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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168507
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】床タイル張り工法および高さ調整具
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/08 20060101AFI20221031BHJP
   E04G 21/20 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
E04F15/08 G
E04G21/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074020
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】595073007
【氏名又は名称】矢橋大理石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田中 純二
【テーマコード(参考)】
2E174
2E220
【Fターム(参考)】
2E174AA05
2E174BA01
2E174DA17
2E174DA34
2E174DA57
2E174DA64
2E220AA51
2E220AC01
2E220BA01
2E220DA01
2E220DB09
2E220DB10
2E220FA14
(57)【要約】
【課題】床タイル張り工法における工期短縮が可能となる。
【解決手段】床タイル4をコンクリート下地2に張り付ける床タイル張り工法であって、コンクリート下地2上に貼代モルタル3を設けるとともに、貼代モルタル3に床タイル4の高さを調整する高さ調整具10を配置する工程と、床タイル4を貼代モルタル3上に設置する工程と、床タイル4の高さを揃える工程とを備える。高さ調整具10は、細長い薄板を折曲して構成され、床タイル裏面に接する接触部と12、コンクリート下地2に接触する支持部13と、接触部12と支持部13とを繋ぎ間隔を調整する調整部14とを備える。高さ調整具10は、周回方向に非連続の環状体であって、第1端部15と第2端部16とが離間している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床タイルをコンクリート下地に張り付ける床タイル張り工法であって、
コンクリート下地上に貼代モルタルを塗るとともに、前記貼代モルタルに前記床タイルの高さを調整する高さ調整具を配置する工程と、
前記床タイルを前記貼代モルタル上に設置する工程と、
前記床タイルの高さを揃える工程とを備え、
前記高さ調整具は、細長い金属薄板を折曲して構成されている
床タイル張り工法。
【請求項2】
前記コンクリート下地上に前記貼代モルタルを塗る工程では、前記貼代モルタルに櫛目を設ける
請求項1に記載の床タイル張り工法。
【請求項3】
前記高さ調整具は、各床タイルの角部と対応する位置に配置される
請求項1または2記載の床タイル張り工法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうち何れか1項に記載の床タイル張り工法に使用する高さ調整具であって、
前記床タイルの裏面に接する接触部と、
前記コンクリート下地に接触する支持部と、
前記接触部と前記支持部とを繋ぎ間隔を調整する調整部とを備える
高さ調整具。
【請求項5】
前記高さ調整具は、前記金属薄板を渦巻き状に巻回して構成された巻回体であり、
前記巻回体の中で、上部が前記接触部であって、下部が前記支持部であって、前記上部と前記下部との間が前記調整部である
請求項4に記載の高さ調整具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床タイル張り工法およびこの工法に用いる床タイルの高さ調整具に関する。
【背景技術】
【0002】
床タイル張り工法では、特許文献1などに示すように、コンクリート下地の上に不陸調整のためタイル用下地を設け、タイル用下地に貼代モルタルで床タイルが張り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4535218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の床タイル張り工法は、タイル用下地をコンクリート下地に設けた後、貼代モルタルで床タイルを貼り付けるようにしている。このため、タイル用下地を養生する期間などが必要で、さらなる工期短縮が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための床タイル張り工法は、床タイルをコンクリート下地に張り付ける床タイル張り工法であって、コンクリート下地上に貼代モルタルを塗るとともに、前記貼代モルタルに前記床タイルの高さを調整する高さ調整具を配置する工程と、前記床タイルを前記貼代モルタル上に設置する工程と、前記床タイルの高さを揃える工程とを備える。前記高さ調整具は、細長い金属薄板を折曲して構成されている。上記構成によれば、高さ調整具が変形することによって床タイルの高さが揃えられ、さらに沈み込みも抑えられる。したがって、従来におけるコンクリート下地上の床タイル下地の層を省くことができる。これにより、工期を短縮ができる。
【0006】
上記床タイル張り工法において、前記コンクリート下地上に前記貼代モルタルを塗る工程では、前記貼代モルタルに櫛目を設けるようにしてもよい。上記構成によれば、床タイルの浮きを抑えるため貼代モルタルに櫛目が設けられるが、この櫛目を構成する山部の背高化を抑えることができる。これにより、貼代モルタルに汎用のモルタルを使用でき、また、汎用の櫛目コテを用いることができる。したがって、床タイルの張り付けが容易となる。
【0007】
上記床タイル張り工法において、前記高さ調整具は、各床タイルの角部と対応する位置に配置されるようにしてもよい。上記構成によれば、床タイルを高さ調整具で安定支持できる。
【0008】
記課題を解決するための、上記床タイル張り工法に使用する高さ調整具は、前記床タイルの裏面に接する接触部と、前記コンクリート下地に接触する支持部と、前記接触部と前記支持部とを繋ぎ間隔を調整する調整部とを備える。上記構成によれば、接触部と支持部とが近づくように変位することで、不陸が調整される。
【0009】
上記高さ調整具において、前記高さ調整具は、前記金属薄板を渦巻き状に巻回して構成された巻回体であり、前記巻回体の中で、上部が前記接触部であって、下部が前記支持部であって、前記上部と前記下部との間が前記調整部であることが好ましい。上記構成によれば、容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、工期短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】床タイル張り工法を説明する図。
図2】床タイル張りの断面図。
図3】台形型の床タイル高さ調整具の斜視図。
図4】細長い板体の第1端部と第2端部を上方に折曲して構成した支持部を備える床タイル高さ調整具の斜視図。
図5図4の変形例としての床タイル高さ調整具の斜視図。
図6】W型の床タイル高さ調整具の斜視図。
図7】渦巻き型の床タイル高さ調整具の斜視図。
図8】中心側の端部に返しを設けた渦巻き型の床タイル高さ調整具の変形例を示す斜視図。
図9】高さ調整具の配置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明が適用された床タイル張り工法について図面を参照して説明する。
本発明が適用された床タイル張り工法は、ショッピングセンター、ホテル、施設エントランスなどの構造物において、セラミックタイルなどの床タイルの床張りする際に用いられる。
【0013】
図1および図2に示すように、床タイル4の張付対象物であるコンクリート下地2上に、床タイル4を貼り付けるための貼代モルタル3によって貼代層が形成される。その後、貼代モルタル3上に、床タイル4が設置される。
【0014】
先ず、コンクリート下地2は、レイタンスなどの汚れが存在するため、これらを除去するための清掃が行われる。その後、コンクリート下地2には、床タイル4の配列に合わせて糸張りがされる。
【0015】
次いで、コンクリート下地2上には、貼代モルタル3によって貼代層が形成される。貼代モルタル3は、一例として、樹脂モルタルによって設けられる。貼代モルタル3は、櫛目コテを用いて、コンクリート下地2上に塗布される。ここで使用される櫛コテは、汎用の櫛コテである。コンクリート下地2上に設けられる櫛目は、一例として、ストライプ形状のパターンを有する。すなわち、櫛目は、互いに平行な山部3aが一方向に直線状に延び、山部3aの両側には、谷部3bが設けられる。床タイル4が配置されたとき、山部3aの潰れた部分は、谷部3bに移動することで、床タイル4の浮き上がりが抑えられる。
【0016】
山部3aは、貼代としての厚さを有している。不陸調整がされたタイル下地上に床タイル4を貼り付ける場合、貼代モルタル3の谷部3bの厚さ(一例としてコンクリート下地2の表面からの高さ)は2mm~5mm程度で良い。これに対して、ここの山部3aの高さは、貼代としての厚さを確保しつつ、高さ調整具10を固定できるように、これよりも厚く設定される。一例として、貼代となる山部3aの厚さ(高さ)は、8mm以上が好ましい。また、山部3aの厚さ(高さ)は、汎用のモルタルであって、かつ、汎用の櫛目コマを使用して成形できる寸法であり、一例として20mm未満、好ましくは15mm未満が好ましい。例えば、厚さが20mmを超える山部では、背高な状態で自立させるために、専用のモルタルや専用の櫛目コマが必要となるからである。なお、山部3aの厚さは、コンクリート下地2の表面から山部3aの頂部までの高さである。
【0017】
貼代モルタル3は、一例として、樹脂モルタルが使用される。樹脂モルタルは、エポキシ樹脂モルタルなど有機質材料を用いたモルタルである。樹脂モルタルは、一般に、接着剤よりも粘性が高く、櫛目を形成しやすい。樹脂モルタルは、セメントモルタルよりも硬化するまでの時間も短い。なお、貼代モルタル3は、セメントモルタルを使用することもできる。
【0018】
なお、床タイル4の裏面にも、接着層として、接着モルタル4aを設けてもよい。接着モルタル4aとしては、貼代モルタル3の材料との兼ね合いで決められるが、貼代モルタル3と同じ樹脂モルタルやセメントモルタルが使用される。
【0019】
貼代モルタル3には、次工程で設置される床タイル4の高さを揃えるための高さ調整具10が配置される。高さ調整具10は、一例として、各床タイル4の各角部に対応する位置に配置される。床タイル4が正方形または長方形であれば、一例として、4つの角部に対応する位置に配置される。これにより、各床タイル4は、高さ調整具10によって高さを揃えることができ、さらに沈み込みが抑えられる。
【0020】
図3に示すように、高さ調整具10は、アルミニウム、ステンレスなどの金属薄板11により所定の環状形状を有するように成形されている。一例として、細長い矩形形状を有した金属薄板11を折曲して、側面視が台形形状を有するように成形される。好ましくは、高さ調整具10は、側面視が等脚台形である。高さ調整具10は、床タイル4の裏面に接する接触部12と、貼代モルタル3に埋められる支持部13と、接触部12と支持部13とを繋ぐ調整部14とを備えている。接触部12は、台形形状のなかの上底部に構成され、支持部13は、下底部に構成され、調整部14は、脚部に構成される。
【0021】
金属薄板11は、一例として、0.3mm~0.5mm程度の厚さ、好ましくは0.48mmである。金属薄板11は、機械加工によって所定形状に加工できることは勿論のこと、作業者が手動工具を使って容易に所定形状に加工できる程度の強度のものが使用される。金属薄板11は、相対する短辺部が第1端部15および第2端部16であって、第1端部15および第2端部16は、下底部に位置し、互いに離間し間隙部17を構成している。高さ調整具10は、床タイル4の大きさや重量などに応じて、その変位し易さなどが設定されるものであり、一例として、金属薄板11の長さや厚さや材質や形状などが設定される。高さ調整具10は、床タイル4を設置する前に、貼代モルタル3に支持部13が埋められる。好ましくは、コンクリート下地2に接するまで貼代モルタル3に埋められる。そして、接触部12が貼代モルタル3から露出した状態とされる。高さ調整具10は、両側面の開口や間隙部17から貼代モルタル3が入り込み、容易に埋められる。
【0022】
床タイル4は、一例として、セラミックタイルである。床タイル4は、一例として、大判タイルである。大判タイルの場合、1枚の面積が0.3m以上、または、2辺の合計が0.9m以上であることが好ましい。また、床タイル4は、一例として、その厚さが10mmであることが好ましいが、20mmのものであっても、30mmのものであってもよい。このような床タイル4は、高さ調整具10が配置された貼代モルタル3上に設置される。床タイル4は、糸張りに合わせて順次並べられる。床タイル4は、角部に高さ調整具10の接触部12が位置するように配置される。
【0023】
すると、山部3aは、頂部近くが床タイル4の重さで潰れ、床タイル4は、高さ調整具10および山部3aで支持される。山部3aの潰れた部分は、山部3aに隣接する谷部3bに広がる。次いで、コンクリート下地2の不陸2aに合わせて、床タイル4の高さを揃えるため、床タイル4は、ゴムハンマーなどでタイル叩きがされ、高さが揃えられる。具体的に、不陸2aによって高く位置している床タイル4が叩かれる。これにより、接触部12の両側の上角θ1が開き、支持部13の底角θ2が狭くなるように調整部14が変位する。すなわち、間隙部17が広がり、接触部12が支持部13に近づくように変位する。このように正常に変位している間、高さ調整具10は、変位量に略比例して強度が高くなっていく。高さ調整具10では、10mm~20mmといった大きな不陸2aがあっても調整可能である。間隙部17が広がろうとするとき、貼代モルタル3がその抵抗力となる。これにより、床タイル4の高さが揃えられ、その状態が維持され、沈み込みが抑えられる。そして、貼代モルタル3が硬化することで、その状態が維持される。その後、目地入れが行われる。
【0024】
例えば、図1に示すように、(P+2)位置において、貼代モルタル3を塗る工程を行っているとき、その一つ前の(P+1)位置では、床タイル4を配置する工程が行われ、さらにそのひとつ前の(P)位置では、タイル叩きの工程が行われる。このように、複数の工程が同時に行われるため、床タイル張り工法が効率的なものとなる。
【0025】
以上のような床タイル張り工法は、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1-1)床タイル4をコンクリート下地2上に張り付ける場合、従来、コンクリート下地2上に、不陸調整のため、タイル用下地を設け、タイル用下地に貼代モルタルで床タイル4が張り付けられる。このような従来工法に比べ、本実施形態の工法は、高さ調整具10で床タイル4が支持されることで、タイル用下地を省くことができる。これにより、工期短縮を実現できる。
【0026】
(1-2)床タイル4が大判であっても、高さ調整具10は、床タイル4の沈み込みを抑えることができる。
(1-3)高さ調整具10は、互いに離間する第1端部15と第2端部16の間から内側に貼代モルタル3が入り込み易くなる。
【0027】
(1-4)参考例として、コンクリート下地2上に、貼代層を設け、高さ調整具10を用いることなく、床タイル4を張り付ける工法がある。この工法では、貼代モルタル3に波線形状の山部を成形するが、この工法では、山部が不陸調整のため背高となる。このため、山部を成形するため、粘性の高い専用モルタルや専用櫛目コテが必要となり、汎用性に乏しい。これに対して、本実施形態では、参考例の山部ほど背高とならないことから、貼代モルタル3に汎用のモルタルを使用することができ、また、汎用の櫛目コテを使用できる。したがって、床タイル張り工法が容易なものとなる。
【0028】
(1-5)各床タイル4は、高さ調整具10によって各角部が支持されることで、コンクリート下地2に安定支持される。
(1-6)高さ調整具10における接触部12が支持部13に近づくように変位することによって不陸2aを調整することができる。そして、タイル用下地を設けなくても、大きな不陸2aも調整することができる。
【0029】
(1-7)高さ調整具10は、台形形状を有しているので、床タイル4の荷重によって、接触部12が支持部13に近づく方向に変位し易くなる。また、床タイル4の沈み込みが抑えられる。
【0030】
(1-8)高さ調整具10は、金属薄板11を折曲するだけで容易に製造することができる。
なお、上記実施形態は、さらに、以下のように適宜変更して実施することもできる。
【0031】
・高さ調整具10は、側面視が台形形状に限定されるものではなく、楕円形状、三角形状、五角形状、六角形状などの多角形であってもよい。また、側面視が台形形状の場合において、上下を逆にして、接触部12を、台形形状のなかの下底部とし、支持部13は、上底部としてもよい。この場合、床タイル4が配置されると、その荷重で第1端部15および第2端部16が近接する方向に変位する。
【0032】
・さらに、高さ調整具10は、以下のように構成してもよい。
図4は、高さ調整具10の変形例である。この高さ調整具30も、細長い金属薄板を折曲して構成されるものであって、接触部32と、支持部33と、調整部34とを備えている。高さ調整具30も、高さ調整具10と同様、側面視が等脚台形形状を有しているが、接触部32となる上底部が高さ調整具10より短い。また、支持部33を構成する下底部は、第1端部35を上方に折曲し第2端部36も上方に折曲して構成されている。2つの支持部33の間は、間隙部37が設けられている。これにより、2つの支持部33は、頂部に間隙が設けられた三角形状を有している。すなわち、各支持部33は、第1端部35と調整部34を構成する傾斜辺との間、および、第2端部36と調整部34を構成する傾斜辺との間に間隙が設けられる。このような高さ調整具30は、細長い金属薄板を金型を使って折曲だけで簡単に製造することができる。
【0033】
このような構成を有した高さ調整具30も、高さ調整具10と同様に、コンクリート下地2に接するまで貼代モルタル3に埋められる。そして、接触部32が貼代モルタル3から露出した状態とされる。高さ調整具30は、両側面の開口や間隙部37から貼代モルタル3が入り込み、容易に埋められる。床タイル4が配置されると、床タイル4の高さを揃えるため、床タイル4は、ゴムハンマーなどでタイル叩きがされ、高さが揃えられる。このとき、間隙部37が広がり、接触部32が支持部33に近づくように変位する。ここで、第1端部35および第2端部36は、調整部34の裏面に突き当たるまで変位可能となる。このように正常に変位している間、変位量に略比例して強度が高くなっていく。
【0034】
なお、図5は、図4の更なる変形例であって、側面視が二等辺三角形形状を有している。ここでの接触部32は、上部に位置する頂点が接触部32となる。このような図5に示す高さ調整具30によっても、図4の高さ調整具と同様な作用効果を得ることができる。
【0035】
図6は、さらに高さ調整具10の変形例である。この高さ調整具40も、細長い薄板を折曲して構成されるものであって、接触部42と、支持部43と、調整部44とを備えている。高さ調整具40は、側面視がW形状を有している。そして、接触部42は、W形状の中の上側の3つの頂部である。このうち外側の2つの接触部42は、第1端部45と第2端部46である。支持部43は、W形状の中の下側の2つの頂部である。そして、調整部44は、接触部42と支持部43とを繋ぐ4つの傾斜辺である。ここで、各支持部43を構成する2つの傾斜辺で構成される開き角θ3は、60°~90°が好ましい。60°より小さい開き角(例えば45°)では、左右外側の傾斜辺が床タイル4を叩いたときに、その荷重で内側に折曲してしまうことがあるからである。また、90°より大きい開き角では、床タイル4からの荷重に対して開き易くなり過ぎるからである。このような高さ調整具40は、細長い薄板を金型を使って折曲だけで簡単に製造することができる。
【0036】
このような構成を有した高さ調整具40も、高さ調整具10と同様に、コンクリート下地2に接するまで貼代モルタル3に埋められる。そして、接触部32が貼代モルタル3から露出した状態とされる。高さ調整具30は、両側面の開口や間隙部47から貼代モルタル3が入り込み、容易に埋められる。床タイル4が配置されると、床タイル4の高さを揃えるため、床タイル4は、ゴムハンマーなどでタイル叩きがされ、高さが揃えられる。このように正常に変位している間、2つの支持部43の間である間隙部47が広がり、接触部42が支持部43に近づくように変位する。そして、変位量に略比例して強度が高くなっていく。
【0037】
図7は、さらに高さ調整具10の変形例である。この高さ調整具50も、細長い板体を折曲して構成した巻回体であって、接触部52と、支持部53と、調整部54とを備えている。高さ調整具50は、側面視が渦巻き形状を有している。ここでの渦巻き形状は、上下方向に若干潰れた渦巻き形状である。渦巻き形状は、細長い板体において、第1端部55が渦の中心側に位置し、第2端部56が渦の外周側に位置している。接触部52は、渦巻き上部の湾曲面であり、支持部53は、渦巻き下部の湾曲面である。調整部54は、接触部52と支持部53の間であって、内周部における渦巻き部分である。ここでは、支持部53には、第2端部56が位置する。
【0038】
このような構成を有した高さ調整具50も、高さ調整具10と同様に、コンクリート下地2に接するまで貼代モルタル3に埋められる。そして、接触部52が貼代モルタル3から露出した状態とされる。高さ調整具50は、両側面の開口から貼代モルタル3が入り込み、容易に埋められる。床タイル4が配置されると、床タイル4の高さを揃えるため、床タイル4は、ゴムハンマーなどでタイル叩きがされ、高さが揃えられる。このとき、調整部54の渦巻きの上下が潰れ、接触部52が支持部53に近づくように変位する。このように正常に変位している間、変位量に略比例して強度が高くなっていく。
【0039】
このような高さ調整具50は、細長い板体を渦巻き状に巻回して構成されるものであるから、現場で容易に製造することができる。高さ調整具50は、巻き数を多くするほど、外径が大きくでき、また、巻回時の巻きの強さを調整することで、潰れやすさを調整することができる。
【0040】
ところで、高さ調整具50は、外形が楕円形上であることから、貼代モルタル3に埋められているといっても、床タイル4から加わる荷重の大きさや方向によっては位置がずれてしまうおそれがある。そこで、渦巻き状に巻回される細長い金属薄板において、第2端部56の周辺には、複数の貫通孔を形成するようにしてもよい。これにより、貫通孔には、貼代モルタル3が食い込み、高さ調整具50は、床タイル4からの荷重に対して位置がずれにくくなる。
【0041】
高さ調整具50に設ける貫通孔は、細長い金属薄板の全体に設けてもよいし、外周面を構成する部分にだけ設けるようにしてもよい。すなわち、少なくとも外周に位置する第2端部56から1周分設けるようにしてもよい。
【0042】
また、図8に示すように、渦巻き型の高さ調整具50において、渦巻きの中心側に位置する第1端部55を内側、すなわち中心方向に折曲し返し57を設けるようにしてもよい。例えば、返し57は、内角θ4が90°または90°弱程度となるように折曲する。このような構成の場合、床タイル4がゴムハンマーなどで叩かれると、調整部54の渦巻きの上下が潰れ、返し57の直ぐ上の薄板が返し57に接触するまで、接触部52が支持部53に近づくように変位する。その後、返し57は、返し57の上側に位置する薄板に押されることで徐々に鋭角に折曲していく。返し57は、上側の薄板を支持して強度を補強する補強片として機能する。
【0043】
なお、高さ調整具50としては、貫通孔を備える構成と図8に示す返し57を備える構成とを組み合わせてもよい。
図9に示すように、高さ調整具50は、床タイル4の角部に配置される。この場合において、隣り合う角部において、高さ調整具50の向きを変えて配置するようにしてもよい。すなわち、互いに隣り合う2つの角部のうちの1つの角部である第1角部では、中心軸線59が一方の対角線方向となる第1方向に延びるように配置する。第1角部に隣接する第2角部では、中心軸線59が他方の対角線方向、すなわち第1方向に対して直交する第2方向に延びるように配置する。これにより、床タイル4は、高さ調整具50の位置ずれによって配置位置をずれにくくできる。また、床タイル4の荷重を分散させることができる。
【0044】
なお、図3図6に示す高さ調整具10,30,40も図9のような配置にしてもよい。この場合、高さ調整具10,30,40は、細長い金属薄板における、短辺の中央を通り長手方向に延びる中心線が中心軸線59のように位置するように配置される。
【0045】
また、1つの施工現場では、図3図8に示した高さ調整具10,30,40,50の何れか1種類を使ってもよいし、複数種類を組み合わせて使うようにしてもよい。また、高さ調整具10,30,40,50は、工場において、複数の高さのものを製造しておき、不陸2aに合わせて適用な高さの高さ調整具10,30,40,50を使用するようにしてもよい。さらに、適当な高さ調整具10,30,40,50がないとき、適当な高さのものを現場で製造するようにしてもよい。
【0046】
高さ調整具50の位置ずれは、不陸2aの大きい箇所で生じやすいので、位置ずれのための構成(図7図10)は、不陸2aの大きいところで適用することが特に好ましい。
・床タイル4は、高さ調整具10で床タイル4の角部を支持するだけでなく、その他の位置、例えば中央部も高さ調整具10で支持されるようにしてもよい。床タイル4は、少なくとも3カ所を高さ調整具10で支持されればよい。
【0047】
・貼代モルタル3で設けられる櫛目は、ストライプ形状のパターンの代わりに波形状の山部3aが平行に設けられたパターンであってもよい。
・貼代モルタル3で設けられる貼代層において、櫛目を省略してもよい。
【0048】
・床タイル4の形状は、正方形に限定されるものではなく、三角形、五角形、六角形などの多角形であってもよい。
・床タイル4は、セラミックタイルの他、セラミックタイルよりも質量が高く、重い大理石や御影石などの石材を使用した石材タイルであってもよい。
【0049】
・床タイル4は、大判タイルに限定されるものではない。床タイル4は、屋内床、屋外床の何れであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
2…コンクリート下地
2a…不陸
3…貼代モルタル
3a…山部
3b…谷部
4…床タイル
4a…接着モルタル
10…高さ調整具
11…金属薄板
12…接触部
13…支持部
14…調整部
15…第1端部
16…第2端部
17…間隙部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9