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特開2022-168525シールド掘進機用テールシール組成物及びシールド掘進工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168525
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】シールド掘進機用テールシール組成物及びシールド掘進工法
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20221031BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20221031BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20221031BHJP
【FI】
C10M169/04
E21D11/00 B
C10N30:00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074052
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼桑 和之
(72)【発明者】
【氏名】荒井 孝
【テーマコード(参考)】
2D155
4H104
【Fターム(参考)】
2D155BA01
2D155JA06
2D155KB10
2D155LA02
4H104AA13C
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BB31A
4H104BB41A
4H104CB14A
4H104CD01A
4H104CD04A
4H104CJ02A
4H104DA02A
4H104LA13
(57)【要約】
【課題】良好な止水性を長時間維持することができるテールシール組成物を提供する。
【解決手段】〔A〕潤滑油基油と、〔B〕無機粉体と、〔C〕高分子ポリマーと、〔D〕繊維質とを含むシールド掘進機用テールシール組成物であって、
前記高分子ポリマーの重量平均分子量が35,000~400,000であるテールシール組成物により、前記課題を解決することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
〔A〕潤滑油基油と、
〔B〕無機粉体と、
〔C〕高分子ポリマーと、
〔D〕繊維質と
を含むシールド掘進機用テールシール組成物であって、
前記高分子ポリマーの重量平均分子量が35,000~400,000である、テールシール組成物。
【請求項2】
不混和ちょう度が、220~250である、請求項1に記載のテールシール組成物。
【請求項3】
前記高分子ポリマーの重量平均分子量が、75,000~400,000である、請求項1又は2に記載のテールシール組成物。
【請求項4】
〔A〕前記潤滑油基油を、組成物全量基準で、10質量%~60質量%、
〔B〕前記無機粉体を、組成物全量基準で、30質量%~70質量%、
〔C〕前記高分子ポリマーを、組成物全量基準で、0.5質量%~10質量%、
〔D〕前記繊維質を、組成物全量基準で、2質量%~10質量%、
含む、請求項1~3のいずれかに記載のテールシール組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のシールド掘進機用テールシール組成物をシールド掘進機に用いるシールド掘進工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機用テールシール組成物に関する。より詳細には、止水性を長時間維持できるシールド掘進機用テールシール組成物に関する。本発明はまた、このシールド掘進機用テールシール組成物を用いたシールド掘進工法にも関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機により、地中にトンネルを掘削する場合、シールド掘進機は、進行方向の地山を掘削しながら前進する。シールド掘進機の後方には、順次、トンネルの内壁となるセグメントが組み上げられている。この場合、掘削されるトンネルの外径(掘削開孔径)は、シールド掘進機の外径プラスシールド掘進機が前進するための余裕代(数センチ)となる。セグメントはシールド掘進機内部で組み上げられるため、セグメントの外径はシールド掘進機の内径以下となる。このため、シールド掘進機の後方ではトンネル外径とセグメント外径との間に隙間が生じる。この隙間には、シールド掘進機の前進にともない、裏込材が充填される。
【0003】
一方、シールド掘進機の後端で、未だ裏込材が充填されていないトンネル内の空隙へは、地下水等が浸みだしている。この地下水のシールド掘進機内への浸入を防ぐため、シールド掘進機の末端にはシールド掘進機内のセグメントの外周とシールド掘進機の内周の間を止水するブラシシールが複数列、シールド掘進機の内周に設けられている。そして、その止水性を維持するために、これらのブラシシールの間にテールシール組成物が充填されている。シールド掘進機の進行に伴い、ブラシシールのテールシール組成物はセグメント外周面に貼り付いて地山へ放散する。そのため、ブラシシール部へのテールシール組成物の補充が必要となり、配管を通してテールシール組成物がポンプを用いて圧送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/021690号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
テールシール組成物は、機構上、稼働中は常に一定量をテールシール部に送り込んでいる。しかし、平日の夜間及び休日などは、テールシール組成物の送り込みが停止する事が多い。その場合はテールシール組成物も新たに送り込まれず、テール部に留まっている状態となる。しかしながら、その場合でも地下水による圧力はかかっていると考えられる。そのため、長時間圧力をかけても問題なく止水できるテールシール組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来では、テールシール組成物の止水性は、短時間、例えば5分間の加圧後の流出水の有無により評価されていた(特許文献1)。しかしながら、本発明者らは、短時間での評価において良好な止水性の評価が得られた場合でも、長時間の試験では漏水が発生する場合があることを発見した。
本発明者らは、止水性を長時間維持できるテールシール組成物について、鋭意検討した。そして、本発明者らは、以下の構成を採用することによって、前記課題を解決することを見出し、発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、かかる知見に基づきなされたもので、次の通りのものである。
<1>
〔A〕潤滑油基油と、
〔B〕無機粉体と、
〔C〕高分子ポリマーと、
〔D〕繊維質と
を含むシールド掘進機用テールシール組成物であって、
前記高分子ポリマーの重量平均分子量が35,000~400,000である、テールシール組成物。
<2>
不混和ちょう度が、220~250である、<1>に記載のテールシール組成物。
<3>
前記高分子ポリマーの重量平均分子量が、75,000~400,000である、<1>又は<2>に記載のテールシール組成物。
<4>
〔A〕前記潤滑油基油を、組成物全量基準で、10質量%~60質量%、
〔B〕前記無機粉体を、組成物全量基準で、30質量%~70質量%、
〔C〕前記高分子ポリマーを、組成物全量基準で、0.5質量%~10質量%、
〔D〕前記繊維質を、組成物全量基準で、2質量%~10質量%、
含む、<1>~<3>のいずれかに記載のテールシール組成物。
<5>
<1>~<4>のいずれかに記載のシールド掘進機用テールシール組成物をシールド掘進機に用いるシールド掘進工法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のテールシール組成物によれば、良好な止水性を長時間維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断らない限り、数値X及びYについて「X~Y」という表記は「X以上Y以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Yのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Xにも適用されるものとする。
【0010】
〔A〕潤滑油基油
本発明のテールシール組成物で用いられる潤滑油基油としては、通常の潤滑油に用いられる潤滑油基油を用いることができる。中でも、鉱油系、合成系、又はこれらの混合物が好ましく、鉱油がより好ましい。鉱油系又は合成系以外の潤滑油基油としては、シリコーン油、脂肪酸エステル、フッ素化油、アルキルナフタレン、及び動植物油系潤滑油基油などが挙げられる。
本発明のテールシール組成物で用いられる潤滑油基油は、40℃における動粘度が100mm/s以上のものが好ましく、300mm/s以上のものがより好ましく、また、3,000mm/s以下のものが好ましく、1,000mm/s以下のものがより好ましい。本発明において、40℃における動粘度とは、JIS K 2283-2000に準拠して測定された40℃での動粘度を意味する。
また、本発明のテールシール組成物で用いられる潤滑油基油は、15℃における密度が0.75g/cm以上のものが好ましく、0.98g/cm以下のものが好ましい。本発明において、15℃における密度とは、JIS K 2249-1-2011に準拠して測定された15℃での密度を意味する。
【0011】
鉱油としては、原油を常圧蒸留して得られる留出油、又はこの留出油をさらに減圧蒸留して得られる留出油を、各種の精製プロセスで精製した潤滑油留分が挙げられる。精製プロセスとしては、水素化精製、溶剤抽出、溶剤脱ろう、水素化脱ろう、硫酸洗浄、白土処理などを、適宜組み合わせることができる。これらの精製プロセスを適宜の順序で組み合わせて処理することにより、本発明で使用できる潤滑油基油を得ることができる。異なる原油あるいは留出油を異なる精製プロセスの組合せに供することにより得られた、性状の異なる複数の精製油の混合物も使用可能である。
【0012】
合成系基油としては、加水分解安定性に優れる基材を用いることができる。このような加水分解安定性に優れる基材としては、例えば、ポリ-α-オレフィンなどのポリオレフィン、ポリエステル、ポリアルキレングリコール、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、及びGTL基油などが挙げられる。合成系基油のなかでは、ポリ-α-オレフィンが、入手性、コスト面、粘度特性、及び酸化安定性との適合性の面で好ましい。
【0013】
本発明のテールシール組成物において、潤滑油基油の含有量は、テールシール組成物全量基準で、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。また、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。また、具体的な範囲としては、10質量%~60質量%が好ましく、15質量%~50質量%がより好ましい。潤滑油基油の含有量を上記の範囲とすると、所望のちょう度を有するテールシール組成物を容易に調製できる。
【0014】
〔B〕無機粉体
本発明のテールシール組成物で用いられる無機粉体としては、珪素、アルミニウム、マグネシウム、又はカルシウム等の酸化物、水酸化物、炭酸塩、又は硫酸塩等の粉体を用いることができる。これらの混合物、及び、天然に産するこれらの化合物を主成分とする鉱石の粉体等も用いることができる。具体的には、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、及び珪藻土などを使用することができるが、タルクを使用することが好ましい。これらの無機粉体は、一種類でも複数の種類を混合して用いてもよい。
【0015】
上記無機粉体は、平均粒径が0.5μm以上のものが好ましく、5μm以上のものがより好ましい。また、500μm以下のものが好ましく、50μm以下のものがより好ましく、20μm以下のものがさらに好ましい。具体的な範囲としては、0.5μm~500μmのものが好ましく、5μm~20μmがより好ましい。
本発明のテールシール組成物において、無機粉体の含有量は、テールシール組成物全量基準で、30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。また、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。また、具体的な範囲としては、30質量%~70質量%が好ましく、35質量%~65質量%がより好ましく、40質量%~60質量%がさらに好ましい。
【0016】
〔C〕高分子ポリマー
本発明のテールシール組成物で用いられる高分子ポリマーとしては、重量平均分子量が35,000~400,000である限り、テールシール組成物の分野で用いられているものを際限なく用いることができる。本明細書において「高分子ポリマー」とは、複数のモノマー(単量体)が、重合することによって生成された化合物を意味する。高分子ポリマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、重量平均分子量が35,000~400,000の、エチレン-プロピレン共重合体(EPC)、オレフィン共重合体(OCP)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリ(メタ)アクリレート(PMA)、ポリブテン(PB)、スチレン-ジエン共重合体(SDC)などを使用することができる。
【0017】
本発明のテールシール組成物で用いられる高分子ポリマーの重量平均分子量は、35,000~400,000であり、50,000以上が好ましく75,000以上がより好ましく、90,000以上がさらに好ましく、100,000以上が特に好ましい。また、350,000以下が好ましく、300,000以下がより好ましい。具体的な範囲としては、50,000~350,000が好ましく、75,000~350,000がより好ましく、90,000~300,000がさらに好ましく、100,000~300,000が特に好ましい。重量平均分子量が上記下限値以上であることにより、止水性を長時間維持することができる。重量平均分子量が上記上限値以下であることにより、テールシール組成物の粘度上昇を抑え、ポンプからの圧送性が良好となる。
【0018】
本明細書において、高分子ポリマーの重量平均分子量は、それぞれゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で求められる値(ポリスチレン換算により得られた分子量)を意味する。なお、Mw、Mn及びMw/MnをGPCで求める際の測定条件は次の2通りである。
当業者であれば、測定すべき高分子ポリマーの種類及び重量平均分子量、並びにテールシール組成物の組成等に応じて、条件1及び条件2のうち適切な方法を採用することができる。以下に限定されるものではないが、原則として高分子量のポリマーを条件1で、低分子量(例えば、重量平均分子量10,000以下)のポリマーを条件2で測定する。
【0019】
[GPC測定条件1]
装置:Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC UV RIシステム
カラム:上流側から順に、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT900A(ゲル粒径2.5μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)2本、および、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT200A(ゲル粒径2.5μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)1本を直列に接続
カラム温度:40℃
試料溶液:試料濃度1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液
流量:0.8mL/min
検出装置:示差屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(Agilent Technologies社製Agilent EasiCal(登録商標) PS-1)8点(分子量:2698000、660500、325600、128600、69650、30230、9960、2980)
【0020】
[GPC測定条件2]
装置:Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC UV RIシステム
カラム:上流側から順に、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT125A(ゲル粒径2.5μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)1本、および、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT45A(ゲル粒径1.7μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)2本を直列に接続
カラム温度:40℃
試料溶液:試料濃度1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液
流量:0.7mL/min
検出装置:示差屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(Agilent Technologies社製Agilent EasiCal(登録商標) PS-1)10点(分子量:30230、9960、2980、890、786、682、578、474、370、266)。
【0021】
本発明のテールシール組成物において、高分子ポリマーの含有量は、テールシール組成物全量基準で、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。また、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。また、具体的な範囲としては、0.5質量%~10質量%が好ましく、1質量%~8質量%がより好ましく、2質量%~5質量%がさらに好ましい。
本発明のテールシール組成物において、高分子ポリマーの含有量は、本発明のテールシール組成物の不混和ちょう度が、150~350となる量が好ましく、200~300となる量がより好ましく、220~250となる量がさらに好ましい。
【0022】
高分子ポリマーの重量平均分子量及び含有量は、テールシール組成物のちょう度に影響する。例えば、重量平均分子量が大きい高分子ポリマーを添加すると、重量平均分子量が小さい高分子ポリマーを添加した場合に比べて、テールシール組成物のちょう度が大きくなる。したがって、テールシール組成物における所望のちょう度を得るために、高分子ポリマーの重量平均分子量及び含有量を適宜調整することが好ましい。
重量平均分子量が大きい高分子ポリマーは、高分子ポリマーの溶解性の観点から、予め希釈油に溶解させてから、潤滑油基油に添加することが好ましい。少量の希釈油に溶解させている市販の高分子ポリマー製品を使用してもよい。ここで用いる希釈油の種類は、[A]潤滑油基油として好ましく用いられるものであってもよい。
【0023】
(潤滑油基油と高分子ポリマーの比率)
本発明のテールシール組成物は、潤滑油基油と高分子ポリマーを50:1~1:1の質量比で含有することが好ましい。この質量比にすることで、圧送性と止水性をより向上させることができる。潤滑油基油と高分子ポリマーの含有割合は、30:1~3:1がより好ましく、20:1~5:1がさらに好ましい。
【0024】
〔D〕繊維質
繊維質は、シールド掘進機のテールシール部にある金属網や金属線を束ねたブラシに絡みつき、他の成分とともに、止水性のある濾布層を形成するために用いられる。
本発明のテールシール組成物では、天然由来の天然繊維又は有機合成された合成繊維のいずれをも用いることができる。例えば、天然繊維としては、セルロース、綿繊維、及び羊毛繊維が挙げられる。合成繊維としては、ポリプロピレン及びポリエステル等が挙げられる。また、炭素繊維及びガラス繊維等の無機繊維も用いることができる。本発明のテールシール組成物は、天然繊維と合成繊維の両方を含むことが好ましい。天然繊維と合成繊維の質量比は、1:4~4:1が好ましく、1:2~2:1がより好ましい。天然繊維と合成繊維の平均太さ(直径)は5μm~100μmが好ましい。
【0025】
本発明のテールシール組成物において、繊維質の含有量は、テールシール組成物全量基準で、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。また、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。また、具体的な範囲としては、2質量%~10質量%が好ましく、3質量%~5質量%がより好ましい。繊維質の含有量を上記範囲内とすることで、止水性と圧送性をよりバランスよく向上させる。
【0026】
(他の添加剤)
本発明のテールシール組成物には、上記成分以外に、必要に応じて、一般に潤滑油やグリースなどに用いられている、清浄剤、分散剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、さび止め剤、及び腐食防止剤などを適宜添加することができる。特には、さび止め剤として、脂肪酸ポリオールエステルなどを、テールシール組成物全量基準で、0.2~2質量%添加することが好ましい。
【0027】
(シールド掘進機用テールシール組成物)
本発明のテールシール組成物の不混和ちょう度は、150~350が好ましく、200~300がより好ましく、220~250がさらに好ましい。なお、本発明における不混和ちょう度の測定は、JIS K2220:2013に準拠する方法による。
本発明のテールシール組成物は、実質的に水分を含まないものが好ましい。実質的に水分を含まないとは、不可避的に混入する水分は許容することを意味する。水分含有量としては、テールシール組成物全量基準で、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0028】
本発明のテールシール組成物は、地中に、道路トンネル、鉄道トンネル、水路トンネル、洞導・管路トンネルなどのトンネルを掘削する際に使用するシールド掘進機とセグメントとの間のテールシール部に用いることができる。本発明のテールシール組成物は、好ましくは、シールド掘進機とセグメントとの間のテールシール部に長時間圧力をかけ続ける必要がある環境において、用いることができる。
【実施例0029】
実施例を用いて、以下に本発明を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、特に説明のない限り、%は質量%を示す。
【0030】
<テールシール組成物の配合>
各実施例及び各比較例について表1に示す配合割合(テールシール組成物全量を基準とする)で、潤滑油基油、無機粉体、高分子ポリマー、及び繊維質を配合することによって、試験用テールシール組成物を調製した。得られたテールシール組成物に対して、止水性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0031】
基油A1:鉱油(ENEOS社製、溶剤精製潤滑油基油、15℃の密度;0.90g/cm、40℃の動粘度;522mm/s)
無機粉体B1:タルク、平均粒径;12μm
高分子ポリマーC1:ポリイソブチレン(PIB);重量平均分子量36,000
高分子ポリマーC2:エチレン-プロピレン共重合体(EPC);重量平均分子量297,000
高分子ポリマーC3:エチレン-プロピレン共重合体(EPC);重量平均分子量144,000
高分子ポリマーC4:ポリブテン(PB);重量平均分子量1,800
高分子ポリマーC5:ポリメタクリレート(PMA);重量平均分子量33,400
繊維質D1:合成ポリエステル繊維(平均長さ;5mm、平均直径;80μm)
繊維質D2:綿花(平均長さ;5mm、平均直径;20μm)
なお、上記ポリマーC1~C3、C5は前述の「GPC測定条件1」、C4は前述の「GPC測定条件2」により重量平均分子量を測定した。
【0032】
<止水性の評価>
止水性を以下の手順で評価した。
底部中央部に、中心間隔5mmで縦横に4列、合計16個の開口(直径3mm)を有する内径52mmのステンレス製の圧力容器を用いた。開口上にステンレス製のメッシュ(40メッシュ)を載せ、上記で調製したテールシール組成物をグリース厚さが40mmとなるように充填した。
テールシール組成物を充填した圧力容器を水圧ポンプに接続し、テールシール組成物に水圧をかけ、底部開口からの水の流出の有無により止水性の評価を行った。また、この試験では水圧をかけると、グリース容器から油分又はポリマーなどが漏出してくるので、圧力が低下してしまう。そのため、以下に示す手順(1)~(7)通りに、決められた時間間隔で圧力を3.5MPaに昇圧した。
【0033】
(1)試験開始から3分間は、3.5MPaとなるようにポンプを動かす。
(2)3分経過後から10分経過まではそのまま様子を見る。
(3)10分経過後~30分経過までは10分経過ごとに3.5MPaに調整する。
(4)30分経過後~180分経過までは、30分経過ごとに3.5MPaに調整する。
(5)180分経過後~600分経過後までは、1時間ごとに3.5MPaに調整する。
(6)600分経過後は、夜間となるので、24時間経過後まで放置する。
(7)24時間経過後に、底部開口からの水の流出の有無を確認する。
【0034】
<ちょう度の測定>
JIS K2220:2013に準拠する方法に基づき、各テールシール組成物の不混和ちょう度を測定した。
【表1】
【0035】
実施例1~3のテールシール組成物は、いずれも、試験開始後24時間経過しても漏水が見られなかった、
重量平均分子量が1,800の高分子ポリマーを添加した比較例1では、試験開始後3~4時間程度で漏水が発生した。重量平均分子量が33,400の高分子ポリマーを添加した比較例2では、試験開始後90分程度で漏水が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のテールシール組成物によれば、良好な止水性を長時間維持することができる。