(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168534
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】インクジェットヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20221031BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074069
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】与田 純也
(72)【発明者】
【氏名】福岡 潤一
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EB08
2C056EB30
2C056EC07
2C056EC29
2C056HA15
2C057AF23
2C057AG44
2C057AG61
2C057AG68
2C057AL24
2C057AM14
2C057AN05
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】インク温度に起因する画質の低下を抑制する。
【解決手段】インクジェットヘッドは、インクが送り込まれるバックエンド部と、ノズルを有し、バックエンド部からインクの供給を受け、ノズルからインクを吐出するフロントエンド部と、通電により発熱する発熱体が配置される板状の部材であり、バックエンド部とフロントエンド部との間に配置され、発熱体の発熱により、バックエンド部およびフロントエンド部を温める加熱板と、加熱板に設けられ、フロントエンド部の温度に応じた値を出力する温度検知素子と、を備え、温度検知素子は、フロントエンド部に直接接触する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが送り込まれるバックエンド部と、
ノズルを有し、前記バックエンド部からインクの供給を受け、前記ノズルからインクを吐出するフロントエンド部と、
通電により発熱する発熱体が配置される板状の部材であり、前記バックエンド部と前記フロントエンド部との間に配置され、前記発熱体の発熱により、前記バックエンド部および前記フロントエンド部を温める加熱板と、
前記加熱板に設けられ、前記フロントエンド部の温度に応じた値を出力する温度検知素子と、を備え、
前記温度検知素子は、前記フロントエンド部に直接接触する、インクジェットヘッド。
【請求項2】
前記加熱板と前記フロントエンド部との間に配置される伝熱シートを備え、
前記温度検知素子は、前記伝熱シートを貫通して、前記フロントエンド部に直接接触する、請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記伝熱シートは、前記バックエンド部と前記フロントエンド部とが向き合う方向に貫通する通し孔を有し、
前記温度検知素子は、前記通し孔に挿入される、請求項2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記温度検知素子は、前記伝熱シートに接触することなく、前記通し孔に挿入される、請求項3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記温度検知素子は、前記発熱体よりも前記フロントエンド部に向かって突出し、
前記伝熱シートは、前記発熱体と前記フロントエンド部との間に配置される部分を有する、請求項2~4のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記フロントエンド部の温度を認識し、前記加熱板に対する電力供給を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記温度検知素子の出力値に基づき、前記フロントエンド部の温度を認識する、請求項1~5のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出するインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置は、ヘッドと呼ばれる部材を含む。ヘッドは、ノズルを有し、ノズルからインクを吐出する。インクの粘度は、インク温度によって変わる。たとえば、ヘッドのインク温度が低い場合、インクの吐出量が不十分になる。そこで、ヘッドには、インクを温めるヒーターが設けられる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッドにヒーターが設けられる構成では、ヘッドのインクを温めることができる。しかし、ヘッドのインク温度を精度良く検知できなければ、インク温度を適切な温度に維持できず、インクの吐出量が不十分になる場合がある。その結果、画質が低下するという不都合が生じる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、インク温度に起因する画質の低下を抑制することが可能なインクジェットヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェットヘッドは、インクが送り込まれるバックエンド部と、ノズルを有し、バックエンド部からインクの供給を受け、ノズルからインクを吐出するフロントエンド部と、通電により発熱する発熱体が配置される板状の部材であり、バックエンド部とフロントエンド部との間に配置され、発熱体の発熱により、バックエンド部およびフロントエンド部を温める加熱板と、加熱板に設けられ、フロントエンド部の温度に応じた値を出力する温度検知素子と、を備える。温度検知素子は、フロントエンド部に直接接触する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インク温度に起因する画質の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るインクジェットヘッドを備えるプリンターのブロック図である。
【
図2】実施形態に係るインクジェットヘッドを備えるプリンターの概略図である。
【
図3】実施形態に係るインクジェットヘッドで構成されるラインヘッドの模式図である。
【
図4】実施形態に係るインクジェットヘッドのブロック図である。
【
図5】実施形態に係るインクジェットヘッドの詳細図である。
【
図6】
図5に示すインクジェットヘッドの一部を分解した図である。
【
図7】実施形態に係るインクジェットヘッドの模式図である。
【
図8】実施形態に係るインクジェットヘッドのノズル周辺の断面図である。
【
図9】実施形態に係るインクジェットヘッドに設置される加熱板の模式図である。
【
図10】実施形態に係るインクジェットヘッドの温度調整処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図10を参照し、本発明に係るインクジェットヘッド100およびインクジェットヘッド100を備える画像形成装置について説明する。インクジェットヘッド100は、複数のノズル5を備え、画像形成時にノズル5から用紙にインクを吐出する。
【0010】
以下の説明では、画像形成装置としてプリンター101を例にとるが、本発明は他の画像形成装置にも適用可能である。たとえば、本発明を複合機に適用してもよい。
【0011】
また、以下の説明では、3次元直交座標系(XYZ座標系)を用いる。なお、X軸方向は、主走査方向である。主走査方向は、ノズル5が並べられる方向である。Y軸方向は、副走査方向である。Y軸方向は、X軸方向と直交する方向である。Y軸方向は、インクジェットヘッド100に対して用紙が搬送される方向でもある。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向と直交する方向である。Z軸方向は、ノズル5と搬送用紙の記録面(インクが吐出される面)とが向かい合う方向でもある。X軸およびY軸を含む平面は、たとえば、水平面と平行である。この場合、Z軸方向は、鉛直方向(上下方向)となる。
【0012】
以下の説明で参照する一部の図面には、XYZの各軸方向を図示する。以下の説明および図面において、+X方向は、X軸方向のうちの一方側である。-X方向は、X軸方向のうちの他方側である。+Y方向は、Y軸方向のうちの一方側であり、用紙搬送方向の上流側である。-Y方向は、Y軸方向のうちの他方側であり、用紙搬送方向の下流側である。+Z方向は、Z軸方向のうちの一方側である。プリンター101が水平面に設置されたとき、+Z方向は、上方向である。-Z方向は、Z軸方向のうちの他方側である。プリンター101が水平面に設置されたとき、-Z方向は、下方向である。
【0013】
なお、「平行」は略平行な場合も含む。また、「垂直」は略垂直な場合も含む。これらの方向は、説明の便宜のために定義したものである。これらの方向は、インクジェットヘッド100の製造時および使用時の向きを限定するものではない。
【0014】
(プリンター101の概要)
図1および
図2に示すように、プリンター101は、制御部1、記憶部2、操作パネル3、印刷部4およびメンテナンスユニット102を備える。制御部1は、プリンター101の各部を制御する。制御部1は、制御回路10および画像処理回路11を含む。制御回路10は、CPUである。制御回路10は、制御プログラムおよび制御データに基づき、演算および処理を行う。画像処理回路11は、インク吐出用画像データを生成する。記憶部2は、ROM、ストレージおよびRAMを含む。ストレージとして、HDDおよびSSDを用いることができる。記憶部2は、制御プログラムおよび制御データを記憶する。
【0015】
制御部1は、通信回路部12を含む。通信回路部12は、コンピューター200と通信可能に接続される。制御部1は、通信回路部12を介して、コンピューター200から印刷用データを受信する。印刷用データは、印刷ジョブに関する設定データおよび印刷内容を記述したデータを含む。制御部1は、印刷用データに基づき画像データを生成し、当該生成した画像データに対して画像処理を行い、インク吐出用画像データを生成する。
【0016】
操作パネル3は、表示パネル31およびタッチパネル32を含む。制御部1は、設定画面を表示パネル31に表示させる。表示パネル31は、キー、ボタンおよびタブなどの操作用画像を表示する。タッチパネル32は、表示パネル31へのタッチ操作を検知する。制御部1は、タッチパネル32の出力に基づき、使用者により操作された操作用画像を認識する。制御部1は、使用者が行った設定を認識する。
【0017】
印刷部4は、給紙部4a、第1搬送部4b、画像形成部4cおよび第2搬送部4dを含む。印刷ジョブのとき、制御部1は、印刷部4の動作を制御する。
【0018】
給紙部4aは、給紙カセット41および給紙ローラー42を含む。給紙カセット41には、記録媒体が収容される。記録媒体は、たとえば、用紙である。なお、プリンター101は、用紙以外の記録媒体にも印刷できる。この場合、用紙以外の記録媒体が給紙カセット41に収容される。
【0019】
給紙ローラー42は、給紙カセット41の用紙と接する。印刷ジョブのとき、給紙ローラー42は、回転する。これにより、給紙カセット41から、用紙が送り出される。
【0020】
第1搬送部4bは、給紙カセット41から送り出された用紙を画像形成部4cに向けて搬送する。第1搬送部4bは、複数の第1搬送ローラー対43およびレジストローラー対44を含む。また、第1搬送部4bは、第1搬送路45を含む。第1搬送路45は、搬送ガイドによって構成される用紙の搬送通路である。第1搬送部4bは、第1搬送ユニット46をさらに含む。
【0021】
印刷ジョブのとき、第1搬送ローラー対43は、回転する。これにより、第1搬送路45に沿って用紙が搬送される。第1搬送ローラー対43により搬送される用紙は、レジストローラー対44に到達する。レジストローラー対44は、用紙の斜行を矯正し、第1搬送ユニット46に向けて用紙を送り出す。
【0022】
第1搬送ユニット46は、搬送ベルト48を含む。レジストローラー対44からの用紙は、搬送ベルト48上に載る。搬送ベルト48は、ベルトローラーに回しかけられる。印刷ジョブのとき、ベルトローラーが回転することにより。搬送ベルト48が周回する。これにより、搬送ベルト48上の用紙が搬送される。用紙は、画像形成部4cの下側(-Z方向側)を通過する。
【0023】
画像形成部4cは、複数のラインヘッド47を備える。画像形成部4cは、ブラックのインクを吐出するラインヘッド47K、シアンのインクを吐出するラインヘッド47C、マゼンタのインクを吐出するラインヘッド47M、および、イエローのインクを吐出するラインヘッド47Yを含む。各ラインヘッド47は、第1搬送ユニット46の上側(+Z方向側)に配置される。各ラインヘッド47は、インク吐出用画像データに基づきインクを吐出し、搬送ベルト48上の用紙に画像を形成する。
【0024】
第2搬送部4dは、画像形成部4cを通過した用紙(画像が形成された用紙)を排出トレイに向けて搬送する。第2搬送部4dは、第2搬送ユニット49および複数の第2搬送ローラー対410を含む。また、第2搬送部4dは、第2搬送路411を含む。第2搬送路411は、搬送ガイドによって構成される用紙の搬送通路である。第2搬送ユニット49の用紙搬送方向下流側には、デカーラー部412が配置される。
【0025】
印刷ジョブのとき、第2搬送ユニット49は、用紙を搬送しつつ、用紙に吐出されたインクを乾燥する。デカーラー部412は、用紙に生じたカールを矯正する。第2搬送ローラー対410は、回転することにより、用紙を搬送する。
【0026】
メンテナンスユニット102は、第2搬送ユニット49の下側に配置される。インクジェットヘッド100(ノズル5)のメンテナンスのとき、第1搬送ユニット46は、退避移動し、メンテナンスユニット102は、画像形成部4c(ラインヘッド47)の下側に移動する。そして、メンテナンス完了後、メンテナンスユニット102が退避し、第1搬送ユニット46が元の位置に移動する。
【0027】
(ラインヘッド47)
図1~
図3に示すように、画像形成部4cは、複数のラインヘッド47(47C、47M、47Yおよび47K)を備える。なお、
図3は、ラインヘッド47を下方(-Z方向)から見た場合の図である。各ラインヘッド47は、使用するインクの色は異なるが、同じ構成である。
【0028】
各ラインヘッド47は、複数のインクジェットヘッド100を備える。複数のインクジェットヘッド100を組み合わせることによって1本のラインヘッド47が構成される。たとえば、各ラインヘッド47は、3つのインクジェットヘッド100を備える。なお、2つのインクジェットヘッド100を組み合わせることによって1本のラインヘッド47を構成してもよいし、4つ以上のインクジェットヘッド100を組み合わせることによって1本のラインヘッド47を構成してもよい。
【0029】
図3には、一例として、同色のインクジェットヘッド100をX軸方向(主走査方向)に3つ並べ、うち2つのインクジェットヘッド100のY軸方向(副走査方向)の位置を同じとし、もう1つのインクジェットヘッド100のY軸方向の位置を異ならせたラインヘッド47を図示する。
【0030】
各インクジェットヘッド100は、X軸方向(主走査方向)に並ぶ複数のノズル5を備える。ノズル5は、インクを吐出する開口を有する。インクジェットヘッド100のうちノズル5の形成面がインク吐出面5fとなる。
図3では、ノズル5を破線の円で示す。なお、
図3に示すノズル5のサイズは便宜上のサイズであり、実際のノズル5のサイズはより小さい。
【0031】
ノズル5は、インクジェットヘッド100の下面に形成される。これにより、ノズル5の開口は、-Z方向を向く。プリンター101が水平面に設置される場合、ノズル5は下向きとなり、上から下に向けてインクが吐出される。ノズル5は、搬送ベルト48および搬送ベルト48上の用紙と向かい合う。インクジェットヘッド100は、ノズル5と搬送ベルト48との間隔またはノズル5と搬送ベルト48上の用紙との間隔が所定間隔(たとえば、1mm)となるよう支持される。
【0032】
(インクジェットヘッド100)
図4に示すように、インクジェットヘッド100は、複数の圧電アクチュエーター51を備える。圧電アクチュエーター51は、各ノズル5に1つずつ設けられる。圧電アクチュエーター51は、圧電素子を含む。たとえば、圧電素子は、ピエゾ素子であり、Z方向に層状に積み重ねられる。圧電アクチュエーター51は、駆動電圧V1が印加されることにより変形する。各ノズル5は、対応する圧電アクチュエーター51の変形に伴ってインクを吐出する。
【0033】
インクジェットヘッド100は、ヘッド基板50を備える。ヘッド基板50は、ドライバー回路52を含む。ドライバー回路52は、圧電アクチュエーター51の電圧印加のON/OFFを行う。制御部1は、インク吐出用画像データ(インクを吐出すべきノズル5を示すデータ)をドライバー回路52に与える。
【0034】
ドライバー回路52は、インク吐出用画像データに基づき、インクを吐出すべきノズル5の圧電アクチュエーター51に駆動電圧V1を印加する。これにより、インクを吐出すべきノズル5の圧電アクチュエーター51が変形する。また、後述する個別流路92に対し、圧電アクチュエーター51の変形で生じる圧力が加わる。これにより、インクを吐出すべきノズル5からインクが吐出される。ドライバー回路52は、インクを吐出させないノズル5の圧電アクチュエーター51には駆動電圧V1を印加しない。
【0035】
ヘッド基板50は、駆動電圧生成回路53を含む。駆動電圧生成回路53は、電圧を生成する。駆動電圧生成回路53は、ドライバー回路52に電圧を供給する。ドライバー回路52は、インクを吐出すべきノズル5の圧電アクチュエーター51に対し、駆動電圧生成回路53から供給された電圧を印加する。
【0036】
制御部1は、駆動信号生成回路13を含む。駆動信号生成回路13は、駆動信号を生成する。駆動信号は、たとえば、クロック信号である。駆動信号は、インクを周期的に吐出するための信号である。たとえば、ドライバー回路52は、駆動信号が立ち上がるまたは立ち下がるごとに、1ライン分のインクを吐出させる。そして、第1搬送部4bは、インクの1吐出周期の間に1画素分の距離だけ用紙を搬送する。
【0037】
インクジェットヘッド100は、
図5および
図6に示すように、バックエンド部6およびフロントエンド部9を備える。ヘッド基板50は、バックエンド部6の上側(+Z方向側)に配置される。
図6においては、破線で囲う部分がバックエンド部6である。なお、
図6では、便宜上、インクジェットヘッド100の一部を分解して図示する。
【0038】
バックエンド部6には、インクタンク(不図示)からインクが送り込まれる。バックエンド部6は、送り込まれたインクを送り出す。バックエンド部6の下側(-Z方向側)には、上側(+Z方向側)から順に、保護板80、粘着シート81、加熱板7、伝熱シート8およびフロントエンド部9が配置される(
図6参照)。
【0039】
図7に示すように、バックエンド部6は、インクタンクに接続されるインク導入部61を有する。インク導入部61は、X軸方向(主走査方向)の一方側および他方側にそれぞれ設けられる。バックエンド部6は、インク流路62を内部に有する。インク流路62は、インクが流れる管である。インクタンクからバックエンド部6に送り込まれるインクは、インク導入部61を介して、インク流路62に進入する。
図7では、インク流路62を破線で示し、インクの流れる方向を太線矢印で示す。
【0040】
インク流路62に進入したインクは、-Z方向(下向き)に流れ、X軸方向(主走査方向)の中央に流れる。また、インクは、+Z方向(上向き)に流れる。その後、インクは、+X方向(主走査方向の一方側)と-X方向(主走査方向の他方側)とに分岐して流れ、インク送出口63に至る。
【0041】
インク送出口63は、インク輸送管64を介して、フロントエンド部9に接続される。バックエンド部6は、インク送出口63からインクを送り出す。バックエンド部6から送り出されるインクは、インク輸送管64を介して、フロントエンド部9に供給される。
【0042】
保護板80は、熱伝導性が高い金属板である。保護板80としては、アルミニウム板が用いられてもよいし、銅板が用いられてもよい。保護板80は、ビスを用いて、バックエンド部6に取り付けられてもよい。保護板80は、Z方向から見て、矩形状である。保護板80の長手方向は、X軸方向である。保護板80の短手方向は、Y軸方向である。
【0043】
粘着シート81は、両面テープである。粘着シート81は、Z方向から見て、矩形状である。粘着シート81の長手方向は、X軸方向である。粘着シート81の短手方向は、Y軸方向である。粘着シート81は、保護板80の他方側(-Z方向側)を向く面に貼り付けられる。
【0044】
加熱板7は、板状の部材である。詳細は後述するが、加熱板7の他方側(-Z方向側)を向く面には、複数の発熱体70が配置される。加熱板7は、Z方向から見て、矩形状である。加熱板7の長手方向は、X軸方向である。加熱板7の短手方向は、Y軸方向である。加熱板7の一方側(+Z方向側)を向く面には、粘着シート81が貼り付けられる。これにより、加熱板7がバックエンド部6に取り付けられる。加熱板7は、ビスを用いて、バックエンド部6に取り付けられてもよい。
【0045】
伝熱シート8は、熱伝導性が高く、弾性が高いシートである。たとえば、伝熱シート8の圧縮率は、50%以上である。たとえば、シリコン系の素材で形成されるシートを伝熱シート8として用いることができる。
【0046】
伝熱シート8は、加熱板7の他方側(-Z方向側)を向く面に接する。これにより、加熱板7の他方側(-Z方向側)を向く面に配置される複数の発熱体70が伝熱シート8で覆われる。伝熱シート8は、1枚のシートであってもよい。すなわち、1枚の伝熱シート8で全ての発熱体70を覆ってもよい。あるいは、複数枚の伝熱シート8で発熱体70を所定数ずつ覆ってもよい。
【0047】
フロントエンド部9は、ノズル5を有する。フロントエンド部9は、バックエンド部6からインクの供給を受ける。フロントエンド部9は、ノズル5からインクを吐出する。なお、伝熱シート8は、フロントエンド部9の一方側(+Z方向側)を向く面に接する。このため、伝熱シート8を介して、加熱板7(複数の発熱体70)からフロントエンド部9に熱が伝わる。これにより、フロントエンド部9(ノズル5)のインクが温められる。
【0048】
図8に示すように、フロントエンド部9は、マニホールドダンパー91および個別流路92を有する。マニホールドダンパー91は、インクを貯める部分(空間)である。個別流路92は、各ノズル5に1つずつ設けられる。各ノズル5は、対応する個別流路92を介して、マニホールドダンパー91に接続される。
【0049】
フロントエンド部9は、ステンレス製の金属板を複数含む。複数の金属板は、Z軸方向に積み重ねられる。以下の説明では、便宜上、各金属板について、+Z方向から-Z方向に向かって、トッププレート9a、第1ダンパープレート9b、第2ダンパープレート9c、個別流路プレート9dおよびノズルプレート9eと称する。
図8に示すフロントエンド部9の構造(金属板の積層数)は一例であり、金属板の積層数をより多くしてもよい。
【0050】
トッププレート9aは、フロントエンド部9の最上部に位置する。言い換えると、トッププレート9aは、フロントエンド部9の一方側(+Z方向側)を向く面を成す。トッププレートの上側(+Z方向側)には、圧電アクチュエーター51が設けられる。
【0051】
第1ダンパープレート9bは、第1貫通孔93を有し、第2ダンパープレート9cは、第2貫通孔94を有する。第1貫通孔93および第2貫通孔94は、Z軸方向に繋がる。また、第1貫通孔93および第2貫通孔94は、X軸方向に広がる。第1貫通孔93および第2貫通孔94のそれぞれのX軸方向の幅は、-X方向側の最も端にあるノズル5から+X方向側の最も端にあるノズル5までの間隔(X軸方向の両端にある一対のノズル5間の幅)以上である。
【0052】
第1ダンパープレート9bと第2ダンパープレート9cとがZ軸方向に重ねられた状態では、第1貫通孔93および第2貫通孔94のそれぞれのY軸方向の位置が互いに一致する。トッププレート9aは、第1ダンパープレート9bの上側(+Z方向側)に配置される。トッププレート9aは、第1貫通孔93と第2貫通孔94とで構成される部分(空間)の蓋となる。マニホールドダンパー91は、第1貫通孔93と第2貫通孔94とで構成される部分(空間)である。バックエンド部6からフロントエンド部9に送り出されるインクは、マニホールドダンパー91に貯められる。ノズル5は、マニホールドダンパー91から供給されるインクを吐出する。
【0053】
個別流路プレート9dは、第2ダンパープレート9cの下側(-Z方向側)に配置される。個別流路プレート9dは、第1ダンパープレート9bおよび第2ダンパープレート9cと共に、個別流路92を構成する。すなわち、第1ダンパープレート9b、第2ダンパープレート9cおよび個別流路プレート9dは、それぞれ、個別流路92となる貫通孔を有する。
【0054】
ノズルプレート9eは、フロントエンド部9の最下部に位置する。言い換えると、ノズルプレート9eは、フロントエンド部9の他方側(-Z方向側)を向く面を成す。ノズルプレート9eは、Z軸方向に貫通する孔が設けられる。当該孔の部分がノズル5のインク吐出口54となる。
【0055】
第1ダンパープレート9b、第2ダンパープレート9cおよび個別流路プレート9dのそれぞれの個別流路92となる貫通孔は、ノズル5ごとに設けられる。言い換えると、Z軸方向から見て、個別流路92と壁部とがX軸方向に交互に並ぶ。
【0056】
1つのノズル5に対して、1つの個別流路92が接続される。そして、マニホールドダンパー91には、全ての個別流路92が接続される。各ノズル5は、対応する個別流路92を介して、マニホールドダンパー91からインクの供給を受ける。
【0057】
(加熱板7)
図9に示すように、加熱板7は、複数の発熱体70を備える。加熱板7は、複数の発熱体70が配置される板状の部材である。加熱板7は、バックエンド部6とフロントエンド部9との間に配置される(
図6および
図7参照)。複数の発熱体70は、加熱板7の下側(-Z方向側)を向く面に配置される。すなわち、複数の発熱体70は、加熱板7のフロントエンド部9と対向する面に配置される。
【0058】
加熱板7は、たとえば、ガラスエポキシ樹脂製の基板である。加熱板7は1枚であり、複数の発熱体70が1枚の加熱板7に配置される。発熱体70は、通電により発熱する。発熱体70は、チップ抵抗である。発熱体70としては、チップ抵抗に限らず、通電により発熱する素子であればよい。
【0059】
図9には、一例として、48個のチップ抵抗を備える加熱板7を図示する。たとえば、Y軸方向(副走査方向)に4個のチップ抵抗が並び、X軸方向(主走査方向)に12個のチップ抵抗が並ぶ。発熱体70の個数は特に限定されず、48個よりも少なくてもよいし多くてもよい。
【0060】
たとえば、Y軸方向の中心よりも+Y方向側の24個のチップ抵抗が直列に接続され、Y軸方向の中心よりも-Y方向側の24個のチップ抵抗が直列に接続される。すなわち、加熱板7は、24個のチップ抵抗を直列接続した抵抗回路を2つ備える。
【0061】
加熱板7の下側(-Z方向側)の面には、隔離領域F0が設けられる。隔離領域F0は、発熱体70が設けられない領域である。隔離領域F0は、加熱板7のX軸方向の中央部分に位置する。
図9では、隔離領域F0を破線で囲う。なお、
図9では、矩形状の領域を隔離領域F0として示すが、隔離領域F0は矩形状でなくてもよい。
【0062】
以下の説明では、便宜上、加熱板7の発熱体70が配置される面において、X軸方向で隔離領域F0を挟む一対の領域のうち、X軸方向の一方側(+X方向)の領域を第1配置領域F1と称し、X軸方向の他方側(-X方向)の領域を第2配置領域F2と称する。たとえば、第1配置領域F1および第2配置領域F2には、それぞれ、同数の発熱体70が配置される。なお、第1配置領域F1での発熱体70の配置数と第2配置領域F2での発熱体70の配置数とが異なってもよい。
【0063】
加熱板7は、複数の発熱体70の発熱により、バックエンド部6およびフロントエンド部9を温める。言い換えると、加熱板7は、バックエンド部6のインクおよびフロントエンド部9のインクを温める。
【0064】
なお、加熱板7(複数の発熱体70)は、伝熱シート8で覆われる。伝熱シート8は、隣り合う一対の発熱体70間に入り込むほどの弾性と圧縮性を有する。これにより、加熱板7の熱は、伝熱シート8によって、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の3方向に効率良く伝わる。そして、加熱板7の温度は、均一に上昇する。その結果、フロントエンド部9の全体が効率良く温められる。すなわち、マニホールドダンパー91のインクおよびノズル5のインクが効率良く温められる。なお、加熱板7の温度が均一に上昇することにより、バックエンド部6も効率良く温められる。
【0065】
インクの温度調整のため、加熱板7には、温度検知素子71が設けられる。たとえば、温度検知素子71は、チップ型のサーミスターである。温度検知素子71は、リード型のサーミスターでもよい。なお、温度検知素子71は、サーミスター以外の温度計測用の素子でもよい。
【0066】
温度検知素子71は、フロントエンド部9の温度に応じた値を出力する。温度検知素子71の出力値は、制御部1に入力される。制御部1は、温度検知素子71の出力値(出力電圧)に基づき、フロントエンド部9の温度を認識する。そして、制御部1は、フロントエンド部9の温度に基づき、加熱板7(複数の発熱体70)に対する電力供給を制御する。
【0067】
加熱板7は、電力供給用の電線(供給線)を介して、電源装置100pに接続される。供給線には、スイッチ100sが設けられる。制御部1は、スイッチ100sのON/OFFを制御する。加熱板7に電力を供給するとき(インクを温めるとき)、制御部1は、スイッチ100sをONする。これにより、発熱体70に電流が流れ、発熱体70が発熱する。加熱板7への電力供給を停止するとき(インクを温めないとき)、制御部1は、スイッチ100sをOFFする。
【0068】
温度検知素子71は、隔離領域F0に配置される。なお、温度検知素子71の配置位置は、Z軸方向から見て、隔離領域F0の中心でもよいし中心でなくてもよい。たとえば、Z軸方向から見て、隔離領域F0の中心と温度検知素子71の中心とが一致するよう温度検知素子71が配置される。
【0069】
隔離領域F0に最も近い発熱体70と温度検知素子71とのX軸方向の間隔は、第1間隔W1および第2間隔W2よりも大きい。第1間隔W1は、第1配置領域F1および第2配置領域F2での発熱体70(チップ抵抗)のX軸方向の最短の間隔である。第2間隔W2は、第1配置領域F1および第2配置領域F2での発熱体70(チップ抵抗)のY軸方向の最短の間隔である。隔離領域F0に最も近い発熱体70と温度検知素子71とのX軸方向の間隔を第1間隔W1および第2間隔W2よりも大きくすることにより、温度検知素子71が発熱体70からの熱の影響を受け難くなる。
【0070】
たとえば、実験により、フロントエンド部9の実際の温度と温度検知素子71の出力値に基づく温度との温度差がない、または、当該温度差の絶対値が基準値以下となる温度検知素子71と発熱体70との間隔を求め、当該求めた間隔に基づき、温度検知素子71のXY平面での配置位置を設定してもよい。また、加熱板7を構成する材料の熱伝導率に基づき発熱体70から伝わる熱量が所定値以下となる距離を求め、XY平面において、当該求めた距離を半径とする円を仮想的に設定し、当該円の中心を温度検知素子71の配置位置とし、当該円の外側を発熱体70の配置位置としてもよい。
【0071】
なお、加熱板7の熱は、X軸方向の両端から、空気または他の部材に逃げる。したがって、発熱体70への電力供給を停止した場合、加熱板7のX軸方向の両端の温度は、隣り合う一対の発熱体70間の温度よりも下がり易い。そこで、X軸方向において、最も外側の発熱体70(第1発熱体70a)の発熱量は、第1発熱体70aよりも内側の発熱体70(第2発熱体70b)の発熱量よりも大きくしてもよい。たとえば、抵抗値を小さくすると、電流が増え、発熱量が大きくなる。このため、第1発熱体70aの抵抗値を第2発熱体70bの抵抗値よりも小さくしてもよい。
【0072】
ここで、
図7に示すように、温度検知素子71は、フロントエンド部9の上側(+Z方向側)を向く面に直接接触する。言い換えると、温度検知素子71とフロントエンド部9とのZ軸方向間には、伝熱シート8が介在しない。さらに言い換えると、温度検知素子71は、伝熱シート8をZ軸方向に貫通して、フロントエンド部9に直接接触する。
【0073】
温度検知素子71をフロントエンド部9に直接接触させるため、伝熱シート8には予め通し孔8Aが形成される。通し孔8Aは、伝熱シート8をZ軸方向(バックエンド部6とフロントエンド部9とが向き合う方向)に貫通する孔である。そして、温度検知素子71は、通し孔8Aに挿入される。すなわち、温度検知素子71は、通し孔8Aに配置される。
【0074】
通し孔8Aの開口形状(Z軸方向から見た場合の形状)および開口幅(Z軸方向と直交する方向の幅)は、特に限定されない。通し孔8Aの開口形状は、略円形状であってもよいし、他の形状であってもよい。また、通し孔8Aの開口幅は、温度検知素子71のZ軸方向と直交する方向の幅に応じて、適宜変更される。
【0075】
たとえば、通し孔8AのZ軸方向と直交する方向の開口幅は、温度検知素子71のZ軸方向と直交する方向の最大幅よりも大きい。そして、温度検知素子71は、伝熱シート8に接触することなく、通し孔8Aに挿入される。すなわち、温度検知素子71は、通し孔8Aの内周面には接触しない。なお、温度検知素子71とフロントエンド部9とが直接接触していれば、温度検知素子71と伝熱シート8とが一部で接触していてもよい。
【0076】
また、温度検知素子71は、発熱体70よりも、フロントエンド部9に向かって突出する。言い換えると、加熱板7を成す基板の実装面から温度検知素子71の先端(-Z方向の最も端)までの距離は、加熱板7を成す基板の実装面から発熱体70の先端(-Z方向の最も端)までの距離よりも大きい。たとえば、温度検知素子71としてリード型のサーミスターを用いることにより、容易に、温度検知素子71を発熱体70よりもフロントエンド部9に向かって突出させることができる。
【0077】
温度検知素子71を発熱体70よりもフロントエンド部9に向かって突出させることにより、温度検知素子71をフロントエンド部9に直接接触させても、発熱体70はフロントエンド部9に直接接触しない。発熱体70とフロントエンド部9とのZ軸方向間には、隙間が生じる。当該隙間には、伝熱シート8が入り込む。すなわち、伝熱シート8は、発熱体70とフロントエンド部9との間に配置される部分を有する。
【0078】
(インクの温度調整)
制御部1は、加熱板7(複数の発熱体70)に対する電力供給を制御する。すなわち、制御部1は、加熱板7の温度を制御する。これにより、制御部1は、インクの温度調整を行う。なお、プリンター101は、複数のインクジェットヘッド100を備える。複数のインクジェットヘッド100は、それぞれ、加熱板7を備える。制御部1は、複数のインクジェットヘッド100のそれぞれについて、加熱板7に対する電力供給を制御し、インクの温度調整を行う。制御部1は、複数のインクジェットヘッド100のそれぞれについて、
図10に示す処理を行う。
【0079】
図10に示す処理のスタートは、インクの温度調整を開始するときである。なお、インクの温度調整は、プリンター101の主電源が投入され、プリンター101の起動が完了したときに開始されてもよい。また、インクの温度調整は、操作パネル3がインクの温度調整の実行指示を受け付けたときに開始されてもよい。また、インクの温度調整は、プリンター101の省電力モードが解除されたときに開始されてもよい。また、インクの温度調整は、印刷ジョブのデータを通信回路部12が受信したときに開始されてもよい。
【0080】
また、
図10に示す処理の終了時点は、予め定められる。終了時点は、プリンター101の主電源が切られた時点でもよい。また、終了時点は、操作パネル3が終了指示を受け付けた時点でもよい。また、終了時点は、プリンター101の省電力モードを開始する条件が満たされた時点、すなわち、プリンター101の省電力モードを開始する時点でもよい。また、終了時点は、印刷ジョブが完了した時点でもよい。
【0081】
まず、制御部1は、温度検知素子71の出力に基づき、フロントエンド部9の温度を認識する(ステップ♯1)。そして、制御部1は、認識したフロントエンド部9の温度が第1閾値温度以下か否かを確認する(ステップ♯2)。第1閾値温度は、予め定められる。第1閾値温度は、保持温度範囲内の温度である。保持温度範囲は、インクを適切に吐出するために維持すべきインクの温度範囲である。保持温度範囲は、インクの材料に基づき、予め定められる。第1閾値温度は、保持温度範囲の最低温度としてもよい。たとえば、保持温度範囲は、20~35゜Cである。この場合、第1閾値温度は、20゜Cとなる。
【0082】
認識したフロントエンド部9の温度が第1閾値温度を超えているとき(ステップ♯2のNo)、制御部1は、ステップ♯1を実行する(ステップ♯1に戻る)。具体的には、ステップ♯2でNoと判定してから所定の待ち時間が経過したとき、制御部1は、ステップ♯1を実行する。この場合、制御部1は、加熱板7に電力を供給せず、温度変化を監視する。
【0083】
認識したフロントエンド部9の温度が第1閾値温度以下のとき(ステップ♯2のYes)、制御部1は、加熱板7に電力を供給する(ステップ♯3)。言い換えると、制御部1は、加熱板7に電流を流し、フロントエンド部9およびバックエンド部6に対し加熱を行う。加熱板7による加熱を続けると、フロントエンド部9およびバックエンド部6の各温度が上昇していく。すなわち、インクの温度が上昇していく。
【0084】
加熱板7による加熱の開始以降、制御部1は、温度検知素子71の出力に基づき、フロントエンド部9の温度を周期的に認識する(ステップ♯4)。たとえば、制御部1は、1秒~数秒に1回、フロントエンド部9の温度を認識する。
【0085】
認識したフロントエンド部9の温度が第2閾値温度を超えたとき、制御部1は、加熱板7への電力供給を停止する(ステップ♯5)。第2閾値温度は、予め定められる。第2閾値温度は、第1閾値温度よりも高い。第2閾値温度は、保持温度範囲内の温度である。第2閾値温度は、保持温度範囲の最高温度としてもよい。ステップ♯5の後、制御部1は、ステップ♯1を実行する(ステップ♯1に戻る)。
【0086】
図10に示す処理が制御部1によって行われることにより、ノズル5の内部温度が適切な温度に維持される。
【0087】
上記のように、本実施形態では、加熱板7に配置される複数の発熱体70の発熱によってフロントエンド部9の全体が温められる。すなわち、フロントエンド部9のインク全体を温めることができる。このため、各ノズル5のインク温度が均一になるので、各ノズル5の吐出前のインク温度の温度差が小さくなり、一部のノズル5からのインクの吐出量が不十分になるという不都合が抑制される。
【0088】
ここで、本実施形態では、制御部1は、温度検知素子71の出力値に基づき、フロントエンド部9の温度を認識する。そして、制御部1は、フロントエンド部9の温度に基づき、加熱板7に対する電力供給を制御する。この構成では、温度検知素子71による温度検知を精度良く行うことが好ましい。
【0089】
そこで、本実施形態では、温度検知素子71は、フロントエンド部9に直接接触する。これにより、フロントエンド部9の温度(各ノズル5のインク温度)を精度良く検知できる。その結果、インク温度に起因する画質の低下を抑制できる。
【0090】
なお、加熱板7は、フロントエンド部9に加え、バックエンド部6を温める。これにより、バックエンド部6からフロントエンド部9へのインクの供給前、バックエンド部6でインクを温めることができる(インクの予熱を行うことができる)。すなわち、インクが低温の状態でフロントエンド部9に供給されることを抑制できる。その結果、各ノズル5でインク吐出頻度が異なる場合でも、各ノズル5の吐出前のインク温度の温度差が大きくならない。
【0091】
また、フロントエンド部9とバックエンド部6との間に加熱板7を配置するので、1枚の加熱板7で、フロントエンド部9およびバックエンド部6の両方を温めることができる。これにより、フロントエンド部9およびバックエンド部6のそれぞれにヒーターを設ける場合に比べ、製造コストを抑えることができる。また、ヒーターの設置に要するスペースも少なくなる。
【0092】
さらに、加熱板7を板状の部材で構成することにより、1枚の加熱板7に複数の発熱体70を配置できる。これにより、1枚の加熱板7(簡易な構成)で全てのノズル5を温めることができるので、微細なヒーターを多数設ける必要がない。その結果、製造コストを抑えることができる。
【0093】
また、本実施形態では、加熱板7とフロントエンド部9との間に伝熱シート8が配置される。伝熱シート8により、複数の発熱体70の熱が加熱板7の全域に伝わる。したがって、加熱板7の温度が均一になる。すなわち、加熱板7の温度分布がなだらかになる。これにより、伝熱シート8を介して加熱板7と接するフロントエンド部9の全体を均一に温めることができる。
【0094】
この構成において、温度検知素子71は、伝熱シート8を貫通して、フロントエンド部9に直接接触する。これにより、フロントエンド部9の全体を均一に温めることができ、かつ、フロントエンド部9の温度を精度良く検知できる。
【0095】
また、本実施形態では、伝熱シート8は、通し孔8Aを有する。そして、温度検知素子71は、通し孔8Aに挿入される。これにより、容易に、温度検知素子71をフロントエンド部9に直接接触させることができる。
【0096】
また、本実施形態では、温度検知素子71は、伝熱シート8に接触することなく、通し孔8Aに挿入される。これにより、温度検知素子71によるフロントエンド部9の温度検知をより精度良く行うことができる。
【0097】
また、本実施形態では、温度検知素子71は、発熱体70よりも、フロントエンド部9に向かって突出する。これにより、温度検知素子71をフロントエンド部9に直接接触させた場合、発熱体70とフロントエンド部9との間に隙間が生じ、当該隙間に伝熱シート8を配置できる。これにより、より良好に、複数の発熱体70の熱を加熱板7の全域に伝えることができる。
【0098】
本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、インクを吐出するインクジェットヘッドに利用可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 制御部
5 ノズル
6 バックエンド部
7 加熱板
8 伝熱シート
8A 通し孔
9 フロントエンド部
70 発熱体
71 温度検知素子