(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168262
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】医療器具の乾燥方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/12 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A61B1/12 510
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022145939
(22)【出願日】2022-09-14
(62)【分割の表示】P 2018016190の分割
【原出願日】2018-02-01
(31)【優先権主張番号】15/423,387
(32)【優先日】2017-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591286579
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ダグ・ボ・チュオン
(72)【発明者】
【氏名】トッド・モリソン
(57)【要約】
【課題】医療器具を真空チャンバ内で乾燥させる方法を提供すること。
【解決手段】方法は、(a)デジタル計算機内のタイマーを始動するステップと、(b)前記真空チャンバから第1の体積の空気を抜き取るステップと、(c)前記真空チャンバから前記第1の体積の空気を抜き取りながら、前記真空チャンバ内の圧力を繰り返し判定するステップと、(d)時間に関する圧力の第1の二階微分値を、前記デジタル計算機で計算するステップと、(e)時間に関する圧力の第2の二階微分値を、前記デジタル計算機で計算するステップであって、前記第2の二階微分値は、前記第1の二階微分値に対応する前記時間の後に続く時間に対応する、ステップと、(f)前記第2の二階微分値が前記第1の二階微分値より大きいことを、前記デジタル計算機で判定するステップと、(g)前記真空チャンバ内に第2の体積の空気を自動的に導入するステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具を真空チャンバ内で乾燥させる方法であって、
(a)デジタル計算機内のタイマーを始動するステップと、
(b)前記真空チャンバから第1の体積の空気を抜き取るステップと、
(c)前記真空チャンバから前記第1の体積の空気を抜き取りながら、前記真空チャンバ内の圧力を繰り返し判定するステップと、
(d)時間に関する圧力の第1の二階微分値を、前記デジタル計算機で計算するステップと、
(e)時間に関する圧力の第2の二階微分値を、前記デジタル計算機で計算するステップであって、前記第2の二階微分値は、前記第1の二階微分値に対応する前記時間の後に続く時間に対応する、ステップと、
(f)前記第2の二階微分値が前記第1の二階微分値より大きいことを、前記デジタル計算機で判定するステップと、
(g)前記真空チャンバ内に第2の体積の空気を自動的に導入するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記圧力を繰り返し判定する前記ステップは、圧力測定データを繰り返し取り、前記圧力測定データを前記デジタル計算機の非一時的記憶媒体に保存することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の二階微分値が、水のおおよその三重点圧力よりも小さい圧力で生じることを前記デジタル計算機で判定するステップを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記真空チャンバ内に空気を自動的に導入する前記ステップは、弁を自動的に開放することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記真空チャンバを自動的に開放するステップを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記医療器具を前記真空チャンバから取り出し、前記医療器具上に空気を吹き付けるか、又は前記医療器具に熱を加えることによって前記医療器具を乾燥させるステップを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記真空チャンバから前記第1の体積の空気を抜き取る前記ステップが、前記タイマーを始動する前記ステップの後に始まる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の二階微分値と前記第1の二階微分値との間の差は、ノイズフロアより大きいことを判定するステップを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記医療器具は、内腔を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記医療器具は、内視鏡である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記真空チャンバは内視鏡を吊るすためのラックを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
医療器具を真空チャンバ内で乾燥させる方法であって、
(a)デジタル計算機内のタイマーを始動するステップと、
(b)前記真空チャンバから第1の体積の空気を抜き取るステップと、
(c)前記真空チャンバから前記第1の体積の空気を抜き取りながら、前記真空チャンバ内の圧力を繰り返し判定するステップと、
(d)時間に関する圧力の二階微分値の第1の群を、前記デジタル計算機で計算するステップと、
(e)前記二階微分値の第1の群からの連続する二階微分値同士の間の正の差の第1の累積を、前記デジタル計算機で計算するステップと、
(f)前記第1の累積を閾値と比較するステップであって、前記第1の累積が前記閾値よりも大きい場合は、残留水分が前記医療器具上に存在する、又は存在する可能性があることを示し、前記第1の累積が前記閾値よりも小さい場合は、前記医療器具が乾燥していることを示す、ステップと、
(g)前記第1の累積は前記閾値よりも大きいと判定するステップと、
(h)バルブを開いて前記真空チャンバ内に第2の体積の空気を導入するステップと、
(i)前記真空チャンバから前記第2の体積の空気を抜き取るステップと、
(j)前記真空チャンバから前記第2の体積の空気を抜き取りながら、前記真空チャンバ内の圧力を繰り返し判定するステップと、
(k)時間に関する圧力の二階微分値の第2の群を、前記デジタル計算機で計算するステップと、
(l)前記二階微分値の第2の群からの連続する二階微分値同士の間の正の差の第2の累積を、前記デジタル計算機で計算するステップと、
(m)前記第2の累積は前記閾値よりも小さいと判定するステップと、
(n)前記バルブを開放して前記真空チャンバ内に第3の体積の空気を導入するステップと、
(o)前記真空チャンバを開放するステップと、を含む、方法。
【請求項13】
前記バルブを開放して前記第3の体積の空気を導入する前記ステップは、前記第2の累積は前記閾値よりも小さいと判定する前記ステップよりも後に実施され、前記真空チャンバを開放する前記ステップは、前記バルブを開放して前記第3の体積の空気を導入する前記ステップよりも後に実施され、前記真空チャンバを開放する前記ステップの後に、前記真空チャンバから前記医療器具を乾燥状態で取り除くステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の累積は、連続する二階微分値同士の間の第1の差が負である場合に終了される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の累積は、前記第1の累積が終了された後、連続する二階微分値同士の間の第2の差が正である場合に開始される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記医療器具は、内腔を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記医療器具は、内視鏡である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記真空チャンバは内視鏡を吊るすためのラックを有する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示されている主題は、減圧されつつあるチャンバ内の水分の検出に関する。その主題は、特に、化学的蒸気滅菌技術において有用である。
【背景技術】
【0002】
医療用装置は、患者に感染症を起こさせ得るような、例えば微生物により汚染された装置が患者に対して使用され得る可能性を最小限に抑えるため、使用前に汚染除去される場合がある。汚染除去手順は、滅菌と消毒を含む。真空チャンバに低圧で滅菌剤を導入することを含む各種滅菌手順では、滅菌効果を最大限引き出すため、滅菌剤を器具に導入する前に、器具と真空チャンバから残留水分を除去するべきである。各種消毒手順において、化学浴後の器具における新たな微生物の成長を阻害するため、器具から残留水分を除去するべきである。
【0003】
ある典型的な、医療用装置用化学的蒸気滅菌プロセスは、医療施設の担当者が、器具を水及び/又は洗浄液で洗浄して、その器具から固形物や液体を除去することにより、滅菌用装置を準備することで開始される。次に担当者は、(例えば、熱、医療グレードの圧縮空気、及び/又はタオルを用いて)器具を乾燥させ、恐らくはその器具を、微生物に対してはバリアとなるものの滅菌剤が透過し得る、滅菌に適したラップで包む。ラップに包まれた器具は、時に、滅菌パック又は負荷と呼ばれるものである。次に負荷を、滅菌システムの真空チャンバの中に置き、典型的にはチャンバのドアを閉めることにより、チャンバを閉鎖(封止)する。チャンバを加熱してもよく、加熱することにより、チャンバ内に存在し得る水が気化するのを助け得る。次に、チャンバ内の、水蒸気を含み得る大気を、排気する。一部の滅菌方法では、真空チャンバ内の空気を励起して空気プラズマを形成し得るが、そのプラズマは、水を気化させてチャンバから除去するのを更に助ける役割を果たし得る。時に真空状態又は低真空状態と呼ばれることもある低圧状態が実現した後で、気相形態又は、チャンバの低圧環境下で気化する霧状のいずれかの滅菌剤がチャンバ内に導入される。チャンバ内に添加されたガスは、チャンバ内の圧力をわずかに上昇させる。滅菌剤はチャンバ内で素早く広がり、チャンバ内に収容されている医療用装置の、例えばひび割れ、裂け目、及び内腔のような、小さい又は狭い空間に入り込む。滅菌剤が医療用装置を洗い、装置の上や内部に存在する細菌、ウィルス、及び胞子が滅菌剤に触れると、それらを殺すようになっている。一部の滅菌方法では、特に、過酸化水素を用いる低温による方法では、過酸化水素ガスが電界を介して励起されて、ガスがプラズマに変化し得る。最終的に、滅菌剤はチャンバから排気され、チャンバは雰囲気圧に戻される。滅菌プロセスが終了した後で、器具はチャンバから取り出され得る。
【0004】
例えば過酸化水素を用いる市販の滅菌システムは、その滅菌チャンバ内に水をまったく含まない状態で運転されるのが好ましいように設計されている。保健医療従事者が誤って水をチャンバ内に導入した場合、チャンバ内の圧力を低下させるにつれて、その水とその周囲との間の表面圧の均衡を維持するため、その水は気化し始める。この圧力均衡もまた温度の関数であるが、この均衡は典型的には、水の蒸気圧と呼ばれるものである。100℃では、水の蒸気圧は101kPa(1気圧又760トル)であるが、これは一般に、水は100℃で沸騰すると言われている理由である。ただし、水の周囲の局所圧が101kPa(760トル)を下回る場合、液体水は、より低い温度で水蒸気に位相が変化し得る。
【0005】
水が相変化して蒸気になるには、潜熱が必要となる。気化する水は、このエネルギーの少なくとも一部を、残った水から引き出し得るが、これにより、残留する水の温度は低下することになる。チャンバ内の圧力が低下し続け、気化する水が残留する水の温度を低下させ続けるにつれて、圧力及び温度は、水の「三重点」としばしば呼ばれるもの、すなわち、氷、水、及び水蒸気が均衡状態で存在する温度と圧力との組み合わせ、に近づいていく。水の三重点温度は0.01℃で、水の三重点圧力は0.616kPa(4.58トル)である。温度及び圧力が三重点に近づくにつれて、残留水分内で氷の結晶が形成される可能性が高まる。
【0006】
氷は、医療用装置又は器具の少なくとも一部に滅菌剤が接触するのを妨げ得るが、例えば、装置の内腔をブロックするという可能性も考えられる。したがって、氷は、滅菌プロセスを効果的でないものとしてしまう場合があり、そうなると、患者に対して滅菌できていない装置を使用してしまうことになったり、病院がその装置をあらためて滅菌すること(これは、貴重な時間を更に必要とする作業である)になったりする場合がある。また、滅菌剤は、氷の上で凝結したり、氷の中に閉じ込められたりし得るが、そうなると、医療従事者の皮膚に、化学的熱傷をもたらす可能性もある。
【0007】
滅菌性そのものに加えて、医療用装置の滅菌プロセスに関連する時間及び効率性もまた、保健医療施設にとって重要な考慮事項である。例えば、病院は、所与の時間的範囲内(例えば1週間)で1つの装置が使用できる回数を最大にすることをしばしば望む。したがって、濡れた医療用装置を滅菌プロセスにかけてしまうことは、滅菌プロセスを有効ではないものとなる可能性を高めるだけでなく、時間も無駄にして、1つの装置が再使用し得る一週間当たりの回数を減らす場合がある。したがって、医療従事者は、医療用装置が洗浄された後、その装置が滅菌チャンバ内に置かれる前、又は遅くとも滅菌剤ガスが真空チャンバ内に導入される前には、その装置からあらゆる水分を除去すべきである。
【0008】
一部の滅菌システムは、滅菌剤ガスを滅菌チャンバに導入する前に、減圧されつつある間にチャンバ内の圧力が小さく上昇することをチェックすることによって、滅菌チャンバ内の水の存在をチェックするようになっている。減圧されつつある間に、水がチャンバ内に存在しないと、圧力は、高まることなく、漸近線の方へ低下していく。しかしながら、減圧されつつある間に何らかの水がチャンバ内に存在すると、少なくともその水の一部は蒸気となって、圧力の、わずかな局所的な上昇を引き起こし得る。したがって、減圧されつつある間に圧力の小さな上昇が検出されると、それは真空チャンバ内に水が存在することを示すものとなる。水が検出されると、滅菌プロセスを中止して、再び滅菌を試みる前に、余分な水を医療用装置から除去するとよい。水が検出されてすぐに滅菌プロセスを中止することにより、有効とはならない恐れのある滅菌プロセスを継続する場合と比べて時間とリソースを節約するのに役立ち得るだけでなく、滅菌されていない装置を使用することを回避し得る。
【0009】
一部の事例においては、滅菌プロセスを中止する代わりに、「負荷コンディショニング」と呼ばれるプロセスにより、水を真空チャンバから除去するよう試みることが好まれる場合がある。負荷コンディショニングは典型的には、まず加熱すること、及び/又はプラズマを滅菌チャンバ内に導入すること、並びに滅菌チャンバを再加圧してエネルギーを水(又は氷)に移転することを、何らかの形で組み合わせることによって、次に、新たに減圧を実行して水を蒸気変換することによって実現される。負荷コンディショニングは、チャンバ内を減圧する前、後、又は前と後と両方に実行し得る。一部の事例では、負荷コンディショニングではチャンバから水を除去できない。他の事例では、負荷コンディショニングで、水の一部を除去し得るが、全部を除去しきれない。そのような事例では、追加的な負荷コンディショニングが試みられる場合があるが、それをするには、追加的な時間とリソースが必要となる。したがって、負荷コンディショニングで水をチャンバから除去できない場合、又は水を除去するのに繰り返し試行することが必要となり得る場合には、負荷コンディショニングを放棄して、新たな滅菌プロセスを試みる前に、余分な水を医療用装置から除去し得るようにプロセスを中止することが望ましい場合があり得る。
【0010】
内視鏡等の内腔を有する医療器具は、滅菌ではなく消毒で汚染除去される。典型的な消毒手順は、例えばグルタルアルデヒド又はオルト-フタルアルデヒドを含む化学浴に器具を浸すことを含む。浸しの後、器具の再汚染を防ぎながら、器具は飲料水又は滅菌水によりすすいで、薬品を除去する必要がある。その後、器具を例えばタオル、熱、及び/又は圧縮空気により乾燥させる。器具は、乾燥キャビネット内に置いておいてもよい。市販されている乾燥キャビネットでは、その内部に空気が循環しており、水分除去が更に促進されている。残留水を除去することで、器具を微生物により再汚染されにくくできる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示の主題は、医療器具を乾燥させるように真空チャンバを操作する方法、及び/又は医療器具が乾燥していることを確認する方法に関する。第1の例示的方法は、真空チャンバを開放するステップと、チャンバ内に器具を載置するステップと、チャンバを閉鎖するステップと、チャンバから第1の体積の空気を抜き取るステップと、ある体積の液体水を蒸気に変えるステップと、チャンバ内に第2の体積の空気を導入するステップと、チャンバから第2の体積の空気を抜き取るステップと、第2の体積の液体水を蒸気に変えるステップと、チャンバ内に第3の体積の空気を導入するステップと、チャンバを開放するステップと、乾燥状態の器具をチェンバから取り出すステップと、を含む。この方法は、チャンバから第2の体積の空気を抜き取りながら、チャンバ内の圧力に対応する圧力データを収集するステップと、水のおおよその三重点圧力よりも大きい圧力に対応する時間に関する圧力の第1の二階微分値を計算するステップと、水のおおよその三重点圧力よりも大きい圧力及び第1の二階微分値に対応する時間の後に続く時間に対応する時間に関する圧力の第2の二階微分値を計算するステップと、水のおおよその三重点圧力よりも小さい圧力及び第2の二階微分値に対応する時間の後に続く時間に対応する時間に関する圧力の第3の二階微分値を計算するステップと、水のおおよその三重点圧力よりも小さい圧力及び第3の二階微分値に対応する時間に対応する時間に関する第4の二階微分値を計算するステップと、第4の二階微分値が第3の二階微分値以下であることを判定するステップと、第2の二階微分値が第1の二階微分値以下であることを判定するステップと、を更に含み得る。この第1の例示的方法は、例えば内視鏡のような内腔を有する器具に対して実行されてもよい。その場合、真空チャンバは内視鏡を吊り下げるラックを含んでもよい。
【0012】
真空チャンバ内で医療器具を乾燥させる第2の例示的方法は、デジタル計算機内のタイマーを始動するステップと、チャンバから第1の体積の空気を抜き取るステップと、チャンバから第1の体積の空気を抜き取りながら、チャンバ内の圧力を繰り返し判定するステップと、時間に関する圧力の第1の二階微分値を、デジタル計算機で計算するステップと、時間に関する圧力の二階微分値をデジタル計算機で計算するステップであって、第2の二階微分値は、第1の二階微分値に対応する時間の後に続く時間に対応する、ステップと、第2の二階微分値が第1の二階微分値より大きいことを、デジタル計算機で判定するステップと、チャンバ内に第2の体積の空気を自動的に導入するステップと、を含み得る。圧力を繰り返し判定するステップは、圧力測定データを繰り返し取り、データを、デジタル計算機の非一時的記憶媒体内に保存することを含み得る。方法は、第2の二階微分値が、水のおおよその三重点圧力よりも小さい圧力で生じることをデジタル計算機で判定するステップを更に含んでもよい。チャンバ内に空気を自動的に導入するステップは、弁を自動的に開放することを含んでもよい。更に、チャンバは自動的に開放してもよい。この方法は、器具をチャンバから取り出し、器具上に空気を吹き付けるか、又は器具に熱を加えることによって器具を乾燥させるステップを更に含むことができる。加えて、チャンバから第1の体積の空気を抜き取るステップが、タイマーを始動するステップの後に始まり得る。方法はまた、第2の二階微分値と第1の二階微分値との差は、ノイズフロアより大きいことを判定するステップをも含み得る。この第2の例示的方法は、例えば内視鏡のような内腔を有する器具に対して実行されてもよい。その場合、真空チャンバは内視鏡を吊り下げるラックを含んでもよい。
【0013】
真空チャンバ内で医療器具を乾燥させる第3の例示的方法は、デジタル計算機内のタイマーを始動するステップと、チャンバから第1の体積の空気を抜き取るステップと、チャンバから第1の体積の空気を抜き取りながら、チャンバ内の圧力を繰り返し判定するステップと、時間に関する圧力の第1の二階微分値の第1の群を、デジタル計算機で計算するステップと、二階微分値の第1の群からの連続する二階微分値同士の間の正の差の第1の累積をデジタル計算機で計算するステップと、累積を閾値と比較するステップであって、累積が閾値よりも大きい場合は、残留水分が器具上に存在する、又は存在する可能性があることを示し、累積が閾値よりも小さい場合は、器具が乾燥していることを示す、ステップと、第1の累積は閾値よりも大きいと判定するステップと、バルブを開いてチャンバ内に第2の体積の空気を導入するステップと、チャンバから第2の体積の空気を抜き取るステップと、チャンバから第2の体積の空気を抜き取りながら、チャンバ内の圧力を繰り返し判定するステップと、時間に関する圧力の二階微分値の第2の群を、デジタル計算機で計算するステップと、二階微分値の第2の群から連続する二階微分値同士の間の正の差の第2の累積を、デジタル計算機で計算するステップと、バルブを開放しチャンバ内に第3の体積の空気を導入するステップと、チャンバを開放するステップと、を含む。バルブを開放して3の体積の空気を導入するステップは、第2の累積が閾値より小さいと判定するステップよりも後に実施されてもよい。チャンバを開放するステップは、バルブを開放して第3の体積の空気を導入するステップよりも後に実行されてもよい。更に、チャンバを開放するステップの後に、チャンバから器具を乾燥状態で取り除いてもよい。更に、第1の累積は、連続する二階微分値同士の間の第1の差分が負である場合には終了され、第2の累積は、第1の累積が終了された後、連続する二階微分値同士の間の第2の差分が正である場合に開始してもよい。この第3の例示的方法は、例えば内視鏡のような内腔を有する器具に対して実行されてもよい。その場合、真空チャンバは内視鏡を吊り下げるラックを含んでもよい。
【0014】
本明細書において使用される場合、「ノイズフロア」という用語は、真空チャンバに接続された圧力トランスデューサから出力される、時間に対する圧力データのプロットに関するものである。そして用語ノイズフロアが指すのは、プロット上の最大の極大値(圧力トランスデューサに固有のノイズにより引き起こされる)と、プロット上の最小極小値(真空チャンバが維持し得る最低の圧力付近に維持された場合、又は、所与の滅菌プロセスの場合の、望ましい最終圧力付近に維持された場合の、圧力トランスデューサに固有のノイズにより引き起こされる)との間の、ピークからピークへの振幅である。ノイズフロアは、所与の真空チャンバ又は所与の滅菌プロセスに対して、経験的な方法で決定され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本明細書は、本明細書において説明される主題を特定して指摘し、明白に請求する請求項を以って結論とするものであるが、添付図面と併せた以下の特定の例の説明により、その主題は更によく理解されると思われる。
【
図1】本明細書において開示される方法を実践するために用いられ得る真空チャンバを有する滅菌システムを、ブロック図の形態で図示している。
【
図2】
図1に図示される真空チャンバ内に水が存在しない場合の、真空チャンバ内における、時間に対する圧力と、時間に対する圧力の一階微分と、時間に対する圧力の二階微分とをプロットしたグラフである。
【
図3】
図1に図示される真空チャンバ内の、非金属表面上に水が存在する場合の、真空チャンバ内における、時間に対する圧力と、時間に対する圧力の一階微分と、時間に対する圧力の二階微分とをプロットしたグラフである。
【
図4】
図1に図示される真空チャンバ内の、金属表面上に水が存在する場合の、真空チャンバ内における、時間に対する圧力と、時間に対する圧力の一階微分と、時間に対する圧力の二階微分とをプロットしたグラフである。
【
図5】水分を検出し、水分を除去し、乾燥を確認する例示的な方法を含む滅菌手順のフロー図である。
【
図6】水分を検出し、水分を除去し、乾燥を確認する別の例示的な方法を含む滅菌手順のフロー図である。
【
図7】消毒手順に組み込むことができる、水分を検出し、水分を除去し、そして乾燥を確認するための方法のフロー図である。
【
図8】消毒手順に組み込むことができる、水分を検出し、水分を除去し、そして乾燥を確認するための別の方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明は、特許請求されている主題の特定の例示的ないくつかの例を記載する。本技術の他の例、特徴、態様、実施形態及び利点は、以下の説明から当業者には明らかになるであろう。したがって図面及び説明は、実質的に例示的なものとしてみなされなければならない。
【0017】
I.真空チャンバ
消毒手順又はシステムは、真空チャンバを含んでもよい。例えば、
図1は、ブロック図の形式で模式的に描いた滅菌システム10を表す。同システム10は、真空チャンバ12を備え、同チャンバ12はその中に滅菌対象の器具の負荷(パック)14を有する。チャンバ12は、約0.04kPa~0.4kPa(約0.3トル~3トル)もの低い圧力を取り扱えるくらいに堅牢で、その中に導入されるいかなる滅菌剤とも反応せず、吸収もしないくらいに不活性である任意の材料から形成され得る。そのような材料としては、アルミニウム及びステンレス鋼が挙げられ得る。チャンバ12はまた、例えばドアのような開放可能且つ封止可能なバリア16をも含み、同バリア16は、負荷14をチャンバ12内に置いたり、チャンバ12から取り出したりするのが可能とするよう開放し得るものである。バリア16は、チャンバ12内で実現される低い圧力に耐え得るよう、かつチャンバ12と周囲環境との間で漏れが起こらないよう、十分に堅牢であるべきで、十分に堅牢な封止部を含むべきである。所望の動作圧力を達成することが可能な真空ポンプ18は、空気及び、例えば水蒸気のようなその他のガスを、チャンバ12から排気する。真空ポンプ18は、同ポンプ18をチャンバ12と接続するためのホース又はパイプ20を含み得る。真空ポンプ18はまた、弁22をも含み得るが、同弁22は、チャンバ12内の圧力が変化するのを助けたり、妨げたりするために開閉され得る。例えば、弁が解放され真空ポンプが作動している場合には、チャンバ12内の圧力が低下し得る。あるいは、弁は開放されているものの真空ポンプが作動していない場合には、チャンバ内の圧力は、雰囲気圧と等しくなり得る。他の実施形態では、チャンバ12が雰囲気圧と等しい圧力を有すべきかどうかを制御するために、真空ポンプ18の一部をなしていない弁が用いられ得る。圧力モニタ24は、チャンバ12内の圧力を監視する。特に好適な圧力モニタは、MKS Instruments社製のキャパシタンスマノメータである。加熱素子26を、チャンバ12を加熱するために用いてもよい。同素子26は、チャンバ12の外側にあって、チャンバ12を均一に加熱するのに十分な位置に取り付けられた別々の素子を含むものであり得る。滅菌剤を収容し、ホース又はパイプ30を含むタンク又はリザーバ28が、チャンバ12に接続されている。一部の実施形態においては、タンク28は、弁32を更に含み、同弁32は、タンク28からホース30を経由してチャンバ12の中に至る滅菌剤の流れを制御するために、チャンバ12とタンク28との間に配設され得る。電源及び/又は信号発生器33、並びにチャンバ12内に配設された電極34が、チャンバ12内の、電極34とチャンバ12の内面との間に電界を発生させて、チャンバ12内にプラズマを発生させるため提供され得る。例えばRF信号のような信号が、例えばワイヤ式のフィードスルーのようなフィードスルー35を介して、発生器33から電極34に提供され得る。プラズマの発生は、過酸化水素ガスを用いる低温滅菌プロセスには有用である。これらのプロセスでは、過酸化水素ガスが励起されて、過酸化水素プラズマが形成され得る。あるいは、プラズマを形成するために例えば空気のような別のガスを用いてもよく、そうすることにより、負荷上に残る過酸化水素残留物の量を減らし、過酸化水素をチャンバ12から除去するのを容易にするのに役立ち得る。滅菌システム10はまた、ユーザーインターフェイス36をも含み、同インターフェイス36には、例えばプリンタ又ディスプレイのような出力装置と、例えばキーパッド又はタッチスクリーンのようなユーザー入力装置とが含まれ得る。
【0018】
例えばデジタル計算機のような制御システム38は、システム10及びそのさまざまな構成部品の動作を制御する。制御システム38は、マイクロプロセッサ40を採用し得る。同システム38は、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ、又はフラッシュメモリのような、圧力の値や時間の値といったデータを保存可能な非一時的記憶媒体42をも採用し得る。例えば圧力データのようなアナログデータが収集される場合には、アナログからデジタルへの(A2D)変換器44を用いて、アナログデータをデジタルデーターに変換してもよい。タイマー又はクロック回路45は、タイムキーピングをする。制御システム38は、マイクロプロセッサが、それにより、時間に関する圧力の一階微分値、及び時間に関する圧力の二階微分値を数量計算し得る、ソフトウェア及び/又はロジックを更に含み得る。そのような数量計算は、当該技術分野で既知のように、前進差分、後進差分、中心差分、又はそれらを何らかの形で組み合わせたものにしたがって実行し得る。これらの一階微分値及び二階微分値はまた、記憶媒体42に保存され得る。制御システム38は、マイクロプロセッサが、それにより、異なる圧力及び異なる時間に対応する一階微分値同士を比較し得る、ソフトウェア及び/又はロジックを更に含み得る。制御システム38は、マイクロプロセッサが、それにより、異なる圧力及び異なる時間に対応する二階微分値同士を比較し得る、ソフトウェア及び/又はロジックを更に含み得る。例えば、制御システムは、さまざまな時間増分iで測定された圧力値Piを記憶することができる。各時間増分間の時間量Δtは、約0.1秒、約1秒、約2秒、約5秒、又は約10秒に等しくてもよい。圧力値もまた、PiがP(tn)(ただし、tn=tn-1+Δt)として表され得るように、時間の関数として表され得る。圧力値は、滅菌プロセスを通して測定され、記憶媒体42に保存され得る。圧力値はまた、少なくとも、システムが真空チャンバ内を減圧しつつある間に測定し、保存してもよい。圧力値はまた、少なくとも、真空チャンバ内の圧力が約4kPa(約30トル)を下回る間、測定し保存してもよい。
【0019】
消毒手順も、真空チャンバを含んでもよい。例えば、真空チャンバ12内に、内視鏡のような内腔を含む器具用の乾燥ラックを配置することもできる。内視鏡を乾燥ラックに掛けて、内視鏡を垂直方向に維持して水分除去を更に促進することができる。消毒プロセスで使用される真空チャンバ12は、タンク28のような滅菌タンクに接続される必要はなく、プラズマ生成に関連する構成要素、例えば電極34を含む必要はない。この構成では、真空チャンバは、器具の乾燥を補助するため、又は乾燥していることを確認するためだけに使用することができる。
【0020】
II.残留水の検出
時間に関する圧力の一階微分値(dP(tn)/dt)、及び時間に関する圧力の二階微分値(d2P(tn)/dt2)は、すべての、又はほとんどすべての圧力値Pi又はP(tn)に対して、マイクロプロセッサにより計算され、記憶媒体42に保存され得る。一階微分及び二階微分は、当該技術分野で既知の方法で、数量的に計算され得る。一階微分及び二階微分は、稼働中に、例えば、減圧されつつある間に計算されたり、又は所定の圧力がチャンバ内で実現された後で計算されたりし得る。一階微分及び二階微分の数量的計算の特質により、圧力、時間に関する圧力の一階微分、及び時間に関する圧力の二階微分との間には、あるタイムラグがあり得る。言い換えると、例えば、時間に対する圧力の二階微分をプロットしたものの中のある極大値は、それが対応する圧力をかけた後、約1/10秒、約1/2秒、約1秒、約2秒、約5秒、又はその他の長さの時間後に、観察され得る。遅延時間の長さは、微分値を計算するのに用いられる技術の関数である。
【0021】
真空チャンバの中に、減圧開始時点で、水もその他の潜在的なガス源もない(ただし空気を除く)、典型的な滅菌プロセスにおいては、減圧中の真空チャンバ内の圧力は、理論的には、式により説明され得るが、
【0022】
【数1】
その対象となる圧力は、おおよその大気圧と約100Pa(約750ミリトル)との間の圧力であり、式中、Pは圧力であり、Sは真空ポンプの速度、tは時間、そしてVは真空チャンバの体積である。
【0023】
図2は、667Pa(5000ミリトル)を下回る圧力に対する、残留水(又はその他のガス源)が、真空チャンバ内に存在しない滅菌プロセスの間、減圧に向かう、30秒~80秒の間の、およその圧力対時間のデータ50がプロットされているグラフを表す。またこのグラフには、圧力対時間のデータ50から計算し得る、圧力の一階微分値52と、圧力対時間のデータ50及び時間に対する一階微分値52から計算され得る、圧力の二階微分値54とが含まれる。圧力データ50は破線で、一階微分値52は点線で、二階微分値54は実線である。圧力データ50は、所望の最低圧力が実現されるまで漸近線の方に低下していく。毎秒Pa(毎秒ミリトル)の単位で表される一階微分値52、及び毎秒毎秒0.01Pa(毎秒毎秒0.1ミリトル)の単位で表される二階微分値54もまた、漸近線の方に低下していく。このグラフでは、圧力データ50中のノイズは明らかではなく、一階微分値52中のノイズは、最小限に明らかと言えるだけであるが、二階微分値54においては、ノイズフロアが明らかになっている。毎秒毎秒約0.8Pa(毎秒毎秒約6ミリトル)のノイズフロアが、二階微分値54に対して存在している。
【0024】
一部の、特に滅菌対象の器具が、保健医療従事者により十分乾燥されていない事例では、残留水分が、真空チャンバの中に導入され得る。これらの事例では、減圧が開始される際に、真空チャンバ内に水分が存在し得る。チャンバ内の圧力が低下するにつれて、残留水分の体積の少なくとも一部が相変化して気相になり得る。約0.611kPa(4.58トル)(水の三重点圧力に相当)以下の圧力では、気相への相変化は、氷への、対応する相変化により更に引き起こされ得る。すなわち、残留水中の氷の結晶が形成されるにつれて、潜熱が放出され、その潜熱が、近隣の部位にある水を加熱する。水の三相(気相、液相、固相)は、三重点においては均衡状態で存在し、圧力と温度とがこの三重点に近いところでは、ほぼ均衡状態で存在するので、一部の残留水分の分子が氷へ相変化することから生じる潜熱は、他の残留水分の分子に、気相への相変化をもたらすエネルギーを供給し得る。液相の水が相変化して気相になる場合には、氷も形成されるか否かに関わらず、真空チャンバ内に、新たな体積のガスが存在することになり、そのことは圧力変化率の増加を引き起こし得るが、またそれにより、圧力の局所的増加を引き起こすにも十分なものでさえあり得る。
【0025】
図3は、667Pa(5000ミリトル)を下回る圧力に対する、減圧に向かう30秒~80秒の間の、おおよその圧力対時間のデータ56がプロットされているグラフを表す。Pa(ミリトル)の単位で表される圧力データ56は、約0.1ミリリットルの残留水が、真空チャンバ内に存在し、プラスチック製の滅菌ラック上に配設された、減圧作業に対応するものである。
図3はまた、圧力対時間のデータ56から計算し得る、圧力の一階微分値58と、圧力対時間のデータ56及び時間に対する一階微分値58から計算され得る、圧力の二階微分値60とをも表している。圧力データ56は破線で、一階微分値58は点線で、二階微分値60は実線である。一階微分値58は、毎秒Pa(毎秒ミリトル)の単位で表され、二階微分値60は、毎秒毎秒0.01Pa(毎秒毎秒0.1ミリトル)の単位で表される。
図3に示されるように、およそt=65秒~およそt=70秒で、約160Pa(約1200ミリトル)及び約133Pa(約1000ミリトル)に等しい圧力で、圧力データ56の曲率が、円62及び円64で示されるように変化しているが、それは、瞬間的には、圧力の低下が、もしあるとしてもほとんどないというような圧力変化率の低下に対応している。データが示唆するのは、水が気相に相変化した場合に、真空チャンバ内の圧力の変化率が低下したということである。これらの変化は、円66及び円68により示されるような、プロットされた一階微分値の極小値として現れている。プロットされた二階微分値の曲率における関連する変化は、極大値70及び極大値72により示されている。極大値70及び極大値72は、円62、円64、円66、及び円68で示される圧力データや一階微分値における曲率変化よりもたやすく目につき、より容易に検出できるものとなっている。したがって、時間に関する圧力の二階微分は、減圧中に、チャンバ内に水分が存在するかどうか判定するのをアシストし得るものである。
【0026】
図4は、4000Pa未満(30000ミリトル未満)の圧力に対する、減圧に向かう30秒~80秒の間の、およその圧力値対時間のデータ74がプロットされているグラフを表す。Pa(ミリトル)の単位で表される圧力データ74は、約1.5ミリリットルの残留水分が、真空チャンバ内に存在し、アルミニウム製の滅菌ラック上に配設された、減圧作業に対応するものである。
図4はまた、圧力対時間のデータ74から計算し得る、圧力の一階微分値76と、圧力対時間のデータ74及び時間に対する一階微分値76から計算され得る、圧力の二階微分値78とをも表している。圧力データ74は破線で、一階微分値76は点線で、二階微分値78は実線である。一階微分値76は、毎秒Pa(ミリトル秒)の単位で表され、二階微分値78は、毎秒毎秒0.01Pa(毎秒毎秒0.1ミリトル)の単位で表される。
図4に示されるように、符号80で示される、およそt=32秒かつ圧力およそ2000Pa(15,000ミリトル)で、圧力データ74の曲率が変化し始めており、圧力変化率が低下しつつあるのを示している。最高の度合いの曲率変化は、符号82で示されるように、およそt=33秒かつ圧力およそ1867Pa(14000ミリトル)で現れている。データが示唆するのは、水が気相に相変化した場合に、真空チャンバ内の圧力の変化率が低下したということである。二階微分値78のプロットの極大値84は、圧力変化率の変化が最大となる時間及び圧力に対応している。更に、極大値84は、圧力データや一階微分値における曲率変化よりもたやすく目につき、より容易に検出できるものとなっている。したがって、時間に関する圧力の二階微分は、減圧中に、チャンバ内に水分が存在するかどうか判定するのをアシストし得るものである。
【0027】
負荷コンディショニング(すなわち、真空チャンバ内の負荷から残留水分を除去するためのプロセス)を含み得る滅菌プロセスをはじめとする滅菌プロセスは、時に、残留水分が真空チャンバ内に存在する場合には、中止される。市販の滅菌器の一部は、保健医療従事者にとって、負荷をシステムから取り出して、再度、それを乾燥させる方が、単純に効率的であるほど、滅菌が有効であるため、かつ/又はシステムの負荷コンディショニングサイクルが有効であるためには多すぎる水蒸気又はその他のガスが、チャンバ内に存在するかどうかを判定するよう試みるように設計されている。例えば、一部のシステムは、圧力が一定であるべき条件下で圧力の上昇をチェックし、他のシステムは、単に、減圧に、本来そうであるべき時間よりもより多くの時間を要している場合に滅菌サイクルを中止するようになっている。しかしながら、これらのチェックは、本明細書に記載されている技術が対処し得るような、より少量の水に対しては不十分なものであり得る。更に、発明者らは、滅菌及び/又は負荷コンディショニングの成功の可能性は、水が、金属表面上又は非金属表面上のいずれに存在しているかに依存すると判断したが、それは、金属表面は水に熱を伝え得る一方、非金属表面は伝えず、氷が形成される可能性を上昇させるからである。したがって、滅菌及び/又は負荷コンディショニングの失敗を回避できる可能性は、残留水分が金属表面に配設されているか又は非金属表面上に存在しているかを判定すること、及びそれに対応して、減圧中に氷が形成され得るか否かを判定することによって高まり得る。氷がいったん形成されてしまうと、その氷を効率的に除去するには負荷コンディショニングは適していない場合があり、一部の滅菌プロセスでは、減圧される前に負荷コンディショニング作業を実行するのが望ましい場合があり得る。これは、チャンバ内に存在し得る水の少なくとも一部を気化させることを狙って、真空チャンバを加熱することにより実行され得る。一部の実施形態においては、チャンバは、大気圧よりも低い圧力下で加熱され得る。
【0028】
本明細書において説明されている技術を用いると、チャンバ内の残留水分が金属表面上に存在している場合には、減圧中の、液相の水から水蒸気への検出可能な相変化は、真空チャンバ温度が約60℃未満で、水の三重点圧力よりも高い圧力、例えば、約0.7kPa~約4kPa(約5トル~約30トル)の圧力で、起こり得る。金属製の物体は、通常、特に、非金属性の物体と比較した場合、高い熱伝導性を有しているため、金属製の物体はエネルギーを、その表面上に存在している水に移転することが可能であり、それにより水の温度が上昇し、水が液相から気相へと相変化するのを可能にする。この温度と圧力との状態では、減圧中の液体水から水蒸気への相変化は、液体水が、非金属製の表面上に存在しされている場合には、それが生じる可能性がより低くなる。非金属製の物体は、一般に、液体水に、それが気相に相変化するのを可能にするのに十分なエネルギーを伝えない。
【0029】
チャンバ内の残留水分が非金属製の表面上に存在している場合には、減圧中の、液体水から水蒸気への、検出可能な相変化はまた、真空チャンバ温度が約60℃未満で、圧力が概ね水の三重点圧力(0.61kPa(4.58トル))未満である際にも起こり得る。三重点圧力に向かい、更にそれを過ぎて圧力が低下するにつれて、水は相変化して水蒸気になり、残留水分の温度がそれに対応して低下し得るが、その結果、氷の結晶が残留水分中に形成されることになり得る。氷が形成されると、潜熱が放出される。水は三重点付近にあるので、この潜熱は、圧力が低下し続けるにつれて、近隣の水分子が相変化して気相になるのを可能にするのに十分なものであり得る。
【0030】
上述のことに基づくと、水の三重点圧力よりも高い圧力で生じる相変化は、少なくとも一部の残留水分が金属製の表面上に存在していたことを意味し、蒸気への相変化が、氷への対応する相変化を含まない可能性もあるということをも意味するものである。しかしながら、水の三重点圧力付近又は未満の圧力で生じる相変化は、少なくとも一部の残留水分が非金属性の表面上に存在していたことを意味し、蒸気への相変化が、氷への対応する相変化を含む可能性があるということをも意味する。したがって、時間に関する圧力の二階微分の曲線の極大値が、三重点圧力よりも高い圧力で起こっているという場合には、水が金属製の表面上に存在している可能性が高く、そのことは、氷形成が、気化に伴って起こらなかったことを示すものである。しかしながら、時間に関する圧力の二階微分の曲線の極大値が、三重点圧力以下の圧力で起こっているという場合には、水が非金属製の表面上に存在している可能性が高く、そのことは、氷形成が、気化に伴って起こったことを示すものである。
【0031】
発明者らは、自分たちが、この前の段落に説明されていることを最初に発見し開示したと考えている。発明者らは、以下に説明する、その新たな、有益な、そして発明的な応用方法を決定し、そのことは、当該技術分野で既知の滅菌プロセス及び負荷コンディショニング技術を向上させるものである。これは、負荷コンディショニングプロセスを実行するのが望ましいか否か、負荷を手で再乾燥させるべきか否か、及び負荷は、滅菌剤導入のために十分に乾燥しているか否かを評価するのを伴う。この評価は、時間に関する圧力の二階微分の極大値が生じる圧力を判定することにより、実現され得る。少なくとも1つの極大値が、水の三重点圧力より低い圧力で生じる場合には、氷の結晶が水の中及び負荷上に形成された可能性があるため、負荷コンディショニングを試みる替わりに滅菌プロセスを中止することが好ましい場合があり得る。しかしながら、極大値が水の三重点圧力より高い圧力で検出され、水の三重点圧力よりも低い圧力では極大値が1つも検出されない場合には、負荷上に残る水が、氷の結晶を負荷上に形成せずに、容易に気化させられ真空チャンバから排出され得るため、負荷コンディショニングを試みるとよい。
【0032】
例えば圧力トランスデューサの解像度及びアナログからデジタルへの変換により引き起こされる誤差のような、圧力値に関わる測定誤差のため、データ、計算値、並びに時間に対する圧力の曲線、時間に対する圧力の一階微分の曲線、及び時間に対する圧力の二階微分の曲線、にはノイズが存在し得る。圧力の上昇に対応していないが、測定誤差により引き起こされたものである極大値が、二階微分の曲線に存在すると誤って判定されるのを避けるためには、極大値の値が、ノイズフロアよりも十分に大きくなっているべきである。
【0033】
負荷コンディショニングを実施するか、サイクルを中止するかの判定を、例えば変曲点、極小値、又はノイズフロアと比較した、極大値の相対的な大きさに基づいて行うことが好ましい場合があり得る。あるいは、この判定を、連続する二階微分値同士の間の正の差分の累積に基づいて行うことが好ましい場合もあり得るが、この累積は、δ+と呼ばれるものであり、δ+は、以下のステップにしたがって計算され得るものである。減圧後又はその最中に、時間に関する圧力の二階微分が、それぞれの時間の増加量に対して計算され、保存され得る。隣接する、すなわち連続する二階微分値同士の間の差分は、ある1つの時間増加分に対して計算された二階微分値を、それに続く時間の増加量に対して計算された二階微分値から減算することにより、計算され得る。この差分の値が正である場合(すなわち、二階微分の値が増加している場合)には、差分の値を加算する。この差分の値が負である場合(すなわち、二階微分の値が減少している場合)には、差分の値を無視する。δ+に対するこの累積手順は、以下の式で表し得る:
【0034】
【0035】
上の式において、mは、δ+がその期間にわたり計算される所与の又は選択された時間における、時間の増加量の数に対応する。また、上の式においては、tn=tn-1+Δtである。既に述べたように、Δtは、時間増加量同士の間の時間の長さであり、約0.1秒、約1秒、約2秒、約5秒、又は約10秒であり得る。δ+がこのようにして計算される場合には、1つのδ+が、ある所望の範囲の圧力に対して計算され得る。例えば、水のおおよその三重点圧力(即ち、約0.61kPa(約4.6トル))と、滅菌プロセスにおいて真空チャンバ内で実現可能な最低圧(例えば、約0.04kPa(約0.3トル))の間の圧力範囲に対して、1つのδ+を計算してもよい。δ+は保健医療施設又は滅菌システム製造業者の好みに合わせて、任意の圧力範囲に対して計算されてもよい。例えば、より広い圧力範囲内の複数の圧力サブ範囲に対して複数のδ+を計算することが望ましい場合があり得る。
【0036】
あるいは、δ+を上に記載の累積式にしたがって計算することを、時間に関する圧力の二階微分同士の間の差分値における、これらの差分のいかなる減少によっても分離されていない、連続する増加に限定してもよい。例えば、d2P(tn)/dt2の、5つの連続する値を計算し、それぞれ10、9、11、12、及び9という大きさの値(それぞれの単位はPa/秒2(ミリトル/秒2))を得たと仮定する。10から9への変化と12から9への変化とは、隣接する値同士の差分が負になるので、無視するものとする。9から11への変化と、11から12への変化とは、隣接する値同士の差分が正になるので、合計するものとする。したがって、δ+=(11-9)+(12-11)=0.4Pa/秒2(3ミリトル/秒2)である。δ+がこのようにして計算される場合には、減圧の間に複数のδ+を計算し、それぞれを個別に、閾値と比較し得る。例えば、d2P(tn)/dt2の、10個の連続する値を計算し、それぞれ10、9、11、12、9、13、14、9、12、及び9という大きさの値を得たと仮定すると、3、5、及び3という3つの異なるδ+が算出され得る。
【0037】
δ+は、δ+の計算を開始した時点で真空チャンバ内に存在し得た水の量に対応させる実験により決定されてもよい。したがって、δ+は、負荷コンディショニングのルーチンを実施し得るか、滅菌サイクルを中止するべきか、かつ/又は滅菌のために負荷が十分な乾燥状態であるかを判断する根拠となる閾値条件として用いられ得る。既に述べたように、液体水から蒸気への相変化が起こり、その相変化が真空チャンバ内での、水の三重点圧力(0.611kPa(4.58トル))未満の圧力で検出された場合には、負荷コンディショニング技術では、例えば約5mLよりも多くの水がチャンバ内に存在すると、その水をチャンバから除去することができないことがあり得る。しかしながら、より水の量が少ない場合、例えば、約1mL~5mLの水が存在する場合には、負荷のコンディショニングを試みるのが望ましい場合があり得る。また、滅菌システムが負荷の滅菌を開始し得るように、例えば真空チャンバ内に約1mL未満の水しか含まれていない場合のような、真空チャンバが乾燥状態であるかどうかを知ることは有用である。
【0038】
水分が負荷内に存在するかどうかを判定するために、δ+をそれに対して比較し得る閾値を設定するために、実験が行われた。これらの実験では、δ+が上で説明した例にしたがって計算されたが、その計算は、時間に関する圧力の二階微分の値が連続して増加するものに限定された。これらの実験から得られたデータは、約0.61kPa未満(約4.6トル未満)の圧力の場合、約1.3Pa/秒2未満(約10ミリトル/秒2未満)のδ+は、液体水から水蒸気への相変化が、δ+が計算された期間にわたり起こらなかったということを示すが、他方で、15Pa/秒2(110ミリトル/秒2)以上のδ+は、コンディショニングを効率的に、かつ/又は十分迅速に行うには多すぎる水分を含む負荷に対応するものであるということを示唆している。したがって、約1.3Pa/秒2~15Pa/秒2(約10ミリトル/秒2~110ミリトル/秒2)のδ+の場合、製造業者、保健医療施設、及び/又は保健医療従事者の好み及び/又は要求事項に応じて負荷コンディショニングを試みるか、又は滅菌サイクルを中止することが望ましい場合がある。しかしながら、当業者は、これらのδ+の値はまた、使用される滅菌システム、同システムに含まれる負荷、及び環境要因の関数であるということを認識すべきである。したがって、δ+に対する上述の結果を生み出した実験の概要は、純粋に情報を提供するという目的で、本明細書に記載されているものである。
【0039】
この実験用の負荷の構成は、封止されていないTyvek(登録商標)パウチ内の小さな医療用バイアルを保持するためのラックを含む器具トレーを含んでいた。負荷は、STERRAD(登録商標)100NX(登録商標)滅菌システム内に配置された。18℃の温度及び85%の相対湿度(「RH」)、25℃の温度及び50%のRH、並びに35℃の温度及び50%のRHの間で環境条件を変化させた、さまざまな実験の試行が実施された。更に、これらの試行は、負荷に水を加えずに、1mLの水を負荷に加えて、又は5mLの水を負荷に加えて実施された。圧力が約0.61kPaから107Paに(約4.6トルから約800ミリトルに)低下する間、圧力を毎秒測定した。これらの測定された圧力から、δ+が計算された。それぞれの水の量に対して、それぞれの環境条件で、複数の試行が実施された。計算されたδ+の値が、Pa/秒2(ミリトル/秒2)単位で、表1に提供されている。水が試験サンプル上に液滴として付着していたが、δ+に基づく閾値は、例えば水たまり、管づまり、又はシート(例えば、凝結により形成されるもの)のような液滴以外の形状で負荷の上又は内部に存在する水分の総量を説明するためにも、更に用いられ得る。
【0040】
【0041】
δ+はまた、圧力が約4kPaから0.61kPaに(約30トルから約4.6トルに)低下しつつある間に真空チャンバ内で測定された圧力から計算された場合、負荷コンディショニングを実行すべきか、又は滅菌サイクルを中止すべきかを判定するための閾値としても用いられ得る。この圧力範囲では、圧力の上昇は水が存在することを示し、その水が金属製の表面上に存在していたことを示すものであるということを想起されたい。δ+の値は、約0.61kPa~107kPa(約4.6トル~約800ミリトル)の間の圧力に対して、上に説明したものと類似の技法を用いて実験により決定された。5Pa/秒2よりも大きい(40ミリトル/秒2よりも大きい)δ+の場合、少なくとも1.5mLの水が、真空チャンバ内の金属製の表面上に存在していた可能性があり得る。したがって、5Pa/秒2よりも大きい(40ミリトル/秒2よりも大きい)δ+の場合、保健医療従事者が、手動で負荷を乾燥し得るように、滅菌サイクルを中止することが望ましい場合があり得る。あるいは、水が金属製の表面上に存在しているので、負荷コンディショニングを試みてもよい。しかしながら、5Pa/秒2未満の(40ミリトル/秒2未満の)δ+の場合、水が、非金属製の表面上に存在している可能性があるので、そのため容易には気化しない場合があり得るため、δ+は、水が真空チャンバ内に存在したか否か、又はどのくらい存在したかの、信頼できるインディケータではないという恐れもある。したがって、約4kPa~約0.61kPa(約30トル~約4.6トル)の間の圧力に対して、δ+が5Pa/秒2未満の(40ミリトル/秒2未満の)場合、滅菌システムに約0.61kPa未満の(約4.6トル未満の)圧力に対するδ+の値を判定させて、滅菌をするかどうか、負荷コンディショニングをするかどうか、又はサイクルを中止するかどうかの判定を、そのδ+の値に基づいて行うことが望ましい場合があり得る。
【0042】
IV.例示的方法
例えば滅菌システム10のような低温の化学的滅菌システムは、何らかの水が真空チャンバ12内にあるかどうか、及び滅菌システムが真空チャンバからその水を除去する能力があるかどうかを判定することに関するさまざまなルーチンを実行するよう設計されている場合がある。例えば負荷コンディショニングを実行すべきかどうかを判定するためのルーチン、負荷コンディショニングのルーチン、及び滅菌のルーチンのような、滅菌システムが実行し得るステップ、及び保健医療従事者が実行し得るその他のステップを含む滅菌プロセスの例が、
図5及び
図6に記載されている。これらのプロセスは、開示される主題を更に例示し、その有用性を説明するために、単に例としてのみ記載されている。これらのプロセスに含まれるステップの多くは、その他のステップに替えて、又はその他のステップの前後に追加的に実行され得る。これらの例に記載されるステップは、開示される主題の範囲から逸脱することなく、さまざまな組み合わせ及び順番で実行され得る。例えば、何らかの滅菌剤が真空チャンバ内に導入される前に、負荷コンディショニングルーティーンは実行され得るかつ/又は空気プラズマが真空チャンバ内に導入され得る。滅菌の保証が必ずしも必要ではない用途では、器具を滅菌パックに入れることや、真空チャンバに滅菌剤を導入/除去することに関連するステップは不要である。このような場合、滅菌に関連するステップを実行せずに、器具の乾燥及び/又は乾燥の確認に関連するステップの一部又はすべてを実行してもよい。
【0043】
図5に詳しく説明されているように、滅菌プロセスの一例は、保健医療従事者が、先に使用されたことにより汚れた器具を、水、洗浄液、又は器具用の水溶性潤滑剤を用いて洗浄することで開始される。次にその器具を、例えば器具を加熱したり、又は、圧縮空気を器具の中、特に器具の内腔に吹き付けたりすることのような、当該技術分野で既知のさまざまな技術のうちの任意のもの又はそれらを組み合わせたものを用いて乾燥させる。乾燥された器具は、例えばアルミニウムのような金属製の、又は例えばポリカーボネートのようなプラスチック製の、滅菌ボックス又はラック内に配置され得る。器具及び/又はラックは、滅菌ラップ内に包まれて、滅菌パック又は負荷14を形成する。ラップは、微生物に対してバリアとして機能するが、滅菌剤がそれを透過するのを可能とする。パックが包まれると、パックは、滅菌システム10の真空チャンバ12に導入される用意ができた状態になる。
【0044】
チャンバ12の、開放可能かつ封止可能なバリア16を開放し、負荷14をチャンバ12内に配置する。生物学的インディケータも、チャンバ12内に配置してよい。次にバリア16を閉鎖して封止する。チャンバをバリア16を介して閉鎖して封止することは、同時に実現されても、短時間のうちに続けて実行される2つの別々のステップとして実現されてもよい。保健医療従事者又は滅菌システムの製造業者によって滅菌システムに設定された時間間隔で、空気をチャンバ12内から抜き取る(ポンプで吸い出す)ことにより、滅菌システムはチャンバ12内から、空気を排気し始める。例えば、時間間隔Δtは、約0.1秒、約1秒、約2秒、約5秒、又は約10秒であり得る。その間隔の最後に、圧力モニタ24が、チャンバ12内の圧力を判定する。制御システム38は、この圧力の値P(tn)を、記憶媒体42に保存する。次に、制御システム38は、時間に関する圧力の一階微分及び二階微分を計算し、保存する。しかしながら、微分値が数量的に計算される方法によっては、少なくとも2つの間隔、すなわちP(tn)={P(t0)、P(t1)}、3つの間隔、すなわちP(tn)={P(t0)、P(t1)、P(t2)}、又はより多くの間隔、すなわちP(tn)={P(t1)、P(t2)、P(t3)...P(tm)}に対する圧力が判定されるまで、一階微分及び二階微分を計算するステップを飛ばすことが望ましい場合があり得る。
【0045】
次に、制御システム38は、チャンバ内の圧力が、所望の終点又は最終圧力Pfまで低下したかどうかチェックする。すなわち、同システム38は、P(tn)がPf以下であるかどうかをチェックする。滅菌剤ガスの適切な適用範囲を確保するためには、約0.4kPa以下、約0.1kPa以下、約0.09kPa以下、約0.07kPa以下、又は約0.04kPa以下(約3トル、約1トル、約0.7トル、約0.5トル、又は約0.3トル)のPfを達成することが、一般的に望ましい。制御システム38が、P(tn)がPfより大きいと判定する場合、制御システム38は、真空チャンバ12から空気を抜き取るステップと、P(tn)を判定するステップと、P(tn)を保存するステップと、時間に関する圧力の一階微分及び二階微分を計算して保存するステップと、及びP(tn)がPf以下であるかどうか判定するステップとを繰り返すようにシステムに対して指示する。
【0046】
ひとたび制御システム38が、P(tn)がPf以下であると判定する場合、制御システム38は、何らかの閾値圧力P0以下である任意のP(tn)に対して、P0以下である他のP(tn)に対応する他の二階微分値中の極大値である対応する二階微分値があるかどうか判定する。制御システム38が、この状態で、極大値が存在すると判定する場合には、制御システム38はプロセスを中止し得る。すなわち、真空チャンバ12が雰囲気圧に戻されて開放される。次に、保健医療従事者は、負荷をチャンバ12から取り出して、器具を乾燥させることから始まる滅菌プロセスを、本質的に再始動させ得る。制御システム38が、この状態では極大値が存在しないと判定する場合には、制御システム38は、P0より大きく、P0より大きい他のP(tn)に対応するその他の二階微分値の中の極大値である、対応する二階微分値を有するP(tn)が存在するかどうか判定する。
【0047】
制御システム38が、P(tn)がP0より大きい極大値が存在すると判定する場合、滅菌システムは、負荷コンディショニングを実行し得る。さまざまな負荷コンディショニングの方法が実行され得る。その方法がどのようなものであれ、エネルギーが水の温度を上昇させて、後続の排気工程に向けて、水が気化されるのを助けるため、エネルギーが残留水分に移転される。一部の負荷コンディショニング作業は、何らかの滅菌剤ガス、例えば過酸化水素が、チャンバから排気されるより前に開始される。これらの作業では、滅菌剤ガスがプラズマに変換され得る。チャンバ12の排気に続いて、チャンバ12が、加熱素子26により加熱され得る。あるいは、チャンバ12は、低い相対湿度を有し、加熱された又は熱い空気を用いて加圧されてもよい。また、別の減圧をチャンバ12内で実行し、例えば空気プラズマのような別のガス由来のプラズマを、チャンバ12内に導入してもよい。負荷内に存在し得る何らかの水を気化させるのを更に試みるために、何らかの滅菌剤が導入される前に負荷のコンディショニングをするために、空気プラズマを用いてもよい。同様に、何らかの滅菌剤が真空チャンバ12内に導入される前に、例えば、真空チャンバ12内の圧力をPfまで低下させ、周囲空気でチャンバ12を加圧して、再び圧力をPfまで下げることによって負荷コンディショニングサイクルを実行してもよい。
【0048】
図5は、以下のステップを含む負荷コンディショニング作業を含む。チャンバ12は、何らかのより高い圧力まで加圧されるが、その圧力は、大気圧より低くても、大気圧と等しくても、大気圧より高くてもよい。この加圧は、周囲空気、加熱した空気、又は例えば相対湿度の低い空気のような水分含有量が小さいガスで実行され得る。チャンバ12はまた、加熱素子26によって加熱されてもよい。周囲空気、加熱した空気、及び/又は加熱素子26からのエネルギーが、残っている残留水がある場合にそれを温め得る。次に、制御システム38は、真空チャンバ12から空気を抜き取るステップと、P(t
n)を判定するステップと、P(t
n)を保存するステップと、時間に関する圧力の一階微分及び二階微分を計算して保存するステップと、及びP(t
n)がP
f以下であるかどうか判定するステップとを繰り返すようにシステムに対して指示する。エネルギーを残留水分に提供することと、チャンバ12内の空気及び/又はその他のガスを除去することによりチャンバ12内の圧力を低下させることとを組み合わせると、負荷上に残っていた残留水分を完全に又は部分的に除去し得る。再び、P
0よりも大きい及び小さい圧力に対する二階微分をチェックして極大値を求め、滅菌剤をチャンバ内に導入するのに負荷が十分に乾燥した状態であるか、又は負荷コンディショニングを更に1回実行するのが望ましいかを判定する。極大値が計算されなくなるか又は制御システム38が時間切れになるかのいずれかまで、負荷コンディショニングを繰り返してよい。
【0049】
負荷のコンディショニングを試みる前に、氷の結晶が形成された可能性があるかどうかを判定するのが望ましいので、P0の値の一例として、水の三重点圧力、すなわち0.611kPa(4.58トル)を挙げることができる。しかしながら、約0.5kPa~約0.7kPaの間(約4トル~約5トルの間)のP0を用いるのが望ましい場合があり得る。例えば、三重点圧力よりも高い圧力は、負荷のコンディショニングの試みが成功裏に終わるという、より大きな確信を提供し得るものである。
【0050】
P(tn)がP0より大きい時に、極大値が存在しないと制御システム38が判定する場合には、滅菌システムは例えば過酸化水素のような滅菌剤ガス又は液をチャンバ12内に導入することにより、装置を滅菌するよう試みる。過酸化水素液が用いられる場合には、過酸化水素液はチャンバ12内に、蒸気として、又は例えば液滴のような容易に気化させられる形態で、導入されるべきである。過酸化水素は、プラズマに変換されてもよく、そうすることにより、滅菌プロセスを更に改善し得る。フローチャートには示されていないが、過酸化水素ガスをチャンバから排出し、例えば空気プラズマのような別の形のプラズマを、チャンバ内に導入してもよい。空気プラズマの導入には、まず真空チャンバを雰囲気圧に又はそれ付近に戻すことと、引き続いて、空気プラズマを導入するのに適した新たな減圧を実行することとを必要とし得る。負荷内に存在した可能性のある微生物を殺すのに十分な時間にわたって負荷を、過酸化水素ガス及び恐らくはプラズマにさらした後で、チャンバ12を再び排気させて、チャンバ12内の圧力を雰囲気圧と等しくする。滅菌システム10を開放して、その時点で滅菌済みとなったはずの器具を同システム10から取り出し得る。
【0051】
滅菌プロセスの別の例が、
図6に記載されている。
図5と関連させて説明したプロセスと同様に、本プロセスは、保健医療従事者が、先の使用で汚れた器具を洗浄し、乾燥させることで開始され、その器具を滅菌ボックス又はラックに配置し、ボックス又はラックを包んで滅菌パック又は負荷14を作製し、滅菌システム10の真空チャンバ12の封止可能なバリア16を開放し、負荷及び任意追加的に生物学的インディケータを真空チャンバ12内に配置し、チャンバを閉鎖するようになっている。保健医療従事者又は滅菌システムの製造業者によって滅菌システムに設定された時間間隔で、空気をチャンバ12内から抜き取る(ポンプで吸い出す)ことにより、再び滅菌システムはチャンバ12内から、空気を排気し始める。例えば、時間間隔Δtは、約0.1秒、約1秒、約2秒、約5秒、又は約10秒であり得る。その間隔の最後に、圧力モニタ18が、チャンバ12内の圧力を判定する。制御システム38は、この圧力の値を記憶媒体42に保存する。次に、制御システム38は、時間に関する圧力の一階微分及び二階微分を計算し、保存する。しかしながら、微分値が数量的に計算される方法によっては、少なくとも最初の2つの間隔、すなわちP(t
n)={P(t
0)、P(t
1)}、最初の3つの間隔、すなわちP(t
n)={P(t
0)、P(t
1)、P(t
2)}、又は最初の他の数の間隔、すなわちP(t
n)={P(t
1)、P(t
2)、P(t
3)、...、P(t
m)}に対する圧力が判定されるまで、一階微分及び二階微分を計算するステップを飛ばすことが望ましい場合があり得る。
【0052】
次に、水の三重点圧力に略等しい場合があり得る閾値圧力P
0よりも、チャンバ12内の圧力P(t
n)が高いか又は低いかを、制御システム38は判定する。P(t
n)がP
0より大きい場合には、制御システム38は、t
nに等しい期間にわたる、時間に関する圧力の二階微分の、正の変化の純量であるδ
+を計算する。
図6では、P(t
n)>P
0の場合のδ
+を、δ
1+と呼ぶものとする。δ
1+が、滅菌をするには過度に濡れている負荷に対応するように決定された所定の閾値δ
wet1より大きい場合、滅菌プロセスが中止される。その場合には、保健医療従事者が負荷を取り出して、プロセスを再度開始する前に器具を乾燥させるようにチャンバ12を加圧して開放する。δ
1+が、δ
wet1未満である場合には、後続の時間間隔の間、空気をチャンバから抜き取る。δ
1+がδ
wet1より大きくなるまで(ただしこの場合には、プロセスが中止される)、又はP(t
n)が、P
0未満になるまで、空気を抜き取る上述のステップと、圧力を判定して保存するステップと、一階微分及び二階微分を計算するステップと、δ
1+を計算するステップとが繰り返される。
【0053】
P(t
n)がP
0未満になる時点は、t
P0と呼ばれ得るものである。この時点で、制御システム38は、P
0未満の圧力に対するδ
+、
図6ではδ
2+と呼ばれているものを計算し始める。すなわち、δ
2+は、t
P0からt
nまでの時間に関する圧力の二階微分の正の変化である。δ
2+が、滅菌をするには過度に濡れている負荷に対応するように決定された所定の閾値δ
wet2より大きい場合、滅菌プロセスが中止される。その場合には、保健医療従事者が負荷を取り出して、プロセスを再度開始する前に器具を乾燥させるようにチャンバ12を加圧して開放する。δ
2+が、δ
wet2未満である場合には、後続の時間間隔の間、空気をチャンバから抜き取り、δ
2+が再計算されて、δ
wet2と再び比較される。これらのステップは、チャンバ12内の圧力P(t
n)が、所望の終点又は最終圧力P
fに低下するまで繰り返される。すなわち、制御システム38は、P(t
n)がP
f以下であるかどうかをチェックする。滅菌剤ガスの適切な適用範囲を確保するためには、約0.4kPa以下、約0.1kPa以下、約0.09kPa以下、約0.07kPa以下、又は約0.04kPa以下(約3トル、約1トル、約0.7トル、約0.5トル、又は約0.3トル)のP
fを達成することが、一般的に望ましい。
【0054】
ひとたびP(tn)がPf以下になると、制御システム38は、乾燥状態の、それゆえに滅菌準備のできた負荷に対応するよう決定された所定の閾値δdryよりも、δ2+は大きいか小さいかを任意追加的に、チェックする。あるいは、このステップは飛ばしてもよい。δ2+が、δdry未満である場合、又は上のステップが飛ばされる場合には、滅菌システムは、例えば過酸化水素のような滅菌剤ガス又は液をチャンバ12内に導入することにより、装置を滅菌するよう試みる。過酸化水素液が用いられる場合には、過酸化水素液はチャンバ12内に、蒸気として、又は例えば液滴のような容易に気化させられる形態で、導入されるべきである。過酸化水素は、プラズマに変換されてもよく、そうすることにより、滅菌プロセスを更に改善し得る。フローチャートには示されていないが、過酸化水素ガスをチャンバから排出し、例えば空気プラズマのような別の形のプラズマを、チャンバ内に導入してもよい。空気プラズマの導入には、まず真空チャンバを雰囲気圧に又はそれ付近に戻すことと、引き続いて、空気プラズマを導入するのに適した新たな減圧を実行することとを必要とし得る。負荷内に存在した可能性のある微生物を殺すのに十分な時間にわたって負荷を、過酸化水素ガス及び恐らくはプラズマにさらした後で、チャンバ12を再び排気(例えば、大気に対してベント)させて、チャンバ12内の圧力を雰囲気圧と等しくする。滅菌システム10を開放して、その時点で滅菌済みとなったはずの器具を同システム10から取り出し得る。
【0055】
しかしながら、システムがδ2+をδdryに対してチェックして、δ2+はδdryより大きいと判定する場合、負荷コンディショニングルーティーンが実行され得る。まず、チャンバ12を加圧する。この加圧は、周囲空気、加熱した空気、又は例えば相対湿度の低い空気のような水分含有量が小さいガスで実行され得る。チャンバ12はまた、加熱素子60によって加熱されてもよい。周囲空気、加熱した空気、及び/又は加熱素子26からのエネルギーが、残っている残留水分がある場合にそれを温め得る。次に、真空チャンバ12から空気を抜き取るステップと、P(tn)を判定するステップと、P(tn)を保存するステップと、時間に関する圧力の一階微分及び二階微分を計算して保存するステップと、P(tn)がP0以下、最終的にはPf以下であるかどうか判定するステップとを、システムは繰り返す。エネルギーを残留水分に提供することと、チャンバ12内の空気及び/又はその他のガスを除去することによりチャンバ12内の圧力を低下させることとを組み合わせると、負荷上に残っていた残留水分を完全に又は部分的に除去し得る。負荷コンディショニングを実施中、δ1+とδ2+とは、それぞれの湿り度閾値δwet1とδwet2と比較されて、滅菌プロセスが中止されるべきであることを確認する。ひとたびP(tn)がPf以下になると、δ2+がδdryと比較され、負荷が滅菌するのに十分な程度に乾燥しているかどうかを判定する。δ2+が、δdry未満になるか制御システム38が時間切れになるかのいずれかまで、負荷コンディショニングを繰り返してよい。
【0056】
真空チャンバを利用して、水分を検出、水分を除去、乾燥を確認する上述の技術は、汚染除去において、滅菌が好ましからざる状況でも利用可能である。例えば真空チャンバを利用して、内視鏡のような内腔のある器具に対して水分を検出、水分を除去、乾燥を確認し、その後消毒プロセスに関連する浸し及びすすぎステップを実行してもよい。システム10の真空チャンバ12は、内視鏡を保持するラックを備えてもよい。この構成では、真空チャンバ12は、水分を検出し、水分を除去し、内視鏡の乾燥を確認する目的にのみ使用することができる。あるいは、真空キャビネットを内視鏡乾燥キャビネットに組み込んで、乾燥キャビネットが、水分を検出し、水分を除去し、乾燥を確認する改善された機能を有するようにすることができる。
【0057】
図7及び
図8は、消毒処置を受けた器械、特に内視鏡のような医療器具上の水分を検出し、水分を除去し、乾燥を確認するためのルーチンを示す。消毒に関する
図7、8のルーチンは、滅菌ルーチンを示す
図5、6とそれぞれ類似している。消毒に関するルーチンと滅菌ルーチンに関するルーチンの違いの1つとして、滅菌剤の導入及びプラズマの生成が挙げられる。すなわち、消毒に関するルーチンでは、滅菌剤を真空チャンバに導入する必要はなく、プラズマを生成する必要はない。しかし、場合によっては、消毒処置後の器具の乾燥を更に補助するために、真空チャンバ内にプラズマを生成することが望ましい場合がある。消毒に関するルーチンと滅菌ルーチンに関するルーチンの更なる違いとしては、水分検出、水分除去、乾燥確認ステップが実行される順序が挙げられる。即ち、これらステップが滅菌プロセスに組み込まれる場合、真空チャンバに滅菌剤が導入される前に実行されるべきである。一方、これらステップが消毒プロセスに加えられる場合、器具が消毒されてから実行されるべきである。消毒に関するルーチンは、ラック、棚、又は器具、特に内視鏡を好ましくは垂直方向に吊り下げることができる任意の他の適切な構造を有する真空チャンバを使用して実施することができ、これにより器具の乾燥が更に促進される。
【0058】
V.ユーザーフィードバック
器具が、例えば過酸化水素のような化学的滅菌剤にさらされる場合には、器具は常に完全に乾燥状態であるべきである。更に、内視鏡のような内腔を有する器具は、微生物による再汚染を避けるために、消毒後に完全に乾燥されるべきである。保健医療従事者は、器具を十分かつ/又は適切に乾燥させられない場合がある。器具内に何らかの残留水分が存在するかどうかを判定するための、これまでに説明してきたステップ及び方法はまた、保健医療施設及び従事者が、器具を乾燥させるのをアシストし得るユーザーフィードバックを生成するためにも用いられ得る。例えば、滅菌システムは、ユーザーフィードバックシステムを含み得るが、そのユーザーフィードバックシステムは、例えば、制御システム38を含み、例えば、十分に大きな体積の残留水分が検出されたので負荷を取り出して手動で乾燥させるよう保健医療従事者に促すことが可能なグラフィカルインターフェイスを含む。そのフィードバックシステムは、検出された水の体積に対応した異なるメッセージを表示し得る。例えば、水が検出されない場合には、グラフィカルインターフェイスは、例えば、「水が検出されませんでした。滅菌可能です。」や「水が検出されませんでした。キャビネットから内視鏡を取り出せます」というメッセージを表示し得る。例えば、約1mLの水が検出される場合には、グラフィカルインターフェイスは、例えば、「いくぶんかの水が検出されました。滅菌は有効でない恐れがあります。」や「いくぶんかの水が検出されました。コンディショニングを実行します。」というメッセージを表示し得る。例えば、1.5mLより多くの水が検出される場合には、グラフィカルインターフェイスは、例えば、「コンディショニング不能です。取り出して乾燥させてください。」というメッセージを表示し得る。
【0059】
システムは、保健医療従事者及び管理者に向けてデータを集め得るが、これは、乾燥させるのが難しいあるタイプの器具を識別する、又は器具を十分に乾燥させるのを常習的に失敗する保健医療従事者を識別するのに役立ち得る。システムは、二階微分及び/又はδ+計算、更にはだれが器具を乾燥させたかに関するユーザー情報を保存し得る。これらの計算は、保健医療従事者に向けた統計を生成するために用いられ得る。例えば、システムは、あるユーザーが完全に乾燥させた負荷のパーセンテージ、ほぼ乾燥させた負荷のパーセンテージ、及び/又は乾燥し損ねた負荷のパーセンテージに関する情報を提供することが可能であり得る。
【0060】
例えば、病院において、滅菌システムの真空チャンバ又は内視鏡乾燥キャビネットの真空チャンバ内に器具を置く前に、機器を洗浄する及び乾燥させるステップを含む、滅菌及び消毒を看護師Aと看護師Bが担当するものとする。所望の時間にわたり、例えば各月にわたり、システムは、その病院の管理用に、看護師A及び看護師Bそれぞれが準備した器具又は負荷のそれぞれの乾燥度に関するレポートを生成し得る。例えば、そのレポートは、看護師Aが準備したもの内の95%が乾燥状態で、他の5%はほぼ乾燥状態であるが、看護師Bが準備したものの内の60%が乾燥状態であり、20%がほぼ乾燥状態であり、更に20%が滅菌するには湿り気が多すぎると示す場合があり得る。この情報によると、看護師Aは看護師Bよりも良好な乾燥を実現していることがわかる。したがって、管理職は、看護師Bに対して、適切な乾燥を行うための訓練を課す等の救済措置を講じることを決定することができる。
【0061】
本明細書に記載の例及び/又は実施形態のいずれも、上述のものに加えて又はそれに代えてさまざまな他の特徴及び/又はステップを有し得ると理解されるべきである。本明細書に記載の教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して独立して考慮されるべきではない。本明細書の教示に照らして、本明細書の教示を組み合わせることができるさまざまな適当な方法が、当業者には明らかとなろう。
【0062】
本発明に含有される主題の例示の実施形態について図示し説明したが、本明細書で記載した方法及びシステムの更なる適用例は、特許請求の範囲を逸脱することなく適切な変更により達成され得る。このようないくつかの変更態様は、当業者には明らかのはずである。例えば上述した例、実施形態、幾何学的なもの、材料、寸法、比率、ステップなどは例示である。更に、主題は、医療器具の消毒、例えば滅菌保証の分野で記載されており、本明細書に記載された真空チャンバは主に滅菌システムの特徴であるが、主題は象物を乾燥させ、及び/又は対象物が乾燥していることを確認することが重要足り得る、非医療分野を含むその他分野に適用可能である。したがって特許請求の範囲は、明細書及び図面に記載される構造及び動作の詳細に限定されるべきではない。
【0063】
〔実施の態様〕
(1) 医療器具の乾燥方法であって、
(a)真空チャンバを開放するステップと、
(b)前記チャンバ内に前記器具を配置するステップと、
(c)前記チャンバを閉鎖するステップと、
(d)前記チャンバから第1の体積の空気を抜き取るステップと、
(e)ある体積の液体水を水蒸気に変えるステップと、
(f)前記チャンバ内に第2の体積の空気を導入するステップと、
(g)前記チャンバから前記第2の体積の空気を抜き取るステップと、
(h)第2の体積の液体水を水蒸気に変えるステップと、
(i)前記チャンバ内に第3の体積の空気を導入するステップと、
(j)前記チャンバを開放するステップと、
(k)前記器具を乾燥状態で前記チャンバから取り出すステップと、を含む、方法。
(2) (l)前記チャンバから前記第2の体積の空気を抜き取りながら、前記チャンバ内の圧力に対応する圧力データを収集するステップと、
(m)前記圧力データから、水のおおよその三重点圧力よりも大きい圧力に対応する時間に関する圧力の第1の二階微分値を計算するステップと、
(n)前記圧力データから、前記水のおおよその三重点圧力よりも大きい圧力及び前記第1の二階微分値に対応する前記時間の後に続く時間に対応する時間に関する圧力の第2の二階微分値を計算するステップと、
(o)前記圧力データから、前記水のおおよその三重点圧力よりも小さい圧力及び前記第2の二階微分値に対応する前記時間の後に続く時間に対応する時間に関する圧力の第3の二階微分値を計算するステップと、
(p)前記圧力データから、前記水のおおよその三重点圧力よりも小さい圧力及び前記第3の二階微分値に対応する前記時間の後に続く時間に対応する時間に関する圧力の第4の二階微分値を計算するステップと、
(q)前記第4の二階微分値が、前記第3の二階微分値以下であることを判定するステップと、
(r)前記第2の二階微分値が、前記第1の二階微分値以下であることを判定するステップと、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記器具は内腔を有する、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記器具が、内視鏡である、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記真空チャンバは内視鏡を吊るすためのラックを有する、実施態様4に記載の方法。
【0064】
(6) 医療器具を真空チャンバ内で乾燥させる方法であって、
(a)デジタル計算機内のタイマーを始動するステップと、
(b)前記チャンバから第1の体積の空気を抜き取るステップと、
(c)前記チャンバから前記第1の体積の空気を抜き取りながら、前記チャンバ内の圧力を繰り返し判定するステップと、
(d)時間に関する圧力の第1の二階微分値を、前記デジタル計算機で計算するステップと、
(e)時間に関する圧力の第2の二階微分値を、前記デジタル計算機で計算するステップであって、前記第2の二階微分値は、前記第1の二階微分値に対応する前記時間の後に続く時間に対応する、ステップと、
(f)前記第2の二階微分値が前記第1の二階微分値より大きいことを、前記デジタル計算機で判定するステップと、
(g)前記チャンバ内に第2の体積の空気を自動的に導入するステップと、を含む、方法。
(7) 前記圧力を繰り返し判定する前記ステップは、圧力測定データを繰り返し取り、前記データを前記デジタル計算機の非一時的記憶媒体に保存することを含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記第2の二階微分値が、前記水のおおよその三重点圧力よりも小さい圧力で生じることを前記デジタル計算機で判定するステップを更に含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記チャンバ内に空気を自動的に導入する前記ステップは、弁を自動的に開放することを含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記チャンバを自動的に開放するステップを更に含む、実施態様9に記載の方法。
【0065】
(11) 前記器具を前記チャンバから取り出し、前記器具上に空気を吹き付けるか、又は前記器具に熱を加えることによって前記器具を乾燥させるステップを更に含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記チャンバから第1の体積の空気を抜き取る前記ステップが、前記タイマーを始動する前記ステップの後に始まる、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記第2の二階微分値と前記第1の二階微分値との間の差は、ノイズフロアより大きいことを判定するステップを更に含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記器具は、内腔を有する、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記器具は、内視鏡である、実施態様14に記載の方法。
【0066】
(16) 前記真空チャンバは内視鏡を吊るすためのラックを有する、実施態様15に記載の方法。
(17) 医療器具を真空チャンバ内で乾燥させる方法であって、
(a)デジタル計算機内のタイマーを始動するステップと、
(b)前記チャンバから第1の体積の空気を抜き取るステップと、
(c)前記チャンバから前記第1の体積の空気を抜き取りながら、前記チャンバ内の圧力を繰り返し判定するステップと、
(d)時間に関する圧力の二階微分値の第1の群を、前記デジタル計算機で計算するステップと、
(e)二階微分値の前記第1の群からの連続する二階微分値同士の間の正の差の第1の累積を、前記デジタル計算機で計算するステップと、
(f)前記累積を閾値と比較するステップであって、前記累積が前記閾値よりも大きい場合は、残留水分が前記器具上に存在する、又は存在する可能性があることを示し、前記累積が前記閾値よりも小さい場合は、前記器具が乾燥していることを示す、ステップと、
(g)前記第1の累積は前記閾値よりも大きいと判定するステップと、
(h)バルブを開いて前記チャンバ内に第2の体積の空気を導入するステップと、
(i)前記チャンバから前記第2の体積の空気を抜き取るステップと、
(j)前記チャンバから前記第2の体積の空気を抜き取りながら、前記チャンバ内の圧力を繰り返し判定するステップと、
(k)時間に関する圧力の二階微分値の第2の群を、前記デジタル計算機で計算するステップと、
(l)二階微分値の前記第2の群からの連続する二階微分値同士の間の正の差の第2の累積を、前記デジタル計算機で計算するステップと、
(m)前記第2の累積は前記閾値よりも小さいと判定するステップと、
(n)前記バルブを開放して前記チャンバ内に第3の体積の空気を導入するステップと、
(o)前記チャンバを開放するステップと、を含む、方法。
(18) 前記バルブを開放して前記チャンバ内に第3の体積の空気を導入する前記ステップは、前記第2の累積は前記閾値よりも小さいと判定するステップよりも後に実施され、前記チャンバを開放する前記ステップは、前記バルブを開放して前記チャンバ内に第3の体積の空気を導入するステップよりも後に実施され、前記チャンバを開放する前記ステップの後に、前記チャンバから前記器具を乾燥状態で取り除くステップを更に含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記第1の累積は、連続する二階微分値同士の間の第1の差が負である場合に終了される、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記第2の累積は、前記第1の累積が終了された後、連続する二階微分値同士の間の第2の差が正である場合に開始される、実施態様19に記載の方法。
【0067】
(21) 前記器具は、内腔を有する、実施態様20に記載の方法。
(22) 前記器具は、内視鏡である、実施態様21に記載の方法。
(23) 前記真空チャンバは内視鏡を吊るすためのラックを有する、実施態様22に記載の方法。
【外国語明細書】