(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168620
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】化粧シートおよび化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074209
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】木下 一喜
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK25A
4F100AT00D
4F100AT00E
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100BA42A
4F100BA42C
4F100CA13C
4F100DG10D
4F100HB00C
4F100JB14A
4F100JL10C
4F100JN01B
4F100JN21A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】より本物に近い質感を持ち、優れた意匠性を有する化粧シートを提供する。
【解決手段】絵柄層2が、淡色部2a、および淡色部2aよりも色が濃い濃色部2bを含むようにした。また、表面保護層4が、高光沢部4a、および高光沢部4aよりも光沢度が低い低光沢部4bを含むようにした。そして、表面保護層4側から見た際に、濃色部2bと低光沢部4bとが同調するように、濃色部2bと低光沢部4bとが重なっている構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絵柄層、透明樹脂層および表面保護層がこの順に積層された化粧シートであって、
前記絵柄層は、淡色部および前記淡色部よりも色が濃い濃色部を含み、
前記表面保護層は、高光沢部および前記高光沢部よりも光沢度が低い低光沢部を含み、
前記表面保護層側から見た際に、前記濃色部と前記低光沢部とが同調するように、前記濃色部と前記低光沢部とが重なっている
化粧シート。
【請求項2】
前記淡色部と前記濃色部とのCIE1976L*a*b*色空間における色差ΔEが5以上である
請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記高光沢部と前記低光沢部との85度鏡面光沢度の差が2%以上である
請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記低光沢部の85度鏡面光沢が8%以下である
請求項1から3の何れか1項に記載した化粧シート。
【請求項5】
前記絵柄層の前記透明樹脂層側の面と反対側の面に配置された基材シートを備える
請求項1から4の何れか1項に記載した化粧シート。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の化粧シートと、
前記化粧シートと貼り合わせた基材とを備える
化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の化粧シートおよび化粧材に関する。特に、木質系の基材等に貼り合わせて建具材や床材、その周辺に用いることのできる、意匠性に優れる化粧シートおよびその化粧材に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
化粧シートは、住宅建築が産業として発展する過程で開発され、発展をしてきた。もともと、住宅は、木材や石材など地域の特性にあわせた材料が用いられてきたが、住宅産業の発展とともに工業化が進み、天然素材から人工素材への転換が行われてきた。また、近年では、高級な木材や石材を多用することが、森林破壊や環境問題に繋がる恐れがあることも、化粧シートの需要を拡大させる一要因となっている。例えば、合板、MDF(中質繊維版)、パーティクルボード等の木質基材、樹脂基材、無機不燃基材、金属基材等に化粧シートを貼り合わせた化粧材が広く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
また、化粧シートの意匠としては、木材や石材などの表面を模されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、化粧シートは、本物の木材や石材などと比較すると、表面の質感が平坦になりやすい。実際の木材や石材は、表面の材質や構造等の違いによって場所ごとに凹凸に差があり質感の差が存在する。質感が違う部分では色味も異なることが多いが、化粧シートではその表現がされておらず、意匠面では高価な本物のほうが大きく優れている。
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであり、より本物に近い質感を持ち、優れた意匠性を有する化粧シートおよび化粧材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である化粧シートは、(a)絵柄層、透明樹脂層および表面保護層がこの順に積層された化粧シートであって、(b)絵柄層は、淡色部および淡色部よりも色が濃い濃色部を含み、(c)表面保護層は、高光沢部および高光沢部よりも光沢度が低い低光沢部を含み、(d)表面保護層側から見た際に、濃色部と低光沢部とが同調するように、濃色部と低光沢部とが重なっている。
また、本発明の一態様である化粧材は、(a)上記の化粧シートと、(b)化粧シートと貼り合わせた基材とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、建材に使用される木材や石材などの表面の質感に近い質感を持ち、優れた意匠性を有する化粧シートおよび化粧材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る化粧シートの断面構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明を行う。
本実施形態では、床用又は建具用の化粧シートおよび化粧材を例に挙げて説明するが、他の部位に使用する化粧シートおよび化粧材であってもよい。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、および構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0009】
本実施形態の化粧シート1は、
図1に示すように、絵柄層2、透明樹脂層3、表面保護層4をこの順に積層して形成されている。
図1では、絵柄層2の透明樹脂層3側の面と反対側の面に基材シート5が配置された場合を例示している。また、化粧シート1を基材6に貼り合わせることで、本実施形態の化粧材7が構成される。
【0010】
[基材]
基材6としては、例えば、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、日本農林規格に規定される普通合板、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材を採用できる。また、例えば、アルミなどの金属、プラスチックなどの樹脂、またはこれらの複合材料であってもよい。基材6の厚さは、3mm以上25mm以下が好適である。
【0011】
[基材シート]
基材シート5としては、例えば、紙、プラスチックフィルムを採用できる。例えば、コート紙、熱可塑性樹脂フィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン- アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等が挙げられる。特に、環境適合性、加工性、価格を考慮すれば、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。また、樹脂のグレードや組成は、環境適合性、加工性、価格のほかにも、シーティングの容易さや印刷適性、曲げ加工に対する適性を考慮して選択することができる。
【0012】
基材シート5を着色する場合には、化粧シート1を貼り合せる基材6を隠蔽し、また絵柄層2の下地色となるように色相を適宜選択することができる。基材シート5の着色方法としては、例えば、熱可塑性樹脂のシーティングに際して、顔料などの着色剤を混合、練りこむなどの方法を採用できる。また、絵柄層2を設ける前にベタインキ層として、コーティングあるいは印刷の手法を用いて絵柄層2の下に着色層を設ける方法を採用できる。
【0013】
[絵柄層]
絵柄層2は、化粧シート1や化粧材7に意匠性を付与するために、絵柄模様が印刷された印刷層である。絵柄層2の形成方法としては、既知の印刷手法を採用できる。印刷手法は、特に限定されるものではないが、生産性、絵柄の品位を考慮すれば、グラビア印刷法が好ましい。また例えば、基材シート5が巻取りの状態で用意できる場合には、ロールツーロールの印刷装置を用いることで、絵柄層2の形成のための印刷を行うことができる。これらの他にも、印刷手法としては、例えば、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法、転写シートからの転写印刷法等が挙げられる。このような印刷手法を用いる場合、絵柄層2の絵柄模様は、通常の黄色、赤色、青色及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成することができる他、絵柄模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成することができる。
【0014】
また、絵柄層2の絵柄模様は、床材又は建具としての意匠性を考慮して任意の絵柄模様を採用すればよい。例えば、大理石などの石材の床をイメージして、大理石の石目などを絵柄模様とすることもできる。また、例えば、木質系の絵柄であれば、各種木目、コルクを絵柄模様とすることもできる。また、例えば、天然材料の絵柄模様以外にも、これらをモチーフとした人工的絵柄模様や幾何学模様などの人工的絵柄模様も用いることができる。これらの他にも、絵柄模様としては、例えば、年輪断面の春材領域及び秋材領域、導管部等から構成される木目模様、レザー(皮シボ)模様、大理石、花崗岩、砂岩等の石材表面の石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様、草花模様、風景、キャラクター等が挙げられる。
【0015】
また、絵柄模様は、色の濃淡を有している。すなわち、絵柄層2は、淡色部2a、および淡色部2aよりも色が濃い濃色部2bを含んでいる。
図1では、絵柄層2は、化粧シート1の厚み方向の断面(
図1に示した断面)において、その厚み方向と直交する方向(
図1では、左右方向)に、淡色部2aおよび濃色部2bが交互に配置されている場合を例示している。例えば、絵柄模様が木目である場合には導管部が濃色部2bとなる。また、CIE1976L*a*b*色空間において、淡色部2aと濃色部2bとの色差ΔEは5以上とするのが好ましい。色差ΔEを5以上とすることで、絵柄層2の絵柄をより明瞭なものとすることができ、化粧シート1の意匠性をより向上できる。また、色差ΔEは7以上がより好ましい。なお、CIE1976L*a*b*色空間は、JISZ8781-4で規定されている。ΔEの計測は、色差計(例えば、X-Rite製eXact)を用いて行われる。
【0016】
印刷インキは、溶剤と、着色剤、バインダー樹脂等の固形分との混合物である。
溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-2-メトキシエチル、酢酸-2-エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。溶剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
また、バインダー樹脂としては、塩素系樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。塩素系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、エチレン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-(メタ)アクリル共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化プロピレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルの意味である。バインダー樹脂は、1種の単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0018】
また、着色剤としては、例えば、カーボンブラック、鉄黒、チタン白(酸化チタン)、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料等が挙げられる。着色剤は、1種の単独でもよいし、2種以上を組み合わせでもよい。
ここで、印刷インキに含まれる溶剤は、最終的に揮発する。そのため、絵柄層2は、主として、着色剤、バインダー樹脂等の固形分により形成される。
【0019】
また、印刷インキは、その他の成分として、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を含んでもよい。印刷インキとしては、印刷方式に応じたインキを採用すればよい。特に、基材シート5に対する密着性や印刷適性、床材又は建具としての耐候性を考慮して選択することが好ましい。絵柄層2の厚さは、絵柄層2に求められる装飾性、化粧シート1の三次元成形性等を考慮して適宜調整できる。絵柄層2の厚さは、通常1μm以上1mm以下、好ましくは2μm以上0.1mm以下、さらに好ましくは2μm以上50μm以下である。
【0020】
また必要に応じて、絵柄層2の基材シート5側の面に、均一に着色が施された隠蔽層(ベタ印刷層)を形成してもよい。隠蔽層は、基材シート5が着色していたり色ムラがあったりする場合に、意図した色彩を与えて表面の色を整えることができる層である。隠蔽層は、例えば、着色ベタ層である。着色ベタ層は、例えば、不透明色のベタ層である。隠蔽層は、バインダー樹脂と、バインダー樹脂中に分散した着色剤とを含有する。バインダー樹脂及び着色剤は、絵柄層2と同様のものを適宜選択して用いることができる。
【0021】
隠蔽層は、例えば、印刷層である。印刷法に関する説明は、絵柄層2と同様の方法を適宜選択して用いることができる。また、グラビアコート、ロールコート、スプレーコート等の公知の塗工法を用いることもできる。隠蔽層の形成に使用される隠蔽層用インキ組成物(塗工液)は、例えば、溶剤と、着色剤、バインダー樹脂等の固形分との混合物である。隠蔽層用インキ組成物は、その他の成分として、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を含んでもよい。溶剤、着色剤、バインダー樹脂としては、絵柄層2の印刷インキと同様のものを適宜選択して用いることができる。なお、着色剤の色としては、表面保護層4にエンボスを賦型する場合には、エンボスと関連した色(例えば、木目模様の場合は茶色)に印刷することが好ましく、エンボスと関連させることで床材や建具材の意匠性がさらに向上する。溶剤は最終的に揮発するため、隠蔽層は、主として、着色剤、バインダー樹脂等の固形分により形成される。隠蔽層の厚さは、隠蔽層に求められる隠蔽性、三次元成形性等を考慮して適宜調整することができる。隠蔽層の厚さは、通常1μm以上1mm以下、好ましくは2μm以上0.1mm以下、さらに好ましくは2μm以上50μm以下である。
【0022】
また、絵柄層2と透明樹脂層3との接着性向上、絵柄層2と基材シート5との接着性向上を目的として、絵柄層2の両面又は片面に接着層(不図示)を設けてもよい。これらの接着を強固にすることによって、化粧シート1に対し、曲面や直角面に追随する曲げ加工性を付与することができる。接着層(不図示)に用いる樹脂は、特に限定されるものではない。例えば、2液硬化型ウレタン系樹脂を採用できる。接着層(不図示)に用いる樹脂の塗布には、例えば、コーティング装置、グラビア印刷装置を採用できる。
【0023】
また、化粧シートの奥行感や、輝度感といった意匠効果を好適に付与することを目的として、絵柄層2と透明樹脂層3との間に光輝性層(不図示)を設けてもよい。光輝性層(不図示)は、光輝性顔料及びバインダー樹脂を含むことが好ましい。光輝性顔料としては、パール顔料及び金属顔料等が挙げられる。特に、パール顔料は、光輝性層の光透過率が低下することを抑制できるため、絵柄層2の視認性を損なわないため好ましい。
【0024】
パール顔料は、真珠光沢を付与し得る顔料である。例えば、母体粒子の表面を金属酸化物で被覆したものが挙げられる。母体粒子としては、雲母等の鱗片状粒子が好ましい。金属酸化物としては、チタン、鉄、ジルコニウム、ケイ素、アルミニウム及びセリウム等金属の酸化物が挙げられる。金属酸化物は、1種単独でもよいし、2種類以上であってもよい。具体例としては、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、紺青-酸化鉄被覆雲母チタン、酸化クロム被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、有機顔料被覆雲母チタン、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆合成マイカ等の酸化物被覆雲母;酸化チタン被覆ガラス粉末、酸化鉄被覆ガラス粉末等の酸化物被覆ガラス粉末;酸化チタン被覆アルミニウム粉末等の酸化物被覆金属粒子;塩基性炭酸鉛、砒酸水素鉛、酸化塩化ビスマス等の鱗片状箔片;魚鱗粉、貝殻片、真珠片等が挙げられる。
【0025】
また、金属顔料としては、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼、錫、亜鉛、銅、ニッケル、金粉及び銀等の金属、これらの金属の合金等からなる顔料が挙げられる。金属顔料は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
光輝性顔料の平均粒子径は、優れた意匠効果を付与する観点から、例えば、グラビア印刷を用いて光輝性層を形成する場合には、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。同様の観点から、[光輝性顔料の平均粒子径/光輝性層の厚み]の比は、0.01以上15以下であることが好ましく、0.5以上10以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、「平均粒子径」とは、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50として求めることができる値である。
【0026】
また、バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂、硬化型樹脂組成物の硬化物等が挙げられ、耐久性の観点から硬化型樹脂組成物の硬化物が好ましい。硬化型樹脂組成物の硬化物としては、熱硬化型樹脂組成物の硬化物及び電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化物が挙げられる。層間密着性の観点からは、熱硬化型樹脂組成物の硬化物が好ましい。
【0027】
光輝性層に用いられる熱硬化型樹脂組成物としては、ポリエステル樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物、アミノアルキッド樹脂組成物、メラミン樹脂組成物、グアナミン樹脂組成物、尿素樹脂組成物及び熱硬化型アクリル樹脂組成物等が挙げられる。これら熱硬化型樹脂組成物は、各樹脂を構成するモノマー及び/又はプレポリマーと、必要に応じて添加する硬化剤等が挙げられる。光輝性層に用いられる電離放射線硬化型樹脂組成物としては、後述する表面保護層4の電離放射線硬化型樹脂組成物と同様のものを用いることができる。
【0028】
光輝性層中における光輝性顔料の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上90質量部以下であることが好ましく、50質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。光輝性顔料の含有量を10質量部以上とすることにより、艶感を充分に付与することができ、90質量部以下とすることにより、後述する絵柄層の視認性が損なわれることを抑制できる。同様の観点から、光輝性層の厚みは、1μm以上30μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることがより好ましい。
【0029】
光輝性層は、付与したい意匠によって任意のパターンを形成することができる。例えば、木目模様、レザー模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様、草花模様、風景、キャラクター等が挙げられる。また、任意のパターンは、意匠効果をより高めるために、濃淡を有することが好ましい。濃淡は、網点の大小や網点の厚みから形成してもよいが、網点の粗密から形成すること(つまり、網点の大きさは均一として網点の密度で濃淡を形成すること)が好ましい。
光輝性層は、例えば、光輝性顔料及びバインダー樹脂を含む塗布液を、グラビア印刷等の汎用の印刷手段で形成できる。なお、光輝性層の濃淡を網点の粗密から形成する場合、印刷版の網点をFM(frequency modulation)スクリーンによって形成すればよい。
【0030】
[透明樹脂層]
透明樹脂層3は、意匠的に厚みや深みを出すとともに、化粧シート1の耐候性、耐磨耗性能が向上するように、絵柄層2を保護して良好な表面物性を付与するための樹脂層である。透明樹脂層3の材料としては、例えば、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂)を用いることができる。特に、環境適合性、加工性、価格を考慮すれば、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。また、樹脂のグレードや組成は、環境適合性、加工性、価格の他にも、シーティングの容易さ、印刷適性、曲げ加工に対する適性を考慮して選択することができる。曲げ加工に対する適性としては、曲げ部の白化や割れが発生しないことを考慮して選択することが重要である。
透明樹脂層3の形成方法としては、例えば、透明樹脂層3と接着層(不図示)とを同時に形成する場合、共押し出しで両者を同時に押し出して形成する方法を採用できる。
【0031】
[表面保護層]
表面保護層4は、化粧シート1に耐磨耗性等の表面物性を付与するための層である。また、表面保護層4は、化粧シート1の表面の光沢を調節するための層でもある。表面保護層4は、単層でもよく、多層でもよい。例えば、表面保護層4として、透明樹脂層3の上に、第1表面保護層(不図示)および第2表面保護層(不図示)の2層をこの順に設けることもできる。第1表面保護層(不図示)および第2表面保護層(不図示)からなる表面保護層4を設ける場合には、それぞれの層を、硬化型樹脂の種類に応じて、既知のコーティング装置、熱乾燥装置、電離放射線照射装置を用いて塗布、塗膜の硬化を行えばよい。
【0032】
表面保護層4は、硬化型樹脂を主成分とする。すなわち、表面保護層4の樹脂成分が実質的に硬化型樹脂から構成されることが好ましい。実質的とは、例えば、樹脂全体を100質量部とした場合に80質量部以上を指す。表面保護層4には、必要に応じて、耐侯剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤等を含んでもよい。
表面保護層4の表面には、所与の意匠性を付与するために、凹凸模様が形成されていてもよい。凹凸模様としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝が挙げられる。また、凹凸模様の形成方法としては、例えば、エンボス加工を採用できる。エンボス加工の方法は、特に限定されない。例えば、公知の枚葉式のエンボス機、輪転式のエンボス機を採用できる。
【0033】
また、表面保護層4の表面は、光沢の高低を有している。すなわち、表面保護層4は、高光沢部4a、および高光沢部4aよりも光沢度が低い低光沢部4bを含んでいる。
図1では、表面保護層4は、化粧シート1の厚み方向の断面(
図1に示した断面)において、その厚み方向と直交する方向(
図1では、左右方向)に、高光沢部4aおよび低光沢部4bが交互に配置されている場合を例示している。また、低光沢部4bは、表面保護層4側から見た際に、濃色部2bと低光沢部4bとが同調するように、濃色部2bと重なっている。低光沢部4bの平面パターンとしては、例えば、濃色部2bの平面パターンと同一のパターン、濃色部2bの平面パターンよりも一回り小さいパターン、濃色部2bの平面パターンよりも一回り大きいパターンを採用できる。また、低光沢部4bと濃色部2bとの重なり度合いは、例えば、濃色部2bの面積100%のうちの、80%以上(より好ましくは90%以上)に低光沢部4bが重なっている構成とするのが好ましい。
【0034】
また、高光沢部4aの85度鏡面光沢度と低光沢部4bの85度鏡面光沢度との差は2%以上とするのが好ましい。85度鏡面光沢度の差を2%以上とすることで、表面保護層4の光沢度差をより明瞭にすることができ、化粧シート1の意匠性をより向上できる。また、低光沢部4bは、85度鏡面光沢が8%以下であることが好ましい。85度鏡面光沢度を8%以下とすることで、低光沢部4bの光沢を十分に低くすることができ、表面保護層4の光沢度差をより明瞭とすることができ、化粧シート1の意匠性をより向上できる。
【0035】
[電離放射線硬化型樹脂]
表面保護層4の材料としては、例えば、電離放射線硬化型樹脂、2液硬化型ウレタン系樹脂を採用できる。電離放射線硬化型樹脂としては、特に限定されるものではない。例えば、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)および/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂を採用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。具体的には、プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0036】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、250~10万程度が好ましい。
また、ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
また、カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。
また、ポリエン系のプレポリマーとしては、例えば、ジオールおよびジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。また、チオール系のプレポリマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。
【0038】
電離放射線としては、例えば、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子を採用できる。例えば。紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線が挙げられる。硬化反応としては、例えば、架橋硬化反応が挙げられる。また、紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源を採用できる。紫外線の波長としては、例えば、190nm以上380nm以下が好ましい。また、電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の電子線加速器を採用できる。特に、100keV以上1000keV以下のエネルギーをもつ電子(より好ましくは100keV以上300keV以下のエネルギーをもつ電子)を照射できるものが好ましい。
【0039】
また、2液硬化型ウレタン系樹脂は、特に限定されるものではない。例えば、主剤としてOH基を有するポリオール成分と、硬化剤成分としてイソシアネート成分とを含むものを採用できる。OH基を有するポリオール成分としては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオールが挙げられる。また、イソシアネート成分としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネートが挙げられる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る化粧シート1及び化粧材7では、表面保護層4側から見た際に、濃色部2bと低光沢部4bとが同調するように、絵柄層2の濃色部2bと表面保護層4の低光沢部4bとが重なっている構成とした。それゆえ、表面の質感をより立体的に表現でき、表面の材質や構造等の違いによる色味の違いも表現できる。そのため、より本物に近い質感を持ち、優れた意匠性を有する化粧シート1および化粧材7を提供できる。
【実施例0041】
以下に、本発明の実施形態に係る化粧シート1の実施例および比較例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、絵柄層2の淡色部2aと濃色部2bとの色差ΔEが「3」、表面保護層4の高光沢部4aの光沢度が「11%」、低光沢部4bの光沢度が「10%」、光沢度の差が「1%」、濃色部2bと低光沢部4bとに重なりがある化粧シート1を作製した。
(実施例2)
実施例2では、絵柄層2の淡色部2aと濃色部2bとの色差ΔEが「5」、表面保護層4の高光沢部4aの光沢度が「11%」、低光沢部4bの光沢度が「10%」、光沢度の差が「1%」、濃色部2bと低光沢部4bとに重なりがある化粧シート1を作製した。
(実施例3)
実施例3では、絵柄層2の淡色部2aと濃色部2bとの色差ΔEが「7」、表面保護層4の高光沢部4aの光沢度が「11%」、低光沢部4bの光沢度が「10%」、光沢度の差が「1%」、濃色部2bと低光沢部4bとに重なりがある化粧シート1を作製した。
(実施例4)
実施例4では、絵柄層2の淡色部2aと濃色部2bとの色差ΔEが「3」、表面保護層4の高光沢部4aの光沢度が「12%」、低光沢部4bの光沢度が「10%」、光沢度の差が「2%」、濃色部2bと低光沢部4bとに重なりがある化粧シート1を作製した。
(実施例5)
実施例5では、絵柄層2の淡色部2aと濃色部2bとの色差ΔEが「3」、表面保護層4の高光沢部4aの光沢度が「10%」、低光沢部4bの光沢度が「8%」、光沢度の差が「2%」、濃色部2bと低光沢部4bとに重なりがある化粧シート1を作製した。
【0042】
(比較例1)
比較例1では、表面保護層4の高光沢部4aと低光沢部4bとの光沢度の差が「1%」であるが、絵柄層2に濃色部2bがなく(絵柄層2の淡色部2aと濃色部2bとの色差ΔEが「0」)、濃色部2bと低光沢部4bとに重なりがない化粧シート1を作製した。
(比較例2)
比較例2では、絵柄層2の淡色部2aと濃色部2bとの色差ΔEが「3」であるが、表面保護層4に低光沢部4bがなく(高光沢部4aと低光沢部4bとの光沢度の差が「0%」)、濃色部2bと低光沢部4bとに重なりがない化粧シート1を作製した。
(比較例3)
比較例3では、絵柄層2の淡色部2aと濃色部2bとの色差ΔEが「3」であり、表面保護層4の高光沢部4aと低光沢部4bとの光沢度の差が「1%」であるが、濃色部2bと低光沢部4bとに重なりがない化粧シート1を作製した。
【0043】
(性能評価)
実施例1~5、比較例1~3の化粧シート1に対して、意匠性の評価を行った。意匠性の評価では、10人で官能評価を行い、本物の意匠に近いと感じた人数で評価した。
◎:9人以上
〇:8人
△:6~7人
×:5人以下
【0044】
(評価結果)
評価結果を、以下の表1に示す。
【0045】
【0046】
表1に示すように、実施例1~4の化粧シート1では、意匠性の評価が、合格「△」「○」「◎」となっている。特に、実施例2、3の化粧シート1は、淡色部2aと濃色部2bとのCIE1976L*a*b*色空間における色差ΔEが5以上であるため、意匠性が「○」「◎」の合格となった。これらのうちでも、実施例5の化粧シート1は、淡色部2aと濃色部2bとのCIE1976L*a*b*色空間における色差ΔEが7以上であるため、意匠性が「◎」の合格となった。また、実施例4、5の化粧シート1は、高光沢部4aと低光沢部4bとの85度鏡面光沢度の差が2%以上であるため、意匠性が「○」「◎」の合格となった。これらのうちでも、実施例5の化粧シート1は、低光沢部4bの85度鏡面光沢が8%以下であるため、意匠性が「◎」の合格となった。
【0047】
一方、比較例1の化粧シート1では、濃色部2bがないため、淡色部2aと濃色部2bとのCIE1976L*a*b*色空間における色差ΔEが0となり、意匠性の評価が、不合格「×」となった。また、比較例2の化粧シート1では、低光沢部4bがないため、高光沢部4aと低光沢部4bとの85度鏡面光沢度の差が0%となり、意匠性の評価が、不合格「×」となった。また、比較例3の化粧シート1では、濃色部2bと低光沢部4bとに重なりがないため、意匠性の評価が、不合格「×」となった。
したがって、実施例1~4の化粧シート1は、比較例1~3の化粧シート1に比べ、意匠性に優れることが確認できた。
1…化粧シート、2…絵柄層、2a…淡色部、2b…濃色部、3…透明樹脂層、4…表面保護層、4a…高光沢部、4b…低光沢部、5…基材シート、6…基材、7…化粧材