(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168532
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】発光部材及び発光部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01H 13/02 20060101AFI20221031BHJP
H01H 13/14 20060101ALI20221031BHJP
H01H 11/00 20060101ALI20221031BHJP
H01H 9/16 20060101ALI20221031BHJP
F21V 23/04 20060101ALI20221031BHJP
F21V 3/00 20150101ALI20221031BHJP
F21V 3/06 20180101ALI20221031BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20221031BHJP
【FI】
H01H13/02 A
H01H13/14 Z
H01H11/00 E
H01H9/16 A
F21V23/04 130
F21V3/00 550
F21V3/06
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074067
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】黒川 康之
【テーマコード(参考)】
3K014
5G023
5G052
5G206
【Fターム(参考)】
3K014AA01
5G023AA12
5G023CA29
5G052AA35
5G052BB01
5G052JB01
5G206AS35H
5G206AS35Q
5G206QS02
(57)【要約】
【課題】見栄えの良い発光部材を提供する。
【解決手段】押釦スイッチ10は、光を透過可能な樹脂層11と、保護層12と、光が透過し難い有色層13と、吸光層14と、有色層13と比べて明度が高い明色層15と、を備え、バックライト光が照射される側から樹脂層11、保護層12、有色層13、吸光層14及び明色層15がこの順で形成され、有色層13、吸光層14及び明色層15が部分的に除去されて保護層12が露出する表示部16をさらに備え、表示部16において、樹脂層11は保護層12を介して目視可能であり、露出する樹脂層11の周りの少なくとも一部には有色層13が残存する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過可能な透光層と、前記光が透過し難い有色層と、前記有色層と比べて明度が高い明色層と、を備え、
前記光が照射される側から前記透光層、前記有色層及び前記明色層がこの順で形成され、
前記有色層及び前記明色層が部分的に除去されて前記透光層が露出する表示部をさらに備え、
前記表示部において、前記露出する透光層の周りの少なくとも一部には前記有色層が残存する発光部材。
【請求項2】
前記表示部において、前記露出する透光層の周りに残存する有色層は表示部の縁部を構成し、前記縁部は前記表示部を連続的又は断続的に囲むように設けられる、請求項1に記載の発光部材。
【請求項3】
前記残存する有色層の厚みは、前記明色層で覆われる有色層の厚みよりも小さい、請求項1に記載の発光部材。
【請求項4】
前記形成された有色層の厚さは20μm以上である、請求項1に記載の発光部材。
【請求項5】
前記形成された有色層は少なくとも2層からなる、請求項1に記載の発光部材。
【請求項6】
前記明色層及び前記有色層の間に形成された吸光層をさらに備える、請求項1に記載の発光部材。
【請求項7】
前記表示部において、前記有色層の端部の少なくとも一部と前記明色層の端部は、同一面内に形成される、請求項1に記載の発光部材。
【請求項8】
光を透過可能な透光層と、前記光が透過し難い有色層と、前記有色層と比べて明度が高い明色層と、を備える発光部材の製造方法であって、
前記光が照射される側から前記透光層、前記有色層及び前記明色層をこの順で積層する積層工程と、
前記有色層及び前記明色層を部分的に除去して前記透光層が露出する表示部を形成する除去工程と、を有し、
前記除去工程では、前記表示部において、前記露出する透光層の周りの少なくとも一部に有色層が残存するように、前記有色層及び前記明色層が部分的に除去される発光部材の製造方法。
【請求項9】
前記除去工程では、レーザ光を照射することによって前記有色層及び前記明色層を部分的に除去する、請求項8記載の発光部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックライト光が照光される発光部材及び発光部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バックライト光による照光によって文字等の表示部を発光表示可能なスイッチやパネルに用いられる発光部材が知られている。このような発光部材では、透光層の表面に有色層が形成されるとともに、該有色層の一部を除去して透光層を露出させることにより、表示部が形成される。通常、透光層の明度は高いため、透光層と有色層のコントラストの差が大きく、透光層にバックライト光が照光されなくても、ユーザは表示部を明確に視認することができる。
【0003】
ところで、近年、デザイン性向上の観点から、発光部材において透光層の表面に有色層ではなく白色等の明度の高い明色層が形成されることがある。このような発光部材では、バックライト光が照光される場合、透光層と明色層のコントラストの差を確保することができる一方、バックライト光が照光されない場合、透光層と明色層のいずれの明度も高いため、コントラストの差を確保することができず、表示部の視認性が低下するという問題がある。
【0004】
この問題に対し、例えば、特許文献1では、明色層の上に表示部の周りを囲んで縁取るように有色層を形成し、表示部の周りと表示部のコントラストの差を確保して表示部の視認性を高める技術が提案されている。また、特許文献2では、表示部の周りをレーザ光の照射によって暗色に変更させ、表示部の周りと表示部のコントラストの差を確保して表示部の視認性を高める技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-84341号公報
【特許文献2】特開2012-104243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、有色層を印刷で形成するため、有色層の印刷位置がずれることがあり、その結果、表示部の周りの有色層の幅が一定で無くなり、見栄えが悪くなるという問題がある。また、特許文献2の技術では、レーザ光の照射による変色は制御が難しく、表示部の周りの暗色部の明度が不均一となり、やはり、見栄えが悪くなるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、見栄えの良い発光部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の発光部材は、光を透過可能な透光層と、前記光が透過し難い有色層と、前記有色層と比べて明度が高い明色層と、を備え、前記光が照射される側から前記透光層、前記有色層及び前記明色層がこの順で形成され、前記有色層及び前記明色層が部分的に除去されて前記透光層が露出する表示部をさらに備え、前記表示部において、前記露出する透光層の周りの少なくとも一部には前記有色層が残存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表示部では有色層及び明色層が部分的に除去されて透光層が露出し、露出する透光層の周りの少なくとも一部には有色層が残存する。すなわち、透光層の周りの有色層を印刷やレーザ光の照射による変色によって形成しない。これにより、有色層の印刷位置のずれやレーザ光の照射による変色の不均一が生じることがなく、見栄えの良い発光部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る発光部材としての押釦スイッチの平面図である。
【
図2】
図1における線A-Aに沿う拡大断面図である。
【
図3】本実施の形態に係る発光部材の製造方法としての表示部の形成方法を説明するための工程図である。
【
図4】本発明の実施の形態における押釦スイッチの第1の変形例を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態における押釦スイッチの第2の変形例を示す拡大断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態における押釦スイッチの第3の変形例を示す拡大断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態における押釦スイッチの第4の変形例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る発光部材としての押釦スイッチ10の平面図であり、
図2は、
図1における線A-Aに沿う拡大断面図である。なお、
図1では、押釦スイッチ10の一部が示されている。
【0013】
図1及び
図2において、押釦スイッチ10は、例えば、押釦スイッチ10の基部をなす樹脂層11(透光層)と、該樹脂層11の上に形成された保護層12と、該保護層12の上に形成された有色層13と、該有色層13の上に形成された吸光層14と、該吸光層14の上に形成された明色層15と、を備える。
【0014】
押釦スイッチ10において、樹脂層11の下方には、空間(不図示)又は、受光した光を拡散する拡散部材(不図示)が形成され、さらに、例えば、LED灯からなるバックライト(不図示)が配置される。バックライトが樹脂層11に向けてバックライト光を照光する。したがって、押釦スイッチ10では、バックライト光が照射される側から、樹脂層11、保護層12、有色層13、吸光層14及び明色層15がこの順で形成される。
【0015】
樹脂層11は、明度が高く、光を透過可能な材料、例えば、白色の樹脂からなる。なお、樹脂層11を構成する樹脂の色は白色に限られず、光を透過可能であれば、乳白色でも灰色であってもよい。なお、樹脂層11は押釦スイッチ10の基部全体を構成してもよく、若しくは、押釦スイッチ10の基部の一部を構成してもよい。
【0016】
保護層12は透明な層であり、樹脂層11を、例えば、洗車用の溶剤、洗剤、紫外線や飲料から保護する。保護層12は、化学的耐久性を有する材料からなり、例えば、ウレタンアクリレート等の透明な樹脂材料や公知のハードコート剤からなる。なお、保護層12の色は透明に限られず、乳白色や薄水色等であってもよい。
【0017】
有色層13は光が透過し難い材料からなる。特に、有色層13は視認性を高める観点から明度が低い材料、例えば、暗色の樹脂からなるのが好ましい。本実施の形態では、一例として、有色層13に暗色の樹脂を用いている。この暗色の樹脂は、暗色系色材と樹脂が混合されて形成される。暗色系色材としては、公知の暗色系顔料や暗色系染料を用いることができる。暗色系顔料や暗色系染料の色は、黒色に限られず、明度が低く色濃度が高い濃紺色、濃灰色、濃緑色や濃紫色であってもよい。なお、本実施の形態における「光が透過し難い」とは、「バックライト光を遮光して透過させない」ことを言う。押釦スイッチ10では、有色層13が1層からなり、厚さは20μm以上である。また、本実施の形態における有色層13の色は、暗色に限定されるものではなく、後述の明色層15との境界が視覚的に認識可能な色であれば、用いることができる。例えば、有色層13の色は青色、赤色、黄色、緑色であってもよい。
【0018】
吸光層14は、後述するレーザ光を効率的に吸収する層であり、レーザ光の照射によって明色層15を焼き切るレーザ加工の効率を向上させる。吸光層14は、レーザ光の吸収を促進するために、例えば、アルミ粉が含有された銀色の樹脂によって形成される。なお、吸光層14の色は銀色に限られず、レーザ光の吸収を促進可能な色であればよく、例えば、黒色や灰色であってもよい。吸光層14の色が黒色の場合、該吸光層14はカーボンブラック等のカーボン系材料が含有された黒色の樹脂によって形成される。
【0019】
明色層15は、明度が高い材料、例えば、白色の樹脂からなる。この白色の樹脂は、白色系色材と樹脂が混合されて形成される。白色系色材としては、ピュアホワイトやパールホワイト等の公知の白色系顔料や白色系染料を用いることができる。なお、明色層15の色は白色に限られず、少なくとも有色層13と比べて明度が高い色であればよい。例えば、明色層15を構成する材料として、乳白色の樹脂、灰白色の樹脂、薄黄色の樹脂、薄水色の樹脂や薄緑色の樹脂を用いてもよい。なお、明色層15を、樹脂層11を形成する樹脂と同じ明度の樹脂を用いて形成してもよく、この場合、後述する表示部16においてバックライト光により発光可能な部位の色と押釦スイッチ10の全体の色と合わせることができ、デザイン性が増す。
【0020】
押釦スイッチ10では、例えば、その頂面に表示部16が形成される。表示部16は、例えば、文字、図形又は記号を呈し、押釦スイッチ10において、有色層13、吸光層14及び明色層15を部分的に除去することにより、保護層12の一部を露出させて形成される。すなわち、表示部16は押釦スイッチ10の頂面に掘られた溝であり、表示部16において、操作者は透明な保護層12を介して白色の樹脂層11を目視可能である。また、表示部16の溝の深さは数10μm程度であり、操作者が指で触れても、表示部16が溝であることを意識することがない。
【0021】
表示部16では、明色層15の端部15a、吸光層14の端部14a及び有色層13の上方端部13aが、平面視において同じ位置に存在し、有色層13の下方端部13bのみが表示部16の内側に向かって突出する(
図2参照)。したがって、平面視において、表示部16では、露出する保護層12の周りに有色層13が残存するように見える。
【0022】
保護層12、有色層13、吸光層14及び明色層15の形成方法は特に限定されないが、スクリーン印刷、パッド印刷等の公知の印刷方法、若しくは、公知の塗装方法を用いることができる。また、特に、有色層13や明色層15は顔料や染料と樹脂を溶媒に溶解させたインクを印刷又は塗布することによって形成される。
【0023】
押釦スイッチ10では、バックライトがバックライト光を照光する際、表示部16においてバックライト光が樹脂層11や保護層12を透過するため、操作者は表示部16を容易に認識することができる。また、バックライトがバックライト光を照光しない場合であっても、表示部16において明度の高い樹脂層11の周りに明度の低い有色層13が残存するため、コントラストの差を確保することができ、操作者は表示部16を容易に認識することができる。
【0024】
次に、本実施の形態に係る発光部材の製造方法について説明する。
図3は、本実施の形態に係る発光部材の製造方法としての表示部16の形成方法を説明するための工程図である。
【0025】
図3において、まず、樹脂層11の上に、下方から保護層12、有色層13、吸光層14及び明色層15を積層して形成する。保護層12、有色層13、吸光層14及び明色層15は樹脂層11の全面を覆うように形成してもよく、若しくは、表示部16が形成される箇所とその周辺を覆うように部分的に形成してもよい。
【0026】
次いで、表示部16が形成される箇所へ向けてレーザ光L
1を照射する(
図3(A))。レーザ光L
1の幅W
L1は、表示部16の幅Wと一致する。まず、明色層15へレーザ光L
1が照射されると、明色層15を形成する白色の樹脂が焼き切られ、明色層15においてレーザ光L
1が照射される部分が除去されていく。明色層15は白色の樹脂で構成されるため、レーザ光L
1を反射してしまうおそれがあるが、押釦スイッチ10では、明色層15の下方に位置する吸光層14がレーザ光L
1を吸収して反射を防ぐ。これにより、レーザ光L
1の熱エネルギが明色層15へ効率良く伝わり、明色層15を効率良く除去することができる。
【0027】
次いで、レーザ光L
1の照射を継続すると、明色層15が除去されて吸光層14が露出するが、レーザ光L
1は吸光層14を形成する銀色の樹脂も焼き切る。これにより、吸光層14においても、レーザ光L
1が照射される部分が除去されていく。この工程は吸光層14が除去されて有色層13が露出した後も継続され、レーザ光L
1は有色層13も焼き切っていく(
図3(B))。
【0028】
なお、レーザ光L1は幅WL1の方向に関して強度が均一である。これにより、明色層15、吸光層14や有色層13は、幅WL1の方向に関して均等に除去されていく。
【0029】
その後、有色層13がレーザ光L
1によってある程度除去されると、レーザ光L
1の代わりにレーザ光L
2が、表示部16が形成される箇所へ向けて照射される(
図3(C))。この工程はレーザ光L
2が照射される部分の有色層13が除去されて保護層12が露出するまで継続される。その後、保護層12が露出すると、レーザ光L
2の照射が停止される。
【0030】
照射されるレーザ光L
2の幅W
L2はレーザ光L
1の幅W
L1よりも狭いため、保護層12が露出した際、レーザ光L
2の両脇には除去されていない有色層13’(以下、「残存有色層13’」)が残存し(
図2参照)、残存有色層13’は露出した保護層12を縁取る縁部を構成する。また、レーザ光L
2の強度はレーザ光L
1の強度よりも大きく設定されるが、レーザ光L
2の強度がレーザ光L
1の強度と同じであってもよい。
【0031】
なお、残存有色層13’では有色層13の一部がレーザ光L1によって除去されているため、その厚みは明色層15や吸光層14で覆われる有色層13の厚みよりも小さい。また、レーザ光L1やレーザ光L2による明色層15、吸光層14や有色層13の除去量は、レーザ光L1やレーザ光L2の出力や照射時間を管理することによって調整される。
【0032】
本実施の形態によれば、有色層13、吸光層14及び明色層15をレーザ光L1やレーザ光L2の照射によって部分的に除去することにより、保護層12を露出させて表示部16を形成する。また、有色層13を除去する際、有色層13がレーザ光L1によってある程度除去されると、レーザ光L1の幅WL1よりも狭い幅WL2を有するレーザ光L2を照射して有色層13をさらに除去していく。これにより、表示部16において露出する保護層12の周りに残存有色層13’を残存させる。すなわち、露出する保護層12の周りの有色層13を印刷やレーザ光の照射による変色によって形成する必要がない。よって、有色層13の印刷位置のずれやレーザ光の照射による有色層13の変色の不均一が生じることがなく、結果として、見栄えの良い押釦スイッチ10を提供することができる。
【0033】
また、レーザ光の出力は正確に制御することができ、レーザ光の照射停止も正確に制御することができる。したがって、残存有色層13’の幅や厚みも正確に制御することができる。これにより、露出する保護層12の周りに有色層13を確実に残存させることができ、もって、押釦スイッチ10の見栄えをさらに向上させることができる。
【0034】
さらに、本実施の形態では、有色層13の厚さが20μm以上であるため、レーザ光L1が照射される部分が全て除去されるのを抑止することができ、露出する保護層12の周りに残存有色層13’を確実に残存させることができる。
【0035】
なお、有色層13は、レーザ光の照射による変色ではなく、顔料や染料と樹脂を溶媒に溶解させたインクの印刷又は塗布によって形成されるため、顔料や染料を変更することにより、有色層13の色を容易に変更することができ、その結果、表示部16のデザイン変更を容易に行うことができる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上述した各実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0037】
例えば、上述した押釦スイッチ10では、表示部16において、露出する保護層12の周りの残存有色層13’は縁部を構成するが、
図1に示すように、残存有色層13’は表示部16の保護層12を連続的に途切れること無く囲む。しかしながら、操作者が残存有色層13と保護層12を介して見える樹脂層11とのコントラストの差を認識できるのであれば、残存有色層13’は保護層12を連続的に囲む必要は無い。例えば、
図4に示すように、残存有色層13’を、表示部16の保護層12を断続的に囲むように設けてもよい。これにより、表示部16におけるデザインのバリエーションを増やすことができ、デザインの自由度を増すことができる。なお、残存有色層13’を表示部16の保護層12を断続的に囲むように設ける場合、例えば、有色層13をレーザ加工する際のレーザ光L
1の照射とレーザ光L
2の照射を交互に行うことにより、残存有色層13’が存在する部分と残存有色層13’が存在しない部分を形成する。
【0038】
また、上述した押釦スイッチ10では、有色層13が1層からなるが、印刷や塗装を2回繰り返すことにより、
図5に示すように、有色層13を上層13cと下層13dの2層で構成してもよい。これにより、有色層13の十分な厚みを確保することができる。また、上層13cと下層13dの間に境界が発生するため、有色層13のレーザ加工の際、熱の伝達が当該境界によって阻止され、レーザ光による有色層13の除去が当該境界で一旦停止、若しくは、遅くなる。これにより、縁部となる残存有色層13’を残存させ易くなり、表示部16における縁部を確実に構成することができる。なお、有色層13は3層以上で構成されてもよい。
【0039】
さらに、上述した押釦スイッチ10では、保護層12が樹脂層11と有色層13の間に形成されたが、保護層12は樹脂層11よりも上に存在すればよく、例えば、有色層13と吸光層14の間に形成されてもよく、または、明色層15の上に形成されて押釦スイッチ10の表面全体を覆ってもよい。
【0040】
また、本発明を構成するには、押釦スイッチ10が、少なくとも樹脂層11、有色層13及び明色層15を備えていればよく、例えば、
図6に示すように、押釦スイッチ10が、樹脂層11と保護層12と有色層13と明色層15のみを備えていてもよい。この場合、表示部16の形成方法において、有色層13が明色層15のレーザ加工時のレーザ光の反射を防止する。さらに、例えば、
図7に示すように、押釦スイッチ10が、樹脂層11と有色層13と吸光層14と明色層15のみを備えていてもよい。
【0041】
また、有色層13の一部と明色層15は同じレーザ光L
1によって除去されるため、表示部16では、明色層15の端部15aと有色層13の上方端部13aが同一面内に形成される(
図2)。なお、吸光層14の端部14aも明色層15の端部15aや有色層13の上方端部13aと同一面内に形成されるのが好ましい。
【0042】
表示部16において、明色層15の端部15aと有色層13の上方端部13aが同一面内に形成されず、階段構造を形成すると、表示部16が呈する文字や図形にずれが生じるように見える。また、明色層15の端部15aと有色層13の上方端部13aが階段構造を形成し、且つ明色層15と有色層13の色が異なる場合、残存有色層13’と有色層13の上方端部13aの区別が付きにくくなり、表示部16が呈する文字や図形を認識しにくくなる。しかしながら、本実施の形態では、有色層13の上方端部13aと明色層15の端部15aが同一面内に形成されることにより、押釦スイッチ10の表面側から操作者が表示部16を眺めたとき、有色層13や明色層15からなる積層構造が認識されることがない。その結果、表示部16が呈する文字や図形にずれが生じるように見えるのを抑制することができるとともに、これらの文字や図形が認識し易くなる。その結果、押釦スイッチ10の商品性が低下するのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0043】
10 押釦スイッチ
11 樹脂層
12 保護層
13 有色層
14 吸光層
15 明色層
16 表示部