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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168279
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】電子ペン
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20221027BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
G06F3/03 400
G06F3/046 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146252
(22)【出願日】2022-09-14
(62)【分割の表示】P 2018079075の分割
【原出願日】2018-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】新井 孝幸
(57)【要約】
【課題】電子ペンを噛んだり、咥えたり、舐めたりする癖の動作が繰り返し行われることを防止し、唾液の浸透による電子ペンの誤動作や故障を効果的に防止する。
【解決手段】筒状の筐体と、電子ペン用の棒状の芯3とを備え、芯3は、ペン先部32と軸部31とからなる。筐体内に芯3が装着された場合に、ペン先32の一部が筐体の開口より突出する。ペン先32の端部からから軸心方向に所定の長さ分の気孔Prまたは空隙GPa、GPbが設けられており、ペン先32の側には、苦味物質が毛細管現象により浸み込まされている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の筐体と、
電子ペン用の棒状の芯と、
を備え、
前記芯は、
ペン先部と軸部とからなり、
前記筐体内に装着された場合に、ペン先の一部が前記筐体の開口より突出し、
前記ペン先の端部からから軸心方向に所定の長さ分の気孔または空隙が設けられており、
前記ペン先の側には、苦味物質が毛細管現象により浸み込まされている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
前記芯は、
合成繊維の束として構成され、
複数の前記合成繊維を束ねることで、前記合成繊維間に軸心方向の前記空隙が生じていることを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
前記芯は、
合成樹脂により構成され、
軸心方向に1以上の前記気孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記芯は、
複数の合成繊維を束ねることで、前記合成繊維間に軸心方向の前記空隙を生じさせた中心部を構成し、前記中心部の長手方向の側面を樹脂で包んで構成したことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項5】
前記芯は、
導電性物質が添付されることにより、導電性を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の電子ペン。
【請求項6】
前記芯に浸み込まされている前記苦味物質は、安息香酸デナトニウムであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、タブレットPC(Personal Computer)などの情報処理装置に搭載された位置検出装置に対する位置指示器としての機能を実現する電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ペンの芯には、POM等の硬質樹脂が使われてきた。このように、硬質樹脂の芯が用いられた電子ペンを用いて、位置検出面上に板状の樹脂やガラスが保護材として設けられた位置検出センサ(座標検出センサ)に対して操作入力を行っていた。しかし、硬質樹脂の芯が用いられた電子ペンで板状の樹脂やガラスの保護材上で入力操作を行うと、電子ペンが滑ってしまい、入力がし難い場合がある。
【0003】
このため、電子ペンの芯に対しては、様々な工夫がなされてきた。具体的には、合成繊維を束ねることで形成される芯であって、軸心方向に合成繊維間の空隙が設けられることにより、弾力性を持たせたせるようにしたものがある。この合成繊維を束ねた芯を用いた電子ペンの場合、当該電子ペンの芯が位置検出センサの位置検出面上の保護材に接触すると、柔らかい感触が得ることができると共に、保護材上で電子ペンが滑ってしまうことも防止できる。
【0004】
また、プラスチックなどの合成樹脂により形成される芯であって、軸心方向に種々の形状の気孔を設けることで、弾力性を備えるようにしたものもある。合成繊維を束ねて構成する芯の軸心方向に形成される空隙や、合成樹脂により形成される芯の軸心方向に形成される種々の形状の気孔は、元々はいわゆるインキングペンのインクをペン先に導出するためのものであった。これらの空隙や気孔にインクを入れずに、電子ペンの芯として用いることで、電子ペンの書き味を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-6196号公報
【特許文献1】特開2003-25783号公報
【特許文献2】特開2011-20443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、児童、生徒向けの学習システムにおいて、電子ペンを用いたタブレットPCが用いられるようになってきている。従来から小学校低学年の児童は、“ペンを噛む”、“ペンを咥える”、”ペンを舐める“という“癖”の動作をする場合がある。この“癖”の動作は、電子ペンの使用時においても同様であり、電子ペンを噛んだり、咥えたり、舐めたりする場合がある。電子ペンの芯が突出している側を噛んだり、咥えたり、舐めたりすると、芯が突出している電子ペンの開口部分から唾液がペン内部に浸み込んでしまう場合があると考えられる。
【0007】
電子ペンの内部には、電子回路等が配置されているため、水分の浸入により正常に動作しなくなったり、故障の原因になったりすることが考えられる。特に、上述したように、合成繊維が束ねられて形成さ軸心方向に空隙が設けられた芯や合成樹脂で形成され軸心方向に気孔が設けられている芯の場合には、毛細管現象によりその空隙、気孔を通して唾液が電子ペン本体に進入しやすくなっている。
【0008】
以上のことに鑑み、この発明は、電子ペンを噛んだり、咥えたり、舐めたりする癖の動作が繰り返し行われることを防止し、唾液の浸透による電子ペンの誤動作や故障を効果的に防止できる電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、
筒状の筐体と、
電子ペン用の棒状の芯と、
を備え、
前記芯は、
ペン先部と軸部とからなり、
前記筐体内に装着された場合に、ペン先の一部が前記筐体の開口より突出し、
前記ペン先の端部からから軸心方向に所定の長さ分の気孔または空隙が設けられており、
前記ペン先の側には、苦味物質が毛細管現象により浸み込まされている
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【0010】
この電子ペンによれば、筒状の筐体と棒状の芯とを備え、当該芯は、ペン先部と軸部とからなる。芯が筐体内に装着されると、ペン先部の一部が筐体の開口から突出して使用可能な状態になる。当該芯のペン先の端部からから軸心方向に所定の長さ分の気孔または空隙が設けられており、ペン先の側には、苦味物質が毛細管現象により浸み込ませる。これにより、電子ペンの当該芯が突出している部分を、繰り返し、噛んだり、咥えたり、舐めたりすることを防止し、電子ペンへの唾液の浸透を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態の電子ペンの構成例を説明するための図である。
図2】実施の形態の他の電子ペンの構成例を説明するための図である。
図3】実施の形態の芯の具体的な構成例を説明するための図である。
図4】芯に苦味物質を浸透させる場合について説明するための図である。
図5】芯の外観形状の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照しながら、この発明の電子ペンの一実施の形態について説明する。電子ペンを用いて入力が可能な位置検出装置には、電磁誘導方式(EMR(Erector Magnetic Resonance technology)方式)のものやアクティブ静電結合方式(AES(Active Electrostatic)方式)のものなどがある。この発明の電子ペンは、いずれの方式の位置検出装置に対応する電子ペンにも適用可能なものである。以下においては、電磁誘導方式の位置検出装置に対して使用する電子ペンに、この発明を適用した場合を例にして具体的に説明する。
【0013】
[電磁誘導方式の電子ペンの構成例]
電磁誘導方式の位置検出装置は、縦横に複数のコイルを配置して形成したセンサ部を備え、当該複数のコイルに順次に電力を供給して磁界を発生させる送信期間と、電力の供給を停止し外部からの磁界を受信する受信期間とを交互に設ける構成を備える。そして、当該位置検出装置に対応する電子ペンは、コイルとコンデンサとからなる共振回路を備え、位置検出装置からの磁界に応じて、当該コイルに電流が流れることにより信号を発生させて位置検出装置に送信する構成を備える。
【0014】
これにより、電磁誘導方式の位置検出装置は、送信期間において電子ペンに電力を供給して、電子ペンを駆動可能にする。そして、電磁誘導方式の位置検出装置は、受信期間において電子ペンからの発振信号を受信することにより、電子ペンによる指示位置や電子ペンにかけられている筆圧を検出することができる。以下、この実施の形態の電磁誘導方式の電子ペンの構成例について説明する。
【0015】
図1は、実施の形態の電子ペン1の構成例を説明するための図であり、電子ペン1を軸心方向(長手方向)に2分割した場合のペン先側の主要部分の断面図である。なお、芯3と回路基板9とは、その断面ではなく、それらが電子ペン1の内部に取り付けられた状態を示している。図1に示すように、電子ペン1は、一番外側に使用者によって把持される円筒状の筐体2を備える。筐体2の内部は中空であり、ペン先側とは反対側の端部に設けられている開口から後述する芯3以外の種々の構成部品が搭載される。
【0016】
図1に示すように、筐体2のペン先側の端部部分はテーパー状に形成され、先細となった先端は開口になっている。この開口から芯3が挿入されて筐体2内に装着される。芯3は、全体として棒状に形成されたものであり、軸部31と、その先端が丸みを帯びたペン先32とからなる。芯3は、筐体2内に装着された状態でペン先32が筐体2の先細の先端の開口から突出する。この実施の形態において、芯3は円柱状のものであり、ペン先32は、軸部31よりやや長い直径を有している。
【0017】
筐体2内に装着された芯3の軸部31の周囲には筒状のフェライトコア4が設けられ、フェライトコア4の側面には、共振回路用のコイル5が巻回される。フェライトコア4のペン先側の端部は、筐体2の先端側の内壁と係合し、逆側の端部は第1保持部材6の挿入口に挿入されて保持される。第1保持部材6は挿入口に連続して、挿入口の直径より短く、芯3の軸部31の直径よりは長い直径を有する貫通孔が形成されている。芯3の軸部31は、第1保持部材6の挿入口及び貫通孔を通って、第1保持部材を貫通し、筆圧検出部8に到達する。
【0018】
筆圧検出部8は、芯体保持部81、押圧部材82、第1電極83、バネ84、誘電体85、第2電極86からなり、これらが筆圧検出部用の保持部材である第2保持部材7内に設けられる。第2保持部材7は第1保持部材6と連結する。芯体保持部81は、芯3の軸部31の直径よりもやや小さな直径の嵌合穴を備え、ここに芯3の軸部31のペン先側とは反対側の端部が挿入されると軸部31を保持して簡単に外れないようにする。但し、芯3のペン先32をつまんで、所定以上の力を掛ければ、芯3を芯体保持部81から外すことができる。すなわち、芯3は電子ペン1に対して着脱可能である。
【0019】
芯体保持部81と接して、押圧部材82が設けられる。押圧部材82は、硬質の円盤状の部材であり、芯3によって押圧可能にされる。押圧部材82には、第1電極83が接して設けられる。第1電極83は、例えば導電ゴムなどの弾力性のある導電性材料により形成され、芯3とは反対側の端部が丸みを帯びた円柱状のものである。第1電極83からやや離れた位置に、第1電極83に対向する面を有する円盤状の誘電体85が設けられ、誘電体85の他方の面には第2電極86が接して設けられる。そして、押圧部材82と誘電体85との間であって、第1電極83の周囲には、コイル状のバネ84が設けられる。
【0020】
そして、第2保持部材7のペン先とは反対側の端部には、回路基板9が接続される。この回路基板9には、図示しないが、コンデンサやIC(Integrated Circuit)の構成とされた制御回路などが接続されて形成された電子回路が設けられている。そして、図1には図示していないが、フェライトコア4の側面に巻回されたコイルの両端が、回路基板9上のコンデンサに接続されて共振回路を構成する。また、筆圧検出部8を構成する第1電極83と第2電極86が、回路基板9上の制御回路に接続されて、筆圧の把握が可能にされる。
【0021】
そして、回路基板9は、電子ペン1のペン先側とは反対側の端部の開口に嵌め込まれるキャップに固定される。これにより、フェライトコア4、第1保持部材6、筆圧検出部8が収容された第2保持部材7、回路基板9が直列に接続された状態で、筐体2内において、その位置が固定される。そして、筆圧検出部8において、押圧部材82と誘電体85の間に設けられたコイル状のバネ84により、押圧部材82と、これに接する芯体保持部81は、常時、ペン先32側に付勢されている。従って、芯体保持部81に軸部31が保持された芯3もまた、ペン先32側に、常時、付勢されている。
【0022】
このように、筆圧検出部8のバネ84の作用により、芯3を軸心方向に押し込んだり、また、バネ84の力により押し出されたりすることができるようになっている。従って、芯3のペン先32に筆圧が掛けられると、芯3は筐体2内に押し込まれ、筆圧検出部8の第1電極83が誘電体85に近づき、誘電体85を挟む第1電極83と第2電極86との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化を検出することで筆圧の検出ができる。また、芯3に掛けられた筆圧が解除されれば、芯3はバネ84の力により元の状態に復帰する。
【0023】
[電磁誘導方式の他の電子ペンの構成例]
図2は、実施の形態の他の電子ペン1Aの構成例を説明するための図であり、図1の場合と同様に、電子ペン1Aを軸心方向(長手方向)に2分割した場合のペン先側の主要部分の断面図である。そして、図2の場合には、図1に示したものよりも、よりペン先側の部分を拡大して示している。また、図2の電子ペン1Aにおいて、図1に示した電子ペン1と同様に構成される部分には同じ参照符号を付している。このため、図2に示した電子ペン1Aにおいて、図1に示した電子ペン1と同じ参照符号を付した部分の説明は重複するので省略する。
【0024】
そして、図2に示すように、電子ペン1Aのペン先部分を拡大して示すと、筐体2の先細となった端部の開口2aと芯3のペン先32との間には隙間が生じる。このため、電子ペン1Aのペン先32側を噛んだり、咥えたり、舐めたりした場合には、唾液が筐体2の内部に浸透し、例えば、フェライトコア4の側面に巻回されたコイルに付着する可能性がある。この場合、コイル5の電気的な特性を変化させてしまい、所望の周波数の共振信号が得られなくなる可能性がある。このような問題は、図1に示した電子ペン1の場合にも同様に起こり得る。
【0025】
そこで、図2に示すように、電子ペン1Aの場合には、筐体2内であって、フェライトコア4のペン先側の端部部分に浸透防止部材10を設ける。浸透防止部材10は、合成樹脂や合成ゴムなどの水分を浸透させることがない材料により形成された筒状のものであり、ややテーパー形状となっており、その外側の両方の端部部分が筐体2の内壁と係合して、筐体2内においてその位置が固定される。そして、フェライトコア4のペン先側の先端が、浸透防止部材10と嵌合し、筐体2内におけるフェライトコア4のペン先側の位置が固定される。
【0026】
図2に示す電子ペン1Aの場合には、浸透防止部材10の機能により、ペン先側の開口2aより侵入する唾液などの水分が、共振回路を構成するコイル5に直接影響を及ぼすことを防止できる。この図2に示した電子ペン1Aのように、筐体2内に浸透防止部材10を設けることにより、外部からの水分の侵入に耐性のある(防水性のある)電子ペンを構成できる。
【0027】
しかし、この実施の形態の電子ペン1(図1)や電子ペン1A(図2)の芯3は、位置検出装置のセンサ上に配置された板状の樹脂やガラスの上で、滑ることなく、滑らかな書き味で入力操作を行えるように、弾力性を備えたものを用いている。すなわち、芯3は、ペン先32の先端から軸心方向の後端に向かって、空隙または気孔が設けられたものである。また、芯3とフェライトコア4との間にも、若干の隙間4aがある。
【0028】
このため、電子ペン1Aのペン先側が使用者によって噛まれたり、咥えられたり、舐められたりした場合には、芯3の空隙や気孔、あるいは、芯3とフェライトコア4との間の隙間を通って、唾液が浸透してしまう可能性がある。この場合、筆圧検出部8の電気的特性を変化させたり、更に後段の回路基板9の電子回路に影響を及ぼしたりすることが懸念される。
【0029】
そこで、この実施の形態の電子ペン1、1Aで用いられている電子ペン用の芯3は、苦味物質を浸み込ませた構成を有する。すなわち、この実施の形態の電子ペン1、1Aで用いられている電子ペン用の芯3は、棒状に形成され、電子ペン1、1Aに装着された場合に、その一端であるペン先32が電子ペンの先端の開口より突出して使用される。また、芯3は、ペン先32の先端から軸心方向に管状に延びた空隙または気孔が設けられたものである。この芯3の管状に延びた空隙または気孔に、ペン先32側から苦味物質を毛細管現象により浸み込ませている。
【0030】
このように、苦味物質を浸み込ませることにより、空隙や気孔を塞ぐ防水処理を施すことができる。そして、電子ペン1、1Aのペン先側を噛んだり、咥えたり、舐めたりした場合に、苦味物質が口の中に広がるため、苦味を感じ、噛み続けたり、咥え続けたり、舐め続けることができなくされる。これにより、電子ペン1、1Aの筐体2内に、芯3の空隙や気孔、あるいは、芯3とフェライトコア4との間の隙間を通じて唾液が浸透することを防止でき、唾液の浸透による誤動作や故障を防止できるようにしている。
【0031】
[芯3の具体的な構成例]
図3は、芯3の具体的な構成例を説明するための図である。図3(A)は、芯3の外観を示している。この実施の形態の電子ペン1、1Aの芯3は、棒状に形成され、軸部31とペン先32とからなる。この例の芯3は、上述もしたように、円柱状に形成され、ペン先32の直径は、軸部31の直径よりもやや長くなるようにされている。そして、芯3は、外観形状はほぼ同じであるが、その内部構成が異なる複数の態様で形成することができる。
【0032】
具体的には、合成繊維を束ねて構成するもの、合成樹脂に気孔を設けて構成するもの、合成繊維を束ねて構成し、その側面を更に樹脂で包んで構成するものなどがある。以下においては、このように内部構成が異なる芯3A、3B、3Cの構成例について具体的に説明する。図3(B)、(C)、(D)は、図3(A)に示した形状に形成されるが、その内部構成が異なる芯3A、3B、3Cの構成例を説明するための図であり、図3(A)において、点線AAで示した位置で切断した場合の芯3A、3B、3Cの断面図である。
【0033】
図3(B)は、合成繊維を束ねて構成した芯3AのAA断面図である。芯3Aは、合成繊維の束として構成した場合であって、複数の合成繊維を束ねることで、合成繊維間に軸心方向の空隙を生じさせるようにして形成したものである。この例の芯3Aは、2種類の合成繊維3x、3yを用いて形成したものである。合成繊維3x、3yは、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維などである。なお、その詳細な構成例については、例えば、特開2011-20443号公報に開示されている。
【0034】
そして、図3(B)に示したように、複数の合成繊維3x、3yが束ねられることにより形成された芯3Aには、合成繊維3xや合成繊維3yで囲まれた部分が空隙GPaとなり、このような空隙GPaが多数形成されている。合成繊維3x、3yは、長さを持っており合成繊維3xや合成繊維3yで囲まれた部分に形成される空隙は、長さ方向に管状(パイプ状)に形成される。この例の場合、芯3Aに設けられる多数の空隙GPaは、芯3Aの一方の端部から他方の端部に貫通したものとなっている。このように、複数の合成繊維が束ねられて形成された芯3Aは、例えばPET素材で一体に形成された空隙のない従来の芯に比べて、ペン先32が容易に変形することにより、弾力性を備えたものとなる。
【0035】
図3(C)は、合成樹脂により形成した芯の内部に1つ以上の気孔を設けて構成した芯3BのAA断面図である。芯3Bは、例えば、プラスチックにより形成され、パイプ状の芯3Bの内部に、その内壁から中心に向かって枝部を持つ突起Tk1~Tk8が設けられている。突起Tk1~Tk8は、芯3Bの一方の端部から他方の端部まで連続して細長く設けられているものである。そして、突起Tk1~Tk8が存在しない部分が、気孔Prとなっている。そして、突起Tk1~Tk8は、長手方向に連続して形成されているので、気孔Prもまた、芯3Bの一方の端部から他方の端部まで連続して存在している。
【0036】
そして、図3(C)に示したように、芯3Bの内部には、枝部を持つ突起Tk1~Tk8が設けられることにより、気孔Prは多数の部分に分割するようにされ、多数の気孔が設けられているのと同様の状態が形成されている。このように、芯3Bの内部には、多数の気孔(隙間)が設けられた状態となっており、例えばPET素材で一体に形成された気孔の存在しない従来の芯に比べて、ペン先32が容易に変形することにより、弾力性を備えたものとなる。
【0037】
なお、気孔との文言は、いわゆる多孔質物資に存在する無数の孔(細孔)を意味するが、この実施の形態の芯3Bの場合にも、芯3B内部にあたかも複数の孔を設けて、多孔質物質のように形成しているため、芯3Bに設ける孔を気孔と記載している。また、図3(C)に示した芯3Bは一例であり、芯3B内部に設けられる突起等の形状や数は種々の態様とすることができる。その詳細な例や形成方法については、例えば、特開平2-6196や特開2003-25783号公報に開示されている。
【0038】
図3(D)は、合成繊維を束ねて芯の中心部を構成し、この中心部の側面を更に樹脂で包んで構成した芯3CのAA断面図である。合成繊維を束ねて構成した芯の中心部の構成は、図3(B)を用いて説明したものと同様のものとなる。そして、当該中心部の側面を樹脂3Rnにより包んで、芯3Cを構成する。この場合、複数の合成繊維3x、3yで囲まれて形成される空隙GPaに加えて、合成繊維3x、3yと樹脂3Rnと囲まれた空隙GPbも形成される。そして、中心部の側面を樹脂で包むことにより、電子ペンの筐体2内に芯3Cを装着した場合には、筆圧の印加と解除に応じた軸心方向への摺動移動をよりスムーズに行うようにできる。
【0039】
[苦味物質の付着処理]
そして、図3(B)、(C)、(D)を用いて説明したように、軸心方向に空隙や気孔が設けられた芯3A、3B、3Cの当該空隙や気孔に苦味物質を、毛細管現象を利用して浸み込ませる。毛細管現象は、ごく細い管を液体中に立てると、管内の液面が管外の液面より高くなる現象である。すなわち、この実施の形態の芯3A、3B、3Cは、図1図2図3(A)に示したように、棒状に形成されたものである。そして、これら棒状に形成された芯3A、3B、3Cの内部に形成された空隙GPa、GPb、気孔Prは、いずれも芯3A、3B、3Cの軸心方向に細い管状に形成されている。このため、芯3A、3B、3Cを苦味物質が溶け込んだ水溶液中に立てることで、空隙GPa、GPb、気孔Prに苦味物質を浸み込ませることができる。
【0040】
図4は、芯3A、3B、3Cに苦味物質を浸透させる場合について説明するための図である。容器100に苦味物質を溶かした水溶液110を用意する。ここで、苦味物質は、安息香酸デナトニウム(Denatonium Benzoate)を用いる。安息香酸デナトニウムは、例えば、幼児などの誤飲防止のために、シャンプーやSDカードなどに付加、塗布するなどして用いられているものである。安息香酸デナトニウムは、苦味が強いため、口に入れると、飲み込まずに即座に吐き出すようにできる。特に、年齢の低い子供には効果的である。
【0041】
そして、図4(A)に示すように、容器100の水溶液110中に芯3A、3B、3Cをペン先32側から縦方向に浸すようにする。これにより、図4(B)に示すように、芯3A、3B、3Cのペン先32は、苦味物質の水溶液110中に浸る。これにより、毛細管現象によって、芯3A、3B、3Cの軸心方向に延びた管状の空隙GPa、GPb、気孔Pr内に、苦味物質の水溶液が浸透する。そして、所定時間経過後に、芯3A、3B、3Cを苦味物質の水溶液110から引き上げると、芯3A、3B、3Cの軸心方向に延びた管状の空隙GPa、GPb、気孔Pr内に苦味物質の水溶液がとどまる。
【0042】
芯3A、3B、3Cの軸心方向に延びた管状の空隙GPa、GPb、気孔Pr内にとどまった苦味物質の水溶液は、時間の経過と共に、水分が蒸発し、苦味物質が固形化すると共に硬化する。これにより、芯3A、3B、3Cの軸心方向に延びた管状の空隙GPa、GPb、気孔Prは、苦味物質によって塞がれるようにされる。すなわち、管状の空隙GPa、GPb、気孔Prは、固形化し硬化する苦味物質により塞がれる状態となり、防水処理が施されるようにされる。
【0043】
そして、芯3A、3B、3Cのペン先32側の管状の空隙GPa、GPb、気孔Prの内部には、固形化して硬化した苦味物質が存在するので、ペン先32側を噛んだり、咥えたり、舐めたりすれば、苦味物質が即座に口腔中に広がり、強い苦味を感じることになる。このため、芯3A、3B、3Cが装着された電子ペン1、1Aのペン先32側を噛んだり、咥えたり、舐めたりする行為を続けることはできず、即座に口から離すことなり、唾液の筐体2内への侵入を効果的に防止できる。
【0044】
また、芯3A、3B、3Cが装着された電子ペン1、1Aのペン先32側を噛んだり、咥えたり、舐めたりすれば、必ず強い苦味を感じるという経験をすることになる。これにより、噛んだり、咥えたり、舐めたりすれば、繰り返し苦味を感じることになり、無意識の学習効果により、電子ペン1、1Aのペン先側を噛んだり、咥えたり、舐めたりするといった、癖の動作をしないように矯正できる。
【0045】
[実施の形態の効果]
電子ペン用の芯の内部に形成される空隙や気孔に、苦味物質を浸み込ませ、水分を蒸発させて、固形化及び硬化させることにより、当該空隙や気孔を苦味物質により塞ぎ防水処理を施すことができる。
【0046】
更に、芯のペン先側を噛んだり、咥えたり、舐めたりすれば、口腔中に苦味物質が広がるため、強い苦味を感じるようにされる。これにより、芯のペン先側を噛んだり、咥えたり、舐めたりするといった癖の動作を継続させることができなくなるので、電子ペンの筐体内に唾液が浸透するのを防止し、誤動作や故障を防止できる。
【0047】
従って、ペンを噛んだり、咥えたり、舐めたりする癖を有することの多い、幼稚園児や小学校の低学年の児童といった低年齢の子供が使用して好適な電子ペンが実現できる。
【0048】
[変形例]
<芯の外観形状の他の例>
図5は、芯3の外観形状の他の例を説明するための図である。上述した実施の形態において、芯3は、図3(A)に示したように、円柱状に形成され、軸部31と、軸心部分よりも長い直径を有するペン先32とからなるものとして説明したが、これに限るものではない。例えば、図5に示すような種々の外観形状とすることもできる。
【0049】
図5(A)に示す芯3Dは、円柱状に形成され、どの部分の直径も同じであるが、ペン先側の先端はドーム状に丸みを帯びるようにしたものある。図5(B)に示す芯3Eは、円柱状に形成すると共に、ペン先側の先端をテーパー形状にしたものである。また、図5(C)に示す芯3Eは、単に円柱状に形成しただけのものである。なお、図5に示した芯3の外観形状の他の例は、あくまでも一例であり、この他の外観形状とすることもできる。
【0050】
例えば、芯3を、円柱上ではなく、三角柱状以上の多角柱状に形成してもよい。すなわち、芯3は、軸心方向と交差する方向の断面が、いかなる形状であっても、棒状(柱状)に形成され、その内部に管状の空隙や気孔が設けられるものであればよい。
【0051】
<芯の内部構造の他の例>
上述した実施の形態では、図3(B)、(C)、(D)を用いて説明したように、空隙GPa、GPbや気孔Prは、芯の一方の端部から他方の端部へ貫通しているものとして説明したが、これに限るものではない。空隙GPa、GPbや気孔Prは、ペン先側に形成され、苦味物質を保持できる軸心方向に適当な長さを有していればよい。
【0052】
また、合成繊維を束ねて芯を構成する場合には、合成繊維自体が管状に形成されたものを用いてもよい。管状の合成繊維を用いることにより、合成繊維間に生じる空隙だけでなく、管状の合成繊維内にも、苦味物質を浸み込ませることができ、より多くの苦味物質を保持させるようにできる。
【0053】
<アクティブ静電結合方式の電子ペン>
また、上述もしたように、この発明の電子ペン用の芯は、アクティブ静電結合方式(AES(Active Electrostatic)方式)の位置検出装置に対応する電子ペンにも適用可能なものである。アクティブ静電結合方式の電子ペンは、電子ペンに搭載された発振回路からの信号を位置検出装置に送信して、位置指示と筆圧の通知とを行うものである。このため、上述した電磁誘導型の電子ペンのように、共振回路を通じて、位置検出装置との間で信号のやり取りをするのではなく、芯から位置指示及び筆圧通知用の信号を位置検出装置に送信する必要がある。
【0054】
そこで、アクティブ静電結合方式の電子ペンに用いられる芯は、導電性を有している必要がある。具体的には、芯を形成するための合成繊維や合成樹脂を形成する場合に、種々の導電性材料を混ぜ合わせるようにすればよい。導電性材料には、銅、アルミニウムのような金属材料のほか、黒鉛、シリコンカーバイドのような半導体などがある。また、近年においては、導電性を持ったプラスチックなども開発されており、このように導電性を持ったプラスチックを用いて、例えば、図3(C)を用いて説明したように、内部に気孔を備えたアクティブ静電結合方式の電子ペン用の芯を構成することもできる。
【0055】
<その他>
上述もしたように、合成繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維などを用いることができる。同様に、合成樹脂についても、人為的に製造された、高分子化合物からなる種々の物質を用いることができる。
【0056】
また、用いる苦味物質についても、安息香酸デナトニウムに限るものではなく、例えば、植物の葉や果実の表皮などから抽出される植物由来の苦味物質を用いるなど、種々の苦味物質を用いるようにすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1、1A…電子ペン、2…筐体、3、3A、3B、3C…芯、3D、3E、3F…芯、4…フェライトコア、5…コイル、6…第1保持部材、7…第2保持部材、8…筆圧検出部、81…芯体保持部、82…押圧部、83…第1電極、84…バネ、85…誘電体、86…第2電極、9…回路基板、10…浸透防止部材、3x、3y…合成繊維、GPa、GPb…空隙、Tk1~Tk8…突起、Pr…気孔、3Rn…樹脂、100…容器、110…苦味物質の水溶液
図1
図2
図3
図4
図5