(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168673
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】焼菓子用油脂組成物、焼菓子用生地及び焼菓子
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20221031BHJP
A21D 2/14 20060101ALI20221031BHJP
A21D 13/045 20170101ALI20221031BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20221031BHJP
【FI】
A23D9/00 502
A21D2/14
A21D13/045
A21D13/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074298
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】591040144
【氏名又は名称】太陽油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】林 美穂
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 美緒
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG02
4B026DG03
4B026DH01
4B026DH05
4B026DH10
4B026DK10
4B026DL05
4B026DX02
4B032DB22
4B032DK18
4B032DL20
(57)【要約】
【課題】可塑性が良好であり、焼菓子用生地に良好な伸展性を付与することができ、かつ焼菓子の口ごなれを良好にすることができる焼菓子用油脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の焼菓子用油脂組成物は、20℃におけるSFC(固体脂含量)が25~37%であり、油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対するラウリン酸の含有量が5~15質量%であり、油脂組成物の構成トリグリセリド全質量に対するP2O(2分子のパルミチン酸及び1分子のオレイン酸が結合したトリグリセリド)の含有量が16質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃におけるSFC(固体脂含量)が25~37%であり、
油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対するラウリン酸の含有量が5~15質量%であり、
油脂組成物の構成トリグリセリド全質量に対するP2O(2分子のパルミチン酸及び1分子のオレイン酸が結合したトリグリセリド)の含有量が16質量%以下である、焼菓子用油脂組成物。
【請求項2】
油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対する飽和脂肪酸の含有量が55~70質量%である、請求項1に記載の焼菓子用油脂組成物。
【請求項3】
油脂組成物の構成トリグリセリド全質量に対するUUU(3分子の不飽和脂肪酸が結合したトリグリセリド)の含有量が15質量%以下である、請求項1又は2に記載の焼菓子用油脂組成物。
【請求項4】
ラウリン系油脂及びパーム系油脂の混合油脂のエステル交換油脂(A)を含み、前記エステル交換油脂(A)の含有量が10~50質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の焼菓子用油脂組成物。
【請求項5】
エステル交換油脂(A)が、15~40質量%のラウリン系油脂を含む混合油脂をエステル交換して得られる油脂である、請求項4に記載の焼菓子用油脂組成物。
【請求項6】
ラウリン系油脂、パーム系油脂及び室温において液体で、かつ、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を65質量%以上含む液体油の混合油脂のエステル交換油脂(B)を含み、前記エステル交換油脂(B)の含有量が30~80質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の焼菓子用油脂組成物。
【請求項7】
エステル交換油脂(B)が、5~30質量%のラウリン系油脂を含む混合油脂をエステル交換して得られる油脂である、請求項6に記載の焼菓子用油脂組成物。
【請求項8】
乳化剤を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の焼菓子用油脂組成物。
【請求項9】
乳化剤が不飽和系乳化剤である、請求項8に記載の焼菓子用油脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の焼菓子用油脂組成物を含む、焼菓子用生地。
【請求項11】
大豆由来原材料をさらに含む、請求項10に記載の焼菓子用生地。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の焼菓子用生地を焼成してなる、焼菓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッキーやビスケット等の焼菓子に用いるための油脂組成物並びにこれを用いてなる焼菓子用生地及び焼菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
クッキーやビスケットは、サクサクとした食感や良好な口ごなれ(喫食時にほろほろと崩れる様子)を楽しむことができる焼菓子の一種である。このような特性を焼菓子に付与するためにショートニング等の油脂が生地に添加されている。焼菓子の食感を改善するために使用される油脂を開示する文献として、例えば特許文献1~3がある。
【0003】
特許文献1及び2には、SUS型トリグリセリド、SSU型トリグリセリド及びSSS型トリグリセリド(S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸)を特定量含み、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるポリグリセリン脂肪酸エステルまたはソルビタン脂肪酸エステルを含む油脂組成物の使用によって、サクさのある食感や歯切れを有する菓子やパンが得られることが記載されている。
特許文献3には、H2Xトリグリセリド、HX2トリグリセリド及びHO2トリグリセリド(H:炭素数16以上の飽和脂肪酸、X:炭素数16以上の不飽和脂肪酸、O:オレイン酸)を特定量含む油脂組成物の使用によって、軽くソフトで脆くさっくりした食感を有するベーカリー食品が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-106597号公報
【特許文献2】特開2015-35966号公報
【特許文献3】特開2014-200196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の焼菓子用生地はいずれも、大豆紛等の特に吸水性の高い粉体原材料を含む場合に、生地の伸展性が十分でなくなるという問題があった。生地の伸展性が十分でないと、成形性が悪くなる。また焼菓子用生地に使用される油脂組成物には良好な可塑性が求められており、焼菓子には良好な口ごなれが求められている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、可塑性が良好であり、焼菓子用生地に良好な伸展性を付与することができ、かつ焼菓子の口ごなれを良好にすることができる焼菓子用油脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、20℃におけるSFC、特定の構成脂肪酸の含有量、及び特定のトリグリセリドの含有量を適切に制御することによって上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1]20℃におけるSFC(固体脂含量)が25~37%であり、
油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対するラウリン酸の含有量が5~15質量%であり、
油脂組成物の構成トリグリセリド全質量に対するP2O(2分子のパルミチン酸及び1分子のオレイン酸が結合したトリグリセリド)の含有量が16質量%以下である、焼菓子用油脂組成物。
[2]油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対する飽和脂肪酸の含有量が55~70質量%である、[1]に記載の焼菓子用油脂組成物。
[3]油脂組成物の構成トリグリセリド全質量に対するUUU(3分子の不飽和脂肪酸が結合したトリグリセリド)の含有量が15質量%以下である、[1]又は[2]に記載の焼菓子用油脂組成物。
[4]ラウリン系油脂及びパーム系油脂の混合油脂のエステル交換油脂(A)を含み、前記エステル交換油脂(A)の含有量が10~50質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の焼菓子用油脂組成物。
[5]エステル交換油脂(A)が、15~40質量%のラウリン系油脂を含む混合油脂をエステル交換して得られる油脂である、[4]に記載の焼菓子用油脂組成物。
[6]ラウリン系油脂、パーム系油脂及び室温において液体で、かつ、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を65質量%以上含む液体油の混合油脂のエステル交換油脂(B)を含み、前記エステル交換油脂(B)の含有量が30~80質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の焼菓子用油脂組成物。
[7]エステル交換油脂(B)が、5~30質量%のラウリン系油脂を含む混合油脂をエステル交換して得られる油脂である、[6]に記載の焼菓子用油脂組成物。
[8]乳化剤を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の焼菓子用油脂組成物。
[9]乳化剤が不飽和系乳化剤である、[8]に記載の焼菓子用油脂組成物。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の焼菓子用油脂組成物を含む、焼菓子用生地。
[11]大豆由来原材料をさらに含む、[10]に記載の焼菓子用生地。
[12][10]又は[11]に記載の焼菓子用生地を焼成してなる、焼菓子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可塑性が良好であり、焼菓子用生地に良好な伸展性を付与することができ、かつ焼菓子の口ごなれを良好にすることができる焼菓子用油脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
<焼菓子用油脂組成物>
本発明の焼菓子用油脂組成物は、20℃におけるSFC(固体脂含量)が25~37%であり、油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対するラウリン酸の含有量が5~15質量%であり、油脂組成物の構成トリグリセリド全質量に対するP2O(2分子のパルミチン酸及び1分子のオレイン酸が結合したトリグリセリド)の含有量が16質量%以下であることを特徴とする。これにより、可塑性が良好であり、焼菓子用生地に良好な伸展性を付与することができ、焼菓子の口ごなれを良好にすることができる焼菓子用油脂組成物が得られる。
【0010】
なお本発明において、「焼菓子」とは、小麦粉等の穀粉、及び食用油脂を原料とし、必要により糖類、食塩、澱粉、乳製品、卵製品、膨脹剤、食品添加物等の原材料を配合し、又は添加したものを混合機、成型機及びオーブンを使用して製造した食品をいう。焼菓子の例としては、ビスケット、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツェル、パイ、ショートブレッド等が挙げられる。
本発明の焼菓子は、焼成後の水分量が0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~8質量%であることがより好ましく、0.2~5質量%であることが更に好ましい。
本発明において、「焼菓子用油脂組成物」とは、上述の焼菓子の生地を製造するために用いられる油脂組成物を意味する。
【0011】
〔固体脂含量(SFC)〕
本発明の焼菓子用油脂組成物は、20℃におけるSFC(固体脂含量)が25~37%である。20℃におけるSFCは、27~35%であることが好ましく、29~34%であることがより好ましい。20℃におけるSFCが上記範囲内であると、油脂組成物の可塑性を良好にすることができ、焼菓子用生地に良好な伸展性を付与することができ、また焼菓子の口ごなれを良好にすることができる。
油脂組成物のSFC(単位:%)は、後述の実施例に記載のように、日本油化学会編「基準油脂分析試験法」(2013年)に記載の「2.2.9 固体脂含量(NMR法)」に準拠して測定することができる。
【0012】
〔構成脂肪酸〕
本発明の焼菓子用油脂組成物は、油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対するラウリン酸の含有量が5~15質量%である。ラウリン酸の含有量は、6~13質量%であることが好ましく、7~11質量%であることがより好ましい。ラウリン酸の含有量が上記範囲内であると、油脂組成物の可塑性を良好にすることができ、焼菓子用生地に良好な伸展性を付与することができる。
また、本発明の焼菓子用油脂組成物は、油脂組成物の構成脂肪酸全質量に対する飽和脂肪酸の含有量が55~70質量%であることが好ましい。飽和脂肪酸の含有量は、56~67質量%であることがより好ましく、57~63質量%であることが更に好ましい。飽和脂肪酸の含有量が上記範囲内であると、油脂組成物の可塑性を良好にすることができ、焼菓子用生地に良好な伸展性を付与することができる。
上記ラウリン酸及び飽和脂肪酸の含有量は、例えばガスクロマトグラフィー法によって測定することができる。
【0013】
〔P2O(2分子のパルミチン酸及び1分子のオレイン酸が結合したトリグリセリド)〕
本発明の焼菓子用油脂組成物は、油脂組成物の構成トリグリセリド全質量に対するP2O(2分子のパルミチン酸及び1分子のオレイン酸が結合したトリグリセリド)の含有量が16質量%以下である。P2Oの含有量は、15.5質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。P2Oの含有量が上記範囲内であると、油脂組成物中の結晶の粗大化を抑制し、油脂組成物の可塑性を良好にすることができる。P2Oの含有量の下限値は特に限定されないが、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。
なおP2Oとは、PPO(1位(または3位)及び2位にパルミチン酸、3位(または1位)にオレイン酸が結合したトリグリセリド)及びPOP(1位及び3位にパルミチン酸、2位にオレイン酸が結合したトリグリセリド)の双方を意味する。すなわち、P2Oの含有量とは、PPO及びPOPの合計の含有量である。
上記P2Oの含有量は、例えば液体クロマトグラフィー質量分析法によって測定することができる。
【0014】
〔UUU(3分子の不飽和脂肪酸が結合したトリグリセリド)〕
本発明の焼菓子用油脂組成物は、油脂組成物の構成トリグリセリド全質量に対するUUU(3分子の不飽和脂肪酸が結合したトリグリセリド)の含有量が15質量%以下であることが好ましい。UUUの含有量は、12質量%以下であることがより好ましく、9質量%以下であることが更に好ましい。UUUの含有量が上記範囲内であると、油脂組成物の水との乳化性を良好にすることができ、焼菓子用生地に良好な伸展性を付与することができる。UUUの含有量の下限値は特に限定されないが、良好な可塑性を持つ油脂組成物とする観点から、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。
UUUの含有量は、例えば液体クロマトグラフィー質量分析法によって測定することができる。
【0015】
〔エステル交換油脂(A)〕
本発明の焼菓子用油脂組成物は、ラウリン系油脂及びパーム系油脂の混合油脂のエステル交換油脂(以下、エステル交換油脂(A))を含むことが好ましい。上記エステル交換油脂(A)は、ラウリン系油脂及びパーム系油脂の混合油脂をエステル交換したものである。前記混合油脂は、ラウリン系油脂及びパーム系油脂からなることが好ましい。焼菓子用油脂組成物がエステル交換油脂(A)を含むことにより、焼菓子用生地に良好な伸展性を付与することができる。
【0016】
エステル交換は、方法によって非選択的エステル交換反応と、選択的(指向型)エステル交換反応に分類される。非選択的エステル交換反応は、例えばナトリウムメチラート、水酸化ナトリウムを触媒としてエステル交換を行う化学的方法や、非選択的リパーゼを触媒としてエステル交換を行う酵素的な方法が挙げられる(参考文献:安田耕作、福永良一郎、松井宣也、渡辺正男、新版 油脂製品の知識、幸書房)。中でも、簡便に反応を行うことができることから、化学的方法による非選択的エステル交換反応が好ましい。
【0017】
本発明において、ラウリン系油脂とは、構成脂肪酸としてラウリン酸を30質量%以上含む油脂の総称であり、ヤシ油、パーム核油、これらの水素添加、エステル交換、分別、配合等の処理を行った油脂等が含まれる。
なお本発明において、水素添加とは、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を含む油脂に水素を添加することで不飽和脂肪酸の一部又は全部を飽和脂肪酸に変える処理を意味する。
エステル交換油脂(A)の製造に使用される上記ラウリン系油脂の具体例としては、特に限定されないが、ヤシ油、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリンが好ましく、ヤシ油、パーム核油、パーム核オレインがより好ましく、パーム核オレインが更に好ましい。上記ラウリン系油脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
パーム核オレインとは、パーム核油を分別して得られる低融点画分の油脂である。パーム核ステアリンとは、パーム核油を分別して得られる高融点画分の油脂である。
【0018】
本発明において、パーム系油脂とは、パームの果実由来の油脂の総称であり、パーム油、これの水素添加、エステル交換、分別、配合等の処理を行った油脂等が含まれる。
エステル交換油脂(A)の製造に使用される上記パーム系油脂の具体例としては、特に限定されないが、パーム油、パームオレイン、パームダブルオレイン、パームスーパーオレイン、パームミッドフラクション、パームステアリン、パーム極度硬化油が好ましく、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、パーム極度硬化油がより好ましい。上記パーム系油脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
パームオレインとは、パーム油を分別して得られる低融点画分の油脂である。パームステアリンとは、パーム油を分別して得られる高融点画分の油脂である。パームダブルオレインやパームスーパーオレインとは、パームオレインを更に分別して得られる低融点画分の油脂である。パームミッドフラクションとは、パームオレインを更に分別して得られる高融点画分の油脂である。
【0019】
上記エステル交換油脂(A)は、15~40質量%、好ましくは20~35質量%のラウリン系油脂を含み、かつ60~85質量%、好ましくは65~80質量%のパーム系油脂を含む混合油脂をエステル交換して得られる油脂であることが好ましい。
上記エステル交換油脂(A)の含有量は、焼菓子用油脂組成物の全質量に対して、10~50質量%であることが好ましく、15~45質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることが更に好ましい。エステル交換油脂(A)の含有量が上記範囲内であると、焼菓子用生地に良好な伸展性を付与することができる。
上記混合油脂の組成及びエステル交換油脂(A)の使用量は、上記20℃におけるSFC、構成脂肪酸の含有量、及びトリグリセリドの含有量を満たすように適宜選択することができる。
上記エステル交換油脂(A)は、1種類を単独で用いても良く、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
〔エステル交換油脂(B)〕
本発明の焼菓子用油脂組成物は、ラウリン系油脂、パーム系油脂、及び液体油の混合油脂のエステル交換油脂(以下、エステル交換油脂(B)という)を含むことが好ましい。上記エステル交換油脂(B)は、ラウリン系油脂、パーム系油脂、及び液体油の混合油脂をエステル交換したものである。前記混合油脂は、ラウリン系油脂、パーム系油脂、及び液体油からなることが好ましい。焼菓子用油脂組成物がエステル交換油脂(B)を含むことにより、油脂組成物の可塑性を良好にすることができ、焼菓子用生地に良好な伸展性を付与することができる。
【0021】
エステル交換油脂(B)の製造に使用される上記ラウリン系油脂の具体例としては、特に限定されないが、ヤシ油、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリンが好ましく、ヤシ油、パーム核油、パーム核オレインがより好ましく、ヤシ油が更に好ましい。上記ラウリン系油脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0022】
エステル交換油脂(B)の製造に使用される上記パーム系油脂の具体例としては、特に限定されないが、パーム油、パームオレイン、パームダブルオレイン、パームスーパーオレイン、パームステアリン、パームミッドフラクションが好ましく、パーム油、パームオレイン、パームダブルオレイン、パームミッドフラクションがより好ましく、パーム油が更に好ましい。上記パーム系油脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
本発明において、液体油とは、室温(15~20℃)において液体で、かつ、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を65質量%以上含む油脂の総称である。液体油は、20℃より低い融点を有することが好ましい。
エステル交換油脂(B)の製造に使用される上記液体油の具体例としては、特に限定されないが、菜種油、ハイオレイック菜種油、ハイエルシン菜種油、大豆油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、オリーブ油、紅花油(サフラワー油)、ハイオレイック紅花油、コーン油、綿実油、落花生油、米油、亜麻仁油、えごま油、胡麻油、又はこれらの混合油あるいはこれらの加工油脂(硬化油、分別油等)が好ましく、ハイオレイック菜種油、ハイエルシン菜種油がより好ましい。上記液体油は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
上記エステル交換油脂(B)は、5~30質量%、好ましくは6~24質量%のラウリン系油脂を含み、かつ50~90質量%、好ましくは61~89質量%のパーム系油脂を含み、5~20質量%、好ましくは5~15質量%の液体油を含む混合油脂をエステル交換反応して得られる油脂であることが好ましい。
【0025】
上記エステル交換油脂(B)の含有量は、焼菓子用油脂組成物の全質量に対して30~80質量%であることが好ましく、40~75質量%であることがより好ましく、55~75質量%であることが更に好ましい。エステル交換油脂(B)の含有量が上記範囲内であると、油脂組成物の可塑性を良好にすることができ、焼菓子用生地に良好な伸展性を付与することができる。
上記混合油脂の組成及びエステル交換油脂(B)の使用量は、上記20℃におけるSFC、構成脂肪酸の含有量、及びトリグリセリドの含有量を満たすように適宜選択することができる。
上記エステル交換油脂(B)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
〔乳化剤〕
本発明の焼菓子用油脂組成物は、乳化剤を含むことが好ましい。乳化剤としては特に限定なく使用することができ、飽和系乳化剤であってもよく不飽和系乳化剤であってもよい。中でも、不飽和系乳化剤を使用すると、焼菓子用生地により良好な伸展性を付与することができるため好ましい。
飽和系乳化剤とは、グリセリンやソルビタン等に結合する脂肪酸として飽和脂肪酸が主体のものをいい、例えば飽和脂肪酸のモノグリセライド、ポリグリセリンエステル、ソルビタン脂肪酸モノエステル、ソルビタン脂肪酸ポリエステル等が挙げられる。前記飽和系乳化剤の具体例としては、理研ビタミン株式会社製のポエムS-320YN、ポエムST-PV、エマルジーMP、エマルジーMS等が挙げられる。
不飽和系乳化剤とは、グリセリンやショ糖等に結合する脂肪酸として不飽和脂肪酸が主体のものをいい、例えば不飽和脂肪酸のモノグリセライド、ポリグリセリンエステル、ショ糖脂肪酸モノエステル、ショ糖脂肪酸ポリエステル等が挙げられる。前記不飽和系乳化剤の具体例としては、理研ビタミン株式会社製のポエムDO-100V、エマルジーMU、エマルジーOL-100H、三菱ケミカルフーズ株式会社製のリョートーシュガーエステルER-290等が挙げられる。
なお本発明において、乳化剤を構成する脂肪酸の「主体」が飽和脂肪酸であるか不飽和脂肪酸であるかは、例えば以下の要領にて判断できる。乳化剤を例えばガスクロマトグラフィー法により分析し、乳化剤の構成脂肪酸全質量に対する飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の質量(%)を算出する。飽和脂肪酸の質量(%)が不飽和脂肪酸の質量(%)より多い場合に「飽和脂肪酸が主体」、不飽和脂肪酸の質量(%)が飽和脂肪酸の質量(%)より多い場合に「不飽和脂肪酸が主体」であると判断することができる。
上記乳化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
上記乳化剤の含有量は、焼菓子用油脂組成物に含まれる油脂の全質量に対して0.05~3質量%であることが好ましく、0.1~2質量%であることがより好ましく、0.2~1質量%であることが更に好ましい。乳化剤の含有量が上記範囲内であると、焼菓子用生地により良好な伸展性を付与することができる。
【0028】
〔その他の任意成分〕
本発明の焼菓子用油脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の油脂を含んでいてもよい。例えば、本発明の焼菓子用油脂組成物は、上記エステル交換油脂(A)及び(B)以外のエステル交換油脂(C)、並びに/又はエステル交換油脂以外の油脂を含んでいてもよい。エステル交換油脂(C)としては、特に限定されず、パーム系油脂のエステル交換油脂、ラウリン系油脂及び極度硬化油の混合油脂のエステル交換油脂等が挙げられる。
上記エステル交換油脂(A)及び(B)以外の油脂の種類及び使用量は、上記20℃におけるSFC、構成脂肪酸の含有量、及びトリグリセリドの含有量を満たすように適宜選択することができる。
【0029】
本発明の焼菓子用油脂組成物は、生地の伸展性を良好にする観点から、液体油を単体で含まないか、又は液体油を焼菓子用油脂組成物の全質量に対して5質量%以下で含むことが好ましい。ここで、液体油は上述の定義と同様、室温(15~20℃)において液体で、かつ、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を65質量%以上含む油脂の総称である。本発明において、「単体で含まない」とは、エステル交換等の化学反応が行われていない液体油が含まれていないことを意味する。液体油の含有量は、焼菓子用油脂組成物の全質量に対して3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0質量%であることが特に好ましい。上記液体油の具体例としては、特に限定されないが、菜種油、ハイオレイック菜種油、ハイエルシン菜種油、大豆油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、オリーブ油、紅花油(サフラワー油)、ハイオレイック紅花油、コーン油、綿実油、落花生油、米油、亜麻仁油、えごま油、胡麻油又はこれらの混合油あるいはこれらの加工油脂(硬化油、分別油等)等が挙げられる。
【0030】
また、本発明の焼菓子用油脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外に、必要に応じて、酸化防止剤、着香料、着色料等の添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤の含有量は、焼菓子用油脂組成物の全質量に対して、0.01~2質量%含むことが好ましい。
【0031】
本発明の焼菓子用油脂組成物は、動物性油脂を実質的に含まないことが好ましい。なお「実質的に」とは、焼菓子用油脂組成物の全質量に対する動物性油脂の含有量が3質量%未満、好ましくは1質量%未満、更に好ましくは0質量%であることをいう。上記動物性油脂の具体例としては、豚脂(ラード)、牛脂(タロー)、鶏油、魚油、乳脂等が挙げられる。本発明の焼菓子用油脂組成物に使用される油脂は、いずれも植物由来であることが好ましい。
【0032】
〔ショートニング〕
本発明の焼菓子用油脂組成物は、焼菓子用ショートニングの製造に用いることができる。ショートニングは、本発明の焼菓子用油脂組成物を、必要に応じて乳化剤(好ましくは不飽和系乳化剤)、着香料、着色料等と共に混合し、得られた混合物を50~70℃程度に加温した後に10~25℃程度に急冷捏和することにより製造することができる。
【0033】
〔焼菓子用生地〕
本発明の焼菓子用生地は、上記焼菓子用油脂組成物を含む。本発明の焼菓子用生地は、上記焼菓子用油脂組成物、小麦粉等の穀粉及び必要に応じて他の原材料を配合した物を例えばミキサーを用いて混合することで得ることができる。
上記他の原材料としては、一般的な焼菓子用生地の原材料として通常用いられる、砂糖等の甘味料、全卵、卵白、卵黄等の卵類、牛乳等の乳製品等が挙げられる。また、ココア、フルーツ、ナッツ等の風味素材、食塩、香辛料、乳化剤、香料、着色料、膨張剤、酸化剤、酸化防止剤、増粘剤、酸味料、pH調整剤、保存料などの添加剤を更に添加してもよい。
本発明の焼菓子用生地は、穀粉100質量部に対し、上記焼菓子用油脂組成物又はショートニングを10~100質量部含むことが好ましく、15~70質量部含むことがより好ましく、20~50質量部含むことが更に好ましい。
【0034】
本発明の焼菓子用生地は、更に大豆由来原材料を含むことが好ましい。大豆由来原材料としては、特に限定されず、大豆粉、おから粉末、きな粉等が挙げられる。大豆由来原材料は吸水性が高く、大豆由来原材料を配合することにより焼菓子用生地の伸展性が悪化する傾向にある。本発明の焼菓子用油脂組成物は、焼菓子用生地に良好な伸展性を付与することができることから、上記大豆由来原材料を含む焼菓子の製造に特に有効である。よって、本発明の焼菓子用油脂組成物は、大豆由来原材料含有焼菓子用油脂組成物であることが好ましい。大豆由来原材料の含有量は特に限定されず、焼菓子用生地の全質量に対して1~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることが更に好ましい。
【0035】
〔焼菓子〕
本発明の焼菓子は、上記焼菓子用生地を焼成してなる。焼成温度は特に限定されず、150~250℃であってもよく、例えば180℃であってもよい。焼成時間は特に限定されず、例えば5~45分であってもよい。
【0036】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例0037】
<各油脂の調製>
以下の方法に従って、実施例1~6及び比較例1~5の油脂組成物に用いた各油脂を調製した。各エステル交換油脂を調製する際に使用した油脂の配合割合を表1に示す。
【0038】
(エステル交換油脂(A))
油脂A-1:パーム核オレイン29質量部、パームステアリン56質量部及びパーム極度硬化油15質量部を混合後、混合油脂100質量部に対し、0.143質量部のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で15分間、非選択的エステル交換反応を行った。その後、脱色、脱臭を実施したものを油脂A-1として用いた。
油脂A-2:パーム核オレイン25質量部、パーム油67質量部及びパームステアリン8質量部を混合後、混合油脂100質量部に対し、0.143質量部のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で15分間、非選択的エステル交換反応を行った。その後、脱色、脱臭を実施したものを油脂A-2として用いた。
【0039】
(エステル交換油脂(B))
油脂B-1:ヤシ油10質量部、パーム油80質量部及びハイエルシン菜種油10質量部を混合後、混合油脂100質量部に対し、0.143質量部のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で15分間、非選択的エステル交換反応を行った。その後、脱色、脱臭を実施したものを油脂B-1として用いた。
【0040】
((A)及び(B)以外のエステル交換油脂(C))
油脂C-1:ヤシ油50質量部及びハイエルシン菜種極度硬化油50質量部を混合後、混合油脂100質量部に対し、0.143質量部のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で15分間、非選択的エステル交換反応を行った。その後、脱色、脱臭を実施したものを油脂C-1として用いた。
油脂C-2:パームオレイン50質量部及びパームダブルオレイン50質量部を混合後、混合油脂100質量部に対し、0.143質量部のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で15分間、非選択的エステル交換反応を行った。その後、脱色、脱臭を実施したものを油脂C-2として用いた。
【0041】
(極度硬化油)
パーム核極度硬化油:パーム核油の極度硬化処理を行い、脱色、脱臭を実施したものを用いた。
パーム極度硬化油:パーム油の極度硬化処理を行い、脱色、脱臭を実施したものを用いた。
ハイエルシン菜種極度硬化油:ハイエルシン菜種油の極度硬化処理を行い、脱色、脱臭を実施したものを用いた。
【0042】
(上記以外の油脂)
パーム油:パーム油の脱色、脱臭を実施したものを用いた。
パームオレイン:パームオレインの脱色、脱臭を実施したものを用いた。
パームダブルオレイン:パームダブルオレインの脱色、脱臭を実施したものを用いた。
パーム核油:パーム核油の脱色、脱臭を実施したものを用いた。
コーン油:コーン油の脱色、脱臭を実施したものを用いた。
【0043】
【0044】
<焼菓子用油脂組成物の調製>
上記の通り調製した各油脂を表2及び3に示す割合(質量部)で配合し、実施例1~6及び比較例1~5の焼菓子用油脂組成物を得た。
【0045】
<SFC(固体脂含量)の測定>
実施例1~6及び比較例1~5の各油脂組成物の固体脂含量(SFC、単位:%)は、基準油脂分析試験法(2.2.9-2013、固体脂含量(NMR法))に準じて測定した。即ち、油脂組成物を60℃で30分間保持し、油脂組成物を完全に融解させた後、0℃に30分間保持して固化させた。その後、25℃で30分間保持し、テンパリングを行った後、0℃で30分間保持した。その後、各SFCの測定温度で30分間保持した後、SFCを測定した。
【0046】
<脂肪酸組成の分析>
実施例1~6及び比較例1~5の各油脂組成物に含まれる構成脂肪酸組成は、基準油脂分析試験法(2.4.2.3-2013、脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法))に準じて測定した。ガスクロマトグラフィー装置は、島津製作所(株)製の「GC-2010型」を使用し、カラムは、SUPELCO社製の「SP-2560」を使用した。
【0047】
<P2O及びUUUの含有量の測定>
実施例1~6及び比較例1~5の各油脂組成物に含まれるP2O及びUUUの含有量は、下記条件の下、液体クロマトグラフィー質量分析法によって測定した。
[液体クロマトグラフィー部]
装置:Agilent 1260 Infinity バイナリ LCシステム
カラム:Cadenza CD-C18
カラム温度:20℃
[質量分析部]
装置:Agilent 6130 Single Quadrupole LC/MSシステム
イオンソース:APCI
【0048】
<ショートニングの製造>
実施例1~6及び比較例1~5の各油脂組成物を60℃で加熱溶融し、これを急冷捏和して、焼菓子用ショートニングを得た。
【0049】
<クッキー用生地及びクッキーの製造>
上記で得られたショートニングを使用し、下記の配合及び製法により焼菓子(クッキー)を製造した。
(配合)
・薄力粉(40.7質量部)
・上白糖(17質量部)
・大豆紛(15質量部)
・全卵(9質量部)
・食塩(0.3質量部)
及び
・上記で得られたショートニングのいずれか1種(18質量部)(表2及び3)
(製法)
上記で得られたショートニングのいずれか1種を20℃で1晩調温した後、縦型ミキサー(N-50、ホバートジャパン社製)に投入し、低速で1分間撹拌した。その後、大豆紛をミキサー内に投入し、低速で1分間撹拌混合した後、上白糖を投入し低速で1分間攪拌混合した。次に全卵及び食塩を投入し、低速で1分間、中速で30秒間撹拌混合した。次に、薄力粉を投入し低速で1分30秒間撹拌し、クッキー用生地を得た。
得られた生地を厚さ4mmとなるように圧延及び成形し、上火180℃、下火180℃のオーブン(三幸機械社製)中で10分間焼成し、クッキーを得た。
【0050】
<ショートニング、クッキー用生地及びクッキーの評価>
上記で得られたショートニング、クッキー用生地及びクッキーについて、下記の方法及び評価基準によってショートニングの可塑性、クッキー用生地の伸展性、及びクッキーの口ごなれを評価した。結果を表2及び3に示す。なお、クッキーの口ごなれの評価では、3名の熟練パネリストによる評価を行った。
【0051】
(ショートニングの可塑性)
上記で得られたショートニングを容器(直径6cm、高さ4.5cm)にサンプリングし、20℃の恒温槽内で1晩調温した後、レオメーター(EZ-SX、島津製作所(株)社製)を用い、針入速度300mm/分、針入度5mmの条件でショートニングの最大硬度(gf)を測定した。得られた最大硬度の値を基に、ショートニングの可塑性を以下の評価基準で評価した。
1点:最大硬度が2100gf以上(可塑性が悪い)
2点:最大硬度が2000gf以上かつ2100gf未満(可塑性がやや悪い)
3点:最大硬度が1900gf以上かつ2000未満(可塑性がやや良い)
4点:最大硬度が1900gf未満(可塑性が良い)
【0052】
(クッキー用生地の伸展性)
上記で得られたクッキー用生地を縦5cm、横2cm、高さ7mmとなるように成型し、得られた試験片について、レオメーター(EZ-SX、島津製作所(株)社製)を用い、針入速度100mm/分、針入度5mmの条件で生地の伸展性を評価した。この時の生地の破断点(mm)を基に、生地の伸展性を以下の評価基準で評価した。
1点:破断点が2.45mm未満(生地の伸展性が悪い)
2点:破断点が2.45mm以上かつ2.65mm未満(生地の伸展性がやや良い)
3点:破断点が2.65mm以上(生地の伸展性が良い)
【0053】
(クッキーの口ごなれ)
上記で得られたクッキーを食し、その口ごなれを以下の評価基準で評価した。
1点:クッキーが喫食時に崩れにくく、口ごなれが悪い
2点:クッキーが喫食時にやや崩れやすく、口ごなれがやや良い
3点:クッキーが喫食時に崩れやすく、口ごなれが良い
【0054】
【0055】
【0056】
表2及び3から明らかなように、本発明の焼菓子用油脂組成物(実施例1~6)はいずれも、可塑性が良好であり、これを用いて得られた焼菓子用生地の伸展性が良好であり、また焼菓子の口ごなれも良好であった。一方、20℃におけるSFC、ラウリン酸の含有量、及びP2Oの含有量が本発明の油脂組成物のそれらとは異なる場合(比較例1~5)、油脂組成物の可塑性及び/又は生地の伸展性が悪かった。
本発明によれば、可塑性が良好であり、焼菓子用生地に良好な伸展性を付与することができるため、生地製造時の作業性が良好となり、かつ焼菓子の口ごなれが良好な焼菓子用油脂組成物を提供することができる。従って、本発明の焼菓子用油脂組成物は、産業上きわめて有用なものである。