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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168369
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】読取装置及び画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/401 20060101AFI20221031BHJP
   H04N 1/195 20060101ALI20221031BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20221031BHJP
   H04N 1/10 20060101ALI20221031BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
H04N1/401
H04N1/195
H04N1/12 Z
H04N1/10
G06T1/00 460E
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073755
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 倫大
【テーマコード(参考)】
5B047
5C072
5C077
【Fターム(参考)】
5B047AA01
5B047BA01
5B047BA02
5B047BB04
5B047BC05
5B047BC09
5B047BC11
5B047CB04
5B047DA06
5B047DC07
5C072AA01
5C072BA03
5C072CA02
5C072DA02
5C072DA04
5C072EA08
5C072MA01
5C072NA01
5C072RA15
5C072UA11
5C072UA13
5C077LL04
5C077LL18
5C077MM03
5C077MM04
5C077PP02
5C077PP68
5C077PQ18
(57)【要約】
【課題】エリアセンサーを用いて生産性の向上を図りつつ読み取って得られた画像の輝度の再現性もより向上することが可能な読取装置を提供する。
【解決手段】複数の受光素子を備えるエリアセンサー12、原稿に対して、ランプを副走査方向に移動させながら、エリアセンサー12により繰り返し読み取りを行って、副走査方向に一部重複した領域を含む複数の読取画像を得る走査制御部、得られた複数の読取画像から、原稿上の所定位置を重複して含んでいる複数の読取画像を選択する選択制御部64及びセレクタ321、及び、選択された複数の読取画像の、原稿上の所定位置に相当する画素の輝度値を合成して、当該所定位置の最終輝度値を算出する加算部323を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿面を読み取って画像を生成する読取装置であって、
複数の受光素子を備えるエリアセンサーと、
原稿に対して光源又はエリアセンサーを副走査方向に相対的に移動させながら、前記エリアセンサーにより繰り返し読み取りを行って、副走査方向に一部重複した領域を含む複数の読取画像を得る走査制御手段と、
得られた複数の読取画像から、原稿上の所定位置を重複して含んでいる複数の読取画像を選択する選択手段と、
選択された複数の読取画像の、原稿上の所定位置に相当する画素の輝度値を合成して、当該所定位置の最終輝度値を算出する算出手段と
を備えることを特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記算出手段は、選択された複数の読取画像の、原稿上の所定位置に相当する画素の輝度値を積算し、積算値に基づいて、当該所定位置の最終輝度値を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記積算値に基づいて、最終輝度値が飽和閾値を超えないように、当該所定位置の最終輝度値を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の読取装置。
【請求項4】
前記選択手段は、選択された複数の読取画像において、原稿上の所定位置に相当する画素の位置を、前記エリアセンサーによる読取タイミング及び前記エリアセンサーによる読取解像度又は前記エリアセンサーの副走査方向の相対的な移動速度に基づいて、決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項5】
さらに、利用者により設定された原稿の読み取り条件に基づいて、前記選択手段による読取画像の選択数を決定する決定手段を備え、
前記選択手段は、決定した選択数の読取画像を選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項6】
前記読み取り条件は、原稿を読み取る場合の読取解像度である
ことを特徴とする請求項5に記載の読取装置。
【請求項7】
前記決定手段は、読取解像度と選択数とを対応づけたテーブルを記憶しており、前記テーブルから、設定された読取解像度に対応する選択数を読み出すことにより、選択数を決定する
ことを特徴とする請求項6に記載の読取装置。
【請求項8】
前記選択手段は、得られた複数の読取画像から、原稿上の所定ライン位置を重複して含んでいる複数の読取画像を選択し、
前記算出手段は、選択された複数の読取画像の、原稿上の所定ライン位置に相当するライン画像上の画素の輝度値を合成して、当該所定ライン位置の最終輝度値を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項9】
前記走査制御手段は、
原稿に対して、光源又はエリアセンサーを副走査方向に相対的に移動させる駆動制御部と、
読取走査時の読取解像度として、第1解像度とこれよりも低い第2解像度のいずれかの指示を取得する取得部と、
第1解像度を取得した場合、前記移動の速度が第1速度になるよう前記駆動部に指示するとともに、前記副走査方向に並ぶ複数の受光素子のうち、前記第1速度に対応する第1ライン間隔を有する第1の個数の受光素子のそれぞれから検出結果を出力させる第1制御と、
第2解像度を取得した場合、前記移動の速度が前記第1速度よりも速い第2速度になるよう前記駆動部に指示するとともに、前記副走査方向に並ぶ複数の受光素子のうち、前記第1ライン間隔よりも副走査方向の間隔が広い、前記第2速度に対応する第2ライン間隔を有し、かつ、前記第1の個数よりも大きい第2の個数の受光素子のそれぞれから検出結果を出力させる第2制御とを行う受光制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項10】
各受光素子は、ベイヤー配列により配列された赤色受光素子、青色受光素子並びに第1及び第2緑色受光素子からなり、
エリアセンサーにより、各読取画像として、1個の赤色画像、1個の青色画像並びに第1及び第2緑色画像が得られ、
前記選択手段は、得られた複数の赤色画像から、原稿上の所定位置を重複して含む複数の赤色画像を選択し、得られた複数の青色画像から、原稿上の所定位置を重複して含む複数の青色画像を選択し、得られた複数の第1緑色画像から、原稿上の所定位置を重複して含む複数の第1緑色画像を選択し、得られた複数の第2緑色画像から、原稿上の所定位置を重複して含む複数の第2緑色画像を選択し、
前記算出手段は、選択された複数の赤色画像について、原稿上の所定位置に相当する赤色画素の輝度値を合成して、当該所定位置の赤色画素の最終輝度値を算出し、選択された複数の青色画像について、原稿の所定位置に相当する青色画素の輝度値を合成して、当該所定位置の青色画素の最終輝度値を算出し、選択された複数の第1及び第2緑色画像について、原稿上の所定位置に相当する緑色画素の輝度値を合成して、当該所定位置の緑色画素の最終輝度値を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項11】
モノクロの読み取りを行なう場合、
前記選択手段は、得られた一組の複数の赤色画像、一組の複数の青色画像、一組の複数の第1緑色画像及び一組の複数の第2緑色画像のうち、少なくとも一組の複数の色画像から、原稿上の所定位置を重複して含む複数の色画像を選択し、
前記算出手段は、選択された複数の色画像について、原稿上の所定位置に相当する画素の輝度値を合成して、当該所定位置の最終輝度値を算出する
ことを特徴とする請求項10に記載の読取装置。
【請求項12】
前記走査制御手段は、読取走査時の読取解像度として、第1解像度とこれよりも低い第2解像度のいずれかの指示を取得する取得部と、
第1解像度を取得した場合、前記複数の受光素子から出力された複数の検出値のうち、副走査方向に第1の幅を有する範囲内に含まれる検出値を有効とし、
第2解像度を取得した場合、前記複数の受光素子から出力された複数の検出値のうち、副走査方向に前記第1の幅より広い第2の幅を有する範囲内に含まれる検出値を有効とする制御を行なう受光制御部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項13】
前記取得部は、読取走査時の読取解像度として、さらに、第2解像度よりも低い第3解像度の指示を取得し、
前記受光制御部は、第2解像度を取得した場合、単位時間当たり、副走査方向に一部重複したm個の領域を含むm個の読取画像を得るように制御し、
第3解像度を取得した場合、単位時間当たり、副走査方向に一部重複したm個より多いn個の領域を含むn個の読取画像を得るように制御する
ことを特徴とする請求項12に記載の読取装置。
【請求項14】
前記走査制御手段は、光源を静止させた状態で搬送中の原稿を読み取るシートスルー方式、又は、原稿を静止させた状態で光源又はエリアセンサーを移動させて原稿を読み取るスキャナー移動方式により、走査制御し、
シートスルー方式の場合、選択された複数の読取画像の間において、原稿上の所定位置に相当する画素の位置は、読取画像の副走査方向、第1端側から第2端側に遷移し、
スキャナー移動方式の場合、選択された複数の読取画像の間において、原稿上の所定位置に相当する画素の位置は、読取画像の副走査方向、第2端側から第1端側に遷移し、
前記算出手段は、
シートスルー方式の場合、前記複数の読取画像の間において、第1端側から第2端側に遷移する原稿上の所定位置に相当する画素を合成し、
スキャナー移動方式の場合、前記複数の読取画像の間において、第2端側から第1端側に遷移する原稿上の所定位置に相当する画素を合成する
ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項15】
さらに、
エリアセンサーの劣化の程度を指標する指標値を取得する取得部を備え、
取得された指標値が閾値以上の場合、前記選択手段は、閾値未満の場合よりも、選択する読取画像の数を増やす
ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項16】
前記指標値は、エリアセンサーの累積使用時間又は原稿の累積読取回数である
ことを特徴とする請求項15に記載の読取装置。
【請求項17】
前記走査制御手段は、光源を静止させた状態で搬送中の原稿を読み取るシートスルー方式と、原稿を静止させた状態で光源又はエリアセンサーを移動させて原稿を読み取るスキャナー移動方式とを選択的に実行可能であり、
それぞれの方式は、読取周期ごとにエリアセンサーが読取可能な原稿の読取領域における副走査方向の幅の大きさが異なっており、
前記選択手段は、シートスルー方式とスキャナー移動方式のうち、前記読取領域の副走査方向の幅が小さい方の読取方式よりも、大きい方の読取方式の方について、選択する読取画像の数を増やす
ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項18】
請求項1~17に記載のいずれかの読取装置
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原稿の画像を読み取る読取装置及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナーなどの読取装置には、固定光学系の一つであるシートスルー方式や移動光学系の一つであるスキャナー移動方式などがある。いずれの方式でも、原稿の画像を光学的に読み取る読取素子として従来からCCD(Charge Coupled Device)ラインセンサーが用いられることが多かったが、一次元のセンサーであることから、原稿の先頭から後端までの全体に亘って原稿の画像を1本の走査ラインずつしか検出できないので、シートスルー方式における原稿の搬送速度やスキャナー移動方式における光学系の移動速度を高速化することができず、生産性の向上を図ることが困難であった。
【0003】
これに対し、ラインセンサーに代えてCCDやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのエリアセンサーを用いた読取装置が提案されている(特許文献1及び2)。エリアセンサーは、二次元のセンサーであり、原稿上における複数本の走査ラインを同時に読み取ることができる。このエリアセンサーを用いれば、ラインセンサーよりも原稿の搬送速度や光学系の移動速度の高速化を図ることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-171563号公報
【特許文献2】特開2011-135533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のエリアセンサーを用いても、原稿の搬送速度や光学系の移動速度をより高速化しようとするほど、原稿上における走査ラインごとにエリアセンサーの各受光素子に単位時間当たりに入射する、原稿からの反射光の受光量不足が顕著になる。
【0006】
受光量不足が顕著になるほど、例えば、原稿画像が白色のときでも受光素子の出力値が下がり、黒色のときの出力値との差が小さくなって、いわゆるダイナミックレンジが狭くなる。これにより、読み取って得られた原稿画像の明るさ(輝度)の再現性が低下するという問題がある。
【0007】
各受光素子の受光量不足を補うべく、各受光素子の出力信号をゲイン調整することも考えられるが、S/N比の低下を生じさせることから好ましくない。
【0008】
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、エリアセンサーを用いることによる読取処理の高速化と、読み取って得られた画像データの輝度値の再現性の向上が可能な読取装置及び画像処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本開示の一態様は、原稿面を読み取って画像を生成する読取装置であって、複数の受光素子を備えるエリアセンサーと、原稿に対して光源又はエリアセンサーを副走査方向に相対的に移動させながら、前記エリアセンサーにより繰り返し読み取りを行って、副走査方向に一部重複した領域を含む複数の読取画像を得る走査制御手段と、得られた複数の読取画像から、原稿上の所定位置を重複して含んでいる複数の読取画像を選択する選択手段と、選択された複数の読取画像の、原稿上の所定位置に相当する画素の輝度値を合成して、当該所定位置の最終輝度値を算出する算出手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記算出手段は、選択された複数の読取画像の、原稿上の所定位置に相当する画素の輝度値を積算し、積算値に基づいて、当該所定位置の最終輝度値を算出してもよい。
【0011】
ここで、前記算出手段は、前記積算値に基づいて、最終輝度値が飽和閾値を超えないように、当該所定位置の最終輝度値を算出してもよい。
【0012】
ここで、前記選択手段は、選択された複数の読取画像において、原稿上の所定位置に相当する画素の位置を、前記エリアセンサーによる読取タイミング及び前記エリアセンサーによる読取解像度又は前記エリアセンサーの副走査方向の相対的な移動速度に基づいて、決定してもよい。
【0013】
ここで、さらに、利用者により設定された原稿の読み取り条件に基づいて、前記選択手段による読取画像の選択数を決定する決定手段を備え、前記選択手段は、決定した選択数の読取画像を選択してもよい。
【0014】
ここで、前記読み取り条件は、原稿を読み取る場合の読取解像度である、としてもよい。
【0015】
ここで、前記決定手段は、読取解像度と選択数とを対応づけたテーブルを記憶しており、前記テーブルから、設定された読取解像度に対応する選択数を読み出すことにより、選択数を決定してもよい。
【0016】
ここで、前記選択手段は、得られた複数の読取画像から、原稿上の所定ライン位置を重複して含んでいる複数の読取画像を選択し、前記算出手段は、選択された複数の読取画像の、原稿上の所定ライン位置に相当するライン画像上の画素の輝度値を合成して、当該所定ライン位置の最終輝度値を算出してもよい。
【0017】
ここで、前記走査制御手段は、原稿に対して、光源又はエリアセンサーを副走査方向に相対的に移動させる駆動制御部と、読取走査時の読取解像度として、第1解像度とこれよりも低い第2解像度のいずれかの指示を取得する取得部と、第1解像度を取得した場合、前記移動の速度が第1速度になるよう前記駆動部に指示するとともに、前記副走査方向に並ぶ複数の受光素子のうち、前記第1速度に対応する第1ライン間隔を有する第1の個数の受光素子のそれぞれから検出結果を出力させる第1制御と、第2解像度を取得した場合、前記移動の速度が前記第1速度よりも速い第2速度になるよう前記駆動部に指示するとともに、前記副走査方向に並ぶ複数の受光素子のうち、前記第1ライン間隔よりも副走査方向の間隔が広い、前記第2速度に対応する第2ライン間隔を有し、かつ、前記第1の個数よりも大きい第2の個数の受光素子のそれぞれから検出結果を出力させる第2制御とを行う受光制御部と、を備える、としてもよい。
【0018】
ここで、各受光素子は、ベイヤー配列により配列された赤色受光素子、青色受光素子並びに第1及び第2緑色受光素子からなり、エリアセンサーにより、各読取画像として、1個の赤色画像、1個の青色画像並びに第1及び第2緑色画像が得られ、前記選択手段は、得られた複数の赤色画像から、原稿上の所定位置を重複して含む複数の赤色画像を選択し、得られた複数の青色画像から、原稿上の所定位置を重複して含む複数の青色画像を選択し、得られた複数の第1緑色画像から、原稿上の所定位置を重複して含む複数の第1緑色画像を選択し、得られた複数の第2緑色画像から、原稿上の所定位置を重複して含む複数の第2緑色画像を選択し、前記算出手段は、選択された複数の赤色画像について、原稿上の所定位置に相当する赤色画素の輝度値を合成して、当該所定位置の赤色画素の最終輝度値を算出し、選択された複数の青色画像について、原稿の所定位置に相当する青色画素の輝度値を合成して、当該所定位置の青色画素の最終輝度値を算出し、選択された複数の第1及び第2緑色画像について、原稿上の所定位置に相当する緑色画素の輝度値を合成して、当該所定位置の緑色画素の最終輝度値を算出してもよい。
【0019】
ここで、モノクロの読み取りを行なう場合、前記選択手段は、得られた一組の複数の赤色画像、一組の複数の青色画像、一組の複数の第1緑色画像及び一組の複数の第2緑色画像のうち、少なくとも一組の複数の色画像から、原稿上の所定位置を重複して含む複数の色画像を選択し、前記算出手段は、選択された複数の色画像について、原稿上の所定位置に相当する画素の輝度値を合成して、当該所定位置の最終輝度値を算出してもよい。
【0020】
ここで、前記走査制御手段は、読取走査時の読取解像度として、第1解像度とこれよりも低い第2解像度のいずれかの指示を取得する取得部と、第1解像度を取得した場合、前記複数の受光素子から出力された複数の検出値のうち、副走査方向に第1の幅を有する範囲内に含まれる検出値を有効とし、第2解像度を取得した場合、前記複数の受光素子から出力された複数の検出値のうち、副走査方向に前記第1の幅より広い第2の幅を有する範囲内に含まれる検出値を有効とする制御を行なう受光制御部とを備える、としてもよい。
【0021】
ここで、前記取得部は、読取走査時の読取解像度として、さらに、第2解像度よりも低い第3解像度の指示を取得し、前記受光制御部は、第2解像度を取得した場合、単位時間当たり、副走査方向に一部重複したm個の領域を含むm個の読取画像を得るように制御し、第3解像度を取得した場合、単位時間当たり、副走査方向に一部重複したm個より多いn個の領域を含むn個の読取画像を得るように制御してもよい。
【0022】
ここで、前記走査制御手段は、光源を静止させた状態で搬送中の原稿を読み取るシートスルー方式、又は、原稿を静止させた状態で光源又はエリアセンサーを移動させて原稿を読み取るスキャナー移動方式により、走査制御し、シートスルー方式の場合、選択された複数の読取画像の間において、原稿上の所定位置に相当する画素の位置は、読取画像の副走査方向、第1端側から第2端側に遷移し、スキャナー移動方式の場合、選択された複数の読取画像の間において、原稿上の所定位置に相当する画素の位置は、読取画像の副走査方向、第2端側から第1端側に遷移し、前記算出手段は、シートスルー方式の場合、前記複数の読取画像の間において、第1端側から第2端側に遷移する原稿上の所定位置に相当する画素を合成し、スキャナー移動方式の場合、前記複数の読取画像の間において、第2端側から第1端側に遷移する原稿上の所定位置に相当する画素を合成してもよい。
【0023】
ここで、さらに、エリアセンサーの劣化の程度を指標する指標値を取得する取得部を備え、取得された指標値が閾値以上の場合、前記選択手段は、閾値未満の場合よりも、選択する読取画像の数を増やす、としてもよい。
【0024】
ここで、前記指標値は、エリアセンサーの累積使用時間又は原稿の累積読取回数である、としてもよい。
【0025】
ここで、前記走査制御手段は、光源を静止させた状態で搬送中の原稿を読み取るシートスルー方式と、原稿を静止させた状態で光源又はエリアセンサーを移動させて原稿を読み取るスキャナー移動方式とを選択的に実行可能であり、それぞれの方式は、読取周期ごとにエリアセンサーが読取可能な原稿の読取領域における副走査方向の幅の大きさが異なっており、前記選択手段は、シートスルー方式とスキャナー移動方式のうち、前記読取領域の副走査方向の幅が小さい方の読取方式よりも、大きい方の読取方式の方について、選択する読取画像の数を増やす、としてもよい。
【0026】
また、本開示の別の態様は、上記のいずれかの読取装置を備えることを特徴とする画像処理装置であるとしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
上記のようにすれば、原稿上の同じ位置の画素を読取周期ごとにエリアセンサーで複数回に亘って検出した検出結果から画像データの輝度値を生成できるので、エリアセンサーを用いることによる読取処理の高速化を図りつつ、1個の検出値から輝度値を求める従来の構成よりも輝度値の再現性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施の形態に係るMFPの構成を示す概略図である。
図2】MFPに設けられたタッチパネルに表示されるメニュー画面のうち解像度選択画面だけを抜き出して示す概略平面図である。
図3】画像読取装置の概略構成を示す側面図である。
図4】ランプ11から発せられた光のうち原稿に当たって反射した反射光がミラー、集光レンズを通じてエリアセンサーの受光面に入射する様子を示す概略斜視図である。
図5】(a)は、エリアセンサーの受光面を模式的に示す概略平面図であり、(b)は、一つの受光部の構成を模式的に示す概略斜視図であり、(c)は、シャッターが開閉したときの様子を模式的に示す図である。
図6】原稿の読取位置を基準に搬送中の原稿に対するランプからの光の照射領域が時間の経過に伴って移動する様子を示す模式図である。
図7】(a)は、比較例を示す模式図であり、(b)は、実施例を示す模式図である。
図8】読取制御部の構成を示すブロック図である。
図9】解像度テーブルの内容例を示す図である。
図10】画像読取処理回路の構成を示すブロック図である。
図11】実施例1の複数のバンド領域のバンド幅画像及びエリアセンサーの受光面を示す模式図である。
図12】実施例1の複数のバンド領域のバンド幅画像の演算方法を示す。
図13】実施例2の解像度テーブルの内容例を示す図である。
図14】実施例2のエリアセンサーの受光面を示す模式図である。(a)は、600dpiの場合であり、(b)は、400dpiの場合である。
図15】(a)は、実施例1のエリアセンサーの受光面を示す模式図であり、(b)は、実施例3の複数のバンド領域のバンド幅画像及びエリアセンサーの受光面を示す模式図である。
図16】実施例4のエリアセンサーの受光面を示す模式図である。
図17】実施例5のスキャナー移動方式の場合の複数のバンド領域のバンド幅画像及びエリアセンサーの受光面を示す模式図である。
図18】実施例5のシートスルー方式の場合の複数のバンド領域のバンド幅画像及びエリアセンサーの受光面を示す模式図である。
図19】(a)は、シートスルー方式による読取領域を模式的に示す図であり、(b)は、スキャナー移動方式による読取領域を模式的に示す図である。
図20】実施例6の複数のバンド領域のバンド幅画像を示す模式図である。
図21】実施例6の複数のバンド領域のバンド幅画像の演算方法を示す。
図22】シートスルー方式による読取ジョブにおいて実行される読取処理の内容を示すフローチャートである。
図23】変形例に係る回数Nの更新処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1 実施の形態
以下、本開示に係る読取装置を備える画像形成装置の実施の形態を、多機能複合機(以下、「MFP(Multi-Function Peripheral)」という。)を例にして図面を参照しながら説明する。
【0030】
1.1 MFP9の全体構成
図1は、本実施の形態に係るMFP9の構成を示す概略図である。
【0031】
同図に示すように、MFP9(画像処理装置)は、画像読取装置1(読取装置)と、画像形成部2と、給紙部3と、操作部4と、全体制御部5を備え、原稿の画像を読み取る読取処理によって画像データを得る読取ジョブ、原稿の画像データに基づきシートに画像を形成するコピージョブなどを実行可能である。ここで、コピージョブは、読取ジョブと同じ読取処理を実行することにより原稿の画像データを得る。
【0032】
画像読取装置1は、読取処理を実行するものであり、固定光学系の一つであるシートスルー方式と移動光学系の一つであるスキャナー移動方式で原稿画像の読み取りが可能なように構成されている。ここで、シートスルー方式は、光学系を静止(固定)させた状態で、一定速度で搬送(移動)中の原稿を固定の読取位置で読み取る方式である。スキャナー移動方式は、原稿を静止させた状態で、原稿面からの反射光を読取素子に導くミラーを原稿に対して一定速度で移動させ、原稿面から読取素子までの光路長を常に一定に維持した状態で読み取る方式である。
【0033】
本実施の形態の画像読取装置1は、シートスルー方式において1枚の原稿の表(おもて)面と裏(うら)面の画像を1回の搬送中に順に読み取り可能な、いわゆる1パス両面画像読取装置である。以下、原稿Dのおもて面を第1面、第1面とは反対側のうら面を第2面という。
【0034】
シートスルー方式では、原稿の片面の画像だけを読み取る片面読取モードや両面の画像を読み取る両面読取モードなどをユーザーが選択することができる。シートスルー方式とスキャナー移動方式による読取処理の動作の詳細については後述する。
【0035】
画像形成部2は、コピージョブにおいて、画像読取装置1により読み取られた画像データに基づいてシートに画像を形成するものであり、中間転写ベルト22、作像部23Y、23M、23C、23K及び定着部29などを備えている。
【0036】
作像部23Y、23M、23C、23Kは、中間転写ベルト22に沿って配置されており、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する。作像部23Y~23Kは、何れも同様の構成を備えるので、作像部23Kについてのみ説明し、他の作像部23Y~23Cについては説明を省略する。
【0037】
作像部23Kは、感光体ドラム24K、帯電器25K、露光器26K、現像器27K及び一次転写ローラー28Kを備えている。感光体ドラム24Kは、帯電器25Kにより外周面が均一に帯電される。露光器26Kは、画像読取装置1で読み取られた画像データに基づく駆動信号により感光体ドラム24Kに向けて光ビームを発し、帯電された感光体ドラム24K表面を露光走査することにより感光体ドラム24Kに静電潜像を形成する。
【0038】
感光体ドラム24Kの外周面に形成された静電潜像は、現像器27KによりK色のトナーで現像され、一次転写ローラー28Kによりそのトナー像が中間転写ベルト22上に静電転写される。中間転写ベルト22上には、Y~Kの各色トナー像が重ねて転写され、カラーのトナー像が形成される。
【0039】
トナー像の形成動作と並行して、給紙部3は、内部に収容された複数の給紙カセット31のいずれか一つからシートSを1枚ずつ繰り出して、二次転写ローラー21が設けられた2次転写位置へ搬送する。二次転写ローラー21は、中間転写ベルト22上のトナー像を用紙S上に静電転写する。
【0040】
トナー像が転写されたシートSは、定着部29での加熱及び加圧によりトナー像が当該用紙Sに溶融、圧着された後、排出トレイ20a上に排出される。シートSに転写されることなく中間転写ベルト22上に残った残留トナーは、クリーナ20bにより除去される。
【0041】
操作部4は、ユーザーが操作し易い位置に設けられており、ユーザーからのジョブの実行指示、読取ジョブにおける片面読取モードや両面読取モードの選択や読取解像度の選択などの入力をタッチパネル4aに表示されるメニュー画面から受け付けて、受け付けた入力情報を全体制御部5に送る。
【0042】
図2は、タッチパネル4aに表示されるメニュー画面のうち解像度選択画面490だけを抜き出して示す概略平面図である。同図に示すように解像度選択画面490には、読取解像度として600、300、200dpi(dot per inch)を示す表示ボタン491、492、493が並設されている。ユーザーは、表示ボタン491~493のうちいずれかをタッチ入力することで、希望する読取解像度を選択することができる。同図の例では、600dpiを示す表示ボタン491が選択された様子を示している。
【0043】
なお、読取解像度と原稿の搬送速度とは、後述のように読取解像度が高い場合よりも低い場合の方が副走査方向の走査速度、例えば原稿の搬送速度が速くなるという関係があり、読取ジョブの生産性を優先する場合、低解像度が選択され、読取画像の画質を優先する場合、高解像度が選択される。
【0044】
全体制御部5は、画像読取装置1と画像形成部2と給紙部3を制御して、ユーザーからの入力情報に基づくジョブを実行する。
【0045】
1.2 画像読取装置1の構成
図3は、画像読取装置1の概略構成を示す側面図である。
【0046】
同図に示すように画像読取装置1は、上面にシートスルー用ガラス13及びプラテンガラス16が設けられた画像読取部10と、この画像読取部10の上方に設けられた自動原稿搬送部(ADF: Automatic Document Feeder)40と、読取制御部50(図8)を備えている。
【0047】
(1)画像読取部10の構成
画像読取部10は、光源のランプ11と第1ミラー15aを搭載する第1スライダー18と、第2ミラー15bと第3ミラー15cを搭載する第2スライダー19と、集光レンズ15eと、エリアセンサーの一例としてのカラーCCDエリアセンサー(以下、単に「エリアセンサー」という。)12を備える。
【0048】
<シートスルー方式>
画像読取部10は、シートスルー方式で原稿を読み取る場合には、自動原稿搬送部40により搬送される原稿Dがシートスルー用ガラス13の上を通過する際にその原稿Dの第1面(原稿Dの、シートスルー用ガラス13に対向する側の面)の画像を読み取る。
【0049】
具体的には、第1スライダー18をシートスルー用ガラス13の直下位置(シートスルーポジション)に移動させて静止させる。そして、ランプ11を点灯させ、シートスルー用ガラス13の上面を通過する原稿Dの第1面にランプ11からの光Lを照射させる。ランプ11からの光Lのうち、原稿Dの第1面で反射した反射光Lbは、第1ミラー15a、第2ミラー15b及び第3ミラー15cにより光路変更され、集光レンズ15eに集光されて、エリアセンサー12の受光面に入射される。ランプ11からの光Lが原稿Dの第1面に照射される位置151が原稿Dの第1面の画像を読み取る読取位置になり、原稿Dにおいて読取位置151に存する領域が読取領域になる。
【0050】
原稿Dの第1面において光Lが照射される領域とは、主走査方向(原稿の幅方向に相当)に長尺の帯状領域になる。具体的には、原稿の主走査方向一端から他端までの主走査方向長さ(例えば、A4サイズの原稿の場合に210mm)に、副走査方向(原稿の搬送方向に相当)長さα(例えば5mm程度)からなる帯状領域である。
【0051】
図4は、ランプ11からの光Lが原稿Dの第1面上で帯状の照射領域Db(斜線で示す)に当たって反射した反射光Lbがミラー15d(ここで、ミラー15dは、第1ミラー15a、第2ミラー15b及び第3ミラー15cを一つに概念化して示したもの)、集光レンズ15eを通じてエリアセンサー12の受光面120に入射する様子を示す概略斜視図である。
【0052】
同図に示すように集光レンズ15eの集光により、エリアセンサー12の受光面120上での反射光Lbのスポット形状が原稿Dの帯状の照射領域Dbを縮小した形状になる。この原稿D上における帯状の照射領域Dbが読取領域に相当する。
【0053】
図5(a)は、エリアセンサー12の受光面120を反射光Lbが入射する方向から見たときの概略模式平面図であり、一部を省略して示している。同図に示すようにエリアセンサー12の受光面120は、多数個の受光部121が主走査方向と副走査方向に沿って行列状に並ぶように設けられてなる。
【0054】
図5(b)は、受光部121の構成を模式的に示す概略斜視図である。同図に示すように受光部121は、その受光部が存する領域を、主走査方向に2分割、副走査方向に2分割、合計で4分割した部分領域に、R(赤)色のカラーフィルター12rを通過した反射光Lbが入射される1個の受光素子125rと、G(緑)色の2個のカラーフィルター12gを通過した反射光Lbが入射される2個の受光素子125gと、B(青)用のカラーフィルター12bを通過した反射光Lbが入射される1個の受光素子125bとが正方配列されてなる。このようなカラーフィルター12r、12g、12bの配列をベイヤー配列という。なお、G色については、2個の受光素子125gが正方配列において対角位置に配置され、主走査方向と副走査方向のそれぞれに一つの受光素子の分、ずれて配置されているので、G色は、R色とB色に対して実際には2倍の読取解像度を有することになる。以下では、読取解像度というときは、R色とB色を基準にした解像度をいう。また、受光素子125r、125g、125bを受光素子R、G、Bという。
【0055】
受光素子R、G、Bのそれぞれは、原稿からの反射光を受光したときの受光量、つまり入射した反射光の輝度(原稿画像の明るさ:光の強さ)に応じた大きさの電気信号、例えば電圧に変換したものを検出値として出力する光電変換素子であり、例えば受光量が大きくなるのに伴って出力電圧が高くなるという関係を有している。
【0056】
そして、図5(a)に示す例では、エリアセンサー12は、主走査方向に並ぶ複数、例えば5000個の受光部121が一つの受光素子列を構成し、この受光素子列が副走査方向に多数列(例えば百列~数百列程度)、並ぶように構成されており、同図ではその多数列のうちの30列を示している。
【0057】
一番目の受光素子列を201、2番目の受光素子列を202、3番目の受光素子列を203、・・・、最後の受光素子列を230というように連番の符号を付して、各受光素子列を区別する。なお、受光部と受光素子列のそれぞれの数は、読取解像度と原稿搬送速度との関係で装置ごとに決まるものであり、上記の数値に限られないことはいうまでもない。
【0058】
エリアセンサー12には、各受光部121に対して反射光Lbの入射光路を開閉するシャッター、ここでは液晶シャッターが設けられている。図5(c)は、シャッター129が開閉したときの様子を模式的に示す図である。
【0059】
シャッター129は、所定の読取周期(例えば数ミリ秒)で開閉を繰り返す。この読取周期は、読取解像度が最も高い(上記の例では600dpi)ときの読取処理に対応する周期として予め決められており、これよりも低い解像度のときでも、最も高い解像度のときと同じ読取周期が用いられる。
【0060】
それぞれの受光部121は、1周期の間で、シャッター129が開いている時間(開時間)に原稿からの反射光Lbを受光し、シャッター129が開から閉に切り替わり、次に開に切り替わるまでの時間(閉時間)内で、直前の開時間の間に受光した反射光Lbの光量に応じた電圧値を示す検出信号をR、G、B色ごとに出力した後、受光量を0にリセットすることを、1周期単位で繰り返す。
【0061】
このシャッター129の開閉を所定周期で繰り返すことにより、ランプ11の光Lが照射された原稿Dに対して読取領域(光Lの照射領域)ごとにその読取領域を副走査方向に移動しながらエリアセンサー12で読み取るという読取走査が可能になる。
【0062】
なお、シャッター129の開時間を長くしすぎると、読取対象の画素Pに対して副走査方向の隣に位置する画素Pにも光Lの一部が照射され、読取対象の画素Pとその隣の画素Pの両方からの反射光Lbが一緒に一つの受光素子で受光されることがある。このようになると、読取対象の画素Pの読取精度が低下して読取画像がぼけてしまうおそれがある。そこで、どの解像度でも読取画像がぼけることがないような開時間が予め設定される。
【0063】
受光面120は、副走査方向に隣接する受光素子列201、202、203、・・・が存する領域に相当し、受光面120内の各受光部121が、原稿D上でランプ11の光Lが照射された帯状の照射領域Dbの反射光Lbを同時に受光して、照射領域Dbの画像を読み取る読取部として用いられる。
【0064】
受光素子列201~230のそれぞれごとに、各受光部121からその検出信号が順番に出力される。この出力は、公知のシフトレジスターや転送などの処理により、1周期ごとに繰り返し行われる。出力された検出信号は、後述のようにAD変換後、素子列ごとに異なる記憶領域に記憶される。
【0065】
ここで、原稿Dは一定速度で原稿搬送方向に移動するのに対し、ランプ11やミラー15d、エリアセンサー12などを含む光学系は停止している。このため、原稿Dに対してランプ11からの光Lが照射される帯状の照射領域Dbが時間経過に伴って搬送方向先端から後端に移動していくことになる。
【0066】
図6は、原稿Dの読取位置151を基準に搬送中の原稿Dに対するランプ11からの光Lの照射領域Dbが時間の経過に伴って移動する様子を示す模式図であり、照射領域Dbを斜線で示すとともに原稿Dの画像における一つの画素Pも併せて示している。
【0067】
原稿Dの搬送中に時点tαから時点tβ、tγ・・・と時間が経過するに連れて、搬送中の原稿D上における照射領域Dbと画素Pとの副走査方向における位置関係が変わっており、照射領域Dbが原稿搬送方向とは反対方向に移動して行くことが分かる。
【0068】
エリアセンサー12は、原稿D上における光Lの照射領域Dbからの反射光Lbを受光面120に位置する受光素子列201~230で同時に受光して、その照射領域Dbの画像を読み取ることができる。
【0069】
例えば、図7(a)に示すように原稿Dの全面を原稿搬送方向に5等分した部分領域D1~D5に分け、その一つの部分領域を照射領域Dbとしてエリアセンサー12で読み取る構成(以下、「比較例」という。)を想定する。
【0070】
この比較例の構成では、時点ta~tb、時点tb~tc、時点tc~td・・・が読取周期(つまりシャッター129の開閉)の1周期を表わしている。時点taで部分領域D5を読み取り、時点tbで部分領域D4を読み取り、時点tcで部分領域D3を読み取り、時点tdで部分領域D4を読み取り、時点teで部分領域D1を読み取れば、5周期に亘る5回の読み取りで原稿Dの第1面の全面を読み取り可能になり、それだけ原稿搬送速度の高速化が可能になる。
【0071】
しかし、原稿D上の画素Pに着目すると、時点taで1回、読み取りが行われるだけになる。この1回の読み取りは、ラインセンサーを用いる場合と同様である。
【0072】
原稿搬送速度を高速化するほど画素Pに対する露光時間が短くなり、露光時間が短くなるほど、受光素子に単位時間当たりに入射する画素Pからの反射光Lbの受光量不足が顕著になる。不足した受光量をゲイン調整すれば、検出信号に含まれるノイズ成分も増大してしまい、S/N比の低下が生じ易い。このように読み取られた画像データの輝度値が低くなって、再現性が低下するという問題がある。
【0073】
そこで、本実施形態では、図7(b)の実施例に示すように原稿D上の同じ画素Pを複数回、同図の例では3回に亘ってエリアセンサー12における副走査方向に異なる位置の受光素子で読み取り、R、G、B色別に、合計3回に亘って読み取られた画素Pの検出値(受光量に応じた電圧値に相当)を積算した結果から、画素Pの画像データの輝度値をR、G、B色ごとに求める制御を実行する。時点ta、tb、tcのそれぞれで原稿D上の同じ画素Pを読み取れるような原稿搬送速度と読取周期が予め求められている。なお、原稿D上の同じ位置に存する画素Pを3回読み取るのは、後述のように読取解像度が600dpiの場合に行われる。
【0074】
原稿搬送速度の高速化により画素Pに対する1周期ごとの露光時間が短くなっても、3回分の検出値を積算することで、実質、原稿搬送速度を遅くして1回だけ画像Gを読み取る構成と同様に露光量を確保できることになり、読み取って得られた画像データの輝度の範囲(ダイナミックレンジ)を広くとることができる。それぞれの検出値にノイズ成分が含まれていても、積算により平均化されることで、ゲイン調整よりもS/N比の低下を抑制できる。
【0075】
そして、輝度が最も低い色(例えば黒色)から輝度が最も高い色(例えば白色)までの間で画像データの輝度を256段階に分けて表す場合、輝度のダイナミックレンジが広いほど、1段階の差を大きく表すことができ、それだけ原稿Dの画素Pの明るさ(輝度)の再現性を向上できる。
【0076】
シートスルーによる一度の原稿読取動作で原稿D上の同じ画素Pを複数回(上記の例では3回)、読み取ることができるのは、エリアセンサー12を用いているからであり、実施例の構成は、ラインセンサーを用いる構成よりも原稿搬送速度の高速化を図りつつ読取画像の再現性の向上を図ることができる。
【0077】
なお、エリアセンサー12は、原稿D上で副走査方向に一定の幅を有する帯状の照射領域Dbからの反射光Lbが入射される受光面120に、主走査方向に平行な複数の受光素子列201、202・・・が副走査方向に隣接して設けられ、複数の受光素子列に属する受光素子のそれぞれがその受光素子で受光した光量に応じた検出信号を個別に出力可能なセンサーであれば良く、例えばCMOSセンサーとすることもできる。
【0078】
<スキャナー移動方式>
スキャナー移動方式で原稿を読み取る場合には、ユーザーにより自動原稿搬送部40が上方に開放され、図3に示すプラテンガラス16上に原稿Dが載置された状態で、ランプ11を点灯させつつ第1スライダー18を同図の矢印Bで示す方向に移動させる。第1スライダー18の移動の際、第2スライダー19が第1スライダー18と同方向であって第1スライダー18の移動速度の半分の速度で移動するようになっている。
【0079】
これにより、プラテンガラス16上に載置された原稿Dから集光レンズ15eまでの距離(光路長)が常に一定に保たれた状態で、当該原稿Dの下面(プラテンガラス16の上面に対向する面)からの反射光Lbがエリアセンサー12の受光面120で結像される。第1スライダー18、第2スライダー19は、駆動モーター417の駆動力が付与されることによって移動し、駆動モーター417の回転速度を変化させることで移動速度が変えることができるようになっている。
【0080】
なお、スキャナー移動方式でも、原稿Dからの反射光Lbがエリアセンサー12の受光面120に入射すること、及び受光素子列201~230のそれぞれごとに反射光Lbの受光量に応じた電気信号を出力することは、シートスルー方式の場合と同様である。
【0081】
(2)自動原稿搬送部40の構成
自動原稿搬送部40は、シートスルー方式で原稿画像を読み取る際に、原稿給紙トレイ40aに載置された原稿Dを1枚ずつ原稿搬送路401に沿って搬送して、シートスルー用ガラス13上を通過後、原稿排出トレイ40bに排出する。
【0082】
具体的には、原稿給紙トレイ40a上に載置された原稿Dを繰り出しローラー41によって原稿搬送路401に繰り出し、分離ローラー対42へ搬送する。
【0083】
分離ローラー対42は、対向配置される給紙ローラー421とさばきローラー422とを備えており、給紙ローラー421とさばきローラー422とがその対向する部分同士の回転方向が逆方向に回転することにより、給紙ローラー421とさばきローラー422間に搬送される原稿Dを1枚ずつに分離して、レジストローラー対43へ送る。
【0084】
レジストローラー対43は、原稿Dの先端が到着した時点では停止しており、一方のレジストローラーが他方のレジストローラーと接触しているニップ部に原稿Dの先端が当たって原稿Dの先端の前進が阻止されつつ原稿Dの搬送方向後端側に分離ローラー対42による搬送力が付与され続けることにより、原稿Dの先端部分に原稿Dのスキュー補正のための弛み433(破線)が形成される。その後、レジストローラー対43の回転が開始されると、レジストローラー対43により原稿Dが第1搬送ローラー対44に搬送され、第1搬送ローラー対44は、レジストローラー対43から送られて来た原稿Dをシートスルー用ガラス13に向けて搬送する。シートスルー用ガラス13の上方には、シートスルー用ガラス13と間隔をあけて読取ガイド48が配置されている。
【0085】
第1搬送ローラー対44により搬送される原稿Dは、シートスルー用ガラス13の表面と読取ガイド48との間を通過する。この通過の際に当該原稿Dの第1面の画像が画像読取部10により読み取られる。
【0086】
シートスルー用ガラス13上を通過した原稿Dは、第2搬送ローラー対45に搬送される。第2搬送ローラー対45は、シートスルー用ガラス13上を通過した原稿Dにさらに原稿搬送方向下流側への搬送力を付与して、CCDエリアセンサーである密着イメージセンサー(CIS:Contact Image Sensor)410に向けて搬送する。CIS410の直下には、CIS410と間隔をあけて読取ガイド49が配置されており、CIS410と読取ガイド49との間を第2搬送ローラー対45により搬送されて来た原稿Dが通過する。
【0087】
CIS410は、CIS410の直下を通過する原稿Dの第2面(CIS410に対向する側の面)に向けて光を照射して、その原稿Dの第2面からの反射光を受光し、受光した反射光を光電変換により得られた電気信号を検出値として出力する。原稿Dの第2面の画像の読み取りと、読み取りにより得られた画像データを出力することは、上記のエリアセンサー12と同様の方法で行われる。
【0088】
この意味で、シートスルー方式では、画像読取部10が原稿Dの第1面の画像を読み取る第1読取部、CIS410が原稿Dの第2面の画像を読み取る第2読取部になり、スキャナー移動方式では、画像読取部10が原稿Dの画像を読み取る読取部になる。
【0089】
CIS410を通過後の原稿Dは、排出前ローラー対46と排出ローラー対47により搬送されて、原稿排出トレイ40b上に排出される。上記の原稿Dを搬送する各ローラーは、駆動モーター415の駆動力が付与されることによって回転し、駆動モーター415の回転速度を変化させることで、各ローラーの回転速度、つまり原稿搬送速度を変えることができるようになっている。
【0090】
(3)読取制御部50の構成
読取制御部50は、図8に示すようにCPU(Central Processing Unit)51と、ROM(Read Only Memory)52と、RAM(Random Access Memory)53と、画像読取処理回路54と、記憶部55とを備えており、CPU51等は内部バス59を用いて相互に通信可能に接続されている。
【0091】
画像読取処理回路54は、後述するように、読取ジョブやコピージョブの実行時に、読取処理として、エリアセンサー12からの出力値に基づいて原稿Dの画像データ(フレーム画像)を生成する。
【0092】
また、エリアセンサー12に対応する画像読取処理回路54とは別に、CIS410に対応する画像読取処理回路も実際には存在するが、図8では省略されている。これは、CIS410に対応する画像読取処理回路が、エリアセンサー12に対応する画像読取処理回路54と実質、同じ構成であるからであり、以下では、その説明も省略する。さらに、エリアセンサー12を用いた原稿Dの読取処理とCIS410を用いた原稿Dの読取処理が実質同じ方法で行われるので、以下では、エリアセンサー12を用いた原稿Dの読取処理を説明し、CIS410を用いた原稿Dの読取処理について説明を省略する。
【0093】
CPU51は、MFP9の電源投入などを契機としてリセットされると、ROM52からブートプログラムを読み出して起動し、RAM53を作業用記憶領域として、不図示のHDDから読み出したOS(Operating System)や制御プログラムを読み出して、読取ジョブを円滑に実行する。また、CPU51が制御プログラムに従って動作することにより、CPU51、ROM52及びRAM53は、主制御部61、走査制御部62、切換制御部63、選択制御部64、シフト制御部65及び決定部66を構成する。
【0094】
主制御部61は、走査制御部62、切換制御部63、選択制御部64、シフト制御部65及び決定部66を制御する。走査制御部62、切換制御部63、選択制御部64、シフト制御部65及び決定部66については、後述する。
【0095】
走査制御部62(走査制御手段)は、駆動モーター415、駆動モーター417、エリアセンサー12、CIS410等を制御する。例えば、走査制御部62は、原稿に対してエリアセンサー12を副走査方向に相対的に移動させながら、エリアセンサー12により、繰り返し読み取りを行って、副走査方向に一部重複した領域を含む複数の読取画像を得るように、走査制御する。
【0096】
走査制御部62は、駆動モーター415、駆動モーター417等を駆動制御する駆動制御部、解像度等を取得する取得部、エリアセンサー12による受光を制御する受光制御部を備える。
【0097】
記憶部55は、不揮発性の半導体メモリから構成されている。なお、記憶部55は、HDDから構成されているとしてもよい。記憶部55は、予め、解像度テーブル56を記憶している。
【0098】
解像度テーブル56には、図9に示すように読取解像度(dpi)と読取走査速度(mm/s)と同じ画素を読み取る回数Nの各項目が設けられている。
【0099】
読取解像度は、ユーザーが操作部4上で選択可能な解像度を示しており、ここでは600、300、200dpiの3つがある。
【0100】
読取走査速度は、原稿Dを副走査方向に読取走査する際の走査速度であり、シートスルー方式では原稿搬送速度を示し、スキャナー移動方式では第1スライダー18の移動速度を示している。読取解像度が低くなるに連れて、読取走査速度が速くなるという関係を有する。ここでは、エリアセンサー12とCIS410による読取周期が読取解像度の大小に関わらず一定であるので、読取解像度が低くなるほど、原稿D上で副走査方向に読み取るべき副走査方向に隣り合う2個の画素と画素の間隔が広くなる分、原稿搬送速度と第1スライダー18の移動速度を高速化できるからである。
【0101】
なお、原稿搬送速度の変更は、駆動モーター415の回転速度が走査制御部62により制御されることにより行われ、第1スライダー18の移動速度の変更は、駆動モーター417の回転速度が走査制御部62により制御されることにより行われる。
【0102】
同じ画素を読み取る回数Nは、上記の図7(b)において原稿D上で同じ位置に存する画素Pを読み取る回数(上記の例では3)を示しており、読取走査速度が速くなるに連れて回数Nの値が大きくなるという関係を有する。読取走査速度が速くなるほど、原稿Dの画素Pに対する1周期における露光時間が短くなって、各受光部121が単位時間当たりに受光する原稿Dの反射光Lbの光量が小さくなる。そこで、読取走査速度が速くなるほど、同じ画素Pを読み取る回数Nを大きくして、画素Pの読取値の積算数を増やすことで、画素Pの輝度のダイナミックレンジを広げることができる。
【0103】
図9の例では、高解像度の600dpiのとき回数Nが3、低解像度の200dpiのとき回数Nが9になっている。読取解像度と読取周期から読取走査速度が決まり、読取走査速度と受光部121の受光感度とから回数Nが決まる。具体的には、シートスルー方式において、最も明るい基準色としての白色の原稿Dを、決まった読取走査速度に相当する原稿搬送速度で実際に搬送して、その白色の原稿Dの画像を、一つの受光部121でR、B、G色別に受光素子R、G、Bで読み取る。
【0104】
例えば、受光素子Rの検出値Vが、これ以上になると出力値に変化が生じない(飽和する)ときの上限値Vuよりも下である場合、検出値V×回数N≦上限値Vuの関係を満たす回数Nの最大値として決められる。
【0105】
低解像度の方が高解像度よりも原稿搬送速度が速いので、受光素子Rの検出値Vが低くなり、上限値Vuを一定とすると、上記の式から低解像度の方が高解像度よりも回数Nを大きくとれることになる。B、G色も同様である。なお、G色は、一つの受光部121に2個の受光素子Gがあるので、いずれの受光素子Gも上記の式を満たすNが決められる。各値は予め実験などから決められて、解像度テーブル56に書き込まれる。
【0106】
シートスルー方式でもスキャナー移動方式でも、同じ読取解像度に対応する読取走査速度は同じなので、回数Nの値も同じとされる。従って、解像度テーブル56は、シートスルー方式とスキャナー移動方式とで共用される。
【0107】
(4)画像読取処理回路54の構成
図10は、画像読取処理回路54の構成を示すとともに、エリアセンサー12、主制御部61、切換制御部63、選択制御部64及びシフト制御部65との接続関係を示すブロック図である。
【0108】
画像読取処理回路54は、AD変換部301、分離部302、切換部303、切換部311、切換部312、画像メモリ313、セレクタ321、シフト部322a、322b、322c、・・・、加算部323、G処理回路310a、310bから構成されている。
【0109】
ここでは、切換制御部63、選択制御部64及びシフト制御部65、並びに、AD変換部301、分離部302、切換部303、切換部311、切換部312、画像メモリ313、セレクタ321、シフト部322a、322b、322c、・・・、加算部323、G処理回路310a、310bについて、説明する。
【0110】
(a)画像メモリ313
画像メモリ313は、不揮発性の半導体メモリから構成されている。
【0111】
画像メモリ313は、一時領域304a、一時領域304b、第一領域314a、第二領域314b、第三領域314c、・・・、第n領域314n、出力領域324を備えている。
【0112】
(一時領域304a及び一時領域304b)
一時領域304a及び一時領域304bは、それぞれ、上述したように、シャッター129が開いている時間(読取周期)に、エリアセンサー12により読み取られた画像(以下、バンド幅画像、又は、読取画像と呼ぶ)を一時的に記憶するための領域である。一時領域304a及び一時領域304bは、読取周期ごとに、交互に用いられる。
【0113】
例えば、第1読取周期において、エリアセンサー12により読み取られたバンド幅画像が一時領域304aに格納される。続いて、第1読取周期に続く第2読取周期において、エリアセンサー12により読み取られたバンド幅画像が一時領域304bに格納される。続いて、第2読取周期に続く第3読取周期において、エリアセンサー12により読み取られたバンド幅画像が一時領域304aに格納される。続いて、第3読取周期に続く第4読取周期において、エリアセンサー12により読み取られたバンド幅画像が一時領域304bに格納される。以下、同様に、読取周期ごとに、一時領域304a及び一時領域304bに、交互にバンド幅画像が格納される。
【0114】
一時領域304aへのバンド幅画像の書込みが完了すると、一時領域304aに書き込まれたバンド幅画像は、第一領域314a、第二領域314b、第三領域314c、・・・、第n領域314nのいずれかに向けて出力される。
【0115】
同様に、一時領域304bへのバンド幅画像の書込みが完了すると、一時領域304bに書き込まれたバンド幅画像は、第一領域314a、第二領域314b、第三領域314c、・・・、第n領域314nのいずれかに向けて出力される。
【0116】
一時領域304a及び一時領域304bを交互に用いるのは、時間的に連続してエリアセンサー12により読み取られたバンド幅画像を、途切れることなく、第一領域314a、第二領域314b、第三領域314c、・・・、第n領域314nのいずれかに記憶するためである。
【0117】
一時領域304aは、Rバンド領域305a、Gバンド領域306a、307a及びBバンド領域308aから構成されている。
【0118】
Rバンド領域305aは、R色のバンド幅画像を記憶するための領域である。Gバンド領域306aは、図5(b)に示す2個の受光素子125gのうちの1個の受光素子125gに対応するG色のバンド幅画像を記憶するための領域である。Gバンド領域307aは、他の1個の受光素子125gに対応するG色のバンド幅画像を記憶するための領域である。Bバンド領域308aは、B色のバンド幅画像を記憶するための領域である。
【0119】
Gバンド領域306aに格納されているバンド幅画像及びGバンド領域307aに格納されているバンド幅画像は、後述するG処理回路310aによる演算により、一つのバンド幅画像に統合され、Gバンド領域306aに格納される。
【0120】
一時領域304bも、一時領域304aと同様に、Rバンド領域305b、Gバンド領域306b、307b及びBバンド領域308bから構成されている。Rバンド領域305b、Gバンド領域306b、307b及びBバンド領域308bについての説明を省略する。
【0121】
(第一領域314a、第二領域314b、第三領域314c、・・・、第n領域314n)
第一領域314a、第二領域314b、第三領域314c、・・・、第n領域314nは、それぞれ、上述したように、シャッター129が開いている時間(読取周期)に、エリアセンサー12により読み取られたバンド幅画像を格納するための領域である。
【0122】
第一領域314a、第二領域314b、第三領域314c、・・・、第n領域314nは、この順序で、読取周期において読み取られたバンド幅画像を記憶する。
【0123】
つまり、第一領域314aは、第1読取周期において読み取られたバンド幅画像を記憶する。続いて、第二領域314bは、第1読取周期に続く第2読取周期において読み取られたバンド幅画像を記憶する。続いて、第三領域314cは、第2読取周期に続く第3読取周期において読み取られたバンド幅画像を記憶する。以下同様である。第n領域314nが、バンド幅画像の記憶を完了すると、次の読取周期において、第一領域314aは、バンド幅画像を記憶する。
【0124】
このように、第一領域314a、第二領域314b、第三領域314c、・・・、第n領域314nは、繰り返し、バンド幅画像を記憶する。
【0125】
第n領域314nは、Rバンド領域315、Gバンド領域316及びBバンド領域317から構成される。
【0126】
Rバンド領域315は、一時領域304a(又は、一時領域304b)のR色のバンド幅画像を記憶するための領域である。Gバンド領域316は、一時領域304a(又は、一時領域304b)の統合されたG色のバンド幅画像を記憶するための領域である。Bバンド領域317は、一時領域304a(又は、一時領域304b)のB色のバンド幅画像を記憶するための領域である。
【0127】
第一領域314a、第二領域314b、第三領域314c、・・・も、第n領域314nと同様に、Rバンド領域、Gバンド領域及びBバンド領域から構成される。
【0128】
(出力領域324)
出力領域324は、複数のバンド幅画像に基づいて生成した原稿Dのフレーム画像を記憶するための領域である。
【0129】
出力領域324は、Rフレーム領域325、Gフレーム領域326及びBフレーム領域327から構成されている。
【0130】
Rフレーム領域325は、R色のフレーム画像を記憶するための領域である。Gフレーム領域326は、G色のフレーム画像を記憶するための領域である。Bフレーム領域327は、B色のフレーム画像を記憶するための領域である。
【0131】
出力領域324に記憶されているフレーム画像は、例えば、コピージョブにおいて、シートに画像を形成するために用いられる。
【0132】
(b)AD変換部301
AD変換部301は、受光素子列201の各受光部121の受光素子R、G、Bから読取周期ごとに順次、出力されるR、G、Bのアナログの検出信号を受信すると、これをデジタル信号、例えば輝度を256段階で表すための8ビットの信号に変換して、デジタル信号(輝度信号)を生成し、生成したデジタル信号を、分離部302に対して、出力する。
【0133】
ここで、上述したように、エリアセンサー12の各受光部121は、G色について2個の受光素子125gを含むので、AD変換部301は、受光部121ごとに、G色について、2個のGのアナログの検出信号を受信し、2個のGのデジタル信号を生成し、出力する。
【0134】
(c)分離部302
分離部302は、AD変換部301から、順次、デジタル信号を受信する。
【0135】
分離部302は、R、2個のG、Bのデジタル信号用の4本の信号線を介して、切換部303に接続されている。分離部302は、受信したデジタル信号をR、2個のG、Bのデジタル信号に分離し、分離されたデジタル信号のそれぞれを、4本の信号線のそれぞれを介して、切換部303に対して、出力する。
【0136】
(d)切換制御部63及び切換部303
切換制御部63は、主制御部61の制御の元で、シャッター129が開いている時間(読取周期)ごとに、第一切換信号を切換部303に対して、出力する。
【0137】
切換部303は、R、2個のG、Bのデジタル信号用の4本の信号線を介して、それぞれ、一時領域304aのRバンド領域305a、Gバンド領域306a、Gバンド領域307a、Bバンド領域308aに接続されている。
【0138】
また、切換部303は、R、2個のG、Bのデジタル信号用の4本の信号線を介して、それぞれ、一時領域304bのRバンド領域305b、Gバンド領域306b、Gバンド領域307b、Bバンド領域308bに接続されている。
【0139】
切換部303は、切換制御部63から第一切換信号を受信する都度、分離部302から受信したデジタル信号の一時領域304aに対する出力と、分離部302から受信したデジタル信号の一時領域304bに対する出力とを切り換える。
【0140】
分離部302から、受信したR、2個のG、Bのデジタル信号は、それぞれ、4本の信号線を介して、一時領域304aのRバンド領域305a、Gバンド領域306a、Gバンド領域307a、Bバンド領域308a、又は、一時領域304bのRバンド領域305b、Gバンド領域306b、Gバンド領域307b、Bバンド領域308bに対して出力される。
【0141】
つまり、切換部303は、第一読取周期において、分離部302から受信したデジタル信号を一時領域304aに対して出力する。次に、第一読取周期に続く第二読取周期において、分離部302から受信したデジタル信号を一時領域304bに対して出力する。次に、第二読取周期に続く第三読取周期において、分離部302から受信したデジタル信号を一時領域304aに対して出力する。次に、第三読取周期に続く第四読取周期において、分離部302から受信したデジタル信号を一時領域304bに対して出力する。以下、同様である。
【0142】
分離部302から受信したデジタル信号を一時領域304aに対して出力する場合、切換部303は、Rのデジタル信号を一時領域304aのRバンド領域305aに書き込み、2つのGのデジタル信号を一時領域304aのGバンド領域306a、307aに書き込み、Bのデジタル信号を一時領域304aのBバンド領域308aに書き込む。
【0143】
一方、分離部302から受信したデジタル信号を一時領域304bに対して出力する場合、切換部303は、Rのデジタル信号を一時領域304bのRバンド領域305bに書き込み、2つのGのデジタル信号を一時領域304bのGバンド領域306b、307bに書き込み、Bのデジタル信号を一時領域304bのBバンド領域308bに書き込む。
【0144】
(e)G処理回路310a及び310b
G処理回路310aは、Gバンド領域306aに格納されているバンド幅画像及びGバンド領域307aに格納されているバンド幅画像に演算を施して、一つのバンド幅画像に統合し、統合した一つのバンド幅画像をGバンド領域306aに上書きする。
【0145】
具体的には、G処理回路310aは、Gバンド領域306aに格納されているバンド幅画像及びGバンド領域307aに格納されているバンド幅画像の対応する同じ位置の輝度値同士を加算する。加算後の輝度値が飽和する場合があるので、例えば、256階調を超える場合があるので、G処理回路310aは、加算後の輝度値が飽和しないように、例えば、256階調内に収まるように、加算後の輝度値を調整する。
【0146】
G処理回路310bも、G処理回路310aと同様であるので、説明を省略する。
【0147】
この結果、このようにシートスルー方式による原稿Dの読み取り動作を行うことで、受光素子列201~230のそれぞれごとに、その受光素子列に属する受光素子R、G、Bによる原稿Dの各画素の検出値を、その受光素子列に対応するR、G、B色用の3つのRバンド領域305a、Gバンド領域306a、Bバンド領域308a(又は、3つのRバンド領域305b、Gバンド領域306b、Bバンド領域308b)等に格納することができる。
【0148】
(f)切換制御部63及び切換部311
切換制御部63は、主制御部61の制御の元で、シャッター129が開いている時間(読取周期)ごとに、第二切換信号を切換部311に対して、出力する。なお、第一切換信号が出力されたるタイミングと、第二切換信号が出力されたるタイミングとは、一致している。
【0149】
切換部311は、切換制御部63から第二切換信号を受信する都度、一時領域304aから読み取ったバンド幅画像の切換部312に対する出力と、一時領域304bから読み取ったバンド幅画像の切換部312に対する出力とを切り換える。
【0150】
ここで、切換部303により、分離部302から受信したデジタル信号を一時領域304aに対して出力する場合の読取周期において、切換部311は、一時領域304bから読み取ったバンド幅画像を切換部312に対して出力する。
【0151】
一方、切換部303により、分離部302から受信したデジタル信号を一時領域304bに対して出力する場合の読取周期において、切換部311は、一時領域304aから読み取ったバンド幅画像を切換部312に対して出力する。
【0152】
(g)切換制御部63及び切換部312
切換制御部63は、主制御部61の制御の元で、シャッター129が開いている時間(読取周期)ごとに、第三切換信号を切換部312に対して、出力する。なお、第一切換信号が出力されたるタイミングと、第二切換信号が出力されたるタイミングと、第三切換信号が出力されたるタイミングとは、一致している。
【0153】
切換部312は、切換制御部63から第三切換信号を受信する都度、切換部311から受け取ったバンド幅画像の出力先を、順次、第一領域314a、第二領域314b、第三領域314c、・・・、第n領域314nに切り換える。
【0154】
具体的には、第三切換信号を受信すると、第1読取周期において、切換部312は、切換部311から受け取ったバンド幅画像を、第一領域314aに対して出力する。次に、第三切換信号を受信すると、第1読取周期に続く第2読取周期において、切換部312は、切換部311から受け取ったバンド幅画像を、第二領域314bに対して出力する。次に、第三切換信号を受信すると、第2読取周期に続く第3読取周期において、切換部312は、切換部311から受け取ったバンド幅画像を、第三領域314cに対して出力する。以下、同様である。
【0155】
第n領域314nに対する出力が完了すると、第三切換信号を受信したときに、次の読取周期において、切換部312は、切換部311から受け取ったバンド幅画像を、第一領域314aに対して出力する。
【0156】
(h)選択制御部64、決定部66及びセレクタ321
選択制御部64(選択手段)は、主制御部61の制御の元で、第一領域314aから第n領域314nまでの全ての領域に対して、バンド幅画像の格納が終了したタイミングにおいて、セレクタ321に対して、第一領域314aから第n領域314nのいずれか二つ以上の領域を選択するように、選択指示を出力する。
【0157】
選択制御部64は、どの領域を選択するかを、図9に示す解像度テーブル56に含まれる読取解像度により、決定する。
【0158】
また、選択制御部64は、選択された複数のバンド幅画像において、原稿上の所定位置に相当する画素の位置を、エリアセンサー12による読取タイミング及びエリアセンサー12による読取解像度又はエリアセンサー12の副走査方向の相対的な移動速度に基づいて、決定する。
【0159】
決定部66(決定手段)は、第一領域314aから第n領域314nのうち、何個の領域を選択するかを、図9に示す解像度テーブル56に含まれる同じ画素を読み取る回数により、決定する。
【0160】
つまり、決定部66、読取解像度と選択数とを対応づけた解像度テーブル56から、設定された読取解像度に対応する選択数を読み出すことにより、選択数を決定する。
【0161】
決定部66は、利用者により設定された原稿の読み取り条件に基づいて、セレクタ321による読取画像の選択数(つまり、何個の領域を選択するか)を決定する。
【0162】
ここで、読み取り条件は、例えば、原稿を読み取る場合の読取解像度である。
【0163】
例えば、解像度テーブル56によると、読取解像度が600dpiである場合、同じ画素を読み取る回数Nは、3であるので、仮に、n=12であるとすると、選択制御部64は、例えば、第一領域、第五領域、第九領域の3個の領域を選択する。
【0164】
また、解像度テーブル56によると、読取解像度が300dpiである場合、同じ画素を読み取る回数Nは、6であるので、仮に、n=12であるとすると、選択制御部64は、例えば、第一領域、第三領域、第五領域、第七領域、第九領域、第十一領域の6個の領域を選択する。
【0165】
さらに、解像度テーブル56によると、読取解像度が200dpiである場合、同じ画素を読み取る回数Nは、9であるので、仮に、n=12であるとすると、選択制御部64は、例えば、第一領域、第二領域、第三領域、第四領域、第五領域、第六領域、第七領域、第八領域、第九領域の9個の領域を選択する。
【0166】
ここで、同じ画素を読み取る回数Nは、選択する領域の数と等しい。
【0167】
セレクタ321(選択手段)は、第一領域314aから第n領域314nのうち、原稿の所定位置(以下において、注目ラインとして、言及している。)を重複して含んでいるバンド幅画像を記憶する領域を、複数、選択する。つまり、セレクタ321は、選択制御部64から受信した選択指示により、第一領域314aから第n領域314nのいずれか二つ以上の領域を選択し、選択した二つ以上の領域内に格納されているバンド幅画像を、シフト部322a、322b、322c、・・・のうち、対応するシフト部に対して、出力する。
【0168】
つまり、セレクタ321は、得られた複数のバンド幅画像(読取画像)から、原稿上の所定ライン位置を重複して含んでいる複数のバンド幅画像を選択する。
【0169】
(i)シフト制御部65及びシフト部322a、322b、322c、・・・
シフト制御部65及びシフト部322a、322b、322c、・・・は、例えば、セレクタ321により、第1バンド幅画像、第2バンド幅画像及び第3バンド幅画像が選択された場合に、第1バンド幅画像における原稿上の所定のライン位置に相当する第1ライン画像と、第2バンド幅画像における原稿上の所定のライン位置に相当する第2ライン画像と、第3バンド幅画像における原稿上の所定のライン位置に相当する第3ライン画像とを加算するために、第2ライン画像と第3ライン画像とが、メモリ上で、第1ライン画像と、相対的に同一のアドレス位置に存在するように、第2ライン画像と第3ライン画像とを、メモリ上で、副走査方向にシフトするために用いられる。
【0170】
このように、第2ライン画像と第3ライン画像とを、メモリ上で、副走査方向にシフトすることにより、メモリ上で、相対的に同一のアドレス位置に存在する第1ライン画像と、第2ライン画像と、第3ライン画像とを加算すればよい。
【0171】
シフト制御部65は、主制御部61の制御の元で、セレクタ321により、選択された第一領域314aから第n領域314nのいずれか二つ以上の領域に対応する二つ以上のシフト部に対して、シフト量を出力する。なお、シフト部にシフトさせない場合もあり、この場合、このシフト部に対して、シフト量「0」を出力する。
【0172】
シフト部322a、322b、322c、・・・のうち、セレクタ321により、選択された第一領域314aから第n領域314nのいずれか二つ以上の領域に対応する二つ以上のシフト部は、シフト制御部65から、シフト量を受信する。また、そのシフト部は、セレクタ321からバンド幅画像を受信する。
【0173】
なお、セレクタ321により、選択された第一領域314aから第n領域314nのいずれか二つ以上の領域に対応する二つ以上のシフト部のうち、一つのシフト部は、シフト制御部65から、シフト量として、「0」を受信する。つまり、このシフト部は、シフトを行なわない。
【0174】
各シフト部は、バンド幅画像の副走査方向に、受信したシフト量だけ、受信したバンド幅画像をシフトし(一つのシフト部は、バンド幅画像をシフトしない。)、一つのシフトしないバンド幅画像及びシフトされたバンド幅画像を加算部323に対して、出力する。
【0175】
ここで、各シフト部によるシフトについて説明する。
【0176】
例えば、10個の画素(それぞれの画素は、輝度値を有する)が一列に並んで配置されたライン画像を想定する。
【0177】
このライン画像を、1画素分だけ、右側にシフトする場合、シフトされたライン画像には、左から、1個の空白の画素(輝度値がない。又は、輝度値が0である。)及びシフトされた9個の画素(元のライン画像において、左から9個の画素)が含まれることとなる。
【0178】
一方、このライン画像を、1画素分だけ、左側にシフトする場合、シフトされたライン画像には、左から、シフトされた9個の画素(元のライン画像において、右から9個の画素)、及び、1個の空白の画素(輝度値がない。又は、輝度値が0である。)が含まれることとなる。
【0179】
このように、各シフト部によるシフトにおいては、シフト対象となる領域において、シフトされた画像の残余の部分には、空白が埋められる。
【0180】
(j)加算部323
加算部323(算出手段)は、以下に示すように、選択されたバンド幅画像の、原稿上の所定位置に相当する画素の輝度値を合成して、当該所定位置の最終輝度値を算出する。
【0181】
つまり、加算部323は、セレクタ321により、選択された第一領域314aから第n領域314nのいずれか二つ以上の領域に対応する二つ以上のシフト部から、一つのシフトしないバンド幅画像及びシフトされたバンド幅画像を受信する。加算部323は、一つのシフトしないバンド幅画像及びシフトされたバンド幅画像について、対応する同じ画素位置において、輝度値を加算する。この場合、加算後の輝度値が飽和する場合があるので、例えば、256階調を超える場合があるので、加算部323は、得られる加算値が飽和しないように、例えば、256階調内に収まるように、加算後の輝度値を調整する。
【0182】
加算部323は、加算により得られた輝度値を含むバンド幅画像(例えば、1ライン分の画像)を、出力領域324の対応する画素位置に書き込む。
【0183】
このように、加算部323は、選択された複数のバンド幅画像(読取画像)の、原稿上の所定位置に相当する画素の輝度値を積算し、積算値に基づいて、当該所定位置の最終輝度値を算出する。
【0184】
また、加算部323は、前記積算値に基づいて、最終輝度値が飽和閾値を超えないように、当該所定位置の最終輝度値を算出する。
【0185】
このように、加算部323は、選択された複数のバンド幅画像の、原稿上の所定ライン位置に相当するライン画像上の画素の輝度値を合成して、当該所定ライン位置の最終輝度値を算出する。
【0186】
出力領域324への書き込みが、原稿Dの全ての画像に対して、行なわれる。
【0187】
(k)その他
以上、説明したように、各受光素子は、ベイヤー配列により配列された赤色受光素子、青色受光素子並びに第1及び第2緑色受光素子からなる。
【0188】
エリアセンサー12により、各バンド幅画像(読取画像)として、1個の赤色画像、1個の青色画像並びに第1及び第2緑色画像が得られる。
【0189】
セレクタ321は、得られた複数の赤色画像から、原稿上の所定位置を重複して含む複数の赤色画像を選択し、得られた複数の青色画像から、原稿上の所定位置を重複して含む複数の青色画像を選択し、得られた複数の第1緑色画像から、原稿上の所定位置を重複して含む複数の第1緑色画像を選択し、得られた複数の第2緑色画像から、原稿上の所定位置を重複して含む複数の第2緑色画像を選択する。
【0190】
加算部323は、選択された複数の赤色画像について、原稿上の所定位置に相当する赤色画素の輝度値を合成して、当該所定位置の赤色画素の最終輝度値を算出し、選択された複数の青色画像について、原稿の所定位置に相当する青色画素の輝度値を合成して、当該所定位置の青色画素の最終輝度値を算出し、選択された複数の第1及び第2緑色画像について、原稿上の所定位置に相当する緑色画素の輝度値を合成して、当該所定位置の緑色画素の最終輝度値を算出する。
【0191】
また、モノクロの読み取りを行なう場合、セレクタ321は、得られた一組の複数の赤色画像、一組の複数の青色画像、一組の複数の第1緑色画像及び一組の複数の第2緑色画像のうち、少なくとも一組の複数の色画像から、原稿上の所定位置を重複して含む複数の色画像を選択してもよい。加算部323は、選択された複数の色画像について、原稿上の所定位置に相当する画素の輝度値を合成して、当該所定位置の最終輝度値を算出してもよい。
【0192】
また、走査制御部62は、光源を静止させた状態で搬送中の原稿を読み取るシートスルー方式、又は、原稿を静止させた状態で光源又はエリアセンサーを移動させて原稿を読み取るスキャナー移動方式により、走査制御する。シートスルー方式の場合、選択された複数の読取画像の間において、原稿上の所定位置に相当する画素の位置は、読取画像の副走査方向、第1端側から第2端側に遷移し、スキャナー移動方式の場合、選択された複数の読取画像の間において、原稿上の所定位置に相当する画素の位置は、読取画像の副走査方向、第2端側から第1端側に遷移する。加算部323は、シートスルー方式の場合、前記複数の読取画像の間において、第1端側から第2端側に遷移する原稿上の所定位置に相当する画素を合成し、スキャナー移動方式の場合、前記複数の読取画像の間において、第2端側から第1端側に遷移する原稿上の所定位置に相当する画素を合成する。
【0193】
1.3 実施例
実施の形態の実施例について、以下に説明する。
【0194】
(1)実施例1
実施の形態の実施例1について、以下に説明する。
【0195】
図11は、実施例1の複数のバンド領域のバンド幅画像及びエリアセンサー12の受光面を示す模式図である。また、図12は、実施例1の複数のバンド領域のバンド幅画像の演算方法を示す。
【0196】
図11には、時刻tにおけるバンド幅画像505及びエリアセンサー12の受光面501を示し、時刻tにおけるバンド幅画像506及びエリアセンサー12の受光面502を示し、時刻tにおけるバンド幅画像507及びエリアセンサー12の受光面503を示す。
【0197】
ここで、時刻は、t、t、t、t、t、tの順に進む。また、エリアセンサー12の受光面120のうち、この図に示すバンド幅内の受光素子列が用いられるものとする。
【0198】
また、図12に示すように、原稿350上に、主走査方向の一つの注目ライン349を想定する。
【0199】
エリアセンサー12による読取周期のスキャンが進むにつれて、スキャンにより得られるバンド幅画像は、副走査方向に移動したものとなる。また、読取周期に応じたバンド幅画像の移動量は、例えば、2ライン分である、とする。
【0200】
図11に示すように、エリアセンサー12による読取周期のスキャンが進むにつれて、スキャンにより得られるバンド幅画像505、バンド幅画像506及びバンド幅画像507には、共通して、原稿350上の注目ライン349に対応して、一つのライン画像504が存在する。
【0201】
このライン画像504は、バンド幅画像505、バンド幅画像506及びバンド幅画像507内において、副走査方向に移動している。
【0202】
図12に示すように、画像読取処理回路54のセレクタ321は、バンド幅画像505、バンド幅画像506及びバンド幅画像507を選択し、選択したバンド幅画像505、バンド幅画像506及びバンド幅画像507を、それぞれ、シフト部322a、322c及び322eに対して出力する。
【0203】
シフト部322a、322c及び322eは、それぞれ、バンド幅画像505、バンド幅画像506及びバンド幅画像507を受信する。
【0204】
シフト部322aは、受信したバンド幅画像505をシフトすることなく、バンド幅画像505内の注目ラインのライン画像を加算部323に対して、出力する。
【0205】
シフト部322cは、受信したバンド幅画像506を、副走査方向に、図11上、右側へ、2ライン分だけ、シフトし、シフトした後の注目ラインのライン画像を、加算部323に対して、出力する。
【0206】
シフト部322eは、受信したバンド幅画像507を、副走査方向に、図11上、右側へ、4ライン分だけ、シフトし、シフトした後の注目ラインのライン画像を、加算部323に対して、出力する。
【0207】
加算部323は、シフトしない注目ラインのライン画像の輝度値、2ライン分だけシフトした後の注目ラインのライン画像の輝度値及び4ライン分だけシフトした後の注目ラインのライン画像の輝度値を、対応する画素ごとに、加算する。加算部323は、得られた加算値を、出力領域324の対応する画素位置に、上書きする。
【0208】
このようにすれば、原稿上の同じ位置の画素を読取周期ごとにエリアセンサーで複数回に亘って検出した検出結果から画像データの輝度値を生成できる。
【0209】
(2)実施例2
実施の形態の実施例2について、以下に説明する。
【0210】
図13は、実施例2の解像度テーブル56aの内容例を示す図である。また、図14は、実施例2のエリアセンサー12の受光面を示す模式図であり、図14(a)は、600dpiの場合であり、図14(b)は、400dpiの場合である。
【0211】
記憶部55は、予め、図13に示す解像度テーブル56aを記憶していてもよい。解像度テーブル56aは、図9に示す解像度テーブル56に加えて、ライン間隔を有している。
【0212】
ここで、ライン間隔とは、図12に示すように、原稿350上に、主走査方向の一つの注目ライン349を想定する場合、ある時刻において得られたバンド幅画像内における注目ライン349に相当するライン画像と、その後の時刻において得られたバンド幅画像内における注目ライン349に相当するライン画像との間に存在するライン画像の本数である。
【0213】
解像度テーブル56aによると、読取解像度が600dpiである場合、読取走査速度は、300mm/sであり、ライン間隔は、「2」である。また、読取解像度が400dpiである場合、読取走査速度は、500mm/sであり、ライン間隔は、「3」である。また、読取解像度が300dpiである場合、読取走査速度は、700mm/sであり、ライン間隔は、「4」である。さらに、読取解像度が200dpiである場合、読取走査速度は、1700mm/sであり、ライン間隔は、「6」である。
【0214】
このように、読取解像度が低くなるほど、読取走査速度は、高くなり、ライン間隔は、増えている。一方、読取解像度が高くなるほど、読取走査速度は、低くなり、ライン間隔は、減っている。
【0215】
つまり、読取解像度が低くなるほど、読取走査速度は、高くなり、この結果、原稿上で副走査方向に読み取るべき副走査方向に隣り合う2個の画素と画素の間隔が広くなっている。
【0216】
(読取解像度が600dpiである場合)
図14(a)に示すように、読取解像度が600dpiである場合、ライン間隔は、「2」であるので、時刻tにおいて得られたバンド幅画像511内における注目ライン349に相当するライン画像511aと、時刻tにおいて得られたバンド幅画像512内における注目ライン349に相当するライン画像512aとの間に存在するライン画像の本数は、「2」である。また、時刻tにおけるライン画像512aと、時刻tにおいて得られたバンド幅画像513内における注目ライン349に相当するライン画像513aとの間に存在するライン画像の本数も、「2」である。
【0217】
画像読取処理回路54のセレクタ321は、バンド幅画像511、バンド幅画像512及びバンド幅画像513を選択する。
【0218】
シフト部322aは、バンド幅画像511をシフトすることなく、バンド幅画像511内のライン画像511aを加算部323に対して、出力する。
【0219】
シフト部322bは、ライン間隔が「2」であるので、バンド幅画像512を、副走査方向、図14(a)上、右側に、3ライン分だけ、シフトし、シフトした後のライン画像512aを、加算部323に対して、出力する。
【0220】
シフト部322cは、バンド幅画像513を、副走査方向、図14(a)上、右側に、6ライン分だけ、シフトし、シフトした後の画像ライン513aを、加算部323に対して、出力する。
【0221】
加算部323は、シフトしない画像ライン511aの輝度値、3ライン分だけシフトした後のライン画像512aの輝度値及び6ライン分だけシフトした後のライン画像513aの輝度値を、対応する画素ごとに、加算する。加算部323は、得られた加算値を、出力領域324の対応する画素位置に、上書きする。
【0222】
(読取解像度が400dpiである場合)
また、図14(b)に示すように、読取解像度が400dpiである場合、ライン間隔は、「3」であるので、時刻tにおいて得られたバンド幅画像515内における注目ライン349に相当するライン画像515aと、時刻tにおいて得られたバンド幅画像516内における注目ライン349に相当するライン画像516aとの間に存在するライン画像の本数は、「3」である。また、時刻tにおけるライン画像516aと、時刻tにおいて得られたバンド幅画像517内における注目ライン349に相当するライン画像517aとの間に存在するライン画像の本数も、「3」である。さらに、以下同様である。
【0223】
画像読取処理回路54のセレクタ321は、バンド幅画像515、516、517、518及び519を選択する。
【0224】
シフト部322aは、バンド幅画像511をシフトすることなく、ライン画像515aを加算部323に対して、出力する。
【0225】
シフト部322bは、ライン間隔が「3」であるので、バンド幅画像516を、副走査方向、図14(b)上、右側に、4ライン分だけ、シフトし、シフトした後のライン画像516aを、加算部323に対して、出力する。
【0226】
シフト部322cは、バンド幅画像517を、副走査方向、図14(b)上、右側に、8ライン分だけ、シフトし、シフトした後のライン画像517aを、加算部323に対して、出力する。
【0227】
以下、同様である。
【0228】
加算部323は、シフトしないライン画像515aの輝度値、4ライン分だけシフトした後のライン画像516aの輝度値、8ライン分だけシフトした後のライン画像517aの輝度値、以下同様に、シフトした後のライン画像518a、ライン画像519aの輝度値を、対応する画素ごとに、加算する。加算部323は、得られた加算値を、出力領域324の対応する画素位置に、上書きする。
【0229】
以上説明したように、読取走査速度が遅いほど、ライン間隔を狭め、読取走査速度が速いほど、ライン間隔を広げている。
【0230】
このようにすることにより、原稿上の同じ位置の画素を読取周期ごとにエリアセンサーで確実に読み取ることができる。
【0231】
なお、ライン間隔を、G色、R色、B色の色ごとに変えてもよい。例えば、読取解像度が600dpiである場合、G色について、ライン間隔を2とし、R色、B色について、ライン間隔を4としてもよい。
【0232】
また、使用するエリアセンサーの仕様、読取走査速度等に応じて、適切なライン間隔、同じ画素を読み取る回数、色ごとにライン間隔をいくつにするか等の設定値を、予め演算して、テーブルに記憶しておいても、よい。このテーブルを参照することにより、使用するエリアセンサーの仕様、読取走査速度等に応じて、適切な設定値を用いることができる。
【0233】
ここで、図13に示す解像度テーブル56aは、画像読取装置1の画像読取部10の個体ごとの特性を反映したものであるとしてもよい。例えば、MFP9を製造する工場からMFP9を出荷する前に、MFP9の画像読取部10の個体ごとに、解像度テーブル56aのうち、適切なライン間隔を実地に検出し、検出したライン間隔を反映した解像度テーブル56aを各MFP9の読取制御部50の記憶部55に格納しておいてもよい。これにより、画像読取部10の個体差を吸収することができる。
【0234】
以上説明したように、走査制御部62は、原稿に対して、光源又はエリアセンサーを副走査方向に相対的に移動させる駆動制御部と、読取走査時の読取解像度として、第1解像度とこれよりも低い第2解像度のいずれかの指示を取得する取得部と、第1解像度を取得した場合、前記移動の速度が第1速度になるよう前記駆動部に指示するとともに、前記副走査方向に並ぶ複数の受光素子のうち、前記第1速度に対応する第1ライン間隔を有する第1の個数の受光素子のそれぞれから検出結果を出力させる第1制御と、第2解像度を取得した場合、前記移動の速度が前記第1速度よりも速い第2速度になるよう前記駆動部に指示するとともに、前記副走査方向に並ぶ複数の受光素子のうち、前記第1ライン間隔よりも副走査方向の間隔が広い、前記第2速度に対応する第2ライン間隔を有し、かつ、前記第1の個数よりも大きい第2の個数の受光素子のそれぞれから検出結果を出力させる第2制御とを行う受光制御部とを備える。
【0235】
(3)実施例3
実施の形態の実施例3について、以下に説明する。
【0236】
図15(a)は、実施例1のエリアセンサーの受光面を示す模式図であり、図15(b)は、実施例3の複数のバンド領域のバンド幅画像及びエリアセンサーの受光面を示す模式図である。
【0237】
図15(a)及び(b)から分かるように、実施例1のエリアセンサーのバンド幅522と比較して、実施例3のエリアセンサーのバンド幅535を、広く設定している。
【0238】
ここで、例えば、図15(a)に示すバンド幅522は、読取解像度が600dpi(第1解像度)の場合の例であり、図15(b)に示すバンド幅535は、読取解像度が300dpi(第2解像度)の場合の例である。第2解像度は、第1解像度より、低い。
【0239】
解像度を取得する取得部が、第1解像度を取得する場合、例えば、図15(a)に示すバンド幅522とし、取得部が、第2解像度を取得する場合、例えば、図15(b)に示すバンド幅535としてもよい。ここで、バンド幅535は、バンド幅522より広い。
【0240】
図15(b)には、時刻tにおけるバンド幅画像536及びエリアセンサー12の受光面531を示し、時刻tにおけるバンド幅画像537及びエリアセンサー12の受光面532を示し、時刻tにおけるバンド幅画像538及びエリアセンサー12の受光面533を示し、時刻tにおけるバンド幅画像539及びエリアセンサー12の受光面534を示す。
【0241】
ここで、時刻は、t、t、t、tの順に進む。また、エリアセンサー12の受光面120のうち、図15(b)に示すバンド幅内の受光素子列が有効となっているものとする。
【0242】
また、図12に示すように、原稿350上に、主走査方向の一つの注目ライン349を想定する。
【0243】
エリアセンサー12による読取周期のスキャンが進むにつれて、スキャンにより得られるバンド幅画像は、副走査方向に移動したものとなる。また、読取周期に応じたバンド幅画像の移動量は、2ライン分である、とする。
【0244】
図15(b)に示すように、エリアセンサー12による読取周期のスキャンが進むにつれて、スキャンにより得られるバンド幅画像536、537、538及び539には、共通して、原稿350上の注目ライン349に対応して、一つのライン画像530が存在する。
【0245】
このライン画像530は、バンド幅画像536、537、538及び539内において、副走査方向に移動している。
【0246】
画像読取処理回路54のセレクタ321は、バンド幅画像536、537、538、539を選択する。
【0247】
シフト部322aは、バンド幅画像536をシフトすることなく、バンド幅画像536内のライン画像を加算部323に対して、出力する。
【0248】
シフト部322bは、バンド幅画像537を、副走査方向、図15(b)上、右側に、2ライン分だけ、シフトし、シフトした後のライン画像を、加算部323に対して、出力する。
【0249】
シフト部322cは、受信したバンド幅画像538を、副走査方向、図15(b)上、右側に、4ライン分だけ、シフトし、シフトした後のライン画像を、加算部323に対して、出力する。
【0250】
シフト部322dは、受信したバンド幅画像539を、副走査方向、図15(b)上、右側に、6ライン分だけ、シフトし、シフトした後のライン画像を、加算部323に対して、出力する。
【0251】
加算部323は、シフトしないライン画像の輝度値、2ライン分だけシフトした後のライン画像の輝度値、4ライン分だけシフトした後のライン画像の輝度値、及び、6ライン分だけシフトした後のライの画像の輝度値を、対応する画素ごとに、加算する。加算部323は、得られた加算値を、出力領域324の対応する画素位置に、上書きする。
【0252】
このように、実施例1のエリアセンサーのバンド幅と比較して、実施例3のエリアセンサーのバンド幅は、広くなっているので、実施例1と比較して、より多い数のバンド幅画像から、ライン画像を得て、加算することができる。この結果、実施例1と比較して、輝度値の再現性を向上することができる。
【0253】
以上説明したように、走査制御部62は、読取走査時の読取解像度として、第1解像度とこれよりも低い第2解像度のいずれかの指示を取得する取得部と、第1解像度を取得した場合、前記複数の受光素子から出力された複数の検出値のうち、副走査方向に第1の幅を有する範囲内に含まれる検出値を有効とし、第2解像度を取得した場合、前記複数の受光素子から出力された複数の検出値のうち、副走査方向に前記第1の幅より広い第2の幅を有する範囲内に含まれる検出値を有効とする制御を行なう受光制御部とを備える。
【0254】
(4)実施例4
実施の形態の実施例4について、以下に説明する。
【0255】
図16は、実施例4の複数のバンド領域のバンド幅画像及びエリアセンサーの受光面を示す模式図である。
【0256】
ここで、例えば、図11は、読取解像度が300dpi(第2解像度)の場合の例であり、例えば、図16は、読取解像度が200dpi(第3解像度)の場合の例である。第3解像度は、第2解像度より、低い。
【0257】
解像度を取得する取得部が、第2解像度を取得する場合、例えば、図11に示すように、単位時間当たり、例えば、原稿上の同一の注目ラインに対応する3本のライン画像(部分画像)が読み取られ、取得部が、第3解像度を取得する場合、例えば、図16に示すように、単位時間当たり、原稿上の同一の注目ラインに対応する4本のライン画像(部分画像)が読み取られる。
【0258】
図16には、時刻tにおけるバンド幅画像546及びエリアセンサー12の受光面541を示し、時刻tにおけるバンド幅画像547及びエリアセンサー12の受光面542を示し、時刻tにおけるバンド幅画像548及びエリアセンサー12の受光面543を示し、時刻tにおけるバンド幅画像549及びエリアセンサー12の受光面544を示す。
【0259】
ここで、時刻は、t、t、t、tの順に進む。また、エリアセンサー12の受光面120のうち、図16に示すバンド幅内の受光素子列が有効となっているものとする。
【0260】
また、図12に示すように、原稿350上に、主走査方向の一つの注目ライン349を想定する。
【0261】
実施例4では、輝度加算に用いるライン画像の間隔を狭くしている。つまり、図16に示すように、エリアセンサー12の受光面541内の輝度加算に用いるライン画像541aと、エリアセンサー12の受光面542内の輝度加算に用いるライン画像542aとは、その間に、ライン画像が存在することなく、隣接している。また、エリアセンサー12の受光面542内の輝度加算に用いるライン画像542aと、エリアセンサー12の受光面543内の輝度加算に用いるライン画像543aとの間においても、同様である。また、エリアセンサー12の受光面543内の輝度加算に用いるライン画像543aと、エリアセンサー12の受光面544内の輝度加算に用いるライン画像544aとの間においても、同様である。
【0262】
ここで、輝度加算に用いるライン画像は、原稿350上の注目ライン349に対応している。
【0263】
エリアセンサー12による読取周期のスキャンが進むにつれて、スキャンにより得られるバンド幅画像は、副走査方向、図16上、右方向に、移動したものとなる。また、読取周期に応じたバンド幅画像の移動量は、1ライン分である。
【0264】
図16に示すように、エリアセンサー12による読取周期のスキャンが進むにつれて、スキャンにより得られるバンド幅画像546、547、548及び549には、共通して、原稿350上の注目ライン349に対応して、一つのライン画像540が存在する。
【0265】
このライン画像540は、バンド幅画像546、547、548及び549内において、副走査方向、図16上、右方向に、移動している。
【0266】
画像読取処理回路54のセレクタ321は、バンド幅画像546、547、548、549を選択する。
【0267】
シフト部322aは、バンド幅画像546をシフトすることなく、バンド幅画像546内のライン画像を加算部323に対して、出力する。
【0268】
シフト部322bは、バンド幅画像547を、副走査方向、図16上、右方向に、1ライン分だけ、シフトし、シフトした後のライン画像を、加算部323に対して、出力する。
【0269】
シフト部322cは、バンド幅画像548を、副走査方向、図16上、右方向に、2ライン分だけ、シフトし、シフトした後のライン画像を、加算部323に対して、出力する。
【0270】
シフト部322dは、バンド幅画像549を、副走査方向、図16上、右方向に、3ライン分だけ、シフトし、シフトした後のライン画像を、加算部323に対して、出力する。
【0271】
加算部323は、シフトしないライン画像の輝度値、1ライン分だけシフトした後のライン画像の輝度値、2ライン分だけシフトした後のライン画像の輝度値、及び、3ライン分だけシフトした後のライン画像の輝度値を、対応する画素ごとに、加算する。加算部323は、得られた加算値を、出力領域324の対応する画素位置に、上書きする。
【0272】
このように、実施例3によると、実施例1と比較して、より多い数のバンド幅画像から、ライン画像を得て、加算することができる。この結果、実施例1と比較して、輝度値の再現性を向上することができる。
【0273】
なお、上記においては、読取解像度の高低に関わらず、読取周期を一定としている。しかし、この方法には、限定されない。例えば、読取周期を可変とすることができれば、解像度が高の場合の第1周期よりも、低の場合の第2周期を短くする構成をとることもできる。この構成をとれば、読取周期が一定の構成よりも、低解像度のときに、単位時間当たりにおける、同一位置を含むハンド幅領域の取得数を増やすことができ、上記Nをより大きくして、輝度値の再現性の向上を図ることができる。
【0274】
以上、説明したように、走査制御部62の取得部は、読取走査時の読取解像度として、さらに、第2解像度よりも低い第3解像度の指示を取得する。また、走査制御部62の受光制御部は、第2解像度を取得した場合、単位時間当たり、副走査方向に一部重複したm個の領域を含むm個の読取画像を得るように制御し、第3解像度を取得した場合、単位時間当たり、副走査方向に一部重複したm個より多いn個の領域を含むn個の読取画像を得るように制御する。
【0275】
(5)実施例5
実施の形態の実施例5について、以下に説明する。
【0276】
スキャナー移動方式による読取処理は、シートスルー方式による読取処理と基本的に同じ内容になるが、次の点で異なっている。
【0277】
すなわち、スキャナー移動方式では、静止している原稿Dに対して図3に示す第1スライダー18が右方向に移動するが、シートスルー方式では、静止している第1スライダー18に対して原稿Dが右方向に移動するので、スキャナー移動方式とシートスルー方式とで、エリアセンサー12の受光面120上に入射する原稿Dの先端の副走査方向の位置が逆になる。
【0278】
具体的には、図5(a)においてシートスルー方式の読取処理のときに受光面120上において原稿Dの先端からの反射光Lbが受光素子列201上に入射するものとする。この場合、スキャナー移動方式の読取処理のときには、受光面120上において原稿Dの先端からの反射光Lbが受光素子列230上に入射することになる。
【0279】
(スキャナー移動方式の場合)
図17は、スキャナー移動方式の場合の複数のバンド領域のバンド幅画像及びエリアセンサーの受光面を示す模式図である。
【0280】
この図には、時刻tにおけるバンド幅画像555及びエリアセンサー12の受光面551を示し、時刻tにおけるバンド幅画像556及びエリアセンサー12の受光面552を示し、時刻tにおけるバンド幅画像557及びエリアセンサー12の受光面553を示す。
【0281】
ここで、時刻は、t、t、tの順に進む。
【0282】
また、図12に示すように、原稿350上に、主走査方向の一つの注目ライン349を想定する。
【0283】
エリアセンサー12の受光面551において、受光素子列551aが注目ライン349に相当する。また、エリアセンサー12の受光面552において、受光素子列552aが注目ライン349に相当する。さらに、エリアセンサー12の受光面553において、受光素子列553aが注目ライン349に相当する。
【0284】
バンド幅画像555、バンド幅画像556及びバンド幅画像557に、注目ラインのライン画像550が含まれる。
【0285】
このように、時刻がt、t、tと変化するにつれて、エリアセンサー12の受光面上において、注目ライン349からの光が照射される受光素子列は、図17の受光面の右から左方向に移動している。
【0286】
また、時刻がt、t、tと変化するにつれて、バンド幅画像555、バンド幅画像556及びバンド幅画像557に含まれる注目ラインのライン画像550は、バンド幅画像の右から左方向に移動している。
【0287】
画像読取処理回路54のセレクタ321は、バンド幅画像555、556、557を選択する。
【0288】
シフト部322aは、バンド幅画像555をシフトすることなく、バンド幅画像555内のライン画像を加算部323に対して、出力する。
【0289】
シフト部322bは、バンド幅画像556を、副走査方向に、1ライン分だけ、図17上、右方向にシフトし、シフトした後のライン画像を、加算部323に対して、出力する。
【0290】
シフト部322cは、バンド幅画像557を、副走査方向に、2ライン分だけ、図17上、右方向にシフトし、シフトした後のライン画像を、加算部323に対して、出力する。
【0291】
(シートスルー方式の場合)
一方、図18は、シートスルー方式の場合の複数のバンド領域のバンド幅画像及びエリアセンサーの受光面を示す模式図である。
【0292】
この図には、時刻tにおけるバンド幅画像565及びエリアセンサー12の受光面561を示し、時刻tにおけるバンド幅画像566及びエリアセンサー12の受光面562を示し、時刻tにおけるバンド幅画像567及びエリアセンサー12の受光面563を示す。
【0293】
ここで、時刻は、t、t、tの順に進む。
【0294】
また、図12に示すように、原稿350上に、主走査方向の一つの注目ライン349を想定する。
【0295】
エリアセンサー12の受光面561において、受光素子列561aが注目ライン349に相当する。また、エリアセンサー12の受光面562において、受光素子列562aが注目ライン349に相当する。さらに、エリアセンサー12の受光面563において、受光素子列563aが注目ライン349に相当する。
【0296】
バンド幅画像565、バンド幅画像566及びバンド幅画像567に、注目ラインのライン画像560が含まれる。
【0297】
このように、時刻がt、t、tと変化するにつれて、エリアセンサー12の受光面上において、注目ライン349からの光が照射される受光素子列は、図18の受光面の左から右方向に移動している。
【0298】
また、時刻がt、t、tと変化するにつれて、バンド幅画像565、バンド幅画像566及びバンド幅画像567に含まれる注目ラインのライン画像560は、バンド幅画像の左から右方向に移動している。
【0299】
画像読取処理回路54のセレクタ321は、バンド幅画像565、566、567を選択する。
【0300】
シフト部322aは、バンド幅画像565をシフトすることなく、バンド幅画像565内のライン画像を加算部323に対して、出力する。
【0301】
シフト部322bは、バンド幅画像566を、副走査方向に、1ライン分だけ、図18上、左方向にシフトし、シフトした後のライン画像を、加算部323に対して、出力する。
【0302】
シフト部322cは、バンド幅画像567を、副走査方向に、2ライン分だけ、図18上、左方向にシフトし、シフトした後のライン画像を、加算部323に対して、出力する。
【0303】
以上説明したように、スキャナー移動方式による読取処理と、シートスルー方式による読取処理とでは、シフト部によるバンド幅画像のシフト方向が反対方向になる。
【0304】
(6)実施例6
実施の形態の実施例6について、以下に説明する。
【0305】
上記実施の形態では、原稿の読取方式の一例であるシートスルー方式でもスキャナー移動方式でも原稿D上の読取領域(光Lが照射される照射領域Db)の副走査方向の幅α(図3図4)が同じであることを前提に、回数Nも同じ値としている。
【0306】
しかし、図19(a)の模式図に示すようにシートスルー方式では、シートスルー用ガラス13上を通過する原稿Dが下に凸となるU字状に撓んだ姿勢で搬送され、シートスルー用ガラス13上において原稿Dの搬送方向中央部がシートスルー用ガラス13に接しているが、原稿Dの搬送方向両側が少し浮いている。原稿Dにおいて、この浮きの両側部分は、搬送方向中央部とはエリアセンサー12までの光路長さが少しとはいえ異なることから、読取領域から外され、シートスルー用ガラス13に接している原稿部分の副走査方向の幅αが読取領域Dbとされる。
【0307】
一方、図19(b)の模式図に示すようにスキャナー移動方式では、プラテンガラス16上に原稿Dが静止状態で置かれるので、シートスルー方式のように原稿Dの一部が浮くといったことが生じない。このため、スキャナー移動方式では、シートスルー方式よりも読取領域Dbの幅αを大きくとれることになる。換言すれば、シートスルー方式では、スキャナー移動方式よりも読取領域Dbの幅αを小さく取らざるを得ない構成になる。
【0308】
このように、読取領域Dbの副走査方向の幅αが狭いほど、図5(a)に示すエリアセンサー12の受光面120に反射光Lbが照射されたときの照射領域の副走査方向長さが短くなる。具体的に、スキャナー移動方式では、読取領域Dbの幅αが広いので、反射光Lbの受光面120への照射領域が受光面120の全面になる。一方、シートスルー方式では、読取領域Dbの幅αが狭いために、反射光Lbの受光面120への照射領域が受光面120よりも小さくなる。仮に、受光面120への反射光Lbの照射領域の副走査方向長さが受光面120の副走査方向長さの半分程度しかなければ、受光素子列201~215には反射光Lbが入射するが、受光素子列216~230には反射光Lbが入射しないことが生じる。
【0309】
上述したように、読取解像度が高い場合よりも低い場合の方が、原稿搬送速度が高速になり、回数Nも多くなる。読取解像度が200dpiであれば、回数Nが9であるが、上記に説明したように原稿D上の同じ画素Pを9回に亘って検出するには、読取周期が一定かつ原稿搬送速度が高速のために、副走査方向に二つ飛びの9個の受光素子列201、204、・・・、225でその画素Pを検出する必要がある。しかし、受光素子列216~230に反射光Lbが入射しなければ、受光素子列201、204、・・・、215の5回分しか画素Pを検出できなくなる。
【0310】
実際には9回の検出を行えるように原稿搬送速度が決められるので、シートスルー用ガラス13の幅が狭いために読取領域Dbの幅αが狭くなっても9回の検出を行える設計になるが、換言すると、読取領域Dbの幅αの大きさに余裕があるスキャナー移動方式では、9を超える回数が可能といえる。30列の受光素子列201~230において、例えば回数Nを10又は11とすることが可能になる。もし、シートスルー方式とスキャナー移動方式とで読取領域の幅αの大小が上記とは逆になるような場合には、回数Nの大小も逆にすれば良い。
【0311】
このようにシートスルー方式とスキャナー移動方式とで、読取領域の副走査方向の幅αに差がある場合、幅αが小さい読取方式よりも大きい読取方式の回数Nを大きくする、つまり、選択するバンド領域の数を増やす構成をとることで、一方に対して他方の読取方式に対して回数Nを増やすことができ、それだけ読み取られた画像データの輝度の範囲を広げて原稿の明るさの再現性の向上を図れる。
【0312】
以上説明したように、走査制御部62は、光源を静止させた状態で搬送中の原稿を読み取るシートスルー方式と、原稿を静止させた状態で光源又はエリアセンサーを移動させて原稿を読み取るスキャナー移動方式とを選択的に実行可能である。それぞれの方式は、読取周期ごとにエリアセンサーが読取可能な原稿の読み取り領域における副走査方向の幅の大きさが異なっている。
【0313】
選択制御部64は、シートスルー方式とスキャナー移動方式のうち、エリアセンサーによる読み取り領域の副走査方向の幅が小さい方の読取方式よりも、大きい方の読取方式の方について、選択する読取画像の数を増やす。
【0314】
(7)実施例7
実施の形態の実施例7について、以下に説明する。
【0315】
上記の実施の形態及び実施例においては、選択された複数のバンド領域から、それぞれ、1本のライン画像を抽出し、その結果、複数のライン画像が抽出され、抽出した複数のライン画像を加算している。しかし、この方法には、限定されない。
【0316】
以下に示すように、選択された複数のバンド領域から、それぞれ、副走査方向に幅を有する1つの矩形画像を抽出し、その結果、複数の矩形画像が抽出され、抽出した複数の矩形画像を加算してもよい。
【0317】
図20には、時刻t-6、t-5、t-4、t-3、t-2、t-1、t、t、t、t、t、tにおいて、生成されたバンド幅画像351、352、・・・、362を示す。
【0318】
ここで、バンド幅画像351、352、・・・、362において、四角、三角、丸、星型、菱形等で示す記号は、一つの画素を示すものとする。
【0319】
また、時刻は、t-6、t-5、t-4、t-3、t-2、t-1、t 、t 、t 、t 、t 、tの順に進む。
【0320】
画像読取処理回路54のセレクタ321は、時刻t-1、t、t及びtにおけるバンド幅画像356、357、359及び361を選択するものとし、セレクタ321は、選択したバンド幅画像356、357、359及び361を、それぞれ、シフト部322a、322b、322c及び322dに対して、出力する。
【0321】
シフト部322bは、バンド幅画像357を、シフトすることなく、そのまま、加算部323に対して、出力する。
【0322】
図21に示すように、シフト部322cは、バンド幅画像359を、4画素分だけ、右側にシフトして、バンド幅画像359aを生成する。この図に示すように、バンド幅画像359aは、バンド幅画像359を右側にシフトして得られた部分画像359dと空白の領域359cとからなる。
【0323】
このように、バンド幅画像359aには、空白の領域359cが形成される。
【0324】
また、シフト部322cは、バンド幅画像361を、8画素分だけ、右側にシフトして、バンド幅画像361aを生成する。この図に示すように、バンド幅画像361aは、バンド幅画像361を右側にシフトして得られた部分画像361dと空白の領域361cとからなる。
【0325】
このように、バンド幅画像361aにも、空白の領域361cが形成される。
【0326】
空白の領域359cを埋めるために、シフト部322aは、バンド幅画像356から、その部分画像356cを抽出し、抽出した部分画像356cを、部分画像356dとして含むバンド幅画像356aを生成する。次に、シフト部322aは、バンド幅画像356aを、2画素分だけ、左側にシフトして、バンド幅画像356bを生成する。バンド幅画像356bは、バンド幅画像356aを左側にシフトして得られた部分画像356eと空白の領域356fとからなる。
【0327】
こうして生成したバンド幅画像356bは、空白の領域359cを埋めるために、用いられる。
【0328】
また、空白の領域361cを埋めるために、シフト部322aは、バンド幅画像356から、その部分画像356hを抽出し、抽出した部分画像356hを、部分画像356jとして含むバンド幅画像356iを生成する。次に、シフト部322aは、バンド幅画像356iを、2画素分だけ、左側にシフトして、バンド幅画像356gを生成する。バンド幅画像356gは、バンド幅画像356iを左側にシフトして得られた部分画像356kと空白の領域356mとからなる。
【0329】
こうして生成したバンド幅画像356gは、空白の領域361cを埋めるために、用いられる。
【0330】
加算部323は、バンド幅画像357、359a、356b、361a、356gにおけるそれぞれ対応する画素位置の輝度値を加算し、加算結果を、出力領域324に上書きする。
【0331】
このように、選択された複数のバンド領域から、それぞれ、副走査方向に幅を有する1つの矩形画像を抽出し、その結果、抽出した複数の矩形画像を加算するので、選択された複数のバンド領域から、それぞれ、1本のライン画像を抽出し、その結果、抽出した複数のライン画像を加算する場合と比較して、演算効率を向上させることができる。
【0332】
1.4 実施の形態の動作
実施の形態の動作について、図16に示すフローチャートを用いて説明する。
【0333】
図16は、シートスルー方式による読取ジョブにおいて実行される読取処理の内容を示すフローチャートであり、読取処理として、原稿Dの第1面のみを読み取る読取処理の例を示している。この読取処理は、読取制御部50により実行される。
【0334】
主制御部61は、ユーザーが選択した読取解像度を取得する(ステップS1)。この取得は、読取ジョブの開始前にユーザーがタッチパネル4aに表示される解像度選択画面490上の表示ボタン491、492、493のタッチ操作により、読取解像度として600、300、200dpiのうちいずれを選択したかを検出することにより行われる。
【0335】
主制御部61は、選択された読取解像度に対応する原稿搬送速度を設定する(ステップS2)。この設定は、主制御部61により、解像度テーブル56を参照して、読取解像度に対応する読取走査速度を読み出すことにより行われる。例えば、読取解像度として600dpiが選択された場合、原稿搬送速度が300mm/sに設定される。
【0336】
主制御部61は、設定された原稿搬送速度で原稿Dの搬送を開始するよう、制御する(ステップS3)。原稿搬送は、上記のように自動原稿搬送部40により実行される。
【0337】
主制御部61は、ランプ11を点灯して、原稿Dが読取位置151上を通過する際に原稿Dにおける上記の照射領域Db(図4)にランプ11の光Lを照射するよう、制御する(ステップS4)。
【0338】
原稿Dにおける照射領域Dbからの反射光Lbをエリアセンサー12で検出する(ステップS5)。
【0339】
次に、画像読取処理回路54により、AD変換、R、G、B信号の分離、バンド幅画像の記憶、バンド幅画像の第一領域314a~第n領域314nへの格納、複数のバンド幅画像の選択、シフト、加算、加算結果の出力領域324への上書きの各プロセスを経て、輝度R生成処理(ステップS6)、輝度G生成処理(ステップS7)、輝度B生成処理(ステップS8)が順に実行される。
【0340】
原稿Dの搬送が終了するまで(ステップS9で「No」)、ステップS4~S8が繰り返される。原稿Dの搬送が終了すると(ステップS9で「Yes」)、この読取処理を終了する。
【0341】
1.5 まとめ
以上説明したように、本実施の形態では、原稿上の同じ位置の画素PをR、G、B色ごとに、エリアセンサー12における副走査方向に異なるN(但し、Nは2以上の整数)個の受光素子で読み取って得られたN個の検出値のそれぞれを用いて画像データの輝度値を生成するので、1個の検出値から輝度値を求める従来の構成よりも、走査速度の高速化と輝度の再現性の両方を向上することが可能になる。
【0342】
また、読取解像度を低くするのに伴って原稿搬送速度を高速にする構成では、読取解像度に応じてNを適正な値に設定、具体的には600dpiの場合にNが3に設定され、200dpiの場合にNが9に設定され、原稿搬送速度が高速のために露光時間が短くなる低解像度の場合に、原稿搬送速度が低速のために露光時間が長くなる高解像度の場合よりも多い個数の受光素子による検出値を積算して輝度値を求めることができるので、高解像度の場合でも低解像度の場合でも、最適な画像データの輝度値を算出できる。
【0343】
上記では、画像読取装置の例を説明したが、これに限られず、原稿画像の読取方法であるとしてもよい。さらに、その方法をコンピュータが実行するプログラムであるとしてもよい。また、本開示に係るプログラムは、例えば磁気テープ、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、DVD-ROM、DVD-RAM、CD-ROM、CD-R、MO、PDなどの光記録媒体、フラッシュメモリ系記録媒体等、コンピュータ読み取り可能な各種記録媒体に記録することが可能であり、当該記録媒体の形態で生産、譲渡等がなされる場合もあるし、プログラムの形態でインターネットを含む有線、無線の各種ネットワーク、放送、電気通信回線、衛星通信等を介して伝送、供給される場合もある。
【0344】
2 変形例
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
【0345】
(1)上記実施の形態では、異なる読取解像度のそれぞれごとに同じ画素を読み取る回数Nの値が固定されている例を説明したが、これに限られることはない。
【0346】
例えば、読取解像度ごとにNの値をエリアセンサー12の劣化の程度に応じて初期値からこれよりも大きな値に随時更新していく制御をとることもできる。エリアセンサー12が新品のときから使用時間が長くなって寿命に近づくに連れて受光素子の感度劣化により出力値が下がっていくような場合に有効である。
【0347】
読取解像度が600dpiの場合、上記の例ではN=3が初期値になり、エリアセンサー12の劣化の程度を指標する指標値がU1、例えば新品から寿命までの期間の半分程度の期間に至ると、以降、Nを4に切り替え、指標値がU2(寿命に近い時期)に至ると、以後、Nを5に切り替える制御をとることができる。エリアセンサー12の劣化が進むのに伴ってNの値を一つずつ増やしていく制御になる。他の解像度でも同様の制御とすることができる。
【0348】
図23は、回数Nの更新処理の内容を示すフローチャートであり、この更新処理は、主制御部61により読取処理の開始前に実行される。
【0349】
まず、取得部は、エリアセンサー12の劣化の程度を示す指標値Uを取得する(ステップS101)。ここで、指標値Uは、エリアセンサー12の累積使用時間、読取ジョブやコピージョブの累積実行時間や累積実行回数などとすることができる。累積使用時間や累積実行時間が長くなるほど、又は累積実行回数が多くなるほど、エリアセンサー12の受光素子の感度劣化が進み易くなるからである。また、予め配置されている白色基準板をエリアセンサー12で読み取ったときの検出値が新品時からどの程度、低下しているかによって、エリアセンサー12の劣化の程度を実測する構成も採り得る。
【0350】
取得した指標値Uが所定値U1未満であれば(ステップS102で「Yes」)、回数Nを初期値のまま設定して(ステップS103)、当該更新処理を終了する。所定値U1は、指標値Uが当該所定値U1以上になると、エリアセンサー12の劣化の進行により回数Nの値を現在に対して一つ増やす必要があると想定される閾値であり、予め実験などにより決められる。後述の所定値U2も同様である。
【0351】
取得した指標値Uが所定値U1以上かつ所定値U2(>U1)未満の場合(ステップS102で「No」、S104で「Yes」)、回数Nの初期値に「1」を加算した値に回数Nを更新して(ステップS105)、当該更新処理を終了する。さらに、指標値Uが所定値U2以上の場合(ステップS104で「No」)、回数Nの初期値に「2」を加算した値に回数Nを更新して(ステップS106)、当該更新処理を終了する。
【0352】
このようにエリアセンサー12の劣化に伴って受光素子の感度劣化により出力値が下がっても、その下がった分、積算する検出値の数を増やす、つまり、選択するバンド領域の数を増やすことで、回数Nを一定とする構成よりも読み取られた画像データの輝度範囲を広げることができる。
【0353】
また、回数Nの値を所定値U1とU2による2段階の更新としたが、これに限られず、例えば1回のみの更新や3段階以上に細かく更新することも可能である。なお、エリアセンサー12の劣化により各受光素子の検出値が新品時よりも低下気味になるといはいえ、回数Nが大きくなるほど、N個の検出値を積算してなる積算値も大きくなり、上記の上限値Vuに近づく。積算値が上限値Vu以下になる範囲内で回数Nの値が可変される。
【0354】
このように、エリアセンサー12の劣化の程度を指標する指標値を取得する取得部を備え、取得された指標値が閾値以上の場合、選択制御部64は、閾値未満の場合よりも、選択する読取画像の数を増やす。
【0355】
指標値は、エリアセンサー12の累積使用時間又は原稿の累積読取回数であるとしてもよい。
【0356】
(2)上記実施の形態では、読取周期を一定としたが、読取解像度に応じて可変可能としても良い。読取周期の可変は、上記のシャッター129の開閉周期を可変することで実現できる。例えば、シートスルー方式は、スキャナー移動方式に比べて、原稿Dの帯状の照射領域Db(図4)の幅αが狭い構成になり易い。幅αが狭い場合、特に低解像度では、高解像度よりも原稿搬送速度が高速であり回数Nの値が大きくなるが、原稿Dの画素PがN回に亘って読み取られる前に照射領域Dbを抜けてしまうと、同じ画素Pに対するN回の読み取りができなくなる。そこで、シートスルー方式で低解像度のときに読取周期を上げることで、単位時間に読み取り可能な走査ラインの数を増やすことでき、同じ画素Pに対するN回の読み取りを行えるようになる。
【0357】
(3)上記実施の形態では、R、G、B色のそれぞれで、同じ画素Pを読み取る回数Nの値も同じ値としたが、これに限られず、色別で回数Nの値を異ならせる構成をとることもできる。例えば、ベイヤー配列をとるエリアセンサー12を用いる場合、一つの受光部121においてR、B色の受光素子R、Bが1個ずつであるのに対しG色の受光素子Gが2個、副走査方向にずれた位置に配置されている。この受光素子の配列を利用して、同じ画素Pを読み取る回数Nを、R、B色についてはG色に対して2倍とする構成をとることができる。具体的には、読取解像度が600dpiの場合、G色に対する回数Nが3になり、R、B色に対する回数Nが6になる。
【0358】
回数Nが3の場合、G色については、同じ画素Pが副走査方向に異なる位置の3個の受光部121で1回ずつ、合計3回に亘って読み取られるが、3個の受光部121に含まれる6個の受光素子Gによる検出値を積算してなる積算値が、その画素Pの画像データの輝度値(G色)になる。
【0359】
R色(又はB色)については、同じ画素Pが副走査方向に異なる位置の6個の受光部121で1回ずつ、合計6回に亘って読み取られ、6個の受光素子R(又はB)による検出値を積算してなる積算値が、その画素Pの画像データの輝度値(R色又はG色)になる。他の解像度でも同様とすることができる。
【0360】
(4)上記実施の形態では、画像読取制御部50は、シフト制御部65及びシフト部322a、322b、322c、・・・を備えている。しかし、画像読取制御部50は、シフト制御部65及びシフト部322a、322b、322c、・・・を備えない構成としてもよい。
【0361】
この場合、例えば、セレクタ321により、第1バンド幅画像、第2バンド幅画像及び第3バンド幅画像が選択された場合に、第1バンド幅画像における原稿上の所定のライン位置に相当する第1ライン画像と、第2バンド幅画像における原稿上の所定のライン位置に相当する第2ライン画像と、第2バンド幅画像における原稿上の所定のライン位置に相当する第3ライン画像とを加算するために、加算部323は、第1バンド幅画像から第1ライン画像を抽出し、第2バンド幅画像から第2ライン画像を抽出し、第3バンド幅画像から第3ライン画像を抽出し、抽出した第1ライン画像と第2ライン画像と第3ライン画像とを加算すればよい。
【0362】
(5)上記実施の形態では、本開示に係る両面画像読取装置としての画像読取装置1がMFPに備えられる構成例を説明したが、これに限られず、MFPや複写機などの画像形成装置の両面画像読取装置として設けられるとしても良い。
【0363】
また、原稿Dの第1面の画像を読み取る第1読取部を第1スライダー18や第2スライダー19などを備える画像読取部10とし、原稿Dの第2面の画像を読み取る第2読取部をCIS410とした構成例を説明したが、これに限られない。例えば、第1読取部をCISとして、そのCISをシートスルー用ガラス13の下に固定配置することでシートスルー方式の構成とすることもできる。また、スキャナー移動方式のみの構成とすることもできる。スキャナー移動方式としては、第1スライダー18や第2スライダー19を備えるものに代えて、例えば、主走査方向に原稿幅以上の長さを有するエリアセンサー自体を、副走査方向に移動させるものもあり得る。また、カラー画像を読み取り可能なCCDエリアセンサー12を用いる構成例を説明したが、これに限られない。例えば、モノクロ画像として読み取る、具体的には上記のカラーフィルターが配置されておらず、一つの受光素子が1画素に対応して、原稿画像の明るさに応じた検出値を出力するエリアセンサーを用いる構成をとることできる。
【0364】
さらに、本開示に係る画像読取装置は、画像形成装置に設けられるものではなく、原稿Dの両面の画像を読み取るスキャナーなどの画像読取専用の装置に適用することもできる。また、画像読取装置は、原稿Dの片面のみを読み取る読取装置とすることもできる。
【0365】
(6)また、上記実施の形態及び上記変形例の構成をそれぞれ可能な限り組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0366】
本開示は、原稿の画像を読み取る読取装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0367】
1 画像読取装置
2 画像形成部
4 操作部
10 画像読取部(第1読取部)
11 ランプ
12r、12g、12b 受光素子
12 カラーCCDエリアセンサー
18 第1スライダー
40 自動原稿搬送部
50 読取制御部
51 CPU
54 画像読取処理回路
55 記憶部
56 解像度テーブル
61 主制御部
63 切換制御部
64 選択制御部
65 シフト制御部
66 決定部
120 受光面
121 受光部
129 シャッター
151 読取位置
201~230 受光素子列
301 AD変換部
302 分離部
303 切換部
310a G処理回路
310b G処理回路
311 切換部
312 セレクタ
312 切換部
313 画像メモリ
321 セレクタ
322a~322e シフト部
323 加算部
410 CIS(第2読取部)
415、417 駆動モーター
D 原稿
Db 読取領域
L 光源の光
Lb 原稿からの反射光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23