(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168508
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】メンテナンス装置及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074022
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】福永 靖幸
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EC23
2C056EC33
2C056FA13
2C056JA01
2C056JA09
2C056JB04
2C056JB07
2C056JB08
(57)【要約】
【課題】ノズル面に押圧されたキャップユニットの撓みを抑制することを目的とする。
【解決手段】メンテナンス装置30は、インクジェットヘッドのノズル面Nに接触するブレード82を所定方向にスライドさせてノズル面を清掃するワイプユニット80と、所定方向の両端部を支持され、ワイプユニット80の上に重ねられた状態でノズル面に押圧されるキャップユニット70と、を備え、ワイプユニット80は、支持板81と、ブレード82を有し、支持板81上をスライドするブレードユニット83と、ブレードユニット83に設けられ、ノズル面へのキャップユニット70の押圧時に、キャップユニット70の両端部の間の部分に接触する、又は、キャップユニット70に所定量の撓みが生じた場合にキャップユニット70の両端部の間の部分に接触する、接触部83Cと、を備える。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドのノズル面に接触するブレードを所定方向にスライドさせて前記ノズル面を清掃するワイプユニットと、
前記所定方向の両端部を支持され、前記ワイプユニットの上に重ねられた状態で前記ノズル面に押圧されるキャップユニットと、を備え、
前記ワイプユニットは、
支持板と、
前記ブレードを有し、前記支持板上をスライドするブレードユニットと、
前記ブレードユニットに設けられ、前記ノズル面への前記キャップユニットの押圧時に、前記キャップユニットの前記両端部の間の部分に接触する、又は、前記キャップユニットに所定量の撓みが生じた場合にのみ前記キャップユニットの前記両端部の間の部分に接触する、接触部と、を備えることを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項2】
前記ノズル面に前記キャップユニットを押圧する前に、前記キャップユニットの前記所定方向の中央に対応する位置に移動するように前記ブレードユニットを制御する制御部を備えることを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項3】
前記ブレードユニットは、前記支持板に接触して前記所定方向に転動する車輪を備え、
前記接触部は、前記車輪の上方に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のメンテナンス装置。
【請求項4】
前記接触部は、車輪であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のメンテナンス装置。
【請求項5】
前記接触部は、前記ノズル面の清掃時に所定の箇所に接触することで前記ワイプユニットの高さ方向の位置決めを行う位置決め部材を兼ねることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のメンテナンス装置。
【請求項6】
前記インクジェットヘッドと、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のメンテナンス装置と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス装置及びメンテナンス装置を備えるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドのノズルのメンテナンスを行うメンテナンス装置が知られている。メンテナンス装置は、インクジェットヘッドのノズル面に付着したインクを掻き取るワイプユニットと、ノズル面を覆うキャップを有するキャップユニットと、ワイプユニットとキャップユニットをヘッドの下方にスライドさせる機構を備える(例えば、特許文献1乃至5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-291481号公報
【特許文献2】特開2015-85601号公報
【特許文献3】特開2018-130829号公報
【特許文献4】特開2018-138340号公報
【特許文献5】特開2018-187822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フルカラーで大判の高速な印刷が可能なインクジェット記録装置の場合、色毎に複数のインクジェットヘッドを有するため、ヘッドユニットとキャップユニットが大型化し、キャップを支持する支持板に大きな荷重がかかる。すると、支持板はスライド方向と交差する方向の両端部を支持されているため、支持板の中央部が下がる方向の撓みが生じ、中央部のキャップがノズル面から離れてしまう。キャップをばねで押圧すればキャップの接触は保たれるが、中央部では端部と比べて押圧力が弱くなってしまう。また、中央部の撓みが、撓みがない場合のばねとキャップの圧縮変型量を上回ると、中央部のキャップがノズル面から離れてしまう。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、ノズル面に押圧されたキャップユニットの撓みを抑制することのできるメンテナンス装置及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るメンテナンス装置は、インクジェットヘッドのノズル面に接触するブレードを所定方向にスライドさせて前記ノズル面を清掃するワイプユニットと、前記所定方向の両端部を支持され、前記ワイプユニットの上に重ねられた状態で前記ノズル面に押圧されるキャップユニットと、を備え、前記ワイプユニットは、支持板と、前記ブレードを有し、前記支持板上をスライドするブレードユニットと、前記ブレードユニットに設けられ、前記ノズル面への前記キャップユニットの押圧時に、前記キャップユニットの前記両端部の間の部分に接触する、又は、前記キャップユニットに所定量の撓みが生じた場合にのみ前記キャップユニットの前記両端部の間の部分に接触する、接触部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記メンテナンス装置は、前記ノズル面に前記キャップユニットを押圧する前に、前記キャップユニットの前記所定方向の中央に対応する位置に移動するように前記ブレードユニットを制御する制御部を備えていてもよい。
【0008】
前記ブレードユニットは、前記支持板に接触して前記所定方向に転動する車輪を備え、
前記接触部は、前記車輪の上方に設けられていてもよい。
【0009】
前記接触部は、車輪であってもよい。
【0010】
前記接触部は、前記ノズル面の清掃時に所定の箇所に接触することで前記ワイプユニットの高さ方向の位置決めを行う位置決め部材を兼ねていてもよい。
【0011】
また、本発明に係るインクジェット記録装置は、前記インクジェットヘッドと、前記のいずれかのメンテナンス装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ノズル面に押圧されたキャップユニットの撓みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの内部の構成を模式的に示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る作像ユニットのインクジェットヘッドの配置を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドの断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るインク供給部を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るキャップユニットの斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るワイプユニットの斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るメンテナンス装置の斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るメンテナンス装置の斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るメンテナンス装置の斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るメンテナンス装置の斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るメンテナンス装置の斜視図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るメンテナンス装置の斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るメンテナンス装置の断面図(分解図)である。
【
図14】本発明の一実施形態に係るメンテナンス装置の側面図(分解図)である。
【
図15】本発明の一実施形態に係るキャップユニット装着時のメンテナンス装置の断面図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係るキャップユニット装着時のメンテナンス装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係るプリンター1(インクジェット記録装置の一例)及びメンテナンス装置30について説明する。
【0015】
最初に、画像形成システム100の全体の構成について説明する。
図1は、プリンター1の内部の構成を模式的に示す正面図である。
図2は、作像ユニット6のインクジェットヘッド12の配置を示す斜視図である。
図3は、インクジェットヘッド12の断面図である。
図4は、インク供給部60を模式的に示す図である。以下、
図1における紙面手前側を画像形成システム100の正面側(前側)とし、左右の向きは画像形成システム100を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0016】
プリンター1は、直方体状のハウジング3を備える。ハウジング3内の下部には、普通紙、コート紙等の枚葉のシートSが収容される給紙カセット4と、給紙カセット4からシートSを右方に送り出す給紙ローラー5が設けられている。給紙カセット4の上方には、シートSを吸着してY方向に搬送する搬送ユニット7が設けられている。搬送ユニット7の上方には、インクを吐出して画像を形成する作像ユニット6が設けられている。ハウジング3の右上部には、画像が形成されたシートSを排出する排紙ローラー8と、排出されたシートSが積載される排紙トレイ9が設けられている。
【0017】
ハウジング3の内部には、給紙ローラー5から搬送ユニット7と作像ユニット6との間隙を経て排紙ローラー8に至る搬送路10が設けられている。搬送路10は、シートSを通過させる間隙を空けて互いに対向する板状部材を主体として形成されており、シートSを挟持して搬送する搬送ローラー17が搬送方向Yの複数箇所に設けられている。作像ユニット6よりも搬送方向Y上流側には、レジストローラー18が設けられている。
【0018】
搬送ユニット7は、無端の搬送ベルト21と、支持板23と、吸引部24と、を備える。搬送ベルト21は、多数の通気孔(図示省略)を有し、駆動ローラー22と従動ローラー25に巻き掛けられている。支持板23は、多数の通気孔を有し、上面が搬送ベルト21の内面に接触している。吸引部24は、支持板23の通気孔と搬送ベルト21の通気孔を介して空気を吸引することでシートSを搬送ベルト21に吸着させる。モーター等の駆動部(図示省略)により駆動ローラー22が反時計回り方向に駆動されることで搬送ベルト21が反時計回り方向に回転し、搬送ベルト21に吸着されたシートSがY方向に搬送される。
【0019】
作像ユニット6は、ヘッドユニット11Y、11Bk、11C、11M(ヘッドユニット11と総称する)を備え、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクを吐出する(
図1、2参照)。ヘッドユニット11Y、11Bk、11C、11Mには、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクが充填されたインクコンテナ20Y、20Bk、20C、20M(インクコンテナ20と総称する)が接続されている(
図1参照)。ヘッドユニット11Y、11Bk、11C、11Mは、ハウジング3に固定されたフレーム6Fに支持されている。
【0020】
ヘッドユニット11は、1つ以上のインクジェットヘッド12、例えば、千鳥に配置された複数のインクジェットヘッド12を備える(
図2乃至4参照)。インクジェットヘッド12は、前後方向を長手方向とする直方体状の筐体12Hと、筐体12Hの底部に設けられたノズルプレート12Pと、を備える。ノズルプレート12Pは、前後方向に並ぶ多数のノズルを備え(図示省略)、各ノズルの吐出口がノズルプレート12Pの下面であるノズル面12Nに設けられている。各ノズルには圧電素子(図示省略)が設けられ、筐体12Hの内部には圧電素子を駆動する駆動回路(図示省略)が設けられている。
【0021】
プリンター1は、インク供給部60を備える(
図4参照)。同図では、1色のインクに対応するインク供給部60が示されているが、本実施形態では4色のインクを用いるため、4系統の同様のインク供給部60が設けられている。プリンター1は、インクコンテナ20が装着されるコンテナ装着部61と、インクを濾過するフィルター62と、インクコンテナ20からフィルター62を介してインクを吸引するポンプ63と、ポンプ63から送り出されたインクを貯留するサブタンク64と、サブタンク64に貯留されたインクをインクジェットヘッド12に供給するポンプ65と、を備える。
【0022】
制御部2は、演算部と記憶部とを備える。演算部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の記憶媒体を含む。演算部は、記憶部に記憶されている制御プログラムを読み出して実行することで各種処理を実施する。なお、制御部2は、ソフトウェアを用いない集積回路によって実現されてもよい。
【0023】
プリンター1の基本的な画像形成動作は、次のとおりである。外部のコンピューター等からプリンター1に画像形成ジョブが入力されると、給紙ローラー5が給紙カセット4から搬送路10にシートSを送り出し、回転が停止されたレジストローラー18がシートSの斜行を補正する。レジストローラー18が所定のタイミングで搬送ユニット7にシートSを送り出すと、搬送ユニット7が搬送ベルト21にシートSを吸着してY方向に搬送する。制御部2がシートSの搬送と同期させてインクジェットヘッド12の各ノズルに対応する階調データを駆動回路に供給すると、駆動回路が階調データに応じた駆動信号を圧電素子に供給することでノズルからインク滴が吐出され、シートSに画像が形成される。排紙ローラー8は、画像が形成されたシートSを排紙トレイ9に排出する。
【0024】
次に、メンテナンス装置30の構成について説明する。
図5は、キャップユニット70の斜視図である。
図6は、ワイプユニット80の斜視図である。
図7乃至12は、メンテナンス装置30の斜視図である。なお、
図7乃至12では、キャップユニット70とワイプユニット80の細部は省略されている。
【0025】
[ワイプユニット]
ワイプユニット80(
図6参照)は、支持板81と、インクジェットヘッド12のノズル面12Nに接触するブレード82を有し、支持板81に対してスライドするブレードユニット83と、を備える。
【0026】
支持板81は、板状の部材であり、その上面は、前後両端部から中央に向かって低くなるように傾斜している。支持板81の上面の最も低い箇所には、インクを排出する排出口が設けられている(図示省略)。排出口には、吸引ポンプ68と廃インクタンク69が接続されている(
図4参照)。支持板81の左右両端部には、前後方向を長手方向とするレール81Rが設けられている。支持板81の上面の前後両端部には、上方に突出した接続部81Cが設けられている。
【0027】
ブレードユニット83は、ブレード82と、ブレード82を支持する板状の底部83Bと、底部83Bの左右両端部の上方に設けられた側壁部83Sと、を備える。ブレード82は、ゴム等で形成された可撓性を有する板状の部材である。インクジェットヘッド12の各々に対応するブレード82が底部83Bの上面に千鳥に配置されている。左右の側壁部83Sの前後両端部付近には、左右方向を軸方向とする軸に支持された車輪83Wが設けられている。ブレードユニット83には、駆動部(図示省略)が設けられている。駆動部は、モーターと、ギア列、無端ベルト、ラックアンドピニオン、ボールねじ等の伝達機構と、を備え、車輪83Wに駆動力を伝達する。レール81Rは、前後方向に車輪83Wの転動を案内する。
【0028】
[キャップユニット]
キャップユニット70(
図5参照)は、キャップ72と、キャップ72を支持する支持板71と、を備える。インクジェットヘッド12の各々に対応するキャップ72が支持板71の上面に千鳥に配置されている。キャップ72は、ゴム等の樹脂で形成され、上方が開口した凹形をなしている。キャップ72は、圧縮ばね(図示省略)を介して支持板71に取り付けられている。キャップ72がノズル面12Nに押圧されると、圧縮ばねとキャップ72自体の弾性変形により、キャップ72とノズル面12Nとが密着する。
【0029】
キャップユニット70の支持板71の下面には、ワイプユニット80の接続部81Cに対応する箇所に、下方に突出した接続部71Cが設けられている。接続部71Cの先端は、上方に凹んでおり、ワイプユニット80の接続部81Cが嵌合する。キャップユニット70の支持板71の上面の接続部71Cに対応する箇所には、位置決めピン71Pが設けられている。位置決めピン71Pは、キャップユニット70がノズル面12Nに押圧される場合に作像ユニット6に接触することで、キャップユニット70の高さ方向の位置決めを行う。
【0030】
[フレーム、キャリッジ]
フレーム31は、ハウジング3に固定され、上方と下方と左方が開口しており、キャリッジ32と搬送ユニット7を支持する。キャリッジ32は、上方と下方と左方が開口しており、ワイプユニット80とキャップユニット70を支持する。キャップユニット70は、ワイプユニット80の上方に配置されている。
【0031】
[昇降機構]
フレーム31には、昇降機構が設けられている(図示省略)。昇降機構は、モーターと、ギア列、無端ベルト、ラックアンドピニオン、ボールねじ等の伝達機構と、を備え、フレーム31に対して搬送ユニット7を昇降させる。昇降機構は、搬送ユニット7を、画像形成を行う場合の画像形成位置(
図7参照)と、画像形成位置よりも下方の下方退避位置(
図8参照)と、の間で昇降させる。画像形成位置においては、搬送ベルト21とノズル面12Nとの間隔が1mm程度となるように搬送ユニット7が位置決めされる。下方退避位置においては、搬送ベルト21の上面とノズル面12Nとの間にキャップユニット70及びワイプユニット80を移動させることが可能な空間が形成される。
【0032】
[スライド機構]
フレーム31には、スライド機構が設けられている(図示省略)。スライド機構は、左右方向を長手方向とするレールと、モーターと、ギア列、無端ベルト、ラックアンドピニオン、ボールねじ等の伝達機構と、を備え、レールに沿ってキャリッジ32を左右方向にスライドさせる。
【0033】
ワイプユニット80は、キャリッジ32に支持されており、スライド機構によりキャリッジ32とともに左右方向にスライド可能である。キャップユニット70もキャリッジ32に支持されているが、キャリッジ32はキャップユニット70に対して左右方向にスライド可能である。この構成により、キャップユニット70とワイプユニット80とをキャリッジ32により対向位置(作像ユニット6に対向する位置)に移動させる移動形態(
図9参照)と、キャップユニット70を側方退避位置(作像ユニット6に対向しない位置)に残してワイプユニット80のみをキャリッジ32により対向位置に移動させる移動形態(
図11参照)と、が可能である。
【0034】
対向位置において、キャップユニット70とワイプユニット80は、搬送ユニット7を用いて昇降可能である。具体的には、搬送ユニット7は、キャップユニット70のみ又はキャップユニット70とワイプユニット80の両方を搬送ユニット7の上部に載せた状態でキャリッジ32の内部を昇降可能である。昇降機構は、対向位置(
図9参照)とキャップ位置(
図10参照)との間でキャップユニット70を昇降させる。キャップ位置とは、キャップ72がノズル面12Nに押圧される位置である。また、昇降機構は、対向位置(
図11参照)とワイプ位置(
図12参照)との間でワイプユニット80を昇降させる。ワイプ位置とは、ブレード82の上端がノズル面12Nに接触する位置である。
【0035】
[洗浄液タンク]
インクジェットヘッド12には、洗浄液を供給する洗浄液供給部13が設けられている(
図4参照)。洗浄液供給部13は、洗浄液を収容する洗浄液タンク13Tと、ノズルプレート12Pの後側に設けられた接続部材13Cと、洗浄液タンク13Tと接続部材13Cとをつなぐパイプ13Pと、を備える。接続部材13Cには、上下方向に貫通した供給口13Aが設けられている。洗浄液タンク13Tの高さ調整、洗浄液タンク13T内の圧力調整等によって、供給口13Aの下端部に凸形のメニスカスが形成され、供給口13Aから膨出した洗浄液をブレード82が掻き取ることで、ノズル面12Nに洗浄液が供給される。ノズルプレート12Pの前側には、前方に向かって底面が高くなるように傾斜した傾斜部12Sが設けられている。傾斜部12Sの左右方向の幅は、ノズル面12Nと同等である。
【0036】
次に、メンテナンス装置30の基本的な動作について説明する。以下の動作は、制御部2がメンテナンス装置30の各部を制御することで実行される。
【0037】
画像形成を行う場合(
図7参照)、キャップユニット70とワイプユニット80がキャリッジ32とともに側方退避位置に配置され、搬送ユニット7が画像形成位置に配置される。
【0038】
パージ処理とワイプ処理を行う場合、制御部2は、搬送ユニット7を下方退避位置に移動させ(
図8参照)、キャップユニット70を側方退避位置に残したまま、キャリッジ32によりワイプユニット80を対向位置に移動させる(
図11参照)。このとき、ブレードユニット83は、キャップユニット70の前後方向の中央の初期位置に配置されているため、制御部2は、ブレードユニット83をスライド可能範囲の後端のスライド開始位置に移動させ、搬送ユニット7を上昇させることでワイプユニット80をワイプ位置に移動させる(
図12参照)。続いて、制御部2は、インクジェットヘッド12のノズル内の圧力を上昇させてインクを吐出させ、洗浄液供給部13により供給口13Aから洗浄液を膨出させ、ブレードユニット83を前方にスライドさせる。すると、ブレード82の先端部が洗浄液を掻き取り、ノズル面12Nに接触して撓みながら、ノズル面12Nに付着したインクを除去する。インクは洗浄液で希釈される。
【0039】
次に、作像ユニット6にキャップユニット70を装着する場合、制御部2は、搬送ユニット7を下方退避位置に下降させることでワイプユニット80を対向位置に移動させ、ブレードユニット83を初期位置に移動させる(
図11参照)。次に、制御部2は、キャリッジ32によりワイプユニット80を側方退避位置に移動させる(
図8参照)。続いて、制御部2は、キャリッジ32によりキャップユニット70とワイプユニット80を対向位置に移動させ(
図9参照)、搬送ユニット7を上昇させることでワイプユニット80を介してキャップユニット70をキャップ位置に移動させる(
図10参照)。こうして、キャップ72がノズル面12Nに装着される。
【0040】
上記の構成に加えて、メンテナンス装置30は、以下の構成を備えている。
図13は、メンテナンス装置30の断面図(分解図)である。
図14は、メンテナンス装置30の側面図(分解図)である。
【0041】
メンテナンス装置30は、インクジェットヘッド12のノズル面12Nに接触するブレード82を所定方向にスライドさせてノズル面12Nを清掃するワイプユニット80と、所定方向の両端部を支持され、ワイプユニット80の上に重ねられた状態でノズル面12Nに押圧されるキャップユニット70と、を備え、ワイプユニット80は、支持板81と、ブレード82を有し、支持板81上をスライドするブレードユニット83と、ブレードユニット83に設けられ、ノズル面12Nへのキャップユニット70の押圧時に、キャップユニット70の両端部の間の部分に接触する、又は、キャップユニット70に所定量の撓みが生じた場合にキャップユニット70の両端部の間の部分に接触する、接触部83Cと、を備える。
【0042】
ブレードユニット83の左右の側壁部83Sの車輪83Wの上方には、接触部83Cが設けられている(
図6、13乃至16参照)。この例では、車輪83Wの真上よりも前後方向の中央側の位置に接触部83Cが設けられているが、車輪83Wの真上に接触部83Cが設けられていてもよく、車輪83Wの真上よりも前後方向の端部側の位置に接触部83Cが設けられていてもよい。接触部83Cの上端部は、側壁部83Sの上端部よりも上方に突き出ている。接触部83Cは、左右方向を軸方向とする軸に支持された車輪である。接触部83Cは、ノズル面12Nの清掃時に所定の箇所に接触することでワイプユニット80の高さ方向の位置決めを行う位置決め部材を兼ねる。所定の箇所とは、作像ユニット6のフレーム6Fの下端部等、ノズル面12Nとの高さ方向の位置関係が一定に保たれている箇所である。
【0043】
次に、キャップユニット70装着時のメンテナンス装置30の動作について説明する。
図15は、キャップユニット70装着時のメンテナンス装置30の断面図である。
図16は、キャップユニット70装着時のメンテナンス装置30の側面図である。
【0044】
前述のとおり、キャップユニット70を装着する場合、制御部2は、搬送ユニット7を下方退避位置に下降させることでワイプユニット80を対向位置に移動させ、ブレードユニット83を初期位置に移動させる(
図11参照)。次に、制御部2は、キャリッジ32によりワイプユニット80を側方退避位置に移動させる(
図8参照)。続いて、制御部2は、キャリッジ32によりキャップユニット70とワイプユニット80を対向位置に移動させ(
図9参照)、搬送ユニット7を上昇させることでワイプユニット80を介してキャップユニット70をキャップ位置に移動させる(
図10参照)。こうして、キャップ72がノズル面12Nに装着される。
【0045】
より詳細に説明すると、対向位置において昇降機構により搬送ユニット7を上昇させた場合、搬送ユニット7によりワイプユニット80が押し上げられ、ワイプユニット80の接続部81Cがキャップユニット70の接続部71Cに嵌合し、ワイプユニット80を介してキャップユニット70が押し上げられる。その後、キャップ72の上端部がヘッドユニット11の下面に接触し、続いて、位置決めピン71Pの上端部がヘッドユニット11の下面に接触することで、キャップユニット70の上昇が停止する。このとき、キャップ72を支持する圧縮ばねとキャップ72自体の弾性変形によりキャップ72がノズル面12Nに密着する(
図15、16参照)。
【0046】
ここで、従来は、キャップユニット70の両端部(接続部71C)の間の部分が支持されていなかったため、支持板71の前後方向の中央部が下がる方向の撓みが生じ、中央部のキャップ72の押圧力が弱くなったり、ノズル面12Nからキャップ72が離れたりするという問題があった。
【0047】
これに対して、本実施形態は、ノズル面12Nへのキャップユニット70の押圧時に接触部83Cとキャップユニット70との間に所定量の間隙が設けられており、キャップユニット70に所定量の撓みが生じた場合に、接触部83Cがキャップユニット70の両端部(接続部71C)の間の部分に接触するように構成されている。ここで、所定量の撓みとは、例えば、キャップ72とノズル面12Nとの密閉が保たれて外気が進入しない最大の撓み量である。この構成によれば、所定量の撓みが生じた場合に、接触部83Cがキャップユニット70の両端部の間の部分に接触するから、所定量よりも大きな撓みを防ぐことができる。その結果、キャップ72とノズル面12Nとの密閉が失われて外気が進入することを防ぐことができ、ノズル内のインクの粘度上昇や乾燥を防ぐことができる。
【0048】
なお、所定量の撓みは、キャップ72とノズル面12Nとの密閉が保たれて外気が進入しない最大の撓み量未満であってもよい。また、接触部83Cは、ノズル面12Nへのキャップユニット70の押圧時にキャップユニット70に撓みが生じなくてもキャップユニット70の両端部の間の部分に接触するように構成されていてもよい。
【0049】
以上説明した本実施形態に係るメンテナンス装置30によれば、インクジェットヘッド12のノズル面12Nに接触するブレード82を所定方向にスライドさせてノズル面12Nを清掃するワイプユニット80と、所定方向の両端部を支持され、ワイプユニット80の上に重ねられた状態でノズル面12Nに押圧されるキャップユニット70と、を備え、ワイプユニット80は、支持板81と、ブレード82を有し、支持板81上をスライドするブレードユニット83と、ブレードユニット83に設けられ、ノズル面12Nへのキャップユニット70の押圧時に、キャップユニット70の両端部の間の部分に接触する、又は、キャップユニット70に所定量の撓みが生じた場合にキャップユニット70の両端部の間の部分に接触する、接触部83Cと、を備える。この構成によれば、接触部83Cを備えていない場合と比べて、キャップユニット70の撓みを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るメンテナンス装置30によれば、ノズル面12Nにキャップユニット70を押圧する前に、キャップユニット70の所定方向の中央に対応する位置に移動するようにブレードユニット83を制御する制御部2を備えるから、キャップユニット70の端部側にブレードユニット83を配置する場合と比べて、キャップユニット70の撓みを抑制する効果を大きくすることができる。
【0051】
また、本実施形態に係るメンテナンス装置30によれば、ブレードユニット83は、支持板81に接触する車輪83Wを備え、接触部83Cは、車輪83Wの上方に設けられている。この構成によれば、接触部83Cが車輪83Wの上方でない位置に設けられている場合と比べて、ブレードユニット83の撓みが抑制されるから、キャップユニット70の撓みを抑制する効果を大きくすることができる。
【0052】
また、本実施形態に係るメンテナンス装置30によれば、接触部83Cは、車輪であるから、接触部83Cとキャップユニット70との摩擦抵抗が低減され、キャップユニット70の撓みを抑制する効果を大きくすることができる。
【0053】
また、本実施形態に係るメンテナンス装置30によれば、接触部83Cは、ノズル面12Nの清掃時に所定の箇所に接触することでワイプユニット80の高さ方向の位置決めを行う位置決め部材を兼ねるから、部品数の増加を抑制することができる。
【0054】
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0055】
上記実施形態では、左右の側壁部83Sの前後方向の2箇所に接触部83Cが設けられている例が示されたが、前後方向の1箇所に接触部83Cが設けられていてもよい。その場合、前後の車輪83Wから等距離の位置に接触部83Cが設けられていてもよい。
【0056】
上記実施形態では、接触部83Cが車輪である例が示されたが、接触部83Cは車輪でなくてもよい。例えば、接触部83Cは、側壁部83Sの上端部から上方に突出した突起でもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 プリンター(インクジェット記録装置)
2 制御部
12 インクジェットヘッド
12N ノズル面
30 メンテナンス装置
70 キャップユニット
80 ワイプユニット
81 支持板
82 ブレード
83 ブレードユニット
83W 車輪
83C 接触部