(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168522
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/655 20060101AFI20221031BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20221031BHJP
H01R 13/516 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
H01R13/655
H01R13/52 301E
H01R13/516
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074044
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三田村 知夫
(72)【発明者】
【氏名】安藤 基泰
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FB10
5E021FB20
5E021FC21
5E021FC40
5E021GB02
5E021LA09
5E021LA14
5E021LA21
5E087FF12
5E087FF18
5E087JJ09
5E087LL03
5E087LL04
5E087LL12
5E087LL13
5E087MM05
5E087MM08
5E087MM12
5E087RR29
(57)【要約】
【課題】部品点数を削減できるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ20は、電線30と、電線30の端部に接続される端子40と、端子40を保持するコネクタハウジング50と、電線30の外周に取り付けられるとともに、電線30の外周面とコネクタハウジング50の内周面とに密着するシール部材75とを有する。コネクタ20は、コネクタハウジング50の外周を囲うとともに電線30が貫通する筒状のシールドシェル80を有する。シールドシェル80は、シール部材75に向かって突出するとともに、コネクタハウジング50からのシール部材75の抜け止めを行う突出部90を有する。突出部90は、コネクタハウジング50の内部に配置される先端部91を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線の端部に接続される端子と、
前記端子を保持するコネクタハウジングと、
前記電線の外周に取り付けられるとともに、前記電線の外周面と前記コネクタハウジングの内周面とに密着するシール部材と、
前記コネクタハウジングの外周を囲うとともに前記電線が貫通する筒状のシールドシェルと、を有し、
前記シールドシェルは、前記シール部材に向かって突出するとともに、前記コネクタハウジングからの前記シール部材の抜け止めを行う第1突出部を有し、
前記第1突出部は、前記コネクタハウジングの内部に配置される先端部を有するコネクタ。
【請求項2】
前記シールドシェルは、前記電線に向かって突出するとともに前記電線に接触可能な第2突出部を有し、
前記第2突出部は、前記電線の長さ方向において、前記第1突出部よりも前記シール部材から離れて設けられる請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記電線は、芯線と、前記芯線を囲うとともに絶縁性を有する絶縁被覆とを有し、
前記絶縁被覆を囲うとともに導電性を有する筒状の電磁シールド部材を更に有し、
前記シールドシェルは、前記電線の長さ方向において前記第1突出部とは反対側に突出するとともに、前記電線が貫通する筒部を有し、
前記電磁シールド部材は、前記筒部の外周面に電気的に接続されており、
前記第2突出部は、前記筒部の内周面に設けられる請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記シールドシェルは、前記シールドシェルの軸方向の一方側の開口を塞ぐ閉塞壁を有し、
前記第1突出部は、前記閉塞壁から前記シール部材に向かって突出しており、
前記第1突出部は、前記電線が貫通する第1貫通孔を有し、
前記筒部は、前記閉塞壁から前記シール部材とは前記電線の長さ方向において反対側に向かって突出しており、
前記筒部は、前記第1貫通孔と連通する第2貫通孔を有し、
前記第2突出部は、前記第2貫通孔の内周面に設けられており、
前記第2突出部は、前記第1貫通孔の内周面よりも前記第2貫通孔の径方向内側に突出する請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1突出部の先端部は、前記第1貫通孔の開口幅を広げるように形成される第1保護部を有し、
前記筒部のうち前記閉塞壁とは反対側の端部は、前記第2貫通孔の開口幅を広げるように形成される第2保護部を有する請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
複数の前記電線を有し、
前記シールドシェルは、複数の前記電線が個別に貫通する複数の前記筒部を有し、
複数の前記電線の各々は、前記芯線と、前記絶縁被覆と、前記電磁シールド部材と、前記電磁シールド部材を囲うとともに絶縁性を有するシースとを有し、
複数の前記電磁シールド部材は、複数の前記筒部の外周面にそれぞれ電気的に接続される請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記シールドシェルの外周に取り付けられる筒状の保護部材を更に有し、
前記シールドシェルは、前記コネクタハウジングの外周を被覆する筒状の第1被覆部と、前記コネクタハウジングの外周を被覆するとともに前記第1被覆部よりも外形の小さい筒状の第2被覆部とを有し、
前記保護部材は、前記第2被覆部の外周に接続される請求項3から請求項6のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記筒部の外周面に前記電磁シールド部材を固定する固定部材を更に有し、
前記固定部材は、前記第2被覆部よりも外形が小さい請求項7に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記コネクタハウジングの内周面は、前記シール部材と密着するとともに、前記第1突出部の前記先端部と接触可能であり、
前記コネクタハウジングの内周面は、前記コネクタハウジングの外周面よりも滑らかである請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される車載機器のケースに装着されるコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。コネクタは、電線と、電線の端部に接続される金属製の端子と、その端子を保持するコネクタハウジングと、コネクタハウジングを外側から覆う金属製のシールドシェルとを有している。また、コネクタは、コネクタハウジングの内周面と電線の外周面との間をシールするシール部材と、コネクタハウジングからのシール部材の抜け止めを行うバックリテーナとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記コネクタにおいて、部品点数を減らすことが望まれている。
本開示の目的は、部品点数を削減できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のコネクタは、電線と、前記電線の端部に接続される端子と、前記端子を保持するコネクタハウジングと、前記電線の外周に取り付けられるとともに、前記電線の外周面と前記コネクタハウジングの内周面とに密着するシール部材と、前記コネクタハウジングの外周を囲うとともに前記電線が貫通する筒状のシールドシェルと、を有し、前記シールドシェルは、前記シール部材に向かって突出するとともに、前記コネクタハウジングからの前記シール部材の抜け止めを行う第1突出部を有し、前記第1突出部は、前記コネクタハウジングの内部に配置される先端部を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示のコネクタによれば、部品点数を削減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のコネクタを示す概略分解斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のコネクタを示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のコネクタを示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態のコネクタを示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態のコネクタを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
[1]本開示のコネクタは、電線と、前記電線の端部に接続される端子と、前記端子を保持するコネクタハウジングと、前記電線の外周に取り付けられるとともに、前記電線の外周面と前記コネクタハウジングの内周面とに密着するシール部材と、前記コネクタハウジングの外周を囲うとともに前記電線が貫通する筒状のシールドシェルと、を有し、前記シールドシェルは、前記シール部材に向かって突出するとともに、前記コネクタハウジングからの前記シール部材の抜け止めを行う第1突出部を有し、前記第1突出部は、前記コネクタハウジングの内部に配置される先端部を有する。
【0009】
この構成によれば、シールドシェルが、コネクタハウジングからのシール部材の抜け止めを行う第1突出部を有している。このため、シールドシェルとシール部材の抜け止めを行うバックリテーナとを別部品とした場合に比べて、部品点数を削減できる。また、第1突出部の先端部がコネクタハウジングの内部に配置されるため、第1突出部の先端部がコネクタハウジングの内部に配置されない場合に比べて、シールドシェルに対してコネクタハウジングが揺動することを抑制できる。これにより、例えばコネクタハウジングに保持される端子が相手端子に対して相対移動することを好適に抑制できる。この結果、端子と相手端子との接点が摩耗することを好適に抑制できる。
【0010】
[2]前記シールドシェルは、前記電線に向かって突出するとともに前記電線に接触可能な第2突出部を有し、前記第2突出部は、前記電線の長さ方向において、前記第1突出部よりも前記シール部材から離れて設けられることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、電線に接触可能な第2突出部が、第1突出部よりもシール部材から離れて設けられる。これにより、例えば車両走行時の振動等によって電線が揺動した場合に、その電線に第2突出部を接触させることができるため、電線の揺動を好適に抑制できる。したがって、シール部材から離れた位置に設けられる第2突出部によって電線の揺動を抑制できるため、電線の揺動がシール部材に伝わることを抑制できる。例えば、揺動に起因して電線がシールドシェルの軸方向に対して曲がることにより、シール部材が変形し、電線とシール部材との間に隙間が生じてしまうことを抑制できる。この結果、シール部材による防水性を好適に維持できる。
【0012】
[3]前記電線は、芯線と、前記芯線を囲うとともに絶縁性を有する絶縁被覆とを有し、前記絶縁被覆を囲うとともに導電性を有する筒状の電磁シールド部材を更に有し、前記シールドシェルは、前記電線の長さ方向において前記第1突出部とは反対側に突出するとともに、前記電線が貫通する筒部を有し、前記電磁シールド部材は、前記筒部の外周面に電気的に接続されており、前記第2突出部は、前記筒部の内周面に設けられることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、筒部の外周面に電磁シールド部材が電気的に接続されるとともに、筒部の内周面に第2突出部が設けられる。これにより、電磁シールド部材との電気的接続部と電線の揺動抑制のための第2突出部とが筒部にまとめて設けられる。このため、電磁シールド部材との電気的接続部と第2突出部とが電線の長さ方向に並んで設けられる場合に比べて、電線の長さ方向においてシールドシェルを小型化できる。ひいては、コネクタ全体を小型化できる。
【0014】
[4]前記シールドシェルは、前記シールドシェルの軸方向の一方側の開口を塞ぐ閉塞壁を有し、前記第1突出部は、前記閉塞壁から前記シール部材に向かって突出しており、前記第1突出部は、前記電線が貫通する第1貫通孔を有し、前記筒部は、前記閉塞壁から前記シール部材とは前記電線の長さ方向において反対側に向かって突出しており、前記筒部は、前記第1貫通孔と連通する第2貫通孔を有し、前記第2突出部は、前記第2貫通孔の内周面に設けられており、前記第2突出部は、前記第1貫通孔の内周面よりも前記第2貫通孔の径方向内側に突出することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、閉塞壁によりシールドシェルの一方側の開口を塞ぐことができる。このため、例えばシールドシェルの一方側の開口から異物等がシールドシェルの内部に侵入することを抑制できる。
【0016】
[5]前記第1突出部の先端部は、前記第1貫通孔の開口幅を広げるように形成される第1保護部を有し、前記筒部のうち前記閉塞壁とは反対側の端部は、前記第2貫通孔の開口幅を広げるように形成される第2保護部を有することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、第1突出部の先端部に、第1貫通孔の開口幅を広げる第1保護部が形成される。このため、電線が第1貫通孔の開口端縁に接触することを抑制できる。これにより、第1貫通孔の開口端縁への接触に起因して電線が損傷することを好適に抑制できる。また、筒部の端部に、第2貫通孔の開口幅を広げる第2保護部が形成される。このため、電線が第2貫通孔の開口端縁に接触することを抑制できる。これにより、第2貫通孔の開口端縁への接触に起因して電線が損傷することを好適に抑制できる。
【0018】
[6]複数の前記電線を有し、前記シールドシェルは、複数の前記電線が個別に貫通する複数の前記筒部を有し、複数の前記電線の各々は、前記芯線と、前記絶縁被覆と、前記電磁シールド部材と、前記電磁シールド部材を囲うとともに絶縁性を有するシースとを有し、複数の前記電磁シールド部材は、複数の前記筒部の外周面にそれぞれ電気的に接続されることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、自身に電磁シールド構造を有する複数のシールド電線に対応して複数の筒部が設けられる。このため、複数の電磁シールド部材を1つの筒部にまとめて接続する場合に比べて、複数の電磁シールド部材を容易にシールドシェルに電気的に接続することができる。
【0020】
[7]前記シールドシェルの外周に取り付けられる筒状の保護部材を更に有し、前記シールドシェルは、前記コネクタハウジングの外周を被覆する筒状の第1被覆部と、前記コネクタハウジングの外周を被覆するとともに前記第1被覆部よりも外形の小さい筒状の第2被覆部とを有し、前記保護部材は、前記第2被覆部の外周に接続されることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、第1被覆部よりも外形の小さい第2被覆部の外周に保護部材が接続される。このため、第1被覆部の外周に保護部材が接続される場合に比べて、保護部材を小型化できる。ひいては、コネクタ全体を小型化できる。
【0022】
[8]前記筒部の外周面に前記電磁シールド部材を固定する固定部材を更に有し、前記固定部材は、前記第2被覆部よりも外形が小さいことが好ましい。
この構成によれば、固定部材の外形が第2被覆部の外形よりも小さく形成されている。このため、保護部材において、固定部材の外周を包囲する部分が第2被覆部の外周を包囲する部分よりも大きくなることを抑制できる。したがって、保護部材が大型化することを抑制できる。
【0023】
[9]前記コネクタハウジングの内周面は、前記シール部材と密着するとともに、前記第1突出部の前記先端部と接触可能であり、前記コネクタハウジングの内周面は、前記コネクタハウジングの外周面よりも滑らかであることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、コネクタハウジングの内周面がコネクタハウジングの外周面よりも滑らかに形成されているため、コネクタハウジングの内周面とシール部材との密着性を高めることができ、シール部材によるシール性を高めることができる。また、シールドシェルの第1突出部がコネクタハウジングの内部に配置されるため、コネクタハウジングがシールドシェルに対して傾く際に、第1突出部がコネクタハウジングの内周面と接触する。これにより、コネクタハウジングがシールドシェルに対して傾くことを抑制でき、コネクタハウジングがシールドシェルから脱落することを抑制できる。よって、シール部材とコネクタハウジングの内周面との間のシール性を向上させつつも、コネクタハウジングがシールドシェルから脱落することを好適に抑制できる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「平行」や「直交」は、厳密に平行や直交の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行や直交の場合も含まれる。ここで、本明細書の説明で使用される「筒状」は、周方向全周にわたって連続して周壁が形成されたものだけではなく、複数の部品を組み合わせて筒状をなすものや、C字状のように周方向の一部に切り欠きなどを有するものも含む。また、「筒状」の外縁形状には、円形、楕円形、及び、尖った角又は丸い角を有する多角形が含まれるが、これらに限定されない。また、本明細書の説明で使用される「環状」という用語は、ループを形成する任意の構造、または端部のない連続形状、並びに、C字形のようなギャップを有する、一般的にループ形状の構造を指すことがある。なお、「環状」の外縁形状には、円形、楕円形、及び、尖った角又は丸い角を有する多角形が含まれるが、これらに限定されない。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
(ワイヤハーネス10の全体構成)
図1に示すワイヤハーネス10は、2個以上(本実施形態では、2個)の車載機器11,12を電気的に接続する。ワイヤハーネス10及び車載機器11,12は、ハイブリッド車や電気自動車等の車両Vに設けられる。ワイヤハーネス10は、例えば、車両Vの前部に設置された車載機器11と、車載機器11よりも車両Vの後方に設置された車載機器12とを電気的に接続する。車載機器11,12としては、例えば、高圧バッテリ、インバータ、モータ、リレーボックスなどを挙げることができる。
【0027】
ワイヤハーネス10は、例えば、コネクタ20を有している。コネクタ20は、例えば、車載機器11が有する導電性のケース13に固定される。コネクタ20は、例えば、ケース13に設けられた相手コネクタ14と接続される。
【0028】
(コネクタ20の全体構成)
図2に示すように、コネクタ20は、例えば、1本又は複数本(本実施形態では、2本)の電線30と、電線30の端部に接続される1つ又は複数(本実施形態では、2つ)の端子40と、端子40を保持するコネクタハウジング50とを有している。コネクタ20は、例えば、コネクタハウジング50の外周に装着されるシール部材70と、電線30の外周に取り付けられるとともに、電線30の外周面とコネクタハウジング50の内周面とに密着するシール部材75とを有している。コネクタ20は、例えば、コネクタハウジング50の外周を囲うとともに電線30が貫通する筒状のシールドシェル80と、シールドシェル80の外周を囲う筒状の保護部材100とを有している。
【0029】
なお、各図面中のXYZ軸におけるX軸はコネクタ20の軸方向(前後方向)を表し、Y軸はX軸と直交するコネクタ20の幅方向(左右方向)を表し、Z軸はXY平面に対して直交するコネクタ20の高さ方向(上下方向)を表している。以下の説明では、便宜上、X軸に沿って延びる方向をX軸方向と称し、Y軸に沿って延びる方向をY軸方向と称し、Z軸に沿って延びる方向をZ軸方向と称する。以下の説明では、
図2におけるX矢印方向を前方、Z矢印方向を上方とする。
【0030】
(電線30の構成)
図3及び
図4に示すように、各電線30は、導電性を有する芯線31と、芯線31の外周を囲うとともに絶縁性を有する絶縁被覆32とを有している。各電線30は、例えば、絶縁被覆32の外周を囲うとともに導電性を有する電磁シールド部材33と、電磁シールド部材33の外周を囲うとともに絶縁性を有するシース34とを有している。各電線30は、例えば、自身に電磁シールド構造を有するシールド電線である。
【0031】
芯線31としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚線、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体や内部が中空構造をなす筒状導体などを用いることができる。また、芯線31としては、撚線、柱状導体や筒状導体を組み合わせて用いてもよい。芯線31の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。
【0032】
絶縁被覆32は、例えば、芯線31の外周面を周方向全周にわたって被覆している。絶縁被覆32は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により構成されている。
電磁シールド部材33は、例えば、絶縁被覆32の外周面を周方向全周にわたって包囲している。電磁シールド部材33は、例えば、可撓性を有している。電磁シールド部材33としては、例えば、複数の金属素線が筒状に編み込まれた編組線や金属箔を用いることができる。本実施形態の電磁シールド部材33は、編組線である。電磁シールド部材33の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。
【0033】
シース34は、例えば、電磁シールド部材33の外周面を周方向全周にわたって包囲している。シース34は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により構成されている。
図3に示すように、芯線31の軸方向の端部(ここでは、前端部)は、絶縁被覆32から露出している。絶縁被覆32から露出した芯線31の前端部には、端子40が接続されている。
【0034】
電磁シールド部材33の軸方向の端部(ここでは、前端部)は、シース34から露出している。シース34から露出された電磁シールド部材33の前端部は、シールドシェル80の有する筒部95の外周を包囲している。
【0035】
(端子40の構成)
各端子40は、例えば、電線30の前端部と接続される電線接続部41と、相手端子(図示略)と接続される端子接続部42とを有している。各端子40は、例えば、電線接続部41と端子接続部42とが連続して一体に形成された単一部品である。各端子40は、導電性を有している。各端子40の材料としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属材料を用いることができる。なお、端子接続部42に接続される相手端子としては、例えば、バスバ、車載機器の端子部や他の電線の端子を挙げることができる。相手端子は、例えば、雄型端子である。
【0036】
(電線接続部41の構成)
電線接続部41は、絶縁被覆32から露出された芯線31の前端部に接続されている。電線接続部41は、例えば、圧着や超音波溶接などによって芯線31に接続されている。これにより、電線接続部41と芯線31とが電気的及び機械的に接続されている。
【0037】
(端子接続部42の構成)
端子接続部42は、例えば、雌型端子である。端子接続部42は、例えば、内部が中空構造をなす筒状に形成されている。端子接続部42は、例えば、円筒状に形成されている。端子接続部42は、例えば、電線接続部41側から端子接続部42の前端部に向かうに連れて内周寸法が小さくなるように形成されている。端子接続部42の内側に雄型端子である相手端子が挿入されると、その相手端子の外周面に端子接続部42の内周面が接触する。これにより、端子接続部42と相手端子とが電気的に接続される。
【0038】
ここで、本明細書における「A部材の内周寸法」とは、A部材の内周面をA部材の周方向に沿って一回りした長さをいう。また、本明細書における「A部材の外周寸法」とは、A部材の外周面をA部材の周方向に沿って一回りした長さをいう。
【0039】
図5に示すように、端子接続部42は、係合孔43を有している。係合孔43は、端子接続部42を厚み方向(ここでは、Z軸方向)に貫通するように形成されている。
(コネクタハウジング50の構成)
図2に示すように、コネクタハウジング50は、例えば、X軸方向に延びる筒状をなしている。コネクタハウジング50は、例えば、Z軸方向よりもY軸方向に長い長円形状に形成されている。コネクタハウジング50は、例えば、基部51と、基部51から前方に突出する端子保持部60とを有している。コネクタハウジング50は、例えば、基部51と端子保持部60とがコネクタハウジング50の軸方向に連なって一体に形成された単一部品である。ここで、コネクタハウジング50の軸方向は、コネクタハウジング50の中心軸が延びる方向であり、本実施形態ではX軸方向と平行な方向である。コネクタハウジング50は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により構成されている。
【0040】
(基部51の構成)
基部51は、本体部52と、本体部52の前端部に設けられたフランジ部56と、フランジ部56の後端面から後方に突出する一対のロックアーム57とを有している。本体部52は、例えば、端子保持部60の後端から後方に突出して形成されている。本体部52は、例えば、X軸方向から見た形状がZ軸方向よりもY軸方向に長い長円筒状に形成されている。
【0041】
図5に示すように、本体部52は、例えば、シール部材75が収容される収容部53と、2本の電線30が個別に貫通する2つの貫通孔54と、2つの貫通孔54を仕切る仕切壁55とを有している。
【0042】
収容部53は、例えば、本体部52の後端部に設けられている。収容部53の前端部には、シール部材75が収容されている。収容部53の後端部には、シールドシェル80の一部が収容されている。収容部53の内周面は、例えば、コネクタハウジング50の外周面よりも滑らかである。例えば、収容部53の内周面は、コネクタハウジング50の外周面よりも表面粗度の小さい平滑面である。
【0043】
各貫通孔54は、収容部53よりも前方に設けられている。各貫通孔54は、収容部53に連通している。各貫通孔54は、X軸方向に沿って延びている。2つの貫通孔54は、Y軸方向に間隔を空けて設けられている。仕切壁55は、Y軸方向において、2つの貫通孔54の間に設けられている。
【0044】
フランジ部56は、本体部52の前端部における外周面から本体部52の径方向外側に張り出すように形成されている。フランジ部56は、例えば、本体部52の周方向全周にわたって連続して形成されている。フランジ部56は、例えば、概略板状に形成されている。
【0045】
一対のロックアーム57は、例えば、Y軸方向において本体部52の両側に1つずつ設けられている。各ロックアーム57は、フランジ部56の後端面と接続される基端部(ここでは、前端部)を固定端とし、基端部とX軸方向において反対側に位置する先端部(ここでは、後端部)を自由端とする片持ち状に形成されている。各ロックアーム57は、ばね性を有している。各ロックアーム57は、ロックアーム57の先端部がロックアーム57の基端部に対してY軸方向にずれるように弾性変形可能に構成されている。各ロックアーム57は、例えば、弾性変形によるY軸方向への撓みが可能に構成されている。
【0046】
各ロックアーム57は、ロックアーム57の先端部に設けられた係合凸部58を有している。各係合凸部58は、各ロックアーム57から本体部52の外周面と反対側、つまり本体部52の径方向外側に向かって突出している。
【0047】
(端子保持部60の構成)
端子保持部60は、基部51の前端部から前方に突出して形成されている。端子保持部60は、2つの端子40を保持している。端子保持部60は、例えば、2つの端子40を個別に保持する2つの保持孔61と、2つの保持孔61を仕切る仕切壁65とを有している。各保持孔61は、例えば、端子保持部60をX軸方向に貫通している。各保持孔61は、各貫通孔54に連通している。2つの保持孔61は、Y軸方向に間隔を空けて設けられている。
【0048】
各保持孔61の内部には、係合片62が設けられている。各係合片62は、例えば、保持孔61の後端部における内周面から端子保持部60の径方向内側に突出した後に各保持孔61の内部をX軸方向に沿って前方に延びるように形成されている。各係合片62は、保持孔61の内周面と接続される基端部(ここでは、後端部)を固定端とし、基端部とX軸方向において反対側に位置する先端部(ここでは、前端部)を自由端とする片持ち状に形成されている。各係合片62は、ばね性を有している。各係合片62は、各保持孔61の内部において、係合片62の先端部が係合片62の基端部に対してY軸方向にずれるように弾性変形可能に構成されている。各係合片62は、例えば、弾性変形によるY軸方向への撓みが可能に構成されている。各係合片62は、係合片62の先端部に設けられた係合凸部63を有している。各係合凸部63は、各係合片62から端子保持部60の径方向内側に向かって突出している。各係合凸部63は、例えば、端子40が保持孔61に挿入された際に、端子接続部42の係合孔43に嵌合し、係合孔43の内面に係合する。これにより、各端子40は、各保持孔61の内部に保持される。
【0049】
仕切壁65は、Y軸方向において、2つの保持孔61の間に設けられている。仕切壁65は、例えば、仕切壁55と連なって形成されている。仕切壁65は、例えば、端子保持部60のX軸方向の全長にわたって延びている。
【0050】
端子保持部60の外周面には、例えば、収容溝66が設けられている。収容溝66は、例えば、端子保持部60の外周面の周方向全周にわたって形成されている。収容溝66には、環状のシール部材70が嵌合されている。
【0051】
(シール部材70の構成)
シール部材70は、端子保持部60の周方向全周にわたって連続した環状に形成されている。シール部材70は、弾性変形可能に構成されている。シール部材70は、例えば、端子保持部60の外周面と、端子保持部60の外側に嵌合される相手コネクタハウジング(図示略)の内周面との間をシールする。シール部材70は、例えば、ゴム製である。シール部材70の材料としては、例えば、ニトリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどを用いることができる。
【0052】
(シール部材75の構成)
シール部材75は、例えば、コネクタハウジング50の収容部53に収容されている。例えば、1つの収容部53に対して1つのシール部材75が収容されている。シール部材75は、例えば、2本の電線30が個別に貫通する2つの貫通孔76を有している。2つの貫通孔76は、例えば、Y軸方向に間隔を空けて設けられている。各貫通孔76は、例えば、シール部材75をX軸方向に貫通している。各貫通孔76の内周面は、電線30の外周面に沿った形状に形成されている。シール部材75の外周面は、収容部53の内周面に沿った形状に形成されている。シール部材75は、電線30の外周面、具体的には絶縁被覆32の外周面に密着するとともに、収容部53の内周面に密着している。シール部材75は、電線30の外周面とコネクタハウジング50の内周面との間をシールする。なお、シール部材75の前端面は、例えば、仕切壁55の後端面に接触している。シール部材75が仕切壁55に接触することにより、コネクタハウジング50に対するシール部材75の挿入量が規制されている。換言すると、仕切壁55は、基部51の内部においてシール部材75を位置決めする機能を有している。
【0053】
シール部材75は、例えば、ゴム製である。シール部材75の材料としては、例えば、ニトリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどを用いることができる。
【0054】
(シールドシェル80の構成)
図2に示すように、シールドシェル80は、例えば、コネクタハウジング50の外周を覆う本体部81と、本体部81の外周から突出する固定部88とを有している。
図3に示すように、シールドシェル80は、例えば、シール部材75に向かって突出するとともに、コネクタハウジング50からのシール部材75の抜け止めを行う突出部90を有している。シールドシェル80は、例えば、突出部90とは反対側に突出する1つ又は複数(本実施形態では、2つ)の筒部95を有している。シールドシェル80は、本体部81と固定部88と突出部90と筒部95とが一体に形成された単一部品である。シールドシェル80は、導電性を有している。シールドシェル80の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。
【0055】
(本体部81の構成)
図6に示すように、本体部81は、基部51の外周を包囲している。本体部81は、例えば、端子保持部60の後端部における外周を包囲している。本体部81は、例えば、端子保持部60の前端部を露出するように形成されている。本体部81は、例えば、基部51の外周面及び端子保持部60の後端部における外周面に対応した形状の内周面を有する筒状に形成されている。本実施形態の本体部81は、長円筒状に形成されている。本体部81は、例えば、シールドシェル80の軸方向の一方側の開口、ここでは後方の開口を塞ぐ閉塞壁82を有している。ここで、シールドシェル80の軸方向は、シールドシェル80の中心軸が延びる方向であり、本実施形態ではX軸方向と平行な方向である。例えば、本体部81は、シールドシェル80の軸方向において、前方に開口するとともに、後方の開口が閉塞壁82により閉塞された有底筒状に形成されている。なお、
図6では、保護部材100の図示を省略している。
【0056】
本体部81は、例えば、筒状の被覆部83と、被覆部83よりも外形の小さい筒状の被覆部84と、被覆部83と被覆部84とを連結する筒状の連結部85とを有している。被覆部83は、被覆部84よりも前方に設けられている。被覆部83は、端子保持部60の外周を周方向全周にわたって包囲している。被覆部83の内周面は、例えば、端子保持部60と離れた状態で端子保持部60の外周を周方向全周にわたって包囲している。被覆部83の前端部は、例えば、連結部85側から前方に向かって内周寸法が段階的に大きくなるように形成されている。被覆部83の前端部は、例えば、連結部85側から前方に向かうに連れて外周寸法が連続的に大きくなる部分を有している。
【0057】
連結部85は、シールドシェル80の軸方向において、被覆部83と被覆部84との間に設けられている。連結部85は、基部51の外周を周方向全周にわたって包囲している。連結部85は、基部51の外周面に接触可能な状態で基部51の外周を周方向全周にわたって包囲している。連結部85の内周寸法は、被覆部83の内周寸法よりも小さく形成されている。このため、本体部81の内周面には、段差が形成されている。具体的には、本体部81の内周面は、被覆部83の内周面と連結部85の前端面と連結部85の内周面とによって形成される段差を有している。連結部85の前端面は、コネクタハウジング50のフランジ部56の後端面に接触可能に構成されている。連結部85の外周寸法は、例えば、被覆部83の後端部における外周寸法と同じ大きさに形成されている。すなわち、連結部85の外周面は、被覆部83の後端部における外周面と段差無く連続して形成されている。
【0058】
被覆部84は、基部51の外周を周方向全周にわたって包囲している。被覆部84は、基部51の外周面に接触可能な状態で基部51の外周を周方向全周にわたって包囲している。被覆部84の内周寸法は、被覆部83の内周寸法よりも小さく形成されている。被覆部84の内周寸法は、例えば、連結部85の内周寸法と同じ大きさに形成されている。すなわち、被覆部84の内周面は、連結部85の内周面と段差無く連続して形成されている。被覆部84の外周寸法は、被覆部83の外周寸法よりも小さく形成されている。被覆部84の外周寸法は、例えば、連結部85の外周寸法よりも小さく形成されている。このため、本体部81の外周面には、段差が形成されている。具体的には、本体部81の外周面は、連結部85の外周面と連結部85の後端面と被覆部84の外周面とによって形成される段差を有している。
【0059】
図2及び
図5に示すように、本体部81は、一対の係合孔87を有している。一対の係合孔87は、一対のロックアーム57に対応して設けられている。一対の係合孔87は、例えば、被覆部84の後端部に設けられている。
図5に示すように、各係合孔87は、被覆部84を厚み方向(ここでは、Y軸方向)に貫通して形成されている。各係合孔87は、各ロックアーム57の係合凸部58と係合可能に構成されている。各係合孔87と各係合凸部58とは、例えば、スナップフィット方式により互いに係合される。各係合孔87と各係合凸部58とが互いに係合されると、コネクタハウジング50に対してシールドシェル80が固定される。
【0060】
(固定部88の構成)
図2に示すように、固定部88は、例えば、被覆部83の前端部から下方に突出するように形成されている。固定部88は、固定部88をX軸方向に貫通する固定孔89を有している。シールドシェル80は、例えば、固定孔89にボルト等の固定部品が挿入されてケース13(
図1参照)に固定される。
【0061】
(突出部90の構成)
図4に示すように、突出部90は、例えば、閉塞壁82の前端面からシール部材75に向かって突出している。突出部90は、例えば、閉塞壁82の前端面から前方に突出している。突出部90の先端部91(ここでは、前端部)は、コネクタハウジング50の内部に設けられている。突出部90の先端部91は、例えば、収容部53の後端部の内部に設けられている。突出部90の先端部91は、シール部材75に接触可能に設けられている。先端部91の先端面(ここでは、前端面)は、例えば、シール部材75の後端面に接触可能に設けられている。例えば、先端部91の先端面は、シール部材75の後端面と面接触可能に構成されている。
【0062】
図5に示すように、1つの収容部53には、例えば、1つの突出部90が挿入されている。突出部90は、2本の電線30が個別に貫通する2つの貫通孔92を有している。2つの貫通孔92は、例えば、Y軸方向に間隔を空けて設けられている。各貫通孔92は、突出部90をX軸方向に貫通している。各貫通孔92の内周面は、電線30と離れた状態で電線30の外周を周方向全周にわたって包囲している。例えば、各貫通孔92は、電線30の絶縁被覆32の外周を周方向全周にわたって包囲している。
【0063】
図4に示すように、突出部90の先端部91は、貫通孔92の内周面と突出部90の先端面との角部に設けられた保護部93を有している。保護部93は、閉塞壁82側から突出部90の先端面に向かうに連れて貫通孔92の開口幅が広くなるように傾斜して形成されている。保護部93は、例えば、シールドシェル80の中心軸と平行な平面で切った断面において、円弧状に湾曲した曲面に形成されている。保護部93は、例えば、貫通孔92の内周面と突出部90の先端面との角部をR面取り又はC面取りした形状に形成されている。本実施形態の保護部93は、貫通孔92の内周面と突出部90の先端面との角部をR面取りした形状に形成されている。
【0064】
(筒部95の構成)
図5に示すように、シールドシェル80は、例えば、2本の電線30が個別に貫通する2つの筒部95を有している。2つの筒部95は、例えば、Y軸方向に間隔を空けて設けられている。2つの筒部95は、例えば、2つの筒部95の外周面同士が互いに離れるように設けられている。各筒部95は、電線30の長さ方向において突出部90とは反対側(ここでは、後方)に突出している。各筒部95は、閉塞壁82の後端面から後方に突出している。
【0065】
図4に示すように、各筒部95の外周面には、各電線30の電磁シールド部材33が電気的に接続されている。ここで、シース34から露出された電磁シールド部材33の前端部は、各筒部95の外周を周方向全周にわたって包囲している。各電磁シールド部材33の前端部は、例えば、固定部材35により各筒部95の外周面に接続されている。固定部材35は、電磁シールド部材33の前端部が筒部95の外周面に接触された状態で、電磁シールド部材33を筒部95の外周面に固定している。固定部材35は、筒部95の外周面に沿った環状に形成されている。固定部材35は、筒部95の外周面との間に電磁シールド部材33の前端部を挟む態様で筒部95の外側に嵌合されている。そして、固定部材35が筒部95の径方向内側に締め付けられることにより、電磁シールド部材33の前端部が筒部95の外周面に対して直接接触した状態で固定されている。これにより、電磁シールド部材33と筒部95(シールドシェル80)とが互いに電気的及び機械的に接続されている。固定部材35としては、例えば、樹脂製又は金属製の結束バンド、カシメリングやテープ部材などを用いることができる。
【0066】
ここで、固定部材35の外形は、被覆部84の外形よりも小さく形成されている。すなわち、固定部材35の外周寸法は、被覆部84の外周寸法よりも小さく形成されている。換言すると、固定部材35の外周面は、被覆部84の外周面よりもシールドシェル80の径方向外側に突出していない。
【0067】
各筒部95は、各電線30が貫通する貫通孔96を有している。貫通孔96は、例えば、筒部95及び閉塞壁82をX軸方向に貫通している。貫通孔96は、貫通孔92と連通している。貫通孔96の内周面は、電線30に向かって突出する突出部97を有している。換言すると、突出部97は、貫通孔96の内周面に設けられている。突出部97は、電線30の外周面、例えば絶縁被覆32の外周面に接触可能に構成されている。突出部97は、例えば、貫通孔96の内周面の周方向全周にわたって連続して形成されている。突出部97は、例えば、貫通孔96の軸方向の全長にわたって延びている。突出部97は、貫通孔92の内周面よりも貫通孔96の径方向内側に突出している。このため、貫通孔92,96の内周面には、段差が形成されている。具体的には、貫通孔92,96の内周面は、貫通孔92の内周面と突出部97の前端面と貫通孔96の内周面(つまり、突出部97の突出先端面)とによって形成される段差を有している。
【0068】
各筒部95の軸方向のうち閉塞壁82とは反対側の端部(ここでは、後端部)は、貫通孔96の内周面と筒部95の後端面との角部に設けられた保護部98を有している。保護部98は、閉塞壁82側から筒部95の後端面に向かうに連れて貫通孔96の開口幅が広くなるように傾斜して形成されている。保護部98は、例えば、シールドシェル80の中心軸と平行な平面で切った断面において、円弧状に湾曲した曲面に形成されている。保護部98は、例えば、貫通孔96の内周面と筒部95の後端面との角部をR面取り又はC面取りした形状に形成されている。本実施形態の保護部98は、貫通孔96の内周面(つまり、突出部97の突出先端面)と筒部95の後端面との角部をR面取りした形状に形成されている。
【0069】
(保護部材100の構成)
保護部材100は、シールドシェル80の外周を包囲するように設けられている。保護部材100は、コネクタハウジング50及びシールドシェル80から引き出される電線30の外周を包囲するように設けられている。保護部材100は、例えば、保護部材100の内部に配置された各種部材を飛翔物や水滴から保護する。本実施形態の保護部材100は、保護部材100の内部に配置された各種部材を防水する防水カバーとして機能する。
【0070】
図2に示すように、保護部材100は、例えば、シールドシェル80の外周に接続される筒状の接続筒部101と、接続筒部101に接続される本体筒部102と、2本の電線30を個別に包囲する筒状の2つの保護筒部103とを有している。保護部材100は、例えば、接続筒部101と本体筒部102と2つの保護筒部103とが一体に形成された単一部品である。本実施形態の接続筒部101、本体筒部102及び保護筒部103は、周方向全周にわたって連続して形成されており、始点と終点とが一致する無端状の構造に形成されている。換言すると、本実施形態の接続筒部101、本体筒部102及び保護筒部103は、電線30の長さ方向に沿って延びるスリットが形成されていない。保護部材100は、例えば、ゴム製である。保護部材100の材料としては、例えば、ニトリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどを用いることができる。
【0071】
図4に示すように、接続筒部101は、シールドシェル80の被覆部84の外側に嵌合されている。接続筒部101は、被覆部84の外周に嵌合可能な大きさの筒状に形成されている。本実施形態の接続筒部101は、長円筒状に形成されている。接続筒部101の内周面には、例えば、被覆部84の外周面に向かって突出する1つ又は複数(ここでは、2つ)のリップ105が設けられている。各リップ105は、例えば、接続筒部101の内周面の全周にわたって連続して形成されており、無端状の構造に形成されている。
【0072】
接続筒部101の外周面には、固定部材110が設けられている。固定部材110は、例えば、接続筒部101の径方向においてリップ105と重なる位置に設けられている。固定部材110としては、例えば、樹脂製又は金属製の結束バンド、カシメリングやテープ部材などを用いることができる。接続筒部101は、固定部材110により外周側から締め付けられて被覆部84の外周面に固定されている。例えば、接続筒部101は、被覆部84の外周面に対して液密状に密着するまで、固定部材110によって外周側から締め付けられている。これにより、接続筒部101と被覆部84との間から保護部材100の内部に水等の液体が浸入することを抑制できる。
【0073】
図5に示すように、本体筒部102の前端部は、接続筒部101の後端部と連続して一体に形成されている。本体筒部102は、2本の電線30を一括して収容可能な大きさの筒状に形成されている。本実施形態の本体筒部102は、長円筒状に形成されている。本体筒部102は、2本の電線30の外周を周方向全周にわたって包囲している。本体筒部102は、例えば、シールドシェル80の2つの筒部95と、2つの筒部95に個別に固定された2つの固定部材35との外周を周方向全周にわたって包囲している。本体筒部102の外周寸法は、例えば、接続筒部101側から保護筒部103側に向かうに連れて小さくなるように形成されている。
【0074】
図2に示すように、2つの保護筒部103の前端部は、本体筒部102の後端部と連続して一体に形成されている。2つの保護筒部103は、Y軸方向に間隔を空けて設けられている。各保護筒部103は、各電線30を収容可能な大きさの筒状に形成されている。本実施形態の各保護筒部103は、円筒状に形成されている。各保護筒部103は、各電線30の外周を周方向全周にわたって包囲している。各保護筒部103の後端部は、例えば、テープ部材等の固定部材(図示略)により電線30の外周面に固定されている。これにより、各保護筒部103と各電線30との間から保護部材100の内部に水等の液体が浸入することを抑制できる。
【0075】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)コネクタハウジング50の外周を囲うシールドシェル80が、コネクタハウジング50からのシール部材75の抜け止めを行う突出部90を有している。このため、シールドシェル80とシール部材75の抜け止めを行うバックリテーナとを別部品とした場合に比べて、部品点数を削減できる。また、突出部90の先端部91は、コネクタハウジング50の内部に配置される。このため、突出部90の先端部91がコネクタハウジング50の内部に配置されない場合に比べて、シールドシェル80に対してコネクタハウジング50が揺動することを抑制できる。これにより、例えばコネクタハウジング50に保持される端子40が相手端子に対して相対移動することを好適に抑制できる。この結果、端子40と相手端子との接点が摩耗することを好適に抑制できる。
【0076】
(2)さらに、コネクタハウジング50の内部に配置される突出部90の先端部91により、シール部材75が傾くことを抑制できる。これにより、シール部材75による防水性を好適に維持できる。
【0077】
(3)電線30に接触可能な突出部97が、突出部90よりもシール部材75から離れて設けられる。これにより、例えば車両V走行時の振動等によって電線30が揺動した場合に、その電線30に突出部97を接触させることができるため、電線30の揺動を好適に抑制できる。したがって、シール部材75から離れた位置に設けられる突出部97によって電線30の揺動を抑制できるため、電線30の揺動がシール部材75に伝わることを抑制できる。例えば、揺動に起因して電線30がシールドシェル80の軸方向に対して曲がることにより、シール部材75が変形し、電線30とシール部材75との間に隙間が生じてしまうことを抑制できる。この結果、シール部材75による防水性を好適に維持できる。
【0078】
(4)筒部95の外周面に電磁シールド部材33が電気的に接続されるとともに、筒部95の内周面に突出部97が設けられる。これにより、電磁シールド部材33との電気的接続部と電線30の揺動抑制のための突出部97とが筒部95にまとめて設けられる。このため、電磁シールド部材33との電気的接続部と突出部97とが電線30の長さ方向に並んで設けられる場合に比べて、電線30の長さ方向においてシールドシェル80を小型化できる。ひいては、コネクタ20全体を小型化できる。
【0079】
(5)シールドシェル80に、シールドシェル80の軸方向の一方側の開口を塞ぐ閉塞壁82を設けるようにした。この構成によれば、閉塞壁82によりシールドシェル80の一方側の開口を塞ぐことができる。このため、例えばシールドシェル80の一方側の開口から異物等がシールドシェル80の内部に侵入することを好適に抑制できる。
【0080】
(6)突出部90の先端部91に、貫通孔92の開口幅を広げる保護部93が形成される。このため、電線30が貫通孔92の開口端縁に接触することを抑制できる。これにより、貫通孔92の開口端縁への接触に起因して電線30が損傷することを好適に抑制できる。また、筒部95の後端部に、貫通孔96の開口幅を広げる保護部98が形成される。このため、電線30が貫通孔96の開口端縁に接触することを抑制できる。これにより、貫通孔96の開口端縁への接触に起因して電線30が損傷することを好適に抑制できる。
【0081】
(7)自身に電磁シールド構造を有するシールド電線である複数の電線30に対応して複数の筒部95が設けられる。このため、複数の電線30の電磁シールド部材33を1つの筒部にまとめて接続する場合に比べて、複数の電磁シールド部材33を容易にシールドシェル80に電気的に接続することができる。
【0082】
(8)ところで、自身に電磁シールド構造を有さないノンシールド電線を複数有し、それら複数のノンシールド電線を一括して包囲する電磁シールド部材を有する場合には、例えば電磁シールド部材が被覆部84の外周に電気的に接続される。この場合には、カシメリング等の固定部材により、電磁シールド部材が被覆部84の外周に固定される。このため、この場合の保護部材100の接続筒部101は、被覆部84よりも外形の大きい被覆部83の外周に固定されることになる。したがって、接続筒部101が大型化し、ひいては保護部材100全体が大型化する。さらに、電磁シールド部材を被覆部84の外周に固定する固定部材が被覆部83の外周面よりもシールドシェル80の径方向外側に張り出す場合がある。この場合には、固定部材を収容するために、接続筒部101よりも保護部材100の径方向外側に膨出する膨出部を保護部材100に設ける必要があり、保護部材100が更に大型化する。
【0083】
これに対して、本実施形態のコネクタ20では、各電線30をシールド電線とし、各電線30の有する電磁シールド部材33を被覆部84よりも外形の小さい筒部95に電気的に接続するようにした。これにより、保護部材100の接続筒部101を、被覆部83よりも外形の小さい被覆部84の外周に固定できる。このため、接続筒部101が被覆部83の外周に固定される場合に比べて、保護部材100を小型化でき、ひいてはコネクタ20全体を小型化できる。
【0084】
さらに、各電磁シールド部材33を各筒部95に固定する固定部材35の外形を、被覆部84の外形よりも小さく形成した。これにより、保護部材100のうち固定部材35を収容する部分を、接続筒部101よりも大きく形成する必要がないため、保護部材100が大型化することを好適に抑制できる。
【0085】
(9)コネクタハウジング50の内周面、具体的には収容部53の内周面がコネクタハウジング50の外周面よりも滑らかに形成されている。このため、収容部53の内周面とシール部材75との密着性を高めることができ、シール部材75によるシール性を高めることができる。また、シールドシェル80の突出部90が収容部53の内部に配置されるため、コネクタハウジング50がシールドシェル80に対して傾く際に、突出部90が収容部53の内周面と接触する。これにより、コネクタハウジング50がシールドシェル80に対して傾くことを抑制でき、コネクタハウジング50がシールドシェル80から脱落することを抑制できる。よって、シール部材75とコネクタハウジング50の内周面との間のシール性を向上させつつも、コネクタハウジング50がシールドシェル80から脱落することを好適に抑制できる。
【0086】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0087】
・上記実施形態のシールドシェル80では、各筒部95の外周面に各電磁シールド部材33を電気的に接続し、各筒部95の内周面に突出部97を設けるようにした。すなわち、電磁シールド部材33との電気的接続部と突出部97とを電線30の長さ方向において重なる位置に設けるようにした。しかし、これに限定されない。例えば、電磁シールド部材33との電気的接続部と突出部97とを、電線30の長さ方向に並んで設けるようにしてもよい。
【0088】
・上記実施形態のシールドシェル80における保護部93を省略してもよい。
・上記実施形態のシールドシェル80における保護部98を省略してもよい。
・上記実施形態のシールドシェル80における突出部97を省略してもよい。
【0089】
・上記実施形態のシールドシェル80では、複数の電線30が個別に貫通する複数の筒部95を設けるようにしたが、これに限定されない。例えば、複数の電線30が一括して貫通する1つの筒部をシールドシェル80に設けるようにしてもよい。この場合には、例えば、複数の電磁シールド部材33が1つの筒部にまとめて接続される。
【0090】
・上記実施形態のシールドシェル80における筒部95を省略してもよい。この場合には、例えば、複数の電磁シールド部材33がシールドシェル80の被覆部84の外周に電気的に接続される。
【0091】
・上記実施形態の保護部材100の構造は特に限定されない。例えば、接続筒部101を、被覆部83の外周に固定される構造に変更してもよい。例えば、保護筒部103を省略してもよい。
【0092】
・上記実施形態のコネクタ20における保護部材100を省略してもよい。
・上記実施形態では、シール部材70,75をゴム製のゴムリングに具体化したが、これに限定されない。例えば、シール部材70,75として、ゴム以外の弾性体からなるリング部材を採用するようにしてもよい。
【0093】
・上記実施形態のコネクタ20におけるシール部材70を省略してもよい。
・上記実施形態では、1つの収容部53に1つのシール部材75を収容するようにしたが、これに限定されない。例えば、複数の収容部53に複数のシール部材75を個別に収容するようにしてもよい。この場合の突出部90は、コネクタハウジング50からの複数のシール部材75の抜け止めを行うことが可能な構造を有している。
【0094】
・上記実施形態では、各電線30をシールド電線に具体化したが、これに限定されない。例えば、各電線30を、自身に電磁シールド構造を有さないノンシールド電線に具体化してもよい。この場合には、例えば、複数の電線30を一括して包囲する電磁シールド部材を設けるようにしてもよい。また、この場合の電磁シールド部材を、例えば、被覆部84の外周に電気的に接続するようにしてもよい。
【0095】
・上記実施形態の端子40の構造は特に限定されない。例えば、端子40の端子接続部42を雄型端子に変更してもよい。
・上記実施形態のコネクタ20は、2つの端子40を有する構成としたが、1つや3つ以上の端子40を有する構成としてもよい。
【0096】
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
V 車両
10 ワイヤハーネス
11,12 車載機器
13 ケース
14 相手コネクタ
20 コネクタ
30 電線
31 芯線
32 絶縁被覆
33 電磁シールド部材
34 シース
35 固定部材
40 端子
41 電線接続部
42 端子接続部
43 係合孔
50 コネクタハウジング
51 基部
52 本体部
53 収容部
54 貫通孔
55 仕切壁
56 フランジ部
57 ロックアーム
58 係合凸部
60 端子保持部
61 保持孔
62 係合片
63 係合凸部
65 仕切壁
66 収容溝
70 シール部材
75 シール部材
76 貫通孔
80 シールドシェル
81 本体部
82 閉塞壁
83 被覆部(第1被覆部)
84 被覆部(第2被覆部)
85 連結部
87 係合孔
88 固定部
89 固定孔
90 突出部(第1突出部)
91 先端部
92 貫通孔(第1貫通孔)
93 保護部(第1保護部)
95 筒部
96 貫通孔(第2貫通孔)
97 突出部(第2突出部)
98 保護部(第2保護部)
100 保護部材
101 接続筒部
102 本体筒部
103 保護筒部
105 リップ
110 固定部材