(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168443
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】生体信号検出装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/262 20210101AFI20221031BHJP
【FI】
A61B5/262
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073907
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】植村 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】上田 龍二
(72)【発明者】
【氏名】喜納 修
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久弥
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127LL04
4C127LL07
(57)【要約】
【課題】感度を高めることを可能とした生体信号検出装置を提供する。
【解決手段】生体信号検出装置は、表面12AFと表面12AFに接続する側面12ASとを備える基部12A1と、表面12AFから突き出る針状体12A2とを備える第1電極部12Aと、基部12A1よりも柔らかい第1配線部11Aと、基部12A1よりも柔らかく、かつ、基部12A1を第1配線部11Aに接続する導電性接着層14と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と前記表面に接続する側面とを備える基部と、前記表面から突き出る針状体と、を備える電極部と、
前記基部よりも柔らかい配線部と、
前記基部よりも柔らかく、かつ、前記基部を前記配線部に接続する導電性接着層と、を備える
生体信号検出装置。
【請求項2】
第1面と第2面とを備え、前記基部よりも柔らかい基材をさらに備え、
前記配線部は、前記第2面に位置し、
前記基材は、前記第1面に開口する孔を有し、
前記基部は、前記孔の内部に位置する
請求項1に記載の生体信号検出装置。
【請求項3】
第1面と第2面とを備え、前記基部よりも柔らかい基材をさらに備え、
前記配線部は、前記第2面に位置し、
前記生体信号検出装置は、前記配線部の一部と前記基材の一部とによって形成される孔を有し、
前記基部は、前記孔の内部に位置し、
前記導電性接着層は、前記配線部の前記一部に前記基部を接続する
請求項1に記載の生体信号検出装置。
【請求項4】
前記導電性接着層は、前記孔の内面に前記基部の前記側面を接続する
請求項2または3に記載の生体信号検出装置。
【請求項5】
前記表面と前記第1面とが面一である
請求項2から4のいずれか一項に記載の生体信号検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体信号検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の皮膚における病状を診断するための医療装置が知られている。この医療装置は、皮膚におけるインピーダンスの値を測定し、測定値を用いて被検者の皮膚に存在する病巣を診断する。医療装置は、複数の電極を有した導電性のプローブを備えている。各電極は、ベース基板と、ベース基板と一体に形成された複数のマイクロニードルを備えている。ベース基板は、SOIウェハにおけるシリコンウェハであり、マイクロニードルはシリコンウェハから形成される。各マイクロニードルは、角質層の貫通に十分な長さを有している。皮膚におけるインピーダンスの値が測定される際には、各電極が被検者の皮膚に配置された後に、各電極が皮膚に押圧されることによって、マイクロニードルが角質層を貫通する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、マイクロニードルの穿刺対象である生体の皮膚は弾性を有している。そのため、マイクロニードルの押圧によって、マイクロニードルを穿刺するための外力が皮膚に作用すると、皮膚は、皮膚に作用した外力に応じて変形する。この点、シリコンウェハによって形成されたベース基板は高い剛性を有するから、マイクロニードルの穿刺時において皮膚の変形に対して十分に追従することができない。これにより、皮膚に対するマイクロニードルの穿刺が十分ではない、あるいは、測定時にマイクロニードルが抜けやすくなる。結果として、検出した生体信号から不要な成分を取り除く信号処理において有用な成分が少なからず取り除かれてしまい、評価に足りる強度を有した有用な成分を得ることができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための生体信号検出装置は、表面と前記表面に接続する側面とを備える基部と、前記表面から突き出る針状体と、を備える電極部と、前記基部よりも柔らかい配線部と、前記基部よりも柔らかく、かつ、前記基部を前記配線部に接続する導電性接着層と、を備える。
【0006】
上記生体信号検出装置によれば、基部よりも柔らかい配線部と導電性接着層とを有するから、配線部と、基部を配線部に接続するための導電性接着層とが、針状体の穿刺対象に対して追従するように変形することが可能である。これにより、配線部および導電性接着層が変形しない場合に比べて、針状体が穿刺されるべき深さまで穿刺されやすい。そのため、生体信号検出装置の検出感度を高めることが可能である。
【0007】
上記生体信号検出装置において、第1面と第2面とを備え、前記基部よりも柔らかい基材をさらに備え、前記配線部は、前記第2面に位置し、前記基材は、前記第1面に開口する孔を有し、前記基部は、前記孔の内部に位置してもよい。この生体信号検出装置によれば、配線部と電極部とが基材によって支持されるから、基材の機械的な強度によって、電極部と配線部との接続が維持されやすくなる。
【0008】
上記生体信号検出装置において、第1面と第2面とを備え、前記基部よりも柔らかい基材をさらに備え、前記配線部は、前記第2面に位置し、前記生体信号検出装置は、前記配線部の一部と前記基材の一部とによって形成される孔を有し、前記基部は、前記孔の内部に位置し、前記導電性接着層は、前記配線部の前記一部に前記基部を接続してもよい。
【0009】
上記生体信号検出装置によれば、孔の内面を形成する配線部の一部に基部が接続されるから、基部と配線部との接続部が孔の内部に位置する。そのため、配線部の一部と基部との接続部が外部に露出する場合に比べて、配線部の一部と基部との接続が維持されやすい。
【0010】
上記生体信号検出装置において、前記導電性接着層は、前記孔の内面に前記基部の前記側面を接続してもよい。この生体信号検出装置によれば、柔らかい導電性接着層によって、基部の側面が孔の内面に接続されるから、穿刺対象に沿って基材が変形した際に、導電性接着層のうち、基部の側面と孔の内面との間に位置する部分が変形することによって、基部の側面と孔の内面との接続が維持される。
【0011】
上記生体信号検出装置において、前記表面と前記第1面とが面一であってよい。この生体信号検出装置によれば、針状体のうちで基材の第1面から突き出した部分の長さを長く維持することが可能であるから、針状体が皮膚に穿刺されやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生体信号検出装置の感度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の生体信号検出装置の構造を示す平面図。
【
図2】
図1が示す生体信号検出装置の構造を示す断面図。
【
図3】
図2が示す生体信号検出装置の一部を拡大して示す断面図。
【
図4】生体信号検出装置の作用を説明するための作用図。
【
図5】生体信号検出装置の作用を説明するための作用図。
【
図6】第1実施形態の生体信号検出装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図7】第1実施形態の生体信号検出装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図8】第1実施形態の生体信号検出装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図9】第1実施形態の生体信号検出装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図10】第2実施形態の生体信号検出装置の構造を示す断面図。
【
図11】
図10が示す生体信号検出装置の一部を拡大して示す断面図。
【
図12】第2実施形態の生体信号検出装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図13】第2実施形態の生体信号検出装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図14】第2実施形態の生体信号検出装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図15】第3実施形態の生体信号検出装置の構造を示す断面図。
【
図16】
図15が示す生体信号検出装置の一部を拡大して示す断面図。
【
図17】第3実施形態の生体信号検出装置の製造方法を説明するための工程図。
【
図18】生体信号検出装置の第1変更例を示す平面図。
【
図19】生体信号検出装置の第2変更例を示す平面図。
【
図20】生体信号検出装置の第3変更例を示す平面図。
【
図21】第3実施形態の生体信号検出装置の変更例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
図1から
図9を参照して、生体信号検出装置の第1実施形態を説明する。以下では、生体信号検出装置の構造、生体信号検出装置の作用、および、生体信号検出装置の製造方法を順に説明する。
【0015】
[構造]
図1は、生体信号検出装置が備える基材が広がる平面と対向する視点から見た生体信号検出装置の平面構造を示している。
【0016】
図1が示すように、生体信号検出装置10は、配線部11A,11B、電極部12A,12B、および、基材13を備えている。基材13が広がる平面と対向する視点から見て、配線部11A,11Bは基材13の一部に位置している。配線部11A,11Bは直線状を有している。配線部11A,11Bは、電極部12A,12Bに接続される部分において、他の部分に比べて拡張された幅を有する。
【0017】
生体信号検出装置10は、検出部20をさらに備えている。検出部20は、生体において生じる電気信号を検出する。検出部は、例えば電気信号の一例である脳波を検出する。検出部20には、電極部12A,12Bおよび配線部11A,11Bを介して電気信号が入力される。
【0018】
図2は、基材13に直交し、かつ、配線部11A,11Bに沿って延びる平面に沿う生体信号検出装置10の断面構造を示している。
図2が示すように、生体信号検出装置10は、第1配線部11A、第2配線部11B、第1電極部12A、および、第2電極部12Bを備えている。第1電極部12Aは第1配線部11Aに接続され、かつ、第2電極部12Bは第2配線部11Bに接続されている。生体信号検出装置10は、第1端子15Aおよび第2端子15Bを備えている。第1配線部11Aは第1端子15Aに接続され、かつ、第2配線部11Bは第2端子15Bに接続されている。各端子15A,15Bは、導電性を有する材料から形成されている。各端子15A,15Bは、基材13上に位置している。
【0019】
検出部20は、本体21、第1端子22A、および、第2端子22Bを備えている。各端子22A,22Bは、導電性を有する材料から形成される。第1端子22Aは、第1配線部11Aに接続された第1端子15Aに接続される。第2端子22Bは、第2配線部11Bに接続された第2端子15Bに接続される。第1端子22Aは、第1端子15Aに対する接続と、第1端子15Aからの接続の解除とが可能に構成されている。第2端子22Bは、第2端子15Bに対する接続と、第2端子15Bからの接続の解除とが可能に構成されている。なお、第1端子22Aは、第1端子15Aに対する接続が解除できないように構成されてよく、また、第2端子22Bは、第2端子15Bに対する接続が解除できないように構成されてもよい。
【0020】
本体21は、生体において生じた電気信号の検出が可能である。本体21は、上述したように脳波の検出が可能であってよい。なお、脳波は、脳において生じる微小な電気信号である。本体21は、例えば、筋肉において生じた微弱な電場を検出することが可能でもよい。あるいは、本体21は、心臓で生じた微小な電気信号を検出することが可能であってもよい。
【0021】
本体21は、電源を備える。電源は、電池とDC/DCコンバーターとを含んでいる。DC/DCコンバーターは、電池からの入力電圧を所定の出力電圧に変換して、本体21が備える機能部に供給する。本体21が電池によって駆動される場合には、被検者の電気信号を測定する際に、生体信号検出装置10を外部の給電ケーブルに接続する必要がないから、被検者の行動を制限することなく生体信号を測定することが可能である。
【0022】
なお、電池は、二次電池であることが好ましい。二次電池は、例えば、リチウム二次電池、および、電気二重層キャパシタなどであってよい。二次電池を用いた場合には、本体21内に位置する二次電池に対して外部から電力を供給し、これによって二次電池の充電を行うことが可能である。そのため、二次電池によれば一次電池を用いた場合のような電池の交換が不要であるから、生体信号検出装置10の利便性を高めることが可能である。
【0023】
二次電池に対する電力の供給方式は、接触給電方式でもよいし、非接触給電方式でもよい。接触給電方式を用いる場合には、例えば、USB(universal serial bus)ケーブルを用いて二次電池に電力を供給することができる。非接触給電方式は、電磁誘導方式、電解結合方式、および、磁界共鳴方式のいずれかであってよい。なお、生体信号検出装置10の防水性を高める観点では、生体信号検出装置10が外部端子を外表面に有しないことが好ましいから、電力の供給方式には、非接触給電方式を採用することが好ましい。
【0024】
本体21は、制御部を備えている。制御部は、例えばCPU(central processing unit)を含んでいる。制御部は、生体信号検出装置10の駆動を制御する。制御部は、本体21に入力された信号に対して各種の処理を行う。
【0025】
本体21は、表示部を備えてもよい。本体21が表示部を備える場合には、表示部は、本体21のうち、基材13に対向する面とは反対側の面に位置することが好ましい。表示部は、例えば、本体21によって検出された生体信号に関する情報を表示する。表示部は、例えば液晶表示パネルなどであってよい。
【0026】
本体21は、通信部を備えてもよい。通信部は、本体21によって検出された生体信号に関するデータを外部機器に送信する。通信部は、有線で送信する機構でもよいし、無線で送信する機構でもよい。通信部が無線で送信する機構である場合には、生体信号検出装置10を外部機器に有線で接続する必要がないため、被検者の行動が制約されない。そのため、例えば、被検者から得られた生体信号をリアルタイムで外部機器に送信することが可能である。外部機器は、例えば、パーソナルコンピューターおよび携帯電話機などであってよい。
【0027】
なお、生体信号検出装置10の防水性を高める観点では、生体信号検出装置10が外部端子を外表面に有しないことが好ましいから、通信部は無線で送信する機構であることが好ましい。通信部は、例えば、Bluetooth(登録商標)に対応した無線通信モジュールICであってよい。
【0028】
図3は、生体信号検出装置10のうち、第1電極部12Aおよび第1電極部12Aの周辺構造を示している。なお、第2電極部12Bおよび第2電極部12Bの周辺構造は、生体信号検出装置10における位置が第1電極部12Aとは異なるものの、構造は第1電極部12Aと同等である。そのため以下では、第2電極部12Bおよび第2電極部12Bの周辺構造の詳しい説明を省略する。
【0029】
図3が示すように、第1電極部12Aは、基部12A1および針状体12A2を備えている。
図3が示す例では、第1電極部12Aは、複数の針状体12A2を備えている。基部12A1は、表面12AF、表面12AFとは反対側の裏面12AB、および、表面12AFに接続する側面12ASを備えている。針状体12A2は、表面12AFから突き出ている。第1配線部11Aは、基部12A1よりも柔らかい。生体信号検出装置10は、導電性接着層14をさらに備えている。導電性接着層14は、基部12A1よりも柔らかく、かつ、基部12A1を第1配線部11Aに接続している。
【0030】
基材13は、第1面13F1と第2面13F2とを備えている。第2面13F2は、第1面13F1とは反対側の面である。基材13は、基部12A1よりも柔らかい。第1配線部11Aは、第2面13F2に位置している。基材13は、第1面13F1に開口する孔13Hを有している。基部12A1は、孔13Hの内部に位置している。
【0031】
図3が示す例では、基材13の厚さ方向において、孔13Hは基材13を貫通している。これにより、生体信号検出装置10は、第1配線部11Aの一部と基材13の一部とによって形成される孔を有している。詳しくは、孔を画定する面のうち、底面が第1配線部11Aの一部であり、側面が基材13の孔13Hを画定する面である。基部12A1は、当該孔の内部に位置している。導電性接着層14は、第1配線部11Aの一部に基部12A1を接続している。
【0032】
導電性接着層14は、孔の内面に基部12A1の側面12ASを接続している。導電性接着層14は、基部12A1の側面12ASと、基材13の孔13Hを画定する側面との間に位置する部分を含んでいる。これにより、導電性接着層14は、孔を画定する側面に基部12A1の側面を接続している。導電性接着層14は、さらに基部12A1の裏面12ABと、第1配線部11Aの一部との間に位置する部分を含んでいる。これにより、導電性接着層14は、孔を画定する底面に基部12A1の裏面12ABを接続している。
【0033】
生体信号検出装置10において、基部12A1の表面12AFと、基材13の第1面13F1とが面一である。本開示において、面一とは、第1面13F1と直交する断面において、表面12AFと第1面13F1との間の距離が針状体12A2の高さよりも小さいことを意味する。
図3が示す例では、表面12AFと第1面13F1とが、同一の平面上に位置している。
【0034】
上述したように、第1配線部11Aおよび基材13は、第1電極部12Aの基部12A1よりも柔らかい。本開示において、柔らかいとは、荷重に対して延びやすく、かつ、縮みやすいことを意味する。反対に、硬いとは、荷重に対して延びにくく、かつ、縮みにくいことを意味する。すなわち、柔らかいとは、少なくとも弾性が相対的に高いことを意味する一方で、硬いとは、少なくとも弾性が相対的に低いことを意味する。したがって、第1配線部11Aおよび基材13は、基部12A1よりも高い弾性を有する。なお、本開示において、弾性は、引張弾性率すなわちヤング率を意味する。引張弾性率は、JIS K 7161‐1:2015に準拠した方法によって測定される。
【0035】
導電性接着層14は、第1配線部11Aよりも柔らかくてもよいし、第1配線部11Aよりも硬くてもよい。または、導電性接着層14は、第1配線部11Aと同一の柔らかさを有してもよい。
【0036】
基材13は、合成樹脂から形成されたシートである。合成樹脂は、例えば、シリコーン樹脂またはウレタン樹脂であってよい。基材13の厚さは、例えば10μm以上1000μm以下であってよい。基材13の引張弾性率は、例えば10MPa以下であってよい。基材13の破断伸度は、0%以上100%以下であってよい。なお、破断伸度は、JIS L 1096:2010に規定されるA法(ストリップ法)に準拠した方法によって測定される。基材13は、1cmの長さを有する場合において、両端に4kgfの荷重をかけられたときに、0.1mm以上5mm以下の歪みを有する程度の柔らかさを有してよい。
【0037】
第1配線部11Aは、生体適合性および導電性を有した材料から形成される。第1配線部11Aは、例えば銀ペーストから形成される。銀ペーストは、シリコーン樹脂と銀粒子とを含む。銀ペーストにおいて、銀粒子はシリコーン樹脂内に分散している。銀ペーストは、例えば、銀ペーストの全体が100質量%である場合に、70質量%以上の銀粒子を含むことが好ましい。第1配線部11Aの厚さは、例えば0.001μm以上1000μm以下であってよい。
【0038】
第1電極部12Aは、本体部12ARと導電層12AMとから形成される。本体部12ARは、第1部分と第2部分とから形成される。第1部分と第2部分とは一体成型されている。第1部分は、上述した基部12A1を形成するため部分であって、平板状を有した部分である。第2部分は、上述した針状体12A2を形成するための部分であって、第1部分から突き出た部分である。本体部12ARは、合成樹脂から形成される。本体部12ARを形成する合成樹脂は、生体適合性を有することが好ましい。生体適合性を有する合成樹脂は、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリグリコール酸、ポリ乳酸などであってよい。
【0039】
本体部12ARにおいて、第1部分の厚さは、例えば10μm以上1000μm以下であってよい。第1電極部12Aの裏面12ABと対向する視点から見て、第1部分の面積は、例えば0.04cm2以上4cm2以下であってよい。
【0040】
第2部分の長さは、例えば50μm以上300μm以下であってよく、かつ、第2部分の外径は、例えば10μm以上250μm以下であってよい。互いに隣り合う第2部分間の距離は、例えば100μm以上1400μm以下であってよく、100μm以上400μm以下であることが好ましい。第2部分の密度は、例えば10本/cm2以上2000本/cm2以下であってよく、200本/cm2以上2000本/cm2以下であることが好ましい。
【0041】
第2部分は、第1部分から離れる方向に向けて先細る形状を有してもよい。第2部分が延びる方向に直交する平面に沿う断面において、第2部分は、円形状を有してもよいし、楕円形状を有してもよいし、多角形状を有してもよい。多角形状には、例えば、星形状、正方形状、三角形状などが含まれる。
【0042】
導電層12AMは、本体部12ARの全体を覆っている。導電層12AMは、金属、半導体、有機物、導電性高分子から形成されてよい。このうち、金属は、例えば、ニッケルチタン合金、医用ステンレス鋼、金、チタン、ニッケル、鉄、白金、スズ、クロム、銅などであってよい。半導体は、例えばケイ素であってよい。有機物は、例えば容量性炭素、および、黒鉛などであってよい。導電性高分子は、例えば高導電性PEDOTであってよい。
【0043】
導電層12AMの厚さは、例えば0.05μm以上5μm以下であってよい。第1電極部12Aの基部12A1は、本体部12ARの第1部分と、導電層12AMのうち、本体部12ARの第1部分を覆う部分とから形成される。第1部分が導電層12AMに対して十分に厚いから、基部12A1の柔らかさは、第1部分の柔らかさによって決まる。また、導電層12AMの厚さは、本体部12ARの第2部分の長さに対して十分に薄いから、針状体12A2の長さは、本体部12ARの第2部分の長さに等しいと見なすことが可能である。
【0044】
導電性接着層14は、導電性を有した各種の接着剤から形成される。接着剤は、接着性を有する材料と、導電性を有する材料とを含む。接着性を有する材料は、合成樹脂であってよい。合成樹脂は、例えば、アクリル系高分子材料などであってよい。導電性を有する材料は、金属ペーストまたは導電性粒子であってよい。金属ペーストは、例えば銀ペーストなどであってよい。導電性粒子は、金属粒子または炭素粒子であってよい。金属粒子は、例えば、銅系粒子、ニッケル系粒子、銀系粒子であってよい。銀系粒子は、例えば、銀粒子または塩化銀粒子であってよい。炭素粒子は、グラファイトまたはカーボンナノチューブなどであってよい。導電性、耐腐食性、生産性などの観点から、導電性粒子は、銀粒子であることが好ましい。
【0045】
[作用]
図4および
図5を参照して、生体信号検出装置10の作用を説明する。
図4が示すように、生体信号検出装置10が使用される際には、検出部20が第1配線部11Aおよび第2配線部11Bに接続される。基材13の第1面13F1が被検者の皮膚Skと対向するように、生体信号検出装置10が被検者の皮膚Sk上に配置される。
【0046】
次いで、
図5が示すように、第1電極部12Aおよび第2電極部12Bが皮膚Skに向けて押し付けられることによって、第1電極部12Aおよび第2電極部12Bが皮膚Skに穿刺される。配線部11A,11Bと導電性接着層とが基部よりも柔らかいから、配線部11A,11Bと、基部を配線部11A,11Bに接続するための導電性接着層とが、針状体の穿刺対象である皮膚Skに対して追従するように変形することが可能である。これにより、配線部11A,11Bおよび導電性接着層が変形しない場合に比べて、針状体が穿刺されるべき深さまで穿刺されやすい。そのため、生体信号検出装置10の検出感度を高めることが可能である。
【0047】
しかも、生体信号検出装置10では、配線部11A,11Bと電極部12A,12Bとが基材13によって支持されるから、基材13の機械的な強度によって、電極部12A,12Bと配線部11A,11Bとの接続が維持されやすくなる。また、孔の内面を形成する配線部11A,11Bの一部に基部が接続されるから、基部と配線部11A,11Bとの接続部が孔の内部に位置する。そのため、配線部11A,11Bの一部と基部との接続部が外部に露出する場合に比べて、配線部11A,11Bの一部と基部との接続が維持されやすい。一方、柔らかい導電性接着層によって、基部の側面が孔の内面に接続される。そのため、皮膚Skに沿って基材13が変形した際に、導電性接着層のうち、基部の側面と孔の内面との間に位置する部分が変形するから、基部の側面と孔の内面との接続が維持されやすい。
【0048】
また、基部12A1の表面と基材13の第1面13F1とが面一であるから、針状体のうちで基材13の第1面13F1から突き出した部分の長さを長く維持することが可能である。そのため、針状体が皮膚に穿刺されやすくなる。
【0049】
皮膚Skの角質層は、数MΩ程度の電気抵抗を有する。本実施形態の生体信号検出装置10によれば、配線部11A,11B、基材13、および、導電性接着層14が柔らかいことによって、これらが皮膚Skに追従して変形することが可能であるから、電極部12A,12Bが皮膚Skに穿刺されやすい。これにより、角質層が存在しないと見なせる程度に皮膚Skの電気抵抗を低下させることが可能である。例えば、皮膚Skの電気抵抗を10kΩ以下に低下させることが可能である。
【0050】
角質層は、10μm以上20μm以下の厚さを有するから、電極部12A,12Bが20μm以上の深さで穿刺されることによって、皮膚Skの電気抵抗を低下させることが可能である。ただし、電極部12A,12Bの穿刺される深さが1000μmを超える場合には、針状体が皮下組織に到達し、これによって、被検者が痛みを感じるおそれがある。そのため、電極部12A,12Bの穿刺される深さは、角質層を貫通し、かつ、皮下組織に到達しない深さであることが好ましい。
【0051】
なお、電極部12A,12Bを被検者の皮膚に穿刺する際には、導電性ヒドロゲルを用いてもよい。この場合には、被検者の皮膚Skのうち、電極部12A,12Bが穿刺される部分に導電性ヒドロゲルを塗布する。次いで、皮膚Skのうちで、導電性ヒドロゲルが塗布された部分に対して電極部12A,12Bを押圧する。導電性ヒドロゲルは皮膚を腫脹させることによって、皮膚と電極部12A,12Bとの間における電気信号の伝送を生じやすくする。
【0052】
[製造方法]
図6から
図9を参照して、生体信号検出装置10の製造方法を説明する。以下では、生体信号検出装置10の製造方法のうち、電極部12A,12Bを基材13に固定する工程に関する事項のみを詳しく説明する。以下では、2つの電極部12A,12Bのうち、第1電極部12Aを基材13に固定する工程を説明するが、第2電極部12Bも第1電極部12Aと同様の方法で基材13に固定される。
【0053】
なお、
図6が示す工程よりも前に、第1電極部12Aを準備する。第1電極部12Aを準備する際には、まず、合成樹脂製の本体部12ARを形成する。次いで、本体部12ARの全体を覆うように、本体部12ARに導電層12AMを形成する。
【0054】
本体部12ARを形成する際には、まず、本体部12ARの原版が形成される。次いで、原版の転写によって複製版が形成される。そして、複製版の転写によって本体部12ARが形成される。なお、原版を形成するための材料は、例えば、金属、セラミック、半導体、有機物、および、樹脂から構成される群から選択される少なくとも1つであってよい。原版を形成するための方法には、各種の方法を用いることが可能である。原版を形成する際には、例えば、フォトリソグラフィ法、エッチング法、電気めっき法、無電解めっき法、スクリーン印刷法、光造形法、レーザーアブレーション法などを用いることが可能である。導電層12AMを形成する方法は、例えば、蒸着法、スパッタ法、CVD法、エピタキシー法、電気めっき法、スクリーン印刷法などであってよい。
【0055】
また、
図9が示す工程よりも前に、第1配線部11Aが形成された基材13を準備する。この際に、まず、基材13を準備する。次いで、基材13の第2面13F2に第1配線部11Aを形成する。第1配線部11Aを形成する方法は、例えば、インクジェット法、エッチング法、および、スクリーン印刷法、ディスペンサー法などであってよい。そして、基材13に孔13Hを形成することによって、第1配線部11Aの一部を孔13Hに露出させる。
【0056】
基材13に第1電極部12Aを固定する際には、まず、基材Sb上に導電性接着剤Adを塗布する(
図6参照)。次いで、スクレーパーScを用いて、導電性接着剤Adを基材Sbの全体に塗り広げる(
図7参照)。そして、第1電極部12Aの基部12A1を導電性接着剤Adに埋めるように、第1電極部12Aを導電性接着剤Adに接触させる(
図8参照)。第1電極部12Aを導電性接着剤Adから引き上げた後、第1電極部12Aを導電性接着剤Adとともに孔13H内に配置する(
図9参照)。次いで、導電性接着剤Adを硬化させることによって、導電性接着剤Adから導電性接着層14を形成する。これによって、孔13Hを画定する側面に基部12A1の側面12ASを接続し、かつ、基部12A1の裏面12ABを第1配線部11Aの一部に接続する。
【0057】
以上説明したように、生体信号検出装置の第1実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1‐1)配線部11A,11Bと、基部を配線部11A,11Bに接続するための導電性接着層14とが、針状体の穿刺対象である皮膚Skに対して追従するように変形することが可能である。そのため、配線部11A,11Bおよび導電性接着層が変形しない場合に比べて、針状体が穿刺されるべき深さまで穿刺されやすい。
【0058】
(1‐2)基材13の機械的な強度によって、電極部12A,12Bと配線部11A,11Bとの接続が維持されやすくなる。
(1‐3)基部と配線部11A,11Bとの接続部が孔の内部に位置するから、配線部11A,11Bの一部と基部との接続が維持されやすい。
【0059】
(1‐4)皮膚Skに沿って基材13が変形した際に、導電性接着層14のうち、基部の側面と孔の内面との間に位置する部分が変形するから、基部の側面と孔の内面との接続が維持されやすい。
【0060】
(1‐5)針状体のうちで基材13の第1面13F1から突き出した部分の長さを長く維持することが可能であるため、針状体が皮膚に穿刺されやすくなる。
[第2実施形態]
図10から
図14を参照して、生体信号検出装置の第2実施形態を説明する。第2実施形態では、生体信号検出装置が基材と配線部とを貫通する孔を有する点が、第1実施形態とは異なっている。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明する一方で、第2実施形態において第1実施形態と共通する構造には第1実施形態と同一の符号を付し、かつ、当該構造の詳しい説明を省略する。また以下では、生体信号検出装置の構造、および、製造方法を順に説明する。
【0061】
[構造]
図10および
図11を参照して、生体信号検出装置の構造を説明する。
図10は、基材13が広がる平面に直交する平面に沿う生体信号検出装置の断面構造を示している。
【0062】
図10が示すように、生体信号検出装置30は、第1実施形態の生体信号検出装置10と同様に、配線部11A,11B、電極部12A,12B、基材13、および、検出部20を備えている。生体信号検出装置30は、第1被覆基材31A、第2被覆基材31B、第1導電部32A、および、第2導電部32Bをさらに備えている。第1被覆基材31Aは、第1配線部11Aを覆っている。第2被覆基材31Bは、第2配線部11Bを覆っている。なお、各被覆基材31A,31Bがその被覆基材31A,31Bが覆っている配線部11A,11Bの全体を覆っていることが好ましいが、配線部11A,11Bの一部のみを覆ってもよい。
【0063】
基材13が広がる平面に直交する断面において、第1導電部32Aは、第1被覆基材31Aと第1電極部12Aとの間に位置している。基材13が広がる平面に直交する断面において、第2導電部32Bは、第2被覆基材31Bと第2電極部12Bとの間に位置している。
【0064】
図11は、生体信号検出装置30のうち、第1電極部12Aおよび第1電極部12Aの周辺構造を示している。なお、第2電極部12Bおよび第2電極部12Bの周辺構造は、生体信号検出装置30における位置が第1電極部12Aとは異なるものの、構造は第1電極部12Aと同等である。そのため以下では、第2電極部12Bおよび第2電極部12Bの周辺構造の詳しい説明を省略する。
【0065】
図11が示すように、生体信号検出装置30では、基材13が孔13Hを有し、かつ、第1配線部11Aが孔11Hを有している。第1配線部11Aの孔11Hは、基材13の孔13Hに連なっている。これにより、2つの孔11H,13Hが、第1配線部11Aおよび基材13の積層体を基材13の厚さ方向において貫通する貫通孔を形成している。生体信号検出装置30では、第1配線部11Aが第1被覆基材31Aによって覆われているから、上述した積層体の貫通孔内に第1被覆基材31Aの一部が露出している。
【0066】
第1電極部12Aは、基材13の孔13H内に位置している。第1被覆基材31Aのうち、第1配線部11Aの孔11Hに露出する部分には、第1導電部32Aが位置している。第1導電部32Aは、第1配線部11Aの孔11H内に位置している。上述した貫通孔のうち、第1電極部12Aと第1導電部32Aとが位置しない部分には、導電性接着層34が充填されている。これにより、基部12A1の側面12ASは、基材13の孔13Hに接続され、かつ、基部12A1の裏面12ABは、第1導電部32Aに接続されている。導電性接着層34は、第1実施形態の導電性接着層14と同様に、基部12A1よりも柔らかい。
【0067】
第1被覆基材31Aは、第1電極部12Aの基部12A1よりも柔らかい。第1被覆基材31Aは、基材13と同様に、合成樹脂から形成されたシートである。合成樹脂は、例えば、シリコーン樹脂またはウレタン樹脂であってよい。第1被覆基材31Aの厚さは、例えば10μm以上1000μm以下であってよい。第1被覆基材31Aの引張弾性率は、例えば10MPa以下であってよい。第1被覆基材31Aの破断伸度は、0%以上100%以下であってよい。なお、破断伸度は、JIS L 1096:2010に規定されるA法(ストリップ法)に準拠した方法によって測定される。
【0068】
第1導電部32Aは、第1電極部12Aの基部12A1よりも柔らかい。第1導電部32Aは、生体適合性および導電性を有した材料から形成される。第1導電部32Aは、例えば銀ペーストから形成される。銀ペーストは、シリコーン樹脂と銀粒子とを含む。銀ペーストにおいて、銀粒子はシリコーン樹脂内に分散している。銀ペーストは、例えば、銀ペーストの全体が100質量%である場合に、70質量%以上の銀粒子を含むことが好ましい。第1導電部32Aの厚さは、例えば0.001μm以上1000μm以下であってよい。
【0069】
[製造方法]
図12から
図14を参照して、生体信号検出装置30の製造方法を説明する。以下では、生体信号検出装置30の製造方法のうち、電極部12A,12Bを基材13に固定する工程に関する事項のみを詳しく説明する。以下では、2つの電極部12A,12Bのうち、第1電極部12Aを基材13に固定する工程を説明するが、第2電極部12Bも第1電極部12Aと同様の方法で基材13に固定される。
【0070】
なお、
図13が示す工程よりも前に、第1実施形態の製造方法と同様の方法で、第1電極部12Aを準備する。そして、第1実施形態の製造方法と同様の方法で、第1電極部12Aの周囲に導電性接着剤Adを塗布する。また、
図14が示す工程よりも前に、第1実施形態の製造方法と同様の方法で、第1配線部11Aが形成された基材13を準備する。次いで、第1配線部11Aの孔11Hと基材13の孔13Hとを同時に形成することによって、第1配線部11Aと基材13とを基材13の厚さ方向に沿って貫通する貫通孔を形成する。本実施形態の製造方法では、第1配線部11Aと基材13との両方を貫通する貫通孔を形成するから、基材13のみを貫通する孔13Hを形成する場合に比べて、貫通孔の形成が容易である。
【0071】
基材13に第1電極部12Aを固定する際には、まず、第1被覆基材31Aに第1導電部32Aを形成する。第1導電部32Aを形成する方法は、第1配線部11Aを形成する方法と同様に、例えば、インクジェット法、エッチング法、および、スクリーン印刷法、ディスペンサー法などであってよい。次いで、第1導電部32Aの少なくとも側面に導電性接着剤Adを塗布する(
図12参照)。なお、第1導電部32Aに導電性接着剤Adを塗布する方法は、第1電極部12Aに導電性接着剤Adを塗布する方法と同様の方法であってよい。
【0072】
そして、導電性接着剤Adが塗布された第1電極部12Aを、導電性接着剤Adによって第1導電部32Aに貼り付ける(
図13参照)。次いで、第1電極部12Aおよび第1導電部32Aが、2つの孔11H,13Hによって形成された貫通孔内に位置するように、第1被覆基材31Aを第1配線部11Aに重ねる(
図14参照)。その後、導電性接着剤Adを硬化させることによって、導電性接着剤Adから導電性接着層34を形成する。これによって、孔13Hを画定する側面に第1電極部12Aの基部12A1を接続し、かつ、基部12A1の裏面12ABを第1導電部32Aに接続する。
【0073】
以上説明したように、生体信号検出装置の第2実施形態によれば、(1‐1)から(1‐5)の効果に加えて、以下に記載の効果を得ることができる。
(2‐1)第1配線部11Aと基材13との両方を貫通する貫通孔を形成するから、基材13のみを貫通する孔13Hを形成する場合に比べて、貫通孔の形成が容易である。
【0074】
[第3実施形態]
図15から
図17を参照して、生体信号検出装置の第3実施形態を説明する。第3実施形態では、生体信号検出装置が基材と配線部とを貫通する孔を有する点が、第1実施形態とは異なっている。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明する一方で、第1実施形態と共通する構造には第1実施形態と同一の符号を付し、かつ、当該構造の詳しい説明を省略する。また以下では、生体信号検出装置の構造、および、製造方法を順に説明する。
【0075】
[構造]
図15および
図16を参照して、生体信号検出装置の構造を説明する。
図15は、基材13が広がる平面に直交する平面に沿う生体信号検出装置の断面構造を示している。
【0076】
図15が示すように、生体信号検出装置40は、第1実施形態の生体信号検出装置10と同様に、配線部11A,11B、電極部42A,42B、基材13、および、検出部20を備えている。電極部42A,42Bは、基材13と配線部11A,11Bとの両方に接続されている。
【0077】
図16は、生体信号検出装置40のうち、第1電極部42Aおよび第1電極部42Aの周辺構造を示している。なお、第2電極部42Bおよび第2電極部42Bの周辺構造は、生体信号検出装置40における位置が第1電極部42Aとは異なるものの、構造は第1電極部42Aと同等である。そのため以下では、第2電極部42Bおよび第2電極部42Bの周辺構造の詳しい説明を省略する。
【0078】
図16が示すように、生体信号検出装置40では、基材13が孔13Hを有し、かつ、第1配線部11Aが孔11Hを有している。第1配線部11Aの孔11Hは、基材13の孔13Hに連なっている。これにより、2つの孔11H,13Hが、第1配線部11Aおよび基材13の積層体を基材13の厚さ方向において貫通する貫通孔を形成している。
【0079】
第1電極部42Aは、上述した貫通孔内に位置している。第1電極部42Aにおいて、基部42A1の厚さは、貫通孔の深さにほぼ等しい。そのため、基部42A1の裏面42ABが第1配線部11Aのうち、基材13に接する面とは反対側の面と面一である。また、基部42A1の表面42AFは、基材13の第1面13F1と面一である。
【0080】
第1電極部42Aでは、本体部42ARの第1部分における厚さが、第1実施形態における本体部12ARの第1部分における厚さよりも厚い。一方で、導電層42AMの厚さは、第1実施形態における導電層12AMの厚さに等しい。これにより、基部42A1の厚さが、上述した貫通孔の深さにほぼ等しい。また、針状体42A2の長さは、第1実施形態における針状体12A2の長さに等しい。
【0081】
基部12A1の側面42ASと孔11Hの内面の間、および、基部12A1の側面42ASと孔13Hの内面の間には、導電性接着層44が位置している。これにより、第1電極部42Aは、上述した貫通孔内において第1配線部11Aに接続されている。
【0082】
[製造方法]
図17を参照して、生体信号検出装置40の構造を説明する。以下では、生体信号検出装置40の製造方法のうち、電極部42A,42Bを基材13および第1配線部11Aに固定する工程に関する事項のみを詳しく説明する。以下では、2つの電極部42A,42Bのうち、第1電極部42Aを基材13および第1配線部11Aに固定する工程を説明するが、第2電極部42Bも第1電極部42Aと同様の方法で基材13に固定される。
【0083】
なお、
図17が示す工程よりも前に、第1実施形態の製造方法と同様の方法で、第1電極部42Aを準備する。そして、第1実施形態の製造方法と同様の方法で、第1電極部42Aの周囲に導電性接着剤Adを塗布する。この際に、基部12A1の側面12ASにのみ導電性接着剤Adを塗布する。
【0084】
また、
図17が示す工程よりも前に、第1実施形態の製造方法と同様の方法で、第1配線部11Aが形成された基材13を準備する。そして、第1配線部11Aの孔11Hと基材13の孔13Hとを同時に形成することによって、第1配線部11Aと基材13とを基材13の厚さ方向に沿って貫通する貫通孔を形成する。本実施形態の製造方法では、第1配線部11Aと基材13との両方を貫通する貫通孔を形成するから、基材13のみを貫通する孔13Hを形成する場合に比べて、貫通孔の形成が容易である。
【0085】
図17が示すように、導電性接着剤Adが塗布された第1電極部42Aを、基材13の孔13Hおよび第1配線部11Aの孔11Hから形成される貫通孔内に配置する。そして、導電性接着剤Adを硬化させることによって、導電性接着剤Adから導電性接着層44を形成する。
【0086】
以上説明したように、生体信号検出装置の第3実施形態によれば、(1‐1)から(1‐5)の効果に加えて、以下に記載の効果を得ることができる。
(3‐1)第1配線部11Aと基材13との両方を貫通する貫通孔を形成するから、基材13のみを貫通する孔13Hを形成する場合に比べて、貫通孔の形成が容易である。
【0087】
[変更例]
上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[配線部]
・
図18が示すように、生体信号検出装置50が備える第1配線部51Aおよび第2配線部51Bの各々は、折線状を有してもよい。この場合には、配線部51A,51Bが直線状を有する場合に比べて、基材13が変形に起因した応力が配線部51A,51Bに作用しても、配線部51A,51Bが断線しにくくなる。
【0088】
[電極部]
・
図19が示すように、生体信号検出装置60では、配線部11A,11Bに対して、複数の電極部62A,62Bが接続されてもよい。電極部62A,62Bの総面積が同一である前提では、1つの電極部62A,62Bの面積が小さいほど、電極部62A.62Bを変形しやすくすることが可能である。
【0089】
・
図20が示すように、生体信号検出装置70では、配線部71A,71Bが、検出部20から電極部12A,12Bに向かう方向に沿って二股に分かれてもよい。この場合には、配線部71A,71Bにおいて、二股に分かれて以降の部分における一方が第1配線要素であり、他方が第2配線要素である。生体信号検出装置70は、2つの第1電極部12Aを備えている。一方の第1電極部12Aが第1配線要素に接続され、かつ、他方の第1電極部12Aが第2配線要素に接続されている。また、生体信号検出装置70は、2つの第2電極部12Bを備えている。一方の第2電極部12Bが第1配線要素に接続され、かつ、他方の第2電極部12Bが第2配線要素に接続されている。
【0090】
・電極部において、針状体が、基部に対する取り付けと、基部からの取り外しとが可能に構成されてもよい。
[導電性接着層]
・
図21が示すように、第3実施形態の導電性接着層44は、基部42A1の側面42ASを覆う第1部分44Aに加えて、基部42A1の裏面42ABを覆い、かつ、第1配線部11Aの一部を覆う第2部分44Bを備えてよい。これにより、導電性接着層44が第1部分44Aのみを備える場合に比べて、第1配線部11Aと導電性接着層44との接続部を拡張することが可能である。
【0091】
[粘着剤]
・生体信号検出装置が使用される際には、基材13の第1面13F1に粘着剤が塗布されてもよい。あるいは、生体信号検出装置は、基材13の第1面13F1に位置する粘着層を備えてもよい。これにより、皮膚Skに対する基材13の密着性を高めることが可能である。
【0092】
[生体信号検出装置]
・生体信号検出装置は、皮膚Skの電気抵抗の値を測定する測定部を備えてもよい。測定部によって測定された電気抵抗の値は、電極部が穿刺された穿刺量の指標である。測定部は、皮膚Skのなかで、皮膚Skに穿刺された2本の針状体間に位置する部分における電気抵抗の値を測定する。
【0093】
[用途]
・本開示の生体信号検出装置は、医療用装置の利便性を高めるために用いられることが可能である。生体信号検出装置が適用される対象は、例えば、ヘルスケアサポート機器、ゲーム機器、音楽機器、ペットコミュニケーションツール、車両の運転手の居眠り防止機器などであることが可能である。
【符号の説明】
【0094】
10,30,40…生体信号検出装置
11A…第1配線部
11B…第2配線部
12A,42A…第1電極部
12A1,42A1…基部
12A2,42A2…針状体
12AB,42AB…裏面
12AF,42AF…表面
12AS,42AS…側面
12B,42B…第2電極部
13…基材
14,34,44…導電性接着層
31A…第1被覆基材
31B…第2被覆基材
32A…第1導電部
32B…第2導電部