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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168488
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】下肢牽引器
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/042 20060101AFI20221031BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
A61F5/042 B
A61H1/02 N
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073991
(22)【出願日】2021-04-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】521180463
【氏名又は名称】堀口 兵誠
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀口 兵誠
【テーマコード(参考)】
4C046
4C098
【Fターム(参考)】
4C046AA08
4C046AA46
4C046BB08
4C046BB09
4C046CC01
4C046DD06
4C046DD08
4C046DD39
4C046DD41
4C046FF12
4C098AA03
4C098BB11
4C098BC02
4C098BC13
4C098BC27
4C098BD02
4C098BD13
4C098BD15
(57)【要約】
【課題】 大きな牽引力を得られ、牽引力の調節及び持ち運びが容易で、使用場所の制限を受けにくく、且つ安価な下肢牽引器を提供する。
【解決手段】 本発明の下肢牽引器10は、板状の本体部20と、本体部の端部に位置するベルト30とを備えており、使用者の被牽引下肢の一部をベルトで固定し、他方の下肢の足を本体部の上面に載置する。使用者自らが他方の下肢の足を支点にして体を傾けて被牽引下肢を上方に引き上げることにより被牽引下肢を引き伸ばす牽引力を発生させる。この際に使用者が体を支点となる足の方向に大きく傾斜させれば大きな牽引力を発生させることができ、小さく傾斜させれば小さな牽引力を発生させることができるので、使用者は牽引力を容易に調節できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の本体部と、前記本体部の端部に位置するベルトとを備えており、
使用者の両下肢のうち牽引対象の下肢(以下、「被牽引下肢」とする。)の一部を前記ベルトで固定し、他方の下肢の足を前記本体部の上面に載置し、
前記使用者自らが前記他方の下肢の足を支点にして体を傾けて前記被牽引下肢を上方に引き上げることにより前記被牽引下肢を引き伸ばす牽引力を発生させることを特徴とする下肢牽引器。
【請求項2】
前記本体部が弾性を備えることを特徴とする請求項1に記載の下肢牽引器。
【請求項3】
前記ベルトが前記本体部に対して安全機構を介して連結されており、
前記安全機構が、前記ベルトに過大な応力が発生した場合に前記ベルトを前記本体部から切り離すものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の下肢牽引器。
【請求項4】
前記ベルトが前記本体部に対して弾性を備えた部材を介して連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の下肢牽引器。
【請求項5】
前記本体部の上面のうち、前記ベルトが位置する箇所の近傍に突起を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の下肢牽引器。
【請求項6】
前記本体部が二つ折り可能であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の下肢牽引器。
【請求項7】
前記本体部に第2ベルトを備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の下肢牽引器。
【請求項8】
前記ベルトによって成る第1ループ及び第2ループを備えており、
前記被牽引下肢の足の甲付近を前記第1ループで固定し、踵付近を前記第2ループで固定することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の下肢牽引器
【請求項9】
前記本体部の下面に、前記本体部の長手方向に沿ったリブを備えることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の下肢牽引器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下肢を牽引するための下肢牽引器に関する。
【背景技術】
【0002】
変形性膝関節症、変形性股関節症、変形性足関節症等の運動障害に対して下肢を牽引することで一定の治療効果が認められることが知られており(非特許文献1~4)、治療用の装置も開発されている(特許文献1及び2)。
また、治療目的だけでなく、脚を長く・細くする、O脚・X脚を直す、脚のむくみを取って血行を良くする、脚の疲れを取る等の種々の目的でも下肢の牽引が広く行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】中井保、鈴木建夫ら著 理学療法学 第19巻第5号 471~475頁(1992年)
【非特許文献2】小川大輔、竹井仁ら著 理学療法学 第39巻第2号 102~109頁(2012年)
【非特許文献3】佐藤春美著 理学療法学 第23巻 学会特別号(第31回愛知) 1996年
【非特許文献4】三谷管雄、清水正人著 理学療法学 第24巻 学会特別号(第32回埼玉) 1997年
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-100025号公報
【特許文献2】実用新案登録第3134708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献に開示された技術では次のような問題がある。
いずれも使用者が床に座ったり或いは寝たりした状態で装置を下肢に装着するものであり、装置が大掛かりで場所を取るという問題、座ったり寝たりすることが可能な清潔な場所でしか使用できないという問題、腕で引っ張るため充分な牽引力を得るのが難しく、また使用者本人が牽引力を調節することが難しいという問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題を考慮して、大きな牽引力を得られ、牽引力の調節及び持ち運びが容易で、使用場所の制限を受けにくく、且つ安価な下肢牽引器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の下肢牽引器は、板状の本体部と、前記本体部の端部に位置するベルトとを備えており、使用者の両下肢のうち牽引対象の下肢(以下、「被牽引下肢」とする)の一部を前記ベルトで固定し、他方の下肢の足を前記本体部の上面に載置し、前記使用者自らが前記他方の下肢の足を支点にして体を傾けて前記被牽引下肢を上方に引き上げることにより前記被牽引下肢を引き伸ばす牽引力を発生させることを特徴とする。
また、前記本体部が弾性を備えることを特徴とする。
また、前記ベルトが前記本体部に対して安全機構を介して連結されており、前記安全機構が、前記ベルトに過大な応力が発生した場合に前記ベルトを前記本体部から切り離すものであることを特徴とする。
また、前記ベルトが前記本体部に対して弾性を備えた部材を介して連結されていることを特徴とする。
【0008】
また、前記本体部の上面のうち、前記ベルトが位置する箇所の近傍に突起を備えることを特徴とする。
また、前記本体部が二つ折り可能であることを特徴とする。
また、前記本体部に第2ベルトを備えることを特徴とする。
また、前記ベルトによって成る第1ループ及び第2ループを備えており、前記被牽引下肢の足の甲付近を第1ループで固定し、踵付近を第2ループで固定することを特徴とする。
また、前記本体部の下面に、前記本体部の長手方向に沿ったリブを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の下肢牽引器では使用者が被牽引下肢(例えば足を怪我している場合には患部側の下肢。以下、本明細書では右の下肢を被牽引下肢とする)を体を傾けて上方に引き上げることで下方への牽引力を発生させる。この体の傾斜度合いは使用者が手すり、壁などに手を添えて調節すればよく、体を左方向に大きく傾斜させれば大きな牽引力を発生させることができ、小さく傾斜させれば小さな牽引力を発生させることができるので、使用者は牽引力を容易に調節できる。なお、左の下肢を牽引する場合には上記説明の左右を入れ替えればよい。
また、使用者が左足を本体部の右足に近い位置にすればするほど左足と右足の距離が小さくなり、テコの原理を利用して大きな牽引力を発生させることができる。
また、使用者は下肢牽引器を床においてその上に立った状態で使用するので、使用場所の制限を受けにくいという利点がある。
また、下肢牽引器が本体部とベルトで簡略構成されるので安価にすることができる。
本発明の下肢牽引器は病気の治療以外にもリハビリ、健康増進、疲労回復、美容等の種々の目的で使用することができる。
【0010】
本体部が弾性を備えることにすれば使用者がベルトで固定した方の被牽引下肢を上方に引き上げる際に本体部が上方に撓み、体を傾斜させやすくなる。また、本体部に適度な弾性を持たせることにより体の傾斜による牽引力と本体部の撓みによる復元力がバランスし、手を使用した体の傾斜度合いの調節を小さな力で行うことができる。
安全機構を介してベルトを本体部に連結することにすれば下肢牽引器の使用中に牽引力が過大になった場合に安全機構が作動してベルトが本体部から切り離されるので下肢の脱臼、捻挫、骨折等の事故の発生を未然に防ぐことができる。
【0011】
ベルトを本体部に対して弾性を備えた部材を介して連結することにすれば、下肢牽引器の使用中に牽引力が過大になった場合に弾性を備えた部材が伸びるので下肢の脱臼、捻挫・骨折等の事故の発生を未然に防ぐことができる。
本体部の上面のうちベルトが位置する箇所の近傍に突起を備えることにすれば、使用者はベルトで固定されていない方の足(例えば左足)を突起がない場所を選んで本体部の 上面に載置することになる。これによりベルトで固定されている下肢(右の下肢)と左足との開脚スタンスを広くとることになり、使用中のバランス崩れ転倒による脱臼、捻挫、骨折等の事故を防止することができる。
本体部を二つ折り可能にすれば下肢牽引器の持ち運びが容易になる。
本体部に第2ベルトを備えることにすれば、使用者はベルトで固定されていない方の足(例えば左足)を第2ベルトで固定することにより、左足が本体部の上面で滑る事態を防止できる。
また、右足の甲付近を第1ループで固定し、踵付近を第2ループで固定することにすれば右足を本体部に強固に固定することができる。
本体部の下面(例えば下面の長手方向に沿った前後両端)にリブを取り付けることで、使用者の体重で本体部の中央部が下方に撓む。この撓みにより本体部が平板形状から波板形状になりこの形状効果で対曲げ強度が上がり、結果として本体部の割れ破壊もしくは変形を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態の下肢牽引器の斜視図(a)、下肢牽引器の変形例の斜視図(b)及び(c)
図2】下肢牽引器の使用方法を示す図(a)~(c)
図3】第2の実施の形態の下肢牽引器の斜視図(a)及び(b)
図4】安全機構の他の例を示す正面図(a)及び(b)
図5】第3の実施の形態の下肢牽引器の斜視図
図6】第4の実施の形態の正面図(a)及び(b)
図7】第5の実施の形態の下肢牽引器の斜視図
図8】第6の実施の形態の下肢牽引器の平面図
図9】下肢牽引器の使用方法を示す図(a)~(h)
図10】第7の実施の形態の下肢牽引器の斜視図(a)、リブを備えない構成の斜視図(b)及びA-A線断面図(c)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1(a)に示すように、本実施の形態の下肢牽引器10は本体部20とベルト30を備える。
本体部20は矩形の板状である。本体部20の材質は特に制限されず、ベニヤ等の木材、炭素繊維強化プラスチック等のプラスチック、鉄等の金属でもよい。但し、本体部20は適度な弾性を備えているのが好ましく、また、実使用における耐折損性、繰返し曲げ耐久性を備えている必要があり、跳び箱運動の踏切板もしくは水泳飛込競技の飛び板の材料が好ましい。本体部20の形状としては矩形に限らず、四隅を丸めた形状でもよい。
【0014】
ベルト30は本体部20の端部に位置しており、使用者の両下肢のうち被牽引下肢の一部を固定するために使用する。ベルト30を本体部20に取り付ける方法は特に限定されず、例えば本体部20に貫通穴21を開けて、貫通孔21にベルト30の基部31の先端を通して本体部20の下面に固定する方法が挙げられる。他には本体部20に2か所の貫通孔を開けて、ベルト30の基部31の先端を一方の貫通孔21に対してその上方から挿入する。そして、基部31の先端を本体部20の下面側から他方の貫通孔21に対してその下方から通して、基部31に固定する方法が挙げられる。
ベルト30で下肢を固定する方法も特に限定されず、例えばベルト30を下肢の周囲に巻き回して緊縛した状態で面ファスナーやボタン等の周知の固定手段で固定する方法が挙げられる。但し、ベルト30は実使用における牽引力がかかっても巻き付け部が痛くならないことが必要であり、この点で実績のあるサーフィンのリーシュコードの足巻き付け部の構造材料が好ましい。
【0015】
ベルト30で固定する下肢の場所は目的によって調節すればよい。例えば使用者が膝関節を牽引したい場合には足や下腿にベルト30を固定すればよく、股関節を牽引したい場合には図1(b)に示すようにベルト30の基部31を長くして大腿を固定すればよい。
ベルト30の形状も特に限定されず、例えば図1(c)に示すようにブリッジ状にして足を差し込む方式でもよい。
【0016】
次に下肢牽引器10の使用方法について説明する。
まず図2(a)に示すように下肢牽引器10を床100に置いた状態で使用者は右の被牽引下肢の一部をベルト30で固定する。
次に使用者は図2(b)に示すように他方の下肢(例えば左の下肢)の足を本体部20の上面に載置する。なお、左足を予め本体部20の上面に載置した状態で右の下肢をベルト30で固定してもよい。この状態では使用者の体の重心Gは体の中心線上に位置している。
【0017】
そして、使用者は図2(c)に示すように左足を支点にして、上体を左方向に傾斜させながら右の下肢を上方に引き上げる。すると右の下肢と共に本体部20が上方に浮き上がり、右の下肢が本体部20に固定されているため股関節部に矢印Aで示す牽引力が発生する。本体部20が適度な弾性を有している場合には体の傾斜による牽引力と本体部20の撓みによる矢印Bで示す復元力がバランスし、手による体傾斜度合調節を小さな力で行うことができる。
図2(c)に示す状態で重心Gは支点となる左足よりも更に左側に位置する。体勢が崩れるのを防止するために使用者は手で手すりを掴んだり、壁101に手をついたりした状態で体を傾斜させるのが好ましい。使用者が体を左方向に大きく傾斜させれば大きな牽引力を発生させることができ、小さく傾斜させれば小さな牽引力を発生させることができるので、使用者は牽引力を容易に調節できる。
また、使用者が左足を本体部20の右足に近い位置に載置するほど左足と右足の距離が小さくなり、テコの原理を利用して大きな牽引力を発生させることができる。
上記を定量的に説明すると、図2(c)のように右足と左足との距離(スタンス)をd1、重心Gの鉛直線と左足位置の鉛直線との距離(重心はみ出し量)をd2とした場合、牽引力Aはテコの原理で簡易的に次の式で計算できる。
牽引力A(kgf)≒使用者の体重(kg) × d2/d1
図2(c)の場合、d2/d1は約0.33なので使用者の体重を60kgとすると牽引力Aは約20kgfとなり、前出の非特許文献に記載されている治療に必要な牽引力を発生させることができる。使用者は上記のd1(スタンス)及びd2(重心はみ出し量、すなわち体傾斜度合い)を調節することにより牽引力を容易に調節できる。
また重心Gの鉛直線が図2(c)に示す本体部端部20aより外側(左側)に出た場合はバランスが崩れ転倒するが、本体部20を適切な長さとし本体部端部20aと左足との距離を確保することによりこの転倒は防止できる。
【0018】
[第2の実施の形態]
次に下肢牽引器の第2の実施の形態について説明するが、上記第1の実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においてはベルト30が本体部20に対して安全機構40を介して連結されている点に特徴を有する。具体的には図3(a)に示すように安全機構40として複数本の結束バンド41を使用している。
【0019】
下肢牽引器10の使用中に牽引力が過大になった場合、例えば使用者が体勢を崩した場合には結束バンド41にも過大な応力が発生するが、適切な強度の結束バンドと使用本数を設定することで図3(b)に示すように結束バンド41が緩む又は抜けることにより過大な引張力が緩和され、下肢の脱臼、捻挫、骨折等の事故の発生を未然に防ぐことができる。またこの構造の利点として予備の結束バンド41を付属することにより、利用者が緩む又は抜けてしまった結束バンド41を簡単に交換修理できる。
安全機構40の他の例として図4(a)に示すようにベルト30の基部31の一部を切断し、両端部を面ファスナー42で繋ぐことにしてもよい。この場合も過大な引張力が発生した場合に、適切な面ファスナー42の繋ぎ面積を設定することで図4(b)に示すように面ファスナー42が外れてベルト30が本体部20から切り離されるので事故の発生を未然に防ぐことができる。また使用者が面ファスナー42の分離部を簡単に修復できる。なお、ベルト30の基部31を切断する位置は特に限定されない。
また、ベルト30を本体部20に対して弾性を備えた部材を介して連結してもよい。弾性を備えた部材としては例えばゴム紐やゴムベルト30が挙げられる。下肢牽引器10の使用中に過大な引張力が発生した場合に弾性を備えた部材が伸びるので下肢の脱臼、捻挫、骨折等の事故の発生を未然に防ぐことができる。
【0020】
[第3の実施の形態]
次に下肢牽引器の第3の実施の形態について説明するが、上記各実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においては図5に示すように本体部20の上面のうち、ベルト30が位置する箇所の近傍に突起50を備える点に特徴を有する。突起50があることで使用者はベルト30で固定されていない方の足(例えば左足)を突起50がない場所を選んで本体部20の上面に載置することになる。これによりベルト30で固定されている下肢(右の下肢)と左足との適切な距離を確保でき、両足の距離が近くなり過ぎることによる過大な牽引力の発生及びバランスが崩れて転倒する事故を未然に防止することができる。
【0021】
[第4の実施の形態]
次に下肢牽引器の第4の実施の形態について説明するが、上記各実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においては本体部20が二つ折り可能である点に特徴を有する。具体的には図6(a)に示すように本体部60がそのほぼ中央で2分割されており、両者に穴をあけて線材61を通して連結している。図6(b)に示すように本体部60を二つ折り可能な構造にすることで不使用時の本体部60の大きさを約半分にすることができ下肢牽引器10 の持ち運びが容易になる。
なお、図6(a)に示すようにベルト30を本体部60の最端部に配置し、被牽引足を床100上においてベルト30に固定する形態にすることにより、本体部60上の被牽引足を置くスペースを無くせるためより一層の小型化が図れる。
【0022】
[第5の実施の形態]
次に下肢牽引器の第5の実施の形態について説明するが、上記各実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においては図7に示すように本体部20に第2ベルト70を備える点に特徴を有する。使用者はベルト30で固定されていない方の足(例えば左足)を第2ベルト70で固定することにより、左足が本体部20の上面で滑る事態を防止できる。
【0023】
[第6の実施の形態]
次に下肢牽引器の第6の実施の形態について説明するが、上記各実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においては図8に示すように本体部20、片面ループの面ファスナー材のベルト80及び両面フックの面ファスナー81,82で構成される。
本体部20の4箇所に貫通穴21を配置している。ベルト80の一方の端部80aを角カン83に通して折り返し、面ファスナー81で固定している。
【0024】
使用する際には図9(a)に示すようにベルト80の他方の端部80bを左上の貫通穴21に対して上から下に通し、角カン83を本体部20の表面に露出させる。次に他方の端部80bを右下の貫通穴21に対して下から上に通し、左下の貫通穴21に対して上から下に通すことで第1ループ84を形成する。次に図9(b)に示すように他方の端部80bを右上の貫通穴21に対して下から上に通し、更に角カン83に通すことで第2ループ85を形成する。
使用者は図9(c)に示すように他方の端部80bを手に持ったまま被牽引下肢の足を第1ループ84及び第2ループ85に通し、他方の端部80bを上方に引き上げることで第1ループ84及び第2ループ85を締め上げる。これにより足の甲付近が第1ループ84で固定され、踵付近が第2ループ85で固定される。
次に使用者は図9(d)に示すように面ファスナー82を第2ループ85の側面に貼り付ける。そして、使用者は図9(e)に示すように他方の端部80bを被牽引下肢の足首に数回巻き付けて面ファスナー82に固定する。以上で被牽引下肢を本体部20に固定する作業が完了する。
下肢牽引器を使用した後は端部80bを外して巻き付けを解き、図9(f)に示すように端部80bを面ファスナー82に仮固定する。この後、被牽引下肢の足を後ろにずらして第2ループ85を広げてから被牽引側足を抜き、図9(g)に示すように第1ループ84及び第2ループ85が大きく開口した状態にしておけば、図9(h)に示すように再度下肢牽引器を使用する際に被牽引下肢の足の第1ループ84及び第2ループ85への差し込みが容易になる。この後は端部80bを面ファスナー82から外し、図9(c)以降の繰り返しとなる。但し、面ファスナー82の貼り付けは除く。
なお、図9(e)に示す使用手順において、端部80bを足首に巻き付けずに面ファスナー82に固定することにより、被牽引下肢の固定が足の甲と踵のみになる。この固定状態で牽引することにより足首関節にも牽引力が加わり、変形性足関節症に対しても有効となる。
【0025】
[第7の実施の形態]
次に下肢牽引器の第7の実施の形態について説明するが、上記各実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態においては図10(a)に示すように本体部20の長手方向に沿ったリブ90を備える点に特徴を有する。リブ90は本体部20の下面においてその前後の両端部に取り付けられる。
仮にリブ90を備えないものとすると、図10(b)に示すように牽引力を掛けて本体部20を撓ませた際に左足内側のB-Bライン部に曲げ応力が集中し、B-Bライン部で本体部20の割れ破壊もしくは変形が起こりやすいという問題がある。
本体部20の下面にリブ90を取り付けることで、図10(c)に示すように使用者の体重で本体部20の中央部が下方に撓む。この撓みにより本体部20が平板形状から波板形状になりこの形状効果でA-Aライン部の対曲げ強度が上がり、結果としてA-Aライン部で本体部20の割れ破壊もしくは変形を防ぐことができる。
リブ90の材質は特に限定されないが、本体部20と床100との間の滑り防止、床100の凹み及び傷付き防止の目的からゴム材が望ましい。
【0026】
なお、各実施の形態では右の下肢をベルト30で固定するものとしたが、下肢牽引器10の左右の向きを反転させることで左の下肢をベルト30で固定して牽引することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、大きな牽引力を得られ、牽引力の調節及び持ち運びが容易で、使用場所の制限を受けにくく、且つ安価な下肢牽引器であり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0028】
d1 右足と左足との距離
d2 重心の鉛直線と左足位置の鉛直線との距離
G 重心
10 下肢牽引器
20 本体部
20a 本体部端部
21 貫通穴
30 ベルト
31 基部
40 安全機構
41 結束バンド
42 面ファスナー
50 突起
60 本体部
61 線材
70 第2ベルト
80 ベルト
80a 一方の端部
80b 他方の端部
81,82 面ファスナー
83 角カン
84 第1ループ
85 第2ループ
90 リブ
100 床
101 壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】変更
【補正の内容】
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状であり弾性を備える本体部と、前記本体部の一方の端部に位置しており使用者の両下肢のうち牽引対象の下肢(以下、「被牽引下肢」とする。)の一部を固定するベルトとを備えており、
前記被牽引下肢の足を前記一方の端部の上面に固定し、他方の下肢の足を前記本体部の上面に載置して使用する下肢牽引器であり、
前記本体部は、前記使用者自らが前記他方の下肢の足を支点にすると共に前記使用者の重心が前記支点よりも前記本体部の他方の端部側に移動するように体を傾けて前記被牽引下肢を上方に引き上げることにより上方に撓み、その復元力により前記被牽引下肢を引き伸ばす牽引力を発生させることを特徴とする下肢牽引器。
【請求項2】
前記ベルトが前記本体部に対して複数本の結束バンドを介して連結されていることを特徴とする請求項1に記載の下肢牽引器。
【請求項3】
前記ベルトが前記本体部に対して弾性を備えた部材を介して連結されていることを特徴とする請求項1に記載の下肢牽引器。
【請求項4】
前記本体部の上面のうち、前記ベルトが位置する箇所の近傍に突起を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の下肢牽引器。
【請求項5】
前記本体部が二つ折り可能であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の下肢牽引器。
【請求項6】
前記他方の下肢の足を前記本体部に固定して前記他方の下肢の足が前記本体部の上面で滑ることを防止する第2ベルトを備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の下肢牽引器。
【請求項7】
前記ベルトによって成る第1ループ及び第2ループを備えており、
前記被牽引下肢の足の甲付近を前記第1ループで固定し、踵付近を前記第2ループで固定することを特徴とする請求項1,4,5及び6のいずれか一項に記載の下肢牽引器。
【請求項8】
前記本体部が長辺と短辺とを備えた矩形であり、前記短辺が前記一方の端部及び前記他方の端部側に位置しており、前記本体部の下面に、前記本体部の長辺方向に沿ったリブを備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の下肢牽引器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の下肢牽引器は、板状であり弾性を備える本体部と、前記本体部の一方の端部に位置しており使用者の両下肢のうち牽引対象の下肢(以下、「被牽引下肢」とする。)の一部を固定するベルトとを備えており、前記被牽引下肢の足を前記一方の端部の上面に固定し、他方の下肢の足を前記本体部の上面に載置して使用する下肢牽引器であり、前記本体部は、前記使用者自らが前記他方の下肢の足を支点にすると共に前記使用者の重心が前記支点よりも前記本体部の他方の端部側に移動するように体を傾けて前記被牽引下肢を上方に引き上げることにより上方に撓み、その復元力により前記被牽引下肢を引き伸ばす牽引力を発生させることを特徴とする。
また、前記ベルトが前記本体部に対して複数本の結束バンドを介して連結されていることを特徴とする。
また、前記ベルトが前記本体部に対して弾性を備えた部材を介して連結されていることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
また、前記本体部の上面のうち、前記ベルトが位置する箇所の近傍に突起を備えることを特徴とする。
また、 前記本体部が二つ折り可能であることを特徴とする。
また、前記他方の下肢の足を前記本体部に固定して前記他方の下肢の足が前記本体部の上面で滑ることを防止する第2ベルトを備えることを特徴とする。
また、前記ベルトによって成る第1ループ及び第2ループを備えており、前記被牽引下肢の足の甲付近を前記第1ループで固定し、踵付近を前記第2ループで固定することを特徴とする。
また、前記本体部が長辺と短辺とを備えた矩形であり、前記短辺が前記一方の端部及び前記他方の端部側に位置しており、前記本体部の下面に、前記本体部の長辺方向に沿ったリブを備えることを特徴とする。