(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168644
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】旋盤
(51)【国際特許分類】
B23B 15/00 20060101AFI20221031BHJP
B23B 31/02 20060101ALI20221031BHJP
B23B 31/20 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B23B15/00 G
B23B31/02 610Z
B23B31/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074253
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000107642
【氏名又は名称】スター精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】川村 基広
【テーマコード(参考)】
3C032
3C045
【Fターム(参考)】
3C032FF13
3C032JJ02
3C045FA05
3C045FB07
(57)【要約】
【課題】ワーク排出部材を前進方向に移動させる移動部材の移動量を変更することが可能で、その移動量の変更状態が視認しやすい旋盤を提供する。
【解決手段】切断済ワークW2を把持および把持解除可能な第2主軸61と、把持解除された切断済ワークW2を第2主軸61の軸方向へ押し出す前進方向および該前進方向とは反対の後退方向へ移動可能に第2主軸61内に挿入されたシリンダ用排出部材91と、前進方向および後退方向へ移動する移動部材932を有し、移動部材932の前進方向への移動によってシリンダ用排出部材91を前進方向に移動させるエアシリンダ93と、エアシリンダ93に着脱可能に取り付けられ、移動部材932の前進方向への移動を所定位置までに制限するブロックストッパ933とを備えている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持および把持解除可能な主軸と、
把持解除された前記ワークを前記主軸の軸方向へ押し出す前進方向および該前進方向とは反対の後退方向へ移動可能に該主軸内に挿入されたワーク排出部材と、
前記前進方向および前記後退方向へ移動する移動部材を有し、該移動部材の該前進方向への移動によって前記ワーク排出部材を該前進方向に移動させるアクチュエータと、
前記アクチュエータに着脱可能に取り付けられ、前記移動部材の前記前進方向への移動を所定位置までに制限する移動制限部材とを備えていることを特徴とする旋盤。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記ワーク排出部材とは前記軸方向と直行する方向に離間して該ワーク排出部材と平行に配置されたものであることを特徴とする請求項1記載の旋盤。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記移動部材を移動させる流体が供給されるシリンダブロックを有するものであり、
前記移動部材は、前記移動制限部材を前記アクチュエータから取り外した状態では、該移動部材が前記前進方向に移動したときに前記シリンダブロックよりも該前進方向に突出する前進側突出部を有するものであり、
前記移動制限部材は、前記シリンダブロックの、前記前進方向側の端部に取り付けられ、前記前進側突出部の突出端が突き当たることで該移動部材のそれ以上の移動を阻止するものであることを特徴とする請求項1または2記載の旋盤。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記移動部材を移動させる流体が供給されるシリンダブロックを有するものであり、
前記移動部材は、前記シリンダブロックよりも前記後退方向側に配置された係止部を有するものであり、
前記移動制限部材は、前記係止部と前記シリンダブロックの間に挟まれることで該移動部材のそれ以上の移動を阻止するものであることを特徴とする請求項1または2記載の旋盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを把持および把持解除可能な主軸を備えた旋盤に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク把持部材(チャック)によってワークを把持して回転可能な主軸と、主軸内に挿入され、加工が完了したワークを主軸の外側に押し出す棒状のワーク排出部材とを備えた旋盤が知られている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1に記載された旋盤には、ワーク排出部材の後退方向の移動位置を決定する第1アクチュエータ(第1エアーシリンダ)と、ワーク排出部材を前進方向へ移動させる第2アクチュエータ(第2エアーシリンダ)の2つのアクチュエータが設けられている。また、ワーク排出部材には、進退方向に固定位置が調整可能な調整板が取り付けられている。調整板は、中心に設けられた孔にワーク排出部材が挿入された円盤状をしており、側方からねじを締めこむことでワーク排出部材に対して進退方向に任意の位置で固定することができる。調整板は、第2アクチュエータの移動部材(ピストン杆)が前進方向に移動した際に、その移動部材の先端に設けられた連係腕が当接することで移動部材の前進方向の移動をワーク排出部材に伝達してワーク排出部材を前進方向に移動させる役目をしている。この調整板の固定位置を変更することでワーク排出部材の前進方向への移動量を調節することができる。
【0003】
ところで、加工するワークの太さに対応してワーク把持部材を変更することがある。加工するワークが細いときは、ワークに合わせて内径の小さいワーク把持部材を用いる。このため、極めて細いワークを加工しようとすると、通常用いられるワーク排出部材では先端部分がワーク把持部材内に入り込めなくなってしまう。これに対し、ワーク把持部材に入り込む先端部分を細長く形成することで、全長の長いワーク排出部材を使用する場合がある。この場合、ワーク排出部材の全長が長くなった分だけワーク排出部材の前進方向への移動量を減少させる必要がある。特許文献1に記載された旋盤では、調整板の固定位置を変更することでワーク排出部材の前進方向への移動量調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された旋盤では、調整板の固定位置とワーク排出部材の前進位置との関係を把握することが困難であり、全長の長いワーク排出部材に適合した位置に調整板が固定されているか否かが分かり難いという問題がある。
【0006】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、ワーク排出部材を前進方向に移動させる移動部材の移動量を変更することが可能で、その移動量の変更状態が視認しやすい旋盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の旋盤は、ワークを把持および把持解除可能な主軸と、
把持解除された前記ワークを前記主軸の軸方向へ押し出す前進方向および該前進方向とは反対の後退方向へ移動可能に該主軸内に挿入されたワーク排出部材と、
前記前進方向および前記後退方向へ移動する移動部材を有し、該移動部材の該前進方向への移動によって前記ワーク排出部材を該前進方向に移動させるアクチュエータと、
前記アクチュエータに着脱可能に取り付けられ、前記移動部材の前記前進方向への移動を所定位置までに制限する移動制限部材とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この旋盤によれば、前記移動制限部材を着脱することで、前記移動部材の移動量を変更することができる。そして、前記移動制限部材が取り付けられているか否かを視認することで、ワーク排出部材の移動量が変更されているか否かを容易に理解することができる。
【0009】
ここで、前記主軸は、前記ワークを把持および把持解除可能なワーク把持部材を有していてもよい。また、前記主軸内に配置され、前記ワーク排出部材を前記後退方向へ移動させる戻しバネを備えていてもよい。
【0010】
この旋盤において、前記アクチュエータは、前記ワーク排出部材とは前記軸方向と直行する方向に離間して該ワーク排出部材と平行に配置されたものであってもよい。
【0011】
前記アクチュエータと前記ワーク排出部材とが平行に配置されているので、これらを合わせた前記軸方向の全長が短くなり、結果として旋盤を小型化することができる。
【0012】
また、この旋盤において、前記アクチュエータは、前記移動部材を移動させる流体が供給されるシリンダブロックを有するものであり、
前記移動部材は、前記移動制限部材を前記アクチュエータから取り外した状態では、該移動部材が前記前進方向に移動したときに前記シリンダブロックよりも該前進方向に突出する前進側突出部を有するものであり、
前記移動制限部材は、前記シリンダブロックの、前記前進方向側の端部に取り付けられ、前記前進側突出部の突出端が突き当たることで該移動部材のそれ以上の移動を阻止するものであってもよい。
【0013】
こうすることで、引用文献1のように、ねじの先端と調整板内面の一部によってワーク排出部材を挟み込んで摩擦によって固定位置を維持する構成と比較して、前記移動制限部材が前記前進方向にずれてしまうことが抑制される。また、仮に前記移動制限部材が前記前進方向にずれてしまった場合には、該移動制限部材と前記シリンダブロックの間に隙間が発生するか又は隙間が増大するので、ずれたことを容易に視認することができる。
【0014】
ここで、前記移動制限部材は、ねじ部の突出方向が前記軸方向に平行な複数のねじによって前記シリンダブロックに取り付けられていてもよい。
【0015】
さらに、この旋盤において、前記アクチュエータは、前記移動部材を移動させる流体が供給されるシリンダブロックを有するものであり、
前記移動部材は、前記シリンダブロックよりも前記後退方向側に配置された係止部を有するものであり、
前記移動制限部材は、前記係止部と前記シリンダブロックの間に挟まれることで該移動部材のそれ以上の移動を阻止するものであってもよい。
【0016】
こうすることで、前記移動部材の前記前進方向への移動量が変化してしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ワーク排出部材を前進方向に移動させる移動部材の移動量を変更することが可能で、その移動量の変更状態が視認しやすい旋盤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態にかかるNC旋盤の外観を示す正面図である。
【
図2】
図1に示したNC旋盤の内部構成を簡易的に示す平面図である。
【
図3】パイプ式製品排出装置を備えた第2主軸台を示す斜視図である。
【
図4】(a)は、
図3に示した第2主軸台を第2主軸中心線に沿って垂直方向に切断して正面から見た断面図であり、(b)は、同図(a)に示した第2主軸が後退した状態を示した断面図である。
【
図5】(a)は、バネ式製品排出装置を備えた第2主軸台を示す正面図であり、(b)は、同図(a)の第2主軸台を第2主軸中心線に沿って水平方向に切断して上方から見た断面図である。
【
図6】エアシリンダ式製品排出装置を備えた第2主軸台を第2主軸中心線に沿って水平方向に切断して上方から見た断面図であり、シリンダ用排出部材が後退した状態を示している。
【
図7】
図6に示したシリンダ用排出部材が前進した状態を示す
図6と同様の断面図である。
【
図8】
図6に示したエアシリンダの内部構造とシリンダ用排出部材とを示す斜視図であり、(a)は、シリンダ用排出部材が後退した様子を示し、(b)は、シリンダ用排出部材が前進した様子を示している。
【
図9】細径ワーク用の第2主軸と細径ワーク用のエアシリンダ式製品排出装置を示す
図7と同様の断面図である。
【
図10】(a)は、
図9に示したエアシリンダの内部構造とシリンダ用排出部材とを示す斜視図であり、(b)は、同図(a)に示したエアシリンダの外観を示す斜視図である。
【
図11】他の実施形態における細径ワーク用のエアシリンダ式製品排出装置に用いられるエアシリンダの内部構造とシリンダ用排出部材とを示す斜視図であり、(a)は、シリンダ用排出部材が後退した様子を示し、(b)は、シリンダ用排出部材が前進した様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、本発明をNC(Numerical Control)旋盤に適用した例を用いて説明する。
【0020】
図1は、本実施形態にかかるNC旋盤の外観を示す正面図である。
【0021】
図1に示すように、NC旋盤1は、土台である脚の上に、切削室11と、操作パネル15とを備えている。このNC旋盤1は、旋盤の一例に相当する。なお、
図1には、NC旋盤1によって加工が完了した加工済ワークをNC旋盤1の外部まで搬送する排出コンベア19の下流端部も示されている。切削室11は、正面側から見てNC旋盤1の右側に配置されている。切削室11には切削室11内を目視するための窓111が設けられている。操作パネル15は、正面側から見てNC旋盤1の左側に配置されている。この操作パネル15は、NC旋盤1を操作するための入力装置である。NC旋盤1の操作者は、
図1における紙面手前側に立って、操作パネル15を用いてNC旋盤1を操作し、窓111から切削室11内を見て加工動作などを確認する作業を行う。
【0022】
図2は、
図1に示したNC旋盤の内部構成を簡易的に示す平面図である。この
図2には、切削室11の範囲が太い一点鎖線で示されている。
【0023】
図2に示すように、NC旋盤1の内部には、NC装置2と、第1主軸台3と、ガイドブッシュ4と、第1刃物台5と、第2主軸台6と、第2刃物台7が設けられている。NC装置2には、NCプログラムが保存されている。NC装置2は、そのNCプログラムに従って、第1主軸台3、第1刃物台5、第2主軸台6および第2刃物台7を数値制御により動作させるコンピューターである。また、NC装置2は、後述する第1主軸31と第2主軸61の回転も制御する。加えて、第1刃物台5には、工具T1自体が回転する回転工具が取り付けられる場合がある。NC装置2は、その回転工具の回転も制御する。同様に、第2刃物台7にも、工具T2自体が回転する回転工具が取り付けられる場合がある。NC装置2は、回転工具の回転も制御する。なお、NCプログラムを用いた動作の他、
図1に示した操作パネル15からNC装置2に直接指令を入力することによってもNC旋盤1を動作させることができる。
【0024】
第1主軸台3には、第1主軸31が搭載されている。第1主軸台3は、第1主軸31とともにZ1軸方向に移動可能である。Z1軸方向は、水平方向であり、
図2においては左右方向である。第1主軸31は、コレットチャック等の第1把持部を有している。また、第1主軸31は、その内部に挿入された長尺棒状のワーク素材W1を第1把持部によって把持解除可能に把持する。第1主軸31は、ワーク素材W1を把持して第1主軸中心線CL1を中心として回転可能である。第1主軸中心線CL1の方向はZ1軸方向と一致している。第1主軸31にはビルトインモーター等の不図示の第1スピンドルモータが設けられている。第1スピンドルモータがNC装置2から指令を受けて回転することで、第1主軸31は、第1主軸中心線CL1を中心として回転する。これにより、第1主軸31によって把持されたワーク素材W1は、第1主軸中心線CL1を中心にして回転する。
【0025】
ガイドブッシュ4は、ガイドブッシュ支持台41によってNC旋盤1の土台である脚に固定されている。ガイドブッシュ4の、第1主軸31が配置された側とは反対側の端面は、切削室11内に露出している。ガイドブッシュ4は、第1主軸31の内部を貫通したワーク素材W1の端部をZ1軸方向へ摺動自在に支持する。このガイドブッシュ4の、ワーク素材W1を支持している部分は、第1主軸31と同期して第1主軸中心線CL1を中心にして回転可能である。すなわち、第1主軸中心線CL1は、ワーク素材W1の、ガイドブッシュ4に支持された部分の回転中心線でもある。ガイドブッシュ4により、加工時のワーク素材W1の撓みが抑制されるので、特に細長いワーク素材W1を高精度に加工できる。
【0026】
第1刃物台5は、Z1軸方向と直交しかつ水平方向を向いたX1軸方向と、垂直方向を向いたY1軸方向に移動可能である。
図2では、上下方向がX1軸方向であり、紙面に直交する方向がY1軸方向である。第1刃物台5には、ワーク素材W1を加工する工具T1が装着される。
図2には、第1刃物台5に工具T1が装着された様子が示されている。この工具T1は切削室11内に配置される。第1刃物台5には、外径加工用のバイト、突っ切り加工用のバイト等を含む複数種類の工具T1がY1軸方向に並んで取り付けられる。第1刃物台5がY1軸方向に移動することで、これらの複数種類の工具T1から任意の工具T1が選択される。そして、第1刃物台5がX1軸方向に移動することで、選択された工具T1が第1主軸31に把持されたワーク素材W1に切り込んでワーク素材W1の先端部分を加工する。
【0027】
第2主軸台6は、切削室11内に配置されている。第2主軸台6には、第2主軸61が搭載されている。この第2主軸61は、主軸の一例に相当する。第2主軸台6は、X2軸方向およびZ2軸方向に第2主軸61とともに移動可能である。このX2軸方向は上述したX1軸方向と同一の方向であり、Z2軸方向は上述したZ1軸方向と同一の方向である。このZ2軸方向は、第2主軸61の軸方向に相当する。以下の説明では便宜上、Z2軸方向のマイナス側(
図2においては左側)を「前」、Z2軸方向のプラス側(
図2においては右側)を「後」として説明を行う。
図2には、第2主軸台6が第2主軸61とともに、ガイドブッシュ4を挟んで第1主軸31に対向する位置に位置した様子が実線で示されている。この位置では、第1主軸中心線CL1と第2主軸の回転中心である第2主軸中心線CL2は同一線上に配置される。また、
図2には、第2主軸台6が第2主軸61とともに第2刃物台7に対向する位置に位置した様子が細い二点鎖線で示されている。第2主軸61には、第1主軸31を用いた加工が完了し、突っ切り加工用のバイトによって切断された切断済ワークW2が受け渡される。この切断済ワークW2は、ワークの一例に相当する。第2主軸61は、第2把持部611(
図6参照)を有している。なお、第2把持部611は、コレットチャックであるが、他の種類のチャックであってもよい。第2主軸61は、第1主軸31から受け渡された切断済ワークW2を第2把持部611によって把持解除可能に把持する。第2主軸61は、切断済ワークW2を把持して第2主軸中心線CL2を中心として回転可能である。第2主軸中心線CL2の方向はZ2軸方向と一致している。第2主軸台6にはビルトインモーター等の第2スピンドルモータ632(
図5(a)参照)が設けられている。第2スピンドルモータ632がNC装置2から指令を受けて回転することで、第2主軸61は、第2主軸中心線CL2を中心として回転する。これにより、第2主軸61によって把持された切断済ワークW2は、第2主軸中心線CL2を中心にして回転する。第2主軸61の構成については、後に詳述する。
【0028】
第2刃物台7は、切削室11において、平面視で第1主軸台3側かつNC旋盤1の正面側に配置されている。第2刃物台7は、Y2軸方向へ移動可能である。このY2軸方向は上述したY1軸方向と同一の方向である。第2刃物台7には、第2主軸61に把持された切断済ワークW2を加工する複数の工具T2が取り付けられる。
図2には、第2刃物台7に工具T2が装着された様子が示されている。第2刃物台7には、ドリルやエンドミル等の複数種類の工具T2が取り付けられる。
図2には表れていないが、工具T2はX2軸方向だけでなくY2軸方向にも並んで取り付けられている。第2主軸台6のX2軸方向の移動と第2刃物台7のY2軸方向の移動によって、これらの複数種類の工具T2から任意の工具T2が選択される。そして、第2主軸台6がZ2軸方向に移動することで、第2主軸61に把持された切断済ワークW2の切断端側部分が加工される。また、後述するバネ式製品排出装置82(
図5(b)参照)またはエアシリンダ式製品排出装置9(
図6参照)を備えたNC旋盤1では、工具T2による加工が完了し、製品になった加工済ワークを受け入れる不図示の製品受入部材が第2刃物台7に搭載される。
【0029】
切断済ワークW2の切断端側部分の加工が完了した加工済ワークを第2主軸61から排出する装置として、パイプ式製品排出装置81(
図3参照)と、バネ式製品排出装置82(
図5(b)参照)と、エアシリンダ式製品排出装置9(
図6参照)とが知られている。これらの排出装置のうち、本発明はエアシリンダ式製品排出装置9に適したものであるが、他の排出装置についても順に説明する。
【0030】
図3は、パイプ式製品排出装置を備えた第2主軸台を示す斜視図である。この
図3には、NC旋盤1の右側面を構成する外装部品12の一部も示されている。
【0031】
図3に示すように、第2主軸台6は、X2軸方向に移動可能なX2軸テーブル62と、X2軸テーブル62に搭載されてZ2軸方向に移動可能なZ2軸テーブル63とを有している。X2軸テーブル62は、不図示のX2軸モータを駆動することによって第2主軸61およびZ2軸テーブル63とともにX2軸方向に移動する。また、Z2軸テーブル63は、不図示のZ2軸モータを駆動することによって、第2主軸61とともにZ2軸方向に移動する。X2軸テーブル62によって第2主軸台6がX2軸方向に移動することで、第2主軸61は、
図2に実線で示したガイドブッシュ4を挟んで第1主軸31に対向した位置と、
図2に二点鎖線で示した第2刃物台7に対向した位置とに移動する。
【0032】
Z2軸テーブル63には、スピンドルクランプ用シリンダ631と、第2スピンドルモータ632(
図5(a)参照)と、後端カバー部633と、チャッキング用シリンダ636(
図6参照)と、パイプ式製品排出装置81とが設けられている。スピンドルクランプ用シリンダ631は、第2主軸61を任意の回転角度に割り出してから、その回転角度を維持するためのものである。第2スピンドルモータ632は、切断済ワークW2を把持した第2主軸61を回転させるためのモータである。第2主軸61の中心には、第2主軸中心線CL2に沿って貫通した貫通孔が形成されている。後端カバー部633は、第2主軸61の後端部分に配置されている。この後端カバー部633には、第2主軸61の貫通孔に連なりZ2軸方向に貫通した孔が形成されている。チャッキング用シリンダ636は、第2把持部611(
図4参照)を動作させるためのものである。このチャッキング用シリンダ636を駆動することで、第2主軸61に設けられたチャックスリーブ612(
図4参照)が前方または後方に移動する。これにより、第2主軸61による切断済ワークW2の把持または把持解除が行われる。
【0033】
パイプ式製品排出装置81は、製品移送パイプ811と、製品ストッパ812とを有している。このパイプ式製品排出装置81は、切断済ワークW2を多数加工する場合に用いられる。製品移送パイプ811は、前端側が第2主軸61内形成された貫通孔に挿入され、後端側が第2主軸61よりも後方に突出した長尺のパイプである。製品移送パイプ811は、後端カバー部633に形成された孔に固定されている。製品移送パイプ811は、加工済ワークの最大外径よりも大きな内径を有している。そして、製品移送パイプ811内に形成された空間は、加工済ワークを受け入れて後方に向かって移送する製品移送経路として機能する。第2主軸61を用いた加工が完了した加工済ワークは、次の切断済ワークW2が第2主軸61の前側から挿入されることで製品移送パイプ811内の空間に順次押し込まれ、後方に向かって移送されていく。
【0034】
製品ストッパ812は、製品移送パイプ811の後端部分に固定されている。この製品ストッパ812は、製品移送パイプ811の後端付近まで移送されてきた加工済ワークをローラで押さえることにより加工済ワークが勢いよく飛び出してしまうことを防止するものである。加工済ワークは、製品ストッパ812により押えられつつ後方に送り出され、製品移送パイプ811から落下することで排出される。
【0035】
Z2軸テーブル63には、製品移送パイプ811の中間部を支持する支持孔が形成された金属製の第1支持板634が取り付けられている。また、X2軸テーブル62には、第1支持板634よりも後端側で製品移送パイプ811を支持するU字状の溝が形成された樹脂製の第2支持板621が取り付けられている。
【0036】
図4(a)は、
図3に示した第2主軸台を第2主軸中心線に沿って垂直方向に切断して正面から見た断面図であり、
図4(b)は、同図(a)に示した第2主軸が後退した状態を示した断面図である。なお、この
図4では、断面を示すハッチングは省略している。また、以降の図面においても、断面を示すハッチングは省略する。
【0037】
図4(a)に示すように、Z2軸テーブル63が前側に位置している状態では、第1支持板634は、製品移送パイプ811の延在方向中央部分を支持している。また、第2支持板621は、製品移送パイプ811の後端側部分を支持している。そして、後端カバー部633には、製品移送パイプ811の前側部分が固定されている。これらにより、製品移送パイプ811は、3ヵ所で支持されている。Z2軸テーブル63が後方に移動すると、製品移送パイプ811は、第2支持板621に形成されたU字状の溝の上を摺動しながら後方に移動する。そして、
図4(b)に示すように、Z2軸テーブル63が後側に位置した状態では、第1支持板634と第2支持板621がある程度近接する。この状態においても、製品移送パイプ811は、上述の3ヵ所で支持されている。製品移送パイプ811が細い場合や弾性変形しやすい材質で構成されている場合と、第2主軸台6の移動などによって、製品移送パイプ811が撓んで振動してしまう虞がある。これに対し、製品移送パイプ811を3ヵ所で支持することにより、製品移送パイプ811の撓みおよび振動を抑制することができる。
【0038】
次に、バネ式製品排出装置82(
図5(b)参照)を備えた第2主軸台6について説明する。これより後の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0039】
図5(a)は、バネ式製品排出装置を備えた第2主軸台を示す正面図であり、
図5(b)は、同図(a)の第2主軸台を第2主軸中心線に沿って水平方向に切断して上方から見た断面図である。
【0040】
図5(b)に示すように、バネ式製品排出装置82は、バネ用排出部材821と、吐出バネ822とを有している。バネ用排出部材821は、S45Cで構成されたバネ用吐出軸8211と、そのバネ用吐出軸8211の前端部に取り付けられたバネ用エジェクタピン8212とから構成されている。なお、バネ用吐出軸8211は、S45C以外の鋼材や他の金属などで構成されていてもよいが、後述する排出完了の検出を行うために磁性体であることが好ましい。バネ用排出部材821は、前後方向(Z2軸方向)に移動可能に第2主軸61内に挿入されていれる。
図5(b)には、バネ用排出部材821が前進方向に移動して加工済ワークの排出が完了した状態が示されている。バネ用吐出軸8211の前側部分には、第2主軸61の内径よりも少しだけ小さい径の大径部が形成されている。吐出バネ822は、その大径部と後端カバー部633の間で圧縮されることにより、バネ用排出部材821を前方に向けて押圧している。
【0041】
バネ式製品排出装置82においては、第2主軸61の前方から切断済ワークW2が第2主軸61内に挿入されることで吐出バネ822に抗してバネ用排出部材821が後方に移動する。そして、バネ用排出部材821が後方に移動した状態で第2主軸61が切断済ワークW2を把持することで吐出バネ822が圧縮された状態が維持される。第2主軸61を用いた加工が完了したら、第2主軸61が加工済ワークの把持を解除することで、吐出バネ822によってバネ用排出部材821が前方に押し出される。これにより、加工が完了した加工済ワークは第2主軸61の前方に吐出され、不図示の製品受入部材内に投入される。
【0042】
図5(a)に示すように、バネ式製品排出装置82を備えた第2主軸台6の後端カバー部633には、近接センサ6351を有するセンサ板635がねじによって取り付けられている。
図5(b)に示すように、近接センサ6351は、後端カバー部633に形成された第1センサ孔633aに挿入されている。後端カバー部633には、
図5(b)に破線で示すように、第2センサ孔633bも形成されている。ただし、第2センサ孔633bは、センサ板635によって開口が塞がれている。近接センサ6351は、センサ面6351aに対面した位置に磁性体が存在しているか否かを非接触で検出する検出装置である。
図5に示したバネ用排出部材821が前方に押し出された状態では、近接センサ6351のセンサ面6351aに対面した位置に磁性体であるバネ用吐出軸8211が存在していない状態である。一方、バネ用排出部材821が後方に移動した状態では、センサ面6351aに対面した位置にバネ用吐出軸8211が存在した状態になる。近接センサ6351がこれらの状態変化を検出することで、加工済ワークが第2主軸61から吐出されたか否かを判断することができる。すなわち、第2主軸61が加工済ワークの把持を解除することで、近接センサ6351の検出結果が磁性体無しに移行すれば正常に加工済ワークの排出が実行できたと判断できる。逆に、第2主軸61が把持を解除しても、近接センサ6351の検出結果が磁性体有りのままである場合は、例えば吐出バネ822の動作を切削くずが阻害しているなどの何らかの原因で加工済ワークの排出が失敗したと判断できる。
【0043】
続いて、エアシリンダ式製品排出装置9(
図6参照)を備えた第2主軸台6について説明する。本発明は、このエアシリンダ式製品排出装置9に適用される。なお、エアシリンダ式製品排出装置9を備えた第2主軸台6は、製品排出装置の構成が異なる以外は、バネ式製品排出装置82を備えた第2主軸台6と概ね同様の構成をしている。
【0044】
図6は、エアシリンダ式製品排出装置を備えた第2主軸台を第2主軸中心線に沿って水平方向に切断して上方から見た断面図であり、シリンダ用排出部材が後退した状態を示している。
【0045】
図6に示すように、エアシリンダ式製品排出装置9は、シリンダ用排出部材91と、戻しバネ92と、エアシリンダ93と、連結部94とを有している。シリンダ用排出部材91は、S45Cで構成されたシリンダ用吐出軸911と、そのシリンダ用吐出軸911の前端部に取り付けられたシリンダ用エジェクタピン912とから構成されている。なお、シリンダ用吐出軸911は、S45C以外の鋼材や他の金属などで構成されていてもよいが、後述する待機位置に戻ったか否かの検出を行うために磁性体であることが好ましい。このシリンダ用排出部材91は、ワーク排出部材の一例に相当する。シリンダ用吐出軸911の前端には雌ねじが形成されている。また、シリンダ用エジェクタピン912の後端は雄ねじが形成されている。シリンダ用エジェクタピン912の雄ねじをシリンダ用吐出軸911の雌ねじに締めこむことで、シリンダ用エジェクタピン912は、シリンダ用吐出軸911に着脱可能に取り付けられている。
【0046】
シリンダ用排出部材91は、加工済ワークを前側に押し出す前進方向およびその反対の後退方向に移動可能に第2主軸61内に挿入されている。この前進方向は-Z2方向と一致し、後退方向は+Z2軸方向と一致している。
図6には、シリンダ用排出部材91が後退方向へ移動して待機位置にある状態が示されている。バネ用吐出軸8211の後側部分には、第2主軸61の内径よりも少しだけ小さい径の大径部が形成されている。戻しバネ92は、その大径部とチャックスリーブ612の後端の間で圧縮されることにより、シリンダ用排出部材91を後方に向けて押圧している。なお、シリンダ用排出部材91は、連結部94とは連結されていない独立した部材であるが、連結部94によって進出方向に押されて移動し、連結部94が後退方向に移動すると戻しバネ92の押圧により後退方向に移動する。また、第2主軸61が回転したときには、戻しバネ92を介して第2主軸61の回転が伝達されるため第2主軸61とともに回転する。
【0047】
エアシリンダ93は、シリンダ用排出部材91とはX2軸方向に離間してシリンダ用排出部材91と平行に並んで配置されている。このエアシリンダ93は、アクチュエータの一例に相当する。エアシリンダ93は、シリンダブロック931と移動部材932とを有している。シリンダブロック931は、前後方向に長い概略直方体をしている。移動部材932の後端にはY2軸方向に延在する係止部9321が設けられている。エアシリンダ93の構成については、後に詳述する。
【0048】
連結部94は、移動部材932の前進方向への移動の力をシリンダ用排出部材91に伝達するためのものである。連結部94は、連結アーム941と、押し棒942と、コマ943とを有している。第2主軸61の後端部分に配置された後端カバー部633には、押し棒ガイド6331が固定されている。押し棒942は、この押し棒ガイド6331によって前後方向に移動自在に支持されている。連結アーム941は、移動部材932の係止部9321と押し棒942の後端とを連結している。コマ943は、押し棒942の前端にねじ構造により連結されている。これらの押し棒942およびコマ943は、非磁性体であるSUS303で形成されている。なお、押し棒942およびコマ943は、他のステンレス鋼や他の金属なで構成されていてもよいが、後述する待機位置に戻ったか否かの検出を行うために非磁性体であることが好ましい。
【0049】
エアシリンダ式製品排出装置9を備えた第2主軸台6では、バネ式製品排出装置82を備えた第2主軸台6と同様に、近接センサ6351を有するセンサ板635が後端カバー部633にねじによって取り付けられている。エアシリンダ式製品排出装置9を備えた第2主軸台6と、バネ式製品排出装置82を備えた第2主軸台6では、同一の後端カバー部633が用いられる。ただし、エアシリンダ式製品排出装置9を備えた第2主軸台6の近接センサ6351は、後端カバー部633に形成された第2センサ孔633bに挿入されている。そして、バネ式製品排出装置82を備えた第2主軸台6で用いられる第1センサ孔633aは、センサ板635によって開口が塞がれている。
【0050】
エアシリンダ式製品排出装置9を備えた第2主軸台6では、近接センサ6351は、戻しバネ92の押圧により移動部材932が後退方向へ移動することで、シリンダ用排出部材91が待機位置に戻ったか否かを検出する。上述したように、
図6には、シリンダ用排出部材91が待機位置にある状態が示されている。第2把持部611が切断済ワークW2を把持している間は、シリンダ用排出部材91は待機位置で待機している。この待機位置では、センサ面6351aに対面した位置にシリンダ用吐出軸911が配置されている状態である。一方、移動部材932が前進方向に移動することでシリンダ用排出部材91が前進方向に移動すると、近接センサ6351のセンサ面6351aに対面した位置に磁性体であるシリンダ用吐出軸911が存在していない状態になる。そして、非磁性体である押し棒942またはコマ943がセンサ面6351aに対面して配置されている状態になる。近接センサ6351がこれらの状態変化を検出することで、シリンダ用排出部材91が待機位置に戻ったか否かを判断することができる。すなわち、移動部材932が後退方向に移動することで、近接センサ6351の検出結果が磁性体有りに移行すれば正常にシリンダ用排出部材91が待機位置に戻ったと判断できる。逆に、移動部材932が後退方向に移動しても、近接センサ6351の検出結果が磁性体無しのままである場合は、例えば戻しバネ92の動作を切削くずが阻害しているなど何らかの原因でシリンダ用排出部材91が待機位置に戻っていないと判断できる。
【0051】
近接センサ6351を第2センサ孔633bに挿入して第1センサ孔633aを塞いだ状態と、近接センサ6351を第1センサ孔633aに挿入して第2センサ孔633bを塞いだ状態とは、センサ板635の付け替えによって切り替えることができる。詳細には、センサ板635を、
図6における上下方向を回転軸にして180度回転させて後端カバー部633にとりつけることで近接センサ6351の挿入位置と塞ぐセンサ孔を切り替えることができる。第2把持部611から第2主軸61内に切削くずやクーラント液が入ってしまうことを抑制するために、第2主軸61の貫通孔に圧縮した空気を供給することがある。第1センサ孔633aと第2センサ孔633bのうち、近接センサ6351が挿入されていない方のセンサ孔を塞ぐことで、供給した空気が抜け出てしまうことを防止できる。同様に、第2主軸61内に入ってしまったクーラント液がこれらの孔から漏れ出てしまうことも防止できる。しかも、センサ板635の取付により、近接センサ6351の配置と使用していない孔の閉塞を同時に達成できるので、付け替え作業や取付作業が簡便で、このNC旋盤1の組立作業性やメンテナンス作業性が高まる。また、エアシリンダ式製品排出装置9を備えた第2主軸台6と、バネ式製品排出装置82を備えた第2主軸台6で部品が共通化できるので、NC旋盤1を安価に構成できる。
【0052】
図7は、
図6に示したシリンダ用排出部材が前進した状態を示す
図6と同様の断面図である。この
図7には、第2主軸61と後端カバー部633とセンサ板635も示されている。
【0053】
第2主軸61を用いた切断済ワークW2の加工が完了したら、第2把持部611による把持が解除し、
図7に示すように、エアシリンダ93の移動部材932を前進方向に移動させる。これにより、移動部材932とともに連結部94が前進方向に移動し、連結部94によって前進方向に押されたシリンダ用排出部材91も戻しバネ92に抗して前進方向に移動する。シリンダ用排出部材91の前進方向の移動が完了した状態では、シリンダ用排出部材91の先端は、第2把持部611よりも前側に少し突出している。これにより、第2把持部611による把持が解除された加工済ワークが第2主軸61の前方に吐出され、不図示の製品受入部材内に投入される。
【0054】
図8は、
図6に示したエアシリンダの内部構造とシリンダ用排出部材とを示す斜視図であり、(a)は、シリンダ用排出部材が後退した様子を示し、(b)は、シリンダ用排出部材が前進した様子を示している。この
図8では、手前側半分を削除したエアシリンダ93が描かれている。
【0055】
図8(a)および
図8(b)に示すように、シリンダブロック931内は、気体が供給されるピストン室931aと、前後方向に貫通した2つのガイド孔931bとが形成されている。このピストン室931aに供給される気体は、流体の一例に相当する。移動部材932は、係止部9321と、ピストンロッド9322と、2本のガイド軸9323とを有している。ピストンロッド9322の後端および2本のガイド軸9323後端は、それぞれねじによって係止部9321に固定されている。この係止部9321は、移動部材932の位置にかかわらず、常にシリンダブロック931よりも後退方向側に配置されている。2本のガイド軸9323は、2つのガイド孔931bそれぞれに挿入されることで、前後方向に移動自在に案内されている。そして、ピストン室931a内に気体が供給されることでピストンロッド9322が駆動され、移動部材932は前進方向または後退方向へ移動する。
図8(b)に示すように、移動部材932の前進方向への移動が完了した状態では、ガイド軸9323の前側部分がシリンダブロック931の前端面よりも前進方向に突出する。この突出した前側部分が前進側突出部9323aになる。
【0056】
ところで、
図6に示した第2把持部611およびチャックスリーブ612は、加工する切断済ワークW2の外径に適応した内径のものに交換することがある。極めて細い切断済ワークW2を加工するときは、シリンダ用吐出軸911の前端部分の外径よりも小さい内径の第2把持部611を用いる場合もある。この場合、シリンダ用吐出軸911が第2把持部611内に入り込めないので、シリンダ用エジェクタピン912に細長いものを使用し、移動部材932の前進方向の移動量を減らす構成にする。この構成に変更することで、シリンダ用吐出軸911の前端部分が第2把持部611内部に入り込まなくても加工済ワークを第2主軸61の前方に吐出することができる。以下、この構成に変更した第2主軸を細径ワーク用の第2主軸と称し、その細径ワーク用の第2主軸に用いられるエアシリンダ式製品排出装置を細径ワーク用のエアシリンダ式製品排出装置と称する。これらの細径ワーク用の第2主軸61と細径ワーク用のエアシリンダ式製品排出装置9の説明では、主に
図6に示した第2主軸61およびエアシリンダ式製品排出装置9との相違点について説明する。
【0057】
図9は、細径ワーク用の第2主軸と細径ワーク用のエアシリンダ式製品排出装置を示す
図7と同様の断面図である。
【0058】
上述したように、
図9に示す細径ワーク用の第2主軸61では、第2把持部611の外径および内径が小さい。また、細径ワーク用の第2主軸61では、チャックスリーブ612が肉厚でその内径が小さい。シリンダ用エジェクタピン912は、全長が長く外径が第2把持部611の内径よりも細い。シリンダ用吐出軸911は、
図6に示したものと同一のものであるため、シリンダ用排出部材91全体の長さは、
図6に示したものよりも長い。そして、シリンダブロック931の、前進側の端部には、ブロックストッパ933が取り付けられている。
【0059】
図10(a)は、
図9に示したエアシリンダの内部構造とシリンダ用排出部材とを示す斜視図であり、
図10(b)は、同図(a)に示したエアシリンダの外観を示す斜視図である。
図10(a)には、移動部材932が前進した様子が示されている。なお、
図10(a)では、手前側半分を削除したエアシリンダ93が描かれている。
【0060】
図10(a)に示すように、ブロックストッパ933は、ブロック基体9331と2つの突当部9332とを有している。このブロックストッパ933は、移動制限部材の一例に相当する。
図10(b)に示すように、ブロック基体9331は、後方に向かってねじ部が突出した4本のねじ93Sによってシリンダブロック931に着脱可能に取り付けられている。換言すれば、ブロックストッパ933は、ねじ部の突出方向がZ2軸方向に平行な複数のねじ93Sによってシリンダブロック931に取り付けられている。ねじ93Sは、ブロックストッパ933の四隅に配置されている。
図10(b)には、ブロック基体9331によって隠れている右下のねじ93Sを除く3本が表れている。
【0061】
図10(a)に示すように、2つの突当部9332は、硬質ゴムで覆われた前側の頭部と、後部に向かって突出したねじ部とを有する雄ねじで構成されている。この後部のねじ部がブロック基体9331に形成されたねじ穴にねじ結合することで、突当部9332はブロック基体9331に取り付けられている。また、前後方向を回転軸として突当部9332を回転させることで、ブロック基体9331に対する突当部9332の位置を前後方向に微調整することができる。なお、突当部9332の雄ねじには、突当部9332の緩み止め用のナットNが締め込まれている。
【0062】
図6に示したエアシリンダ式製品排出装置9と同様に、細径ワーク用のエアシリンダ式製品排出装置9においても、エアシリンダ93を駆動することで移動部材932が前進方向に移動し、連結部94とシリンダ用排出部材91が前進方向に移動する。そして、
図10(a)に示すように、移動部材932の2本のガイド軸9323の前端それぞれが2つの突当部9332に突き当たることで、移動部材932のそれ以上の前進方向の移動が阻止され、移動部材932、連結部94およびシリンダ用排出部材91の前進方向の移動は停止する。このガイド軸9323の前端は、突出端の一例に相当する。ガイド軸9323が突当部9332に突き当たる位置は、シリンダ用排出部材91の前後方向の長さに応じて設定されている。すなわち、
図6に示したエアシリンダ式製品排出装置9に対して、シリンダ用排出部材91の前後方向の長さが延びた分、シリンダ用排出部材91の前進方向への移動量を減少させるように、ブロックストッパ933を構成している。こうすることで、ガイド軸9323が突当部9332に突き当たりシリンダ用排出部材91の前進方向への移動が停止したときに、シリンダ用排出部材91の先端が、第2把持部611よりも前側に少し突出した位置になる。これにより、第2把持部611による把持が解除された加工済ワークが第2主軸61の前方に吐出される。なお、個体差などにより前進方向への移動が停止した状態におけるシリンダ用排出部材91の先端位置が意図した位置からずれている場合、ブロック基体9331に対する突当部9332の位置を微調整することで、ずれを修正することができる。
【0063】
以上説明したNC旋盤1によれば、
図6に示した第2主軸およびエアシリンダ式製品排出装置9と、
図9に示した細径ワーク用の第2主軸および細径ワーク用のエアシリンダ式製品排出装置9とを、簡便に切り替えることができる。すなわち、第2把持部611、チャックスリーブ612およびシリンダ用エジェクタピン912を変更し、ブロックストッパ933を取り付けまたは取り外すことで切り替えることができる。また、ブロックストッパ933が取り付けられているか否かを視認することで、シリンダ用排出部材91の移動量が変更されているか否かを容易に理解することができる。さらに、エアシリンダ93の駆動力を連結部94で折り返してシリンダ用排出部材91に伝達させる構成にし、エアシリンダ93とシリンダ用排出部材91とを平行に配置している。これにより、エアシリンダ93とシリンダ用排出部材91とを合わせたZ2軸方向の全長を短くすることができる。その結果、NC旋盤1を小型化できる。加えて、細径ワーク用のエアシリンダ式製品排出装置9では、シリンダブロック931の前進側端部に取り付けられたブロックストッパ933に前進側突出部9323aを突き当てることで移動部材932のそれ以上の移動を阻止している。このため、ブロックストッパ933の位置がZ2軸方向にずれ難い。また、仮にブロックストッパ933が前進方向にずれてしまった場合には、ブロックストッパ933とシリンダブロック931の間に隙間が発生するので、ずれたことを容易に認識できる。なお、ブロックストッパ933の正常な取付状態で、ブロックストッパ933とシリンダブロック931の間に隙間がある構成にした場合には、その隙間の大きさを確認することで、ブロックストッパ933の位置がずれたことを認識することができる。
【0064】
次に、他の実施形態のNC旋盤1について説明する。この他の実施形態のNC旋盤1は、細径ワーク用のエアシリンダ式製品排出装置9が先の実施形態と異なり、それ以外の構成は先の実施形態と同一である。従って、主に先の実施形態と異なる構成について説明し、先の実施形態と重複する説明は省略する。
【0065】
図11は、他の実施形態における細径ワーク用のエアシリンダ式製品排出装置に用いられるエアシリンダの内部構造とシリンダ用排出部材とを示す斜視図であり、(a)は、シリンダ用排出部材が後退した様子を示し、(b)は、シリンダ用排出部材が前進した様子を示している。
【0066】
図11(a)に示すように、他の実施形態の細径ワーク用のエアシリンダ式製品排出装置9は、ブロックストッパ933(
図9参照)の代わりにスリーブストッパ934がガイド軸9323に取り付けられている点が、先の実施形態と異なる。スリーブストッパ934は、ガイド軸9323の、係止部9321とシリンダブロック931の間に取り付けられている。このスリーブストッパ934は、移動制限部材の一例に相当する。スリーブストッパ934は、鋼材で構成されている。スリーブストッパ934は、他の金属や樹脂などで構成してもよいが、剛性の高い材質であることが好ましい。スリーブストッパ934は、2つの半円筒を組み合わせることで形成された円筒状をしている。このスリーブストッパ934の内径は、ガイド軸9323の外径よりも少し大きい。
図11(a)および
図11(b)には、スリーブストッパ934を構成する2つの半円筒のうちの一方が示されている。ガイド軸9323を挟んでスリーブストッパ934を構成する2つの半円筒をネジなどで連結することで、Z2軸方向に移動自在にスリーブストッパ934がガイド軸9323に取り付けられる。
【0067】
この他の実施形態でも先の実施形態と同様に、移動部材932が前進方向に移動することで連結部94とシリンダ用排出部材91が前進方向に移動する。そして、
図11(b)に示すように、係止部9321とシリンダブロック931にスリーブストッパ934が挟まれることで、移動部材932のそれ以上の前進方向の移動が阻止され、移動部材932、連結部94およびシリンダ用排出部材91の前進方向の移動は停止する。スリーブストッパ934のZ2軸方向の長さは、シリンダ用排出部材91全体の長さに応じて設定されている。すなわち、
図6に示したエアシリンダ式製品排出装置9に対して、シリンダ用排出部材91の前後方向の長さが延びた分、前進方向への移動量を減少させるように、スリーブストッパ934のZ2軸方向の長さを決定している。こうすることで、係止部9321とシリンダブロック931にスリーブストッパ934が挟まれ、シリンダ用排出部材91の前進方向の移動が停止した状態におけるシリンダ用排出部材91の先端は、第2把持部611(
図6参照)よりも前側に少し突出した位置になる。これにより、第2把持部611による把持が解除された加工済ワークが第2主軸61の前方に吐出される。なお、スリーブストッパ934の内径をガイド軸9323の外径よりも少し小さくすることで、スリーブストッパ934が前後方向に移動し難い構成にしてもよい。ただし、その構成では、移動部材932の前進方向の移動が半端な位置で阻止されてしまう虞があるので、スリーブストッパ934は、その後端面が係止部9321に接するようガイド軸9323に取り付けることが好ましい。
【0068】
この他の実施形態のNC旋盤1によっても、先の実施形態と同様の効果を奏する。また、スリーブストッパ934を挟み込むことで、移動部材932の移動が阻止されるので、移動部材932の移動量が変化してしまうことを確実に防止できる。
【0069】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。たとえば、本実施形態の説明では、エアシリンダ93を用いる例を用いたが、エアシリンダ93の代わりに油圧シリンダやモータなどの他のアクチュエータを用いてもよい。また、ガイド軸9323は省略してもよい。その場合、ピストン部分の前後方向両側に軸を有する両ロッドタイプのピストンロッド9322を用い、細径ワーク用のエアシリンダ式製品排出装置9ではピストンロッド9322の前側の軸がブロックストッパ933に突き当たるように構成してもよい。さらに、スリーブストッパ934は、2本のガイド軸9323のうちの一方のみに取り付けてもよく、ピストンロッド9322に取り付けてもよい。
【0070】
なお、以上説明した各実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態や他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 NC旋盤(旋盤)
61 第2主軸(主軸)
91 第シリンダ用排出部材91(ワーク排出部材)
93 エアシリンダ(アクチュエータ)
932 移動部材
933 ブロックストッパ(移動制限部材)
934 スリーブストッパ(移動制限部材)
W2 切断済ワーク(ワーク)