(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168408
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】雌端子、及び雌端子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20221031BHJP
H01R 43/16 20060101ALI20221031BHJP
H01R 13/03 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
H01R13/11 A
H01R43/16
H01R13/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073826
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 裕樹
【テーマコード(参考)】
5E063
【Fターム(参考)】
5E063GA03
5E063GA05
5E063XA09
(57)【要約】
【課題】ばね部材が端子本体に対して正規の位置に配されていることを容易に確認する。
【解決手段】底壁22を有する端子本体10と、前記端子本体10に取り付けられたばね部材70と、を有する雌端子1であって、前記端子本体10は、前記底壁22に連なるとともに雄端子80のタブ81が挿入される接続筒部20と、前記接続筒部20内に挿入された前記タブ81に対して弾性的に接触する弾性接触片50と、前記底壁22を貫通する貫通孔31と、を有し、前記ばね部材70は前記弾性接触片50よりも大きな弾性率を有する金属で構成されており、前記ばね部材70の一方の端部は前記弾性接触片50と当接して前記弾性接触片50を前記タブ81に接近させる方向に付勢するようになっており、前記ばね部材70の他方の端部は前記ばね部材70が前記端子本体10に取り付けられた状態で前記貫通孔31の孔縁部の内側の領域に位置するようになっている雌端子1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁を有する端子本体と、前記端子本体に取り付けられたばね部材と、を有する雌端子であって、
前記端子本体は、前記底壁に連なるとともに雄端子のタブが挿入される接続筒部と、前記接続筒部内に挿入された前記タブに対して弾性的に接触する弾性接触片と、前記底壁を貫通する貫通孔と、を有し、
前記ばね部材は前記弾性接触片よりも大きな弾性率を有する金属で構成されており、前記ばね部材の一方の端部は前記弾性接触片と当接して前記弾性接触片を前記タブに接近させる方向に付勢するようになっており、前記ばね部材の他方の端部は前記ばね部材が前記端子本体に取り付けられた状態で前記貫通孔の孔縁部の内側の領域に位置するようになっている雌端子。
【請求項2】
前記ばね部材は前記端子本体に形成されたかしめ部によって前記端子本体にかしめ付けられている請求項1に記載の雌端子。
【請求項3】
前記端子本体は、電線に圧着する電線圧着部と、前記接続筒部と前記電線圧着部との間に設けられて前記接続筒部と前記電線圧着部とを連結する連結部と、を有し、
前記貫通孔は前記連結部の前記底壁に設けられている請求項1または請求項2に記載の雌端子。
【請求項4】
前記ばね部材の他方の端部にはせん断面が形成されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の雌端子。
【請求項5】
前記底壁には、前記弾性接触片に向かって突出するとともに、前記弾性接触片に対して過度に力が加えられた場合に前記弾性接触片と当接することにより前記弾性接触片の過度撓みを抑制する過度撓み抑制片が設けられており、
前記過度撓み抑制片は、前記ばね部材の前記一方の端部と離れている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の雌端子。
【請求項6】
前記接続筒部は前記底壁の側縁から延びる側壁を有し、前記側壁は前記側壁を貫通する窓部を有し、
前記窓部からは、前記弾性接触片と前記ばね部材の前記一方の端部とが当接する部分が露出している請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の雌端子。
【請求項7】
底壁を有する端子本体と、前記端子本体に取り付けられるばね部材と、を有する雌端子の製造方法であって、
第1金属板材をプレス加工することにより、前記底壁に貫通孔を有する端子本体素片を形成する工程と、
前記第1金属板材よりも弾性率が大きな第2金属板材をプレス加工することによりばね素片を形成する工程と、
前記ばね素片を前記底壁に載置する工程と、
前記貫通孔にプレス加工用の金型を挿通させて前記ばね素片をプレス加工することにより、前記ばね部材を形成する工程と、を備えた雌端子の製造方法。
【請求項8】
前記底壁に載置された前記ばね素片又は前記ばね部材を前記底壁にかしめ付ける工程を備えた請求項7に記載の雌端子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、雌端子、及び雌端子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開平7-45322に記載された雌端子が知られている。この雌端子は、雌型コンタクトの雄型コンタクト受入部を、上壁、側壁及び底壁からなるほぼ箱形に形成し、この内部に、ばね片を配置したものである。さらに、ばね片よりも高い弾性率を有するステンレス鋼製のばね部材をばね片の下方に配置するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成によれば、ばね部材は箱状をなす雄型コンタクト受け入れ部内に配されるので、ばね部材が雄型コンタクト受け入れ部内において正規の位置に配されたかを確認することが困難になるという問題がある。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ばね部材が正規の位置に配されていることを容易に確認できる雌端子に係る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、底壁を有する端子本体と、前記端子本体に取り付けられたばね部材と、を有する雌端子であって、前記端子本体は、前記底壁に連なるとともに雄端子のタブが挿入される接続筒部と、前記接続筒部内に挿入された前記タブに対して弾性的に接触する弾性接触片と、前記底壁を貫通する貫通孔と、を有し、前記ばね部材は前記弾性接触片よりも大きな弾性率を有する金属で構成されており、前記ばね部材の一方の端部は前記弾性接触片と当接して前記弾性接触片を前記タブに接近させる方向に付勢するようになっており、前記ばね部材の他方の端部は前記ばね部材が前記端子本体に取り付けられた状態で前記貫通孔の孔縁部の内側の領域に位置するようになっている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ばね部材が端子本体に対して正規の位置に配されていることを容易に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る雌端子を示す断面図であって、
図3のI-I線断面図である。
【
図2】
図2は、雄端子と雌端子とを示す側面図である。
【
図6】
図6は、
図2における領域Pを示す一部拡大側面図である。
【
図7】
図7は、
図3における領域Qを示す一部拡大平面図である。
【
図8】
図8は、
図1における領域Rを示す一部拡大平面図である。
【
図9】
図9は、第1金属板材がプレス加工されることにより形成された端子本体素片を示す平面図である。
【
図10】
図10は、第2金属板材がプレス加工されることにより形成されたばね素片が、端子本体素片に載置された状態を示す平面図である。
【
図11】
図11は、第2金属板材がプレス加工されることによりばね部材が形成された状態を示す平面図である。
【
図12】
図12は、かしめ部がばね部材にかしめ付けられた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。
【0010】
(1)本開示は、底壁を有する端子本体と、前記端子本体に取り付けられたばね部材と、を有する雌端子であって、前記端子本体は、前記底壁に連なるとともに雄端子のタブが挿入される接続筒部と、前記接続筒部内に挿入された前記タブに対して弾性的に接触する弾性接触片と、前記底壁を貫通する貫通孔と、を有し、前記ばね部材は前記弾性接触片よりも大きな弾性率を有する金属で構成されており、前記ばね部材の一方の端部は前記弾性接触片と当接して前記弾性接触片を前記タブに接近させる方向に付勢するようになっており、前記ばね部材の他方の端部は前記ばね部材が前記端子本体に取り付けられた状態で前記貫通孔の孔縁部の内側の領域に位置するようになっている。
【0011】
ばね部材の他方の端部が貫通孔の孔縁部の内側の領域に位置しているかを確認するという簡易な手法により、ばね部材が端子本体に対して正規の位置に配されたかを容易に確認できる。
【0012】
(2)前記ばね部材は前記端子本体に形成されたかしめ部によって前記端子本体にかしめ付けられていることが好ましい。
【0013】
貫通孔からばね部材の他方の端部を確認することにより、かしめ部によってばね部材が端子本体に固定された際に、ばね部材が傾いていないかを確認できる。
【0014】
(3)前記端子本体は、電線に圧着する電線圧着部と、前記接続筒部と前記電線との間に設けられて前記接続筒部と前記電線圧着部とを連結する連結部と、を有し、前記貫通孔は前記連結部の前記底壁に設けられていることが好ましい。
【0015】
電線圧着部が電線に圧着する際、電線圧着部には大きな力が加えられる。また、雄端子のタブと接続筒部とが電気的に接続される際には、接続筒部に弾性接触片から大きな力が加えられる。一方、連結部には、電線圧着部、及び接続筒部のように大きな力が加わらない。このため、端子本体の強度が低下することを抑制しつつ、貫通孔を形成することができる。
【0016】
(4)前記ばね部材の他方の端部にはせん断面が形成されていることが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、ばね部材を底壁に載置した状態でプレス加工する際に、ばね部材を切断するための金型を貫通孔内に挿通させることができる。これにより、ばね部材を底壁に載置した状態でプレス加工することが可能になる。
【0018】
(5)前記底壁には、前記弾性接触片に向かって突出するとともに、前記弾性接触片に対して過度に力が加えられた場合に前記弾性接触片と当接することにより前記弾性接触片の過度撓みを抑制する過度撓み抑制片が設けられており、前記過度撓み抑制片は、前記ばね部材の前記一方の端部と離れていることが好ましい。
【0019】
ばね部材は比較的に弾性率が高いので、ばね部材が過度撓み抑制片と接触すると、過度撓み抑制片が変形するおそれがある。本開示によれば、過度撓み抑制片はばね部材と離れているので、過度撓み抑制片が変形することを抑制できる。
【0020】
(6)前記接続筒部は前記底壁の側縁から延びる側壁を有し、前記側壁は前記側壁を貫通する窓部を有し、前記窓部からは、前記弾性接触片と前記ばね部材の前記一方の端部とが当接する部分が露出していることが好ましい。
【0021】
弾性接触片とばね部材の一方の端部とが当接していることを窓部から容易に確認することができる。
【0022】
(7)本開示は、底壁を有する端子本体と、前記端子本体に取り付けられるばね部材と、を有する雌端子の製造方法であって、第1金属板材をプレス加工することにより、前記底壁に貫通孔を有する端子本体素片を形成する工程と、前記第1金属板材よりも弾性率が大きな第2金属板材をプレス加工することによりばね素片を形成する工程と、前記ばね素片を前記底壁に載置する工程と、前記貫通孔にプレス加工用の金型を挿通させて前記ばね素片をプレス加工することにより、前記ばね部材を形成する工程と、を備える。
【0023】
底壁にばね素片を載置した状態でプレス加工することにより、ばね部材を形成できる。
【0024】
(8)前記底壁に載置された前記ばね素片又は前記ばね部材を前記底壁にかしめ付ける工程を備えることが好ましい。
【0025】
ばね素片又はばね部材を底壁にかしめ付けることにより、ばね部材又はばね素片を強固に底壁に固定できる。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0027】
<実施形態1>
本開示の実施形態1について、
図1から
図12を参照しつつ説明する。
図1に示されるように、本実施形態における雌端子1は、タブ81を有する雄端子80(タブ部のみ図示)と接続される。雌端子1は、端子本体10と、端子本体10とは別体に形成されて、端子本体10に取り付けられるばね部材70と、を備えるものである。以下の説明においては、矢線Zで示される方向を上方とし、矢線Yで示される方向を前方とし、矢線Xで示される方向を左方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0028】
図1に示されるように、端子本体10は、銅、黄銅等の銅合金からなる第1金属板材90をプレス加工することにより、前後方向に細長い形状に形成されたものである。端子本体10は前後方向に延びる底壁22を有する。底壁22は端子本体10の前端部から後端部に至るまでつながっている。
図2に示されるように、端子本体10の略前半領域には、雄端子80のタブ81が矢線Aで示される方向から挿入される接続筒部20が形成され、略後半領域には、電線60が接続される電線接続部40が形成されている。
【0029】
図2に示されるように、接続筒部20は、前後方向に細長い角筒状をなし、その前端には、雄端子80が挿入される端子挿入口21が設けられている。接続筒部20は、底壁22の前半部分の左右両端縁から上方へ起立した一対の側壁23と、これら一対の側壁23の上端に跨って底壁22と対向して配される天井壁24とを備えている(
図1参照)。
【0030】
図1に示されるように、電線接続部40は、接続筒部20における底壁22の後端から後方に延びる連結部30を介して、接続筒部20に連結されている。この電線接続部40は、連結部30の後端から後方に延びる底壁22の後半部分と、底壁22の後半部分の左右両側縁から突出する一対のワイヤーバレル部42及びインシュレーションバレル部43とを備えている。ワイヤーバレル部42及びインシュレーションバレル部43は、底壁22の後半部分に載置された電線60の芯線61及び絶縁被覆62にかしめ付けられ、電気的、機械的に接続される。
【0031】
図1に示されるように、接続筒部20の内部には弾性接触片50が配されている。弾性接触片50は、底壁22の前端縁から後方に折り曲げられて形成されている。弾性接触片50は、前後方向について接続筒部20の略中央位置まで延びている。弾性接触片50は、底壁22の前端部を支点として、接続筒部20内において上下方向に弾性変形可能に形成されている。弾性接触片50の後端部寄りの位置には、上方に突出する接点部54が形成されている。接点部54は雄端子80のタブ81に対して、下方から弾性的に接触するようになっている。
【0032】
ばね部材70は、第1金属板材90よりも大きな弾性率を有する第2金属板材91をプレス加工することにより形成される。本実施形態1においては、第2金属板材91はステンレス鋼により形成される。ばね部材70は、全体として前後方向に細長い板状とされている。
【0033】
図1に示されるように、ばね部材70が底壁22に載置された状態で、ばね部材70の前端部(一方の端部の一例)は、前後方向について接続筒部20の略中央に位置している。ばね部材70の前端部は、弾性接触片50が下方に弾性変形したときに、弾性接触片50の後端部に下方から当接して弾性接触片50を上方に付勢する付勢部71とされる。これにより、弾性接触片50はタブ81に接近する方向に付勢されるようになっている。弾性接触片50が自然状態のときは、弾性接触片50の後端部と、ばね部材70の付勢部71とは、離れていてもよいし、接触していてもよい。
【0034】
図1に示されるように、ばね部材70の後半部分は、端子本体10の底壁22の上面に載置される載置部72とされる。載置部72は、底壁22の上面と接触している。付勢部71と載置部72との間の領域は、ばね部材70が底壁22の上面に載置された状態で、前方に向かって上り勾配になっている傾斜部73となっている。
【0035】
図3に示されるように、ばね部材70が底壁22に載置された状態で、載置部72の後端部76は、接続筒部20の後端部よりも後方に延びている。これにより、載置部72の後端部76は、連結部30の底壁22の上面に位置するようになっている。載置部72の後端部76の後面には、後述するプレス加工により形成されたせん断面77が形成されている。
【0036】
図4に示されるように、載置部72の前端部には、左右両側縁から左右両側方に突出する係止突部74が形成されている。係止突部74は、載置部72の各側縁に、前後方向に間隔を空けて2つ並んで形成されている。
【0037】
図5に示されるように、接続筒部20における一対の側壁23には、接続筒部20の内方に突出するとともに、ばね部材70の載置部72にかしめ付けられるかしめ部25が形成されている。かしめ部25は、接続筒部20の側壁23を切り起こして形成されている。かしめ部25は、載置部72の両側縁に設けられた前後に並ぶ2つの係止突部74の間にかしめ付けられる。これにより、ばね部材70は、前方、及び後方への移動が記載された状態で、端子本体10に取り付けられる。2つのかしめ部25は重なりあうことなく、互いの先端の間に若干の隙間をあけて配される。
【0038】
図2に示されるように、接続筒部20の側壁23は、弾性接触片50の後端部、及びばね部材70の付勢部71の左方、及び右方に対応する位置に、それぞれ、側壁23を左右方向に貫通する窓部26が設けられている。
図6に示されるように、窓部26は、左右方向から見て、略長方形状をなしている。左右方向から見て、窓部26の孔縁部の内側の領域に、弾性接触片50の後端部と、ばね部材70の付勢部71とが、配置されるようになっている。これにより、窓部26からは弾性接触片50の後端部と、ばね部材70の付勢部71とが視認可能になっている。
【0039】
図7に示されるように、連結部30の底壁22には、底壁22を上下方向に貫通する貫通孔31が形成されている。貫通孔31は、上下方向から見て四角形状をなしている。詳細には、貫通孔31は、前側の孔縁部の長さ寸法が後側の孔縁部の長さ寸法よりも大きな略台形状をなしている。ばね部材70が端子本体10に取り付けられた状態で、ばね部材70の後端部76は、貫通孔31の孔縁部の内側の領域内に位置するようになっている。ばね部材70の後端部76の下面は、貫通孔31から下方に露出している。ばね部材70の後端部76と、貫通孔31の孔縁部との間には隙間32が形成されている。
【0040】
図8に示されるように、ばね部材70の後端部76には、下方に突出するバリ75、又は、下方への変形部分が形成されることがある。バリ75は、ばね部材70がプレス加工される際に形成されたものである。バリ75は、貫通孔31の孔縁部の内側の領域に位置するようになっている。これにより、バリ75が底壁22の板厚内に配され、底壁22の外方には突出しないようになっている。
【0041】
図1に示されるように、接続筒部20の底壁22には、弾性接触片50の下方であって、且つ、ばね部材70の付勢部71よりも前方の位置に、上方に突出する過度撓み抑制片27が設けられている。過度撓み抑制片27は、底壁22が切り起こされて形成されている。過度撓み抑制片27の上端部と、自然状態の弾性接触片50の下縁部との間には隙間が形成されている。雄端子80のタブ81が接続筒部20内に挿入された状態においても、過度撓み抑制片27の上端部と、弾性接触片50の下縁部との間には隙間が形成されるようになっている。弾性接触片50が雄端子80のタブ81によって過度の下方に押された場合に、過度撓み抑制片27の上端部が弾性接触片50の下縁部に下方から当接することにより、弾性接触片50が下方に過度撓みすることが抑制されるようになっている。なお、弾性接触片50が自然状態にあるとは、弾性接触片50に外部から力が加えられていない状態をいう。
【0042】
過度撓み抑制片27は、ばね部材70の付勢部71よりも前方に設けられているので、過度撓み抑制片27はばね部材70とは接触しないようになっている。
【0043】
[雌端子の製造工程]
雌端子1の製造は、例えば以下のようにして行われる。尚、雌端子1の製造工程は以下の記載に限定されない。
【0044】
まず、
図9に示されるように、銅又は銅合金からなる第1金属板材90がプレス加工されることにより、端子本体素片10Eが形成される。このとき、端子本体素片10Eの底壁22には貫通孔31が形成される
【0045】
次に、ステンレス鋼からなる第2金属板材91がプレス加工されることにより、ばね素片70Eが形成される。次に、
図10に示されるように、ばね素片70Eが底壁22上に載置される。
【0046】
次いで、
図11に示されるように、貫通孔31内に切断用の金型92が上方から挿通されることにより、ばね素片70Eが切断され、ばね部材70が形成される。このとき、ばね部材70の後端部76の後面にせん断面77が形成される。また、ばね部材70の後端部76にバリ75が形成されることがある。金型92は、貫通孔31の孔縁部と、ばね部材70の後端部76との間を上下方向に挿通可能な大きさに設定されている。
【0047】
次いで、
図12に示されるように、ばね部材70が底壁22の上に載置された状態で、かしめ部25が内側に倒れ込むように曲げ加工されることにより、ばね部材70が端子本体素片10Eにかしめ付けられる。
【0048】
なお、かしめ部25の曲げ加工は、ばね素片70Eが底壁22の上に載置された状態であって、ばね部材70の切断(せん断面77形成)がされる前に行われてもよい。この場合には、ばね素片70Eがプレス加工される際に位置ずれすることを抑制できる。
【0049】
端子本体素片10Eが曲げ加工されることにより、弾性接触片50、及び接続筒部20が形成される。これにより雌端子1が完成する(
図1参照)。
【0050】
[本実施形態1の作用効果]
続いて本実施形態1の作用効果について説明する。本実施形態1に係る雌端子1は、底壁22を有する端子本体10と、端子本体10に取り付けられたばね部材70と、を有する雌端子1であって、端子本体10は、底壁22に連なるとともに雄端子80のタブ81が挿入される接続筒部20と、接続筒部20内に挿入されたタブ81に対して弾性的に接触する弾性接触片50と、底壁22を貫通する貫通孔31と、を有し、ばね部材70は弾性接触片50よりも大きな弾性率を有する金属で構成されており、ばね部材70の付勢部71は弾性接触片50と当接して弾性接触片50をタブ81に接近させる方向に付勢するようになっており、ばね部材70の後端部76はばね部材70が端子本体10に取り付けられた状態で貫通孔31の孔縁部の内側の領域に位置するようになっている。
【0051】
ばね部材70の後端部76が貫通孔31の孔縁部の内側の領域に位置しているかを確認するという簡易な手法により、ばね部材70が端子本体10に対して正規の位置に配されたかを容易に確認できる。
【0052】
また、本実施形態1によれば、ばね部材70は端子本体10に形成されたかしめ部25によって端子本体10にかしめ付けられている。
【0053】
貫通孔31からばね部材70の後端部76を確認することにより、かしめ部25によってばね部材70が端子本体10に固定された際に、ばね部材70が傾いていないかを確認できる。
【0054】
また、本実施形態1によれば、端子本体10は、電線60に圧着する電線接続部40と、接続筒部20と電線接続部40との間に設けられて接続筒部20と電線接続部40とを連結する連結部30と、を有し、貫通孔31は連結部30の底壁22に設けられている。
【0055】
電線接続部40が電線60に圧着する際、電線接続部40には大きな力が加えられる。また、雄端子80のタブ81と接続筒部20とが電気的に接続される際には、接続筒部20に弾性接触片50から大きな力が加えられる。一方、連結部30には、電線接続部40、及び接続筒部20のように大きな力が加わらない。このため、端子本体10の強度が低下することを抑制しつつ、貫通孔31を形成することができる。
【0056】
また、本実施形態1によれば、ばね部材70の後端部76にはせん断面77が形成されている。
【0057】
上記の構成によれば、ばね部材70を底壁22に載置した状態でプレス加工する際に、ばね部材70を切断するための金型92を貫通孔31内に挿通させることができる。これにより、ばね部材70を底壁22に載置した状態でプレス加工することが可能になる。
【0058】
また、本実施形態1によれば、底壁22には、弾性接触片50に向かって突出するとともに、弾性接触片50に対して過度に力が加えられた場合に弾性接触片50と当接することにより弾性接触片50の過度撓みを抑制する過度撓み抑制片27が設けられており、過度撓み抑制片27は、ばね部材70の前端部と離れている。
【0059】
ばね部材70は比較的に弾性率が高いので、ばね部材70が過度撓み抑制片27と接触すると、過度撓み抑制片27が変形するおそれがある。しかし、本開示によれば、過度撓み抑制片27はばね部材70と離れているので、過度撓み抑制片27が変形することを抑制できる。
【0060】
また、本実施形態1によれば、接続筒部20は底壁22の側縁から延びる側壁23を有し、側壁23は側壁23を貫通する窓部26を有し、窓部26からは、弾性接触片50とばね部材70の付勢部71とが当接する部分が露出している。
【0061】
そのため、弾性接触片50とばね部材70の付勢部71とが当接していることを窓部26から容易に確認することができる。
【0062】
本開示に係る雌端子1の製造方法は、底壁22を有する端子本体10と、端子本体10に取り付けられるばね部材70と、を有する雌端子1の製造方法であって、第1金属板材90をプレス加工することにより、底壁22に貫通孔31を有する端子本体素片10Eを形成する工程と、第1金属板材90よりも弾性率が大きな第2金属板材91をプレス加工することによりばね素片70Eを形成する工程と、ばね素片70Eを底壁22に載置する工程と、貫通孔31にプレス加工用の金型92を挿通させてばね素片70Eをプレス加工することにより、ばね部材70を形成する工程と、を備える。
【0063】
底壁22にばね素片70Eを載置した状態でプレス加工することにより、ばね部材70を形成できる。
【0064】
また、本実施形態1に係る雌端子1の製造方法は、底壁22に載置されたばね部材70を底壁22にかしめ付ける工程を備える。
【0065】
ばね部材70を底壁22にかしめ付けることにより、ばね部材70を底壁22に強固に固定できる。
【0066】
<他の実施形態>
(1)ばね部材70と、端子本体10との固定方法は、かしめ付けに限られず、ばね部材70と端子本体10とは溶接されていてもよく、また、リベット止めされていてもよい。
【0067】
(2)貫通孔31は連結部30と異なる位置に設けられていてもよく、例えば、接続筒部20の底壁22に設けられていてもよいし、ワイヤーバレル部42の底壁22に設けられていてもよい。
【0068】
(3)過度撓み抑制片27は省略してもよい。また、過度撓み抑制片27はばね部材70と当接して、ばね部材70の過度撓みを抑制するものとしてもよい。
【0069】
(4)窓部26は省略してもよい。
【0070】
(5)ばね部材70のバリ75は上方に突出する構成としてもよい。
【0071】
(6)本実施形態1においては、ばね部材70が2つのかしめ部25によって底壁22にかしめ付けられる構成としたが、これに限られず、3つ以上のかしめ部25によって底壁22にばね部材70がかしめ付けられる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1: 雌端子
10: 端子本体
10E: 端子本体素片
20: 接続筒部
21: 端子挿入口
22: 底壁
23: 側壁
24: 天井壁
25: かしめ部
26: 窓部
27: 過度撓み抑制片
30: 連結部
31: 貫通孔
32: 隙間
40: 電線接続部
42: ワイヤーバレル部
43: インシュレーションバレル部
50: 弾性接触片
54: 接点部
60: 電線
61: 芯線
62: 絶縁被覆
70: ばね部材
70E: ばね素片
71: 付勢部
72: 載置部
73: 傾斜部
74: 係止突部
75: バリ
76: 後端部
77: せん断面
80: 雄端子
81: タブ
90: 第1金属板材
91: 第2金属板材
92: 金型
【手続補正書】
【提出日】2022-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
(3)前記端子本体は、電線に圧着する電線圧着部と、前記接続筒部と前記電線圧着部との間に設けられて前記接続筒部と前記電線圧着部とを連結する連結部と、を有し、前記貫通孔は前記連結部の前記底壁に設けられていることが好ましい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
図1に示されるように、端子本体10は、銅、黄銅等の銅合金からなる第1金属板材90をプレス加工することにより、前後方向に細長い形状に形成されたものである。端子本体10は前後方向に延びる底壁22を有する。底壁22は端子本体10の前端部から後端部に至るまでつながっている。
図2に示されるように、端子本体10の略前半領域には、雄端子80のタブ81が矢線Aで示される方向から挿入される接続筒部20が形成され、略後半領域には、電線60が接続される電線接続部
(電線圧着部の一例)40が形成されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
図5に示されるように、接続筒部20における一対の側壁23には、接続筒部20の内方に突出するとともに、ばね部材70の載置部72にかしめ付けられるかしめ部25が形成されている。かしめ部25は、接続筒部20の側壁23を切り起こして形成されている。かしめ部25は、載置部72の両側縁に設けられた前後に並ぶ2つの係止突部74の間にかしめ付けられる。これにより、ばね部材70は、前方、及び後方への移動が
規制された状態で、端子本体10に取り付けられる。2つのかしめ部25は重なりあうことなく、互いの先端の間に若干の隙間をあけて配される。