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特開2022-168283偏芯容器の製造方法および温度調整用金型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168283
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】偏芯容器の製造方法および温度調整用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/06 20060101AFI20221027BHJP
   B29C 49/12 20060101ALI20221027BHJP
   B29C 49/64 20060101ALI20221027BHJP
   B29B 11/08 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B29C49/06
B29C49/12
B29C49/64
B29B11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146495
(22)【出願日】2022-09-14
(62)【分割の表示】P 2021502129の分割
【原出願日】2020-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2019029862
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 保夫
(57)【要約】
【課題】偏芯容器をストレッチブロー成形法で製造するときに、容器の肉厚分布の偏りを抑制する。
【解決手段】偏芯容器の製造方法は、有底形状の加熱された樹脂製のプリフォームを延伸ロッドで延伸させる工程と、金型内に配置されたプリフォームに加圧流体を導入し、容器首部の中心軸が容器胴部の中心軸とずれている偏芯容器をブロー成形する工程と、を有する。偏芯容器は、容器横断面における第1方向の寸法が、第1方向と直交する第2方向の寸法よりも長い扁平状である。プリフォームは、周方向断面において、容器の第1方向に延びる面に対応する第1領域の肉厚が、容器の第2方向に延びる面に対応する第2領域の肉厚よりも厚肉に設定される。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底形状の加熱された樹脂製のプリフォームを延伸ロッドで延伸させる工程と、
金型内に配置された前記プリフォームに加圧流体を導入し、容器首部の中心軸が容器胴部の中心軸とずれている偏芯容器をブロー成形する工程と、を有し、
前記偏芯容器は、容器横断面における第1方向の寸法が、前記第1方向と直交する第2方向の寸法よりも長い扁平状であり、
前記プリフォームは、周方向断面において、容器の前記第1方向に延びる面に対応する第1領域の肉厚が、前記容器の前記第2方向に延びる面に対応する第2領域の肉厚よりも厚肉に設定される
偏芯容器の製造方法。
【請求項2】
前記プリフォームは、軸方向断面における前記第1の領域の肉厚が、開口側よりも底部側が肉厚となるように設定される
請求項1に記載の偏芯容器の製造方法。
【請求項3】
前記偏芯容器は、前記容器胴部の軸線方向に対して前記容器首部の中心軸が傾いた首曲がり容器である
請求項1または請求項2に記載の偏芯容器の製造方法。
【請求項4】
前記プリフォームを射出成形する工程と、
射出成型後の保有熱を含む前記プリフォームを加熱して温度調整する工程と、をさらに有する
請求項3に記載の偏芯容器の製造方法。
【請求項5】
前記プリフォームは、底部から外側に突出した突起部を備え、
前記温度調整する工程で前記突起部に対して冷却を行う
請求項4に記載の偏芯容器の製造方法。
【請求項6】
射出成型後の保有熱を含む有底形状の樹脂製のプリフォームを加熱して温度調整する工程と、
加熱された前記プリフォームを延伸ロッドで延伸させる工程と、
金型内に配置された前記プリフォームに加圧流体を導入し、容器首部の中心軸が容器胴部の中心軸とずれている偏芯容器をブロー成形する工程と、を有し、
前記プリフォームは、底部から外側に突出した突起部を備え、
前記温度調整する工程で前記突起部に対して冷却を行う
偏芯容器の製造方法。
【請求項7】
前記延伸ロッドで延伸された前記プリフォームの前記突起部を底型で保持し、当該底型を移動させることで前記プリフォームを曲げて前記金型内に配置する工程をさらに有する
請求項5または請求項6に記載の偏芯容器の製造方法。
【請求項8】
底部から外側に突出した突起部を備える有底形状の樹脂製のプリフォームの温度調整を行う温度調整用金型であって、
前記プリフォームの胴部を収容する空間を有し、加熱手段により加熱される加熱ポット型と、
前記プリフォームの底部に対応する位置に配置され、前記突起部を冷却する冷媒が供給される流路を有する冷却部と、
を備える温度調整用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏芯容器の製造方法および温度調整用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、首部の中心軸が胴部と同軸とならない樹脂製の偏芯容器(オフセンターボトル)が知られている。偏芯容器としては、例えば、容器胴部または容器底部の軸線方向に対して容器首部の中心軸が傾いた首曲がり容器や、容器首部の中心軸に対する容器胴部または容器底部の中心軸の偏芯の度合い(偏芯度)の大きな容器などが挙げられる。この種の偏芯容器の製造方法としては、例えば、ダイレクトブロー成形法やストレッチブロー成形法が用いられうる。
【0003】
偏芯容器をダイレクトブロー成形法で製造する場合、上記のような首曲がり容器や偏芯度の大きな容器も比較的容易に製造できる。しかし、ダイレクトブロー成形法で製造される容器は、一般的にストレッチブロー成形法で製造される容器と比べて美的外観や寸法精度等の面で劣る。また、ダイレクトブロー成形法によると、ブロー成型後に容器に残存するバリの切除やその切除面のトリミングといった後工程が必要になり、廃棄される樹脂の量も多い。
【0004】
このような背景の下、比較的に加工が困難な形状であっても偏芯容器をストレッチブロー成形法で製造したいという要望が高まっている。例えば、特許文献1では、延伸ロッドによりプリフォームの底部分を押し上げて上底型に把持させ、当該プリフォームを所定の角度に曲げた後、プリフォームに高圧エアーを吹き込んで首曲がり容器を成形することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4209267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1の手法によると、例えば容器の肩部のようにプリフォームの変形量が大きい箇所では容器が薄肉となり、かかる部位で容器の強度が不足しやすくなる。また、プリフォームの底部を底型で適切に保持できないと、製造される容器の肉厚分布や外観のばらつきが大きくなり、容器の品質に悪影響を及ぼす。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、偏芯容器をストレッチブロー成形法で製造するときに、容器の肉厚分布の偏りを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る偏芯容器の製造方法は、有底形状の加熱された樹脂製のプリフォームを延伸ロッドで延伸させる工程と、金型内に配置されたプリフォームに加圧流体を導入し、容器首部の中心軸が容器胴部の中心軸とずれている偏芯容器をブロー成形する工程と、を有する。偏芯容器は、容器横断面における第1方向の寸法が、第1方向と直交する第2方向の寸法よりも長い扁平状である。プリフォームは、周方向断面において、容器の第1方向に延びる面に対応する第1領域の肉厚が、容器の第2方向に延びる面に対応する第2領域の肉厚よりも厚肉に設定される。
【0009】
本発明の他の態様に係る偏芯容器の製造方法は、射出成型後の保有熱を含む有底形状の樹脂製のプリフォームを加熱して温度調整する工程と、加熱されたプリフォームを延伸ロッドで延伸させる工程と、金型内に配置されたプリフォームに加圧流体を導入し、容器首部の中心軸が容器胴部の中心軸とずれている偏芯容器をブロー成形する工程と、を有する。プリフォームは、底部から外側に突出した突起部を備える。温度調整する工程では突起部に対して冷却を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、偏芯容器をストレッチブロー成形法で製造するときに、容器の肉厚分布の偏りを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)は容器の正面図であり、(B)は容器の右側面図であり、(C)は容器の底面図である。
図2】(A)はプリフォームの正面図であり、(B)は図2(A)のIIb-IIb線断面図であり、(C)は図2(B)のIIc-IIc線断面図である。
図3】ブロー成形装置の構成を模式的に示すブロック図である。
図4】温度調整用金型の構成例を模式的に示す図である。
図5】(A)はブロー成形金型の正面図であり、(B)はブロー成形金型の左側面図である。
図6】ブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。
図7】ブロー成形部での工程を示す図である。
図8図7の続きの図である。
図9図8の続きの図である。
図10】プリフォームの延伸工程の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面において、容器およびプリフォームの厚さ、形状などは模式的に示したもので、実際の厚さや形状などを示すものではない。
【0013】
<偏芯容器の構成例>
まず、図1を参照して、本実施形態に係る樹脂製の偏芯容器(以下、単に容器とも称する)10の構成例を説明する。
図1(A)は容器10の正面図であり、図1(B)は容器10の右側面図であり、図1(C)は容器10の底面図である。図1において容器の軸線方向Lを矢印で示す。
【0014】
図1(A)に示すように、容器10は、容器胴部および容器底部の中心軸L1に対して容器首部の中心軸L2が傾いた首曲がり容器である。
容器10は、出入口となる首部11を容器上部に有し、容器10の側壁部分を規定する胴部12と、胴部12と連なるように形成されて容器10の最下端に位置する底部13と、を備えている。胴部12は、図1(A)に示す容器10の左側面側から右側面側の長さ(直径)が上方へ徐々に幅狭となるように形成されている。したがって、容器10の上面側には、容器10の左側面側から右側面側に傾いて首部11と容器左側面とをつなぐ傾斜部14と、首部11と容器右側面をつなぐ肩部15とが形成される。
【0015】
また、図1(C)に示すように、容器10の底部13の形状は、左側面と右側面との間の第1方向の寸法が長く、第1方向と直交する第2方向の寸法が短い扁平な外形であり、例えば扁平な多角形状(六角形状)や略楕円状をなしている。胴部12の横断面形状も、容器10の底部13と同様である。以下、容器10の胴部12の横断面または底部13の形状を説明するときに、第1方向を長径側、第2方向を短径側とも称する。
【0016】
容器10の材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、容器10の用途に応じて適宜選択することができる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン(登録商標):イーストマンケミカル社製のコポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。
【0017】
<プリフォームの構成例>
図2は、本実施形態の容器10の製造に適用されるプリフォーム20の例を示す。
図2(A)は、プリフォーム20の正面図であり、図2(B)は、図2(A)のIIb-IIb線断面図であり、図2(C)は、図2(B)のIIc-IIc線断面図である。図2においてプリフォーム20の軸線方向Lを矢印で示す。
【0018】
プリフォーム20の全体形状は、一端側が開口され、他端側が閉塞された有底円筒形状である。プリフォーム20は、円筒状に形成された胴部21と、胴部21の他端側を閉塞する底部22と、底部22に形成された突起部23と、胴部21の一端側の開口に形成された首部24とを備える。突起部23は、軸線方向Lに沿って底部22からプリフォーム20の外側に突出するように形成される。なお、突起部23は、突起部23の直下に連接するホットランナーのゲート痕(不図示)よりも横断面で大径に設定されている。
【0019】
プリフォーム20の肉厚は、プリフォーム20の周方向の位置に応じて相違する。
図2(B)に示すように、プリフォーム20の周方向の領域は4つに分割され、4つの領域は、第1領域25と第2領域26の二種類に大別される。第1領域25と第2領域26は、プリフォーム20の周方向に交互に2つずつ配置されている。2つの第1領域25の周方向の長さはそれぞれ等しく設定され、2つの第2領域26の周方向の長さもそれぞれ等しく設定される。
【0020】
プリフォーム20の第1領域25は、第2方向に対向しており、ブロー成形後に容器10の長径側に延びる面を主に構成する。プリフォーム20の第2領域26は、第1方向に対向しており、ブロー成形後に容器10の短径側に延びる面を主に構成する。プリフォーム20の軸方向の同位置においては、容器10の長径側に延びる面に対応する第1領域25の肉厚t1は、容器10の短径側に延びる面に対応する第2領域26の肉厚t2よりも厚肉に設定される(t1>t2)。
【0021】
また、プリフォーム20の第1領域25の肉厚は、プリフォーム20の軸方向の位置に応じて相違する。
図2(C)に示すように、第1領域25の肉厚は、一端側(開口側)よりも他端側(底部側)が肉厚となるように設定されている。例えば、プリフォーム20の軸方向に沿って、第2領域26の一端側から他端側にかけて順に設定された3点ta,tb,tcの肉厚を比べると、ta,tb,tcの順に厚くなり、ta<tb<tcの関係が成り立つ。
図示を省略するが、プリフォーム20の第2領域26の肉厚は、プリフォーム20の軸方向の位置に拘わらず同じにしてもよく、必要に応じて第1領域25と同様に一端側(開口側)よりも他端側(底部側)が肉厚となるように設定してもよい。
【0022】
<ブロー成形装置の説明>
次に、図3を参照して容器10を製造するためのブロー成形装置100について説明する。図3は、ブロー成形装置100の構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態のブロー成形装置100は、プリフォーム20を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用してブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式とも称する)の装置である。
【0023】
ブロー成形装置100は、射出成形部110と、温度調整部120と、ブロー成形部130と、取り出し部140と、搬送機構150とを備える。射出成形部110、温度調整部120、ブロー成形部130および取り出し部140は、搬送機構150を中心として所定角度(例えば90度)ずつ回転した位置に配置されている。
【0024】
搬送機構150は、図3の紙面垂直方向(Z方向)の軸を中心に回転する回転板(不図示)を備える。回転板には、プリフォーム20または容器10の首部を保持するネック型151(図3では不図示)が、所定角度ごとにそれぞれ1以上配置されている。搬送機構150は、回転板を回転させることで、ネック型151で首部が保持されたプリフォーム20(または容器10)を、射出成形部110、温度調整部120、ブロー成形部130、取り出し部140の順に搬送する。
【0025】
射出成形部110は、それぞれ図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型を備え、図2に示すプリフォーム20を製造する。射出成形部110には、プリフォームの原材料である樹脂材料を供給する射出装置112が接続されている。
射出成形部110においては、上記の射出キャビティ型、射出コア型と、搬送機構150のネック型151とを型閉じしてプリフォーム形状の型空間を形成する。そして、このようなプリフォーム形状の型空間内に射出装置112から樹脂材料を流し込むことで、射出成形部110でプリフォーム20が製造される。なお、図2に示すプリフォーム20の偏肉の調整は、射出キャビティ型または射出コア型の少なくとも一方の横断面を扁平状に形成して対応すればよい。
【0026】
なお、射出成形部110の型開きをしたときにも、搬送機構150のネック型151は開放されずにそのままプリフォーム20を保持して搬送する。射出成形部110で同時に成形されるプリフォーム20の数(すなわち、ブロー成形装置100で同時に成形できる容器10の数)は、適宜設定できる。
【0027】
温度調整部120は、プリフォーム20を収容可能な温度調整用金型(温調ポット)121を有する。温度調整部120は、温度調整用金型121にプリフォーム20を収容し、射出成形部110で製造されたプリフォーム20の温度を最終ブローに適した温度(例えば約90~100℃)に調整する。
【0028】
図4は、温度調整用金型121の構成例を模式的に示す図である。
温度調整用金型121は、プリフォーム20の胴部21を加熱する加熱ポット型122と、プリフォーム20の突起部23を局所的に冷却する冷却部123とを有する。
【0029】
加熱ポット型122は、プリフォーム20の首部24の下から底部近傍にわたってプリフォーム20の胴部21を収容する空間を有し、例えばヒータ等の加熱手段(不図示)により加熱される。加熱ポット型122から発せられる熱により、上記のようにプリフォーム20が温度調整される。
【0030】
また、冷却部123は、温度調整用金型121においてプリフォーム20の底部22に対応する位置に配置される。冷却部123は、突起部23を収容する部位に、突起部23を冷却する冷媒の一例である空気を供給する給気路124と、突起部23を冷却した後の空気を外部に逃がす排気路125が接続されている。これにより、冷却部123は、プリフォーム20の突起部23を空気で冷却可能に構成されている。
【0031】
ブロー成形部130は、温度調整部120で温度調整されたプリフォーム20に対してブロー成形を行い、容器10を製造する。
ブロー成形部130は、容器10の形状に対応するブロー成形金型30と、プリフォーム20を延伸させる延伸ロッド31と、ブローノズル(不図示)とを備える。
【0032】
図5を参照して、ブロー成形金型30の構成例を説明する。図5(A)はブロー成形金型30の正面図であり、図5(B)はブロー成形金型30の左側面図である。ブロー成形金型30は、一対のブローキャビティ割型32,32と、底型部33と、スイング機構34と、を備えている。
【0033】
ブローキャビティ割型32,32は、底面部分を除いた容器10の形状を規定する型材である。ブローキャビティ割型32,32は、図5(A)、(B)の上下方向(Z方向)に沿ったパーティング面で分割され、図5(B)の左右方向(Y方向)に開閉可能に構成される。
【0034】
底型部33は、容器10の底部13の形状を規定し、ブローキャビティ割型32,32とともに型閉じされて容器10の型空間Sを形成する型材である。底型部33は、型空間Sに臨む上面側にプリフォーム20の突起部23を挟持する保持部35を収容している。保持部35は、リンク機構35aにより開閉可能な爪を有し、爪を開状態から閉状態に移行させることで突起部23を挟むように構成される。
【0035】
スイング機構34は、ブローキャビティ割型32の下方に配置され、ブローキャビティ割型32の開閉方向と直交する面(XZ平面)上で底型部33を移動させる。
スイング機構34は、底型部33の左右方向の両側部に設けられたカムフォロア36と、底型部33を隔てて左右方向に配置されてそれぞれ底型部の側面に臨む一対のカム部材37とを備えている。カム部材37には、カムフォロア36と係合するカム溝37aが形成されている。
【0036】
カム溝37aの軌跡は、ネック型151の配置される位置を中心点とした円弧状の軌跡をなす。カム溝37aの一端は、底型部33がネック型151の直下に位置決めされるように設定される。また、カム溝37aの他端は、ブローキャビティ割型32の型空間Sに底型部33が合致する位置に設定される。カム部材37のカム溝37aにカムフォロア36が案内されることで、底型部33は、ネック型151の直下の位置からブローキャビティ割型32の型空間Sの位置まで移動可能である。
【0037】
図3に戻って、取り出し部140は、ブロー成形部130で製造された容器10の首部11をネック型151から開放し、容器10をブロー成形装置100の外部へ取り出すように構成されている。
【0038】
<ブロー成形方法の説明>
次に、本実施形態のブロー成形装置100によるブロー成形方法について説明する。図6は、ブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。
【0039】
まず、射出成形部110において、射出キャビティ型、射出コア型およびネック型151で形成された型空間に射出装置112から樹脂を射出し、図2(A)-(C)に示すプリフォーム20が製造される(ステップS101)。
【0040】
続いて、搬送機構150の回転板が所定角度回転し、射出成型時の保有熱を含んだ状態のプリフォーム20が温度調整部120に搬送される。温度調整部120においては、プリフォーム20の温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる(ステップS102)。
【0041】
このとき、プリフォーム20の胴部21は、温度調整用金型121の加熱ポット型122によって最終ブローに適した温度の近傍に加熱される一方、プリフォーム20の突起部23は冷却部123により冷却されて胴部21よりも低い温度となる。そのため、プリフォーム20の突起部23は硬化したままとなり、温度調整後の胴部21と比べると温度調整部の突起部23はその内部熱量が小さくほとんど変形しなくなる。
【0042】
続いて、搬送機構150の回転板が所定角度回転し、温度調整されたプリフォーム20がブロー成形部130に搬送される。
図7(A)は、ブロー成形部130においてプリフォーム20が所定の位置に配置された状態を示している。その後、図7(B)に示すように、プリフォーム20内に延伸ロッド31が挿入され、延伸ロッド31の下降によりプリフォーム20の底部が底型部33の位置に至るまでプリフォーム20が延伸される(ステップS103)。
【0043】
プリフォーム20の底部が底型部33の位置に至ると、プリフォーム20の突起部23が底型部33の保持部35に挟まれて保持される(ステップS104)。その後、延伸ロッド31が上昇し、プリフォーム20から延伸ロッド31が引き抜かれる。
【0044】
続いて、スイング機構34を動作させて、カム溝37aの一端側の位置から他端側の位置に向けて底型部33をカム溝37aに沿って移動させる。そうすると、首部24がネック型151に保持され、底型部33の保持部35に突起部23が保持されたプリフォーム20は、底型部33の移動に伴って底部側がネック型151の直下の位置から斜め上方に向けて移動する。これにより、図8(A)に示すように、プリフォーム20が底型部33に保持されたまま、首部24の近傍で折れ曲がる(ステップS105)。
【0045】
ここで、プリフォーム20の首部24の位置は固定される一方で、プリフォーム20の突起部23は底型部33の保持部35に保持されて移動する。したがって、プリフォーム20の突起部23には、底型部33の移動に伴ってせん断方向の力が作用する。しかし、上記のように温度調整用金型121で冷却されていた突起部23は内部熱量が小さく変形しにくい。したがって、底型部33が移動するときに作用する力で突起部23がほとんど変形せず、底型部33に対してプリフォーム20の底部22が位置ずれしにくい。換言すれば、移動後の底型部33にプリフォーム20の底部22が精度よく位置決めされ、ブロー成形後の容器10の肉厚分布や外観が損なわれることが抑制される。
【0046】
底型部33がカム溝37aの他端側の位置まで移動すると、図8(B)に示すように、ブローキャビティ割型32,32が型閉じし、ブローキャビティ割型32,32内にプリフォーム20が収容される(ステップS106)。この状態において、ネック型151、ブローキャビティ割型32,32および底型部33を型閉じすることで容器10に対応する型空間Sが形成される。
【0047】
続いて、図9(A)に示すように、プリフォーム20内に、ブローノズルから加圧流体の一例であるブローエアーを導入し、プリフォーム20を容器10に最終ブロー成形する(ステップS107)。
【0048】
ホットパリソン方式のブロー成形では、プリフォーム20の保有する内部熱量が大きいほどプリフォーム20が変形しやすくなる。プリフォーム20の肉厚が大きければ、プリフォーム20の内部熱量は大きくなる傾向を示す。
【0049】
本実施形態のプリフォーム20では、容器長径側に対応する第1領域25の肉厚t1は、容器短径側に対応する第2領域26の肉厚t2よりも厚肉に設定されている。すなわち、プリフォーム20は、周方向において、容器短径側に延びる面に対応する第2領域26よりも容器長径側に延びる面に対応する第1領域25の方が、内部熱量が大きいので変形しやすい。
したがって、プリフォーム20にブローエアーが導入されると、プリフォーム20の周方向において内部熱量の大きい第1領域25が先行して延伸され、内部熱量の小さい第2領域26が遅れて延伸される。これにより、容器短径側に延びる面に対応するプリフォーム20の第2領域26が過剰に延伸されなくなり、容器短径側に延びる面に位置している容器10の肩部15(図1(A)、(B)にて鎖線で囲んだ領域A)を厚肉にできる。
【0050】
また、プリフォーム20の第1領域25の肉厚は、一端側(開口側)よりも他端側(底部側)が肉厚となるように設定されている。プリフォーム20は、軸方向において開口側よりも底部側の方が、内部熱量が大きいので変形しやすい。
したがって、プリフォーム20にブローエアーが導入されると、プリフォーム20の第1領域25の軸方向において内部熱量の大きい底部側が先行して延伸され、内部熱量の小さい開口側が遅れて延伸される。これにより、容器10の長径側に延びる面において、容器10の底部周縁にも材料がいきわたるようになり、容器10の底部周縁に位置するヒール部分(図1(A)、(B)にて鎖線で囲んだ領域B)を肉厚にできる。
【0051】
以上のようにして、本実施形態では、首曲がり容器の肩部やヒール部分を肉厚化でき、これらの部位の容器10の強度を向上させることができる。また、容器10の肩部やヒール部分が肉厚化されることで、容器10全体の肉厚分布も改善され、容器10の美的外観も向上する。
【0052】
図9(B)に示すように、最終ブロー成形後にブローキャビティ割型32,32および底型部33を型開きし、かつ底型部33の保持部35による突起部23の保持を解除する(ステップS108)。これにより、ブロー成形後の容器10が移動可能となる。なお、容器10の離脱後に、スイング機構34の動作により、底型部33はカム溝37aの一端側の位置に戻る。
【0053】
続いて、搬送機構150の回転板が所定角度回転し、容器10が取り出し部140に搬送される。取り出し部140において、容器10の首部11がネック型151から開放され、容器10がブロー成形装置100の外部へ取り出される(ステップS109)。
以上で、ブロー成形方法の一連の工程が終了する。その後、搬送機構150の回転板を所定角度回転させることで、上記のS101からS109の各工程が繰り返される。
【0054】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0055】
例えば、上記実施形態では、偏心容器の一例として首曲がり容器を製造する場合について説明した。しかし、本発明は、容器首部の中心軸に対する容器胴部または容器底部の中心軸の偏芯度の大きな偏芯容器を製造する場合にも適用することが可能である。
また、最終ブロー成形において、プリフォームを加圧する媒体は空気に限定されることなく、空気以外の気体や水等の液体を加圧媒体としてもよい。
【0056】
また、上記実施形態で説明したステップS103のプリフォーム20の延伸工程は、以下のように行われてもよい。
図10(A)、(B)は、プリフォームの延伸工程の変形例を示す図である。
【0057】
まず、図10(A)に示すように、延伸ロッド31を待機位置から所定ストローク下げ、延伸ロッド31の先端部分をプリフォーム20の底部内面に当接させる。そして、さらに延伸ロッド31を下げてプリフォーム20を伸長させて、底型部33の保持部35に突起部23を挟持させる。延伸ロッド31の先端部分とプリフォーム20が接触することで、プリフォーム20の底部領域が冷却される。これにより、ブロー成形後の容器10において底面部分を肉厚にしやすくなる。また、図10の例では、延伸ロッド31の先端部分はプリフォーム20の底部領域との接触面積を大きくするために大径にすることが好ましい。
【0058】
ここで、図10(A)に示すように、伸長後のプリフォーム20は胴部21がすぼまった略湾曲形状となり、延伸ロッド31を上昇させようとすると胴部21と干渉してしまう。そのため、図10(B)に示すように、不図示のブローノズルからプリフォーム20内にエア(加圧媒体)を導入し、プリフォーム20を所定量膨張させる(一次ブローまたは予備ブロー)。
この一次ブローにより、延伸ロッド31がプリフォーム20の胴部21と干渉しなくなり、延伸ロッド31を待機位置まで上昇させることが可能となる。
【0059】
その後、スイング機構34を動作させて、加圧状態を維持して所定量膨張したプリフォーム20を底型部33の移動により折り曲げる。加圧状態を維持するのは、排気時に生じうるプリフォーム20の不規則な収縮を防止するためである。以後の工程は、上記実施形態のステップS106以降と同様であるので、重複説明は省略する。
【0060】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
10…容器、11…首部、12…胴部、20…プリフォーム、22…底部、23…突起部、25…第1領域、26…第2領域、30…ブロー成形金型、31…延伸ロッド、32…ブローキャビティ割型、33…底型部、34…スイング機構、35…保持部、100…ブロー成形装置、110…射出成形部、120…温度調整部、121…温度調整用金型、122…加熱ポット型、123…冷却部、130…ブロー成形部、140…取り出し部、150…搬送機構
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