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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168431
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】蒸発燃料処理装置の故障診断装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20221031BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20221031BHJP
   B60K 15/035 20060101ALN20221031BHJP
【FI】
F02M25/08 Z
F02M25/08 311F
F02D45/00 345
F02M25/08 311G
B60K15/035 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073882
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷田 侑也
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 真梨子
【テーマコード(参考)】
3D038
3G144
3G384
【Fターム(参考)】
3D038CA25
3D038CC02
3D038CC05
3G144BA27
3G144DA01
3G144DA03
3G144EA07
3G144EA08
3G144EA10
3G144EA32
3G144FA03
3G144FA04
3G144FA15
3G144HA04
3G144HA05
3G144HA23
3G384BA47
(57)【要約】
【課題】蒸発燃料処理装置の故障診断を、燃料タンク内の蒸発燃料の飽和蒸気圧の変化に基づいて行うことにより、大気圧より高い正圧、若しくは大気圧より低い負圧を発生させる圧力源なしで故障診断を行う。
【解決手段】燃料タンク2内の燃料の飽和蒸気圧特性を求める飽和蒸気圧特性推定手段と、蒸発燃料処理装置において蒸発燃料が流入する通路及び空間の全てを大気に対して閉塞した状態下、若しくは蒸発燃料処理装置において蒸発燃料が流入する通路及び空間の少なくとも一部を大気に対して開放した状態下で、飽和蒸気圧特性推定手段により求められる飽和蒸気圧特性の経時変化により、蒸発燃料処理装置のリーク故障、若しくは蒸発燃料処理装置の閉塞故障の有無を診断する故障診断手段と、を備え、故障診断手段は、飽和蒸気圧特性推定手段により求められる飽和蒸気圧特性からリード蒸気圧(RVP)を求め、このRVPの経時変化により故障の有無を診断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内で発生する蒸発燃料を吸着して捕捉するキャニスタと、
該キャニスタに燃料タンク内で発生した蒸発燃料を導入するベーパ通路と、
該ベーパ通路を開閉するベーパ弁と、
前記キャニスタに捕捉された蒸発燃料をパージ処理のため通流させるパージ通路と、
該パージ通路を開閉するパージ弁と、
前記キャニスタ内に大気を供給する大気通路と、
該大気通路を開閉する大気弁と、
を備える蒸発燃料処理装置と、
燃料タンク内の燃料の飽和蒸気圧特性を求める飽和蒸気圧特性推定手段と、
蒸発燃料処理装置において蒸発燃料が流入する通路及び空間の全てを大気に対して閉塞した状態下、若しくは蒸発燃料処理装置において蒸発燃料が流入する通路及び空間の少なくとも一部を大気に対して開放した状態下で、前記飽和蒸気圧特性推定手段により求められる飽和蒸気圧特性の経時変化により、蒸発燃料処理装置のリーク故障、若しくは蒸発燃料処理装置の閉塞故障の有無を診断する故障診断手段と、を備え、
前記故障診断手段は、前記飽和蒸気圧特性推定手段により求められる飽和蒸気圧特性から特定の温度における飽和蒸気圧を求め、この飽和蒸気圧の経時変化により故障の有無を診断する
蒸発燃料処理装置の故障診断装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記飽和蒸気圧特性推定手段は、
燃料タンクの気相の温度を代表する温度を検出する気相温検出手段と、
通路断面積を上流側に比べて狭くされた狭隘流路に燃料を流速を速めて流して、その狭隘流路周りの減圧室にベンチュリ効果により負圧を発生するアスピレータと、を備え、
前記アスピレータの減圧室における圧力により求められる燃料蒸気圧、並びに前記気相温検出手段により検出される温度を、予め前記温度に対して記憶された燃料の飽和蒸気圧特性と対比して飽和蒸気圧特性を推定する
蒸発燃料処理装置の故障診断装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記飽和蒸気圧特性推定手段は、
燃料タンクの気相の温度を代表する温度を検出する気相温検出手段と、
燃料タンクの気相の蒸発燃料の蒸気圧を求める蒸気圧検出手段と、を備え、
前記気相温検出手段により検出される温度が変化する前後において、前記蒸気圧検出手段により検出される各蒸気圧を、予め記憶された飽和蒸気圧特性の前記気相温検出手段により検出されたのと同じ各温度における各飽和蒸気圧と対比して飽和蒸気圧特性を推定する
蒸発燃料処理装置の故障診断装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記飽和蒸気圧特性推定手段は、
燃料タンクの気相の温度を代表する温度を検出する気相温検出手段と、
燃料タンクの気相の蒸発燃料における燃料成分密度を求める密度検出手段と、を備え、
該密度検出手段による燃料成分密度から求められる燃料蒸気圧、並びに前記気相温検出手段により検出される温度を、予め前記温度に対して記憶された燃料の飽和蒸気圧特性と対比して飽和蒸気圧特性を推定する
蒸発燃料処理装置の故障診断装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかにおいて、
前記故障診断手段は、前記パージ弁を閉じた状態で、前記ベーパ弁を閉じたときの、燃料タンクの気相における前記飽和蒸気圧の経時変化により、
燃料タンク、若しくは前記ベーパ弁より燃料タンク側の前記ベーパ通路の少なくともいずれかにおけるリーク故障の有無を診断する第1故障診断手段を備える
蒸発燃料処理装置の故障診断装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記故障診断手段は、前記第1故障診断手段にてリーク故障なしと診断され、且つ前記パージ弁を閉じた状態で、前記ベーパ弁を開き、且つ前記大気弁を閉じたときの、燃料タンクの気相における前記飽和蒸気圧の経時変化により、
前記キャニスタ、前記ベーパ弁より前記キャニスタ側の前記ベーパ通路、前記大気弁より前記キャニスタ側の前記大気通路、若しくは前記パージ弁より前記キャニスタ側の前記パージ通路の少なくともいずれかにおけるリーク故障の有無、
前記ベーパ弁を含む前記ベーパ通路における閉塞故障の有無、
又は前記ベーパ弁の開動作不良故障の有無を診断する第2故障診断手段を備える
蒸発燃料処理装置の故障診断装置。
【請求項7】
請求項5において、
前記故障診断手段は、前記第1故障診断手段にてリーク故障なしと診断され、且つ前記パージ弁を閉じた状態で、前記ベーパ弁及び前記大気弁を開いたときの、燃料タンクの気相における前記飽和蒸気圧の経時変化により、
前記ベーパ弁を含む前記ベーパ通路における閉塞故障の有無、
又は前記ベーパ弁の開動作不良故障の有無を診断する第3故障診断手段を備える
蒸発燃料処理装置の故障診断装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記故障診断手段は、前記第1故障診断手段及び前記第2故障診断手段にてリーク故障、閉塞故障、若しくは開動作不良故障なしと診断され、且つ前記パージ弁が閉じた状態で、前記ベーパ弁及び前記大気弁を共に開いたときの、燃料タンクの気相における前記飽和蒸気圧の経時変化により、
前記大気弁を含む前記大気通路における閉塞故障の有無、
又は前記大気弁の開動作不良故障の有無を診断する第4故障診断手段を備える
蒸発燃料処理装置の故障診断装置。
【請求項9】
請求項7において、
前記故障診断手段は、前記第1故障診断手段及び前記第3故障診断手段にてリーク故障、閉塞故障、若しくは開動作不良故障なしと診断され、且つ前記パージ弁が閉じた状態で、前記大気弁を閉じたときの、燃料タンクの気相における前記飽和蒸気圧の経時変化により、
前記大気弁の閉動作不良故障の有無を診断する第5故障診断手段を備える
蒸発燃料処理装置の故障診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、蒸発燃料処理装置の故障診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンク内で発生する蒸発燃料をキャニスタで吸着して捕捉し、その蒸発燃料を、例えばエンジンで燃焼させてパージ処理する蒸発燃料処理装置が知られている。一方、このような蒸発燃料処理装置の気密性や通気ラインの閉塞性に関する故障診断を行う故障診断装置がある。
【0003】
故障診断装置では、故障診断を行う診断空間に大気圧より高い正圧、若しくは大気圧より低い負圧を印加して、圧力印加開始前後の診断空間の圧力変化、若しくは圧力印加完了後の診断空間の圧力変化に基づいて、診断空間の気密性や通気ラインの閉塞性に関する故障診断を行うものが知られている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-157915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記故障診断装置では、診断空間に圧力を印加するため、大気圧より高い正圧、若しくは大気圧より低い負圧を発生させる圧力源を必要とし、また、圧力源を作動させるためのエネルギが必要である。
【0006】
本明細書が開示する技術の課題は、蒸発燃料処理装置の故障診断を、燃料タンク内の飽和蒸発燃料の蒸気圧の変化に基づいて行うことにある。それにより、蒸発燃料処理装置の故障診断を、大気圧より高い正圧、若しくは大気圧より低い負圧を発生させる圧力源なしで行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本明細書に開示の蒸発燃料処理装置の故障診断装置は、次の手段をとる。
【0008】
第1の手段は、燃料タンク内で発生する蒸発燃料を吸着して捕捉するキャニスタと、該キャニスタに燃料タンク内で発生した蒸発燃料を導入するベーパ通路と、該ベーパ通路を開閉するベーパ弁と、前記キャニスタに捕捉された蒸発燃料をパージ処理のため通流させるパージ通路と、該パージ通路を開閉するパージ弁と、前記キャニスタ内に大気を供給する大気通路と、該大気通路を開閉する大気弁と、を備える蒸発燃料処理装置と、燃料タンク内の燃料の飽和蒸気圧特性を求める飽和蒸気圧特性推定手段と、蒸発燃料処理装置において蒸発燃料が流入する通路及び空間の全てを大気に対して閉塞した状態下、若しくは蒸発燃料処理装置において蒸発燃料が流入する通路及び空間の少なくとも一部を大気に対して開放した状態下で、前記飽和蒸気圧特性推定手段により求められる飽和蒸気圧特性の経時変化により、蒸発燃料処理装置のリーク故障、若しくは蒸発燃料処理装置の閉塞故障の有無を診断する故障診断手段と、を備え、前記故障診断手段は、前記飽和蒸気圧特性推定手段により求められる飽和蒸気圧特性から特定の温度における飽和蒸気圧を求め、この飽和蒸気圧の経時変化により故障の有無を診断する。
【0009】
上記第1の手段によれば、蒸発燃料処理装置において蒸発燃料が流入する通路及び空間の全てを大気に対して閉塞した状態下で、飽和蒸気圧特性が変化したとき、燃料中の揮発成分が気化しない状況下にも関わらず気化したとして、蒸発燃料処理装置のリーク故障を診断する。蒸発燃料処理装置において蒸発燃料が流入する通路及び空間の少なくとも一部を大気に対して開放した状態下で、飽和蒸気圧特性が変化しないとき、燃料中の揮発成分が気化する状況下にも関わらず気化しないとして、蒸発燃料処理装置の閉塞故障を診断する。そのため、蒸発燃料処理装置の故障診断を、大気圧より高い正圧、若しくは大気圧より低い負圧を発生させる圧力源なしで行うことができる。その結果、圧力源を作動させるためのエネルギも不要とすることができる。
【0010】
第2の手段は、上述した第1の手段において、前記飽和蒸気圧特性推定手段は、燃料タンクの気相の温度を代表する温度を検出する気相温検出手段と、通路断面積を上流側に比べて狭くされた狭隘流路に燃料を流速を速めて流して、その狭隘流路周りの減圧室にベンチュリ効果により負圧を発生するアスピレータと、を備え、前記アスピレータの減圧室における圧力により求められる燃料蒸気圧、並びに前記気相温検出手段により検出される温度を、予め前記温度に対して記憶された燃料の飽和蒸気圧特性と対比して飽和蒸気圧特性を推定する。
【0011】
上記第2の手段によれば、アスピレータの減圧室で飽和状態にある燃料蒸気圧を取得できるため、気相温検出手段により検出される気相温度との関係から飽和蒸気圧特性を容易に取得することができる。
【0012】
第3の手段は、上述した第1の手段において、前記飽和蒸気圧特性推定手段は、燃料タンクの気相の温度を代表する温度を検出する気相温検出手段と、燃料タンクの気相の蒸発燃料の蒸気圧を求める蒸気圧検出手段と、を備え、前記気相温検出手段により検出される温度が変化する前後において、前記蒸気圧検出手段により検出される各蒸気圧を、予め記憶された飽和蒸気圧特性の前記気相温検出手段により検出されたのと同じ各温度における各飽和蒸気圧と対比して飽和蒸気圧特性を推定する。
【0013】
上記第3の手段によれば、気相温検出手段と蒸気圧検出手段の検出結果のみから飽和蒸気圧特性を推定することができ、アスピレータ等を用いることなく実現できる。
【0014】
第4の手段は、上述した第1の手段において、前記飽和蒸気圧特性推定手段は、燃料タンクの気相の温度を代表する温度を検出する気相温検出手段と、燃料タンクの気相の蒸発燃料における燃料成分密度を求める密度検出手段と、を備え、該密度検出手段による燃料成分密度から求められる燃料蒸気圧、並びに前記気相温検出手段により検出される温度を、予め前記温度に対して記憶された燃料の飽和蒸気圧特性と対比して飽和蒸気圧特性を推定する。
【0015】
上記第4の手段によれば、気相温検出手段と密度検出手段の検出結果のみから飽和蒸気圧特性を推定することができる。
【0016】
第5の手段は、上述した第1~第4の手段のいずれかにおいて、前記故障診断手段は、前記パージ弁を閉じた状態で、前記ベーパ弁を閉じたときの、燃料タンクの気相における前記飽和蒸気圧の経時変化により、燃料タンク、若しくは前記ベーパ弁より燃料タンク側の前記ベーパ通路の少なくともいずれかにおけるリーク故障の有無を診断する第1故障診断手段を備える。
【0017】
上記第5の手段によれば、燃料タンクを大気に対して封鎖した状態で、燃料タンク内の気相の飽和蒸気圧の経時変化により、燃料タンク若しくは燃料タンクにつながる通路のリーク故障の有無を診断することができる。
【0018】
第6の手段は、上述した第5の手段において、前記故障診断手段は、前記第1故障診断手段にてリーク故障なしと診断され、且つ前記パージ弁を閉じた状態で、前記ベーパ弁を開き、且つ前記大気弁を閉じたときの、燃料タンクの気相における前記飽和蒸気圧の経時変化により、前記キャニスタ、前記ベーパ弁より前記キャニスタ側の前記ベーパ通路、前記大気弁より前記キャニスタ側の前記大気通路、若しくは前記パージ弁より前記キャニスタ側の前記パージ通路の少なくともいずれかにおけるリーク故障の有無、前記ベーパ弁を含む前記ベーパ通路における閉塞故障の有無、又は前記ベーパ弁の開動作不良故障の有無を診断する第2故障診断手段を備える。
【0019】
上記第6の手段によれば、リーク故障がないことを確認した後、燃料タンク及びキャニスタを互いに連通させ、それらを大気に対して封鎖した状態で、燃料タンク内の気相の飽和蒸気圧の経時変化により、キャニスタ若しくはキャニスタにつながる通路のリーク故障、ベーパ通路の閉塞故障、又はベーパ弁の開動作不良故障の有無を診断することができる。
【0020】
第7の手段は、上述した第5の手段において、前記故障診断手段は、前記第1故障診断手段にてリーク故障なしと診断され、且つ前記パージ弁を閉じた状態で、前記ベーパ弁及び前記大気弁を開いたときの、燃料タンクの気相における前記飽和蒸気圧の経時変化により、前記ベーパ弁を含む前記ベーパ通路における閉塞故障の有無、又は前記ベーパ弁の開動作不良故障の有無を診断する第3故障診断手段を備える。
【0021】
上記第7の手段によれば、リーク故障がないことを確認した後、燃料タンク及びキャニスタを互いに連通させ、それらを大気に対して連通させた状態で、燃料タンク内の気相の飽和蒸気圧の経時変化により、ベーパ通路の閉塞故障、又はベーパ弁の開動作不良故障の有無を診断することができる。
【0022】
第8の手段は、上述した第6の手段において、前記故障診断手段は、前記第1故障診断手段及び前記第2故障診断手段にてリーク故障、閉塞故障、若しくは開動作不良故障なしと診断され、且つ前記パージ弁が閉じた状態で、前記ベーパ弁及び前記大気弁を共に開いたときの、燃料タンクの気相における前記飽和蒸気圧の経時変化により、前記大気弁を含む前記大気通路における閉塞故障の有無、又は前記大気弁の開動作不良故障の有無を診断する第4故障診断手段を備える。
【0023】
上記第8の手段によれば、燃料タンク又はキャニスタにリーク故障がないことを確認した後、燃料タンク及びキャニスタを大気に連通させたときの、燃料タンク内の気相の飽和蒸気圧の経時変化により、大気通路の閉塞故障の有無を診断することができる。また、同時に大気弁の開動作不良故障の有無を診断することができる
【0024】
第9の手段は、上述した第7の手段において、前記故障診断手段は、前記第1故障診断手段及び前記第3故障診断手段にてリーク故障、閉塞故障、若しくは開動作不良故障なしと診断され、且つ前記パージ弁が閉じた状態で、前記大気弁を閉じたときの、燃料タンクの気相における前記飽和蒸気圧の経時変化により、前記大気弁の閉動作不良故障の有無を診断する第5故障診断手段を備える。
【0025】
上記第9の手段によれば、リーク故障、閉塞故障、若しくは開動作不良故障がないことを確認した後、燃料タンク及びキャニスタを互いに連通させ、それらを大気に開放した状態で、大気弁を閉じたときの燃料タンク内の気相の飽和蒸気圧の経時変化により、大気弁の閉動作不良故障の有無を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態を示すシステム構成図である。
図2】第1実施形態の制御回路のブロック図である。
図3】アスピレータの拡大断面図である。
図4】第1実施形態における故障診断プログラムAを示すフローチャートである。
図5】第1実施形態における故障診断プログラムBを示すフローチャートである。
図6】第1実施形態における故障診断プログラムCを示すフローチャートである。
図7】第1実施形態における故障診断プログラムDを示すフローチャートである。
図8】第1実施形態における故障診断プログラムEを示すフローチャートである。
図9】第1実施形態における故障診断プログラムFを示すフローチャートである。
図10】上記各故障診断プログラムA~Cを説明するためのタイムチャートである。
図11】上記各故障診断プログラムD~Fを説明するためのタイムチャートである。
図12】上記各故障診断プログラムにおける飽和蒸気圧特性推定プログラムを示すフローチャートである。
図13】アスピレータの燃料流量に対する減圧室の圧力変化を示す特性図である。
図14】第1実施形態における飽和蒸気圧特性の推定法を説明する飽和蒸気圧特性図である。
図15】第2実施形態における飽和蒸気圧特性推定プログラムを示すフローチャートである。
図16】第2実施形態の飽和蒸気圧特性の推定法を説明する飽和蒸気圧特性図である。
図17】第2実施形態の飽和蒸気圧特性の推定法を説明する2つの飽和蒸気圧特性図である。
図18】第3実施形態を示すシステム構成図である。
図19図18のオリフィス弁部分の拡大図である。
図20】第3実施形態の制御回路のブロック図である。
図21】第3実施形態における飽和蒸気圧特性推定プログラムを示すフローチャートである。
図22】第3実施形態における飽和蒸気圧特性の推定法を説明する飽和蒸気圧特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態のシステム構成>
図1は、第1実施形態である蒸発燃料処理装置の故障診断装置のシステム構成を示す。第1実施形態は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等のエンジンに適用した例である。
【0028】
図1において、燃料タンク2の気相には、上流側ベーパ通路32が接続され、気相中の蒸発燃料をキャニスタ4の活性炭(図示略)に吸着し、捕捉するように構成されている。そのため、キャニスタ4には、上流側ベーパ通路32と封鎖弁12(ベーパ弁に相当)を介して連通する下流側ベーパ通路34の他端が連通して接続されている。キャニスタ4には、一端が大気弁16を介して大気中に開放された大気通路36の他端が連通して接続されている。そのため、燃料タンク2の気相の燃料蒸気圧が大気圧より高くなり、封鎖弁12及び大気弁16が開放されていると、燃料タンク2中の蒸発燃料がキャニスタ4に流れて吸着され、捕捉される。キャニスタ4には、下流側ベーパ通路34に隣接して上流側パージ通路38が連通して接続されており、上流側パージ通路38の他端は、パージ弁14を介して下流側パージ通路39に連通され、下流側パージ通路39の他端は、エンジン(ENG)6の吸気通路に連通して接続されている。そのため、エンジン6が作動して、パージ弁14及び大気弁16が開放されている状態では、キャニスタ4に吸着され、捕捉されていた蒸発燃料がエンジン6の吸気負圧に吸入されてパージ処理され、エンジン6にて燃焼される。燃料タンク2、キャニスタ4、上流側ベーパ通路32、下流側ベーパ通路34、大気通路36、上流側パージ通路38、及び下流側パージ通路39は、蒸発燃料が通流する経路(ベーパ経路)30であり、リーク故障診断では、ベーパ経路30に大気への漏れがないか診断される。
【0029】
燃料タンク2の液相の底部には、燃料ポンプ(EFP)8が固定されており、燃料タンク2内の燃料を燃料供給通路56を介してエンジン6に供給可能としている。燃料ポンプ8には、プレッシャレギュレータ(PR)10が設けられている。プレッシャレギュレータ10は、燃料ポンプ8がエンジン6に供給した燃料のうち余剰となった燃料を燃料タンク2内に還流させる。燃料供給通路56には、分岐通路52が分岐接続されており、分岐通路52には、途中分岐弁20が介挿されている。分岐通路52を介した燃料は、アスピレータ(ASP)40に供給されている。アスピレータ40は、概ね燃料タンク2の気相内に位置するように固定されている。アスピレータ40は、燃料を流すことによって負圧を発生させるものであり、発生された負圧は、吸引通路54によって遮断弁18を介してキャニスタ4の下流側ベーパ通路34及び上流側パージ通路38に隣接する位置に連通されている。吸引通路54には、圧力センサ(Pセンサ)26が設けられ、吸引通路54の圧力を検出している。また、燃料タンク2の気相にも温度センサ(Tセンサ)22及び圧力センサ(Pセンサ)24が設けられ、気相の燃料蒸気の温度及び圧力を検出している。
【0030】
図2は、第1実施形態のシステムの制御回路を示す。図2において、デジタルコンピュータを含んで構成された制御ユニット60には、温度センサ22、圧力センサ24、26からの検出信号が入力されている。また、制御ユニット60は、封鎖弁12、パージ弁14、大気弁16、遮断弁18、分岐弁20、及び燃料ポンプ8に作動信号を出力して、それぞれの作動状態を制御している。更に、制御ユニット60は、警告灯62に作動信号を出力している。警告灯62は、リーク故障診断によりベーパ経路30に大気への漏れが検出されたときに点灯されて漏れがあることを運転者に警告する。
【0031】
図3は、アスピレータ40の詳細構造を示す。図3のように、アスピレータ40は、ベンチュリ部43とノズル部44の組合せから構成されている。ノズル部44からベンチュリ部43に向けて燃料を高速で流し、ベンチュリ部43から燃料タンク2内に燃料を噴出する構成とされている。ベンチュリ部43は、絞り45と、絞り45の燃料流動方向上流側に設けられた先窄まり状の減圧室46と、絞り45の燃料流動方向下流側に設けられた末拡がり状のディフューザ部47と、減圧室46に設けられた吸引ポート42とを備えている。減圧室46、絞り45、およびディフューザ部47は、それぞれ同軸に形成されている。絞り45は、通路断面積を燃料流動方向の上流側及び下流側に比べて狭くされた狭隘流路を形成している。
【0032】
吸引ポート42は、減圧室46に連通形成され、吸引ポート42には、吸引通路54(図1参照)が連通されている。ノズル部44は、ベンチュリ部43の上流側に接合されている。ノズル部44は、アスピレータ40内に燃料を導入する導入ポート41と、導入された燃料をベンチュリ部43内に噴射するノズル本体48とを備えている。ノズル本体48は減圧室46内に同軸収納されており、当該ノズル本体48の噴射口49は絞り45に臨んでいる。
【0033】
燃料ポンプ8から吐出された燃料の一部は、燃料供給通路56から分岐通路52(図1参照)を通して導入ポート41からアスピレータ40内へ導入される。導入された燃料は、ノズル本体48から噴射され、絞り45及びディフューザ部47の中央部を軸方向に高速で流動する。このとき、減圧室46においては、ベンチュリ効果によって負圧が発生する。これにより、吸引ポート42および吸引通路54(図1参照)に吸引力が生じる。吸引通路54を通して吸引ポート42から吸引された気体(本実施形態1ではキャニスタ4からの蒸発燃料及び空気)は、ノズル本体48から噴射された燃料と共にディフューザ部47から燃料タンク2内に混合噴出される。
【0034】
<蒸発燃料処理装置の故障診断機能A>
図4は、上述の蒸発燃料処理装置において、ベーパ経路30のうちの燃料タンク2側にリーク故障があるか否かを診断するプログラム(第1故障診断手段に相当)の内容を示す。以下、このプログラムの内容について、図10のタイムチャートの時間Aで示す領域を参照しながら説明する。
【0035】
図4の故障診断ルーチンAのプログラムは、エンジン6が停止されて燃料タンク2の周辺温度が安定した状態(例えば、エンジン停止後、5時間経過時)で起動される。故障診断ルーチンAのプログラムが起動されると、ステップS2において、後述のように燃料タンク2の燃料の気相における飽和蒸気圧特性が推定される。ステップS4では、推定された飽和蒸気圧特性に基づいて気相温度が摂氏37.8度のリード蒸気圧(RVP)が求められ、RVPNO.1として保存される。ステップS6では、封鎖弁12、大気弁16及びパージ弁14を全て閉じる。そして、ステップS8では、タイマ機能を作動させて計時を開始する。ステップS10では、そのタイマによる計側時間が予め設定した時間t1に到達したか否かを判定する。時間t1は、図10の時間Aに相当する時間である。計測時間がt1に達するのを待って、t1に達すると、ステップS11において、次の計測のため、タイマ機能をリセットする。
【0036】
次のステップS12では、上述のステップS2と同様に、その時点の燃料タンク2の燃料の気相における飽和蒸気圧特性が再度推定される。そして、ステップS13では、上述のステップS4と同様、推定された飽和蒸気圧特性に基づいて気相温度が摂氏37.8度のリード蒸気圧(RVP)が求められ、RVPNO.2として保存される。次のステップS14では、RVPNO.1とRVPNO.2との差の絶対値がRVP変化量ΔPとして算出される。ステップS16では、ΔPが閾値PT1以下か否かが判定される。ベーパ経路30のうちの燃料タンク2側、即ち燃料タンク2、若しくは封鎖弁12より燃料タンク2側である上流側ベーパ通路32に孔が開いていて蒸発燃料の漏れがあると、燃料タンク2のリード蒸気圧は、図10の時間Aの領域に破線で示すように、時間とともに低下する。そのため、ステップS16は否定判断され、ステップS20においてリーク故障有の出力が行われる。そして、警告灯62(図2参照)を点灯する。このようにリーク故障有の出力が行われた後は、一旦故障診断の処理を終了する。一方、リーク故障がなければ、図10の時間Aの領域に実線で示すように、燃料タンク2のリード蒸気圧は低下しないため、ステップS16は肯定判断されてステップS18にて異常無の出力が行われる。そして、図10の時間Bの領域で示す故障診断を実行するプログラムに移行する。
【0037】
<蒸発燃料処理装置の故障診断機能B>
図5は、上述の蒸発燃料処理装置において、ベーパ経路30のうちのキャニスタ4側にリーク故障があるか否かを診断するプログラム(第2故障診断手段に相当)の内容を示す。以下、このプログラムの内容について、図10のタイムチャートの時間Bで示す領域を参照しながら説明する。
【0038】
図5のプログラムが実行されると、ステップS2Bにて、図4のプログラムのステップS2と同様、その時点の燃料タンク2の燃料の気相における飽和蒸気圧特性が推定される。ステップS4Bでは、推定された飽和蒸気圧特性に基づいて気相温度が摂氏37.8度のリード蒸気圧(RVP)が求められ、RVPNO.1として保存される。ステップS6Bでは、大気弁16及びパージ弁14を閉に維持し、封鎖弁12を開とする。そして、ステップS8B~ステップS14Bでは、図4のステップS8~ステップS14と同様、時間t1経過後のリード蒸気圧RVPNO.2を求め、RVPNO.1とRVPNO.2との差の絶対値をRVP変化量ΔPとして求める。
【0039】
次にステップS16Bでは、ΔPが閾値PT1以上か否かが判定される。また、ステップS17Bでは、ΔPが閾値PT2以下か否かが判定される。ベーパ通路が閉塞故障しているか、又は封鎖弁12が開動作できない故障がある場合は、上流側ベーパ通路32及び下流側ベーパ通路34を通じて燃料タンク2からキャニスタ4に向けて燃料の揮発成分が揮発しないため、図10の時間Bの領域に一点鎖線で示すように、リード蒸気圧は時間Bが経過しても閾値PT1より低下しない。そのため、ステップS16Bは否定判断され、ステップS19Bにおいて、ベーパ通路の閉塞故障有、又は封鎖弁12が開動作できない故障有として出力する。警告灯62(図2参照)も点灯する。
【0040】
ベーパ通路の閉塞故障がなく、且つ封鎖弁12の開動作不良故障がない場合は、燃料タンク2の蒸発燃料はキャニスタ4に向けて燃料の揮発成分が揮発されるため、図10の時間Bの領域に実線で示すように、リード蒸気圧は低下する。そのため、ΔPが閾値PT1以上となって、ステップS16Bは肯定判断される。
【0041】
一方、キャニスタ4、封鎖弁12よりキャニスタ4側の下流側ベーパ通路34、大気弁16よりキャニスタ4側の大気通路36、若しくはパージ弁14よりキャニスタ4側の上流側パージ通路38の少なくともいずれかに孔開きによるリーク故障が有ると、図10の時間Bの領域に破線で示すように、上述の実線の場合より大きくリード蒸気圧は低下する。そのため、ΔPは閾値PT2以上となって、ステップS17Bが否定判断される。そのため、ステップS20Bにおいて、キャニスタ4、封鎖弁12よりキャニスタ4側の下流側ベーパ通路34、大気弁16よりキャニスタ4側の大気通路36、若しくはパージ弁14よりキャニスタ4側の上流側パージ通路38の少なくともいずれかにリーク故障が有るとの出力を行う。警告灯62(図2参照)も点灯する。このようにリーク故障有の出力が行われた後は、一旦故障診断の処理を終了する。
【0042】
上記のようなキャニスタ4等のリーク故障がなければ、リード蒸気圧は図10の時間Bの領域に実線で示すように変化してΔPは閾値PT2以下となる。そのため、ステップS17Bは肯定判断され、ステップS18Bにて異常無の出力が行われる。そして、図10の時間Cの領域で示す故障診断を実行するプログラムに移行する。
【0043】
<蒸発燃料処理装置の故障診断機能C>
図6は、上述の蒸発燃料処理装置において、ベーパ経路30のうちの大気通路36に閉塞故障があるか否かを診断するプログラム(第4故障診断手段に相当)の内容を示す。以下、このプログラムの内容について、図10のタイムチャートの時間Cで示す領域を参照しながら説明する。
【0044】
図6のプログラムが実行されると、ステップS2Cにて、図4のプログラムのステップS2と同様、その時点の燃料タンク2の燃料の気相における飽和蒸気圧特性が推定される。ステップS4Cでは、推定された飽和蒸気圧特性に基づいて気相温度が摂氏37.8度のリード蒸気圧(RVP)が求められ、RVPNO.1として保存される。ステップS6Cでは、封鎖弁12は開、パージ弁14は閉を維持し、大気弁16を開とする。そして、ステップS8C~ステップS14Cでは、図4のステップS8~ステップS14と同様、時間t1経過後のリード蒸気圧RVPNO.2を求め、RVPNO.1とRVPNO.2との差の絶対値をRVP変化量ΔPとして求める。
【0045】
ステップS16Cでは、ΔPが閾値PT2以上か否かが判定される。大気通路36が閉塞故障しているか、又は大気弁16が開動作できない故障がある場合は、燃料タンク2のリード蒸気圧は、図10の時間Cの領域に破線で示すように、時間Cが経過しても閾値PT2より高い状態に維持される。そのため、ステップS16Cは否定判断され、ステップS20Cにおいて、大気通路36の閉塞故障、又は大気弁16の開動作不良故障有の出力が行われる。そして、警告灯62(図2参照)を点灯する。一方、このような故障がなければ、燃料タンク2の燃料は揮発して図10の時間Cの領域に実線で示すように、燃料タンク2のリード蒸気圧は低下するため、ステップS16Cは肯定判断されてステップS18Cにて異常無の出力が行われる。この後は、故障診断の処理を終了する。
【0046】
<蒸発燃料処理装置の故障診断機能D>
図7は、上述の蒸発燃料処理装置において、ベーパ経路30のうちの燃料タンク2側にリーク故障があるか否かを診断するプログラム(第1故障診断手段に相当)の内容を示す。このプログラムは、実質的に図4に示したプログラムと同一である。図7のプログラムが図4のプログラムに対して相違する点は、故障診断時に大気弁16が開か閉か相違するのみである。しかし、封鎖弁12が閉じられた状態で、燃料タンク2側のリーク故障診断をする際に、大気弁16の開閉状態は診断に影響しない。従って、図10の時間Aの領域と図11の時間Dの領域との比較からも明らかなように、図7のプログラム内容は図4のプログラム内容と実質的に同一であり、図7のプログラム内容についての詳細な説明は、図4の説明の繰り返しとなるため省略する。
【0047】
<蒸発燃料処理装置の故障診断機能E>
図8は、上述の蒸発燃料処理装置において、上流側ベーパ通路32及び下流側ベーパ通路34が閉塞していないか、又は封鎖弁12に開動作不良故障がないかを診断するプログラムの内容を示す。このプログラムは、実質的に図5に示したプログラムと同一である。図8のプログラムが図5のプログラムに対して相違する点は、故障診断時に大気弁16が開か閉か相違するのみである。しかし、上流側ベーパ通路32及び下流側ベーパ通路34が閉塞していないか、又は封鎖弁12に開動作不良故障がないかを診断する際に、大気弁16の開閉状態は診断に影響しない。従って、図10の時間Bの領域と図11の時間Eの領域との比較からも明らかなように、上流側ベーパ通路32及び下流側ベーパ通路34が閉塞していないか、又は封鎖弁12に開動作不良がないかを診断することに関しては、図8のプログラム内容は図5のプログラム内容と実質的に同一であり、図8のプログラム内容についての詳細な説明は、図5の説明の繰り返しとなるため省略する。
【0048】
<蒸発燃料処理装置の故障診断機能F>
図9は、上述の蒸発燃料処理装置において、大気弁16に閉動作不良故障があるか否かを診断するプログラム(第5故障診断手段に相当)の内容を示す。以下、このプログラムの内容について、図11のタイムチャートの時間Fで示す領域を参照しながら説明する。
【0049】
図9のプログラムが実行されると、ステップS2Fにて、図4のプログラムのステップS2と同様、その時点の燃料タンク2の燃料の気相における飽和蒸気圧特性が推定される。ステップS4Fでは、推定された飽和蒸気圧特性に基づいて気相温度が摂氏37.8度のリード蒸気圧(RVP)が求められ、RVPNO.1として保存される。ステップS6Fでは、封鎖弁12を開、大気弁16を閉、パージ弁14を閉とする。そして、ステップS8F~ステップS14Fでは、図4のステップS8~ステップS14と同様、時間t1経過後のリード蒸気圧RVPNO.2を求め、RVPNO.1とRVPNO.2との差の絶対値をRVP変化量ΔPとして求める。
【0050】
ステップS16Fでは、ΔPが閾値PT3以下か否かが判定される。ステップS6Fにてパージ弁14が閉、封鎖弁12及び大気弁16が開の状態から大気弁16が閉とされると、燃料タンク2の燃料の揮発が止められるため、リード蒸気圧は、その時点の圧力を維持するはずであるが、大気弁16が開のまま閉動作できない故障を起こしていると、上記リード蒸気圧は、図11の時間Fの領域に破線で示すように低下する。そのため、ステップS16Fは否定判断され、ステップS20Fにおいて大気弁16の閉動作不良故障有の出力が行われる。そして、警告灯62(図2参照)を点灯する。一方、大気弁16の閉動作不良故障がなければ、図11の時間Fの領域に実線で示すように、上記リード蒸気圧は低下しないため、ステップS16Fは肯定判断されてステップS18Fにて異常無の出力が行われる。この後は、故障診断の処理を終了する。
【0051】
<飽和蒸気圧特性推定機能>
図12は、図4のステップS2、ステップS12における飽和蒸気圧特性推定プログラムの第1実施形態を示す。以下、このプログラムの内容を、図1~3、並びに図13、14を参照しながら説明する。
【0052】
まず、ステップS22では、温度センサ22により検出される燃料タンク2内の気相の温度を取り込む。また、ステップS24では、圧力センサ26により検出されるアスピレータ40の減圧室46の圧力を取り込む。次のステップS26では、ステップS22、S24にて取り込まれた気相温度及び減圧室46の圧力に基づいて、燃料タンク2内の燃料の飽和蒸気圧特性を推定する。
【0053】
アスピレータ40の減圧室46内は、アスピレータ40の作動が安定した状態では、燃料蒸気が飽和状態となっている。そのため、図13のように、アスピレータ40に対する燃料ポンプ8からの燃料供給量から算出される減圧室46の負圧(吸引負圧)と、実際に圧力センサ26によって検出される圧力(計測結果)との差から飽和蒸気圧(蒸気圧)を求めることができる。飽和蒸気圧特性の推定は、図14のように、燃料タンク2内の気相の温度及び飽和蒸気圧に基づいて予め記憶されている複数の飽和蒸気圧特性の中から、破線のように温度に対する蒸気圧が一致する特性が特定される。ここで、燃料タンク2の気相の温度の代わりに、減圧室46の温度を用いることもできる。
【0054】
<第2実施形態>
図15は、第2実施形態を示す。第2実施形態は、図4のステップS2、ステップS12における飽和蒸気圧特性推定プログラムの別例である。以下、このプログラムの内容を、図1、2、16、17を参照しながら説明する。
【0055】
図15のプログラムが実行されると、ステップS28では、温度センサ22により検出される燃料タンク2内の気相の温度をTK1として取り込む。また、ステップS30では、圧力センサ24により検出される燃料タンク2内の気相の圧力をPV1として取り込む。ステップS32では、再度、温度センサ22により検出される気相温度をTK2として取り込む。そして、ステップS34では、TK2-TK1が予め設定した温度差TTに達するのを待って、ステップS36に進む。ステップS36では、この時点で圧力センサ24により検出される気相の圧力をPV2として取り込む。次のステップS38では、温度センサ22の検出温度がTK1からTK2に変化するとき、圧力センサ24の検出圧力がPV1からPV2に変化する飽和蒸気圧特性が、予め記憶されている飽和蒸気圧特性の中に存在すれば、その特性を、その時点で燃料タンク2内の燃料の飽和蒸気圧特性と推定する。ステップS40では、ステップS38にて飽和蒸気圧特性の推定が完了したか否かを判定している。推定が完了するまで図15の処理が繰り返される。
【0056】
図16は、気相温度変化(TK1からTK2)に対する気相圧力変化(PV1からPV2)が一致する飽和蒸気圧特性が存在し、燃料タンク2内の燃料の飽和蒸気圧特性の推定が行われた場合を示す。図17の例では、気相温度変化(TK1からTK2)に対する気相圧力変化(PV1からPV2)が、飽和蒸気圧特性C1の曲線と一致するため、飽和蒸気圧特性はC1であると推定される。一方、気相温度変化(T1からT2)に対する気相圧力変化(PV1からPV2)が、飽和蒸気圧特性C2の曲線と一致せず、この時点では飽和蒸気圧特性を推定することができない場合を示す。
【0057】
第2実施形態によれば、第1実施形態に比べて、アスピレータ40の減圧室46の圧力を検出する必要がないため、アスピレータ40及び圧力センサ26を省略することができる。
【0058】
<第3実施形態>
図18、20、21は、第3実施形態を示す。第3実施形態は、図4のステップS2、ステップS12における飽和蒸気圧特性推定プログラムの別例である。図18、20は、第3実施形態のシステム構成を示す。また、図21は、第3実施形態の飽和蒸気圧特性推定プログラムの内容を示す。
【0059】
図18のように、第3実施形態は、第1実施形態におけるアスピレータ40の減圧室46に一端が連通された吸引通路54の他端を上流側ベーパ通路32に連通させ、この吸引通路54にオリフィス弁21を介挿している。オリフィス弁21は、図19のように吸引通路54を流れる蒸発燃料の通路面積を縮小変更可能としたものである。オリフィス弁21には、上流側ベーパ通路32からアスピレータ40の減圧室46に向けて蒸発燃料が流れる。オリフィス弁21には圧力センサ28が接続され、オリフィス弁21の上流側と下流側の圧力差を検出可能としている。図20のように、圧力センサ28の検出信号は、制御ユニット60に取り込まれるように接続されている。また、制御ユニット60からの信号によりオリフィス弁21の通路面積が変更可能とされている。第3実施形態のシステム構成は、上述のように吸引通路54の構成が変更されたのみで、その他の構成は第1実施形態と同一である。
【0060】
図21は、図4のステップS2、ステップS12における飽和蒸気圧特性推定プログラムの第3実施形態を示す。以下、このプログラムの内容を、図18~20、22を参照しながら説明する。
【0061】
図21のプログラムが実行されると、ステップS42にて温度センサ22により検出される燃料タンク2内の気相の温度を取り込む。ステップS44では、圧力センサ28により検出されるオリフィス弁21の差圧に基づいてベルヌーイの式から燃料成分密度を次式により求める。
燃料成分密度=差圧/(Q/CK)2
但し、Q:オリフィス弁21の通過流量、C:流量係数、K:断面係数
【0062】
また、ステップS44では、上記のように求めた燃料成分密度と相関する燃料蒸気圧を、燃料成分密度から算出する。次のステップS46では、温度センサ22による気相温度と算出された燃料蒸気圧とから、予め記憶されている飽和蒸気圧特性との比較により飽和蒸気圧特性を推定する。図22は、気相温度と燃料蒸気圧とから破線で示す飽和蒸気圧特性を推定する様子を示している。
【0063】
上記各実施形態において、ステップS2、S12、S2B、S12B、S2C、S12C、S2D、S12D、S2E、S12E、S2F、S12F、図12の飽和蒸気圧特性推定ルーチン、図15の飽和蒸気圧特性推定ルーチン、及び図21の飽和蒸気圧特性推定ルーチンの各処理は、飽和蒸気圧特性推定手段に相当する。また、図4~9の故障診断ルーチンの各処理は、故障診断手段に相当し、ステップS22、S28、S32、及びS42の各処理は、気相温検出手段に相当し、ステップS30及びS36の各処理は、蒸気圧検出手段に相当し、ステップS44の処理は、密度検出手段に相当する。更に、図4、7の故障診断ルーチンの各処理は、第1故障診断手段に相当し、図5の故障診断ルーチンの各処理は、第2故障診断手段に相当し、図8の故障診断ルーチンの各処理は、第3故障診断手段に相当し、図6の故障診断ルーチンの各処理は、第4故障診断手段に相当し、図9の故障診断ルーチンの各処理は、第5故障診断手段に相当する。
【0064】
<その他の実施形態>
以上、本明細書に開示の技術を特定の実施形態について説明したが、その他各種の形態で実施可能なものである。例えば、上記実施形態では、飽和蒸気圧特性から飽和蒸気圧を読み取るための特定の温度を摂氏37.8度のリード蒸気圧(RVP)としたが、特定の温度は、任意の温度とすることができる。上記実施形態では、ベーパ通路と大気通路の閉塞故障を区別せずに診断するものとしたが、それぞれの閉塞故障を区別して診断することもできる。上記実施形態では、気相温度を温度センサ22により直接検出したが、燃料温度、エンジンの冷却水温度等により代用してもよい。また、気相温度は、燃料温度、外気温度、及び燃料タンク内の燃料残量を用いて演算により求めてもよい。
【符号の説明】
【0065】
2 燃料タンク
4 キャニスタ
6 エンジン(ENG)
8 燃料ポンプ(EFP)
10 プレッシャレギュレータ(PR)
12 封鎖弁(ベーパ弁)
14 パージ弁
16 大気弁
18 遮断弁
20 分岐弁
21 オリフィス弁
22 温度センサ
24、26、28 圧力センサ
30 ベーパ経路
32 上流側ベーパ通路
34 下流側ベーパ通路
36 大気通路
38 上流側パージ通路
39 下流側パージ通路
40 アスピレータ(ASP)
41 導入ポート
42 吸引ポート
43 ベンチュリ部
44 ノズル部
45 絞り(狭隘流路)
46 減圧室
47 ディフューザ部
48 ノズル本体
49 噴射口
52 分岐通路
54 吸引通路
56 燃料供給通路
60 制御ユニット
62 警告灯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22