(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168415
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】車両用空調ユニットの取付構造
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20221031BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20221031BHJP
B60K 37/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B60H1/00 102
B62D25/08 J
B60K37/00 D
B60K37/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073840
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】天野 聡士
【テーマコード(参考)】
3D203
3D344
3L211
【Fターム(参考)】
3D203BB37
3D203CA23
3D203CA24
3D203CA29
3D203DA18
3D344AA07
3D344AA14
3D344AB01
3D344AC13
3D344AC30
3L211BA41
3L211DA16
3L211DA96
(57)【要約】
【課題】車室前方に空調ユニットを備えた車両において、車両の衝突時、空調ユニットが車室側へ移動することを防止することができる車両用空調ユニットの取付構造を提供する。
【解決手段】フロアパネル31と、フロントパネル32と、インストルメントパネル4と、車幅方向に延設されたクロスメンバ6と、フロントパネル31とインストルメントパネル4との間の空間に収容され、クロスメンバ6及びフロアパネル31に固定支持された空調ユニット7と、クロスメンバ6に固定支持され、車両前方から荷重を受けた際に空調ユニット7が車室側へ移動することを規制する規制部材8と、を備えた車両用空調ユニットの取付構造であって、空調ユニット7は、上部から延出してクロスメンバ6に固定支持される2つの脚部72を有し、規制部材8は、2つの脚部72の間に車両前方からの荷重を受ける受け部83を有している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室のフロアパネルと、
前記フロアパネルから立設されたフロントパネルと、
前記フロントパネルよりも車室内側に設置されたインストルメントパネルと、
前記フロントパネルと前記インストルメントパネルとの間に車幅方向に延設されたクロスメンバと、
前記フロントパネルと前記インストルメントパネルとの間の空間に収容され、前記クロスメンバ及び前記フロアパネルに固定支持された空調ユニットと、
前記クロスメンバに固定支持され、車両前方から荷重を受けた際に前記空調ユニットが車室側へ移動することを規制する規制部材と、
を備えた車両用空調ユニットの取付構造であって、
前記空調ユニットは、上部から延出して前記クロスメンバに固定支持された2つの脚部を有し、
前記規制部材は、前記2つの脚部の間に車両前方からの荷重を受ける受け部を有していることを特徴とする、
車両用空調ユニットの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用空調ユニットの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の空調ユニットは、乗用車ではエンジンルームと車室との間に配設され、トラックでは車室前方側に配設されている。特許文献1には、空調ユニットを搭載したトラックの車室の前部構造が記載されている。
【0003】
特許文献1の車室の前部構造では、空調機器は、フロアパネルに下方から支持される被支持部と、被支持部よりも上方でクロスメンバに固定される固定部とを有し、インストルメントパネルの前方でフロアパネルとクロスメンバとの間に配置されて、クロスメンバに支持されている。空調機器の固定部及び被支持部は、車両の側面視において空調機器の重心部の位置を通過する仮想直線上に、重心部の位置を上下から挟むように配置される。
【0004】
このように、車両の側面視において空調機器の被支持部と固定部と重心部の位置とが一直線上に配置されるので、空調機器の被支持部及び固定部から重心部の位置までの車両の側面視における距離が最短距離になり、距離が短い分だけ空調機器が前後方向や上下方向に揺れた際に空調機器の被支持部及び固定部に発生する応力を抑えることができ、空調機器からフロアパネルやクロスメンバに掛かる負荷を抑えることができる。このため、クロスメンバの支持部材としての空調機器の性能を向上させてクロスメンバの振動を抑制し、ステアリングコラムの振動を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、特許文献1の実施形態に記載されるトラックの空調ユニットは、ダッシュパネルとインストルメントパネルとの間に配置されるクロスメンバに上部が固定され、フロアパネルに下部が支持されている。空調ユニットは、キャブの車幅方向左側の外端部に配置される送風機(空調機器)と、送風機に連結されて送風機の車幅方向内側に配置されるエバポレータ(空調機器)と、エバポレータに連結されてエバポレータの車幅方向内側に配置されるヒーター(空調機器)とによって構成され、送風機とエバポレータとヒーターとが車幅方向に直列的に配置されて連結されている。ヒーターは、キャブの車幅方向中央部に配置される。
【0007】
このように空調ユニットは車室前方のスペースに配置されるため、車両の衝突時、車両が前方から荷重を受けた場合に空調ユニットが車室側へ移動しないような対策が求められている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車室前方に空調ユニットを備えた車両において、車両の衝突時、車両が前方から荷重を受けた場合であっても空調ユニットが車室側へ移動することを防止することができる車両用空調ユニットの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0010】
本適用例に係る車両用空調ユニットの取付構造は、車室のフロアパネルと、前記フロアパネルから立設されたフロントパネルと、前記フロントパネルよりも車室内側に設置されたインストルメントパネルと、前記フロントパネルと前記インストルメントパネルとの間に車幅方向に延設されたクロスメンバと、前記フロントパネルと前記インストルメントパネルとの間の空間に収容され、前記クロスメンバ及び前記フロアパネルに固定支持された空調ユニットと、前記クロスメンバに固定支持され、車両前方から荷重を受けた際に前記空調ユニットが車室側へ移動することを規制する規制部材と、を備えた車両用空調ユニットの取付構造であって、前記空調ユニットは、上部から延出して前記クロスメンバに固定支持された2つの脚部を有し、前記規制部材は、前記2つの脚部の間に車両前方からの荷重を受ける受け部を有していることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、車両の衝突時、車両が前方から荷重を受けた場合、空調ユニットよりも車室側に設けた規制部材により空調ユニットが車室側へ移動することを防止することができる。特に、空調ユニットの2つの脚部の間に設けた受け部によって効果的に空調ユニットが車室側へ移動することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の車両用空調ユニットの取付構造を有する車両の概略構成を示す側断面図である。
【
図2】車室内における空調ユニットの配置と固定を示す車両右上後方からの概略斜視図である。
【
図3】
図2の空調ユニット付近を拡大して示す車両左後方からの概略斜視図である。
【
図4】
図3と同じ視点における空調ユニットの取付構造を拡大して示す車両左上後方からの概略斜視図である。
【
図5】
図1の車両のキャブが前方から荷重を受けた際の拡大側断面図である。
【
図6】変形例における車両用空調ユニットの取付構造の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。なお、前後とは車両の進行方向、上下とは車両の鉛直方向(垂直方向)、左右とは車両の車幅方向を示しているものとして、以下説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態の車両用空調ユニットの取付構造を有する車両の概略構成を示す測断面図である。
【0015】
本実施形態の車両用空調ユニットの取付構造が適用される車両1は、前部にキャブ2を備えるキャブオーバー型の右ハンドルのトラックである。キャブ2は、略箱型で、
図1に示すように、主に、下面にフロアパネル31、前面にフロアパネル31の前側から立設されたフロントパネル32及びフロントウインドウ33、上面にルーフパネル34、両側面に車両ドア(不図示)とドア開口部を形成するサイドパネル35、後面にバックパネル36、が設けられて、車室を形成している。これらの各パネルは鋼板材料をプレス加工して形成されている。
【0016】
キャブ2の前部には、インストルメントパネル4がフロントパネル32よりも車室側において設置されている。インストルメントパネル4は、フロントパネル32側に開口し、フロントウインドウ33の下部から、フロントパネル32の下部までを覆うように空間を形成する断面変形コの字型の樹脂製部材であり、左右方向に延設されている。また、キャブ2の前部右側の運転席側には、ステアリング及びステアリングコラムから構成されるステアリングユニット5が設置されている。さらに、フロントパネル32とインストルメントパネル4との間には、断面ハット形状のクロスメンバ6が左右方向に延設されており、また、キャブ2の前部左側の助手席側には、フロントパネル32とインストルメントパネル4との間の空間に空調ユニット7が収容されている。空調ユニット7の後方には、後述する面ブラケット8が設置されている。
【0017】
図2は、車室内における空調ユニットの配置と固定を示す車両右上後方からの概略斜視図である。具体的には、
図1のインストルメントパネル4と面ブラケット8を取り付けていない状態のキャブ2の前部の主な構成を示している。
図3は、
図2の空調ユニット付近を拡大して示す車両左後方からの概略斜視図である。次に、
図2及び
図3を参照しながら、キャブ2の車室内における空調ユニット7の配置と固定について説明する。
【0018】
空調ユニット7は、ヒーター、コンプレッサ、コンデンサ、エバポレータ、ブロワ、エアフィルタ等の空調機器類をケース内に一体に備え、車室内へ外気や冷温風を供給するためのユニットである。
図2及び
図3に示すように、空調ユニット7は主に、車幅中央付近に配置され、ブロワモータと一体のブロワファン71a及びその後方に配置されるブロワダクト71bを内蔵するブロワ部71、ブロワ部71の前側に配置され、ヒーターやエバポレータ等を内蔵する冷暖ユニット72、冷暖ユニット72の左側に配置され、エアフィルタ等を内蔵する導風部73から構成されている。即ち、本実施形態の空調ユニット7は、車室前部の車幅方向中央部分に比較的重量の重いブロワ部71と冷暖ユニット72が集中的に配置されている。
【0019】
空調ユニット7は、
図2及び
図3に示すように、ブロワ部71のブロワダクト71bの上部に、上方に延出する2つの上ブラケット(脚部)74と、下部にフロアパネル31に沿って突出する2つの下ブラケット75を有する。
図3に示すように、上ブラケット74は、左右方向に並列して配置され、上部において、クロスメンバ6の車室側の面であるクロスメンバ後面6aに、ボルトやナット等の固定部材で固定支持されている。同様に、下ブラケット75は、左右方向に並列して配置され、固定部材でフロアパネル31に固定支持されている。このようにして、空調ユニット7は、上部がクロスメンバ6に、下部がフロアパネル31にそれぞれ固定支持されている。
【0020】
図4は、
図3と同じ視点における空調ユニットの取付構造を拡大して示す車両左後方からの概略斜視図である。
図4を参照しながら、面ブラケット8について以下説明する。
【0021】
面ブラケット8は、前方から、すなわち後述する
図5に示す矢印の方向からの荷重を受けた際に空調ユニット7が車室側へ移動することを規制する規制部材である。面ブラケット8は、クロスメンバ6から下方向に延在する平板状の基面部81と、基面部81の左右両端から前方向に延在する側面部82と、基面部81の上部中央において前方に窪んだ水平断面凹型の受け部83から形成されている。
【0022】
基面部81は正面から見ると略U字状をなしており、下部はブロワダクト71bの表面に接近している。なお、基面部81はブロワダクト71bに接していてもよい。さらに、基面部81は、ブロワダクト71bを覆うことができる左右方向の幅を有し、ブロワファン71aの上下方向中央部分近くまでの長さを有する。また、基面部81は左右両方の上ブラケット74の後方を覆っている。
【0023】
面ブラケット8は、受け部83の最上部84がクロスメンバ6の後面に当接しており、この当接部分の2カ所においてボルト及びナット等の固定部材Fによりクロスメンバ6に固定支持される。また、面ブラケット8は、両側面部82の上部からさらに左右方向外側に延びクロスメンバ6の後面と当接する横延出部85が形成されている。そして各横延出部85においても固定部材Fによりクロスメンバ6に固定支持されている。
【0024】
受け部83は、
図4において破線で示されている2つの上ブラケット74の間隔より小さい左右方向の幅を有する。受け部83は、最上部84からブロワダクト71bの表面まで延びており、下部はブロワダクト71bに接近している。なお、受け部83の下部はブロワダクト71bに接していてもよい。面ブラケット8は、例えば、鋼板をプレス成型して形成される。
【0025】
図5には、
図1の車両1のキャブ2が前方から荷重を受けた際の拡大側断面図が示されている。同図に示すように、キャブ2が前方から荷重を受けると、フロントパネル32等の車両前面が変形し、空調ユニット7にも荷重がかかる。空調ユニット7の荷重は、例えば黒矢印で示すように、冷暖ユニット72及びブロワ部71が重く重心が比較的上部にあり、そこから前方下部の下ブラケット75を支点として後方且つ下方に作用する。
【0026】
一方で、空調ユニット7の上部は、上ブラケット74が強度部材であるクロスメンバ6に固定支持されている上、後部が面ブラケット8に接している。特に本実施形態の面ブラケット8は、基面部81の下部、受け部83の下部がブロワダクト71bの表面と接していることで、これら各部により荷重を分散して受ける。これにより、白抜き矢印で示すように荷重に反する力が作用して、空調ユニット7の後方への移動や変形が規制される。例えば、仮に上ブラケット74が折れたり、座屈したりしても、すぐ後方にある面ブラケット8が車室内側への移動を規制する。
【0027】
このように本実施形態の車両用空調ユニットの取付構造では、クロスメンバ6に固定支持された面ブラケット8が、空調ユニット7の後方、特に重量が大きく剛性が高い冷暖ユニット72及びブロワ部71の後方に、空調ユニット7を覆うように近接して設けられているので、車両1の衝突時、車両1が前方から荷重を受けた場合であっても、空調ユニット7が車室側へ移動することを防止することができる。また、面ブラケット8は空調ユニット7の後部に沿った形状のため空調ユニット7とインストルメントパネル4の間に配置でき、インストルメントパネル4の形状を変更する必要がないため、コストを抑えつつ車両衝突時の安全性を向上することができる。
【0028】
以上で本発明に係る車両用空調ユニットの取付構造の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0029】
上記実施形態においては、ブロワ部71と冷暖ユニット72が前後方向に配置されており、面ブラケット8の幅はブロワ部71と同様の幅であったが、ブロワ部71と冷暖ユニット72が左右方向に並列に配置される場合には、これらブロワ部71と冷暖ユニット72までを覆う左右幅としてもよい。
【0030】
また、上記実施形態において、面ブラケット8は受け部83の最上部84と横延出部85においてクロスメンバ6に固定支持されているが、固定支持される箇所はこれに限られるものではない。
【0031】
例えば
図6には変形例における車両用空調ユニットの取付構造が示されている。同図に示すように、変形例の空調ユニット7’は、ブロワ部71のブロワダクト71bの左右側面にそれぞれ、ボルトを螺合可能なボス部71cが左右方向に突出して形成されている。なお、当該ボス部71cは、ブロワダクト71bを成形する際の型を抜く方向(左右方向)と同じ方向に突出していることで、成形が容易となっている。
【0032】
また、面ブラケット8’は、両側面部82’に取付孔が形成されている。各取付孔の位置はブロワ部71のボス部71cと対応しており、面ブラケット8’は各取付孔を介してボルト等の固定部材Fによりボス部71cに固定支持可能である。つまり、変形例の面ブラケット8’は最上部84の2カ所と各側面部82’の合計4カ所で固定支持され、クロスメンバ6と空調ユニット7’を上ブラケット74とは別に連結している。
【0033】
これにより、仮に上ブラケット74が折れたり、座屈したりしても、すぐ後方にある面ブラケット8’が車室内側への移動を規制する上、側面部82’が空調ユニット7’と連結されていることで、空調ユニット7’の支持も維持される。
【符号の説明】
【0034】
1 :車両
2 :キャブ
4 :インストルメントパネル
5 :ステアリングユニット
6 :クロスメンバ
6a :クロスメンバ後面
7、7’ :空調ユニット
8、8’ :面ブラケット
31 :フロアパネル
32 :フロントパネル
33 :フロントウインドウ
34 :ルーフパネル
35 :サイドパネル
36 :バックパネル
71 :ブロワ部
71a :ブロワファン
71b :ブロワダクト
71c :ボス部
72 :冷暖ユニット
73 :導風部
74 :上ブラケット
75 :下ブラケット
81 :基板部
82、82’ :側面部
83 :受け部
84 :最上部
85 :横延出部
F :固定部材