IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧

特開2022-168446サンドイッチ成形体用金型装置およびサンドイッチ成形体成形方法
<>
  • 特開-サンドイッチ成形体用金型装置およびサンドイッチ成形体成形方法 図1
  • 特開-サンドイッチ成形体用金型装置およびサンドイッチ成形体成形方法 図2
  • 特開-サンドイッチ成形体用金型装置およびサンドイッチ成形体成形方法 図3
  • 特開-サンドイッチ成形体用金型装置およびサンドイッチ成形体成形方法 図4
  • 特開-サンドイッチ成形体用金型装置およびサンドイッチ成形体成形方法 図5
  • 特開-サンドイッチ成形体用金型装置およびサンドイッチ成形体成形方法 図6
  • 特開-サンドイッチ成形体用金型装置およびサンドイッチ成形体成形方法 図7
  • 特開-サンドイッチ成形体用金型装置およびサンドイッチ成形体成形方法 図8
  • 特開-サンドイッチ成形体用金型装置およびサンドイッチ成形体成形方法 図9
  • 特開-サンドイッチ成形体用金型装置およびサンドイッチ成形体成形方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168446
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】サンドイッチ成形体用金型装置およびサンドイッチ成形体成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20221031BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20221031BHJP
   B29C 45/56 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/16
B29C45/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073912
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 学
(72)【発明者】
【氏名】染谷 紀樹
(72)【発明者】
【氏名】保井 猛
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AH17
4F202AH18
4F202AH24
4F202CA11
4F202CB01
4F202CC03
4F202CK06
4F202CK17
4F202CL09
4F206AH17
4F206AH18
4F206AH24
4F206JA07
4F206JL02
4F206JN12
4F206JN13
4F206JN33
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】精度よく成形され耐熱性が確保されたサンドイッチ成形体を成形するサンドイッチ成形体用金型装置、および該サンドイッチ成形体用金型装置を用いたサンドイッチ成形体成形方法を提供する。
【解決手段】サンドイッチ成形体が形成される空洞部と、前記空洞部に前記スキン層を構成するスキン材を供給する一次ゲートと、前記空洞部に前記コア層を構成するコア材を供給する二次ゲートと、余剰の前記スキン材、および前記コア材が射出成形中に排出されるオーバーフロー部とを備え、前記オーバーフロー部は、前記空洞部の縁部に沿って形成される空間である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間に位置するコア層と表裏からコア層を挟むスキン層とに異なる樹脂材を用いて成るサンドイッチ成形体を射出成形するための金型を有するサンドイッチ成形体用金型装置であって、
前記金型は、
前記サンドイッチ成形体が形成される空洞部と、
前記空洞部に前記スキン層を構成するスキン材を供給する一次ゲートと、
前記空洞部に前記コア層を構成するコア材を供給する二次ゲートと、
余剰の前記スキン材、および前記コア材が射出成形中に排出されるオーバーフロー部と
を備え、
前記オーバーフロー部は、前記空洞部の縁部に沿って形成される空間であることを特徴とするサンドイッチ成形体用金型装置。
【請求項2】
前記空洞部と前記オーバーフロー部の間には、前記金型が閉じた状態において前記空洞部と前記オーバーフロー部とを遮断する遮断部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のサンドイッチ成形体用金型装置。
【請求項3】
前記オーバーフロー部には、前記空洞部の外周の大半を囲繞する外オーバーフロー部、および前記空洞部の内周に囲繞される内オーバーフロー部が含まれることを特徴とする請求項1または2記載のサンドイッチ成形体用金型装置。
【請求項4】
前記金型の開閉を行う開閉制御部を備え、
前記開閉制御部は、油圧シリンダー、エアーシリンダー、および電動式制御部のいずれかであることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のサンドイッチ成形体用金型装置。
【請求項5】
離型後の前記サンドイッチ成形体は、自動車外板に用いられるパネルであることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のサンドイッチ成形体用金型装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載のサンドイッチ成形体用金型装置を用いたサンドイッチ成形体成形方法であって、
前記金型を開く第1開放工程、
前記第1開放工程の後に前記金型を閉じる閉鎖工程、
前記閉鎖工程の後に再度前記金型を開く第2開放工程、
前記第2開放工程の後に前記金型を冷却する冷却工程
を含み、
前記第1開放工程、前記閉鎖工程、および前記第2開放工程は前記樹脂材の射出中に実行され、前記冷却工程は前記樹脂材の射出後に実行されることを特徴とするサンドイッチ成形体成形方法。
【請求項7】
前記第1開放工程と前記第2開放工程は何れも前記空洞部に前記コア材が射出されている間に実行されることを特徴とする請求項6記載のサンドイッチ成形体成形方法。
【請求項8】
前記第1開放工程と重複する時期に射出されるコア材は第1の前記二次ゲートから射出され、前記第2開放工程と重複する時期に射出されるコア材は第2の前記二次ゲートから射出されることを特徴とする請求項6または7記載のサンドイッチ成形体成形方法。
【請求項9】
前記第1開放工程は、前記金型に保持圧力を加圧する加圧工程と重複して実行されることを特徴とする請求項6~8の何れか一項に記載のサンドイッチ成形体成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、自動車外板等を形成するサンドイッチ成形体を成形するのに用いるサンドイッチ成形体用金型装置、および該サンドイッチ成形体用金型装置を用いたサンドイッチ成形体成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バンパー、フェンダー等の自動車外板として、軽量化の観点から、従来の金属製外板に代わって樹脂製外板が用いられている。そして、このような樹脂製外板を形成する部材としては、中間のコア層と表裏からコア層を挟むスキン層とに異なる材料を用いて成るサンドイッチ成形体が知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、上述のサンドイッチ成形体においては、スキン層には外観に優れるポリプロピレン樹脂を用い、コア層には機械物性に優れるポリプロピレンとガラス繊維や炭素繊維との複合材を用いる例が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-353749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スライドドアなどの複雑な形状をサンドイッチ成形すると、さまざまな問題が生じる。たとえば、上述のサンドイッチ成形体を射出成形する場合、図10に示すように、スライドドアを構成する四隅のコーナー部や中央部にスキン層を形成するスキン材が溜まり、スキン材溜まり104を形成することがある。この場合、スライドドアを構成するパネルにそりが発生して成形寸法精度が悪化したり、コア材の充填不足によって耐熱性が確保できないためインライン塗装時にパネルが変形するなどの問題が生じる。
【0005】
また、ウェルド部にコア材を形成するコア材溢れ106が発生する場合がある。この場合、外板に繊維が浮き出ることにより、表面粗さが荒くなり外板品質が悪化するなどの問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、精度よく成形され耐熱性が確保されたサンドイッチ成形体を成形するサンドイッチ成形体用金型装置、および該サンドイッチ成形体用金型装置を用いたサンドイッチ成形体成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のサンドイッチ成形体用金型装置は、
中間に位置するコア層と表裏からコア層を挟むスキン層とに異なる樹脂材を用いて成るサンドイッチ成形体を射出成形するための金型を有するサンドイッチ成形体用金型装置であって、
前記金型は、
前記サンドイッチ成形体が形成される空洞部と、
前記空洞部に前記スキン層を構成するスキン材を供給する一次ゲートと、
前記空洞部に前記コア層を構成するコア材を供給する二次ゲートと、
余剰の前記スキン材、および前記コア材が射出成形中に排出されるオーバーフロー部と
を備え、
前記オーバーフロー部は、前記空洞部の縁部に沿って形成される空間であることを特徴とする。
【0008】
このように、空洞部の縁部に沿ってオーバーフロー部を形成することにより、特定のタイミングにて金型を開き、樹脂材をオーバーフロー部に排出してコア材を空洞部の末端まで行き渡らせ、コア材の充填率を上昇させることができる。このため、パネルにそりが発生して成形寸法精度が悪化したり、コア材の充填不足によって耐熱性が確保できずにパネルが変形する事態を防止できる。よって、精度よく成形され耐熱性が確保されたサンドイッチ成形体を成形することができる。
【0009】
また、本発明のサンドイッチ成形体用金型装置は、
前記空洞部と前記オーバーフロー部の間には、前記金型が閉じた状態において前記空洞部と前記オーバーフロー部とを遮断する遮断部が形成されていることを特徴とする。
このように、遮断部を設けることで、サンドイッチ成形体の完成後にサンドイッチ成形体用の本体と余剰部分を明確に区別することができる。
【0010】
また、本発明のサンドイッチ成形体用金型装置は、
前記オーバーフロー部には、前記空洞部の外周の大半を囲繞する外オーバーフロー部、および前記空洞部の内周に囲繞される内オーバーフロー部が含まれることを特徴とする。
【0011】
このように、空洞部の外周の大半を外オーバーフロー部で囲繞することにより、コア材を空洞部の周囲全体に行き渡らせることができる。また、空洞部の内周に内オーバーフロー部を形成することにより、パネルに窓部分などの開口が存在する場合でも、精度よく成形することができる。
【0012】
また、本発明のサンドイッチ成形体用金型装置は、
前記金型の開閉を行う開閉制御部を備え、
前記開閉制御部は、油圧シリンダー、エアーシリンダー、および電動式制御部のいずれかであることを特徴とする。
このように、開閉制御部には複数種類の装置を適用することが可能である。
【0013】
また、本発明のサンドイッチ成形体用金型装置は、
離型後の前記サンドイッチ成形体は、自動車外板に用いられるパネルであることを特徴とする。
すなわち、本発明のサンドイッチ成形体用金型装置は、自動車外板の成形に好適に用いられる。
【0014】
また、本発明のサンドイッチ成形体成形方法は、
上述のサンドイッチ成形体用金型装置を用いたサンドイッチ成形体成形方法であって、
前記金型を開く第1開放工程、
前記第1開放工程の後に前記金型を閉じる閉鎖工程、
前記閉鎖工程の後に再度前記金型を開く第2開放工程、
前記第2開放工程の後に前記金型を冷却する冷却工程
を含み、
前記第1開放工程、前記閉鎖工程、および前記第2開放工程は前記樹脂材の射出中に実行され、前記冷却工程は前記樹脂材の射出後に実行されることを特徴とする。
このように、樹脂材の射出中に金型の開閉を繰り返すことにより、的確に樹脂材をオーバーフロー部に排出し、コア材を確実に空洞部の末端まで行き渡らせることができる。
【0015】
また、本発明のサンドイッチ成形体成形方法は、
前記第1開放工程と前記第2開放工程は何れも前記空洞部に前記コア材が射出されている間に実行されることを特徴とする。
このように、コア材が射出されている際に金型を開放することで、より確実にコア材を確実に空洞部の末端まで行き渡らせることができる。
【0016】
また、本発明のサンドイッチ成形体成形方法は、
前記第1開放工程と重複する時期に射出されるコア材は第1の前記二次ゲートから射出され、前記第2開放工程と重複する時期に射出されるコア材は第2の前記二次ゲートから射出されることを特徴とする。
このように、各二次ゲートからコア材が射出されるごとに金型を開放することで、より確実にコア材を確実に空洞部の末端まで行き渡らせることができる。
【0017】
また、本発明のサンドイッチ成形体成形方法は、
前記第1開放工程は、前記金型に保持圧力を加圧する加圧工程と重複して実行されることを特徴とする。
これにより、コア材に含まれる繊維がより均一に分散し、得られるサンドイッチ成形体の変形を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、精度よく成形され耐熱性が確保されたサンドイッチ成形体を成形するサンドイッチ成形体用金型装置、および該サンドイッチ成形体用金型装置を用いたサンドイッチ成形体成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態に係るサンドイッチ成形体用金型装置の空洞部を正面から視た模式図およびその一部の断面図である。
図2】実施の形態に係るサンドイッチ成形体用金型装置を側方から視た模式図である。
図3】実施の形態に係る樹脂材の射出時間および空洞部の開放時間等を示すテーブルである。
図4】実施の形態に係る金型の空洞部に樹脂材を充填する過程において金型が開かれる状態を示す図である。
図5】実施の形態に係る金型の空洞部に樹脂材が充填された様子を示す図である。
図6図5の円内の拡大図である。
図7】従来の金型の空洞部に樹脂材が充填された様子を示す図である。
図8図7の円内の拡大図である。
図9】実施の形態に係る金型で作成されたサンドイッチ成形体を示す図である。
図10】従来の技術によりサンドイッチ成形体を射出成形する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1(a)は、実施の形態に係るサンドイッチ成形体用金型装置(以下、金型装置と略す。)の空洞部20を正面から視た模式図であり、図1(b)は、図1(a)に示すA-A断面の金型4部分である。また、図2は、図1(a)に示す金型装置2を側方から視た模式図である。
【0021】
金型装置2は、中間に位置するコア層と表裏からコア層を挟むスキン層とに異なる樹脂材を用いて成るサンドイッチ成形体30(図9参照)の成形に用いる装置であり、図1、2に示すように、平面矩形状の金型4、スキン層を構成する第1樹脂材であるスキン材32(図4参照)を金型4に供給する第1樹脂ユニット(不図示)、コア層を構成する第2樹脂材であるコア材34(図4参照)を金型4に供給する第2樹脂ユニット(不図示)、スキン材32の流路である第1ノズル8、コア材34の流路である第2ノズル10、金型4を開閉する開閉制御部である油圧シリンダー(不図示)、および金型4の開き度合いを制御する制御センサ12(図5参照)を備えている。
【0022】
なお、第1ノズル8の先端には、スキン材32の供給口となる一次ゲート8a、8bがそれぞれ設けられ、第2ノズル10の先端には、コア材34の供給口となる二次ゲート10a、10bがそれぞれ設けられている。
【0023】
そして、図1(b)に示すように、金型4は、固定金型4aと可動金型4bとを備えている。また、金型4には、サンドイッチ成形体30が形成される空洞部20、空洞部20への樹脂材の導入口であるフィルムゲート22、および射出成形中に空洞部20から余剰の樹脂材(スキン材32、コア材34)を排出するためのオーバーフロー部24が形成されている。
【0024】
ここで、空洞部20は、その両端から一次ゲート8a、8bによってスキン材32を供給され、二次ゲート10a、10bによってコア材34を供給される。
また、オーバーフロー部24は、空洞部20の縁部に沿って形成されており、オーバーフロー部24には、空洞部20の外周の大半(フィルムゲート22以外の部分)を囲繞する外オーバーフロー部24a、空洞部20内に形成された窓部分23の外周を囲繞する、(窓部分23において空洞部20の内周に囲繞される)内オーバーフロー部24bが含まれている。
【0025】
また、オーバーフロー部24と空洞部20の間には、金型4が閉じた状態においてオーバーフロー部24と空洞部20とを遮断する遮断部18が形成されている。具体的には、外オーバーフロー部24aと空洞部20の間においては、外オーバーフロー部24a側に、固定金型4aから突出する第1遮断部18aが形成され、空洞部20側に、可動金型4bから突出する第2遮断部18bが形成されている。また、内オーバーフロー部24bと空洞部20の間においても同様に、内オーバーフロー部24b側に、固定金型4aから突出する第1遮断部18aが形成され、空洞部20側に、可動金型4bから突出する第2遮断部18bが形成されている。
【0026】
次に、金型装置2を用いたサンドイッチ成形体30(図9参照)の成形方法について、自動車外板のうちスライドドアを構成するパネルを製造する場合を例に図3に示すテーブルを参照しながら説明する。まず、図1(b)に示すように、可動である可動金型4bを固定金型4a方向に移動させて金型4を閉じる。次に、図示しないゲート開閉部により、金型4の一次ゲート8aが開放され、第1樹脂ユニットにより、第1ノズル8にサンドイッチ成形体30の表層となるスキン材32が射出されると、図4(a)に示すように、一次ゲート8aから空洞部20にスキン材32が供給される。ここで、図3に示すように、スキン材32が初めて射出された成形開始時を基準時として、スキン材32は基準時から3秒間一次ゲート8aから射出され続ける。
【0027】
次に、基準時から2秒後、ゲート開閉部により、金型4の二次ゲート10aが開放され、第2樹脂ユニットにより、第2ノズル10にサンドイッチ成形体30の中間層となるコア材34が射出されると、二次ゲート10aから空洞部20にコア材34が供給される。コア材34もまた基準時から3秒間二次ゲート10aから射出され続ける。
【0028】
ここで、二次ゲート10aからのコア材34の供給は、図示しない射出シリンダーにより、金型4に保持圧力を加圧した状態で行われる。すなわち、保持圧力の加圧は、基準時から2秒後に開始され、3秒間継続する。かかる加圧によりコア材34に含まれる繊維の分布の均一性が高められる。
【0029】
これにより、図4(a)に示すように、スライドドアの上部(窓部分23の位置する側)を構成する部分にスキン材32およびコア材34が充填される。
基準時から3秒後、第1樹脂ユニットによるスキン材32の射出が停止され、ゲート開閉部により、一次ゲート8aが閉鎖される。また、図4(b)に示すように、図示しない油圧シリンダーにより可動金型4bを移動させて金型4が開かれる(第1開放工程)。これにより、空洞部20が広げられ、余剰となったスキン材32およびコア材34がオーバーフロー部24に排出される。
【0030】
なお、金型4を開いた状態において、固定金型4aと可動金型4bの間の距離Tは、0.3mm以上1.0mm以下であるのが好ましく、0.4以上0.7mm以下であればより好ましい。
【0031】
金型4を開いた状態は2.5秒間保持され、基準時から4.5秒後、図3(c)に示すように、油圧シリンダーにより可動金型4bを固定金型4a側に移動させて金型4が閉じられる(閉鎖工程)。
【0032】
基準時から5秒後、保持圧力の加圧が停止されると共に、第2樹脂ユニットによるコア材34の射出が停止され、ゲート開閉部により、二次ゲート10aが閉鎖される。同時に、一次ゲート8bが開放されて空洞部20にスキン材32が供給され、スキン材32は3秒間射出され続ける。基準時から8秒後、第1樹脂ユニットによるスキン材32の射出が停止され、ゲート開閉部により、一次ゲート8bが閉鎖される。
【0033】
これと同時に、二次ゲート10bが開放されて空洞部20にコア材34が供給され、3秒間射出され続ける。この間、基準時から9秒後には、図3(b)に示すように、再び金型4が開かれ(第2開放工程)、余剰となったスキン材32およびコア材34がオーバーフロー部24に排出される。金型4を開いた状態は2.5秒間保持され、基準時から10.5秒後、図3(c)に示すように、再び金型4が閉じられる。
【0034】
ここで、図5はコア材34の供給時における金型装置2を上方から視た断面を示した図であり、図6は、コア材34の供給完了後における図5に示す円内部分の拡大図である。上述のように、コア材34の射出成型中に金型4を開いて空洞部20のスペースを一時的に広げることにより、図5、6に示すように、コア材34を空洞部20の末端まで行き渡らせることができ、コア材34の充填率を上昇させることができる。
【0035】
なお、図7は、従来のように金型4を開かずに樹脂材を空洞部20に供給した場合の金型装置2を上方から視た断面を示した図であり、図8は、図7に示す円内の拡大図である。この場合、図7、8に示すように、コア材34を空洞部20の末端まで行き渡らせることはできない。
【0036】
基準時から11秒後、第2樹脂ユニットによるコア材34の射出が停止され、ゲート開閉部により、二次ゲート10bが閉鎖される。同時に、図示しない冷却装置が作動して金型4が20秒間冷却される(冷却工程)。なお、冷却時間は10秒以上30秒以下であることが好ましい。
【0037】
空洞部20内のスキン材32とコア材34が冷却によって硬化すると両者が一体となったサンドイッチ成形体30が形成され、さらに可動金型4bを移動させて金型4が開かれると、サンドイッチ成形体30がパネルとして離型される。
【0038】
この実施の形態に係る発明によれば、空洞部20の縁部に沿ってオーバーフロー部24を形成し、特定のタイミングにて金型4を開くことにより、樹脂材をオーバーフロー部24に排出してコア材34を空洞部20の末端まで行き渡らせ、コア材34の充填率を上昇させることができる。このため、パネルにそりが発生して成形寸法精度が悪化したり、コア材34の充填不足によって耐熱性が確保できずにパネルが変形する事態を防止できる。また、ウェルド部にコア材34溢れが発生し難くなるため(図10参照)、パネルに繊維が浮き出て表面粗さが荒くなるなど、パネルの品質が悪化することを防止できる。よって、精度よく成形され耐熱性が確保されたサンドイッチ成形体30を成形することができる。
【0039】
また、空洞部20の外周の大半を外オーバーフロー部24aで囲繞することにより、コア材34を空洞部20の周囲全体に行き渡らせることができる。また、空洞部20の内周に内オーバーフロー部24bを形成することにより、パネルに窓部分23などの開口が存在する場合でも、精度よく成形することができる。
【0040】
また、樹脂材の射出成型中に金型4の開閉を繰り返すことにより、的確に樹脂材をオーバーフロー部24に排出し、コア材34を確実に空洞部20の末端まで行き渡らせることができる。
【0041】
また、コア材34が射出されている際に金型4を開放することで、より確実にコア材34を確実に空洞部20の末端まで行き渡らせることができる。
また、各二次ゲート10a、10bからコア材34が射出されるごとに金型4を開放することで、より確実にコア材34を確実に空洞部20の末端まで行き渡らせることができる。
【0042】
また、第1開放工程を加圧工程と重複して実行することにより、コア材34に含まれる繊維がより均一に分散し、得られるサンドイッチ成形体30の変形を抑制することができる。
【0043】
なお、上述の実施の形態においては、開閉制御部が油圧シリンダーである場合を例示しているが、油圧シリンダーに代えて、エアーシリンダーや電動式制御部を開閉制御部に用いてもよい。
【0044】
また、上述の実施の形態において、図3に示されるテーブルは一例であり、樹脂材の射出時間やオーバーフロー部24の開放時間は厳密にこの通りの時間である必要はなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能なものである。
【0045】
また、上述の実施の形態におけるサンドイッチ成形体30には、窓部分23の存在する自動車外板を例示しているが、もちろん窓部分23の存在しないサンドイッチ成形体30を製造する際にも本発明は適用可能である。
【0046】
また、上述の実施の形態において、スキン材32は、プロピレン系樹脂を含む。
プロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種との共重合体が挙げられる。前記共重合体は、プロピレン系ランダム共重合体であっても、プロピレン系ブロック共重合体であってもよい。
【0047】
炭素数4以上のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、メチルエチル-1-ブテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、プロピル-1-ヘプテン、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等の炭素数4~20のα-オレフィンが挙げられる。これらの中でも、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンが好ましい。
【0048】
プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体およびプロピレン系ブロック共重合体が好ましい。プロピレン系ブロック共重合体はインパクトポリプロピレンとも呼ばれ、通常、ポリプロピレンホモポリマーとプロピレン-エチレン共重合体との混合物である。
【0049】
プロピレン系樹脂は、無水マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたプロピレン系樹脂を含んでいてもよい。このような変性プロピレン系樹脂において、不飽和カルボン酸またはその誘導体の含有割合は、好ましくは0.01~10質量%である。
【0050】
コア材34は、繊維強化プロピレン系樹脂を含む。繊維強化プロピレン系樹脂は、本実施形態の成形体に優れた耐熱性および機械的強度を付与する。
繊維強化プロピレン系樹脂におけるプロピレン系樹脂としては、スキン材32の説明で述べたプロピレン系樹脂が挙げられる。ただし、繊維強化プロピレン系樹脂に含まれるプロピレン系樹脂と、スキン材32に含まれるプロピレン系樹脂とは、同一の樹脂であっても異なる樹脂であってもよい。また、プロピレン系樹脂の一部または全部がリサイクル材であってもよい。
【0051】
繊維強化プロピレン系樹脂における繊維としては、例えば、ガラス繊維;炭素繊維;アルミニウム繊維、アルミニウム合金繊維、銅繊維、黄銅繊維、鋼繊維、ステンレス鋼繊維、チタン繊維などの金属繊維;綿繊維、絹繊維、木質繊維、セルロース繊維などの天然繊維;炭化ケイ素繊維、チッ化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維などのセラミック繊維;全芳香族ポリアミド(アラミド)、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、全芳香族ポリアゾメチン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリ(パラ-フェニレンベンゾビスチアゾール)、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリアリレート、フッ素系ポリマーなどの合成樹脂からなる合成繊維が挙げられる。ガラス繊維としては、例えば、Eガラス、Cガラス、Sガラスおよび耐アルカリガラス等のガラスを溶融紡糸して得られた、フィラメント状の繊維が挙げられる。繊維の中でも、剛性および耐熱性等の観点から、ガラス繊維および炭素繊維が好ましい。
【0052】
繊維には、必要に応じて、カップリング剤処理、界面活性剤処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、プラズマ照射処理等の表面処理が施されていてもよい。カップリング剤としては、例えば、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン、およびこれらの加水分解物が挙げられる。
【0053】
繊維は、短繊維でも長繊維でもよいが、得られる成形体の物性面が優れることから長繊維が好ましく、成形時の流動性の観点からは短繊維が好ましい。また、短繊維と長繊維との混合繊維を用いることもできる。短繊維は、チョップドファイバー(カットファイバー)状短繊維でも、フィブリルを有するパルプ状短繊維でもよい。
【符号の説明】
【0054】
2 金型装置
4 金型
4a 固定金型
4b 可動金型
8 ノズル
8a、8b 一次ゲート
10 ノズル
10a、10b 二次ゲート
12 制御センサ
18 遮断部
18a 第1遮断部
18b 第2遮断部
20 空洞部
22 フィルムゲート
23 窓部分
24 オーバーフロー部
24a 外オーバーフロー部
24b 内オーバーフロー部
30 サンドイッチ成形体
32 スキン材
34 コア材
104 スキン材溜まり
106 コア材溢れ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10