(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168537
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】調光装置の電極部
(51)【国際特許分類】
G02F 1/155 20060101AFI20221031BHJP
G02F 1/1345 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
G02F1/155
G02F1/1345
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074072
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋田 裕功
【テーマコード(参考)】
2H092
2K101
【Fターム(参考)】
2H092GA34
2H092GA42
2H092GA46
2H092GA53
2H092HA12
2H092HA19
2H092HA20
2H092NA25
2H092RA10
2K101EC54
2K101EC61
2K101EC63
2K101EG52
2K101EG54
2K101EJ21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】調光装置の調光フィルム端部に発生するフィルム端部浮きを防止することが可能な技術を提供する。
【解決手段】透明基材4に貼り合わされた調光フィルム3に給電する調光装置には、裏面電極部1-1が端部に設けられる。裏面電極部は、調光フィルムの端部を透明基材から引き剥がした部位にて、調光フィルムの透明基材側の第2透明導電フィルム9を除去した部分に露出した第1透明導電フィルム8の透明導電膜上に、金属箔16と導電性接着層15を備えた金属テープ7を貼り付け、金属箔の上にハンダ6を用いてリード線5がはんだ付けされている。さらに、金属テープに隣接した透明基材側の透明導電フィルム上に第1磁性部12を備え、透明基材の調光フィルム側の面の、第1磁性部と吸着可能な位置に、第2磁性部13が備えられ、それらの磁性部が吸着し、裏面電極部が透明基材に固定されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の透明導電フィルムと、
各透明導電フィルムの端部に設けられ、該透明導電フィルムに外部電源を供給する一対の給電部と、
一方の前記給電部を被施工面に吸着させる磁性部と、を有することを特徴とする電極部。
【請求項2】
前記磁性部は、前記給電部及び前記被施工面を介して対面する位置に設けられた一対の磁性体であることを特徴とする請求項1に記載の電極部。
【請求項3】
前記磁性部は、前記被施工面と対峙する前記透明導電フィルムの面と該被施工面とに設けられた一対の磁性体であることを特徴とする請求項2に記載の電極部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光装置の調光フィルムに給電する電極部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
調光フィルムは、透明フィルムの表面に透明導電膜を形成した一対の透明導電フィルムの透明導電膜側を内側にして、調光層を挟持して作製した積層体である。その積層体の一対の透明導電膜に電圧を印加することによって、調光層における光散乱状態を変化させ、光の透過/不透過または透明/不透明の状態を切り替えることが可能な光学的デバイスである。
【0003】
調光フィルムには、電圧を印加している時に透明な状態となり、電圧を印加していない時に不透明な状態となるノーマルモードの調光フィルムと、電圧を印加している時に不透明な状態となり、電圧を印加していない時に透明な状態となるリバースモードの調光フィルムと、が知られている。
【0004】
このような調光フィルムを使用して透明/不透明の切り替えを可能とするさまざまな調光装置が開発され、実用化が進められている。例えば、ガラス板に調光フィルムを貼り合わせることにより透明/不透明の切り替えを可能とした窓やドアなどの調光装置(例えば特許文献1)が使用され始めている。また、電子ブラインド(例えば特許文献2)などへの展開も検討されている。
【0005】
一対の透明導電フィルムの透明導電膜側を内側にして、印加される電圧によって光の散乱状態が変化する調光層を挟持した調光フィルムへの給電は、例えば、
図5に例示したように、調光装置10の端部に設けられた裏面電極部1および表面電極部2に、駆動電圧を発生する駆動回路に接続された一対のリード線5を接続することによって行われる。
【0006】
裏面電極部1は、
図5のA-A切断線における切断面を例示した
図6において、調光フィルム3の一対の透明導電フィルムの一方の透明導電フィルムである第1透明導電フィルム8を露出させた部分である。第1透明導電フィルム8の表面には、透明導電膜(図示省略)が形成されている。裏面電極部1における第1透明導電フィルム8の透明導電膜は、透明基材4側に面している。
【0007】
図6に例示したように、調光フィルム3は、透明基材4の上に粘着剤層11を介して調光フィルム3の第2透明導電フィルム9を貼り付けた構成となっている。また、調光フィルム3は2枚の透明導電フィルムである第1透明導電フィルム8と第2透明導電フィルム9の透明導電膜(図示省略)側を内側にして調光層(図示省略)を挟持した積層体である。
【0008】
このような積層体である調光フィルム3において、その端部で透明導電膜を露出させるには、第2透明導電フィルム9の端部を除去し、さらに露出した調光層を拭き取るなどによって除去することで、第1透明導電フィルム8の透明導電膜(図示省略)を露出させることができる。
【0009】
表面電極部2は、
図5のB-B切断線における切断面を例示した
図8において、調光フィルム3の第2透明導電フィルム9を露出させた部分である。第2透明導電フィルム9の表面には、透明導電膜(図示省略)が形成されている。表面電極部2における第2透明導電フィルム9の透明導電膜は、第2透明導電フィルム9の、透明基材4とは反対側(第1透明導電フィルム8側)に備えられている。第1透明導電フィルム8の端部を除去し、さらに露出した調光層を拭き取るなどによって除去することで、第2透明導電フィルム9の透明導電膜(図示省略)を露出させることができる。
【0010】
図8に例示したように、表面電極部2は、透明導電膜を露出させた部分に銅テープ7´を貼り付け、その銅テープ7´上でリード線5をハンダ6によりはんだ付けした部分である。また、表面電極部2は、調光フィルム3の第2透明導電フィルム9が粘着剤層11を介して透明基材4に接着されているため、ガラス板4から剥がれて浮き上がることはない。
【0011】
図6は、調光フィルム3に給電するもう一方の電極である裏面電極部1の施工直後の状態を例示した断面説明図である。透明基材4に貼り付けた調光フィルム3の端部を透明基材4から引き剥がし、調光フィルム3の第2透明導電フィルム9の端部において、第1透明導電フィルム8だけをカットして除去する。さらに調光層(図示省略)を払拭することで第1透明導電フィルム8の透明導電膜(図示省略)を露出させ、銅テープ7´を貼り付けた後、銅テープ7´上にリード線5をハンダ6ではんだ付けする。そのような施工を行った直後は、
図6に例示したように、リード線5が銅テープ7´にはんだ付けされた状態で、ハンダ6が透明基材4に接した状態となっており、透明基材4から浮き上がっていない状態である。
【0012】
しかしながら、時間経過とともに、
図7に例示したように、リード線5が銅テープ7´にはんだ付けされた調光フィルム3の端部がガラス板4から浮き上がった状態、所謂「フィルム端部浮き」の状態となる。これは、調光フィルム3が屈曲した部分が、時間の経過と共に、元の形態に戻ろうとするためであると考えられる。
【0013】
フィルム端部浮きは、美観上好ましくないばかりでなく、施工時にその部分が何かの拍子に人や物に引っかかるなどの事故を起こす虞があることもあり、その発生を防止することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2018-151417号公報
【特許文献2】特開2018-150686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記の問題点を解決するため、本発明は、調光装置の調光フィルム端部に発生するフィルム端部浮きを防止することが可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決する手段として、本発明の実施形態の第1の態様は、透明フィルムの表面に透明導電膜を形成した一対の透明導電フィルムの透明導電膜側を内側にして調光層を挟持した調光フィルムの片面を透明基材に接着剤層を介して接着させてなる調光装置の電極部であって、
前記調光フィルムは、前記透明基材側に配置された第2透明導電フィルムと、第1透明導電フィルムと、を備えており、
前記電極部は、前記調光フィルムの端部に表面電極部と裏面電極部を備えており、
裏面電極部は、前記調光フィルムを前記透明基材から引き剥がした部位において、
前記第2透明導電フィルムと前記調光層を除去することにより、前記第1透明導電フィルムの透明導電膜を露出させた部分に、導電性粘着剤層と銅箔をこの順に備えた銅テープと、
該銅箔上にハンダを介してはんだ付けされた給電配線であるリード線と、を備えており、
さらに、
前記調光フィルムを前記透明基材から引き剥がした部位における前記第1透明導電フィルム側の前記銅テープに隣接した第2透明導電フィルム上に接着手段を介して備えられた1つ目の磁石と、
前記透明基材の調光フィルム側の面の、前記1つ目の磁石と吸着可能な位置に、接着手段を介して備えられた2つ目の磁石と、を備えており、
前記1つ目の磁石と前記2つ目の磁石が吸着することにより、前記調光フィルムを前記透明基材から引き剥がした部位が前記透明基材に固定されていることを特徴とする調光装置の電極部である。
【0017】
また、第2の態様は、透明フィルムの表面に透明導電膜を形成した一対の透明導電フィルムの透明導電膜側を内側にして調光層を挟持した調光フィルムの片面を透明基材に接着剤層を介して接着させてなる調光装置の電極部であって、
前記調光フィルムは、前記透明基材側に配置された第2透明導電フィルムと、第1透明導電フィルムと、を備えており、
前記電極部は、前記調光フィルムの端部に表面電極部と裏面電極部を備えており、
裏面電極部は、前記調光フィルムを前記透明基材から引き剥がした部位において、
前記第2透明導電フィルムと前記調光層を除去することにより、前記第1透明導電フィルムの透明導電膜を露出させた部分に、導電性粘着剤層と銅箔をこの順に備えた銅テープと、
該銅箔上にハンダを介してはんだ付けされた給電配線であるリード線と、を備えており、
さらに、
前記調光フィルムを前記透明基材から引き剥がした部位における前記第1透明導電フィルムの前記銅箔が備えられた部位の前記第1透明導電フィルムの前記銅箔とは反対側に、接着手段を介して備えられた1つ目の磁性部と、
前記透明基材の、前記調光フィルムが備えられた側とは反対側の面における、前記1つ目の磁性部と吸引可能な位置に配置された2つ目の磁性部と、を備えており、
前記1つ目の磁性部と前記2つ目の磁性部が互いに引き合う力により、前記調光フィルムを前記透明基材から引き剥がした部位が前記透明基材に固定されていることを特徴とする調光装置の電極部である。
【0018】
また、第3の態様は、前記接着手段が両面粘着テープであることを特徴とする第1または第2の態様に記載の調光フィルムの電極部である。
【0019】
また、第4の態様は、前記磁性部がネオジム磁石であることを特徴とする第1~第3の態様のいずれかに記載の調光装置の電極部である。
【0020】
また、第5の態様は、前記透明基材がガラス板であることを特徴とする第1~第4の態様のいずれかに記載の調光装置の電極部である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態の調光装置の調光フィルムの電極部の裏面電極部は、透明基材上に接着剤層を介して貼り合わされた調光フィルムの端部を引き剥がした部位に備えられている。調光フィルムは、2枚の透明導電フィルムの透明導電膜側を内側にして調光層を積層した積層体であり、調光フィルムの端部を引き剥がした部位の透明基材側の透明導電フィルム(
図1における第2透明導電フィルム9)を除去し、さらに露出した調光層(図示省略)を払拭することにより、透明基材とは反対側の透明導電フィルム(
図1における第1透明導電フィルム8)の透明導電膜(図示省略)が露出する。その部位に露出した透明導電膜上に導電性粘着剤層を有する銅箔(銅テープ7´)を貼付し、その銅箔上に、駆動電源に接続したリード線をハンダによりはんだ付けしたものである。本発明の実施形態の裏面電極部は、調光フィルムを透明基材から引き剥がされた部位における透明導電フィルム側の銅箔に隣接した部位に、接着手段を介して、1つ目の磁性部が備えられている。さらに、透明基材の、1つ目の磁性部と吸着可能な位置に接着手段を介して2つ目の磁性部が備えられており、それらの磁性部が吸着することにより、調光フィルムが透明基材から引き剥がされた部位が透明基材に固定されている。そのため、調光フィルム端部の裏面電極部に形成されるフィルム端部浮きの発生を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態の調光装置の調光フィルムに給電する表面および裏面電極部の配置関係を例示する概略説明図。
【
図2】
図1におけるA-A切断線における裏面電極部1の一実施形態である裏面電極部1-1の断面構造を例示した説明図。
【
図3】
図1におけるA-A切断線における裏面電極部1の一実施形態である裏面電極部1-2の断面構造を例示した説明図。
【
図4】
図1におけるB-B切断線における表面電極部2の断面構造を例示した説明図。
【
図5】従来の調光装置の調光フィルムに給電する表面および裏面電極部の配置関係を例示する概略説明図。
【
図6】
図5におけるA-A切断線における裏面電極部の断面構造を例示した説明図であって、施工直後の裏面電極部の断面構造の状態を示す説明図。
【
図7】
図5におけるA-A切断線における裏面電極部の断面構造を例示した説明図であって、施工後一定時間経過後の裏面電極部の断面構造の状態を示す説明図。
【
図8】
図5におけるB-B切断線における表面電極部2の断面構造を例示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態の電極部について説明する。
本発明の実施形態の電極部は、一対の透明導電フィルムと、各透明導電フィルムの端部に設けられ、該透明導電フィルムに外部電源を供給する一対の給電部と、一方の前記給電部を被施工面に吸着させる磁性部と、を有することを特徴とする電極部である。
磁性部は、前記給電部及び前記被施工面を介して対面する位置に設けられた一対の磁性体であっても良い。
以上の電極部については、第1実施形態において詳しく説明する。
【0024】
また、磁性部は、前記被施工面と対峙する前記透明導電フィルムの面と該被施工面とに設けられた一対の磁性体であっても良い。
以上の電極部については、第2実施形態において詳しく説明する。
【0025】
<第1実施形態>
本発明の実施形態の調光装置の電極部の第1実施形態について
図1、
図2、
図4を用いて説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態の調光装置10の電極部である裏面電極部1と表面電極部2の配置関係を例示した上面図である。
図2は、
図1のA-A切断線における裏面電極部1の一実施形態である裏面電極部1-1の断面構造を例示した説明図である。
図4は、
図1のB-B切断線における表面電極部2の断面構造を例示した説明図である。
【0027】
図1、
図2に示すように、本発明の実施形態の調光装置10の電極部は、透明フィルムの表面に透明導電膜を形成した第1透明導電フィルム8と第2透明導電フィルム9の透明導電膜(図示省略)側を内側にして調光層(図示省略)を挟持した調光フィルム3の第2透明導電フィルム9側を透明基材4に接着剤層11を介して接着させてなる調光装置10の調光フィルム3に外部電源を供給する電極部である。
【0028】
前記電極部は、前記調光フィルムの端部に備えられ、一対の給電部である、前記第1透明導電フィルム8の透明導電膜からなる裏面電極部1-1と(
図2参照)、前記第2透明導電フィルム9の透明導電膜からなる表面電極部2(
図4参照)と、を備えている。
【0029】
裏面電極部1-1は、調光フィルム3の端部において、粘着剤層11によって透明基材4に接着されている調光フィルム3を引き剥がした部分である。その引き剥がした調光フィルム3の部位の第2透明導電フィルム9と調光層3を除去することにより、第1透明導電フィルム8の透明導電膜を露出させた部分に、導電性粘着剤層15と金属箔16をこの順に備えた金属テープ7と、金属テープ7上にハンダ6を介してはんだ付けされた給電配線であるリード線5と、を備えている。
【0030】
さらに、一方の給電部である裏面電極部1-1には、裏面電極部1-1における第1透明導電フィルム8側の金属テープ7に隣接した第2透明導電フィルム9上に接着手段14を介して備えられた第1磁性部12と、被施工面である透明基材4の調光フィルム3側の面の、第1磁性部12と吸着可能な位置に、接着手段14を介して備えられた第2磁性部13と、からなる磁性部を備えている。
【0031】
第1磁性部12と第2磁性部13が吸着することにより、調光フィルム3を透明基材4から引き剥がした部位である裏面電極部1-1が被施工面である透明基材4に固定されている。このことによって、調光フィルム端部の裏面電極部1-1に形成されるフィルム端部浮きの発生を防止することが可能となる。
【0032】
(透明導電フィルム)
第1透明導電フィルム8および第2透明導電フィルム9は、透明樹脂フィルム上に透明導電膜を形成した透明フィルムである。
透明樹脂フィルムとしては、80%以上の高い可視光透過率を備え、調光フィルム3を構成するために必要な機械的な強度と耐熱性および化学的な安定性を備えた材料からなるフィルムであれば特に限定する必要は無い。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムを好適に使用することができる。
【0033】
また、透明導電膜としては、80%以上の高い可視光透過率を備え、10-4Ω・cmオーダーの低い体積抵抗率を備えている透明導電膜であれば特に限定する必要は無い。例えば、ITO(Indium Tin Oxide)薄膜を好適に使用することができる。成膜方法としては、透明樹脂フィルムとの十分高い密着力が得られる成膜方法であれば、特に限定されない。例えば、生産に適した成膜方法としてスパッタリング法を使用することができるが、その他にも、イオンアシスト蒸着法やイオンプレーティング法なども知られている。
【0034】
(透明基材)
透明基材4としては、80%以上の高い可視光透過率を備え、用途に求められる機械的強度、耐熱性、化学的安定性などを備えた材料からなる板状の基材であれば特に限定する必要は無い。例えば、各種の透明なガラス板や、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどからなる樹脂板を好適に使用することができる。
【0035】
(金属テープ)
金属テープ7は、金属箔16に導電性粘着剤層15が形成された金属箔テープ材料である。金属箔16としては、導電性が高い金属箔であれば使用可能である。例えば、電解銅箔や圧延銅箔を好適に使用することができる。導電性粘着剤層15としては、はんだ付けの代わりになる程度の高い導電性を備えた粘着性材料であれば特に限定する必要は無く、市販されている各種の導電性粘着剤を使用することができる。例えば、エポキシやウレタン系のバインダー樹脂に、銅、ニッケル、銀などの金属粉を混錬した材料を使用することができる。また、金属粉より低い導電性で良い場合は、グラファイトやカーボンナノチューブなどの炭素系材料を金属粉の代わりに使用した導電性粘着剤を使用することも可能である。
【0036】
(磁性部)
第1磁性部12や第2磁性部13などの磁性部としては、永久磁石などの磁性体を好適に使用することができる。永久磁石には、合金磁石、フェライト磁石、希土類磁石などが知られている。価格や磁石の引き合う力(吸引力)などにより適切な永久磁石を選択すればよい。例えば、比較的低価格で強い吸引力を持っているネオジム磁石(希土類磁石)を好適に使用することができる。
【0037】
(リード線)
リード線5は、調光フィルム3の一対の透明導電フィルム8、9の透明導電膜に駆動電源または駆動回路の駆動電圧を給電する一対の導電線である。リード線5は、駆動電源からの駆動電圧を調光フィルム3に給電可能な導電線であればよく、特に限定する必要は無いが、実用的には導電線の表面が絶縁被覆されているものが好ましい。例えば、細い銅線からなる撚線の表面を絶縁樹脂被覆されているケーブルやビニルコードを挙げることができる。
【0038】
(接着手段)
接着手段14は、被接着対象物と接着対象物の境界面に粘着性組成物を挿入することによって、被接着対象物と接着対象物を接着する手段である。液状の粘着性組成物であっても良いし、フィルムまたはシート状の基材の表裏両面に粘着性組成物層を形成した両面粘着テープであっても良い。粘着性組成物としては特に限定する必要は無い。
【0039】
(粘着剤層)
粘着剤層11は、透明基材4に調光フィルム3を貼り合わせる際に使用する粘着性組成物からなる層である。粘着剤層11の粘着性は、調光フィルム3を透明基材4に貼り合わせた後、調光フィルム3の端部において、調光フィルム3の一部を透明基材4から容易に引き剥がせることが好ましい。そのため、粘着剤層11の粘着性としては、所謂微粘着性であることが望ましい。微粘着性の粘着性組成物としては、ガラス板やアクリル板などの透明基材4に接着した後、容易に引き剥がすことが可能な粘着性組成物であれば特に限定する必要は無い。例えば、市販されている微粘着タイプのシリコーン粘着剤を使用可能することができる。
【0040】
<第2実施形態>
次に、本発明の実施形態の調光装置の電極部である裏面電極部の第2実施形態について
図3を用いて説明する。
本発明の実施形態の調光装置の電極部である裏面電極部の第2実施形態は、下記の点を除いて、第1実施形態と同様である。
【0041】
図3に例示したように、本発明の実施形態の調光装置10の裏面電極部1-2は、調光
フィルム3を透明基材4から引き剥がした部位である裏面電極部1-2における第1透明導電フィルム8の金属テープ7が備えられた部位の第1透明導電フィルム8の金属テープ7とは反対側に、接着手段14を介して備えられた第1磁性部12と、透明基材4の、調光フィルム3が備えられた側とは反対側の面における、第1磁性部12と吸引可能な位置に配置された第2磁性部13と、を備えている。
【0042】
さらに、第1磁性部12と第2磁性部13が互いに引き合う力により、調光フィルム3を透明基材4から引き剥がした部位である裏面電極部1-2が透明基材4に固定されている。このことにより、調光フィルム3端部の裏面電極部1-2に形成されるフィルム端部浮きの発生を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1、1-1、1-2・・・裏面電極部
2・・・表面電極部
3・・・調光フィルム
4・・・透明基材
5・・・リード線
6・・・ハンダ
7・・・金属テープ
7´・・・銅テープ
8・・・第1透明導電フィルム
9・・・第2透明導電フィルム
10・・・調光装置
11・・・粘着剤層
12・・・第1磁性部
13・・・第2磁性部
14・・・接着手段
15・・・導電性粘着剤層
16・・・金属箔