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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168589
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】給油部材を備えるロータリー圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/02 20060101AFI20221031BHJP
   F04C 18/356 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
F04C29/02 311B
F04C18/356 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074157
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴之
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA04
3H129AA13
3H129AB03
3H129BB06
3H129CC04
3H129CC33
(57)【要約】
【課題】潤滑が必要な部品へ潤滑油を安定的に供給する。
【解決手段】ロータリー圧縮機(90A)は、ケーシング(10)と、圧縮機構(40)と、給油部材(60)と、を備える。ケーシング(10)は、潤滑油を貯留する油貯留部(17)を内部に有する。圧縮機構(40)は、シリンダ(41)、ピストン(42)、及びベーン(43)を有する。ピストン(42)は、シリンダ(41)に接しかつ移動する。ピストン(42)は円筒状である。ベーン(43)は、シリンダ(41)及びピストン(42)と協働して圧縮室(45)を画定する。給油部材(60)は、毛細管現象によって油貯留部(17)の潤滑油をベーン(43)へ供給する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油を貯留する油貯留部(17)を内部に有するケーシング(10)と、
シリンダ(41)、前記シリンダに接しかつ移動する円筒状のピストン(42)、及び、前記シリンダ及び前記ピストンと協働して圧縮室(45)を画定するベーン(43)を有する圧縮機構(40)と、
毛細管現象によって前記油貯留部の前記潤滑油を前記ベーンへ供給する給油部材(60)と、
を備える、ロータリー圧縮機(90A~90G)。
【請求項2】
前記給油部材は、複数の管(61)を有する、
請求項1に記載のロータリー圧縮機。
【請求項3】
前記複数の管は5本以上の管であり、
前記複数の管の各々の直径は1mm以下である、
請求項2に記載のロータリー圧縮機。
【請求項4】
前記複数の管の少なくとも1つは、繊維(62)又は多孔質体(63)を内部に有する、
請求項2又は請求項3に記載のロータリー圧縮機。
【請求項5】
前記給油部材は、繊維(64)を有する、
請求項1に記載のロータリー圧縮機。
【請求項6】
前記給油部材は、多孔質体(65)を有する、
請求項1に記載のロータリー圧縮機。
【請求項7】
前記ベーンの第1方向(M1)の移動に起因する前記給油部材の膨張によって、前記給油部材は前記潤滑油を保持し、
前記ベーンの、前記第1方向とは逆の第2方向(M2)の移動に起因する前記給油部材の圧縮によって、前記給油部材は前記潤滑油を放出する、
請求項5又は請求項6に記載のロータリー圧縮機。
【請求項8】
前記シリンダは、前記ピストンを収容する第1空洞(41a)、及び、前記ベーンを収容する第2空洞(41b)を有し、
前記ベーンは、前記第1空洞に面する第1端(43a)、及び、前記第1端と反対側の第2端(43b)を有し、
前記給油部材は、前記第2端へ前記潤滑油を供給する、
請求項1から7のいずれか1項に記載のロータリー圧縮機。
【請求項9】
前記給油部材は、前記油貯留部に配置される油取得端(64a)を有し、
前記油取得端は湾曲部(64b)を有し、
前記油取得端は、前記ケーシングの底部(13)の中央から前記潤滑油を取得する、
請求項1から8のいずれか1項に記載のロータリー圧縮機。
【請求項10】
前記ベーンは、前記ピストンと一体に形成されている、
請求項1から9のいずれか1項に記載のロータリー圧縮機。
【請求項11】
前記ベーンは、前記ピストンと別体に形成されている、
請求項1から9のいずれか1項に記載のロータリー圧縮機。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のロータリー圧縮機、
を備える、空気調和機(400A)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特に空気調和機に搭載される、給油部材を備えるロータリー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2000-179472号公報)に開示されるロータリー圧縮機は、圧縮機構と、この圧縮機構を構成する部品へ潤滑油を供給する油供給手段とを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の油供給手段は、油溜まりに貯留された潤滑油を部品の場所まで持ち上げるための動力として、油貯留部の近傍と部品の近傍における冷媒の圧力の差を利用する。したがって、冷媒の圧力差が十分に確保されない状況においては、潤滑油の供給が滞る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点のロータリー圧縮機は、ケーシングと、圧縮機構と、給油部材と、を備える。ケーシングは、潤滑油を貯留する油貯留部を内部に有する。圧縮機構は、シリンダ、ピストン、及び、ベーンを有する。ピストンは、シリンダに接しかつ移動する。ピストンは円筒状である。ベーンは、シリンダ及びピストンと協働して圧縮室を画定する。給油部材は、毛細管現象によって油貯留部の潤滑油をベーンへ供給する。
【0005】
この構成によれば、給油部材が毛細管現象によって潤滑油を移動させる。したがって、潤滑油の移動が、ケーシング内の冷媒の圧力の影響を受けにくいので、潤滑油のベーンへの供給が安定する。
【0006】
第2観点のロータリー圧縮機は、第1観点のロータリー圧縮機であって、給油部材が、複数の管を有する。
【0007】
この構成によれば、複数の管が潤滑油の移動に関与する。したがって、一部の管の破損があっても、潤滑油のベーンへの供給が停止するおそれが少ない。
【0008】
第3観点のロータリー圧縮機は、第2観点のロータリー圧縮機であって、複数の管が5本以上の管である。複数の管の各々の直径は1mm以下である。
【0009】
この構成によれば、5本以上の小径管が潤滑油の移動に関与する。したがって、毛細管現象を効果的に利用できる。
【0010】
第4観点のロータリー圧縮機は、第2観点又は第3観点のロータリー圧縮機であって、複数の管の少なくとも1つは、繊維又は多孔質体内部に有する。
【0011】
この構成によれば、管の内部に繊維又は多孔質体が配置される。したがって、毛細管現象をより効果的に利用できる。
【0012】
第5観点のロータリー圧縮機は、第1観点のロータリー圧縮機であって、給油部材が、繊維を有する。
【0013】
この構成によれば、給油部材は繊維を有する。したがって、繊維が毛細管現象を効果的に生じさせるので、潤滑油のベーンへの供給がより安定する。
【0014】
第6観点のロータリー圧縮機は、第1観点のロータリー圧縮機であって、給油部材は、多孔質体を有する。
【0015】
この構成によれば、給油部材は多孔質体を有する。したがって、多孔質体が毛細管現象を効果的に生じさせるので、潤滑油のベーンへの供給がより安定する。
【0016】
第7観点のロータリー圧縮機は、第5観点又は第6観点のロータリー圧縮機であって、ベーンの第1方向の移動に起因する給油部材の膨張によって、給油部材は潤滑油を保持する。ベーンの、第2方向の移動に起因する給油部材の圧縮によって、給油部材は潤滑油を放出する。第2方向は、第1方向とは逆の方向である。
【0017】
この構成によれば、ベーンの往復運動により、給油部材からの潤滑油の放出が行われる。したがって、ベーンに対する潤滑油の供給量を高く保つことができる。
【0018】
第8観点のロータリー圧縮機は、第1観点から第7観点のいずれか1つのロータリー圧縮機であって、シリンダが、ピストンを収容する第1空洞、及び、ベーンを収容する第2空洞を有する。ベーンは、第1空洞に面する第1端、及び、第1端と反対側の第2端を有する。給油部材は、第2端へ潤滑油を供給する。
【0019】
この構成によれば、ベーンの第2端へ潤滑油が供給される。したがって、シリンダ及びピストンへの給油機構によっては不足しがちであったベーンの潤滑を向上できる。
【0020】
第9観点のロータリー圧縮機は、第1観点から第8観点のいずれか1つのロータリー圧縮機であって、給油部材が、油貯留部に配置される油取得端を有する。油取得端は湾曲部を有する。油取得端は、ケーシングの底部の中央から潤滑油を取得する。
【0021】
この構成によれば、給油部材は油貯留部の中心から潤滑油を取得する。したがって、給油部材は、潤滑油を安定して取得する。
【0022】
第10観点のロータリー圧縮機は、第1観点から第9観点のいずれか1つのロータリー圧縮機であって、ベーンが、ピストンと一体に形成されている。
【0023】
この構成によれば、ピストンとベーンは一体である。したがって、ロータリー圧縮機の効率を向上できる。
【0024】
第11観点のロータリー圧縮機は、第1観点から第9観点のいずれか1つのロータリー圧縮機であって、ベーンが、ピストンと別体に形成されている。
【0025】
この構成によれば、ピストンとベーンは別体である。したがって、摩擦熱によって高温になりがちなピストンとベーンを、潤滑油によって効率的に冷却することができる。
【0026】
第12観点の空気調和機は、第1観点から第11観点のいずれか1つのロータリー圧縮機、を備える。
【0027】
この構成によれば、空気調和機において、圧縮機のベーンへの潤滑油の供給が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態に係る空気調和機400Aの回路図である。
図2】圧縮機90Aの垂直面に沿った断面図である。
図3】圧縮機構の水平面に沿った断面図である。
図4】圧縮機90Aの拡大断面図である。
図5】第1実施形態の第1変形例に係る空気調和機の圧縮機90Bの拡大断面図である。
図6】第1実施形態の第2変形例に係る空気調和機の圧縮機90Cの拡大断面図である。
図7】第1実施形態の第3変形例に係る空気調和機の圧縮機90Dに搭載される、圧縮機構40の水平面に沿った断面図である。
図8】第2実施形態に係る空気調和機の圧縮機90Eの拡大断面図である。
図9】第2実施形態の第1変形例に係る空気調和機の圧縮機90Fの拡大断面図である。
図10】第3実施形態に係る空気調和機の圧縮機90Gの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1実施形態>
(1)全体構成
図1は、第1実施形態に係る空気調和機400Aを示す。空気調和機400Aは、室外ユニット100、室内ユニット200、連絡配管300を有する。
【0030】
室外ユニット100は、圧縮機90A、四路切換弁110、室外熱交換器120、室外ファン130、室外膨張弁140、液閉鎖弁150、ガス閉鎖弁160を有する。
【0031】
室内ユニット200は、室内熱交換器220、室内ファン230を有する。
【0032】
連絡配管300は、液連絡配管310及びガス連絡配管320を有する。
【0033】
空気調和機400Aが冷房運転を行う場合、四路切換弁110は図1の実線の接続を形成し、冷媒は矢印Cの方向に循環する。冷房運転において、室内熱交換器220は蒸発器として機能し、室内ファン230と協働してユーザに冷たい空気を提供する。空気調和機400Aが暖房運転を行う場合、四路切換弁110は図1の破線の接続を形成し、冷媒は矢印Hの方向に循環する。暖房運転において、室内熱交換器220は凝縮器として機能し、室内ファン230と協働してユーザに温かい空気を提供する。
【0034】
(2)圧縮機90Aの詳細構成
図2は、圧縮機90Aを示す。圧縮機90Aは、低圧ガス冷媒を吸入し、それを圧縮することによって、高圧ガス冷媒を生成する。圧縮機90Aは、ロータリー圧縮機である。圧縮機90Aは、ケーシング10、吸入管15、吐出管16、モータ20、クランク軸30、圧縮機構40、給油機構50、給油部材60を有する。
【0035】
(2-1)ケーシング10、吸入管15、吐出管16
ケーシング10は、圧縮機90Aの各種構成要素、冷媒、潤滑油を収容する。ケーシング10は、気密的に接続された胴部11、蓋部12、及び底部13を有する。
【0036】
胴部11には、低圧ガス冷媒を吸入するための吸入管15が取り付けられている。胴部11には、また、高圧ガス冷媒を吐出するための吐出管16が取り付けられている。
【0037】
ケーシング10の内部には、潤滑油が貯留される油貯留部17が存在する。油貯留部17は、底部13の近傍に位置する。
【0038】
(2-2)モータ20
モータ20は、圧縮機90Aの外部から電力の供給を受け、圧縮機構40を駆動する動力を発生する。モータ20は、胴部11に取り付けられている。モータ20は、ステータ21、及びロータ22を有する。
【0039】
ステータ21は円筒形状を有し、胴部11に固定されている。ステータ21は電力を交流磁界に変換する。
【0040】
ロータ22はステータ21の内側に配置される。ロータ22は、ステータ21が発する交流磁界と相互作用することによって回転する。
【0041】
(2-3)クランク軸30
クランク軸30はロータ22に固定されており、ロータ22とともに回転軸心RAを中心として回転する。クランク軸30は、ロータ22が生み出す回転力を圧縮機構40へ伝達する。
【0042】
クランク軸30は、回転軸心RAと同心である主軸部31と、回転軸心RAに対して偏心している偏心部32を有する。主軸部31の一部はロータ22に固定される。偏心部32は、圧縮機構40の中に位置する。
【0043】
(2-4)圧縮機構40
圧縮機構40は、低圧ガス冷媒を圧縮することによって高圧ガス冷媒を生成する。圧縮機構40は、シリンダ41、ピストン42、ベーン43、スプリング44、フロントヘッド46、リアヘッド47、マフラ48、を有する。
【0044】
図3は、圧縮機構40を示す断面図である。シリンダ41は剛体製の部品である。シリンダ41には、第1空洞41a、第2空洞41b、及び、吸入ポート41cが設けられている。第1空洞41aにはピストン42が収容される。第2空洞41bにはベーン43が収容される。第1空洞41aと第2空洞41bは互いに接続している。吸入ポート41cは高圧ガス冷媒を取り込むためのものであり、吸入管15に接続されている。
【0045】
ピストン42は、円筒状の部材である。ピストン42の空洞には偏心部32が取り付けられる。ピストン42は、クランク軸30の回転によって、シリンダ41に接触しながら公転運動をする。
【0046】
ベーン43は、平板状の部材である。ベーン43を収容している第2空洞41bの一部は、ベーン後部空間41dであり、そこにはスプリング44が取り付けられているベーン43は第1端43a及び第2端43bを有する。第1端43aは第1空洞41aに面する。第2端43bは第1端43aと反対側であり、ベーン後部空間41dに面する。スプリング44は、ベーン43の第1端43aをピストン42に押し付ける。これにより、ベーン43は、ピストン42の動きに追従して往復運動をする。すなわち、ピストン42が第2空洞41bから離間するように動くとき、ベーン43は第2空洞41bから突出するように第1方向M1へ移動する。一方、ピストン42が第2空洞41bへ接近するように動くとき、ベーン43は第2空洞41bへ後退するように第2方向M2へ移動する。
【0047】
ベーン43は、シリンダ41及びピストン42と協働して圧縮室45を画定する。圧縮室45は、互いに接触するシリンダ41、ピストン42、及びベーン43によって囲まれる空間である。圧縮室45は、第1圧縮室45a及び第2圧縮室45bを含む。第1圧縮室45aは、クランク軸30の回転にしたがって容積を増加させる。第1圧縮室45aは、低圧ガス冷媒を取り込むのに用いられる。第2圧縮室45bは、クランク軸30の回転にしたがって容積を減少増加させる。第2圧縮室45bは、冷媒の圧力を高めるのに用いられる。
【0048】
図4は、圧縮機構40を示す別の断面図である。フロントヘッド46はシリンダ41の上面を塞ぐ。フロントヘッド46には、圧縮室45から高圧ガス冷媒を吐出するための吐出ポート46aが設けられている。フロントヘッド46は大きな直径を有している。フロントヘッド46はケーシング10の胴部11に固定される。これによって、圧縮機構40の全体がケーシング10に対して固定される。リアヘッド47はシリンダ41の下面を塞ぐ。マフラ48は、吐出ポート46aを覆うようにフロントヘッド46に取り付けられる。マフラ48は、吐出ポート46aから吐出される高圧ガス冷媒の圧力の脈動に起因する騒音を低減する。
【0049】
(2-5)給油機構50
給油機構50は油貯留部17の潤滑油を、例えばピストン42へ供給するためのものである。給油機構50は、クランク軸30に設けられた通路51を少なくとも含む。通路51の下端は、油貯留部17の潤滑油に達している。給油機構50は、油貯留部17の近傍とピストン42の近傍における冷媒の圧力の差を利用することによって潤滑油をピストン42へ供給してもよい。あるいは、給油機構50は、潤滑油を移動させる動力源としてクランク軸30の回転を利用してもよい。
【0050】
(2-6)給油部材60
給油部材60は、油貯留部17の潤滑油をベーン後部空間41dへ供給するためのものである。これによって、少なくともベーン43の第2端43bへ潤滑油が供給される。給油部材60は毛細管現象を利用して潤滑油を移動させる。
【0051】
給油部材60は、複数の管61を有する。複数の管61の数は、好ましくは5本以上である。複数の管61の各々の直径は、好ましくは1mm以下である。この条件により、給油部材60は毛細管現象を効果的に発揮する。
【0052】
(3)圧縮機構40の動作
図3の圧縮機構40において、クランク軸30の偏心部32は右回りに回転し、それによってピストン42は時計回りに公転する。ピストン42が第2空洞41bから離間するように動くとき、ベーン43は第1方向M1へ移動する。このとき、第1圧縮室45aの容積は増加する。低圧ガス冷媒が、圧縮機の外部から吸入ポート41cを経由して第1圧縮室45aへ入る。ピストン42の公転に伴い、第1圧縮室45aは第2圧縮室45bへ転じるとともに、新たな第1圧縮室45aが生じる。
【0053】
ピストン42が第2空洞41bへ接近するように動くとき、ベーン43は第2方向M2へ移動する。このとき、第2圧縮室45bの容積は減少する。このとき、低圧ガス冷媒は圧縮されて、高圧ガス冷媒へと転じてゆく。高圧ガス冷媒の圧力が所定値まで大きくなるとき、第2圧縮室45bの冷媒は、吐出ポート46aを経由して圧縮機構40の外部へ吐出される。
【0054】
(4)特徴
(4-1)
給油部材60の管61が毛細管現象によって潤滑油を移動させる。したがって、潤滑油の移動が、ケーシング10の内部の冷媒の圧力の影響を受けにくいので、潤滑油のベーン43への供給が安定する。
【0055】
(4-2)
複数の管61が潤滑油の移動に関与する。したがって、一部の管61の破損があっても、潤滑油のベーン43への供給が停止するおそれが少ない。
【0056】
(4-3)
好ましくは、5本以上の小径管が潤滑油の移動に関与する。このとき、毛細管現象を特に効果的に利用できる。
【0057】
(4-4)
ベーン43の第2端43bへ潤滑油が供給される。したがって、給油機構50によるシリンダ41及びピストン42への給油によっては不足しがちであったベーン43の潤滑を向上できる。
【0058】
(4-5)
ピストン42とベーン43は別体である。したがって、摩擦熱によって高温になりがちなピストン42とベーン43を、潤滑油によって効率的に冷却することができる。
【0059】
(4-6)
圧縮機90Aの搭載により、空気調和機400Aの動作が安定する。
【0060】
(5)変形例
(5-1)第1実施形態の第1変形例
第1実施形態の空気調和機400Aに搭載される圧縮機90Aにおいて、給油部材60に含まれる複数の管61は、いずれも、特段その内部に他の部材を有していない。これに代えて、図5に示す圧縮機90Bに見られるように、複数の管61の少なくとも1つは、繊維62を内部に有していてもよい。
【0061】
この構成によれば、管61の内部に配置された繊維62の存在によって、毛細管現象をより効果的に利用できる。
【0062】
(5-2)第1実施形態の第2変形例
第1実施形態の空気調和機400Aに搭載される圧縮機90Aにおいて、給油部材60に含まれる複数の管61は、いずれも、特段その内部に他の部材を有していない。これに代えて、図6に示す圧縮機90Cに見られるように、複数の管61の少なくとも1つは、多孔質体63を内部に有していてもよい。
【0063】
この構成によれば、管61の内部に配置された多孔質体63の存在によって、毛細管現象をより効果的に利用できる。
【0064】
(5-3)第1実施形態の第3変形例
第1実施形態の空気調和機400Aに搭載される圧縮機90Aにおいて、ピストン42とベーン43は別個の部品である。これに代えて、図7に示す圧縮機90Dの圧縮機構40に見られるように、ピストン42とベーン43は一体の部品として形成されてもよい。第2空洞41bには一対のブッシュ49が配置されている。一対のブッシュ49は、ベーン43の両側においてベーン43を支持する。ピストン42の公転運動に合わせて、ベーン43は揺動運動及び往復運動を行う。ベーン43の往復運動は、概ね第1方向M1及び第2方向M2に沿って行われる。ベーン43はピストン42に接合しているので、圧縮機構40はベーン43をピストン42へ向かって押すためのスプリング44を有しない。
【0065】
この構成によれば、一体形成されたピストン42及びベーン43を有する圧縮機構40に潤滑油が安定的に供給される。
【0066】
<第2実施形態>
(1)構成
図8は、第2実施形態に係る空気調和機に搭載される圧縮機90Eを示す。圧縮機90Eにおいては、第1実施形態の圧縮機90Aとは異なり、給油部材60が必ずしも管61を有しない。給油部材60は、繊維64を有する。
【0067】
(2)動作
繊維64は、毛細管現象によって、油貯留部17の潤滑油をベーン後部空間41dへ移動させる。
【0068】
ベーン43が第1方向M1へ移動するとき、繊維64は膨張するか又は形状を保つ。このとき、繊維64におけるベーン後部空間41dに位置する部位は潤滑油を保持している。
【0069】
ベーン43が第2方向M2へ移動するとき、繊維64はベーン43によって押され、圧縮される。このとき、繊維64が保持している潤滑油は放出され、少なくともベーン43の第2端43bへ供給される。
【0070】
(3)特徴
繊維64が毛細管現象を効果的に生じさせるので、潤滑油のベーン43への供給がより安定する。
【0071】
加えて、ベーン43の往復運動により、給油部材60の繊維64からの潤滑油の放出が行われる。したがって、ベーン43に対する潤滑油の供給量を高く保つことができる。
【0072】
(4)変形例
(4-1)第2実施形態の第1変形例
第2実施形態の圧縮機90Eにおいては、給油部材60の繊維64が、油貯留部17のどこから潤滑油を取得するかについては特に言及されていない。
【0073】
図9は、第2実施形態の第1変形例の圧縮機90Fを示す。圧縮機90Fにおいて、繊維64を有する給油部材60は、油取得端64aを有する。油取得端64aは油貯留部17に配置される。油取得端64aは湾曲部64bを有する。油取得端64aは、ケーシング10の底部13の中央13aから潤滑油を取得する。
【0074】
この構成によれば、給油部材60は油貯留部17の中心から潤滑油を取得する。したがって、給油部材60は、潤滑油を安定して取得する。
【0075】
(4-2)第2実施形態の第2変形例
第1実施形態の各変形例を、第2実施形態の構成にも適用することができる。
【0076】
<第3実施形態>
(1)構成
図10は、第3実施形態に係る空気調和機に搭載される圧縮機90Gを示す。圧縮機90Fにおいては、第1実施形態の圧縮機90Aとは異なり、給油部材60が必ずしも管61を有しない。給油部材60は、多孔質体65を有する。
【0077】
(2)動作
第3実施形態においても、ベーン43の動作は第2実施形態と同様である。ベーン43の往復運動により、給油部材60の多孔質体65が保持している潤滑油が放出される。
【0078】
(3)特徴
多孔質体65が毛細管現象を効果的に生じさせるので、潤滑油のベーン43への供給がより安定する。
【0079】
加えて、ベーン43の往復運動により、給油部材60の多孔質体65からの潤滑油の放出が行われる。したがって、ベーン43に対する潤滑油の供給量を高く保つことができる。
【0080】
(4)変形例
第1実施形態及び第2実施形態の各変形例を、第3実施形態の構成にも適用することができる。
【0081】
<むすび>
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0082】
10 :ケーシング
11 :胴部
12 :蓋部
13 :底部
17 :油貯留部
20 :モータ
30 :クランク軸
40 :圧縮機構
41 :シリンダ
41a :第1空洞
41b :第2空洞
41c :吸入ポート
41d :ベーン後部空間
42 :ピストン
43 :ベーン
43a :第1端
43b :第2端
44 :スプリング
45 :圧縮室
45a :第1圧縮室
45b :第2圧縮室
50 :給油機構
51 :通路
60 :給油部材
61 :管
62 :繊維
63 :多孔質体
64 :繊維
64a :油取得端
64b :湾曲部
65 :多孔質体
90A~90G:圧縮機
100 :室外ユニット
200 :室内ユニット
300 :連絡配管
400A :空気調和機
M1 :第1方向
M2 :第2方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【特許文献1】特開2000-179472号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10