の凹部11A2でヨーク33の位置を実質的に決定できる。また、スピーカ装置1を薄型化するに際して、ヨーク33の形状の公差等により生じるヨーク33の一部が突出することを抑止できる。また、ヨーク33の一部が外部端子と電気的に接触することで起きる電子機器の動作不良を抑止することができる。また、磁気回路30を構成する他の構成部材がフレーム11に対して突出する場合にも、外部端子部と電気的に接触することを抑止できる。
【0074】
磁気回路30の径方向(ボイスコイル25の振動方向と交差する方向)においては、例えば、磁気ギャップ30Gを規定の幅にするために、外側磁石35Bの位置を径方向に位置調整する場合がある。また、仮に外側磁石35Bが所望する幅より大きい幅を有する(公差を有する)場合には、磁気ギャップ30Gの幅を優先すると外側磁石35Bがフレーム11内に設置できない場合が生じる。これを解消するために、フレーム11と外側磁石35Bとの間に所定の間隙52を設けておく。この間隙52内に、幅が実質的に公差と同じである、外側磁石35Bの一部を配置する。これにより、磁気ギャップ30Gを規定の幅にすることができる。また、外側磁石35Bをフレーム11内に配置できる。
【0075】
フレーム11と外側磁石35Bとを接合するために、この間隙52内に接合部材50を充填する。フレーム11の内側側面11Dには、突出部11Eが設けられている。この接合部材50を充填した際、突出部11Eは接合部材50が外側磁石35Bの上方に漏れ出すことを抑止できる。また、フレーム11とヨーク33との間に、外部と連通する通路37となる所定の間隙を設ける。この接合部材50を注入する注入器の注入口(ディスペンサ)を通路37内に挿入することができる。また、フレーム11と外側磁石35Bとの間に接合部材50を充填することができる。
【0076】
フレーム11はヨーク33の底面部33Aと当接する底面部11Bと、磁気回路30を囲み、エッジ22を支持する外周筒部11Aとを備えている。このフレーム11の外周筒部11Aと第2の磁石(外側磁石35B)との間に間隙52を設けている。この間隙52内に接合部材50を充填し、フレーム11と第2の磁石(外側磁石35B)とを接合する。なお、間隙52は、第2の磁石(外側磁石35B)の外周側面よりフレーム11側に所定の間隙を設け、磁石のサイズ(公差)に対応してフレーム11に第2の磁石(外側磁石35B)を含む磁気回路30を取り付けることを可能にしている。
【0077】
例えば、携帯電話に搭載されるスピーカ装置1は、その寸法が予め規定されている。また、規定された寸法に納め、且つボイスコイル25の電磁気力を比較的大きくする等の要求を満たすため、スピーカ装置1は規定の寸法を有効に活用する必要がある。また、スピーカ装置1内の各構成部材は、規定の寸法になるよう、比較的高い精度で、その位置が規定されている。そのため、構成部材が複数あり、且つ構成部材の公差があることで、構成部材の位置にズレが生じると、構成部材を規定の位置に配置できなくなる場合や、スピーカ装置が規定の寸法を超える場合がある。そこで、構成部材の公差によるズレを低減すべく、ヨーク33と対向するフレーム11の外周筒部11Aに凹部11A2を設け、この凹部11A2にヨーク33の底面部33Aの突出部33Cを配置する。この時、公差に相当するヨーク33の一部が、フレーム11の凹部11A2内に配置される。このような配置にすることで、構成部材の公差によるズレを低減でき、スピーカ装置1を薄型化できる。よって、他の構成部材を規定の位置に配置すること、スピーカ装置1を規定の寸法にすることが可能になる。
【0078】
図12(a),(b)は、磁気回路の取付構造における他の例を示した説明図である。同図(a)の例は、第1の磁極部31が内側プレート34Aで形成され、第2の磁極部32が外側プレート34Bで形成され、その間に磁気ギャップ30Gが形成されている。そして、この磁気回路30を静止部10に取り付ける際に、フレーム11の突出部11Eの下面に形成される固定面11E1に外側プレート34Bの上面を当接させるようにしている。また、同図(b)の例は、フレーム11の底面部11Bに形成される固定面にヨーク33の上面を当接させて、磁気回路30を静止部10に取り付けている。また、図12(a)の例では、内側磁石35Aと外側磁石35Bは実質的に同じ厚さを備えている。また、外側プレート34Bの厚さは、内側側プレート34Aの厚さに対して大きい。これにより、外側プレート34Bは、その上方に配置されるエッジ22との間に、比較的大きい間隙を設けることができる。また、図12(a)において、内側磁石35Aと外側磁石35Bの配向を厚さ方向に沿う方向にしても構わない。この場合、内側プレート34Aと外側プレート34Bにて、磁気ギャップ30Gが実質的に形成される。また、図12(b)において、外側磁石35Bの配向を厚さ方向に対して斜め方向にし、内側磁石35Aの配向を厚さ方向に沿う方向にしても構わない。この場合には、内側プレート34と外側磁石35Bにて、磁気ギャップ30Gが実質的に形成される。
【0079】
[引出線の配置と断線抑止]
図4には、ボイスコイル25と引出線26の断面図が示されている。ボイスコイル25の下端部25Aから引き出される引出線26と、引出線26を介してボイスコイル25を外部に電気的に接続する複数の端子部12とを備えている。フレーム11には、この端子部12が設けられている。ヨーク33は、底面部33Aから立設される複数の壁部33Bと、隣接し合う壁部33Bの間に設けられる切欠部33Fを備える。ボイスコイル25の引出線26は、切欠部33Fを通過し、ヨーク33の壁部33Bと、壁部33Bと対面するフレーム11の内側側面11Dとの間に設けられる引出通路38を通過して、端子部12に接続される。
【0080】
フレーム11に設けられる複数の端子部12は、図9に示すように、ボイスコイル25の長軸25Lで区画される2つの領域25N1,25N2のうち、一方の領域25N1の側に配置されている。図示の例では、引出線26が複数備けられている。また、ボイスコイル25から引き出される引出線26の引出位置は、他方の領域25N2の側に配置されている。
【0081】
すなわち、ボイスコイル25の外側には、第2の磁石(外側磁石35B)がヨーク33の上に配置されている。ボイスコイル25の下端部25Aから、引出線26が引き出されている。引出線26は、ボイスコイル25の中央位置を通過する長軸25Lで区切られる2つの領域のうち、一方の側に配置される複数の端子部12に向かって引き回されている。引出線26の引出位置はボイスコイル25の角部近傍、具体的にはボイスコイル25が有する複数の湾曲部と直線部のうち、実質的に直線部から引き出されている。引出線26の引出位置に対応するヨーク33の底面部33Bには、引出線26が退避する退避部40が設けられている。この退避部40は、断面が凹状となっている。ヨーク33は複数の壁部33Bを備え、隣接する壁部33B間にて、ヨーク33に切欠部33Fが設けられている。この切欠部33Fと、ヨーク33の壁部33Bとフレーム11の内側側面11Dとの間には、引出線26を引き回す引出通路38が形成されている。引出線26の端部側の一部は、端子部12に電気的に接続され、外部から音声信号をボイスコイルに入力する。
【0082】
ボイスコイル25の引出線26がボイスコイル25の振動体21側とは逆側の端面を横切って引き出される引出部26Aを有している(図4参照)。磁気回路30は、磁気ギャップ30Gに配置されるボイスコイル25の端面に対面する底面部33Aを有しており、底面部33Aには、底面部33Aにボイスコイル25の下端面25Aが当接又は近接したときに引出部26Aが退避する退避部40が形成されている。すなわち、ボイスコイル25の下端部25Aに対向するヨーク33(静止部10)に、ボイスコイル25から引き出される引出線26の引出部26Aが退避する退避部40が設けられている(図4及び図9参照)。この引出部26Aが退避する退避部40は、外部からの衝撃により、ボイスコイル25とヨーク33とが接触し、引出線26が断線することを抑止するために設けられている。この退避部40は、断面が凹状の形状を有している。
【0083】
[端子部の構造]
図13図15は、端子部の構造を示した説明図である。図15は、フレーム11の外周筒部11Aの一部を磁気回路30側から見た斜視図である。端子部12は、外部の端子部と接触する第1の接触部12Aと、第1の接触部12Aをフレーム11に対して弾性的に支持する弾性支持部13と、ボイスコイル25の引出線26と電気的に連結される第2の接触部12Bとを備え、フレーム11は、端子部12を固定する固定部14を備える。
【0084】
フレーム11の外周筒部11Aは、第1の接触部12Aの端部12Cが係り止めされる被係止部11A3を備え、被係止部11A3は、第1の接触部12Aがフレーム11の下方に移動することを規制している。この被係止部11A3には第1の接触部12Aの端部12Cが係止されている。第1の接触部の端部12Cは、被係止部11A3に係止する係止部12Dを備える。この係止部12Dは、第1の接触部12Aの端部12Cから被係止部11A3に向かって突出する形状を備える。また、第1の接触部12Aの係止部12Dは、第1の接触部12Aが延びる方向に対して交差する方向に延びている。
【0085】
フレーム11の外周筒部11Aは、端子部12を収納する収納部11A4を備え、収納部11A4は、フレーム11の外周筒部11Aの外側側面11A5に形成される凹部である。フレーム11の外周筒部11Aは、第1の接触部12Aがボイスコイル25の振動方向に沿って移動する移動用空間11A6を備える。
【0086】
フレーム11の外周筒部11Aが備える被係止部11A3は、第1の接触部12Aがフレーム11より下方(携帯電話の筐体側)に移動することを規制することができる。一方、第1の接触部12Aが移動することで、弾性支持部13が屈曲運動を繰り返し、その弾性力が低下するという問題がある。特に、第1の接触部12Aの移動幅が大きいと、より弾性力の低下が大きくなる場合がある。そのため、被係止部11A3を設けて、第1の接触部12Aの移動幅を制限することで、弾性支持部13の弾性力を長期にわたって維持することができる。
【0087】
フレーム11の外周筒部11A内に、端子部12を配置することで、スピーカ装置1を規定の寸法にすることができ、小型化することができる。フレーム11の外周筒部11Aは、第1の接触部12Aがボイスコイル25の振動方向に沿って移動するための移動空間(開口部)を備えている。このため、外部の端子部が第1の接触部12Aに接近した場合でも、第1の接触部12Aは移動しながらも、外部の端子部と良好な接触状態を維持できる。また、外部の端子部が第1の接触部12Aから離れた場合には、接触状態を乖離し、かつ被係止部11A3により、外部の端子部と第1の接触部12Aとの間における所定の距離を維持できる。
【0088】
例えば、スピーカ装置1の端子部12は、携帯電話が有する端子部(外部の端子部)と電気的に接続する場合がある。この場合、端子部12も、前述したように、第1の接触部12A、弾性支持部13、第2の接触部12B、固定部14を備える。第1の接触部12Aは、外部の端子部と接触する。また、弾性支持部13は、第1の接触部12Aをフレーム11に対して弾性的に支持する。第2の接触部12Bは、ボイスコイル25の引出線26と電気的に連結される。固定部14は、フレーム11に端子部12を固定する。第1の接触部12Aの端部には、フレーム11に係り止めされる係止部12Dを備える。この係止部12Dは、第1の接触部12Aがフレーム11より下方(携帯電話の筐体側)に移動することを規制する。また、係止部12Dは、湾曲状の弾性支持部13の弾性を長期にわたって維持する。フレーム11は、スピーカ装置1を規定の寸法に収めるべく、端子部12を収納する収納部を外周筒部11Aの外側側面11A5に備える。フレーム11は、第1の接触部12Aがスピーカ装置1の厚さ方向に沿って移動するための、移動用空間11A6(開口部)を備える。移動用空間11A6は、フレーム11の外周筒部11Aの内側に開口部11A7を備える。この開口部11A7は、被係止部113に隣接する位置に設けられており、この開口部11A7内を係止部11D及び第1の接触部12Aの一部が移動する。端子部12は、フレーム11に固定部14により取り付けられている。
【0089】
[スピーカ装置の実施例]
図16及び図17は、スピーカ装置1の全体構成を示した外観斜視図である。エッジ22は、図16に示すように、長軸22L1及び短軸22L2で規定される形状、つまり一方向に長い矩形状の外形を有する。エッジ22は、前述したように第1の湾曲部23と第2の湾曲部24を有することで、音響放射方向とは逆側に凸状の断面形状を有する。エッジ22は、その角部に、一つ又は複数の突起部24Eを備えている。突起部24Eは、音響放射側に凸状の断面を有するか、或いは音響放射側とは逆側に凸状の断面形状を有する。突起部24Eは、エッジ22の径方向に沿って延びている。突起部24Eは、その外周部がエッジ22の外周部22B(図5参照)より内側であり、その内周部がエッジ22の内周部22A(図5参照)より内側に配置されている。エッジ22の内周部22Aは、振動体21を支持している。
【0090】
スピーカ装置1は、静止部10としてのフレーム11、振動部20、磁気回路30、振動体21を保護する保護部60とを備える。振動部20は、振動体21、振動体21をフレームに支持するエッジ22を有する。スピーカ装置1の外形は、矩形に拘わらず、円形、楕円形、トラック形状などであってもよい。
【0091】
保護部60は、エッジ22の一部を覆っており、その開口部61が振動体21を露出させている。エッジ22は、振動体21を、その内周部22Aでフレーム11に支持している。振動体21の背面側には、フレーム11に支持される磁気回路30が配置されている。ボイスコイル25は、エッジ22の内周部22Aを介して、振動体21に支持されている。振動体21は炭素を主成分とした材料で形成されており、電気導電性を有する。ボイスコイル25は、絶縁性を有する材料(樹脂など)で構成されるエッジ22を介して振動体21に取り付けることが必要になる。磁気回路30は、プレート34、ヨーク33、磁石35を備えている。ヨーク33は、底面部33Aと底面部33Aから立設される壁部33Bとを備える。
【0092】
磁気回路30は、一例として、ボイスコイル25の内側及び外側に磁石35A,35Bが配置された内外磁型の磁気回路を採用している。振動体21の前面側(音響放射側)には、第1の空間が設けられ、振動体21の背面側には、第2の空間が設けられている。
【0093】
ボイスコイル25の振動方向に対して、交差する方向において、振動体21の外周部21Aの位置はヨーク33の壁部33Bの位置近傍に配置されている。また、エッジ22の内周部22Aもヨーク33の壁部33Bの位置近傍に配置されている。この際、振動体21が曲げ剛性を有するので、振動体21が振動する際、エッジ22がヨーク33の壁部33Bに接触することを抑止でき、エッジ22が有する第1の湾曲部23の内周部23A、又は第2の湾曲部24の内周部24Aの位置をヨーク33の壁部33Bの位置近傍上に配置できる。
【0094】
このようなスピーカ装置1は電子機器や車載用に用いることができる。図18は、本発明の実施形態に係るスピーカ装置1の適用例を示した説明図である。例えば、同図(a)にしめすような携帯電話或いは携帯情報端末のような電子機器100、或いはフラットパネルディスプレイのような電子機器が備える被取付部材としての筐体内にスピーカ装置1を収納できる。この場合、電子機器の厚さを比較的小さくすることができる。
【0095】
また、同図(b)にしめすような自動車200にスピーカ装置1を用いることができる。特に被取付部材としてのドアパネルや天井、リアトレイ、ダッシュボードに本発明の実施形態に係るスピーカ装置を取り付けることができる。この場合、ドアパネル等の被取り付部材の厚さを比較的小さくでき、乗車スペースを比較的大きくすることができる。
【0096】
図19は、本発明の実施形態に係るスピーカ装置1の適用例である電子機器の他の例を示した説明図である。同図(a)に示す電子機器101はパソコン(携帯型,ノート型,ラップトップ型など)であり、同図(b)に示す電子機器102はヘッドホンである。
【0097】
電子機器101としては、表示部101Aと入力操作部101Bを備えており、この入力操作部101Bがスピーカ装置1を収容する筐体になっている。表示部101Aと入力操作部101Bの両端は回動自在に連結されている。スピーカ装置1は、図示の例では、入力操作部101Bの操作面上に振動体が配置されるように複数装備されている。また、図示の例に限らず、表示部101Aを筐体にして、その側部等にスピーカ装置1を単数又は複数配置しても良い。
【0098】
電子機器102としては、スピーカ装置1を収容する筐体102A,102Aを一対(複数)備えており、その筐体102A,102Aを連結するアーチ状の連結部102Bが複数のスピーカ装置1を電気的に接続する配線を収容する配線用収容部になっている。
【0099】
図20図22は、本発明の実施形態に係るスピーカ装置の電子機器への搭載例を示した説明図である。図20は、前述した電子機器101への搭載例を示している全体構成図である。図示の例では、振動体21を露出した状態でスピーカ装置1を収容する筐体110を複数備えている。筐体110,110間には複数のスピーカ装置1を電気的に接続する配線を収容する配線用収容部120を備える。配線用収容部120には電子機器と電気的に接続するための端子部121が設けられている。
【0100】
図21(a)は図20におけるA1部の拡大斜視図であり、図21(b)は図20におけるA2部の拡大断面図である。図21(a)において、振動体21を備えたスピーカ装置1は、筐体110に収容され、筐体110は、振動部(振動体21,エッジ22)を支持するフレーム(第1の静止部)111と、筐体110と振動体21との間に空気室を構成するキャビネット112(第2の静止部)を備える。フレーム111は振動体21を囲む外周筒部を備える。また、フレーム111の外周筒部の外周側面には、電子機器の筐体110にフレーム111を取り付ける取付部111Aを備える。キャビネット112はフレーム111の背面側(磁気回路30の下方側)に配置されている。
【0101】
図21(b)において、振動体21を備えたスピーカ装置1は、筐体110に収容され、筐体110は、振動部(振動体21,エッジ22)を支持するフレーム(第1の静止部)111を備えている。この例では、筐体110は、フレーム111の背面側に配置されたキャビネット112を備えている。フレーム111とヨーク33との間には通気路111Sが設けられている。図示の例では、フレーム111の外周筒部113の内側側面と、ヨーク33の外周側部との間に間隙が設けられている。この間隙が振動体21と磁気回路30との間の空間と、磁気回路30とキャビネット112との間の空間とを連通する通気路111Sとなっている。また、この通気路111Sを介してフレーム111の内部とキャビネット112内の空気室112Sが連通している。空気室112Sは、エッジ22の外側近傍であって、磁気回路30のヨーク33の背面側に設けられている。
【0102】
図22図20におけるA1部の筐体を示す説明図であり、同図(a)が分解斜視図、同図(b)がフレームの背面図である。振動体21とエッジ22を支持するフレーム111には、磁気回路30のヨーク33が配備されている。このヨークの四隅には、前述した切り欠き部33Fが形成されている。その切り欠き部33Fが通気路111Sに対応している。フレーム111の背面側に取り付けられるキャビネット112の側部側には、空気室112Sが設けられている。また、フレーム111の通気路111Sを介してフレーム111内の空間が空気室112Sに連通している。
【0103】
また、筐体110は、外周筒部113の外側に傾斜面部114を備える。この傾斜面部114を備えることで、筐体110とスピーカ装置1との間の空間を比較的大きくでき、音響特性を向上させることができる。図19に示される電子機器101はスピーカ装置1から放射される音波を外部へ放出する放音部(図19のスピーカ装置1の位置近傍)を備える。この放音部は、筐体110の一部に複数の孔部を設けることで形成される。また、放音部は、筐体110とスピーカ装置1の間の空間と外部とを連通させる。このため、電子機器101は、振動体の背面側に空気室(第1の空気室)を備えるとともに、振動体の前面側(音響放射側)に空気室(第2の空気室)が設けられたアコースティック型のスピーカ装置を備えることができる。
【0104】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。上述の各図で示した実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【0105】
なお、2009年1月30日に国際出願したPCT/JP2009/051646、2007年7月31日に国際出願したPCT/JP2007/065007、2007年9月12日に国際出願したPCT/JP2007/067752、米国への国内移行日が2010年1月26日である米国特許出願US12/670819,米国への国内移行日が2010年2月24日である米国特許出願US12/675079、欧州への国内移行日が2010年2月23日である欧州特許出願EP07807159.4に記載される全ての内容は、本出願に組み込まれる。
【符号の説明】
【0106】
1:スピーカ装置,10:静止部,11:フレーム,12:端子部,
20:振動部,21:振動体,22:エッジ,
22a,22b,22c:樹脂層,25:ボイスコイル,
26:引出線,30:磁気回路,31:第1の磁極部,32:第2の磁極部,
33:ヨーク, 34:プレート,30G:磁気ギャップ,35:磁石,
37:通路,38:引出通路,39:底面,40:退避部,50:接合部材,
51:接合部材溜め部,52:間隙,100,101,102:電子機器,
110:筐体,
111:フレーム(第1の静止部),112:キャビネット(第2の静止部),
111S:通気路,112S:空気室,120:配線用収容部,
200:自動車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22