IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-表示装置 図1
  • 特開-表示装置 図2
  • 特開-表示装置 図3
  • 特開-表示装置 図4
  • 特開-表示装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168351
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20221031BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20221031BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
B60R11/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073726
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】萩原 充紀
【テーマコード(参考)】
2H199
3D020
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA20
2H199DA29
2H199DA42
2H199DA43
3D020BA04
3D020BC03
3D020BD05
3D344AA08
3D344AA21
3D344AA27
3D344AC24
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】表示画像の視認性を向上できる表示装置を提供する。
【解決手段】視認者に視認させる画像に係る表示光2を出射する表示ユニットと、表示光2が投影される投影面8aと配置箇所に固定される固定面8bとを有し、投影された表示光2を反射しユーザに視認させる投影部8と、を備える表示装置であって、投影部8は、S偏光よりもP偏光の反射率の高い反射偏光子層43と、反射偏光子層43よりも固定面8b側に配置される遮光層42と、配置箇所に固定される固定層41と、を有する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認者に視認させる画像に係る表示光を出射する表示ユニットと、
前記表示光が投影される投影面と配置箇所に固定される固定面とを有し、投影された前記表示光を反射しユーザに視認させる投影部と、を備える表示装置であって、
前記投影部は、
S偏光よりもP偏光の反射率の高い反射偏光子層と、
前記反射偏光子層よりも前記固定面側に配置される遮光層と、
前記配置箇所に固定される固定層と、を有する、表示装置。
【請求項2】
前記配置箇所は、透光領域及び周縁部の少なくとも一部に形成される遮光領域を有する車両のウインドシールドのうち、前記遮光領域を含む、請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記投影部の外縁の少なくとも一部は、前記透光領域と前記遮光領域との境界よりも前記透光領域側に位置する、請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記遮光層の外縁の少なくとも一部は、遮光から透光になるようにグラデーションが形成される、請求項2記載の表示装置。
【請求項5】
前記反射偏光子層は、前記表示光の入射角が55度から60度において、前記P偏光の反射率を20%以上、前記S偏光の反射率を10%以下有する、請求項1記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両等に搭載される表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイは、車両に搭載され、運転者に運転に必要な情報等の種々の情報をウインドシールド等の投影先に投影し、ユーザに虚像を視認させる。今日、情報量の増加や情報の種類の多様化に伴い、ユーザへ提供する画像の表示態様も多様化している。例えば、特許文献1には、ウインドシールドのガラスの間に設けられる黒いセラミック塗装部分に表示部の光を反射表示させるヘッドアップディスプレイ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-047021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
情報の表示には、車両の種々の箇所を用いることができるが、表示箇所が表示光の投影、反射に適しているとは限らない。例えば、上述した黒いセラミック塗装部分が光源と対面する場合、この塗装部分は表面が粗く、表示光を乱反射させるため投影先に適さない。また、ウインドシールドのガラスが光源と対面する場合、複数の層からなるウインドシールドに多重反射し、二重像が生じる虞があり、やはり投影先に適さない。特に、ユーザがS偏光を遮光する偏光サングラスを着用している場合、反射面におけるP偏光の反射率を増加させることにより視認性が向上する。しかしながら、ウインドシールドがP偏光に対する反射率が低い場合には、上述した要因に加えて、やはり投影先に適さない。
【0005】
本開示はこのような事情を考慮してなされたもので、表示画像の視認性を向上できる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の表示装置は、上述した課題を解決するために、視認者に視認させる画像に係る表示光を出射する表示ユニットと、前記表示光が投影される投影面と配置箇所に固定される固定面とを有し、投影された前記表示光を反射しユーザに視認させる投影部と、を備える表示装置であって、前記投影部は、S偏光よりもP偏光の反射率の高い反射偏光子層と、前記反射偏光子層よりも前記固定面側に配置される遮光層と、前記配置箇所に固定される固定層と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の表示装置においては、表示画像の視認性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の表示装置の実施形態であって、自動車に搭載された表示装置を示す説明図。
図2】表示装置の表示ユニットの構造を説明するための断面図。
図3】ウインドシールド及びウインドシールドに固定された投影部の略上下方向に沿う断面図。
図4】ウインドシールド及びウインドシールドに固定された投影部を後方から見た説明図。
図5】投影部のグラデーションの一例を示すための投影部及びウインドシールドを後方から見た説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の表示装置の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本開示の表示装置は、例えば自動車や二輪車等の車両や、船舶、農業機械、建設機械に搭載される表示装置に適用することができる。表示装置は、例えば、光源側が搭載先のインストルメントパネル内に配置され、投影、反射側がウインドシールドに配置され、虚像を表示し、視認者に視認させる。本実施形態においては、表示装置の表示ユニットが搭載先としての自動車のインストルメントパネル内に配置され、投影部がウインドシールドの車内側に配置される例を用いて説明する。
【0010】
図1は、本開示の表示装置1の実施形態であって、自動車に搭載された表示装置1を示す説明図である。
【0011】
図2は、表示装置1の表示ユニット7の構造を説明するための断面図である。
【0012】
図3は、ウインドシールド3及びウインドシールド3に固定された投影部8の略上下方向に沿う断面図である。
【0013】
図4は、ウインドシールド3及びウインドシールド3に固定された投影部8を後方(運転者4の方)から見た説明図である。
【0014】
表示装置1は、いわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD(Head Up Display))であり、ウインドシールド3の遮光領域3aに主に固定される投影部8に表示光2を投影し、自動車の運転者4(視認者)方向に反射させる。表示装置1は、特に、ウインドシールド3に形成される遮光領域3aに表示光2を投影、反射し、運転者4に視認させる。
【0015】
ウインドシールド3は、図3に示すように、2枚の透光性のガラス9aと、その周縁部の少なくとも一部に形成される遮蔽層9bと、を有する。遮蔽層9bは、黒セラミックス等からなる黒色等の遮光色を形成する部分である。遮蔽層9bは、ウインドシールド3の外縁に形成される。遮蔽層9bは、ウインドシールド3を自動車に固定する接着剤の太陽光による劣化の防止や、接着剤の隠蔽、意匠性の向上等を目的に形成される。ウインドシールド3においては、遮蔽層9bが形成される部分が遮光領域3aとなり、遮光領域3a以外の部分が、透光領域3bとなる。なお、遮蔽層9bは、ウインドシールド3を形成する2枚のガラス9aの間に形成されてもよいし、車内側のガラス9aの車内側の面に形成されてもよい。
【0016】
表示装置1は、表示ユニット7と、投影部8と、を有する。
【0017】
表示ユニット7は、視認者に視認させる画像に係る表示光2を出射する。表示ユニット7は、ケース10と、保護カバー20と、表示部30と、を有する。
【0018】
ケース10は、表示ユニット7を支持し、収容する。ケース10は、例えば遮光性を有する合成樹脂(例えば黒色のポリプロピレン)からなる。ケース10は、遮光領域3aに対面する部分に、表示光2を通過させる開口11を有する。ケース10は、インストルメントパネル5内に設けられた空間に配置されるための、取付構造(図示せず)も有する。
【0019】
保護カバー20は、透光性を有する合成樹脂(例えば無機ガラス、ポリカーボネート樹脂、PMMA樹脂)からなる板状部材である。保護カバー20は、ケース10の開口11を覆うことにより、ケース10の内部の表示部30を水分や塵埃等から保護する。
【0020】
表示部30は、表示パネル31と、バックライトユニット32と、を有する。
【0021】
表示パネル31は、表示部30のうち前面側に配置される。表示パネル31は、例えばTFT(Thin Film Transistor)方式の液晶表示パネルである。表示パネル31は、液晶層を封入する一対のガラス基板を有する。一対のガラス基板には、ITO(Indium Tin Oxide)等により透明電極が形成される。また、表示パネル31は、一対のガラス基板を挟み込むように配置された一対の偏光板(偏光フィルタ)を有する。
【0022】
表示パネル31は、FPC(Flexible Printed Circuits、図示せず)を介して、表示ユニット7とは別途設けられる回路基板(図示せず)に接続される。表示パネル31は、回路基板のグラフィックコントローラ等の制御部により制御されることにより、透明電極を介して液晶層に駆動電圧が印加される。液晶層は、液晶分子の配向が制御され個々の画素の透過率を変化させる。表示パネル31は、オプティカルボンディング層36を介して、保護カバー20に固定される。オプティカルボンディング層36は、透明な合成樹脂(例えばシリコーン系、ウレタン系、又はアクリル系樹脂)からなる。
【0023】
バックライトユニット32は、表示パネル31の後方に配置される。バックライトユニット32は、光源基板33と、光学シート34と、を有する。光源基板33は、複数のLED(Light Emitting Diode)35を有する。光源基板33は、FPCを介して上述した回路基板と接続される。LED35は、駆動電流が供給されると、光を出射する。光学シート34は、例えば光を拡散するプリズムシート等である。LED35から出射された光は、光学シート34を経て、表示パネル31を照明する。これにより、表示部30は、視認者に視認させる画像に係る表示光2を出射する。
【0024】
投影部8は、複数のフィルムが積層されたフィルム状部材であり、運転者4から見て遮光領域3aに重なる領域に貼り付けられることにより、表示ユニット7と対になる投影部8として機能する。投影部8は、投影された表示光2を反射しユーザ(運転者4)に視認させる。投影部8は、図3に示すように、投影面8aと、固定面8bと、を有する。投影面8aは、表示ユニット7と対面する面であり、表示光2が反射及び投影される面である。固定面8bは、投影面8aと逆の面であり、配置箇所(後述)に固定される面である。投影部8は、固定面8bから投影面8aにかけて、固定層41と、遮光層42と、反射偏光子層43と、透明保護層44と、を有する。
【0025】
固定層41は、配置箇所としてのウインドシールド3に固定される層であり、例えば、投影部8を固定するため所要の粘着材料からなる。
【0026】
遮光層42は、反射偏光子層43の固定面8b側の面に配置される。遮光層42は、反射偏光子層43に対して、遮光性を有するインク(例えば黒インク)で印刷されることにより形成される、印刷層である。遮光層42は、例えば遮光領域3aに近似の色あいで形成されることにより、遮光領域3aと遮光層42とを見た目上一体化させることができる。遮光層42は、反射偏光子層43を透過する光を後段で多重に反射させないことで、反射偏光子層43で反射する光との二重像が形成されてしまうことを防止する。
【0027】
遮光層42は、投影部8の、遮光領域3aの境界と略平行になる上縁8c(外縁の少なくとも一部)が、遮光から透光に徐々に遷移するグラデーションが形成される。ここで、図5は、投影部8のグラデーションの一例を示すための投影部8及びウインドシールド3を後方から見た説明図である。ウインドシールド3の遮光領域3aと透光領域3bの境界においては、遮光領域3aが透光領域3bに徐々に遷移していくように、遮光領域3aの上縁3cに徐々に遮光率を低下させる、ドット形状のグラデーション印刷が施されている。投影部8においても同様に、徐々に上縁8cの遮光率を低下させるよう、遮光層42にはドット形状のグラデーション印刷が施されている。これにより、遮光領域3aの上縁3cのグラデーション印刷と相俟って、投影部8の上縁3cが目立つことがないようになっている。
【0028】
反射偏光子層43は、S偏光よりもP偏光の反射率の高い、例えば偏光制御可能な多層薄膜フィルムからなる層である。反射偏光子層43は、表示ユニット7とウインドシールド3との配置から設定される表示光2の入射角が55度から60度において、P偏光の反射率を20%以上、S偏光の反射率を10%以下有するように設計されている。これにより、ユーザがS偏光を遮光する偏光サングラスを着用している場合、投影部8におけるP偏光の反射率を増加させることにより視認性を向上させるためである。
【0029】
透明保護層44は、反射偏光子層43への傷等の形成を防止し、反射偏光子層43の機能低下を防止することができる、所要の材料(例えばPMMA等)からなる。透明保護層44は、傷防止の他に、例えば表面反射の防止や防曇の機能を有することが好ましい。
【0030】
投影部8の配置箇所は、表示光2が投影される遮光領域3aのみであってもよいし、投影される領域以外の遮光領域3aも含んでもよい。例えば、投影部8が表示光2が投影される遮光領域3aにのみ貼り付けられる場合には、投影部8を必要な面積だけ準備すればよいため、材料に係る製造コストを低減できる。また、投影部8の外縁の遮光層42と反射偏光子層43の間に遮光層42の色に対して識別可能な(コントラストを有する)色(例えば白やグレー等)のインクで印刷形成により線を形成し、投影部8を囲うことにより、ユーザに対して表示装置1の表示領域を認識させることができる。
【0031】
投影部8が、表示光2が投影される領域以外の遮光領域3aにも貼り付けられる場合には、遮光領域3aと投影部8との境界が目立つことがなくなり、ウインドシールド3の外観性を損なわない。また、遮光領域3aにウインドシールド3の防曇のための熱線がユーザから視認可能に配置されている場合には、その熱線を覆うように投影部8が配置されることにより、熱線を遮蔽する作用も有することができる。
【0032】
また、投影部8が配置される範囲としての配置箇所には、遮光領域3a近傍の透光領域3bを含んでいてもよい。具体的には、投影部8の上縁8c(の少なくとも一部)は、透光領域3bと遮光領域3aとの境界よりも透光領域3b側に位置していてもよい。投影部8の上縁8cが遮光領域3aに位置する場合には、上縁8cが遮光領域3a上で視認され、遮光領域3aの上縁3cと投影部8の上縁8cとが二重線をなし、外観性が損なわれる虞がある。これに対し、投影部8の上縁8cが遮光領域3aの上縁3cよりも透光領域3b側に位置する場合には、遮光領域3aの上縁3cが投影部8により覆われ視認されることがないため、外観性を維持できる。
【0033】
また、遮光層42の上縁8cにドット印刷でグラデーションが形成される場合には、遮光層42以外の他の層(固定層41、反射偏光子層43、透明保護層44)もドットの形状に沿って上縁8cをなすことにより、透光領域3bにおいて投影部8の上縁8cを目立つことがないようにすることができる。
【0034】
このような表示装置1は、偏光制御可能な反射偏光子層43、及びその後段側に配置される遮光層42を有する投影部8を有することにより、ウインドシールド3に直接表示光2を投影、反射させる場合に比べて、表示画像の視認性を向上できる。すなわち、投影部8を有することにより、ユーザの状態(偏光サングラス着用の有無)や、ウインドシールド3の状態(表示光2の投影先となる面の素材や状態)によらずに表示光2をユーザに視認させることができる。また、遮光層42を有することにより、その後段の層やウインドシールド3において反射偏光子層43を透過した表示光2が反射することを抑制できる。
【0035】
また、既存のウインドシールド3に投影部8を貼り付けることに対して、投影部8の外縁が視認されて外観性が低減する虞があるが、上縁8cの遮光層42にグラデーションを形成したり、透光領域3b及び遮光領域3aと投影部8との配置関係を考慮したりすることで、外観性を維持できる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0037】
例えば、ウインドシールド3に対する投影部8の厚さの段差を解消するため、投影部8の配置箇所に対応するウインドシールド3に投影部8の厚さと同等の凹みを設け、例えば、ウインドシールド3の透光領域3bと投影部8の投影面8aを面一となるように形成してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 表示装置
2 表示光
3 ウインドシールド
3a 遮光領域
3b 透光領域
3c 上縁
4 運転者
5 インストルメントパネル
7 表示ユニット
8 投影部
8a 投影面
8b 固定面
8c 上縁
9a ガラス
9b 遮蔽層
10 ケース
11 開口
20 保護カバー
30 表示部
31 表示パネル
32 バックライトユニット
33 光源基板
34 光学シート
35 LED
36 オプティカルボンディング層
41 固定層
42 遮光層
43 反射偏光子層
44 透明保護層
図1
図2
図3
図4
図5