(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168317
(43)【公開日】2022-11-07
(54)【発明の名称】コンクリート型枠装置の支持枠,支持枠の積層方法及び支持枠の構築方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20221028BHJP
【FI】
E21D11/10 B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022104859
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】315014567
【氏名又は名称】有限会社 伊藤
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】土田 実
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BB02
2D155DA08
2D155KB03
(57)【要約】
【課題】トンネル建設の工期を短縮すること。
【解決手段】トンネル建設に用いられるコンクリート型枠装置の支持枠15は、搬送に際して、両端位置の支柱17を除いて支柱17がその長さ方向の一部において分離される。分離された下部支柱片17aと上部支柱片17bとの間に連結リンク28を回動可能に連結する。両端側の支柱17は梁材16から分離される。そして、上部支柱片17bを下部支柱片17a上に重ねるとともに、両端位置の支柱17を梁材16の上に重ねる。このようにすれば、支持枠15の上下幅が狭くなる。この状態で、支持枠15をトラックの荷台に載せて搬送することができて、トンネル内において、支持枠15を多数の部品から組み付ける必要がない。よって、トンネル建設工期を短縮できる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁材と、その梁材上に同梁材の延長方向に沿って立てられた複数の支柱と、それらの支柱の上端間に架設され、コンクリート成形用の面板を支持するための骨組み材とを備え、その支持枠を前記梁材側の下部枠部材と、前記骨組み材側の上部枠部材とに分離したコンクリート型枠装置の支持枠。
【請求項2】
前記支柱をその長さ方向の一部において分離した請求項1に記載のコンクリート型枠装置の支持枠。
【請求項3】
分離された支柱片の間をリンクによって回動可能に連結した請求項2に記載のコンクリート型枠装置の支持枠。
【請求項4】
前記リンクの両端部のリンク軸を前記支柱の長さ方向に対して傾斜する直線上に配置した請求項3に記載のコンクリート型枠装置の支持枠。
【請求項5】
少なくとも2本の前記支柱の分離位置を同支柱の長さ方向において異ならせた請求項3に記載のコンクリート型枠装置におけるコンクリート型枠装置の支持枠。
【請求項6】
少なくとも2本の前記支柱の分離位置を同支柱の長さ方向において異ならせるとともに、前記リンクの両端部のリンク軸を前記支柱の長さ方向に対して傾斜する直線上に配置した請求項3に記載のコンクリート型枠装置の支持枠。
【請求項7】
梁材と、その梁材上に同梁材の延長方向に沿って立てられた複数の支柱と、それらの支柱の上端間に架設され、コンクリート成形用の面板を支持するための骨組み材とを備え、その支持枠を前記梁材側の下部枠部材と、前記骨組み材側の上部枠部材とに分離したコンクリート型枠装置の支持枠において、
前記下部枠部材と前記上部枠部材とをそれらの側面において重ねるコンクリート型枠装置の支持枠の積層方法。
【請求項8】
上下の前記支持枠間を連結スペーサによって相互間隔をおいて固定する請求項7に記載のコンクリート型枠装置の支持枠の積層方法。
【請求項9】
梁材と、その梁材上に同梁材の延長方向に沿って立てられた複数の支柱と、それらの支柱の上端間に架設され、コンクリート成形用の面板を支持するための骨組み材とを備えた支持枠であって、前記支柱を下部支柱片と上部支柱片とに分離することにより前記支持枠を前記梁材側の下部枠部材と、前記骨組み材側の上部枠部材とに分離した前記支持枠によりコンクリート型枠を構築する方法において、
前記上部支柱片が前記下部支柱片から分離されて重ねられた状態から、前記上部枠部材を移動させることによって、前記上部支柱片と前記下部支柱片とを連続させて前記支柱を構成するコンクリート型枠装置の支持枠の構築方法。
【請求項10】
前記下部支柱片と前記上部支柱片との間をリンクによって回動可能に連結し、前記リンクを回動させることによって、前記上部支柱片が前記下部支柱片から分離されて重ねられた状態から、前記上部支柱片と前記下部支柱片とを連続させる請求項9に記載のコンクリート型枠装置の支持枠の構築方法。
【請求項11】
少なくとも2本の前記支柱の分離位置を同支柱の長さ方向において異ならせるとともに、前記リンクの両端部のリンク軸を前記支柱の長さ方向に対して傾斜する直線上に配置した請求項10に記載のコンクリート型枠装置の支持枠の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの内周面に対して覆工コンクリートを成形するためのコンクリート型枠装置に関するものである。特に、本発明は、そのコンクリート型枠装置において、面板を支持するための支持枠,支持枠の積層方法及び支持枠の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、この種のコンクリート型枠装置が開示されている。
このような型枠装置においては、分解された状態の多数の部品が工場等からトラックの荷台に積載される。そして、それらの部品がトンネル建設現場へ搬入されて、トンネル内で組み立てられる。
【0003】
すなわち、
図14は、コンクリート型枠装置における支持枠1を示す。この支持枠1は、覆工コンクリートを成形するための面板2を支持するものである。この支持枠1の工場からトンネル内への搬入に際して、支持枠1をトラック搬送することは、支持枠1が大きすぎてトラックTRの荷台Lからはみ出すおそれがある。このため、従来は、支持枠1の搬送に際しては、支持枠1は組み立てられることなく、支持枠1を構成する多数の部品が結束された状態でトラックTRの荷台Lに載せられて搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、従来は、トンネルの建設現場の地面S上において、支持枠1の部品を組み合わせて組み立てる必要がある。この場合、支持枠1は覆工コンクリートの内周面全体を成形する面板2を支持するものであるため、前記のように大きいものであって、部品の点数も多い。しかも、この支持枠1は、1台のコンクリート型枠装置には少なくとも5基程度が用いられる。従って、トンネル内の組み立てに際しては、地面上に多くの部品を仮置きしたり、並べたりするエリアが必要なるとともに、組み立てにはクレーンも用いられる。これらのことから、トンネル内において組み立てのための広いスペースが占拠されることになる。一方、トンネル内には余分なスペースを確保することはないので、支持枠1の組み立て期間中は、前記のように、広いスペースが支持枠1の組み立てのために占拠されて、トラックなどの車両移動や、他の作業の遂行ができなくなる。従って、トンネル建設の工期が長くなる原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコンクリート型枠装置の支持枠においては、梁材と、その梁材上に同梁材の延長方向に沿って立てられた複数の支柱と、それらの支柱の上端間に架設され、コンクリート成形用の面板を支持するための骨組み材とが備え、その支持枠を前記梁材側の下部枠部材と、前記骨組み材側の上部枠部材とに分離したことを特徴とする。
【0007】
以上のコンクリート型枠装置の支持枠の構成においては、分離状態の下部枠部材と上部枠部材とを重ねることができる。このようにすると、支持枠の上下幅が小さくなって、支持枠全体がコンパクトになる。よって、この状態の複数の支持枠をトラック等でまとまり良く搬送できる。従って、トンネル内において、細かな部品の組み立てが不要になるため、トンネル建設の工期短縮に利することができる。
【0008】
本発明のコンクリート型枠装置の支持枠の積層方法においては、梁材と、その梁材上に同梁材の延長方向に沿って立てられた複数の支柱と、それらの支柱の上端間に架設され、コンクリート成形用の面板を支持するための骨組み材とを備え、その支持枠を前記梁材側の下部枠部材と、前記骨組み材側の上部枠部材とに分離したコンクリート型枠装置の支持枠において、前記下部枠部材と上部枠部材とをそれらの側面において重ねることを特徴とする。
【0009】
以上の積層方法によれば、下部枠部材と上部枠部材とを重ねるために、支持枠の上下幅がコンパクトな状態になる。従って、支持枠を分解状態にすることなく、トラック等によって無理なく搬送できる。このため、トンネル建設現場においては、小さな部品を仮置きしたり、組み立てたりする必要がない。よって、トンネル内において、トラック等の移動や、他の作業の妨げになることほとんどなくなって、トンネル建設の工期を短くできる。
【0010】
本発明のコンクリート型枠装置の支持枠の構築方法においては、梁材と、その梁材上に同梁材の延長方向に沿って立てられた複数の支柱と、それらの支柱の上端間に架設され、コンクリート成形用の面板を支持するための骨組み材とを備えた支持枠であって、前記支柱を下部支柱片と上部支柱片とに分離することにより前記支持枠を前記梁材側の下部枠部材と、前記骨組み材側の上部枠部材とに分離した前記支持枠によりコンクリート型枠を構築する方法において、前記上部支柱片が前記下部支柱片から分離されて重ねられた状態から、前記上部枠部材を移動させることによって、前記上部支柱片と前記下部支柱片とを連続させて支柱を構成することを特徴とする。
【0011】
以上の構築方法によれば、分解状態にすることなく、無理なく搬送できるように上下幅をコンパクトにした支持枠であっても、上部枠部材を移動させることによって、支持枠をコンクリート型枠装置として構築できる状態になる。従って、小さな部材を組み立てた後に支持枠をコンクリート型枠装置の構築に供する場合とは異なって、コンクリート型枠装置を短時間で構築できて、トンネル建設の工期を短縮できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、トンネル建設の工期を短縮できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】コンクリート型枠装置の使用状態を示すトンネルの簡略断面図。
【
図3】増し材の移動前における支持架台及び頂部骨組み材を示す簡略側面図。
【
図4】増し材の移動後における支持架台及び頂部骨組み材を示す簡略側面図。
【
図5】(a)は、支持架台を示す斜視図、(b)は、支持枠の部材を構成するH型鋼の断面図。
【
図8】支持枠を積層してトラックの荷台に積載した状態の斜視図。
【
図9】支持枠を積層してトラックの荷台に積載した状態の側面図。
【
図10】(a)は連結リンクの斜視図、(b),(c),(d),(e)はそれぞれ連結スペーサの斜視図。
【
図11】下部枠部材と上部枠部材とが一平面上に位置した状態の側断面図。
【
図12】下部枠部材に対して上部枠部材が回動された状態の側断面図。
【
図13】(a)~(d)は、下部支柱片に対する上部支柱片の回動推移を示す簡略図。
【
図14】従来の支持枠を有するコンクリート型枠装置の使用状態を示すトンネルの簡略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態を
図1~
図13の図面に従って説明する。
〈コンクリート型枠装置11〉
図1~
図7を中心に、コンクリート型枠装置11の構成を概略的に説明する。
【0015】
図1及び
図2に示すように、トンネルTNの地面Sにおける一対の平行なレールR上には、覆工コンクリートCを成形するためのコンクリート型枠装置(以下、型枠装置という)11がトンネルTNの延長方向に沿って移動可能に支持される。
【0016】
図1,
図3及び
図4に示すように、型枠装置11のベース基枠12上に複数の支持架台13がトンネルTNの延長方向に沿って相互間隔をおいて固定されている。
図5(a),
図6及び
図7に示すように、支持架台13は、左右一対の脚部材14と、その脚部材14上に固定された本実施形態の支持枠15とを備える。支持枠15は、脚部材14上に位置する梁材16と、その梁材16上に同梁材16の延長方向に沿って立設固定された6本の支柱17と、支柱17の上端間に架設固定された円弧状の頂部骨組み材18とを備えている。
【0017】
図1に示すように、頂部骨組み材18の両端には、下方に延びる側部骨組み材19が連結固定されるとともに、その側部骨組み材19の下端には下部骨組み材20が連結固定されている。これらの側部骨組み材19及び下部骨組み材20は、図示しない部材を介して支持架台13に支持される。
図1及び
図2に示すように、各骨組み材18,19,20間に複数枚の面板21が張設固定されている。
【0018】
そして、
図1に示すように、トンネルTNの内壁と面板21との間に覆工コンクリートCが打設されるとともに、面板21によって覆工コンクリートCの内面が成形される。
(実施形態)
〈支持枠15の構成〉
次に、実施形態の支持枠15の構成について説明する。
【0019】
図5(b)に示すように、支持枠15を構成する前記梁材16,支柱17及び頂部骨組み材18は、ウェブ22と一対のフランジ23よりなるH形鋼によって構成されている。なお、前記梁材16,支柱17,頂部骨組み材18及びそれらを構成するための部材について、「固定」とはボルト及びナット(ともに図示しない)によって固定されることを意味する。
【0020】
図5(a),
図6及び
図7に示すように、左右の前記脚部材14は支持枠15の梁材16の下面に固定される。梁材16の下面には脚部材14間に挟まれた補助材24が固定されている。前記支柱17は梁材16の上面に相互間隔をおいて左右対称状に立てられており、頂部骨組み材18は支柱17の上端間に架設状態で設置されている。
図5(a),(b),
図11及び
図12に示すように、梁材16,支柱17等のウェブ22の複数箇所には、連結金具26が溶接されている。この連結金具26は、フランジ23より高い高さを有しており、フランジ23の端縁位置から突出している。この連結金具26には型枠装置11の構築状態において型枠装置11の強度を保持するためのジャッキ等の部材(図示しない)が連結されるようになっており、連結金具26の位置及び数量は支持枠15の大きさ等に応じて様々である。
【0021】
図5(a),
図6及び
図7に示すように、前記支柱17は、中央部の2本が最も長く、支持枠15の両端位置の2本が最も短く、他の2本がそれらの中間の長さである。中央部の2本及びその両側の2本の各支柱17は、それらの長さ方向の一部である一箇所において、下部支柱片17aと上部支柱片17bとに分割されており、このため、下部支柱片17aと上部支柱片17bは分離できるようになっている。中央部の支柱17の分割位置とその両側の支柱17の分割位置とは、同支柱17の長さ方向において異なっている。本実施形態において、支柱17の分割位置とは、分割によってトンネルTNの延長方向における前後の側面どうしが重ねられる位置を指すものとする。型枠装置11の構築状態において、下部支柱片17aと上部支柱片17bは連結されて固定される。
【0022】
支持枠15の両端位置の短い支柱17は梁材16から分割されて梁材16から分割されて分離できるようになっている。その両端位置の短い支柱17は型枠装置11の構築状態において、梁材16に固定される。梁材16,補助材24及び4本の下部支柱片17aによって支持枠15の下部枠部材15aが構成されている。また4本の上部支柱片17b,両端位置の2本の支柱17及び頂部骨組み材18によって、前記下部枠部材15aに対して分離される支持枠15の上部枠部材15bが構成されている。
【0023】
〈支持枠15の積層方法,搬送及び型枠装置11の構築〉
以上のように構成された支持枠15は、以下のようにしてユニット化されて、積層される。
【0024】
まず、支持枠15の下部支柱片17aと上部支柱片17bとの間及び両端位置の支柱17と梁材16との間を固定することなく、分離状態とする。そして、
図5(a),
図10(a)及び
図7に示すように、下部支柱片17a及び上部支柱片17bに設けたリンク軸27間を連結リンク28によって回動可能に連結する。
図7に示すように、この連結リンク28は、中央部の2本の支柱17及びその両側2本の支柱17に対して設けられる。この連結リンク28の取り付けタイミングは、支持枠15を組み付ける工場内あるいは工場外のいずれでもよく、前記の分離状態とする前であれば、限定されない。この場合、
図11及び
図13(a)に示すように、連結リンク28が支柱17の長さ方向に対して傾斜されるようにする。つまり、
図13(a)に示すように、下部支柱片17aと上部支柱片17bとが分離されることなく、同じ延長線上において連続する場合、両リンク軸27を結ぶ直線が支柱17の延長方向に対して傾斜されるようにする。
【0025】
また、
図3,
図11及び
図12に示すように、所要の支持枠15の頂部骨組み材18上に同形状の増し材18aを重ねて、
図8及び
図10(e)に示す連結スペーサ34によって連結する。
図8及び
図9に示すように、増し材18aが重ねられる支持枠15は4基であって、残りの1基の支持枠15には設けられない。この残りの1基の支持枠15は、コンクリート型枠装置11のトンネルTNの延長方向の端部に配置される。
【0026】
次いで、
図6及び
図13(a)~(d)に示すように、上部枠部材15bが下部枠部材15aから分離された状態において、上部枠部材15bを連結リンク28とともに回動させる。このようにして、上部支柱片17bの側面を下部支柱片17aの側面の上に重ねるとともに、両端位置の支柱17の側面を梁材16の側面の上に重ねる。この場合、
図13(a)~(d)に示すように、上部枠部材15bの回動方向を、その上部支柱片17b側のリンク軸27が下部支柱片17a側のリンク軸27から離れる方向とする。このようにすれば、上部枠部材15bの回動にともなって、上部支柱片17bが下部支柱片17aから一旦離れるとともに、両端位置の支柱17が梁材16から一旦離れた後に、それらの上に載せられる。従って、上部支柱片17bと下部支柱片17aとの干渉及び両端位置の支柱17と梁材16との干渉が避けられる。
【0027】
このとき、
図6,
図11及び
図12に示すように、連結リンク28が設けられた中央部の支柱17及びその両側の支柱17において、下部支柱片17aと上部支柱片17bとの分離位置が支柱17の長さ方向において相違されている。従って、リンク軸27の位置が支柱17の長さ方向において異なっている。このため、4箇所の連結リンク28と下部支柱片17a及び上部支柱片17bとは全体として四節リンクを構成する。従って、上部枠部材15bはリンク軸27を中心に回動して傾くことが抑制されて、下部枠部材15aの側面(
図3及び
図4における左右方向の面)に対してほぼ平行な面内に位置した状態で回動される。さらに、連結リンク28が左右に離れたところに位置しているため、上部枠部材15bが左右に傾くことも抑制される。
【0028】
そして、
図8及び
図9に示すように、増し材18aを有する4基の支持枠15と、増し材18aを有しない1基の支持枠15とをトラックTRの荷台L上で上下方向に整列状態で重ねる。この場合、増し材18aを有しない支持枠15が下端に位置される。そして、梁材16の両端間,支持枠15の両端近傍間,下部支柱片17a間を
図10(b)~(e)に示す連結スペーサ31,32,33によって相互に連結固定する。なお、これらの連結スペーサ31,32,33は、支持枠15を構成する各部材の大きさの相違等に対応するために、固定のためのボルトが通される孔35を同ボルト数より多く形成している。
【0029】
以上のようにすれば、複数の支持枠15が積層固定された
図8及び
図9に示す支持枠ユニット36が構成される。この場合、連結スペーサ31,32,33によって上下の各支持枠15間に間隔が形成される。これによって、H型鋼のウェブ22上の連結金具26と、重ねられた他の部材との間の干渉が避けられる。各支持枠15間の間隔は、各種部品等の収容スペースとして利用できる。
【0030】
そして、この支持枠ユニット36は、トラックTRの荷台Lに載せられた状態において、図示しないワイヤによって荷台Lに括り付けられて、この状態で搬送される。
支持枠ユニット36を積載したトラックTRはトンネルTN内の施工現場に進入する。そして、支持枠15は、荷解きされるとともに、必要な部分の連結スペーサ31,32,33間の連結が解除される。これによって、支持枠15が1基ずつ、または、連結状態を維持された2基あるいは3基ずつ型枠装置11の打設予定位置に隣接して設定された作業エリアの地面Sに降ろされて、仮置きされる。仮置きされた支持枠15は、仮置き状態から崩れないように、再度連結スペーサ31,32,33を介して連結される。この場合、増し材18用の連結スペーサ34は連結状態に維持される。
【0031】
その後、前記作業エリア内において、連結スペーサ31,32,33間の連結を解除することによって、支持枠15が他の支持枠15から離されて、地面S上に置かれる。そして、上部枠部材15bが下部枠部材15aに対して側面が一平面図上において連続するように、回動される。この場合、
図13(a)~
図13(d)から明らかなように、下部支柱片17aと上部支柱片17bとの干渉及び両端位置の支柱17と梁材16とのが回避される。そして、上部枠部材15bが下部枠部材15aに対して一平面図上において連続した状態において、上部支柱片17bの端面が下部支柱片17aの端面に接合するとともに、両端位置の支柱17の端面が梁材16の上面に接合する。よって、この接合部間がボルトによって固定される。以上のようにして、支持枠15が組み立てられる。
【0032】
なお、以上の場合においても、
図11及び
図12に示すように、四節リンクの作用によって、上部枠部材15bが傾くことなく、下部枠部材15aに対して側面が平行状態で回動される。また、連結リンク28が左右に離れているため、上部枠部材15bの左右おける傾きが回避される。
【0033】
次いで、
図5に示すように、支持枠15の下側両端部に脚部材14が固定されて、支持架台13となる。その後、
図3に示すように、支持架台13は、あらかじめ設置された型枠装置11のベース基枠12上に組み付けられる。そして、支持架台13上に各種の部材(図示しない)や側部骨組み材19,下部骨組み材20が組み付けられる。
図4に示すように、増し材18aは、連結スペーサ34を外された後に、支持架台13上の図示しない横材上において移動される。そして、
図1及び
図2に示すように、頂部骨組み材18,側部骨組み材19及び下部骨組み材20上に面板21が貼り付けられる。このようにして、型枠装置11の構築が終了する。そして、トンネルTNの内周面と型枠装置11との間に覆工コンクリートCが打設される。
【0034】
型枠装置11の解体は、前記構築手順と逆の手順で実行される。
〈実施形態の効果〉
本実施形態においては、以下の効果がある。
【0035】
(1)
図6に示すとともに、
図12から明らかなように、支持枠15の上部枠部材15bを下部枠部材15a上に重ねることによって、支持枠15の上下幅を狭くできて、コンパクトな状態になる。このため、支持枠15のトラック荷台Lに対する積み下ろしが容易になる。そして、
図8及び
図9から明らかなように、複数の支持枠15が整列状態で重ねられた支持枠ユニット36をトラックTRの荷台Lに載せて搬送できる。従って、支持枠15を個々の部材に分解して搬送する必要がないため、多数の部材の結束等が不要になる。
【0036】
(2)
図8及び
図9に示すように、複数の支持枠15を連結スペーサ31~34により整列状態を維持しつつ相互間隔をおいて積層できる。このため、支持枠15の搬送中における位置ずれや、支持枠15どうしの擦過による支持枠15の損傷等を回避できる。
【0037】
(3)そして、トンネルTNの建設現場においては、上部枠部材15bを連結リンク28を介して回動して、その上部枠部材15bを下部枠部材15aに対して固定するだけでよい。このような支持枠15の構築方法においては、トンネル建設現場において、分解状態の支持枠15の個々の構成部材をトンネルTNの建設現場に降ろして、仮置きエリアに並べた上で、その場で支持枠15の煩雑な組付け作業を行う必要はない。よって、支持枠15の組付けのために、トンネルTN内の地面Sを占拠する時間を大幅に短縮することができる。言い換えれば、トンネルTN内において、トラック等の車両通行を阻害したり、支持枠15以外の型枠装置11の構成部材の取り扱いを阻害したりする時間を短くできる。このため、トンネルTNの建設における型枠装置11の構築及び解体の工期を短縮できる。
【0038】
(4)支持枠15の下部枠部材15aと上部枠部材15bとを連結リンク28で一体的に連結しているため、支持枠15の積み下ろしにおける取り扱いが容易になる。
(5)
図11及び
図12に示すように、上部枠部材15bを、下部枠部材15aに対して平行状態を維持したまま、傾いたりすることなく、円滑に回動させることができる。よって、上部枠部材15bを下部枠部材15aに重ねたり、重ねた状態から同一平面上で連続させたりする作業を容易に行うことができる。
【0039】
(6)連結リンク28を支柱17の延長方向に対して傾斜させたことによって下部枠部材15aに対する上部枠部材15bの回動において、両者間の干渉を避けることができる。また、下部枠部材15aに対して上部枠部材15bを一平面上に配置したときには、下部支柱片17aに対して上部支柱片17bを自然に接合できるとともに、梁材16に対して両端位置の支柱17を自然に接合できる。このため、下部枠部材15aと上部枠部材15bとの位置関係を適正にできるとともに、ボルトによる固定が容易なものとなる。
【0040】
(変更例)
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化することもできる。また、実施形態及び以下の変更例は、発明の範囲内で互いに組み合わせることもできる。
【0041】
・実施形態において、連結リンク28を設けることなく、下部枠部材15aと上部枠部材15bとを分離するのみとする。従って、下部枠部材15a及び上部枠部材15bは別々にユニット化される。
【0042】
・両端位置の支柱17の左または右の側面と梁材16の端面との間に、前記実施形態と同様な傾斜状態で連結リンク28を設けること。
・支柱17を3箇所以上で分離して、各分離位置に連結リンク28を設けること。
【0043】
・下部枠部材15aと上部枠部材15bとの分離位置を両端位置の支柱を含む全支柱17に設けること。
・下部枠部材15aと上部枠部材15bとの分離位置を全支柱17と梁材16との間の位置とすること。この場合、連結リンク28は、両端位置の支柱17と梁材16の両端面との間に設け、他の位置には設けないようにすることが好ましい。
【0044】
(他の技術的思想)
前記両実施形態及び変更例から把握される技術的思想は以下の通りである。
梁材と、その梁材上に同梁材の延長方向に沿って立てられた複数の支柱と、それらの支柱の上端間に架設され、コンクリート成形用の面板を支持するための骨組み材とを備え、その支持枠を前記梁材側の下部枠部材と、前記骨組み材側の上部枠部材とに分離したコンクリート型枠装置の支持枠において、前記下部枠部材と上部枠部材とをそれらの側面において重ねるとともに、上下の前記支持枠間を連結スペーサによって相互間隔をおいて固定し、上部枠部材を下部枠部材上に重ねた状態で複数の支持枠を重ねてユニット化し、そのユニットをトラックの荷台に積載して搬送するコンクリート型枠装置の支持枠の搬送方法。
【0045】
このようにすれば、支持枠の搬送中における位置ずれや、支持枠どうしの擦過による損傷等を回避できる。
【符号の説明】
【0046】
11…コンクリート型枠装置
13…支持架台
15…支持枠
15a…下部枠部材
15b…上部枠部材
16…梁材
17…支柱
17a…下部支柱片
17b…上部支柱片
18…頂部骨組み材
21…面板
27…リンク軸
28…連結リンク
31…連結スペーサ
32…連結スペーサ
33…連結スペーサ
34…連結スペーサ
36…支持枠ユニット