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特開2022-16824真空チャンバ部材及び真空チャンバ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016824
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】真空チャンバ部材及び真空チャンバ装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119783
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】508022207
【氏名又は名称】コミヤマエレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】久保 博義
(57)【要約】
【課題】軽量化が図れ、十分な強度を有する真空チャンバ部材を提供する。
【解決手段】真空チャンバ部材10Bは、真空側3となるチャンバ内面を形成する無機材の内面板26と、内面板26のチャンバ内面を形成する面の裏面に設けられる複合材板17と、複合材板17を内面板26とともに両側から挟み込みサンドイッチ構造を形成する無機材の外面補強板27とを備え、内面板26から突出する突出部である支柱部28が、複合材板17を貫通して外面補強板27と固定ネジ29により固定されるように構成されている。また、真空チャンバ部材10Cは、内面板26がチャンバ内面を形成する面の裏面の周縁に沿って側壁部26bが設けられた桶構造に形成され、内面板26の桶構造の凹部26aと外面補強板27とにより構成される空間に複合材板17が密閉されるように収納され、側壁部26bと外面補強板27とが固定ネジ29により固定されるように構成されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空側となるチャンバ内面を形成する無機材の第一の板と、
該第一の板の前記チャンバ内面を形成する面の裏面に設けられ前記第一の板よりも厚い複合材の第二の板と、
該第二の板を前記第一の板とともに両側から挟む前記第二の板よりも薄い前記無機材の第三の板とを備え、
前記第一の板は、前記第二の板を挟む前記第三の板と結合手段により結合されるように構成されていることを特徴とする真空チャンバ部材。
【請求項2】
前記第二の板を前記第一の板と前記第三の板とで両側から挟み込みサンドイッチ構造を形成し、
前記結合手段は、前記第一の板の前記裏面から突出する少なくとも1つの突出部を有し、
該突出部は、前記第二の板を貫通して前記第三の板と締結部材により固定されることを特徴とする請求項1に記載の真空チャンバ部材。
【請求項3】
前記第二の板を前記第一の板と前記第三の板とで両側から挟み込みサンドイッチ構造を形成し、
前記結合手段は、前記第二の板を貫通して前記第一の板と前記第三の板との間に挟まれて配置される連結部材を有し、
該連結部材は、前記第一の板に対面する面積よりも前記第三の板に対面する面積が大きく形成されており、前記連結部材と前記第二の板との接触面には前記第三の板から前記第一の板に向かう方向に押圧する力が作用し、
第一の締結部材により前記連結部材と前記第一の板とが固定されるとともに他の締結部材により前記連結部材と前記第三の板とが固定されることにより、前記第一の板と前記第三の板とが前記連結部材を介して結合されることを特徴とする請求項1に記載の真空チャンバ部材。
【請求項4】
前記結合手段は、前記第一の板と前記第二の板との接触面及び前記第二の板と前記第三の板との接触面を接着接合するエポキシ系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤またはポリウレタン樹脂系接着剤であることを特徴とする請求項2または3に記載の真空チャンバ部材。
【請求項5】
前記第一の板は、前記裏面の周縁に沿って前記第三の板に向けて突出する側壁部が設けられた桶構造に形成されており、
前記結合手段は、前記側壁部を含むように構成され、前記第一の板の前記桶構造の凹部と前記第三の板とにより構成される空間に前記第二の板が密閉されるように収納され、前記側壁部と前記第三の板とが締結部材により固定されることを特徴とする請求項1に記載の真空チャンバ部材。
【請求項6】
前記無機材は、ステンレス鋼またはアルミニウム合金であり、
前記第一の板の前記チャンバ内面を形成する面は、電解研磨またはブラスト処理されており、
前記複合材は繊維を含む複合材料であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の真空チャンバ部材。
【請求項7】
前記複合材料は、繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックまたはセラミックス基複合材料であることを特徴とする請求項6に記載の真空チャンバ部材。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の真空チャンバ部材により真空チャンバが構成されていることを特徴とする真空チャンバ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ部材、及びこの真空チャンバ部材を備えた真空チャンバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、真空チャンバ装置は、例えば容器内を真空状態にし、容器内に導入された処理ガス等により、容器内に配置された被処理基板に対して所定の処理を施すことにより半導体デバイスや液晶パネルや有機EL(OEL:Organic Electro-Luminescence)パネルを製造する装置が知られている。このような真空チャンバ装置を構成する真空チャンバ部材は、例えばアルミニウム合金、ステンレス鋼、鉄鋼材料等の金属で構成されている。
【0003】
生産性を向上させるために世代ごとに大型化するパネルにより、このパネルを製造する真空処理装置も大型化している。真空処理装置の構造部材(チャンバ部材)を金属で構成した場合には、重量が重くなり、運搬しにくいという問題があることから、例えば特許文献1に記載された材料により構成することが考えられる。上記特許文献1に記載された材料は、金属部材と繊維強化樹脂材料とを接着樹脂層により接着して一体化することにより、強度を高めるとともに、軽量化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-119212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、真空チャンバには、真空時に大気側からの荷重が作用し、開放時にその荷重が解放されるため、板厚方向に繰り返し荷重が作用し、上記特許文献1に記載された材料の接着が剥がれ強度が低下するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、軽量化が図れるとともに十分な強度を有する真空チャンバ部材及びそれを用いた真空チャンバ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、真空側となるチャンバ内面を形成する無機材の第一の板と、該第一の板の前記チャンバ内面を形成する面の裏面に設けられ前記第一の板よりも厚い複合材の第二の板と、該第二の板を前記第一の板とともに両側から挟む前記第二の板よりも薄い前記無機材の第三の板とを備え、前記第一の板は、前記第二の板を挟む前記第三の板と結合手段により結合されるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記第二の板を前記第一の板と前記第三の板とで両側から挟み込みサンドイッチ構造を形成し、前記結合手段は、前記第一の板の前記裏面から突出する少なくとも1つの突出部を有し、該突出部は、前記第二の板を貫通して前記第三の板と締結部材により固定されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記第二の板を前記第一の板と前記第三の板とで両側から挟み込みサンドイッチ構造を形成し、前記結合手段は、前記第二の板を貫通して前記第一の板と前記第三の板との間に挟まれて配置される連結部材を有し、該連結部材は、前記第一の板に対面する面積よりも前記第三の板に対面する面積が大きく形成されており、前記連結部材と前記第二の板との接触面には前記第三の板から前記第一の板に向かう方向に押圧する力が作用し、第一の締結部材により前記連結部材と前記第一の板とが固定されるとともに他の締結部材により前記連結部材と前記第三の板とが固定されることにより、前記第一の板と前記第三の板とが前記連結部材を介して結合されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の構成に加え、前記結合手段は、前記第一の板と前記第二の板との接触面及び前記第二の板と前記第三の板との接触面を接着接合するエポキシ系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤またはポリウレタン樹脂系接着剤であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記第一の板は、前記裏面の周縁に沿って前記第三の板に向けて突出する側壁部が設けられた桶構造に形成されており、前記結合手段は、前記側壁部を含むように構成され、前記第一の板の前記桶構造の凹部と前記第三の板とにより構成される空間に前記第二の板が密閉されるように収納され、前記側壁部と前記第三の板とが締結部材により固定されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか一項に記載の構成に加え、前記無機材は、ステンレス鋼またはアルミニウム合金であり、前記第一の板の前記チャンバ内面を形成する面は、電解研磨またはブラスト処理されており、前記複合材は繊維を含む複合材料であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の構成に加え、前記複合材料は、繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックまたはセラミックス基複合材料であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の何れか一項に記載の真空チャンバ部材により真空チャンバが構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、複合材の第二の板を無機材の第一の板と第三の板とで両側から挟む構成であるため軽量化が図れるとともに、結合手段により第一の板と第三の板とが結合される構成であるため十分な強度を有し真空チャンバ部材として用いることができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明によれば、複合材の第二の板を無機材の第一の板と第三の板とで両側から挟み込むサンドイッチ構造であり、第一の板に設けられた突出部が第二の板を貫通して第三の板と固定される構成であるため、軽量化と強度の向上が実現できる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明によれば、複合材の第二の板を無機材である第一の板と第三の板とで両側から挟み込みサンドイッチ構造が形成され、第二の板を貫通して第一の板と第三の板との間に挟まれて配置される連結部材を有し、この連結部材と第二の板との接触面には第三の板から第一の板に向かう方向に押圧する力が作用し、第一の締結部材により連結部材と第一の板とが固定されるとともに他の締結部材により連結部材と第三の板とが固定され、第一の板と第三の板とが連結部材を介して結合されるようになっている。このため、第一の板と第三の板とを連結部材を介して結合するという簡単な構成でありながら真空チャンバ部材として十分な強度が得られる。また、連結部材により第二の板が第一の板に押し付けられて固定され安定する。
【0018】
また、請求項4に記載の発明によれば、第一の板と第二の板との接触面及び第二の板と第三の板との接触面がエポキシ系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤またはポリウレタン樹脂系接着剤により接着接合される。該締結部材と該連結部材と該接着剤により、十分な結合強度を確保することができ、さらに、接着の剥がれも防止することができる。また、簡単な構成で真空チャンバ部材を形成することができ、軽量化も実現できる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明によれば、第一の板は真空側となるチャンバ内面を形成する面の裏面の周縁に沿って側壁部が設けられた桶構造に形成され、この桶構造の凹部と第三の板とにより構成される空間に第二の板が収納され、側壁部と第三の板とが締結部材により固定される。この桶構造の構成により、強度をより大きくすることができる。また、第二の板を構成する複合材が、第一の板の桶構造と第三の板とにより構成される空間に密閉されるため、例えば、第二の板として炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)を用いる場合、このCFRPに含まれる炭素繊維や樹脂が真空チャンバ内に侵入し、チャンバ内が汚染され、真空度を悪化させてしまうことを未然に防止することができる。さらに、半導体デバイスや液晶パネルや有機ELパネルを製造する装置が設置されるクリーンルームに放出され、クリーンルームを汚染しまうことも未然に防止することができる。
【0020】
また、請求項6に記載の発明によれば、第一の板または第三の板を構成する無機材がステンレス鋼またはアルミニウム合金であるため、大きな強度を実現できる。また、第一の板の真空側となるチャンバ内面を形成する面が電解研磨またはブラスト処理されているため、チャンバ内面が平坦化され、表面の凸凹に起因して発生する窒素、酸素、炭素、水蒸気等の気体がリークする問題を回避できる。また、複合材が繊維を含む複合材料であるため、強度をより大きくすることができる。
【0021】
また、請求項7に記載の発明によれば、第二の板を構成する複合材料が、繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックまたはセラミックス基複合材料であるため、軽量化を図るとともに、より一層大きな強度を実現できる。
【0022】
また、請求項8に記載の発明によれば、請求項1乃至7の何れか一項に記載の真空チャンバ部材により真空チャンバが構成されているため、真空チャンバ全体として軽量化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る真空チャンバ装置の一実施形態を示す構成図である。
図2】(a)は本発明に係る真空チャンバ部材の第1実施形態において一体化した壁部材を示す正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の左側面図である。
図3】本発明に係る真空チャンバ部材の第1実施形態の角部を示す拡大断面図である。
図4図3の金属フレームへの壁部材の取付状態を示す分解斜視図である。
図5図3の真空チャンバ部材の全体構造を一部破断して示す斜視図である。
図6】本発明に係る真空チャンバ部材の第2実施形態の角部を示す拡大断面図である。
図7】本発明に係る真空チャンバ部材の第3実施形態の角部を示す拡大断面図である。
図8】(a),(b)は第3実施形態の真空チャンバ部材のサンドイッチ構造を示すA-A線に沿う断面図,平面図である。
図9】(a),(b)は第4実施形態の真空チャンバ部材の桶構造を示すB-B線に沿う断面図,平面図である。
図10】本発明に係る真空チャンバ部材の第5実施形態の角部を示す拡大断面図である。
図11】本発明に係る真空チャンバ部材の第6実施形態の角部を示す拡大断面図である。
図12】(a),(b)は第6実施形態の第一の変形例の真空チャンバ部材のサンドイッチ構造を示す断面図,C-C線に沿う断面図である。(c),(d)は第6実施形態の別の第一の変形例の真空チャンバ部材のサンドイッチ構造を示す断面図,D-D線に沿う断面図である。
図13】(a),(b)は第6実施形態の第二の変形例の真空チャンバ部材のサンドイッチ構造を示す断面図,E-E線に沿う断面図である。
図14】本発明に係る真空チャンバ部材の製造方法の一実施形態にて製造される、本発明の真空チャンバ部材の角部を示す部分拡大図である。
図15】本発明に係る真空チャンバ部材の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
[真空チャンバ装置の一実施形態]
図1は、本発明に係る真空チャンバ装置の一実施形態を示す構成図である。
【0026】
図1に示すように、真空チャンバ装置1は、真空チャンバ5を有し、この真空チャンバ5は板部材としての壁部材11を備える。この壁部材11は、4面の側壁12と、底壁13と、上部壁14によって略立方体形状に形成されている。以下、4面の側壁12、底壁13、及び上部壁14を一括して説明する場合には、壁部材11として説明する。これら4面の側壁12と、底壁13と、上部壁14が互いに接合される角部は、それぞれ断面L字状の角部補強板15により固定されている。真空チャンバ5は、設置面に接する支持脚16が底壁13に固定されている。
【0027】
真空チャンバ5の4面の側壁12のうち、1面の側壁12の下部には、真空チャンバ部材5の内部に連通するダクト31の一端が連結されている。このダクト31の他端には、粗引きポンプ32が連結されている。この粗引きポンプ32は、ダクト31を通して真空チャンバ5内の気体を吸引する。具体的には、粗引きポンプ32は、真空チャンバ5内を10Pa程度の真空度まで真空引きする。粗引きポンプ32には、例えばロータリーポンプやドライポンプ等が用いられる。ダクト31の途中には、ダクト31内の流路を開閉するバルブ33が設置されている。粗引きポンプ32は、信号線34を通してコントローラ35に接続されている。
【0028】
真空チャンバ5の側壁12には、ダクト31の連結位置の上方に真空チャンバ5内の真空度を検出する真空センサ36が設置されている。この真空センサ36は、信号線34を通してコントローラ35に接続されている。真空センサ36は、図1に1個しか示していないが、実際には、真空度に合わせて各種センサが用いられる。例えば、1Pa程度までの低真空度では、ダイヤフラム真空計やピラニ真空計等が用いられる。1Paを超える高真空度では、熱陰極電離真空計や冷陰極電離真空計が用いられる。
【0029】
真空チャンバ5の側壁12には、真空センサ36の設置位置の上方にゲートバルブ37が設置されている。このゲートバルブ37には、ターボ分子ポンプ38が設けられている。このターボ分子ポンプ38も信号線34を通してコントローラ35に接続されている。
【0030】
次に、本実施形態の真空チャンバ5内の真空引きの動作を説明する。
【0031】
真空チャンバ5内を真空引きするには、まず粗引きポンプ32を起動してダクト31を通して真空チャンバ5内の気体を10Pa程度の真空度まで吸引する。なお、気体を粗引きをしている間は、バルブ33を開け、10Pa程度の真空度に到達するとバルブ33を閉じる。また、真空チャンバ5内の真空度の状況は、真空センサ36によって把握することができる。
【0032】
次いで、真空チャンバ5内の真空度をさらに高めるために、ターボ分子ポンプ38を起動させる。ターボ分子ポンプ38の内部が十分真空になった場合には、真空チャンバ5の側壁12とターボ分子ポンプ38との間に設置されているゲートバルブ37を開け、ターボ分子ポンプ38の吸引力によって、真空チャンバ5内の真空度をさらに高くしていく。この真空度は、例えば1×10-4Paまで高真空度になる。さらに、真空度を高くするには、クライオポンプやイオンポンプ(不図示)を付加することもある。
【0033】
真空センサ36は、真空チャンバ5内の真空度を検出し、この検出信号がコントローラ35に出力される。このコントローラ35は、その検出信号に基づいて、粗引きポンプ32又はターボ分子ポンプ38に起動、停止指令信号や給電を制御する制御信号を出力する。
【0034】
本実施形態のコントローラ35の制御動作について説明する。
【0035】
例えば、真空センサ36を用いて真空チャンバ5内の真空度を例えば一定時間間隔で検出し、この検出信号がコントローラ35に逐次出力される。真空チャンバ5内を真空にするシーケンスの代表例を説明する。真空チャンバ5の側壁12とターボ分子ポンプ38との間に設置されているゲートバルブ37は閉まった状態からスタートする。コントローラ35は、ターボ分子ポンプ38に起動指令信号を出力して、ターボ分子ポンプ38を起動させる。ターボ分子ポンプ38の羽は回転を始める。羽が所定の回転数になると、ターボ分子ポンプ38はコントローラ35に起動完了信号を返す。コントローラ35は、真空センサ36の検出信号を入力し、真空チャンバ5内の真空度が10Paよりも低い真空度の場合、粗引きポンプ32に起動指令信号を出力して粗引きポンプ32を起動させる。そして、バルブ33を開け、真空チャンバ5内の気体を排気する。真空チャンバ5内の真空度が10Pa程度になるまで気体を排気する。真空チャンバ5内が10Pa程度まで真空になったとき、バルブ33を閉める。
【0036】
次いで、さらに真空チャンバ5内の真空度を高めるために、コントローラ35はゲートバルブ37を開け、ターボ分子ポンプ38によって真空引きを行う。そして、例えば、真空チャンバ5内が1×10-4Paまで高真空度になったとき、真空チャンバを具備する装置が真空状態で使用できる環境となる。真空状態を維持するために、コントローラ35は、真空センサ36の値の監視を続け、ターボ分子ポンプ38は真空維持のために、連続運転する。不図示であるが、ターボ分子ポンプ38の大気側には粗引きポンプが接続されている。この粗引きポンプは粗引きポンプ32と共用され、真空チャンバ5の真空引きと切り替えて使われる。
【0037】
このように本実施形態の真空チャンバ装置1では、真空チャンバ5内の真空度を真空センサ36で検出し、この検出信号をコントローラ35に出力し、このコントローラ35が粗引きポンプ32又はターボ分子ポンプ38に起動指令信号又は停止指令信号を出力し、真空チャンバ5内の真空度を制御することで、真空チャンバ5内を常に所望の真空度に維持することが可能となる。
【0038】
[真空チャンバ部材の第1実施形態]
図2(a)は本発明に係る真空チャンバ部材の第1実施形態において一体化した壁部材を示す正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の左側面図である。図3は、本発明に係る真空チャンバ部材の第1実施形態の角部を示す拡大断面図である。図4は、図3の金属フレームへの壁部材の取付け状態を示す分解斜視図である。図5は、図3の真空チャンバ部材の全体構造を一部破断して示す斜視図である。
【0039】
なお、図2図5の真空チャンバ部材10は、図1の真空チャンバ5に対応する。図2図5において、真空チャンバ部材10の図1に示す真空チャンバ5の壁部材11と対応する部分には、図1と同一の符号を付して説明する。
【0040】
図2(a)~(c)に示すように、真空チャンバ部材10の壁部材11は、第二の板としての複合材板17と、この複合材板17よりも強度が低い第一の板としての樹脂材板18を有し、互いに接着にて接合されて一体化されている。
【0041】
複合材板17の材質は、繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック、又はセラミックス基複合材料から選択して用いられる。これらの材料の中でも真空チャンバ部材10に対する真空引き及び大気開放による繰り返し変形に耐えることができ、機械的強度が高い材料としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)を用いることが望ましい。この場合、C/Cコンポジット(carbon-carbon composite)等の他の炭素繊維強化炭素複合材料でも良い。
【0042】
炭素繊維強化プラスチックには、PAN(Polyacrylonitrile)系とピッチ(PITCH)系の2つに大別される。上記PAN系が主流で低コストであるものの、上記ピッチ系の方が、ヤング率が高いので、上記真空チャンバ5に適用するにはピッチ系が望ましい。炭素繊維強化プラスチックは、比重が軽いことから従来のステンレス鋼のみで作製された真空チャンバ部材よりも軽量化を図ることができる。真空チャンバ5は内部を真空にすると大気圧によって変形する。その変形量を従来のステンレス鋼のみで製作したものと同等になるように複合材板17の厚さを決定した場合、真空チャンバ5の重量を半分以下にすることができる。
【0043】
複合材板17の厚さは、樹脂材板18の厚さよりも厚く形成されている。複合材板17の厚さは、例えば10mm~100mmに設定され、真空チャンバ部材10内が真空に吸引された時に大気圧による変形に耐えることのできる厚さになっている。一方、樹脂材板18は、真空による変形を防止する機能は不要であるため、例えば1mm~5mm程度の薄い板である。
【0044】
図3に示すように、複合材板17は、真空チャンバ部材10の外側である大気側2に配置される一方、樹脂材板18は、真空チャンバ部材10の内側である真空側3に配置される。なお、複合材板17の複合材や樹脂材板18の樹脂材は、窒素、酸素、炭素、水蒸気等の気体がわずかながら透過してしまい、高い真空度が要求される真空チャンバ部材10の材料としては適さない。
【0045】
そこで、本実施形態では、樹脂材板18の真空側3となる内面側にメッキやスパッタ等で金属膜19を形成して真空シールドしている。上記メッキにより金属膜19を形成する場合は、金属材料としてニッケル、クロムや亜鉛等から選択される。金属膜19の膜厚は50μm以上が望ましく、このような膜厚にすることで、気体を透過させない面を形成し、真空環境を作り出すことができる。なお、ニッケル等の金属膜19の表面に金(Au)等の耐食性に優れた金属膜をスパッタして重ねるようにしても良い。
【0046】
樹脂材板18は、その表面を金属膜19でメッキやスパッタするので、材質に制約が少ない。具体的には、樹脂の中でもガスバリア性を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン6、又はポリエチレンテレフタレート(PET)等が望ましい。但し、このような材料でも、メッキやスパッタせずに用いると、樹脂自体からガスの発生やわずかに気体の透過があり、高い真空度が要求される真空チャンバ部材10には適さない。そのため、本実施形態では、上記のようにメッキやスパッタ等で金属膜19を形成している。また、樹脂材板18の表面粗さは、メッキやスパッタとの密着性を維持し、真空シール性を確保するために、Ra0.1~1.0μm程度が望ましい。
【0047】
なお、本実施形態では、複合材板17に直接金属膜19をメッキする方法もあるが、複合材板17に炭素繊維強化プラスチック等を用いた場合、強化材として炭素繊維が含まれていることから、表面が凸凹状に形成されている。その凸凹面は真空シール面としては不適であり、真空チャンバ5の外部の気体(空気、窒素、酸素、二酸化炭素等)が凸凹の隙間を通って、真空チャンバ5の内部に入り込み、リークする問題がある。この問題を回避するため、本実施形態では、薄く、かつ表面が平坦な樹脂材板18にメッキ等により金属膜19を形成するようにしている。
【0048】
なお、本実施形態においては、金属膜19の形成工程は、上述のメッキやスパッタ等の処理のみには限定されず、たとえば、複合材板17の内面側や樹脂材板18の内面側にアルミナなどの無機フィラーを分散させたコンポジットコーティング剤によるコーティング処理を行うことにより、金属膜19を形成するものとしてもよい。
【0049】
次に、上記のようにして作製された壁部材11を互いに組み合わせて真空チャンバ部材10を構成する例について図3に基づいて説明する。図3は、2つの壁部材11の結合状態を示している。
【0050】
壁部材11は、図2に示すように複合材板17と樹脂材板18を有し、これらを一体化するために互いの接合面で接着剤を介して接合されている。この接着剤には、エポキシ系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、シアノアクリレート系、又はポリウレタン樹脂系等が用いられる。樹脂材板18の表面には、上述したようにメッキ又はスパッタによって金属膜19が形成されている。
【0051】
2つの壁部材11の端部は、金属フレーム20で保持される。この金属フレーム20と壁部材11とは、互いに接合面23aで接着剤を介して接着することにより固定されている。これらを接着するための接着剤としては、例えばエポキシ系、又はアクリル系接着剤が用いられる。この接着剤にて金属フレーム20と壁部材11とを接着する目的は、機械的強度を高めるだけでなく、2つの壁部材11の端部において真空シール機能を図るためである。
【0052】
なお、上記接着剤のみで接合し、機械的強度が不足する場合には、壁部材11と金属フレーム20を図示しないボルトで締結して固定するようにしても良い。金属フレーム20の材質には、真空部品に使用されているステンレス鋼(SUS)が用いられる。この金属フレーム20は、ステンレス鋼を溶接することにより構成されている。金属フレーム20の真空側3に接する面には電解研磨又はブラスト処理が施されている。
【0053】
金属フレーム20は、外側に2本の支柱20aが直角方向に延びており、これら支柱20aの先端にそれぞれ固定穴20bが形成されている。各支柱20aの固定穴20bには、締結部材としてのボルト22が締結される。
【0054】
角部補強板15は、断面L字状に形成され、角部2辺にそれぞれ取付孔15aが形成されている。角部補強板15は、軽量化及び高強度化を図るため、複合材板17と同じ炭素繊維強化プラスチック(CFRP)から形成されている。角部補強板15の材質には、壁部材11を構成する複合材板17よりも同等以上のヤング率のものが用いられる。2つの壁部材11の端部は、ボルト22を座金21及び角部補強板15の取付孔15aを通して支柱20aの固定穴20bに締結することにより、強固に取り付けられる。
【0055】
また、複合材板17と角部補強板15が接する接合面23は、密着度を高めるために、接着剤により固定されている。この接着剤には、例えばエポキシ系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、シアノアクリレート系、ポリウレタン樹脂系等の接着剤が用いられる。
【0056】
なお、図3では、1つの壁部材11に対して支柱20a及びボルト22がそれぞれ1本しか図示されていないが、これに制約されることなく、紙面内又は紙面に対して垂直方向に支柱20a及びボルト22を複数並べて設置しても良い。
【0057】
上記の構成の真空チャンバ部材10を真空チャンバ5に適用する場合を図4及び図5を用いて説明する。
【0058】
図4及び図5に示すように、真空チャンバ部材10は、壁部材11、角部補強板15、金属フレーム20、及び支柱20a(図3に示す)を備える。壁部材11は、図3に示すように複合材板17と、金属膜19が形成された樹脂材板18を備える。真空チャンバ部材10は、立方格子状に形成された金属フレーム20に6面の壁部材11がそれぞれ図3に示すように支柱20aに角部補強板15の取付孔15aと座金21を通してボルト22により締結することで組み付けられる。6面の壁部材11は、上記のように互いに同じ構造であって、それぞれ大気側2となる外側に複合材板17が配置される一方、真空側3に金属膜19が形成された樹脂材板18が配置される。
【0059】
なお、本実施形態の金属フレーム20は、立方格子状に形成されているが、この形状に制約されることなく、金属フレーム20の一部が円弧や楕円形状に形成されていても良い。金属フレーム20の一部を円弧や楕円形状に形成した場合には、この金属フレーム20に取り付ける壁部材11もその形状に合わせて円弧や楕円形状に形成される。
【0060】
図5は立方格子状の金属フレーム20に6面の壁部材11を組付け、そのうちの1面を破断して示している。図5に示すように、真空チャンバ部材10は、内側(真空側3)隅部に金属フレーム20が配置されている。真空チャンバ部材10の壁部材11の内壁面は、金属膜19を形成した樹脂材板18が配置されている。壁部材11の外壁面は、複合材板17が配置されている。真空チャンバ部材10は、外側(大気側2)の角部にそれぞれ強度を補強するとともに、角部の軽量化を図るための断面L字状の角部補強板15が取り付けられている。
【0061】
図5に示す真空チャンバ部材10には、内部を真空するためのターボ分子ポンプ、真空度を測定する真空センサ、真空を封止するためのゲートバルブ等の各部材の図示を省略している。これらの各部材は、図1に示すように壁部材11の側壁12に取り付けられる。そして、上記各部材を壁部材11の側壁12に取り付ける際、より機械的強度、真空シール機能を必要とする場合は、図3で示したような基本的な構成を適用し、適宜金属フレーム20を追加して配置するようにしても良い。
【0062】
なお、本実施形態では、図5に示すように6面全面に壁部材11を組付けたが、これに制約されることなく、6面中1面以上5面以下の面に壁部材11を組付けたものにも適用できる。さらに、壁部材11を従来の真空チャンバの扉や手で持つことのできない大きな蓋の一部に適用した場合も本発明の範疇である。
【0063】
このように本実施形態では、金属フレーム20に壁部材11を固定し、壁部材11の端部の強度を増すために、壁部材11の角部に対して、この壁部材11を構成する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の強度以上のCFRPから作製された角部補強板15で補強することで、全て金属で作製していた従来の真空チャンバ部材に比べて、重量を軽量化することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、樹脂材板18は、樹脂の表面に金属膜19が被覆され、複合材板17及び角部補強板15の複合材は、繊維からなる複合材料であることから、密閉性がさらに高まり、高い真空度を実現すると同時に軽量化を図ることができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、金属フレーム20の支柱20aの先端に固定穴20bが形成され、これらの固定穴20bにボルト22を締結し、壁部材11を挟むように角部補強板15が固定されるので、壁部材11に角部補強板15を容易に固定することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、角部補強板15の角部2辺が、樹脂材板18と複合材板17が接合された壁部材11を挟み込むようにボルト22により金属フレーム20と締結されるので、壁部材11と角部補強板15が固定され、真空チャンバ部材10の角部を強固にすることができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、角部補強板15の材質は、複合材板17よりも同等以上のヤング率であることから、真空チャンバ部材10の角部の強度を高めることが可能となる。
【0068】
また、本実施形態によれば、樹脂材板18と複合材板17との接合面、複合材板17と角部補強板15との接合面は、それぞれエポキシ系又はアクリル系接着剤により接合されているので、それぞれの接合面の密着度を高め、結合強度を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、複合材は、繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック、セラミックス基複合材料のいずれかであることから、複合材板17と角部補強板15の機械的強度が高まるとともに、軽量化を図ることができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、真空チャンバ部材10により真空チャンバ5が構成されているので、真空チャンバ5全体として軽量化を図ることが可能となる。
【0071】
[真空チャンバ部材の第2実施形態]
図6は、本発明に係る真空チャンバ部材の第2実施形態の角部を示す拡大断面図である。なお、前記第1実施形態の真空チャンバ部材と同一又は対応する部材には、同一の符号を付して説明する。
【0072】
図6に示すように、本実施形態の真空チャンバ部材10Aは、金属フレーム20の角部の外側に断面略正方形の嵌込み部24が一体に形成されている。この嵌込み部24は、複合材板17と同じ高さ(長さ)である。嵌込み部24は、壁部材11と壁部材11との間の角部と、断面L字状の角部補強板15の内面とで形成される空間内に嵌り込むように形成される。
【0073】
本実施形態では、嵌込み部24の高さを複合材板17と同じ高さに設定し、嵌込み部24に角部補強板15が接する接合面23の全体に接着剤で接着することで、嵌込み部24と角部補強板15とが互いに固定される。この接着剤としては、エポキシ系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、シアノアクリレート系、又はポリウレタン樹脂系等の接着剤が用いられる。
【0074】
真空チャンバ部材10Aの壁部材11は、上記のように炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を主体とする材料から構成されている。真空側となる真空チャンバ部材10Aの内面は、前記第1実施形態と同様に、真空シールドするために樹脂材板18の表面に金属膜19が形成されている。その他の構成は、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0075】
このように本実施形態によれば、金属フレーム20の角部の外側に嵌込み部24が一体に形成されていることから、金属フレーム20の角部の機械的強度を高めることができる。
【0076】
また、本実施形態では、前記第1実施形態と同様に壁部材11を金属フレーム20に固定し、壁部材11の端部の強度を増すために、壁部材11の角部に対して壁部材11を構成する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の強度以上のCFRPから作製された角部補強板15で補強することで、全て金属で作製していた従来の真空チャンバ部材に比べて、重量を半分以下に軽量化することができる。
【0077】
[真空チャンバ部材の第3実施形態]
図7は、本発明に係る真空チャンバ部材の第3実施形態の角部を示す拡大断面図である。図8(a),(b)は、第3実施形態の真空チャンバ部材のサンドイッチ構造を示すA-A線に沿う断面図,平面図である。なお、前記第1、第2実施形態の真空チャンバ部材と同一又は対応する部材には、同一の符号を付して説明する。
【0078】
図7に示すように、本実施形態の真空チャンバ部材10Bの壁部材11は、真空側3となるチャンバ内面を形成する第一の板が内面板26であり、この内面板26は、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の板状の無機材を溶接することにより構成されている。内面板26は、真空側3に接する全面が電解研磨又はブラスト処理されている。この処理により、チャンバ内面が平坦化され、表面の凸凹に起因して発生する窒素、酸素等の気体がリークする問題を回避できる。到達させる真空度が低い場合は、電解研磨又はブラスト処理のうちの一部またはすべてを省いても良い。
【0079】
本実施形態の真空チャンバ部材10Bの壁部材11は、前記第1、第2実施形態の金属フレーム20に代えて、真空チャンバ部材10Bの真空側3を覆うように一体化した内面板26が設けられている。隣り合う壁部材11の内面板26同士は、チャンバ内面を構成する角部で溶接により接合されている。
【0080】
壁部材11を構成する第二の板としての複合材板17は、内面板26と対向する大気側2に設けられ、内面板26よりも厚く形成されている。すなわち、この複合材板17は、内面板26の真空側3となるチャンバ内面を形成する面の裏面に設けられている。複合材板17の大気側2には、この複合材板17よりも薄い壁部材11を構成する第三の板としての外面補強板27が設けられている。この外面補強板27は、内面板26と同様にステンレス鋼、アルミニウム合金等の無機材から構成されている。真空チャンバ装置1は半導体デバイスや液晶パネルや有機ELパネルを製造する装置として用いられるため、クリーンルームに設置され、パーティクルや有機物による汚染を嫌う。そのため、外面補強板27も電解研磨又はブラスト処理することが望ましい。
【0081】
外面補強板27は大気側2全面を覆うように図示されているが、真空チャンバ装置1が設置される環境によって、複合材板17が露出して良い場合がある。そのような場合は、図8に示すように、一部が大気側に露出するような形態であっても良い。
【0082】
複合材板17の材質には、繊維を含む複合材料が用いられ、具体的には、前記第1実施形態と同様に繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック、又はセラミックス基複合材料から選択して用いられる。これにより、軽量化を図るとともに十分な強度を確保することができる。
【0083】
また、嵌込み部24と角部補強板15が接する接合面23、外面補強板27と角部補強板15が接する接合面23は、それぞれ密着度を増すために、接着剤により固定されている。この接着剤には、例えばエポキシ系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、シアノアクリレート系、ポリウレタン樹脂系等の接着剤が用いられる。
【0084】
本実施形態の壁部材11は、図8(a),(b)に示すように複合材板17に対して内面板26と外面補強板27とで両側から挟み込む、いわゆるサンドイッチ構造をなしている。このようなサンドイッチ構造を採用することにより、壁部材全体をステンレス鋼などの金属で形成するよりも格段に軽量化することができる。また、内面板26と複合材板17との間の接合面23a、複合材板17と外面補強板27との間の接合面23aは、それぞれエポキシ系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、シアノアクリレート系、ポリウレタン樹脂系等の接着剤により接合されている。これにより、十分な接着強度が確保される。
【0085】
内面板26の内部には、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の無機材からなる複数の突出部としての支柱部28が溶接によって垂直方向に固定されている。すなわち、内面板26のチャンバ内面を形成する面の裏面には、支柱が突出するように設けられている。これらの支柱部28は、それぞれの複合材板17に形成された貫通孔17aを貫通する。外面補強板27の孔27aを通して締結部材としての固定ネジ29で支柱部28にねじ込むことで、複合材板17が内面板26と外面補強板27とで両側から挟み込まれて固定される。この突出部である支柱部28と締結部材である固定ネジ29とにより、結合手段が構成されている。
【0086】
本実施形態の内面板26は、前記第2実施形態と同様に角部の外側に断面略正方形の嵌込み部24が一体に形成されている。この嵌込み部24は、複合材板17と同じ高さ(長さ)である。嵌込み部24は、壁部材11と壁部材11との間の角部と、角部補強板15の内面とで形成される空間内に嵌り込むように形成される。
【0087】
本実施形態では、前記第1、第2実施形態と同様に壁部材11の端部の強度を高めるために、壁部材11の角部に対して壁部材11を構成する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の強度以上のCFRPから作製された角部補強板15で補強されている。このように構成することで、全て金属で作製していた従来の真空チャンバ部材に比べて、重量を半分以下に軽量化することができる。
【0088】
本実施形態では、内面板26の角部近傍の支柱部28に座金21、断面L字状の角部補強板15及び外面補強板27を、ボルト22を通して締結することで、外面補強板27に断面L字状の角部補強板15が固定され、2つの壁部材11の端部の取付強度を強固にすることができる。
【0089】
このように本実施形態によれば、外面補強板27の孔27aを通して固定ネジ29で支柱部28にねじ込むことで、複合材板17が無機材からなる内面板26と外面補強板27とで両側から挟み込まれて固定されることとなり、壁部材11の強度が高まり、真空チャンバ部材10Bの内部を高真空にしたとしても、壁部材11が撓むことがなくなり、真空チャンバ部材10Bとしての耐久性を向上させることができる。
【0090】
[真空チャンバ部材の第4実施形態]
図9(a),(b)は、第4実施形態の真空チャンバ部材の桶構造を示すB-B線に沿う断面図,平面図である。なお、前記第3実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を付し、前記第3実施形態と重複する説明は省略する。
【0091】
図9(a),(b)に示すように、本実施形態の真空チャンバ部材10Cの壁部材11は、真空側3となる第一の板としての内面板26が大気側2に開口する桶状に形成されている。すなわち、この内面板26には、真空側3となるチャンバ内面を形成する面の裏面の周縁に沿って第三の板である外面補強板27に向かって突出する突出部としての側壁部26bが設けられ、内面板26の底面と側壁部26bとによって桶構造が形成されている。この桶構造の凹部26a内には、壁部材11を構成する第二の板としての複合材板17が嵌り込むように収納され、内面板26の側壁部26bと壁部材11を構成する第三の板としての外面補強板27とが複数の締結部材としての固定ネジ29によって固定されている。こうすることにより、内面板26の桶構造の凹部26aと外面補強板27とにより構成される空間に複合材板17が収納された状態で密閉されるようになる。この突出部である側壁部26bと締結部材である固定ネジ29とにより、結合手段が構成されている。
【0092】
このように本実施形態によれば、内面板26の凹部26a内に複合材板17が嵌り込むように収納され密閉されることで、図4のように壁部材11を真空チャンバ5に組付けする時に、例えば、複合材板17として炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用いる場合、このCFRPに含まれる炭素繊維(カーボンファイバ)や樹脂が真空チャンバ5内に入り込み、チャンバ5内を汚染してしまうことを未然に防止することができる。さらに、半導体デバイスや液晶パネルや有機ELパネルを製造する装置が設置されるクリーンルームにCFRPに含まれる炭素繊維(カーボンファイバ)や樹脂が大気側2に放出し、クリーンルームのクリーン度を低下させ、クリーンルーム内の他の装置内にあるウエハやパネルを汚染してしまうことも未然に防止することができる。
【0093】
また、本実施形態によれば、前記第3実施形態のように内面板26に支柱部28を固定することがなくなり、また複合材板17に貫通孔17aを形成する必要がなくなり、構造が簡素化するとともに、組付けも容易になる。
【0094】
また、本実施形態によれば、内面板26を桶構造に形成し、この桶構造の側壁部26bと外面補強板27とを固定ネジ29により締結するという構成を採っているため、より剛性が増し強度が向上している。
【0095】
また、本実施形態によれば、桶構造に形成している内面板26の内側にリブを形成し複数桶構造を内部に形成すること、桶構造に形成している側壁部26bと同様の桶構造に形成している側壁部26bを連結し複数桶構造を外部に形成することによって、さらに剛性が増し強度を向上させることも、本発明の範疇である。複数の側壁部26bを連結する方法としては溶接することが望ましい。このように、複数桶構造にすることで強度を向上させると同時に、2mを超えるような大型チャンバでは、製作しやすいサイズの複合材板17に分割できるので、製作コストも抑えることができる。
【0096】
なお、本実施形態では、内面板26の側壁部26bと外面補強板27とを固定ネジ29により接合しているが、溶接や接着などを加えて接合するようにしてもよい。
【0097】
[真空チャンバ部材の第5実施形態]
図10は、本発明に係る真空チャンバ部材の第5実施形態の角部を示す拡大断面図である。なお、前記第3、第4実施形態の真空チャンバ部材と同一又は対応する部材には、同一の符号を付し、前記第3、第4実施形態と重複する説明は省略する。
【0098】
図10に示すように、本実施形態の真空チャンバ部材10Dは、前記第3実施形態の構成に加え、第三の板としての外面補強板27が角部において接合する長さまで延びている。したがって、嵌込み部24は、複合材板17の各角部と外面補強板27の角部の内面とで形成される空間内に嵌り込むように形成される。
【0099】
外面補強板27の接合される角部は、それぞれ固定ネジ29aによって固定された後、前記第3実施形態と同様に壁部材11の端部の強度を増すために、壁部材11の角部に対して角部補強板15をボルト22で壁部材11と締結し、補強している。
【0100】
また、嵌込み部24と角部補強板15が接する接合面23、複合材板17と内面板26および外面補強板27が接する接合面23aは、それぞれ密着度を増すために、接着剤により固定されている。この接着剤には、例えばエポキシ系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、シアノアクリレート系、又はポリウレタン樹脂系等の接着剤が用いられる。
【0101】
このように本実施形態によれば、複合材板17が無機材からなる内面板26と外面補強板27とで両側から挟み込まれて固定され、外面補強板27の接合される角部がそれぞれボルト22・固定ネジ29・固定ネジ29aによって固定されているので、壁部材11の強度が一段と高まり、第3実施形態の真空チャンバ部材10Bと比べてより耐久性を向上させることができる。
【0102】
[真空チャンバ部材の第6実施形態]
図11は、本発明に係る真空チャンバ部材の第6実施形態の角部を示す拡大断面図である。なお、前記第3実施形態の真空チャンバ部材と同一又は対応する部材には、同一の符号を付し、前記第3実施形態と重複する説明は省略する。
【0103】
図11に示すように、本実施形態の真空チャンバ部材10Eは、第二の板としての複合材板17を第一の板である内面板26と第三の板である外面補強板27とで両側から挟み込むサンドイッチ構造を形成する前記第3実施形態の支柱部28に代えて、複合材板17を貫通して内面板26と外面補強板27との間に挟まれて配置される無機材からなる連結部材30を備えている。この連結部材30は、くさび形状に形成されており、同様にくさび形状に形成されている複合材板17に嵌合するようになっている。また、この連結部材30の外面補強板27と対面する面303の面積は、内面板26と対面する面301の面積よりも大きく形成されている。このため、連結部材30と複合材板17との接触面25は、外面補強板27に向かって拡がっており、この接触面25には、連結部材30から複合材板17の方向に押し付ける力が作用している。前記連結部材30から複合材板17の方向に押し付ける力は、内面板26に向かう方向の力の成分となり、複合材板17が内面板26に押し付けられて固定されている。この連結部材30の内面板26と対面する面301と外面補強板27と対面する面303には、それぞれネジ溝を切った固定穴が設けられている。第一の締結部材としての固定ネジ29を内面板26に挿通して連結部材30のこの固定穴と締結して連結部材30と内面板26とが固定されている。また、他の締結部材としての固定ネジ29を外面補強板27に挿通して連結部材30の固定穴と締結して連結部材30と外面補強板27とが固定されている。この結果、内面板26と外面補強板27とが、連結部材30を介して結合され固定されるようになっている。この連結部材30と、この連結部材30に内面板26と外面補強板27とを固定するそれぞれの固定ネジ29とにより、結合手段が構成されている。連結部材30を構成する無機材には、ステンレス鋼、アルミニウム合金等が用いられる。
【0104】
なお、この第6実施形態では、連結部材30と内面板26とを固定ネジ29で締結することにより固定しているが、固定ネジ29でなく、接着により連結部材30と内面板26とを接合するようにしてもよい。
【0105】
また、連結部材30に貫通孔を設けて、リベットを通し、内面板26と外面補強板27の両側からかしめてリベット接合するようにしてもよい。
【0106】
このように本実施形態によれば、連結部材30と内面板26とを固定ネジ29で固定し、同様に連結部材30と外面補強板27とを固定ネジ29により固定することで、内面板26と外面補強板27とを結合するようになっている。このように簡単な構成で結合しているにもかかわらず、内面板26と外面補強板27とが強固に固定され真空チャンバ部材として十分な強度が確保されている。
【0107】
[真空チャンバ部材の第6実施形態の第一の変形例]
図12(a),(b)は、第6実施形態の第一の変形例の真空チャンバ部材のサンドイッチ構造を示す断面図、C-C線に沿う断面図である。なお、前記第3実施形態または第6実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を付し、前記第3実施形態または第6実施形態と重複する説明は省略する。
【0108】
図12(a),(b)に示すように、第6実施形態の第一の変形例の真空チャンバ部材10Eは、前記第6実施形態のくさび形状の連結部材30に代えて、略L字形状の連結部材30aが複合材板17を貫通して内面板26と外面補強板27との間に挟まれて配置されている。複合材板17には、この連結部材30aと嵌合する凹部が形成されており、この凹部には、略L字形状の連結部材30aが嵌め込まれている。複合材板17の凹部に対して、この連結部材30aは入れ子形状をなしている。
【0109】
この連結部材30aの外面補強板27と対面する面303aの面積は、内面板26と対面する面301aの面積よりも大きく形成されている。このため、連結部材30aと複合材板17との接触面25aでは、連結部材30aから複合材板17の方向に押圧する力が作用し、複合材板17が内面板26に押し付けられて固定される。この連結部材30aの内面板26と対面する面301aと外面補強板27と対面する面303aには、それぞれ固定穴が設けられており、第一の締結部材としての固定ネジ29を内面板26に挿通して連結部材30aのこの固定穴と締結し、また、他の締結部材としての固定ネジ29を外面補強板27に挿通して連結部材30aの固定穴と締結する。略L字形状の連結部材30aは、外面補強板27に接する方向の寸法が長くなるように配置されており、この連結部材30aと外面補強板27とは、2本の固定ネジ29によって固定されている。このようにして、内面板26と外面補強板27とが、連結部材30aを介して固定されるようになっている。この連結部材30aと、内面板26と外面補強板27とを固定するそれぞれの固定ネジ29とにより結合手段が構成されている。
【0110】
図12(c),(d)は、第6実施形態の別の第一の変形例の真空チャンバ部材のサンドイッチ構造を示す断面図、D-D線に沿う断面図である。なお、前記第3実施形態または第6実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を付し、前記第3実施形態または第6実施形態と重複する説明は省略する。
【0111】
図12(c),(d)に示すように、第6実施形態の別の第一の変形例の真空チャンバ部材10Eは、前記第6実施形態の第一の変形例の略L字形状の連結部材30aに代えて、略U字形状の連結部材30bが複合材板17を貫通して内面板26と外面補強板27との間に挟まれて配置されている。複合材板17には、この連結部材30bと嵌合する凹部が形成されており、この凹部には、略U字形状の連結部材30bが嵌め込まれている。複合材板17の凹部に対して、この連結部材30bは入れ子形状をなしている。
【0112】
前記第6実施形態の第一の変形例と同様に、この連結部材30bの外面補強板27と対面する面303bの面積は、内面板26と対面する面301bの面積よりも大きく形成されており、連結部材30bと複合材板17との接触面25bでは、連結部材30bから複合材板17の方向に押圧する力が作用している。そして、第一の締結部材としての固定ネジ29を内面板26に挿通して連結部材30bと締結し、また、他の締結部材としての固定ネジ29を外面補強板27に挿通して連結部材30bと締結することにより、内面板26と外面補強板27とが、連結部材30bを介して固定されている。このようにして、連結部材30bと、内面板26と外面補強板27とを固定するそれぞれの固定ネジ29とにより結合手段が構成されている。
【0113】
[真空チャンバ部材の第6実施形態の第二の変形例]
図13(a),(b)は、本発明に係る第6実施形態の第二の変形例の真空チャンバ部材のサンドイッチ構造を示す断面図、E-E線に沿う断面図である。なお、前記第3実施形態の真空チャンバ部材と同一又は対応する部材には、同一の符号を付し、前記第3実施形態と重複する説明は省略する。
【0114】
図13(a),(b)に示すように、本実施形態の真空チャンバ部材10Fは、第二の板としての複合材板17を第一の板である内面板26と第三の板である外面補強板27とで両側から挟み込むサンドイッチ構造を形成する前記第3実施形態の支柱部28に代えて、支柱部28よりも短い支柱部28aが内面板26に形成されており、また、外面補強板27の大気側2となる面の裏面から突出する支柱部28bが形成されている。この支柱部28aと支柱部28bは、複合材板17を挟み込むように構成されている。支柱部28aは内面板26に溶接や接着などにより接合されており、同様に、支柱部28bは外面補強板27に溶接や接着などにより接合されている。支柱部28bには、固定ネジ29が貫通する貫通孔が設けられており、支柱部28aには、ネジ溝が切られた固定穴が形成されている。外面補強板27と支柱部28bの貫通孔を通して締結部材としての固定ネジ29で支柱部28aの固定穴にねじ込むことで、複合材板17が内面板26と外面補強板27とで両側から挟み込まれて固定される。この支柱部28aと固定ネジ29とにより、結合手段が構成されている。
【0115】
本発明に係る第6実施形態やその変形例の真空チャンバ部材として、第二の板としての複合材板17を第一の板である内面板26と第三の板である外面補強板27とで両側から挟み込むサンドイッチ構造を形成し、内面板26と複合材板17との接触面及び複合材板17と外面補強板27との接触面をエポキシ系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤またはポリウレタン樹脂系接着剤で接着接合するようにしてもよい。こうすることにより、締結部材による結合に加え、接着剤による結合も作用するため、内面板26と外面補強板27の結合強度がさらに大きくなる。また、締結部材の数を減らしても、十分な結合強度が確保できるため、軽量化も実現できる。この実施形態において、内面板26と複合材板17との接触面及び複合材板17と外面補強板27との接触面を接着接合する接着剤も結合手段となる。エポキシ系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤またはポリウレタン樹脂系接着剤を用いることにより、真空チャンバ部材として使用しても接着の剥がれが発生せず、十分な強度を実現できる。
【0116】
[真空チャンバ部材の製造方法の一実施形態]
図15は、本発明に係る真空チャンバ部材の製造方法の一実施形態を示す工程図である。図14は、本発明に係る真空チャンバ部材の製造方法の一実施形態にて製造される、本発明の真空チャンバ部材の角部を示す部分拡大図である。
【0117】
図14に示すように、本実施形態の製造方法において製造される真空チャンバ部材10Aは、真空側3となる真空チャンバ部材10Aの内面が第一の板としての金属膜19を形成している樹脂材板18で構成され、また、この樹脂材板18と対向する大気側2に第二の板としての複合材板17が形成されている。
【0118】
本実施形態の製造方法で製造される真空チャンバ部材10Aは、基本的には図6に示す第2実施形態の真空チャンバ部材10Aと同じ構成である。そのため、本製造方法の説明において、前記第2実施形態の真空チャンバ部材10Aと同一又は対応する部分には、同一の符号を付して説明する。
【0119】
なお、図14に示す真空チャンバ部材10Aは図6に示す真空チャンバ部材10Aの部分変形例であり、金属フレーム20の構成が図6に示す真空チャンバ10Aとは若干相違している。
【0120】
具体的には、図14に示す真空チャンバ10Aの金属フレーム20は、6面の壁部材11のうちの1面(図1に示す4面の側壁12のうちの1面)の内面側において(図7に示す真空チャンバ部材10Bの内面板26と同様に)面状に設けられ、この面状の部分の中央側に形成された開口部において壁部材11の外面側に突出したフランジ部41が形成されている。このフランジ部41の大気側2の端部には気密性を保持するためのシール部材が配設された真空シール面42が形成され、この真空シール面42にゲートバルブ37が取り付けられている。それ以外の構成は図6に示す真空チャンバ10Aと同じである。
【0121】
図15に示すとおり、本実施形態の製造方法は、金属フレーム20によって真空チャンバ部材10Aの構造体を製作し、その構造体の表面を仕上げ・洗浄し、樹脂材板18と複合材板17を所定の形状としたものを金属フレーム20に組み付ける第一工程P10と、扉・蓋・ゲートバルブ等の部品と接する真空シール面42を仕上げる第二工程P20を有する。
【0122】
まず、第一工程P10を説明する。
【0123】
第一工程P10においては、無機材形状製作工程P11と、第一の洗浄工程P12と、複合材形状製作工程P13とを有する。第二工程P20は、無機材形状精密仕上げ工程P21と、第二の洗浄工程P22とを有する。
【0124】
無機材形状製作工程P11においては、金属フレーム20を真空チャンバ部材10Aの構造体を構成する所定形状に形成するために、ステンレス鋼等の金属板の機械加工が行われたり、金属同士の溶接などが行われる。
【0125】
第一の洗浄工程P12においては、無機材形状製作工程P11で形成されたステンレス鋼等の金属板からなる構造体としての金属フレーム20の真空側3に接する面に対してブラスト又は電解研磨が行われ、その後にウエット洗浄・乾燥が行われる。
【0126】
複合材形状製作工程P13においては、樹脂材板18に金属膜19が形成され、金属膜19が形成された樹脂材板18と複合材板17が接着剤やボルトにより固定され、壁部材11が形成される。また、図14に示すように、無機材形状製作工程P11で形成された金属板からなる金属フレーム20の外面には、壁部材11が接着剤やボルトによって固定される。この接着剤には、例えばエポキシ系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、シアノアクリレート系、又はポリウレタン樹脂系等の接着剤が用いられる。さらに、金属フレーム20と壁部材11とを固定した状態の角部には、外側から角部補強板15を配設し、それらがボルト22の締結と接着とで固着されることにより補強される。
【0127】
次に、第二工程P20を説明する。
【0128】
図15に示す、第二工程P20の無機材形状精密仕上げ工程P21においては、図14に示すように、金属フレーム20に対する外部や内部の部材とのインターフェースとなるフランジ部41の真空シール面42の仕上げ加工が行われる。
【0129】
図15に示す、第二の洗浄工程P22においては、仕上げ加工した真空シール面42の洗浄に加え、金属膜19および金属フレーム20の内面のドライ洗浄が行われる。
【0130】
第一の洗浄工程P12において行われるウエット洗浄とは、たとえば高圧洗浄又は超音波洗浄が該当する。第二の洗浄工程P22において行われるドライ洗浄とは、たとえば真空チャンバ部材10および真空チャンバ部材10Aの内面を真空環境にした上で、酸素を供給しながら高電圧を印加し、放電を発生させることにより洗浄する工程が該当する。
【0131】
第二の洗浄工程P22においてドライ洗浄を用いることにより、接着した複合材板17や接着剤にダメージを与えることなく、真空チャンバ部材10Aの内面に残る有機物を除去し、クリーンにすることができる。また、従来のようなウエット洗浄を実施した場合、接着部の小さな隙間に洗浄液が入り込み、その後、リンスをしても洗浄液が取れないという問題があったが、これも解決することができる。
【0132】
このように、この実施形態の製造方法によれば、真空側3となる真空チャンバ部材10Aの内面を無機材の金属フレーム20及び金属膜19で作製し、この金属フレーム20及び金属膜19と対向する大気側2を複合材板17で作製することで、軽量化した真空チャンバ部材10Aを簡素な工程で確実に製造することができる。
【0133】
この実施形態の製造方法においては、無機材と複合材とを有する構造の物体である無機材の形状を創生する第一工程P10と、第一工程P10を経た無機材に所定の仕上げ処理を行うことで無機材の形状を仕上げする第二工程P20とを用いることにより、真空側となるチャンバ内面が無機材の第一の板として構成され、第一の板の真空側と対向する面に複合材で構成された第二の板としての複合材板17を構成する真空チャンバ部材を簡素な工程で確実に構築できる。これにより、真空側となる内面の密閉性を維持しつつ、有機物汚染を防ぎ、軽量化を図った真空チャンバ部材を簡素な工程で確実に構築することが可能となる。
【0134】
この実施形態の製造方法においては、無機材形状製作工程P11及び第一の洗浄工程P12及び複合材形状製作工程P13、ならびに、無機材形状精密仕上げ工程P21及び第二の洗浄工程P22を用いて、真空側となる内面の密閉性を維持しつつ、有機物汚染を防ぎ、軽量化を図った真空チャンバ部材10Aを、簡素かつ具体的な工程で一層確実に構築することが可能となる。
【0135】
この実施形態の製造方法においては、第一工程P10において第一の洗浄工程P12を用い、第二工程において第二の洗浄工程P22を用いることで、有機物汚染を防ぎ、軽量化を図った真空チャンバ部材10Aを、簡素かつ具体的な工程で一層確実に構築することが可能となる。
【0136】
この実施形態の製造方法においては、複合材板17は、繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック、セラミックス基複合材料のうちの少なくとも何れか一つを有する材質の物体であることから、複合材板17の機械的強度が高まるとともに、真空チャンバ部材10Aの軽量化を図ることができる。
【0137】
上記の説明においては、この実施形態の製造方法を第2実施形態に係る真空チャンバ部材10Aの製造方法にこの実施形態の製造方法を適用する事例を説明したが、この実施形態の製造方法は、第1実施形態に係る真空チャンバ部材10の製造方法や、第3実施形態に係る真空チャンバ部材10Bの製造方法や、第4実施形態に係る真空チャンバ部材10Cの製造方法や、第5実施形態に係る真空チャンバ部材10Dの製造方法、第6実施形態やその第一の変形例に係る真空チャンバ部材10Eの製造方法、第6実施形態の第二の変形例に係る真空チャンバ部材10Fの製造方法としても適用できる。また、この実施形態の製造方法は、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、第5実施形態、第6実施形態とその変形例以外のいかなる真空チャンバ部材(図示せず)の製造方法にも適用することができる。
【0138】
たとえば、本実施形態の製造方法を第3実施形態の真空チャンバ部材10B(図7参照)の製造に適用する場合、無機材形状製作工程P11において真空側3となる真空チャンバ部材10Bの内面に無機材の第一の板としての内面板26が設けられ、複合材形状製作工程P13において内面板26と対向する大気側2に第二の板としての複合材板17が設けられる。なお、この場合、真空チャンバ部材10Bには、内面板26にフランジ部41が設けられ、このフランジ部41に真空シール面42が設けられた構成となる。
【0139】
[他の実施形態]
本発明の各実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0140】
例えば、上記第1実施形態の真空チャンバ部材10では、金属フレーム20の外側に2本の支柱20aが直角方向に延びるように形成した例について説明したが、この本数に限らず、少なくとも1本形成すればよい。
【0141】
また、上記各実施形態では、各部材を接合するために締結部材としてボルト22、固定ネジ29を用いた例について説明したが、これに限らずリベット等の他の締結部材を用いて各部材を接合するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0142】
1 真空チャンバ装置
2 大気側
3 真空側
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F 真空チャンバ部材
11 壁部材(板部材)
12 側壁
13 底壁
14 上部壁
15 角部補強板
15a 取付孔
16 支持脚
17 複合材板(第二の板)
17a 貫通孔
18 樹脂材板(第一の板)
19 金属膜
20 金属フレーム(フレーム)
20a 支柱
20b 固定穴
21 座金
22 ボルト(締結部材)
23 接合面
23a 接合面
24 嵌込み部
25,25a,25b 連結部材と複合材板との接触面
26 内面板(第一の板、構造体)
26a 凹部
26b 側壁部(突出部、結合手段)
27 外面補強板(第三の板)
27a 孔
28,28a,28b 支柱部(突出部、結合手段)
29 固定ネジ(締結部材、結合手段)
30,30a,30b 連結部材(結合手段)
301,301a,301b 連結部材の内面板と対面する面
303,303a,303b 連結部材の外面補強板と対面する面
31 ダクト
32 粗引きポンプ
33 バルブ
34 信号線
35 コントローラ
36 真空センサ
37 ゲートバルブ
38 ターボ分子ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15