(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168493
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】運搬装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/06 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
B66F9/06 T
B66F9/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073999
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】515087972
【氏名又は名称】株式会社イノフィス
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100135356
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏
(72)【発明者】
【氏名】山口 友輔
(72)【発明者】
【氏名】貝 健太
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA03
3F333AB07
3F333AE02
3F333BA03
3F333BB12
3F333BD05
3F333CA01
3F333DA05
3F333DA07
(57)【要約】
【課題】所定の重量の物を、水平多関節アームにより持ち上げて、所定の距離を移動して運搬し、水平多関節アームにより他の場所へ下ろすことが可能な運搬装置を提供すること。
【解決手段】被搬送物Lを支持可能な水平多関節アーム部50と、水平多関節アーム部50を昇降可能に支持するリフター部10と、を備える運搬装置1である。水平多関節アーム部50は、互いに連結された複数の単位アーム部51、52、53を有し、単位アーム部51、52、53は、上下方向において対向し水平方向に延びる一対の水平腕部511、521、531を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を支持可能な水平多関節アーム部と、
前記水平多関節アーム部を昇降可能に支持するリフター部と、を備える運搬装置。
【請求項2】
前記水平多関節アーム部は、互いに連結された複数の単位アーム部を有し、
前記単位アーム部は、上下方向において対向し水平方向に延びる一対の水平腕部を有する請求項1に記載の運搬装置。
【請求項3】
前記リフター部は、上下方向に延びる少なくとも2対の柱状部を備え、
前記2対の柱状部のうちの1対の前記柱状部は、最基端側の前記単位アーム部の延出方向における基端部の端部に当接し、前記2対の柱状部のうちの他の1対の前記柱状部は、前記最基端側の単位アーム部の延出方向における基端部の側部に当接して、前記最基端側の単位アーム部を支持する請求項2に記載の運搬装置。
【請求項4】
前記柱状部に直接支持される最基端側の前記単位アーム部は、平面視で矩形を有する請求項3に記載の運搬装置。
【請求項5】
前記リフター部は、前記柱状部を支持するベース部と、前記ベース部を移動可能に支持する複数の車輪と、を有する請求項3又は請求項4のいずれかに記載の運搬装置。
【請求項6】
前記柱状部に関して前記水平多関節アーム部とは反対の側の前記ベース部の部分には、前記水平多関節アーム部に対する第1カウンタウェイトが設けられている請求項5に記載の運搬装置。
【請求項7】
前記水平多関節アーム部は、第1のワイヤの一端部に接続され、前記第1のワイヤの他端部には、第2カウンタウェイトが接続され、前記第1のワイヤの中間部は、前記リフター部に設けられた第1のプーリに掛けられている請求項3~請求項6のいずれかに記載の運搬装置。
【請求項8】
前記水平多関節アーム部は、第2のワイヤの一端部に接続され、前記第2のワイヤの他端部には、前記第2のワイヤを上下可能なペダルが連結可能に構成され、前記第2のワイヤの中間部は、前記リフター部に設けられた第2のプーリに掛けられている請求項3~請求項7のいずれかに記載の運搬装置。
【請求項9】
前記第2のワイヤの他端部には、ゼンマイモータが連結されている請求項8に記載の運搬装置。
【請求項10】
前記第2のワイヤの他端部には、ロータリダンパーが連結されている請求項8又は請求項9に記載の運搬装置。
【請求項11】
前記第2のワイヤの中間部を挟持して前記第2のワイヤの他端部から前記第2のワイヤの一端部へ向かう方向へ前記第2のワイヤが移動することを一時的に妨げるロック機構部を備える、請求項8~請求項10のいずれかに記載の運搬装置。
【請求項12】
前記リフター部は、前記柱状部を支持するベース部を有し、前記ペダルは、前記ベース部に設けられている請求項8に記載の運搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水平多関節アームを有する水平多関節ロボットが知られている(例えば、特許文献1参照)。水平多関節ロボットは、第1アーム、第2アーム、及び、ハンドを有する3リンクの水平多関節アームを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の多関節アームロボットは、搬送室内においてロードロック室へ基板を搬送する。このため、広い場所において、重量の大きな物を、離れた場所まで移動して搬送することは困難である。
【0005】
本発明は、所定の重量の物を、水平多関節アームにより持ち上げて、所定の距離を移動して運搬し、水平多関節アームにより他の場所へ下ろすことが可能な運搬装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被搬送物を支持可能な水平多関節アーム部と、前記水平多関節アーム部を昇降可能に支持するリフター部と、を備える運搬装置に関する。
【0007】
ここで、前記水平多関節アーム部は、互いに連結された複数の単位アーム部を有し、前記単位アーム部は、上下方向において対向し水平方向に延びる一対の水平腕部を有することが好ましい。
【0008】
また、前記リフター部は、上下方向に延びる少なくとも2対の柱状部を備え、前記2対の柱状部のうちの1対の前記柱状部は、最基端側の前記単位アーム部の延出方向における基端部の端部に当接し、前記2対の柱状部のうちの他の1対の前記柱状部は、前記最基端側の単位アーム部の延出方向における基端部の側部に当接して、前記最基端側の単位アーム部を支持することが好ましい。
【0009】
また、前記柱状部に直接支持される最基端側の前記単位アーム部は、平面視で矩形を有することが好ましい。また、前記リフター部は、前記柱状部を支持するベース部と、前記ベース部を移動可能に支持する複数の車輪と、を有することが好ましい。
【0010】
また、前記柱状部に関して前記水平多関節アーム部とは反対の側の前記ベース部の部分には、前記水平多関節アーム部に対する第1カウンタウェイトが設けられていることが好ましい。また、前記水平多関節アーム部は、第1のワイヤの一端部に接続され、前記第1のワイヤの他端部には、第2カウンタウェイトが接続され、前記第1のワイヤの中間部は、前記リフター部に設けられた第1のプーリに掛けられていることが好ましい。
【0011】
また、前記水平多関節アーム部は、第2のワイヤの一端部に接続され、前記第2のワイヤの他端部には、前記第2のワイヤを上下可能なペダルが連結可能に構成され、前記第2のワイヤの中間部は、前記リフター部に設けられた第2のプーリに掛けられていることが好ましい。
【0012】
また、前記第2のワイヤの他端部には、ゼンマイモータが連結されていることが好ましい。また、前記第2のワイヤの他端部には、ロータリダンパーが連結されていることが好ましい。また、前記第2のワイヤの中間部を挟持して前記第2のワイヤの他端部から前記第2のワイヤの一端部へ向かう方向へ前記第2のワイヤが移動することを一時的に妨げるロック機構部を備えることが好ましい。また、前記リフター部は、前記柱状部を支持するベース部を有し、前記ペダルは、前記ベース部に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定の重量の物を、水平多関節アームにより持ち上げて、所定の距離を移動して運搬し、水平多関節アームにより他の場所へ下ろすことが可能な運搬装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による運搬装置を示す前方斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による運搬装置を示す後方斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態による運搬装置を示す左側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による運搬装置を示す右側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態による運搬装置から第2柱状部に図示を省略した右側方斜視面図である。
【
図6】本発明の一実施形態による運搬装置の水平多関節アーム部の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について
図1~
図6を参照して説明する。なお、
図1~
図5においては、図面における見易さの便宜上、ベルト324、ワイヤ147、ワイヤ345、ワイヤ501の図示を省略し、
図6において図示することとする。
【0016】
以下、リフター部10から水平多関節アーム部50へ向かう方向(
図3における右方向)を前方向(Fr)と定義し、その反対の方向を後方向(Rr)と定義し、運搬装置1を正面から見て左側へ向かう方向(
図1における左上方向)を左方向(L)と定義し、その反対の方向を右方向(R)と定義し、ベース部20から柱状部11、12へ向かう方向(
図3における上方向)上方向(Up)と定義し、その反対の方向を下方向(Dw)と定義して説明する。
【0017】
運搬装置1は、
図1等に示すように、リフター部10と、水平多関節アーム部50と、を備えている。水平多関節アーム部50は、互いに連結されたそれぞれ単位アーム部としての第1アーム部51と、第2アーム部52と、第3アーム部53とを有している。第1アーム部51は、上下方向において対向し水平方向に延びる板状の一対の水平腕部511を有する。一対の水平腕部511の先端部には、下方向に平行に延びる一対のフォーク支持柱513を固定する固定部512が設けられている。
【0018】
フォーク支持柱513の下端部には、水平且つ平行に3本延びるフォーク516の基部を固定するフォーク固定部515が固定されている。3本のフォーク516の上面には、例えば、20kg~40kg程度の重量の被搬送物Lとしての砥石が載置され支持されて、運搬装置1の移動により運搬される。一対の水平腕部511の基部には、上下方向に延びて一対の水平腕部511の基部を連結するように配置された回転軸519が設けられている。回転軸519は、一対の水平腕部511の基部を貫通する。
【0019】
第2アーム部52は、上下方向において対向し水平方向に延びる板状の一対の水平腕部521を有する。一対の水平腕部521の先端部には、回転軸519が貫通しており、これにより、第1アーム部51は、第2アーム部52に対して時計回り方向及び反時計回り方向へ、それぞれ45°程度回転可能である。一対の水平腕部521の基部には、上下方向に延びて一対の水平腕部521の基部を連結するように配置された回転軸529が設けられている。回転軸529は、一対の水平腕部521の基部を貫通する。
【0020】
第3アーム部53は、上下方向において対向し水平方向に延びる一対の水平腕部531を有する。一対の水平腕部531は、それぞれ平面視で長方形状(矩形)に枠組みされて構成されている。一対の水平腕部531の先端部は、長方形状の板状を有しており、当該一対の水平腕部531の先端部には、回転軸529が貫通している。これにより、第2アーム部52は、第3アーム部53に対して時計回り方向及び反時計回り方向へ、それぞれ65°程度回転可能である。
【0021】
第3アーム部53は、上端部及び下端部が一対の水平腕部531にそれぞれ接続され固定された複数の縦柱部533を有している。複数の縦柱部533は、一対の水平腕部531間の距離を一定保持するように、一対の水平腕部531のうちの一方の水平腕部531に対して他方の水平腕部531を支持する。
【0022】
最後部の縦柱部533と、最後部から2番目の縦柱部533と、これらの間に位置している一対の水平腕部531の部分とには、これらに跨るようにして車輪支持部材534(
図5参照)が固定されている。車輪支持部材534には、回転軸心が左右方向に指向する車輪535が、車輪支持部材534に対して回転可能に支持されている。車輪535は、第3アーム部53の左右の上端部及び下端部に、それぞれに2つずつ計4つ設けられている。車輪535は、最基端側の単位アーム部である第3アーム部53の延出方向における基端部の端部を構成する。なお、
図5においては、車輪535は、右側の2つのみ現れており、
図6においては、車輪535は、左側の2つのみ現れている。
【0023】
最後部から2番目の縦柱部533(
図1参照)と、最後部から3番目の縦柱部533と、これらの間に位置している一対の水平腕部531(
図1参照)との間の部分とには、これらに跨るようにして車輪支持部材537(
図5、
図6参照)が固定されている。車輪支持部材537には、回転軸心が前後方向に指向する車輪538が、車輪支持部材537に対して回転可能に支持されている。車輪538は、第3アーム部53の左右の上端部及び下端部に、それぞれに2つずつ計4つ設けられている。車輪538は、最基端側の単位アーム部である第3アーム部53の延出方向における基端部の側部を構成する。なお、
図5においては、車輪538は、右側の2つのみ現れており、
図6においては、車輪538は、左側の2つのみ現れている。
【0024】
図6に示すように、第3アーム部53の上部には、ワイヤ501の一端部が接続されて固定されている。ワイヤ501は、後述のプーリ145に掛けられ、ワイヤ501の他端部は、カウンタウェイト502に接続されて固定されている。カウンタウェイト502は、フォーク516に被搬送物Lが載置されていない状態のときに、ワイヤ501を介して、水平多関節アーム部50が上下しないように自重補償する。
【0025】
リフター部10は、柱状部11、12と、ベース部20と、車輪41とを有している。車輪41は、長方形状の板状のベース部20を構成する長方形状の板状のベース下板21(
図2等参照)の下面に回転可能に支持されて、左右3対設けられており、ベース部20を移動可能に支持する。
【0026】
より具体的には、左右に対をなして計3対設けられた車輪41のうちの前後方向における中央の1対の車輪41は、長方形状の板状のベース下板21の下面の、前側の2つの角部において回転可能に支持されている。また、左右に対をなして3対設けられた車輪41のうちの前後方向における後側の1対の車輪41は、長方形状の板状のベース下板21の下面の、後側の2つの角部近傍の、左右方向における中央寄りの部分において回転可能に支持されている。また、左右に対をなして3対設けられた車輪41のうちの前後方向における前側の1対の車輪41は、長方形状の板状のベース下板21の前方に設けられた1対の車輪支持部24においてそれぞれ1つずつ回転可能に支持されている。
【0027】
車輪支持部24は、長方形状の板状のベース下板21の前端縁から前方向に延びる前側延出部241と、長方形状の板状のベース下板21の前側の角部から斜め左前方向、右前方向にそれぞれ前側延出部241から離れてゆくように延びる横方向延出部242と、前側延出部241の延出端部と横方向延出部242の延出端部とに接続された前側左右方向延出部243と、を有している。左右に対をなして3対設けられた車輪41のうちの前後方向における前側の1対の車輪41は、前側左右方向延出部243の左右の両端部において回転可能に支持されている。
【0028】
ベース下板21における中央の1対の車輪41と後側の1対の車輪41との間には、車輪41により移動していないときにベース部20を支持して、ベース部20が予期しない方向へ移動することを阻止する支持脚42が、ベース部20に固定されて設けられている。
【0029】
ベース部20は、
図3~
図4に示すように、長方形状のベース下板21と、ベース下板21よりも小さい長方形状のベース上板22とを有している。ベース上板22は、ベース下板21対して回転可能に、円柱形状の回転部材23を介して支持されている。
【0030】
柱状部11、12は、上下方向に延びるように、それぞれ1対ずつ設けられている。一対の柱状部11は、ベース上板22の前側に配置されて固定され、ベース上板22に支持されている。一対の柱状部12は、一対の柱状部11に対してベース上板22の後側に配置され固定されている。一対の柱状部11には、車輪538が柱状部11の側面上を上下方向に走行可能に当接している。また、他の一対の柱状部12には、第3アーム部53の車輪535が、柱状部12の前面上を上下方向に走行可能に当接している。このように、車輪538の柱状部11への当接、及び、車輪535の柱状部12への当接により、リフター部10は、水平多関節アーム部50を昇降可能に、第3アーム部53を支持する。
【0031】
2対の柱状部11、12の上端部は、
図1等に示すように、長方形状の枠組みされた天井部14に接続されて固定されている。より具体的には、1対の柱状部11の上端部は、天井部14の前端部の左右の端部に接続されて固定されており、他の1対の柱状部12の上端部は、天井部14の前後方向における中央付近の左右の端部に接続されて固定されている。また、他の1対の柱状部12の上端部同士を掛け渡すように、天井中央柱部141が設けられている。
【0032】
天井部14には、複数のプーリ145が回転可能に支持されて設けられている。天井部14の後端部の左右の端部には、下方向に延びる一対の把持柱部13が設けられている。一対の把持柱部13は、天井部14の後端部の左右の端部からそれぞれ下方向に延び、上下方向における2対の柱状部11、12の長さの下側から4分の1程度のところで前方向に湾曲して、柱状部12にそれぞれ接続されている。
【0033】
また、天井部14の前部には、カムクリート146により構成されるロック機構が設けられている。カムクリート146には、ワイヤ147(
図6参照)の一端部が接続されている。ワイヤ147は、プーリ145に掛けられ、ワイヤ147の他端部は、他の1対の柱状部12にそれぞれ回動可能に支持されたレバー121に接続されている。カムクリート146の一対のカムの間には、後述のワイヤ345が配置されており、レバー121を回動することにより、カムクリート146のカムを開閉して、ワイヤ345のプーリ341における繰り出し又は巻取りを、許容したり規制したりする。ワイヤ345の中間部がカムクリート146の一対のカムに挟持されることにより、ワイヤ345が移動することを一時的に妨げることができるように構成されている。
【0034】
柱状部11、12に関して水平多関節アーム部50とは反対の側のベース部20の部分、即ちベース上板22の上面の後端部には、
図3等に示すように、水平多関節アーム部50に対するカウンタウェイト25が設けられている。カウンタウェイト25は、縦長の直方体形状を有しており、ベース上板22の上面の最後端に配置されている。
【0035】
ベース上板22の上面の前部における、左右方向の中央には、アーム昇降機構部30(
図1、
図6等参照)が設けられている。アーム昇降機構部30は、ペダル31と、歯車321、歯車322、プーリ323と、ロータリダンパー33と、プーリ341と、ゼンマイモータ35と、を有しており、これらのうちのペダル31以外は、機構部支持板301に、それぞれの回転軸が左右方向に指向する位置関係で支持されている。ペダル31は、ベース上板22に対して回動可能に支持されている。
【0036】
ペダル31は、左右方向に指向する回動軸311を有している。回動軸311は、ベース上板22の上面に固定され回動軸311を支持する支持部221(
図5参照)に形成された前後方向に長い長孔を貫通しており、長孔内を前後方向に移動可能、且つ、回転可能に支持部221に支持されている。回動軸311には、
図6に示すように、ワンウェイクラッチ314を介して歯車313が、一方の回転方向においては回動軸311に対して回転可能に、他方の回転方向においては回動軸311と一体的に回転可能に、回動軸311と同軸的な位置関係で設けられている。回動軸311は、歯車313に噛合可能(連結可能)であり、回動軸311が長孔内を前方向に移動することにより、歯車313は、歯車321に噛合(連結)し、回動軸311が長孔内を後方向に移動することにより、歯車313は、歯車321に対して離間する。
【0037】
ペダル31においては、付勢部材であるばね315がペダル31のペダル延出部312を上方向に回動するように且つ回動軸311を後方向に付勢している。後方向に延びるペダル31のペダル延出部312を、作業者が下方向に踏むことにより、ペダル31を前方向に移動させて歯車313を歯車321に噛合させ、更に、ペダル31を下方向へ踏み込んで回動させて、歯車313を回転させ、歯車313の回転を歯車32に伝達することができるように構成されている。
【0038】
歯車321は、歯車322に噛合しており、歯車322は、プーリ323と同軸的に一体回転可能である。プーリ323には、環状のベルト324が掛けられている。また、ベルト324は、プーリ341と同軸的に一体的に回転可能に設けられた図示しないプーリに掛けられている。プーリ341には、ワイヤ345の一端側が巻かれている。ワイヤ345はプーリ145に掛けられており、ワイヤ345の他端部は、第3アーム部53に固定されている。プーリ145が回転することにより、第3アーム部53を含む水平多関節アーム部50が昇降するように構成されている。
【0039】
プーリ341には、プーリ341と同軸的に一体的に回転可能に歯車342が設けられている。歯車342は、ロータリダンパー33のワンウェイクラッチを構成する歯車331と噛合可能であり、また、ゼンマイモータ35の歯車351と噛合している。ワイヤ345がプーリ341から繰り出されるときに、ロータリダンパー33により、ゆっくり繰り出されるように構成されている。また、ワイヤ345がプーリ341から繰り出されるときに、ゼンマイモータ35により、ワイヤ345の繰り出しに対してプーリ341が余計に回転しないように付勢して、ワイヤ345の弛みが発生することを抑えるように構成されている。
【0040】
次に、運搬装置1の動作について説明する。先ず、被搬送物Lをフォーク516の上面に載置していないときの、水平多関節アーム部50の上下の動作について説明する。水平多関節アーム部50を上昇させる際には、先ず、運搬装置1を取り扱う作業者が、レバー121を操作して回動することにより、カムクリート146のカムを開いて、ワイヤ345を移動可能な状態とする。次に、カウンタウェイト502により自重補償された水平多関節アーム部50を作業者が持ち上げることにより、水平多関節アーム部50は上昇する。
【0041】
水平多関節アーム部50の上昇に伴い、ワイヤ345が移動することにより、ゼンマイモータ35の歯車351が駆動して回転して歯車342が回転する。これにより回転の動力がプーリ341に伝達され、プーリ341が回転して、弛んだワイヤ345がプーリ341に巻き取られる。このとき、ロータリダンパー33の歯車331は空転し、ロータリダンパー33は、プーリ341の回転の抵抗とはならない。
【0042】
水平多関節アーム部50を下降させる際には、先ず、運搬装置1を取り扱う作業者が、レバー121を操作して回動することにより、カムクリート146のカムを開いて、ワイヤ345を移動可能な状態とする。次に、カウンタウェイト502により自重補償された水平多関節アーム部50を作業者が引き下げることにより、水平多関節アーム部50は下降する。
【0043】
水平多関節アーム部50の下降に伴い、ワイヤ345が移動して引き出されることにより、プーリ341及び歯車342が一体的に回転する。これにより、ゼンマイモータ35の歯車351が回転してゼンマイが巻かれ、また、ロータリダンパー33の歯車331が回転し、プーリ341の回転に対する抵抗が発生して、プーリ341がゆっくり回転し、水平多関節アーム部50はゆっくり下降する。以上が、被搬送物Lをフォーク516の上面に載置していないときの、水平多関節アーム部50の上下の動作について説明である。
【0044】
次に、被搬送物Lをフォーク516の上面に載置し、所定の場所へ搬送するときの、水平多関節アーム部50の一連の動作について説明する。先ず、運搬装置1を取り扱う作業者により、レバー121を操作して回動することにより、カムクリート146のカムを閉じて、ワイヤ345を一時的に移動不能な状態として、被搬送物Lをフォーク516の上面に載置する。
【0045】
次に、作業者がペダル31を踏み込むとにより、ペダル31の回動軸311は、支持部221に形成された長孔内を前方向に移動して、ワンウェイクラッチ314の歯車が歯車321に噛合し連結される。そして、作業者がペダル31を更に踏み込むとにより、ワンウェイクラッチ314が回動軸311を中心として回転し、これにより、ワンウェイクラッチ314と一体で歯車313が回転する。そして、歯車313から、歯車321、歯車322、プーリ323を介してプーリ341へ回転が伝達され、プーリ341が回転する。
【0046】
これにより、プーリ341にワイヤ345が巻き取られ、水平多関節アーム部50は上昇する。このとき、ゼンマイモータ35の歯車351が回転して、ゼンマイからの動力が伝達されるが、ゼンマイによる付勢力は小さいため、ゼンマイモータ35による影響は小さい。また、ロータリダンパー33の歯車331は空転し、ロータリダンパー33は、プーリ341の回転の抵抗とはならない。
【0047】
次に、作業者が、レバー121を操作して回動することにより、カムクリート146のカムを閉じて、ワイヤ345を一時的に移動不能な状態として、水平多関節アーム部50の昇降を規制する。次に、作業者がペダル31から足を離すことにより、歯車313と歯車321との噛合による連結が解除される。この状態で、作業者が把持柱部13を把持してリフター部10を押して、車輪41を回転させるとともに、回転部材23を介してベース上板22をベース下板21対して回転させ、また、作業者が第2アーム部52を第3アーム部53に対して回転させ、第1アーム部51を第2アーム部52に対して回転させることにより、被搬送物Lを所定の位置まで移動させる。
【0048】
次に作業者が、レバー121を操作して回動することにより、カムクリート146のカムを開いて、ワイヤ345を移動可能な状態とする。すると水平多関節アーム部50は、被搬送物Lの重さにより下降し、これによりワイヤ345はプーリ341から引き出されプーリ341が回転する。プーリ341の回転によりゼンマイモータ35の歯車351が回転して、ゼンマイが巻かれる。また、ロータリダンパー33の歯車331が回転し、プーリ341の回転に対する抵抗が発生して、プーリ341がゆっくり回転し、水平多関節アーム部50はゆっくり下降する。以上が、被搬送物Lをフォーク516の上面に載置し、所定の場所へ搬送するときの、水平多関節アーム部50の一連の動作について説明である。
【0049】
上述の実施形態によれば、以下のような効果を発揮することができる。
本実施形態においては、運搬装置1は、被搬送物Lを支持可能な水平多関節アーム部50と、水平多関節アーム部50を昇降可能に支持するリフター部10と、を備える。この構成により、上下方向及び水平方向における任意の位置に配置されている被搬送物Lを持ち上げて、上下方向及び水平方向における任意に位置へ搬送することが可能である。
【0050】
また、本実施形態では、水平多関節アーム部50は、互いに連結された複数の単位アーム部である第1アーム部51と、第2アーム部52と、第3アーム部53とを有し、各単位アーム部は、それぞれ上下方向において対向し水平方向に延びる一対の水平腕部511、521、531を有する。この構成により、水平多関節アーム部50により、被搬送物Lとして20kg~40kg程度の重量の砥石等を、支持することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、リフター部10は、上下方向に延びる2対の柱状部11、12を備え、2対の柱状部11、12のうちの1対の柱状部12は、最基端側の単位アーム部である第3アーム部53の延出方向における基端部の端部を構成する車輪535に当接し、2対の柱状部11、12のうちの他の1対の柱状部11は、最基端側の単位アーム部である第3アーム部53の延出方向における基端部の側部を構成する車輪538に当接して、第3アーム部53を支持する。この構成により、水平多関節アーム部50により、被搬送物Lとして20kg~40kg程度の重量の砥石等を、支持することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では、柱状部11、12に直接支持される最基端側の単位アーム部である、第3アーム部53の一対の水平腕部531は、平面視で矩形を有する。この構成により、最基端側に位置する第3アーム部53を、平面視で広い面積を有する構成とすることが可能となり、最基端側に位置する第3アーム部53の剛性を高めることが可能となり、水平多関節アーム部50により、被搬送物Lとして20kg~40kg程度の重量の砥石等を、支持することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態では、リフター部10は、柱状部11、12を支持するベース部20と、ベース部20を移動可能に支持する複数の車輪41と、を有する。この構成により、水平多関節アーム部50により被搬送物Lを支持した状態で、水平方向における任意の位置へ、リフター部10を移動させることが可能である。
【0054】
また、本実施形態では、柱状部11、12に関して水平多関節アーム部50とは反対の側のベース部20の部分には、水平多関節アーム部50に対する第1カウンタウェイトとしてのカウンタウェイト25が設けられている。この構成により、前方へ延びる水平多関節アーム部50で被搬送物Lを支持した状態で、運搬装置1全体が前側に倒れることを防止することができる。
【0055】
また、本実施形態では、水平多関節アーム部50は、第1のワイヤとしてのワイヤ501の一端部に接続され、ワイヤ501の他端部には、第2カウンタウェイトとしてのカウンタウェイト502が接続され、ワイヤ501の中間部は、リフター部10に設けられた第1のプーリとしてのプーリ145に掛けられている。この構成により、カウンタウェイト502により水平多関節アーム部50を自重補償された状態として、被搬送物Lがフォーク516に載置されていないときに、重力により上下することを防ぐことが可能となる。
【0056】
また、本実施形態では、水平多関節アーム部50は、第2のワイヤとしてのワイヤ345の一端部に接続され、ワイヤ345の他端部には、ワイヤ345を上下可能なペダル31が連結可能に構成されワイヤ345の中間部は、リフター部10に設けられた第2のプーリとしてのプーリ145に掛けられている。この構成により、ペダル31を歯車313等を介してワイヤ345に連結して、ペダル31を踏むことにより、水平多関節アーム部50を上昇させることが可能である。また、ペダル31のワイヤ345への連結を解除して、被搬送物Lを支持している水平多関節アーム部50を下降させることが可能である。
【0057】
また、本実施形態では、第2のワイヤとしてのワイヤ345の他端部には、ゼンマイモータ35が連結されている。この構成により、ワイヤ345が弛んだときに、ゼンマイの付勢力によりプーリ341で巻き取ることが可能となり、ワイヤ345の弛みの発生を抑えることが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、第2のワイヤとしてのワイヤ345の他端部には、ロータリダンパー33が連結されている。この構成により、ワイヤ345の繰り出しに対してプーリ341が余計に回転しないように付勢して、ワイヤ345がプーリ341から繰り出されるときに、ゆっくり繰り出されるようにして、被搬送物Lが勢いよく落下することを防止し、ワイヤ345の弛みが発生することを抑えることが可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、第2のワイヤとしてのワイヤ345の中間部を挟持してワイヤ345の他端部からワイヤ345の一端部へ向かう方向へワイヤ345が移動することを一時的に妨げるロック機構部としてのカムクリート146を備える。この構成により、カムクリート146のカムを開閉して、ワイヤ345のプーリ341における繰り出し又は巻取りを、許容したり規制したりすることができる。即ち、ワイヤ345の中間部がカムクリート146の一対のカムに挟持されることにより、ワイヤ345が移動することを一時的に妨げることができる。
【0060】
また、本実施形態では、リフター部10は、柱状部11、12を支持するベース部20を有し、ペダル31は、ベース部20に設けられている。この構成により、リフター部10の下部のベース部20に設けられたペダル31を足で踏んで操作することにより、水平多関節アーム部50を昇降することが可能となり、操作性を向上させることが可能となる。
【0061】
本発明は、上述した実施形態に制限されることなく、請求の範囲に記載した範囲において、様々な形態で実施することができる。例えば、水平多関節アーム部、リフター部等の構成は、本実施形態における水平多関節アーム部50、リフター部10等の構成に限定されない。
【0062】
例えば、運搬装置1は、柱状部11、12の2対の柱状部を備えていたが、この構成に限定されず、例えば、3対以上の柱状部を備えていてもよい。また、単位アーム部は、第1アーム部51と、第2アーム部52と、第3アーム部53とを有していたが、この構成に限定されず、第4アーム、第5アーム、・・・、を有していてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 運搬装置
10 リフター部
11、12 柱状部
20 ベース部
25 カウンタウェイト(第1カウンタウェイト)
31 ペダル
33 ロータリダンパー
35 ゼンマイモータ
41 車輪
50 水平多関節アーム部
51 第1アーム部
52 第2アーム部
53 第3アーム部
145 プーリ
146 カムクリート(ロック機構部)
345 ワイヤ(第2のワイヤ)
501 ワイヤ(第1のワイヤ)
502 カウンタウェイト(第2カウンタウェイト)
511、521、531 水平腕部
535 車輪
538 車輪
L 被搬送物