(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168518
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】入巾木、建築物の壁、建築物、および、建築物の壁の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20221031BHJP
E04F 19/04 20060101ALI20221031BHJP
E04F 19/02 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
E04F13/08 101Q
E04F19/04 101G
E04F19/04 Z
E04F19/02 F
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074039
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】植村 敏正
(72)【発明者】
【氏名】名塚 彰
(72)【発明者】
【氏名】堤 栄子
(72)【発明者】
【氏名】淺尾 力哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA41
2E110AB04
2E110AB23
2E110AB26
2E110AB36
2E110BC14
2E110DC21
2E110GA12Y
2E110GB01W
2E110GB06W
2E110GB42W
2E110GB62W
2E110GB62Y
(57)【要約】
【課題】入巾木の取り付け前、または、その後に、壁材を所定位置に取り付けすることに寄与できる、入巾木、建築物の壁、建築物、および、建築物の壁の施工方法を提供する。
【解決手段】壁2は、基礎3に取り付けられる支持部材20と、支持部材20に載せられる壁材30と、壁材30の下に配置される入巾木40と、を備える。支持部材20は、室内に向く第1側面23を有する。入巾木40は、支持部材20の第1側面23に取り付けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎または壁構成部材に取り付けられる支持部材と、
前記支持部材に載せられる壁材と、
前記壁材の下に配置される入巾木と、を備え、
前記支持部材は、室内に向く第1側面を有し、
前記入巾木は、前記支持部材の前記第1側面に取り付けられる
建築物の壁。
【請求項2】
前記入巾木は、接着剤によって前記支持部材に取り付けられる
請求項1に記載の建築物の壁。
【請求項3】
前記入巾木は、室内に向く表面と、前記表面の反対側の裏面と、前記裏面から突出する複数の脚部と、を有し、
前記脚部は、前記支持部材の前記第1側面に接触する
請求項2に記載の建築物の壁。
【請求項4】
前記入巾木は、前記入巾木の下面と前記建築物の床材との間の少なくとも一部分に隙間が設けられるように配置される
請求項1~3のいずれか一項に記載の建築物の壁。
【請求項5】
前記入巾木は、前記支持部材に沿う本体部と、前記本体部の上端から延びる突出部とを備え、
前記本体部の厚さは、前記突出部の厚さよりも小さい
請求項1~4のいずれか一項に記載の建築物の壁。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の前記建築物の壁を備える、建築物。
【請求項7】
本体部と、
前記本体部に交差する方向に前記本体部の上端から延びる突出部と、を備え、
前記本体部は、表面と、前記表面の反対側の裏面とを有し、
前記本体部の前記裏面には、複数の脚部が設けられる
入巾木。
【請求項8】
前記本体部の厚さは、前記突出部の厚さよりも小さい
請求項7に記載の入巾木。
【請求項9】
支持部材の上面が水平となるように、基礎または壁構成部材に前記支持部材を取り付ける第1工程と、
壁材の外面が前記支持部材の第1側面よりも外方に位置するように、前記壁材を前記支持部材に載せる第2工程と、
入巾木を前記支持部材に取り付ける第3工程と、を含む、
建築物の壁の施工方法。
【請求項10】
前記第3工程において、接着剤によって前記入巾木を前記支持部材に取り付ける
請求項9に記載の建築物の壁の施工方法。
【請求項11】
前記第1工程において、床材が直接または間接的に配置されるベース面から前記支持部材の下面が離れるように、前記支持部材を前記基礎または前記壁構成部材に取り付ける
請求項9または10に記載の建築物の壁の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入巾木、建築物の壁、建築物、および、建築物の壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入巾木を有する壁の構造が開示されている。入巾木は、壁材と床材との境界に設けられる。
例えば、壁の施工は、次のように行われる。入巾木を横胴縁に仮固定する。壁材が入巾木の壁材保護部に載るように、壁材を仮固定する。固定止具によって、壁材と入巾木とを横胴縁に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来施工では、施工時、壁材を入巾木に載せて仮固定する。このため、入巾木は、壁材の仮固定よりも先に、入巾木を固定する必要がある。このように、従来構造の壁の場合、施工手順に制限がある。この点で、入巾木、建築物の壁、建築物、および、建築物の壁の施工方法に改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する建築物の壁は、基礎または壁構成部材に取り付けられる支持部材と、前記支持部材に載せられる壁材と、前記壁材の下に配置される入巾木と、を備え、前記支持部材は、室内に向く第1側面を有し、前記入巾木は、前記支持部材の前記第1側面に取り付けられる。この構成によれば、入巾木の取り付け前に、または、入巾木の取り付け後に、壁材を所定位置に取り付けることができる。
【0006】
(2)上記(1)の建築物の壁において、前記入巾木は、接着剤によって前記支持部材に取り付けられる。入巾木をビスで固定する場合、入巾木が変形する虞がある。この点、上記構成によれば、入巾木の取り付けに伴う入巾木の変形を抑制できる。これによって、壁において入巾木の外観を向上できる。
【0007】
(3)上記(2)の建築物の壁において、前記入巾木は、室内に向く表面と、前記表面の反対側の裏面と、前記裏面から突出する複数の脚部と、を有し、前記脚部は、前記支持部材の前記第1側面に接触する。この構成によれば、支持部材の第1側面に入巾木の脚部が接触することによって、支持部材と入巾木との間に空間を設けることができる。この空間に接着剤を保持できる。このように、接着剤によって支持部材に入巾木を固定する場合に、支持部材に沿うように入巾木を配置できる。
【0008】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つの建築物の壁において、前記入巾木は、前記入巾木の下面と前記建築物の床材との間の少なくとも一部分に隙間が設けられるように配置される。この構成によれば、床材と入巾木とが互いに干渉し合う部分を少なくできる。これによって、床材と入巾木との接触に起因して生じる、入巾木の変形を抑制できる。
【0009】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つの建築物の壁において、前記入巾木は、前記支持部材に沿う本体部と、前記本体部の上端から延びる突出部とを備え、前記本体部の厚さは、前記突出部の厚さよりも小さい。この構成によれば、突出部の厚さが所定の厚さに設定されている場合において、本体部の厚さが突出部の厚さと等しい入巾木に比べて、入巾木を軽量にできる。このため、入巾木の自重に起因して入巾木が外れることを抑制できる。
【0010】
(6)上記課題を解決する建築物は、上記(1)~(5)のいずれか1つの前記建築物の壁を備える。この構成によれば、入巾木の取り付け前、または、入巾木の取り付け後に、壁材を所定位置に取り付けることができる。このように、壁の施工手順に制限が少ないため、建築物の建築の効率化を図ることができる。例えば、床材の敷設作業の完了を待たずに壁の施工を行うことができる。
【0011】
(7)上記課題を解決する入巾木は、本体部と、前記本体部に交差する方向に前記本体部の上端から延びる突出部と、を備え、前記本体部は、表面と、前記表面の反対側の裏面とを有し、前記本体部の前記裏面には、複数の脚部が設けられる。
【0012】
この構成によれば、支持部材に入巾木の脚部が接触することによって、支持部材と入巾木との間に空間を設けることができる。この空間に接着剤を保持できる。このように、接着剤によって支持部材に入巾木を固定する場合に、接着剤のはみだしが抑制されるため、入巾木を有する壁の仕上がりを向上できる。このようにして、上記構成の入巾木によれば、壁材を所定位置に取り付けた後、簡単に入巾木を取り付けることができ、壁の仕上がりに寄与できる。
【0013】
(8)上記(7)の入巾木において、前記本体部の厚さは、前記突出部の厚さよりも小さい。この構成によれば、突出部の厚さが所定の厚さに設定されている場合において、本体部の厚さが突出部の厚さと等しい入巾木に比べて、入巾木を軽量にできる。
【0014】
(9)上記課題を解決する建築物の壁の施工方法は、支持部材の上面が水平となるように、基礎または壁構成部材に前記支持部材を取り付ける第1工程と、壁材の外面が前記支持部材の第1側面よりも外方に位置するように、前記壁材を前記支持部材に載せる第2工程と、入巾木を前記支持部材に取り付ける第3工程と、を含む。この構成によれば、入巾木の取り付け前、または、入巾木の取り付け後に、壁材を所定位置に取り付けることができる。
【0015】
(10)上記(9)の建築物の壁の施工方法であって、前記第3工程において、接着剤によって前記入巾木を前記支持部材に取り付ける。入巾木をビスで固定する場合、入巾木が変形する虞がある。この点、上記構成によれば、入巾木の変形を抑制できる。
【0016】
(11)上記(9)または(10)の建築物の壁の施工方法であって、前記第1工程において、床材が直接または間接的に配置されるベース面から前記支持部材の下面が離れるように、前記支持部材を前記基礎または前記壁構成部材に取り付ける。
【0017】
ベース面が水平に形成されていない場合、または、ベース面が粗い場合、ベース面に支持部材が置かれると、支持部材の上面が水平にならない場合がある。この点、上記構成では、ベース面から支持部材の下面が離れているため、支持部材の上面を水平にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の入巾木、建築物の壁、建築物、および、建築物の壁の施工方法によれば、入巾木の取り付け前、または、入巾木の取り付け後に、壁材を所定位置に取り付けすることに、寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】第1実施形態について、
図1のIII-III線に沿う壁の断面図。
【
図4】第1実施形態について、
図3のIV-IV線に沿う壁の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
図1~
図5を参照して、第1実施形態について、建築物1、および、建築物1の壁2について説明する。
建築物1は、基礎3と、壁2とを備える。壁2は、室内と室外とを仕切る外壁と、室内に設けられる内壁とを含む。外壁は、室外に向く面と、室内に向く面とを有する。内壁を構成する壁面は、いずれも室内に向く。本実施形態の壁2は、室内に向く面を有する。本実施形態の壁2の説明は、室内に向く面を含む部分の構造に関する。
【0021】
本実施形態において、内方DAおよび外方DBは、次のように定義される。内方DAは、壁材30の外面31に垂直な方向であって、壁2の外側から壁材30に向かう方向と定義される。外方DBは、内方DAと反対方向である。
【0022】
本実施形態において、建築物1の壁2は、室内に設けられる壁である。例えば、本実施形態の壁2の構造は、建築物1のロビーの壁2、ロビーに設けられる仕切壁、客室または会議室が並ぶフロアの廊下の壁、に適用される。本実施形態の壁2の構造が適用される建築物の例として、ホテル、旅館、オフィスビル、会館、学校、美術館、映画館、病院等が挙げられる。
【0023】
図1は、ホテルのロビーを示す透視図である。本実施形態の壁2の構造は、受付の後ろの壁2、廊下の壁2、ロビーを囲む壁2に適用されている。
図2は、ホテルの客室の廊下を示す透視図である。この例では、本実施形態の壁2の構造は、客室が並ぶフロアの廊下の壁2に適用されている。
【0024】
図3および
図4に示されるように、建築物1の壁2は、支持部材20と、支持部材20に載せられる壁材30と、壁材30の下に配置される入巾木40と、を備える。
【0025】
支持部材20は、壁2において、壁2と床7との境界線に沿うように構成される。一例では、支持部材20は、合板によって構成される。支持部材20は、基礎3または壁構成部材5に取り付けられる。壁構成部材5は、建築物1の骨組みとしての壁構造を構成する部材である。支持部材20が取り付けられる壁構成部材5として、木製柱、スタッド6、および、壁板35が挙げられる。
【0026】
図1に示される壁2は、1階の壁2である。1階の壁2では、支持部材20は、基礎3の立ち上がり部4の側面に接着剤11で取り付けられる。
支持部材20は、壁2を構成するスタッド6の側面または木製柱の側面に取り付けられてもよい。壁構成部材5が、壁材30を支持する壁板35を有する場合には、支持部材20は、壁板35に取り付けられてもよい。
【0027】
支持部材20は、壁材30を載せることができる上面21と、上面21と反対側にある下面22とを有する。支持部材20が基礎3または壁構成部材5に取り付けられた状態において、支持部材20は、下面22が床7の床面に対向するように配置される。支持部材20は、室内に向く第1側面23と、第1側面23の反対側にある第2側面24とを有する。
【0028】
壁材30は、支持部材20に載せられた状態で、ビスで壁構成部材5に固定される。
壁材30には、壁紙32が貼られてもよい。壁材30は、石膏ボード、木材、合板、または、樹脂によって構成される。
【0029】
入巾木40は、接着剤11によって支持部材20に取り付けられる。入巾木40は、支持部材20の第1側面23に取り付けられる。入巾木40は、入巾木40の下面46と建築物1の床材9との間の少なくとも一部分に隙間SAが設けられるように配置される。
【0030】
入巾木40は、金属、木材、石材、窯業系部材、または、樹脂によって構成される。一例では、入巾木40は、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成される。一例では、入巾木40は、壁材30の保護のため、壁材30よりも高剛性の部材で構成される。
【0031】
図5に示されるように、入巾木40は、支持部材20に沿う本体部41と、本体部41の上端から延びる突出部42と、を備える。
本体部41は、室内に向く表面43と、表面43の反対側の裏面44と、裏面44から突出する複数の脚部45と、を有する。本体部41の厚さは、入巾木40が支持部材20に取り付けられたときに、本体部41の表面43が壁材30の外面31よりも内方DAに位置するように、設定される。
【0032】
突出部42は、本体部41の表面43から突出する。突出部42は、本体部41に交差するように構成される。一例では、突出部42は、本体部41に直交する。突出部42の長さは、入巾木40が支持部材20に取り付けられたときに、突出部42の外側端面42Aが壁材30の外面31よりも外方DBに位置するように、設定される。突出部42において、壁材30の外面31よりも外方DBに突出する部分は、壁2の意匠を構成する。
【0033】
一例では、本体部41の厚さは、突出部42の厚さよりも小さい。本体部41の厚さは、脚部45における内側端面45Aと、本体部41の表面43との間の距離として定義される。
【0034】
脚部45は、入巾木40が支持部材20に取り付けられたときに、支持部材20の第1側面23に接触する。一例では、本体部41には、3個の脚部45が設けられる。本体部41において、3個の脚部45は互いに平行である。3個の脚部45の長さは、ともに等しい。3個の脚部45のうちの1つは、本体部41の上端に沿うように設けられる。3個の脚部45のうちの他の1つは、本体部41の下端に沿うように設けられる。3個の脚部45のうちの残りの1つは、本体部41において、他の2個の脚部45の間に位置するように、設けられる。支持部材20の第1側面23に入巾木40の脚部45が接触することによって、支持部材20と入巾木40との間に空間が設けられる。この空間に接着剤11が塗布される。
【0035】
床7は、基礎3の上に設けられる床下地8と、床下地8に敷かれる床材9とを備える。床材9の端部は、入巾木40の下に配置される。床材9の例として、タイル、石材、絨毯、木製の板材、樹脂シートなどが挙げられる。
【0036】
建築物1の壁2の施工方法について説明する。
以下では、建築物1の1階における壁2の施工について説明する。建築物1の壁2の施工方法は、次の第1工程~第3工程を含む。
【0037】
第1工程では、基礎3のベース面3Aから支持部材20の下面22が離された状態で、支持部材20の上面21が水平となるように、支持部材20を基礎3または壁構成部材5に取り付ける。ベース面3Aは、床材9が直接または間接的に配置される面である。具体的には、ベース面3Aは、床下地8の上面、または、床下地8が配置される基礎3の上面を示す。本実施形態では、ベース面3Aは、基礎3の上面である。
【0038】
本実施形態では、基礎3に床下地8が形成される前に、支持部材20が、基礎3の立ち上がり部4に接着剤11で取り付けられる。支持部材20が基礎3の立ち上がり部4に取り付けられた状態において、支持部材20の下面22は、基礎3のベース面3Aから離れている。
【0039】
第2工程では、壁材30の外面31が支持部材20の第1側面23よりも外方DBに位置するように、壁材30を支持部材20に載せる。次いで、壁材30を、ビスで、建築物1の壁構成部材5に固定する。壁構成部材5の一例は、スタッド6である。
【0040】
第3工程では、入巾木40を支持部材20に取り付ける。
具体的には、第3工程において、接着剤11によって入巾木40を支持部材20に取り付ける。入巾木40は、床下地8の形成後、支持部材20に取り付けられてもよい。また、入巾木40は、床下地8に床材9を配置した後、支持部材20に取り付けられてもよい。
【0041】
第1工程よりも後のいずれかの工程において、基礎3のベース面3Aに床下地8を形成する。床下地8は、モルタルで形成される。床下地8は、合板で形成されてもよい。モルタルによって床下地8を形成する場合、支持部材20の下部はモルタルで埋められる(
図4参照)。支持部材20の下部がモルタルに埋まることによって、支持部材20が強固に固定される。この後、ベース面3Aに直接または間接的に床材9を敷く。この床材9に敷設において、入巾木40の下面46と床材9との間の少なくとも一部分に隙間SAが設けられるように、床材9を敷く。床材9の端面は、支持部材20に突き当てられる。床材9の一例は、タイルである。
【0042】
本実施形態の作用を説明する。
従来の壁では、入巾木を土台にして壁材を取り付ける。この場合、入巾木を固定しなければ、壁材を取り付けることができない。一方、壁材の取り付けを入巾木の取り付けよりも前に行いたい場合がある。例えば、床7の施工を、入巾木の取り付けの後に行いたい場合があり、このような場合は、作業効率から、入巾木の取り付けだけを後にして、前もって壁材の取り付けを行いたい場合がある。しかし、従来の壁の構造では、壁材の取り付けを、入巾木の取り付けの前に行うことが出来ない。これに対して、実施形態の壁2では、壁材30は、支持部材20によって支持される。このため、入巾木40の取り付けよりも前に、壁材30の取り付けを行うことができる。
【0043】
本実施形態の効果を説明する。
(1)建築物1の壁2は、支持部材20と、支持部材20に載せられる壁材30と、壁材30の下に配置される入巾木40と、を備える。入巾木40は、支持部材20の第1側面23に取り付けられる。この構成によれば、入巾木40の取り付け前、または、入巾木40の取り付け後に、壁材30を所定位置に取り付けることができる。
【0044】
(2)入巾木40は、接着剤11によって支持部材20に取り付けられる。入巾木40をビスで固定する場合、入巾木40が変形する虞がある。この点、上記構成によれば、入巾木40の取り付けに伴う入巾木40の変形を抑制できる。これによって、壁2において入巾木40の外観を向上できる。また、入巾木40の固定のためにビスまたは釘を使用しないため、壁2の下部のデザイン性を向上できる。
【0045】
(3)入巾木40は、室内に向く表面43と、表面43の反対側の裏面44と、裏面44から突出する複数の脚部45と、を有する。脚部45は、支持部材20の第1側面23に接触する。この構成によれば、支持部材20の第1側面23に入巾木40の脚部45が接触することによって、支持部材20と入巾木40との間に空間を設けることができる。この空間に接着剤11を保持できる。このように、接着剤11によって支持部材20に入巾木40を固定する場合に、支持部材20に沿うように入巾木40を配置できる。
【0046】
(4)入巾木40は、入巾木40の下面46と建築物1の床材9との間の少なくとも一部分に隙間SAが設けられるように配置される。この構成によれば、床材9と入巾木40とが互いに干渉し合う部分を少なくできる。これによって、床材9と入巾木40との接触に起因して生じる、入巾木40の変形を抑制できる。
【0047】
(5)入巾木40は、支持部材20に沿う本体部41と、本体部41の上端から延びる突出部42とを備える。本体部41の厚さは、突出部42の厚さよりも小さい。この構成によれば、突出部42の厚さが所定の厚さに設定されている場合において、本体部41の厚さが突出部42の厚さと等しい入巾木40に比べて、入巾木40を軽量にできる。このため、入巾木40の自重に起因して入巾木40が外れることを抑制できる。
【0048】
(6)建築物1は、上記の壁2を備える。この構成によれば、入巾木40の取り付け前、または、入巾木40の取り付け後に、壁材30を所定位置に取り付けることができる。このように、壁2の施工手順に制限が少ないため、建築物1の建築の効率化を図ることができる。例えば、床材9の敷設作業の完了を待たずに壁2の施工を行うことができる。
【0049】
(7)入巾木40は、本体部41と、本体部41に交差する方向に本体部41の上端から延びる突出部42と、を備える。本体部41の裏面44には、複数の脚部45が設けられる。
【0050】
この構成によれば、支持部材20に入巾木40の脚部45が接触することによって、支持部材20と入巾木40との間に空間を設けることができる。この空間に接着剤11を保持できる。このように、接着剤11によって支持部材20に入巾木40を固定する場合に、接着剤11のはみだしが抑制されるため、入巾木40を有する壁2の仕上がりを向上できる。このようにして、上記構成の入巾木40によれば、壁材30を所定位置に取り付けた後、簡単に入巾木40を取り付けることができ、壁2の仕上がりに寄与できる。
【0051】
(8)入巾木40において、本体部41の厚さは突出部42の厚さよりも小さい。この構成によれば、突出部42の厚さが所定の厚さに設定されている場合において、本体部41の厚さが突出部42の厚さと等しい入巾木40に比べて、入巾木40を軽量にできる。
【0052】
(9)建築物1の壁2の施工方法は、第1工程~第3工程を含む。第1工程は、支持部材20の上面21が水平となるように、基礎3または壁構成部材5に支持部材20を取り付ける。第2工程は、壁材30の外面31が支持部材20の第1側面23よりも外方DBに位置するように、壁材30を支持部材20に載せる。第3工程は、入巾木40を支持部材20に取り付ける。この構成によれば、入巾木40の取り付け前、または、入巾木40の取り付け後に、壁材30を所定位置に取り付けることができる。
【0053】
(10)第3工程において、接着剤11によって入巾木40を支持部材20に取り付ける。入巾木40をビスで固定する場合、入巾木40が変形する虞がある。この点、上記構成によれば、入巾木40の変形を抑制できる。
【0054】
(11)第1工程において、床材9が直接または間接的に配置される基礎3のベース面3Aから支持部材20の下面22が離れるように、支持部材20を基礎3または壁構成部材5に取り付ける。
【0055】
基礎3のベース面3Aが水平に形成されていない場合、または、ベース面3Aが粗い場合、ベース面3Aに支持部材20が置かれると、支持部材20の上面21が水平にならない場合がある。この点、上記構成では、ベース面3Aから支持部材20の下面22が離れているため、支持部材20の上面21を水平にすることができる。
【0056】
<第2実施形態>
図6を参照して、第2実施形態の建築物1および壁2について説明する。第2実施形態の壁2において、第1実施形態と同じ構成には第1実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0057】
建築物1は、基礎3と、壁2とを備える。
建築物1の壁2は、支持部材20と、支持部材20に載せられる壁材30と、壁材30の下に配置される入巾木40と、を備える。
【0058】
支持部材20は、壁2において、壁2と床7との境界線に沿うように構成される。一例では、支持部材20は、合板によって構成される。支持部材20は、基礎3または壁構成部材5に取り付けられる。
【0059】
図6に示される壁2は、1階の壁2である。1階の壁2では、支持部材20は、基礎3の立ち上がり部4の側面に接着剤11で取り付けられる。支持部材20は、基礎3の立ち上がり部4の側面に、接着剤11とビスとによって取り付けられてもよい。支持部材20の取り付けにビスを用いる場合、接着剤11が硬化する前に、支持部材20に壁材30を載せることが出来るため、工期の短縮に寄与する。支持部材20は、基礎3の立ち上がり部4の側面にビスだけで取り付けられてもよい。
【0060】
支持部材20は、壁2を構成するスタッド6または木製柱に取り付けられてもよい。壁2が、壁材30を支持する壁板35を有する場合には、支持部材20は、壁板35に取り付けられてもよい。
【0061】
支持部材20は、壁材30を載せることができる上面21と、上面21と反対側にある下面22とを有する。支持部材20は、室内に向く第1側面23と、第1側面23の反対側にある第2側面24とを有する。支持部材20が基礎3または壁構成部材5に取り付けられた状態において、支持部材20は、下面22が床7の床面に対向するように配置される。本実施形態では、支持部材20は、下面22と床7の床面との間に床材9が配置できるように、床面から所定の間隔をあけた高さに配置される。支持部材20は、支持部材20の下面22と建築物1の床材9との間の少なくとも一部分に隙間SAが設けられるように配置される。支持部材20の下面22は、入巾木40の下面46よりも1mm以上高い位置に位置してもよい。この構成によって、支持部材20の下面22が入巾木40によって確実に隠される。壁材30は、支持部材20に載せられた状態で、ビスで壁構成部材5に固定される。壁材30には、壁紙32が貼られてもよい。
【0062】
入巾木40は、接着剤11によって支持部材20に取り付けられる。入巾木40は、支持部材20の第1側面23に取り付けられる。入巾木40は、入巾木40の下面46と建築物1の床材9との間の少なくとも一部分に隙間SAが設けられるように配置される。
【0063】
入巾木40は、支持部材20に沿う本体部41と、本体部41の上端から延びる突出部42と、を備える。入巾木40は、第1実施形態の入巾木40から脚部45が省略された構造を有する。入巾木40は、下部に、第1実施形態の入巾木40と同様の脚部45を有してもよい。
【0064】
入巾木40と支持部材20の第1側面23との間の間隔は、基礎3の立ち上がり部4の側面と支持部材20との間の間隔よりも大きい。このように、入巾木40と支持部材20の第1側面23との間の間隔を大きく確保することによって、内方DAおよび外方DBにおける入巾木40の位置調整幅を大きくできる。入巾木40の位置調整幅が大きいことによって、壁材30の位置が多少ずれたとしても、入巾木40を壁材30に対して適切な位置に配置できる。また、建築物1のデザインに応じて、入巾木40の突出部42のうちで壁材30から突出する出代の長さを調整できる。
【0065】
床7は、基礎3の上に設けられる床下地8と、床下地8に敷かれる床材9とを備える。壁2に近い床材9は、床材9の端部が支持部材20および壁材30の下に位置するように配置される。これによって、壁際において陰影が深くなり、壁際は、すっきりとした印象を与える。
【0066】
壁2の施工方法の手順は、第1実施形態の壁2の施工方法の手順に準ずる。各工程では、第2実施形態の壁2の構造に適した作業が行われる。例えば、第3工程では、入巾木40を支持部材20に取り付ける際、壁材30に対して、入巾木40の位置が調整される。入巾木40の位置は、接着剤11の厚みの調整、および、支持部材20に入巾木40を取り付けた後の入巾木40の押し付けによって、調整される。
【0067】
本実施形態の効果を説明する。
本実施形態の壁2は、第1実施形態の壁2の上記(1)~(11)((3)および(7)を除く)に準じた効果を有する。本実施形態の壁2は、さらに次の効果を有する。
【0068】
(1)壁2の近くに配置される床材9は、床材9の端部が、支持部材20および入巾木40の下に位置するように配置される。この構成によれば、壁際のデザイン性を向上できる。
【0069】
例えば、床材9がタイルの場合、壁2に近いタイルにおける壁際の目地を、支持部材20および入巾木40の下に隠すことができる。これによって、壁際を美しく見せることができる。
【0070】
(2)入巾木40は、接着剤11によって支持部材20に取り付けられる。この構成によれば、入巾木40の固定のためにビスまたは釘を使用しないため、壁2の下部のデザイン性を向上できる。
【0071】
(3)入巾木40と支持部材20の第1側面23との間の間隔は、基礎3または壁構成部材5と支持部材20との間の間隔よりも大きい。このように、入巾木40と支持部材20の第1側面23との間の間隔を大きく確保することによって、壁材30に対して、内方DAまたは外方DBへ入巾木40の位置調整幅を大きくできる。
【0072】
(4)壁2の施工方法において、第3工程において、入巾木40を支持部材20に取り付ける際、壁材30に対して、入巾木40の位置を調整する。この構成によれば、壁材30に対して入巾木40の突出部42が出ている出代の寸法を調整できる。
【0073】
<第3実施形態>
図7を参照して、第3実施形態の建築物1および壁2について説明する。第3実施形態の壁2において、第1実施形態と同じ構成には第1実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0074】
建築物1は、壁2と、壁構成部材5と、を備える。壁構成部材5は、基礎3に設けられる。壁構成部材5は、スタッド6と壁板35とによって構成される。
図7では、基礎3は省略されている。
【0075】
建築物1の壁2は、支持部材20と、支持部材20に載せられる壁材30と、壁材30の下に配置される入巾木40と、を備える。
支持部材20は、壁2において、壁2と床7との境界線に沿うように構成される。一例では、支持部材20は、合板によって構成される。支持部材20は、壁構成部材5に取り付けられる。
【0076】
図7に示される壁2は、1階の壁2である。支持部材20は、壁構成部材5としての壁板35にビスで取り付けられる。支持部材20と壁構成部材5との間に接着剤が塗布されてもよいし、接着剤が省略されてもよい。
【0077】
支持部材20が壁板35に取り付けられた状態において、床材9の上面から1mm以上の距離を隔てた高さに配置される。
入巾木40は、接着剤11によって支持部材20に取り付けられる。入巾木40の構造は、第1実施形態と同じである。一例では、接着剤11は、支持部材20と入巾木40との間において、上下の2箇所に分かれるように塗布される。入巾木40は、上下方向において入巾木40と床材9との間に隙間SAが設けられるように配置される。接着剤11の量を調整することによって、内方DAおよび外方DBに入巾木40の位置が調整される。また、支持部材20と入巾木40との間において、上側の接着剤11の量と、下側の接着剤11の量との比率を調整することによって、入巾木40の傾きが調整される。
【0078】
床7は、床材9を備える。床材9の一例はタイルである。壁2に近い床材9は、床材9の端部が入巾木40の下に位置するように配置される。これによって、壁際において陰影が深くなり、壁際は、すっきりとした印象を与える。壁2の施工方法の手順は、第1実施形態の壁2の施工方法の手順に準ずる。
【0079】
本実施形態の壁2によれば、第1実施形態の壁2の効果、または、第2実施形態の壁2の効果に準じた効果を奏する。また、次の効果を奏する。
支持部材20は、壁構成部材5にビスで固定される。このため、接着剤11で支持部材20を固定する場合は、接着剤11が硬化するまで支持部材20に壁材30を載せることが出来ないが、上記構成によれば、支持部材20に壁材30を載せることが出来るため、工期を短縮できる。
【0080】
<変形例>
上記各実施形態は、建築物1の壁2が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。壁2は、上記実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の一例を示す。
【0081】
・
図8に示されるように、建築物1の壁2において、支持部材20は、スタッド6に固定されてもよい。
図8の壁2は、ホテルの客室フロアの廊下の壁2である。
壁2は、床7に立てられるスタッド6と、壁材30と、支持部材20と、入巾木40とを備える。支持部材20は、接着剤11でスタッド6の下部に固定される。支持部材20は、ビスでスタッド6の下部に固定されてもよい。支持部材20は、ビスおよび接着剤11でスタッド6の下部に固定されてもよい。支持部材20の下面22は、床下地8のベース面8Aから離れている。床下地8の上には、床材9として絨毯が敷かれる。支持部材20の下に床材9が配置できるように、支持部材20は床面から所定の高さに取り付けられてもよい。壁材30は、支持部材20に載せられて、ビスでスタッド6に固定される。入巾木40は、接着剤11によって支持部材20に取り付けられる。
【0082】
・
図9に示されるように、建築物1の壁2において、支持部材20は、壁板35に固定されてもよい。
図9の壁2は、ホテルの客室フロアの廊下の壁2である。床7の構造は、
図8に示される床7の構造と同じである。
【0083】
壁2は、床7に立てられるスタッド6と、壁板35と、壁材30と、支持部材20と、入巾木40と、を備える。壁板35は、スタッド6に固定される。支持部材20は、接着剤11で壁板35の下部に固定される。支持部材20は、ビスで壁板35の下部に固定されてもよい。支持部材20は、ビスおよび接着剤11で壁板35の下部に固定されてもよい。支持部材20の下に床材9が配置できるように、支持部材20は床面から所定の高さに取り付けられてもよい。壁材30は、支持部材20に載せられて、ビスで壁板35に固定される。入巾木40は、接着剤11によって支持部材20に取り付けられる。
【符号の説明】
【0084】
SA…隙間、1…建築物、2…壁、3…基礎、3A…ベース面、5…壁構成部材、8A…ベース面、9…床材、11…接着剤、20…支持部材、21…上面、22…下面、23…第1側面、30…壁材、31…外面、40…入巾木、41…本体部、42…突出部、43…表面、44…裏面、45…脚部、46…下面。