(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168416
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/01 20060101AFI20221031BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B60C11/01 B
B60C11/03 300D
B60C11/01 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073855
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 伸悟
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC17
3D131BC18
3D131BC34
3D131BC51
3D131EA08Y
3D131EB11X
3D131EB28X
3D131EB31V
3D131EB31X
3D131EB31Y
3D131EB32Y
3D131EB43X
3D131EB43Y
3D131EB46X
3D131EC12X
3D131EC13Y
3D131EC14Y
3D131EC16Y
3D131GA19
(57)【要約】
【課題】雪道や泥道などにおけるトラクション性能を確保しつつ、耐ヒールアンドトウ摩耗性能の高い空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤのトレッドは、ショルダー主溝と、複数のショルダースリットと、前記ショルダー主溝及び前記ショルダースリットによって区画される複数のショルダーブロックと、を備える。前記ショルダーブロックは、前記ショルダーブロックからタイヤ軸方向外側に向かってタイヤ径方向内側に傾斜する傾斜部を備える。前記傾斜部は、第1傾斜部と、前記第1傾斜部よりもタイヤ軸方向内側に窪んだ凹みを有する第2傾斜部と、を備える。前記傾斜部を区画する一対の前記ショルダースリットのうち、一方の前記ショルダースリットを挟んで前記第1傾斜部同士が隣接し、他方の前記ショルダースリットを挟んで前記第2傾斜部同士が隣接する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部と、前記一対のビード部からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、前記一対のサイドウォールのタイヤ径方向のそれぞれの外側端に連なるトレッドと、を備え、
前記トレッドは、タイヤ周方向に延びる複数の主溝のうちタイヤ軸方向の最外側に位置するショルダー主溝と、前記ショルダー主溝よりもタイヤ軸方向外側に延びる複数のショルダースリットと、前記ショルダー主溝及び前記ショルダースリットによって区画される複数のショルダーブロックと、を備え、
前記ショルダーブロックは、タイヤ軸方向外側に向かってタイヤ径方向内側に傾斜する傾斜部を備え、
前記傾斜部は、第1傾斜部と、前記第1傾斜部よりもタイヤ軸方向内側に窪んだ凹みを有する第2傾斜部と、を備え、
前記ショルダーブロックを区画する一対の前記ショルダースリットのうち、一方の前記ショルダースリットを挟んで前記第1傾斜部同士が隣接し、他方の前記ショルダースリットを挟んで前記第2傾斜部同士が隣接する、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1傾斜部は、前記サイドウォールの表面プロファイルよりもタイヤ軸方向外側に突出する突起を備え、
前記凹みは、前記表面プロファイルよりもタイヤ軸方向内側に窪んでおり、
前記突起及び前記凹みは、タイヤ径方向においてそれぞれの少なくとも一部が実質的に同一の位置に配置されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2傾斜部は、前記凹みよりもタイヤ径方向内側に配置され且つ前記突起よりもタイヤ軸方向外側に突出する突出部を備える、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記傾斜部は、タイヤ軸方向に沿って延びる補助スリットを備え、
前記補助スリットの一端部は、前記トレッド接地端よりもタイヤ軸方向内側の前記ショルダーブロック内で終端する、請求項1~3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ショルダー主溝及び横溝であるショルダースリットによって区画される複数のショルダーブロックを備え、ショルダーブロックは、タイヤ軸方向の外側に向かってタイヤ径方向の内側に傾斜する傾斜部と、を備える、空気入りタイヤが開示されている。当該空気入りタイヤは、角部分を有するスクエアーショルダー部と略円弧曲面状のラウンドショルダー部とによって傾斜部を構成することにより、雪上におけるトラクション性能などの向上を図っている。
【0003】
しかしながら、当該傾斜部は、ショルダーブロックを区画する一方のショルダースリット側にラウンドショルダー部が偏って配置され、タイヤ周方向に沿って一律に並べられている。これによりショルダースリットを挟んでラウンドショルダー部とスクエアーショルダー部とが近接している。その結果、ショルダースリットを挟んで隣接する一対のショルダーブロックにおいて、当該ショルダースリット側のブロック剛性の差が大きく、それによってショルダーブロックにおけるヒールアンドトウ摩耗が生じやすくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、雪道や泥道などにおけるトラクション性能を確保しつつ、耐ヒールアンドトウ摩耗性能の高い空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の空気入りタイヤは、一対のビード部と、前記一対のビード部からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、前記一対のサイドウォールのタイヤ径方向のそれぞれの外側端に連なるトレッドと、を備え、前記トレッドは、タイヤ周方向に延びる複数の主溝のうちタイヤ軸方向の最外側に位置するショルダー主溝と、前記ショルダー主溝よりもタイヤ軸方向外側に延びる複数のショルダースリットと、前記ショルダー主溝及び前記ショルダースリットによって区画される複数のショルダーブロックと、を備え、前記ショルダーブロックは、前記ショルダーブロックからタイヤ軸方向外側に向かってタイヤ径方向内側に傾斜する傾斜部を備え、前記傾斜部は、第1傾斜部と、前記第1傾斜部よりもタイヤ軸方向内側に窪んだ凹みを有する第2傾斜部と、を備え、前記傾斜部を区画する一対の前記ショルダースリットのうち、一方の前記ショルダースリットを挟んで前記第1傾斜部同士が隣接し、他方の前記ショルダースリットを挟んで前記第2傾斜部同士が隣接する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午面における断面図
【
図2】同実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドパターンを示す図
【
図3】同実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、
図1~
図6を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0009】
各図において、第1の方向D1は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1のタイヤ回転軸と平行であるタイヤ軸方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、第3の方向D3は、タイヤ回転軸周りのタイヤ周方向D3である。
【0010】
なお、タイヤ軸方向D1において、内側は、タイヤ赤道面S1に近い側となり、外側は、タイヤ赤道面S1から遠い側となる。また、タイヤ径方向D2において、内側は、タイヤ回転軸に近い側となり、外側は、タイヤ回転軸から遠い側となる。
【0011】
タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ1のタイヤ軸方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面のことである。また、タイヤ赤道線L1とは、タイヤ1のタイヤ径方向D2の外表面(後述するトレッド面2a)とタイヤ赤道面S1とが交差する線のことである。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、一対のビード部11,11と、各ビード部11,11からタイヤ径方向D2の外側に延びる一対のサイドウォール12,12と、一対のサイドウォール12,12のタイヤ径方向D2の外側端に連なるトレッド13と、一対のビード部11,11の間を架け渡されるように延びるカーカスプライ14と、を備える。
【0013】
トレッド13は、トレッド13の外表面を構成するトレッド面2aを有するトレッドゴム2と、トレッドゴム2とカーカスプライ14との間に配置されるベルト15と、を備える。トレッド面2aは、実際に路面に接地するタイヤ接地面を有しており、タイヤ接地面のうち、タイヤ軸方向D1の外側端は、トレッド接地端L2,L2という。
【0014】
タイヤ接地面は、タイヤ1を不図示の正規リムに装着し、正規内圧を充填した状態でタイヤ1を平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地する部分である。
【0015】
正規リムは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤごとに定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」となる。
【0016】
正規内圧は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤごとに定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。
【0017】
正規荷重は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤごとに定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、トレッドゴム2は、タイヤ周方向D3に延びる複数の主溝21,22のうちタイヤ軸方向D1の内側に位置するセンター主溝21と、複数の主溝21,22のうちタイヤ軸方向D1の最外側(センター主溝21のタイヤ軸方向D1の外側)に位置する一対のショルダー主溝22,22と、を備え、タイヤ軸方向D1に間隔を置いてそれぞれの主溝21,22が配置されている。本実施形態において、センター主溝21は、タイヤ周方向D3に不連続に延びており、ショルダー主溝22は、タイヤ周方向D3にジグザグ状に連続して延びているが、斯かる構成に限られない。
【0019】
タイヤ1は、一対のショルダー主溝22,22の間に形成されるセンター陸3と、ショルダー主溝22のタイヤ軸方向D1の外側に形成される一対のショルダー陸4,4と、を備える。センター陸3は、一対のショルダー陸4,4の間に配置されており、一対のショルダー陸4,4は、トレッド面2aにおけるタイヤ軸方向D1の外側端に配置されている。
【0020】
タイヤ1は、センター陸3に配置される複数のセンタースリット5と、ショルダー陸4に配置される複数のショルダースリット6と、を備える。センタースリット5は、ショルダー主溝22から他のショルダー主溝22に向かってタイヤ軸方向D1に対し傾斜して延びている。
【0021】
ショルダースリット6は、ショルダー主溝22よりもタイヤ軸方向D1の外側にトレッド接地端L2を横切って延びている。本実施形態において、ショルダースリット6は、ジグザグ状のショルダー主溝22の溝凹み22aから、タイヤ加硫金型(不図示)におけるトレッド13を形成するためのセクタとサイドウォール12を形成するためのサイドプレートとの割り位置L3まで延びているが、これに限られない。なお、タイヤ1の加硫成形時に割り位置L3に線条痕が生じるので、サイドウォール12の外表面の線条痕の有無によって割り位置L3を特定することができる。
【0022】
本実施形態において、ショルダースリット6は、ショルダー主溝22と連通している。なお、ショルダースリット6は、例えば、ショルダー主溝22と連通していない、即ち、ショルダースリット6は、ショルダー陸4内で終端する、という構成であってもよい。
【0023】
本実施形態において、サイドウォール12は、タイヤ周方向D3に沿って延びる環状リブ12aを備え、環状リブ12aは、割り位置L3に配置されている。環状リブ12aは、表面プロファイル12pよりもタイヤ軸方向D1の外側に突出し、断面台形状に形成されている。
【0024】
本実施形態において、ショルダースリット6は、ショルダー主溝22からトレッド接地端L2近傍までタイヤ軸方向D1に対し傾斜して延び、トレッド接地端L2近傍からタイヤ軸方向D1の外側にタイヤ軸方向D1に沿って延びているが、これに限られない。ショルダースリット6のタイヤ軸方向D1に対する傾斜角度は、センタースリット5のタイヤ軸方向D1に対する傾斜角度よりも小さいが、これに限られない。
【0025】
図1~
図3に示すように、トレッド13は、ショルダー主溝22及びショルダースリット6によって区画される複数のショルダーブロック7を備える。ショルダー陸4は、複数のショルダーブロック7によって構成されている。ショルダーブロック7は、タイヤ軸方向D1の外側に向かってタイヤ径方向D2の内側に傾斜する傾斜部8を備える。傾斜部8は、ショルダーブロック7のタイヤ軸方向D1の外側面を構成している。本実施形態において、傾斜部8は、ショルダースリット6によって区画されており、割り位置L3まで延びている。
【0026】
本実施形態において、後述する特徴を有する傾斜部8は、タイヤ軸方向D1の両側に配置されているが、これに限られず、タイヤ軸方向D1の少なくとも片側に配置されていればよい。雪道や泥道などにおけるトラクション性能及び耐ヒールアンドトウ摩耗性能確保の観点から、斯かる傾斜部8は、タイヤ軸方向D1の両側に配置されていることが好ましい
【0027】
傾斜部8は、第1傾斜部81と、第1傾斜部81よりもタイヤ軸方向D1の内側に窪んだ凹み82aを有する第2傾斜部82と、を備える。第1傾斜部81は、ショルダーブロック7を区画する一対のショルダースリット6のうち一方のショルダースリット6aと隣接して配置されており、第2傾斜部82は、ショルダーブロック7を区画する一対のショルダースリット6のうち他方のショルダースリット6bと隣接して配置されている。本実施形態において、第1傾斜部81のタイヤ周方向D3の幅W1は、第2傾斜部82のタイヤ周方向D3の幅W2と実質的に同一である。
【0028】
ショルダーブロック7と一方のショルダースリット6aを挟んで隣接する他のショルダーブロック7とにおいて、第1傾斜部81は、他の第1傾斜部81と隣接している。そして、ショルダーブロック7と他方のショルダースリット6bを挟んで隣接する他のショルダーブロック7とにおいて、第2傾斜部82は、他の第2傾斜部82と隣接している。即ち、傾斜部8を区画する一対のショルダースリット6a,6bのうち、一方のショルダースリット6aを挟んで第1傾斜部81,81同士が隣接し、他方のショルダースリット6bを挟んで第2傾斜部82,82同士が隣接している。
【0029】
本実施形態においては、タイヤ周方向D3の一方側に第1傾斜部81が形成され、タイヤ周方向D3の他方側に第2傾斜部82が形成されたショルダーブロック7と、タイヤ周方向D3の一方側に第2傾斜部82が形成され、タイヤ周方向D3の他方側に第1傾斜部81が形成されたショルダーブロック7と、がタイヤ周方向D3に交互に配置されている。
【0030】
図4及び
図5に示すように第1傾斜部81は、表面プロファイル12pに沿って傾斜し、第2傾斜部82は、表面プロファイル12pよりもタイヤ軸方向D1の内側に傾斜している。そのため、ショルダーブロック7は、第1傾斜部81と第2傾斜部82とによってタイヤ周方向D3に段差が形成されている。表面プロファイル12pは、トレッド13とサイドウォール12とを滑らかに接続するタイヤ1の外表面の輪郭である。
【0031】
図4に示すように、第1傾斜部81は、少なくともタイヤ径方向D2の内側に表面プロファイル12pよりもタイヤ軸方向D1の外側に突出する第1突起81aを備える。第1突起81aを設けることにより、雪道や泥道などにおいて第1突起81aが雪や泥などに引っ掛かるので、雪道や泥道などにおけるタイヤ1のトラクション性能を高めることができる。第1突起81aは、表面プロファイル12pに対し傾斜している。第1突起81aと表面プロファイル12pとの傾斜角度θ1は、5度以上が好ましい。本実施形態において、傾斜角度θ1は、タイヤ軸方向D1の外側に5.1度であるが、これに限られない。本実施形態において、第1突起81aは、トレッド接地端L2のタイヤ径方向D2の外側から割り位置L3まで延びているが、これに限られない。例えば、第1突起81aは、割り位置L3近傍にのみ配置されていてもよく、トレッド接地端L2から割り位置L3まで延びていてもよい。
【0032】
図5に示すように、第2傾斜部82は、タイヤ径方向D2の外側に表面プロファイル12pよりもタイヤ軸方向D1の内側に窪んだ凹み82aを備える。凹み82aは、表面プロファイル12pに対し傾斜しており、凹み82aと表面プロファイル12pとの傾斜角度θ2は、タイヤ軸方向D1の内側に5度以上であることが好ましい。本実施形態において、傾斜角度θ2は、タイヤ軸方向D1の内側に8度であるが、これに限られない。
【0033】
第1突起81a及び凹み82aは、タイヤ径方向D2においてそれぞれの少なくとも一部が実質的に同一の位置に配置されている。雪道や泥道などにおけるタイヤ1のトラクション性能を確保する観点から、第1突起81aと凹み82aとの最小段差高さH1は、1mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましい。本実施形態において、凹み82aは、タイヤ径方向D2の外側端からショルダースリット6の溝底深さH2まで延びているが、これに限られない。
【0034】
第2傾斜部82は、凹み82aよりもタイヤ径方向D2の内側に配置され且つ表面プロファイル12pよりもタイヤ軸方向D1の外側に突出する第2突起82bを備える。第1突起81a及び第2突起82bは、タイヤ径方向D2においてそれぞれの少なくとも一部が実質的に同一の位置に配置されている。第2突起82bは、第1突起81aよりもタイヤ軸方向D1の外側に突出する突出部821bを備える。第2突起82bに突出部821bを設けることにより、雪道や泥道などにおいて突出部821bが雪や泥などに引っ掛かるので、雪道や泥道などにおけるタイヤ1のトラクション性能を高めることができる。なお、第2突起82bは、例えば、突出部821bを備えない、という構成であってもよい。本実施形態において、突出部821bは、断面略三角形状であるが、斯かる形状に限られない。
【0035】
本実施形態において、第2突起82bは、凹み82aのタイヤ径方向D2の内側端から割り位置L3まで延びているが、これに限られない。第2突起82bのタイヤ径方向D2の外側端は、ショルダースリット6の溝底面をタイヤ軸方向D1の外側に延長した延長面S2と一致するが、これに限られない。
【0036】
図2、
図3及び
図6に示すように、傾斜部8は、タイヤ軸方向D1に沿って延びる補助スリット83を備える。本実施形態において、補助スリット83は、第1傾斜部81と第2傾斜部82との間に配置されている。補助スリット83は、ショルダーブロック7又は傾斜部8のタイヤ周方向D3の中央を通るように配置されている。これにより、補助スリット83を設けることによるショルダーブロック7のタイヤ周方向D3のブロック剛性の偏りを小さくすることができ、タイヤ1が接地した際、ショルダーブロック7に偏摩耗が生じることを抑えることができる。
【0037】
補助スリット83のタイヤ軸方向D1の内側端であるスリット端部83aは、トレッド接地端L2よりもタイヤ軸方向D1の内側のショルダーブロック7上に配置されている。そして、スリット端部83aは、ショルダースリット6と平行になるようにタイヤ軸方向D1に対し傾斜している。スリット端部83aをショルダースリット6と平行に傾斜させることにより、タイヤ1が接地した際、ショルダーブロック7に掛かる接地圧の偏りを抑えることができ、ショルダーブロック7に偏摩耗が生じることを抑えることができる。本実施形態において、スリット端部83aは、トレッド接地端L2よりもタイヤ軸方向D1の内側のショルダーブロック7内で終端するが、これに限られない。補助スリット83の溝幅W3は、ショルダースリット6の溝幅W4よりも小さい。
【0038】
図2及び
図3に示すように、本実施形態において、傾斜部8は、ショルダースリット6のタイヤ軸方向D1の外側端に配置され且つ表面プロファイル12p(
図4及び
図5参照)に沿って延びるスリット端溝84を備える。なお、傾斜部8は、例えば、スリット端溝84を備えない、という構成であってもよい。
【0039】
スリット端溝84は、ショルダースリット6を挟んで隣接する第1傾斜部81,81及び第2傾斜部82,82のショルダースリット6側の端部をえぐるように配置されている。スリット端溝84を設けることにより、雪道や泥道などにおいてスリット端溝84が雪や泥などに引っ掛かるので、雪道や泥道などにおけるタイヤ1のトラクション性能を高めることができる。
【0040】
以上、本実施形態のように、タイヤ1は、一対のビード部11と、一対のビード部11からタイヤ径方向D2の外側に延びる一対のサイドウォール12と、一対のサイドウォール12のタイヤ径方向D2のそれぞれの外側端に連なるトレッド13と、を備え、トレッド13は、タイヤ周方向D3に延びる複数の主溝21,22のうちタイヤ軸方向D1の最外側に位置するショルダー主溝22と、ショルダー主溝22よりもタイヤ軸方向D1の外側に延びる複数のショルダースリット6と、ショルダー主溝22及びショルダースリット6によって区画される複数のショルダーブロック7と、を備え、ショルダーブロック7は、ショルダーブロック7からタイヤ軸方向D1の外側に向かってタイヤ径方向D2の内側に傾斜する傾斜部8を備え、傾斜部8は、第1傾斜部81と、第1傾斜部81よりもタイヤ軸方向D1の内側に窪んだ凹み82aを有する第2傾斜部82と、を備え、傾斜部8を区画する一対のショルダースリット6a,6bのうち、一方のショルダースリット6aを挟んで第1傾斜部81,81同士が隣接し、他方のショルダースリット6bを挟んで第2傾斜部82,82同士が隣接する、という構成が好ましい。
【0041】
斯かる構成によれば、第1傾斜部81よりも窪んだ凹み82aを設けることにより、雪道や泥道などにおいて第1傾斜部81を雪や泥などに引っ掛けることができ、雪道や泥道などにおけるタイヤ1のトラクション性能を確保することができる。また、一方のショルダースリット6aを挟んで第1傾斜部81,81同士を隣接させ、他方のショルダースリット6bを挟んで第2傾斜部82,82同士を隣接させることにより、ショルダースリット6を挟んで隣接する2つショルダーブロック7,7において、それらのショルダースリット6側のブロック剛性を近づけることができ、タイヤ1の耐ヒールアンドトウ摩耗性能を高めることができる。これにより、雪道や泥道などにおけるタイヤ1のトラクション性能を確保しつつ、タイヤ1の耐ヒールアンドトウ摩耗性能を高めることができる。
【0042】
また、本実施形態のように、タイヤ1において、第1傾斜部81は、サイドウォール12の表面プロファイル12pよりもタイヤ軸方向D1の外側に突出する第1突起81aを備え、凹み82aは、表面プロファイル12pよりもタイヤ軸方向D1の内側に窪んでおり、第1突起81a及び凹み82aは、タイヤ径方向D2においてそれぞれの少なくとも一部が実質的に同一の位置に配置されている、という構成が好ましい。
【0043】
斯かる構成によれば、雪道や泥道などにおいて第1突起81aが雪や泥などに引っ掛かりやすくなるので、雪道や泥道などにおけるタイヤ1のトラクション性能を高めることができる。
【0044】
また、本実施形態のように、タイヤ1において、第2傾斜部82は、凹み82aよりもタイヤ径方向D2の内側に配置され且つ第1突起81aよりもタイヤ軸方向D1の外側に突出する突出部821bを備える、という構成が好ましい。
【0045】
斯かる構成によれば、第1突起81aよりも突出する突出部821bを設けることにより、雪道や泥道などにおいて突出部821bが雪や泥などに引っ掛かるので、雪道や泥道などにおけるタイヤ1のトラクション性能を高めることができる。
【0046】
また、本実施形態のように、タイヤ1において、傾斜部8は、タイヤ軸方向D1に沿って延びる補助スリット83を備え、補助スリット83の一端部(スリット端部83a)は、トレッド接地端L2よりもタイヤ軸方向D1の内側のショルダーブロック7内で終端する、という構成が好ましい。
【0047】
斯かる構成によれば、補助スリット83を設けることにより、雪道や泥道などにおいて補助スリット83が雪や泥などに引っ掛かるので、雪道や泥道などにおけるタイヤ1のトラクション性能を高めることができる。
【0048】
なお、タイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものではない。また、タイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0049】
(1)本実施形態において、第1傾斜部81は、表面プロファイル12pよりもタイヤ軸方向D1の外側に突出する第1突起81aを備える、という構成である。しかしながら、第1傾斜部81は、斯かる構成に限られない。例えば、第1傾斜部81は、第1突起81aを備えず、表面プロファイル12pに沿って傾斜している、という構成であってもよい。
【0050】
(2)本実施形態において、第1突起81aは、表面プロファイル12pに対しタイヤ軸方向D1の外側に傾斜し、凹み82aは、表面プロファイル12pに対しタイヤ軸方向D1の内側に傾斜している、という構成である。しかしながら、第1突起81a及び凹み82aは、斯かる構成に限られない。例えば、第1突起81aは、表面プロファイル12pのタイヤ軸方向D1の外側に配置されると共に表面プロファイル12pと平行に傾斜し、凹み82aは、表面プロファイル12pのタイヤ軸方向D1の内側に配置されると共に表面プロファイル12pと平行に傾斜している、という構成であってもよい。
【0051】
(3)本実施形態において、第1傾斜部81及び第2傾斜部82は、タイヤ周方向D3の幅が同一である、という構成である。しかしながら、第1傾斜部81及び第2傾斜部82は、斯かる構成に限られない。例えば、第1傾斜部81及び第2傾斜部82は、タイヤ周方向D3の幅が異なる、という構成であってもよい。
【0052】
(4)本実施形態において、傾斜部8は、第1傾斜部81と第2傾斜部82とを備える、という構成である。しかしながら、傾斜部8は、斯かる構成に限られない。例えば、傾斜部8は、第1傾斜部81と第2傾斜部82と第3傾斜部とを備え、第3傾斜部は、第1傾斜部81及び第2傾斜部82と形状が異なり、第1傾斜部81と第2傾斜部82との間に配置されている、という構成であってもよい。
【0053】
(5)本実施形態において、傾斜部8は、ショルダーブロック7から割り位置L3まで延びている、という構成である。しかしながら、傾斜部8は、斯かる構成に限られない。例えば、傾斜部8は、ショルダーブロック7から割り位置L3よりもタイヤ径方向D2の内側に延びている、という構成であってもよい。また、タイヤ金型がツーピースモールドの場合、傾斜部8は、サイドウォール12における割り位置L3に相当する位置まで延びている、という構成であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1:タイヤ、11:ビード部、12:サイドウォール、12a:環状リブ、12p:表面プロファイル、13:トレッド、14:カーカスプライ、15:ベルトプライ、2:トレッドゴム、2a:トレッド面、21:センター主溝、22:ショルダー主溝、22a:溝凹み、3:センター陸、4:ショルダー陸、5:センタースリット、6:ショルダースリット、7:ショルダーブロック、8:傾斜部、81:第1傾斜部、81a:第1突起、82:第2傾斜部、82a:凹み、82b:第2突起、821b:突出部、83:補助スリット、83a:スリット端部、84:スリット端溝、H1:最小段差高さ、H2:溝底深さ、L1:タイヤ赤道線、L2:トレッド接地端、L3:割り位置、S1:タイヤ赤道面、S2:延長面