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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168558
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】油圧式電動建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074099
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 祐太
(72)【発明者】
【氏名】木原 聖一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 肇
(57)【要約】
【課題】 電動ヒータの昇温速度を向上させる。
【解決手段】 油圧ショベル1は、油圧アクチュエータを駆動するための圧油を吐出する油圧ポンプ12と、油圧ポンプ12に作動油を供給するオイルタンク14と、油圧ポンプ12を駆動する電動モータ11と、を備えている。また、油圧ショベル1は、運転席8の暖房用の電動ヒータ20を備えている。電動ヒータ20は、オイルタンク14に隣接して配置されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席を有する車体と、
前記車体に設けられた油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを駆動するための圧油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプに作動油を供給するオイルタンクと、
前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、
を備えた油圧式電動建設機械において、
前記運転席の暖房用の電動ヒータを備え、
前記電動ヒータは、前記オイルタンクに隣接して配置されたことを特徴とする油圧式電動建設機械。
【請求項2】
前記オイルタンクにブラケットを設け、
前記電動ヒータは、前記ブラケットに取付けられたことを特徴とする請求項1に記載の油圧式電動建設機械。
【請求項3】
前記オイルタンクに設けられ、作動油の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの信号に基づいてオイルクーラ冷却ファンの回転数を制御する制御装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、前記電動ヒータの駆動中であって前記温度センサの検出温度が設定温度以下である場合に、前記オイルクーラ冷却ファンの回転を停止させることを特徴とする請求項1に記載の油圧式電動建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば電動モータを動力源として油圧ポンプを駆動する電動式油圧ショベル等の油圧式電動建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷却器のレイアウトを改善することによって、エアコンのコンプレッサを省スペースで搭載した電動式建設機械が開示されている。特許文献2には、エンジンを搭載した油圧式建設機械において、エンジンにより熱せられた冷却水を運転席内部に挿通した配管に循環することで、運転席自体を昇温させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-242320号公報
【特許文献2】実開平7-42812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、寒冷地ではオペレータの作業環境を整えるため、運転室内に暖房機器が設けられる。特許文献2に開示されたように、エンジンを搭載した油圧式建設機械であれば、エンジン稼働中に高温となったエンジン冷却水を用いて運転室内を暖房することができる。これに対し、エンジンを搭載しない油圧式電動建設機械においては、エンジンのように自発的に大量の熱を発する電装機器が無いため、別途電動ヒータを用意する必要がある。しかしながら、エンジンと比較すると出力が小さいことにより、電動ヒータの昇温に時間がかかるという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、電動ヒータの昇温速度を向上させることができる油圧式電動建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、運転席を有する車体と、前記車体に設けられた油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータを駆動するための圧油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプに作動油を供給するオイルタンクと、前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、を備えた油圧式電動建設機械において、前記運転席の暖房用の電動ヒータを備え、前記電動ヒータは、前記オイルタンクに隣接して配置されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電動ヒータの昇温速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態による電動式油圧ショベルを示す右側面図である。
図2】上部旋回体を外装カバーの一部を取外した状態で示す平面図である。
図3】上部旋回体を図2中の矢示III-III方向からみた斜視図である。
図4】オイルタンク、オイルクーラ、電動ファン等を上部旋回体の右側からみた斜視図である。
図5】オイルタンク、オイルクーラ、電動ファン、制御装置等を示す斜視図である。
図6】電動ヒータ、オイルタンク等を示す斜視図である。
図7】電動ヒータ、オイルタンク等を上部旋回体の前側からみた正面図である。
図8】電動ヒータ、空調ユニット、オイルタンク、電動ファン、制御装置等を示すブロック図である。
図9】電動ヒータ制御処置を示す流れ図である。
図10】第2の実施形態による電動ヒータ、オイルタンク等を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を、油圧式電動建設機械を代表する電動式油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0010】
なお、以下の説明では、電動式油圧ショベル1の前後方向は、前側を作業装置5側とし、後側を作業装置5とは反対側となるカウンタウエイト9側とする。また、電動式油圧ショベル1の左右方向は、前後方向と直交する方向とする。
【0011】
油圧式電動建設機械としての電動式油圧ショベル1(以下、油圧ショベル1という)は、例えば、土木、解体、地下工事等の作業現場で用いられる。実施形態の油圧ショベル1は、例えば、地下工事等の狭い作業現場での作業に適した小型(例えば、機械重量が1~6トン程度)の油圧ショベル(電動ミニショベル、電動式小型油圧ショベル)として構成されている。即ち、実施形態の油圧ショベル1は、後方超小旋回型油圧ショベルまたは後方小旋回型油圧ショベルに対応する。また、実施形態の油圧ショベル1は、キャブ仕様の油圧ショベル1として構成されている。
【0012】
油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4に設けられた作業装置5とを備えている。下部走行体2および上部旋回体4は、油圧ショベル1の車体を構成している。車体は、走行可能であり、かつ、旋回可能である。車体は、運転席8を有している。上部旋回体4の前側には、スイング式の作業装置5が揺動可能に取付けられている。油圧ショベル1は、作業装置5を用いて土砂の掘削作業等を行う。なお、作業装置5は、左右方向に揺動可能なスイング式に限らず、左右方向に揺動不能でもよい。
【0013】
下部走行体2は、例えば、無端状に形成されたトラックリンクに複数個のシューを取付けてなる履帯2Aと、履帯2Aを周回駆動させることにより油圧ショベル1を走行(自走)させる左右の走行用油圧モータ(図示せず)とを含んで構成されている。下部走行体2と上部旋回体4との間には、旋回軸受と旋回用油圧モータとを含んで構成される旋回装置が設けられている。下部走行体2の前側には、ブレードシリンダ(図示せず)の伸縮により上下方向に揺動するブレード3が取付けられている。
【0014】
フロント装置とも呼ばれる作業装置5は、旋回フレーム6の前側に左右方向に揺動可能に設けられたスイングポスト5Aを有している。スイングポスト5Aには、ブーム5Bが回動可能に取付けられている。ブーム5Bの先端には、アーム5Cが回動可能に取付けられている。アーム5Cの先端には、作業具としてのバケット5Dが回動可能に取付けられている。また、作業装置5は、スイングポスト5Aを揺動させるスイングシリンダ5Eと、ブーム5Bを回動させるブームシリンダ5Fと、アーム5Cを回動させるアームシリンダ5Gと、バケット5Dを回動させる作業具シリンダとしてのバケットシリンダ5Hとを備えている。スイングシリンダ5E、ブームシリンダ5F、アームシリンダ5G、バケットシリンダ5Hは、車体に設けられた油圧アクチュエータを構成している。
【0015】
上部旋回体4は、旋回装置の旋回用油圧モータが駆動することにより、下部走行体2上で旋回する。上部旋回体4は、支持構造体(ベースフレーム)となる旋回フレーム6を備えている。旋回フレーム6には、キャブ7、カウンタウエイト9、外装カバー10、電動モータ11、油圧ポンプ12、バッテリ装置13、オイルタンク14、コントロールバルブ装置(図示せず)等が搭載されている。この場合、旋回フレーム6の前側に作業装置5が取付けられており、旋回フレーム6の後側にカウンタウエイト9が取付けられている。
【0016】
キャブ7は、旋回フレーム6の左側に配置されている。キャブ7は、ボックス状に形成されている。キャブ7の内部は、オペレータの運転室となっている。キャブ7内には、オペレータが座る運転席8、油圧ショベル1を操作するための走行用レバー・ペダルおよび作業用レバー、各種情報が表示されるモニタ(いずれも図示せず)が設けられている。オペレータは、走行用レバー・ペダルおよび作業用レバーを操作することにより、下部走行体2による走行、上部旋回体4の旋回、作業装置5による掘削等を行うことができる。
【0017】
カウンタウエイト9は、作業装置5との重量バランスをとるために、キャブ7よりも後側に位置して旋回フレーム6の後端に設けられている。カウンタウエイト9は、左右方向に延びつつ、左右方向の中央が後方に突出した円弧状の重量物として形成されている。これにより、カウンタウエイト9の後面は、上部旋回体4が旋回したときに一定の旋回半径の仮想円内に収まる円弧面として形成されている。
【0018】
外装カバー10は、カウンタウエイト9の前側に位置して旋回フレーム6上に設けられている。図1に示すように、外装カバー10は、電動モータ11、油圧ポンプ12、バッテリ装置13、オイルタンク14等を、カウンタウエイト9と共に覆っている。
【0019】
電動モータ11は、油圧ショベル1の動力源である。電動モータ11は、油圧ポンプ12と機械的に、即ち、動力(回転)の伝達が可能な状態で接続されている。電動モータ11は、油圧ポンプ12を駆動する。電動モータ11は、バッテリ装置13からの電力供給または外部電源(図示せず)からの電力供給によって駆動する。
【0020】
例えばバッテリ装置13に充電が十分されているときに、電動モータ11は、バッテリ装置13からの電力によって駆動される。また、電動モータ11が給電ケーブル(図示せず)を介して外部電源に接続されているときには、電動モータ11は、外部電源からの電力によって駆動される。なお、バッテリ装置13は、給電ケーブルを介して外部電源に接続することができる。これにより、バッテリ装置13は、外部電源によって充電することができる。
【0021】
油圧ポンプ12は、コントロールバルブ装置を介してブームシリンダ5F等の各種の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ、油圧モータ)に圧油を供給する。コントロールバルブ装置は、複数の方向制御弁からなる制御弁群である。コントロールバルブ装置は、油圧ポンプ12から吐出された圧油を、走行用レバー・ペダルおよび作業用レバーの操作に応じてブームシリンダ5F等の複数の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ、油圧モータ)に分配する。これにより、油圧ショベル1は、走行、旋回、掘削等を行うことができる。
【0022】
オイルタンク14は、油圧ポンプ12に作動油を供給する。オイルタンク14は、油圧配管(図示せず)を通じて油圧ポンプ12に接続されている。オイルタンク14は、旋回フレーム6の右側に配置されている。オイルタンク14は、下部走行体2、作業装置5等に設けられた各油圧アクチュエータを駆動するための作動油を貯えている。ここで、オイルタンク14は、作動油の圧力が作用するために、金属製の板材を用いた上下方向に長尺な直方体状の耐圧容器として形成されている。
【0023】
図2ないし図7に示すように、オイルタンク14は、前面板14A、後面板14B、左面板14C、右面板14D、上面板14Eおよび下面板14Fによって構成されている。右面板14Dは、上部旋回体4の左右方向の外側に位置している。図5に示すように、オイルタンク14の後面板14Bには、作動油の温度を検出する温度センサ15が取付けられている。オイルタンク14の右面板14Dには、オイルクーラ16およびオイルクーラ冷却用の電動ファン26が取付けられている。このとき、オイルクーラ16は、オイルタンク14と電動ファン26とに挟まれている。オイルクーラ16は、各油圧アクチュエータからの戻り油が流通する放熱部を有している。オイルクーラ16は、戻り油の熱を冷却風中に放熱することにより、オイルタンク14に還流する作動油を冷却する。
【0024】
オイルタンク14の左面板14Cは、略平面状に形成されている。図6および図7に示すように、オイルタンク14には、ブラケット17を介して、電動ヒータ20が取付けられている。なお、オイルタンク14は、直方体形状に限らず、例えば三角柱形状、円柱形状、半球状等のように、他の形状でもよい。
【0025】
ブラケット17は、オイルタンク14に取付けられている。ブラケット17は、L字形状に折曲げられた平板によって形成されている。図7に示すように、オイルタンク14の上面板14Eには、固定部18Aが設けられている。オイルタンク14の左面板14Cには、固定部18Bが設けられている。固定部18A,18Bは、溶接等によってオイルタンク14に固定されている。固定部18A,18Bには、ボルト穴が形成されている。ブラケット17の一端は、固定部18Aにボルト19を用いて固定されている。ブラケット17の他端は、固定部18Bにボルト19を用いて固定されている。これにより、ブラケット17は、上面板14Eから左面板14Cにわたって延びている。
【0026】
電動ヒータ20は、運転席8の暖房に用いられる。電動ヒータ20は、例えば四角形の箱状に形成されている。図6に示すように、電動ヒータ20は、互いに対面する2枚の主面20A,20Bを有している。主面20Aと主面20Bとの間には、上面20C、下面20D、側面20E,20Fが設けられている。主面20A,20Bの面積は、上面20C、下面20D、側面20E,20Fの面積に比べて、大きくなっている。電動ヒータ20は、主面20Aがオイルタンク14の左面板14Cと対面した状態で、ブラケット17を用いてオイルタンク14に取付けられている。これにより、電動ヒータ20には、例えば熱輻射等によって、オイルタンク14からの熱が伝わる。電動ヒータ20は、側面20E,20Fが上下方向から傾斜した状態で、ボルト21を用いてブラケット17に締結されている。このとき、上面20Cは、電動ヒータ20の上側に位置して、車体前方に向けて傾斜している。
【0027】
電動ヒータ20は、例えばPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータによって構成されている。電動ヒータ20は、例えば水等の冷媒を加熱する。電動ヒータ20の発熱体は、例えばPTC半導体によって構成されている。電動ヒータ20の発熱体の温度は、負荷変動、電圧変動を生じても、ほぼ一定となる特性を有する。
【0028】
電動ヒータ20は、水(冷媒)の流入と流出が可能な配管口20G,20Hを有している。配管口20G,20Hは、電動ヒータ20の上面20Cに設けられている。配管口20G,20Hは、車体前方斜め上方向に向けて、上面20Cから突出している。配管口20G,20Hには、温水配管22がそれぞれ接続されている(図3参照)。図8に示すように、電動ヒータ20は、温水配管22を通じて、HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)と呼ばれる空調ユニット23に接続されている。具体的には、電動ヒータ20は、温水配管22を通じて、空調ユニット23のヒータコア24に接続されている。温水配管22の途中には、ポンプ25が取付けられている。ポンプ25は、電動ヒータ20と空調ユニット23との間で温水を循環させる。
【0029】
空調ユニット23は、例えば運転席8の下側に配置されている。暖房を使用するときには、オペレータは、暖房スイッチ(図示せず)をONにする。これにより、電動ヒータ20とポンプ25が駆動する。このとき、ポンプ25は、電動ヒータ20と空調ユニット23のヒータコア24との間で水を循環させる。電動ヒータ20は、内部を通過する水を加熱する。電動ヒータ20によって加熱された水(温水)は、ヒータコア24に供給される。空調ユニット23は、ヒータコア24にキャブ7の内部または外部の空気を供給する。ヒータコア24は、電動ヒータ20から供給された温水を用いて空気を暖める。空調ユニット23は、ヒータコア24によって生成した温風を、例えばオペレータの足元のようなキャブ7の内部に供給する。暖房スイッチがOFFになると、電動ヒータ20とポンプ25は停止する。
【0030】
電動ファン26は、オイルクーラ16に取付けられている。電動ファン26は、オイルクーラ冷却ファンを構成している。電動ファン26は、バッテリ装置13または外部電源からの電力供給によって駆動し、オイルクーラ16に冷却風を供給する。電動ファン26の駆動は、制御装置27によって制御されている。
【0031】
制御装置27は、後面板14Bの近傍に配置され、外装カバー10に覆われている。制御装置27の入力側は、例えば暖房スイッチ、温度センサ15等に接続されている。制御装置27の出力側は、電動ファン26に接続されている。
【0032】
また、制御装置27は、電動ヒータ20の動作状態と、温度センサ15の検出温度とに基づいて、オイルクーラ冷却用の電動ファン26を制御する。このため、制御装置27は、マイクロコンピュータを含んで構成されており、フラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなるメモリおよび演算回路(CPU)を有している。メモリには、電動ファン26を制御するための制御プログラムが格納されている。なお、制御装置27は、電動ファン26に限らず、電動モータ11、電動ヒータ20等を制御してもよい。
【0033】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有する。次に、暖房使用時の油圧ショベル1の動作について説明する。
【0034】
油圧ショベル1の稼動を開始するときには、作動油の粘性緩和や油圧機器を保護する観点から暖機運転を行う。そのとき、上部旋回体4に搭載されたオイルタンク14には、高温となった作動油が循環する。このため、オイルタンク14自体が高温となるから、オイルタンク14からの熱は、オイルタンク14の表面上に隣接して配置されている電動ヒータ20に伝わる。これにより、電動ヒータ20が昇温されるから、暖房使用時には、電動ヒータ20による温水の昇温時間を短縮することができる。これに加え、電動ヒータ20の昇温に必要なエネルギーも抑制することができるため、暖房使用時のエネルギー消費量を低減することができる。
【0035】
また、暖房を使用するときには、制御装置27は、温度センサ15から作動油の温度情報信号を受信する。これにより、制御装置27は、図9に示す電動ファン制御処理に基づいてオイルクーラ冷却用の電動ファン26の回転数制御を行う。なお、図9に示す電動ファン制御処理は、予め決められた所定時間毎に繰り返し実行される。
【0036】
まず、ステップ1では、制御装置27は、電動ヒータ20が駆動しているか否かを判定する。電動ヒータ20が駆動しているか否かは、暖房使用中か否かに基づいて判定する。このとき、暖房使用中か否かは、例えば暖房スイッチからの信号に基づいて判定する。電動ヒータ20が停止しているときには、ステップ1で「NO」と判定し、ステップ2に移行する。なお、ステップ1では、暖房スイッチからの信号に限らず、例えば電動ヒータ20の駆動信号や電動ヒータ20に供給される電流等に基づいて、電動ヒータ20が駆動しているか否かを判定してもよい。
【0037】
ステップ2では、制御装置27は、電動ヒータ20が停止しているから、電動ヒータ不使用時における電動ファン26の制御を行う。具体的には、制御装置27は、油圧アクチュエータの動作状況や作動油の温度に応じて、電動ファン26を駆動させる。ステップ2の処理が終了すると、リターンする。
【0038】
一方、電動ヒータ20が駆動している場合は、ステップ1で「YES」と判定し、ステップ3に移行する。ステップ3では、制御装置27は、作動油の実際の温度ΔTが設定温度を超えたか否かの判定を行う。設定温度は、作動油の温度が過度に上昇する前の温度であり、例えば80℃程度の値に予め設定されている。
【0039】
作動油の温度ΔTが設定温度よりも高い場合、ステップ3で「YES」と判定し、ステップ4に移行する。ステップ4では、制御装置27は、オイルクーラ冷却用の電動ファン26を駆動させる。ステップ4の処理が終了すると、リターンする。
【0040】
一方、作動油の温度ΔTが設定温度よりも低い場合、ステップ3で「NO」と判定し、ステップ5に移行する。ステップ5では、オイルクーラ冷却用の電動ファン26を停止させる。このように、例えば低温下の車体始動時には、電動ファン26を駆動させない。これにより、オイルタンク14の冷却を抑止して、電動ヒータ20の昇温速度を高めることができる。ステップ5の処理が終了すると、リターンする。
【0041】
制御装置27は、電動ヒータ20の使用中は作動油の温度ΔTに応じて電動ファン26の駆動と停止を切り換える。このため、例えば停止状態の機体を駆動させてアイドリング駐車する際などに、作動油の温度ΔTに応じて電動ファン26を停止させることができる。このため、作動油の温度ΔTが低くなり過ぎるのを防止することができる。
【0042】
なお、制御装置27は、作動油の温度ΔTに応じて、電動ファン26の駆動と停止を制御するものとした。本発明はこれに限らず、制御装置27は、作動油の温度ΔTに応じて、電動ファン26の回転数を制御してもよい。このとき、作動油の温度ΔTが低いときには、制御装置27は、電動ファン26を低速回転させる。作動油の温度ΔTが高いときには、制御装置27は、電動ファン26を高速回転させる。
【0043】
また、暖房使用時でも暖房不使用時と同様に電動ファン26を駆動させてもよい。この場合、電動ファン26は、油圧アクチュエータの動作状況や作動油の温度に応じて、電動ファン26を駆動させてもよい。さらに、電動ヒータ20の昇温時間は鈍化するが、暖房使用の有無に関係なく、油圧ショベル1の稼働時や暖気運転時には、電動ファン26を常に駆動させてもよい。
【0044】
かくして、第1の実施形態によれば、油圧ショベル1は、運転席8を有する車体と、車体に設けられた油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータを駆動するための圧油を吐出する油圧ポンプ12と、油圧ポンプ12に作動油を供給するオイルタンク14と、油圧ポンプ12を駆動する電動モータ11と、を備えている。また、油圧ショベル1は電動ヒータ20を備え、電動ヒータ20は、オイルタンク14に隣接して配置されている。このとき、油圧アクチュエータの駆動や暖機運転によって、オイルタンク14には、高温となった作動油が循環する。このため、オイルタンク14自体が高温となるから、オイルタンク14からの熱は、オイルタンク14の表面上に隣接して配置されている電動ヒータ20に伝わる。これにより、電動ヒータ20が昇温されるから、暖房使用時には、電動ヒータ20による温水の昇温時間を短縮することができる。これに加え、電動ヒータ20の昇温に必要なエネルギーも抑制することができるため、暖房使用時のエネルギー消費量を低減することができる。
【0045】
また、オイルタンク14は、油圧機器管路中で最も放熱面積が大きい。このため、オイルタンク14に電動ヒータ20を設置したことによって、作動油からの熱を電動ヒータ20に供給するときの伝熱効率が最も高くなる。
【0046】
第1の実施形態では、オイルタンク14にブラケット17を設けると共に、電動ヒータ20は、ブラケット17に取付けられている。このとき、電動ヒータ20は、オイルタンク14に対して定量的な位置に組み付けられる。このため、電動ヒータ20とオイルタンク14との位置関係に従って、オイルタンク14からの熱を電動ヒータ20に供給することができる。これに加え、オイルタンク14に直接ねじを切ることなく、オイルタンク14に電動ヒータ20を取付けることができる。このため、オイルタンク14からの油漏れの心配が無いのに加え、電動ヒータ20の着脱も容易となる。
【0047】
第1の実施形態では、油圧ショベル1は、オイルタンク14に設けられ、作動油の温度を検出する温度センサ15と、温度センサ15の信号に基づいて電動ファン26(オイルクーラ冷却ファン)の回転数を制御する制御装置27と、を備えている。制御装置27は、電動ヒータ20の駆動中であって温度センサ15の検出温度(温度ΔT)が設定温度以下である場合に、オイルクーラ冷却用の電動ファン26の回転を停止させる。このため、例えば低温下の車体始動時では、電動ファン26を駆動させないことで、電動ヒータ20の昇温を促進させることができ、空気の昇温速度を高めることができる。
【0048】
次に、図10は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、電動ヒータがオイルタンクに直接取付けられていることにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
第2の実施形態のオイルタンク31は、第1の実施形態によるオイルタンク14とほぼ同様に構成されている。このため、オイルタンク31は、前面板31A、後面板31B、左面板31C、右面板31D、上面板31Eおよび下面板31Fを備えている。但し、第2の実施形態では、オイルタンク31の左面板31Cにねじを切り、電動ヒータ20をオイルタンク31にボルト21によって締結させる。この場合、オイルタンク31からの油漏れが無いようにするために、オイルタンク31のねじ切り部には、シール剤やシールワッシャを使用する。
【0050】
かくして、このように構成される第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第2の実施形態では、オイルタンク31に電動ヒータ20を直接締結している。このため、第2の実施形態では、第1の実施形態に比べて、オイルタンク31から電動ヒータ20への熱移動量が多くなるから、電動ヒータ20の昇温速度を高めることができる。
【0051】
なお、前記各実施形態では、電動ヒータ20は、オイルタンク14,31の左面板14C,31Cと対面した位置に取付けるものとした。本発明はこれに限らず、オイルタンクからの熱が電動ヒータに伝導すればよく、電動ヒータは、オイルタンクの他の位置に取付けられてもよい。
【0052】
また、前記各実施形態では、油圧式電動建設機械としてクローラ式の下部走行体2を備えた後方超小旋回型の油圧ショベルを例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば超小旋回型の油圧ショベル、標準仕様の油圧ショベル、ホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン等の油圧式電動建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 電動式油圧ショベル(油圧式電動建設機械)
2 下部走行体(車体)
4 上部旋回体(車体)
7 キャブ
8 運転席
11 電動モータ
12 油圧ポンプ
14,31 オイルタンク
15 温度センサ
16 オイルクーラ
17 ブラケット
20 電動ヒータ
23 空調ユニット
26 電動ファン(オイルクーラ冷却ファン)
図1
図2
図3
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図10