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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168676
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】ボビン治具
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/04 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
H01F41/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074302
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 由太
(72)【発明者】
【氏名】林 弘樹
(57)【要約】
【課題】より簡単に、ボビンの溝への取り付け及び取外しが可能なボビン治具を提供する。
【解決手段】コイル巻回の際にボビンに装着されるボビン治具100であって、結合して環形状をなす第1半環部10及び第2半環部50と、第1半環部10の一端部及び第2半環部50の一端部を連結する連結機構20とを備え、第1半環部10及び第2半環部50は連結機構20に案内されて互いに接離できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル巻回の際にボビンに装着されるボビン治具であって、
結合して環形状をなす第1半環部及び第2半環部と、
前記第1半環部の一端部及び前記第2半環部の一端部を連結する連結機構とを備え、
前記第1半環部及び前記第2半環部は前記連結機構に案内されて互いに接離する
ボビン治具。
【請求項2】
前記連結機構は前記第1半環部に固定された第1部材及び前記第2半環部に固定された第2部材を有し、
前記第2部材は突起を有し、
前記第1部材は、前記突起と係合し、前記突起の摺動を案内するレール部を有する
請求項1に記載のボビン治具。
【請求項3】
前記突起は円柱形状をなし、
前記第1部材は前記突起を軸として回転可能である
請求項2に記載のボビン治具。
【請求項4】
前記第1半環部の他端部及び前記第2半環部の他端部には、前記第1半環部と前記第2半環部との離隔を防止する係合部及び被係合部が夫々設けられている請求項1から3の何れか一項に記載のボビン治具。
【請求項5】
前記第1半環部の両端部の間の介在部分に設けられ、前記第1半環部の厚み方向に移動可能な第1移動部材と、
前記第2半環部の両端部の間の介在部分に設けられ、前記第2半環部の厚み方向に移動可能な第2移動部材とを備える
請求項1から4の何れか一項に記載のボビン治具。
【請求項6】
前記第1移動部材に突設され、外周面にネジ山が形成された第1ネジ柱と、
前記第1ネジ柱と螺合する第1円筒部を含み、前記第1円筒部の軸回りに回転可能に、前記第1半環部の前記介在部分に埋設された第1回転部材と、
前記第2移動部材に突設され、外周面にネジ山が形成された第2ネジ柱と、
前記第2ネジ柱と螺合する第2円筒部を含み、前記第2円筒部の軸回りに回転可能に、前記第2半環部の前記介在部分に埋設された第2回転部材とを備える
請求項5に記載のボビン治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビン治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄心、一次コイル及び二次コイルを備える変成器が提案されている。
【0003】
特許文献1には、矩形環状の外枠及び内枠を有する樹脂製のボビンを備えており、外枠及び内枠それぞれの外周面には、周方向に沿って溝が形成され、外枠及び内枠の各溝にコイルが巻かれている変成器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-051034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如く、変圧器等のコイル巻回に用いられるボビンには、該ボビンの全周に亘って外周面に複数の溝が形成されているものがある。このようなボビンでは、溝と溝の間に、径方向外向きに突設された仕切り壁が設けられている。
【0006】
複数の溝を有するボビンにコイル巻回を行う場合、先ずは、何れか一つの溝(以下、対象溝と称する)にコイルが巻回されるが、斯かるコイル巻回の際、コイルの巻回量が増えることにつれて、仕切り壁へ与えられる押圧力が増えるので、仕切り壁は斯かる押圧力に耐え切れず、空洞である隣の溝側に倒れて変形する。
【0007】
このような仕切り壁の変形を防ぐ為に、対象溝の隣の溝内にハンマー等でブロック(治具)を叩き込むことによって仕切り壁の変形を防ぎ、対象溝のコイル巻回が完了した場合、対象溝の隣の溝からブロックを取り外す作業が行われている。
しかし、このようにブロックを叩きこむ作業及びブロックを取り外す作業は手間がかかるので作業性が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より簡単に、ボビンの溝への取り付け及び取外しが可能なボビン治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るボビン治具は、コイル巻回の際にボビンに装着されるボビン治具であって、結合して環形状をなす第1半環部及び第2半環部と、前記第1半環部の一端部及び前記第2半環部の一端部を連結する連結機構とを備え、前記第1半環部及び前記第2半環部は前記連結機構に案内されて互いに接離する。
【0010】
本発明にあっては、第1半環部及び第2半環部が連結機構によって連結されており、第1半環部及び第2半環部は連結機構に案内されて互いに接離することが出来る。よって、ボビン治具を簡単にボビンへの着脱可能である。
【0011】
本発明に係るボビン治具は、前記連結機構は前記第1半環部に固定された第1部材及び前記第2半環部に固定された第2部材を有し、前記第2部材は突起を有し、前記第1部材は、前記突起と係合し、前記突起の摺動を案内するレール部を有する。
【0012】
本発明にあっては、第2半環部に固定された第2部材の突起が、第1半環部に固定された第1部材のレール部に係合して摺動する。よって、第1半環部及び第2半環部は連結機構に案内されて互いに接離することが出来る。
【0013】
本発明に係るボビン治具は、前記突起は円柱形状をなし、前記第1部材は前記突起を軸として回転可能である。
【0014】
本発明にあっては、第2部材の突起が円柱形状であるので、前記第1部材のレール部に係合された状態で回転できる。よって、第1部材が固定された第1半環部が、第2部材の突起を軸として回動できる。従って、ボビン治具をより簡単にボビンへの着脱できる。
【0015】
本発明に係るボビン治具は、前記第1半環部の他端部及び前記第2半環部の他端部には、前記第1半環部と前記第2半環部との離隔を防止する係合部及び被係合部が夫々設けられている。
【0016】
本発明にあっては、第1半環部の係合部及び第2半環部の被係合部を係合させることによって、第1半環部と第2半環部との離隔を防止できる。
【0017】
本発明に係るボビン治具は、前記第1半環部の両端部の間の介在部分に設けられ、前記第1半環部の厚み方向に移動可能な第1移動部材と、前記第2半環部の両端部の間の介在部分に設けられ、前記第2半環部の厚み方向に移動可能な第2移動部材とを備える。
【0018】
本発明にあっては、第1半環部の介在部分に設けられた第1移動部材を第1半環部の厚み方向に移動させ、第2半環部の介在部分に設けられた第2移動部材を第2半環部の厚み方向に移動させ、ボビンの溝の壁に圧接させて支持する。よって、ボビンの壁が変形することを防止できる。
【0019】
本発明に係るボビン治具は、前記第1移動部材に突設され、外周面にネジ山が形成された第1ネジ柱と、前記第1ネジ柱と螺合する第1円筒部を含み、前記第1円筒部の軸回りに回転可能に、前記第1半環部の前記介在部分に埋設された第1回転部材と、前記第2移動部材に突設され、外周面にネジ山が形成された第2ネジ柱と、前記第2ネジ柱と螺合する第2円筒部を含み、前記第2円筒部の軸回りに回転可能に、前記第2半環部の前記介在部分に埋設された第2回転部材とを備える。
【0020】
本発明にあっては、第1回転部材の回転の際に第1円筒部も回転し、第1移動部材の第1ネジ柱が第1円筒部の軸心方向に移動する。また、第2回転部材の回転の際に第2円筒部も回転し、第2移動部材の第2ネジ柱が第2円筒部の軸心方向に移動する。よって、第1移動部材の第1半環部の厚み方向への移動、及び、第2移動部材の第2半環部の厚み方向への移動が簡単且つ適切に行われる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、より簡単に、ボビンの溝への取り付け及び取外しが可能なボビン治具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施の形態に係るボビン治具を示す斜視図及び分解図である。
図2】ボビン治具の第1半環部を示す正面図である。
図3】ボビン治具の第1半環部を示す他の図である。
図4】半長円形部を示す図である。
図5】第1半環部の操作部を示す図である。
図6】第1半環部の蓋部材を示す図である。
図7】第1半環部の第1移動部材を示す図である。
図8】本実施の形態のボビン治具をボビンに装着する方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態に係るボビン治具を図面に基づいて詳述する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係るボビン治具100を示す斜視図及び分解図である。ボビン治具100は、変圧器等のボビンにコイルを巻回する作業の際に用いられる。ボビン治具100は、アルミニウムのような軽金属からなり、図1Aに示すように、環体形状を成している。詳しくは、ボビン治具100は、平行をなす2条の直線部と、直線部の両端に設けられたエンド部とを有する長円形状である。以下、便宜上、直線部の延び方向を長さ方向といい、該長さ方向と直交する方向を幅方向という。ボビン治具100は2つの部分に分離可能である。
【0025】
図1Bに示すように、ボビン治具100は、前記直線部にて2つに分離されている。即ち、ボビン治具100は、略半長円形状を成す第1半環部10と、略半長円形状を成す第2半環部50とに2分されており、第1半環部10及び第2半環部50が結合することによって、長円形状のボビン治具100を構成する。
【0026】
第1半環部10の両端部のうち一端部11と、第2半環部50の両端部のうち一端部51とは、連結機構20によって連結されている。連結機構20は、第1半環部10に設けられた第1部材21と、第2半環部50に設けられた第2部材22とを有する。第1半環部10の他端部12と、第2半環部50の他端部52とには、第1半環部10及び第2半環部50の離隔を防止する防止機構30が取り付けられている。防止機構30は、第1半環部10に設けられた係合部31と、第2半環部50に設けられた被係合部32とを有する。
【0027】
図2は、ボビン治具100の第1半環部10を示す正面図であり、図3は、ボビン治具100の第1半環部10を示す他の図である。図3A図2のIIIA-IIIA線による矢視図、図3Bは、図2のIIIB-IIIB線による断面図、図3Cは、図2のIIIC-IIIC線による断面図である。
【0028】
第1半環部10は、半長円形部13と、厚み方向に移動可能に、半長円形部13へ取り付けられた第1移動部材15とを有する。
半長円形部13は、ボビン治具100の幅方向(以下、単に幅方向と称する)に延びるエンド部14(介在部分)を有している。エンド部14は両端が湾曲しており、エンド部14の両端には、一端部11に係る短寸直線部14aと、他端部12に係る長寸直線部14bとが夫々連設されている。
【0029】
半長円形部13は厚み方向の両端面が平坦面であり、両端面のうち一面に第1移動部材15が取り付けられている(図3A参照)。また、半長円形部13のエンド部14には、後述するように第1移動部材15を移動させる操作部16(第1回転部材)が埋設されている。図3Cに示すようにエンド部14には受容凹部141が形成されており、操作部16はエンド部14の一面側から受容凹部141に受容され、蓋部材142によって覆われている。操作部16の一部が、半長円形部13の外周面からはみ出ている。
【0030】
更に、半長円形部13では、短寸直線部14aの外側面に、連結機構20の第1部材21がネジ止めされており、長寸直線部14bの外側面に、係合部31がネジ止めされている(図2参照)。
【0031】
図4は、半長円形部13を示す図である。図4Aは、半長円形部13を一面側から示す図であり、図4Bは、図4AのB-B線による矢視図である。便宜上、図4では、蓋部材142を省いた状態を示している。
【0032】
半長円形部13の長寸直線部14bには、外周部が切り取られ、幅方向の寸法が減少した減幅部121が形成されており、減幅部121には、係合部31をネジ止めする為のネジ穴122が形成されている。また、半長円形部13の短寸直線部14aには、外周部が切り取られ、幅方向の寸法が減少した減幅部111が形成されており、減幅部111には、第1部材21をネジ止めする為のネジ穴112が形成されている。
【0033】
更に、半長円形部13においては、短寸直線部14aの基部及び長寸直線部14bの基部に、厚み方向に貫通する第1貫通孔143が夫々形成されている(図3B参照)。そして、半長円形部13の一面においては、エンド部14の中央部に、エンド部14の厚み方向に切り欠いた矩形凹部145が形成されている。矩形凹部145は、幅方向を長手方向とする矩形である。幅方向において矩形凹部145の両側にも等間隔を隔てて第1貫通孔143が夫々形成されている。矩形凹部145の底の中央部には、操作部16を受容するために略半円形状の受容凹部141が更に形成されている。受容凹部141の中心には第2貫通孔144が形成されている。第2貫通孔144は、後述する操作部16の第1円筒部162の外径よりも少し大きい径を有する。矩形凹部145の底であって、第2貫通孔144と両第1貫通孔143との間には、第1貫通孔143及び第2貫通孔144よりも小径の小径貫通孔146が形成されている。第1貫通孔143及び第2貫通孔144は、半長円形部13の外周面寄りに形成されている。
【0034】
図5は、第1半環部10の操作部16を示す図である。図5Aは、操作部16の正面図であり、図5Bは、図5AのB-B線による矢視図である。
操作部16は、長孔163を有する第1円筒部162を有しており、第1円筒部162の内周面にネジ山が形成されている。第1円筒部162の長手方向の中間部には、第1円筒部162の外周面に操作円盤161が連設されている。操作円盤161は、第1円筒部162の径方向に延設されており、受容凹部141よりも少し小さい径を有する。操作円盤161の外周面には、周方向に等間隔にて長孔164が形成されている。長孔164は、操作円盤161の径方向に延びている。
【0035】
図6は、第1半環部10の蓋部材142を示す図である。図6Aは、蓋部材142の正面図であり、図6Bは、図6AのB-B線による矢視図である。
蓋部材142は、エンド部14の矩形凹部145に対応する矩形の形状及び大きさを有する板形状である。蓋部材142は長手方向の両端部であって、蓋部材142をエンド部14に組み付けた場合、エンド部14の小径貫通孔146と対向する位置に、貫通孔142bが夫々形成されている。各貫通孔142bの一側には座ぐり142cが形成されている。蓋部材142の中央部であって、一方の長辺寄りには、貫通孔142aが形成されている。蓋部材142をエンド部14に組み付けた場合、貫通孔142aは、エンド部14の第2貫通孔144と対向し、操作部16の第1円筒部162の外径よりも少し大きい径を有する。
【0036】
上述の如く、操作部16は受容凹部141内に受容される。詳しくは、図3Cの如く、操作部16は、半長円形部13の前記一面側から、第1円筒部162の一端部が第2貫通孔144に挿通され、操作円盤161は受容凹部141に載置される。次いで、蓋部材142の貫通孔142aに第1円筒部162の他端部が挿通するように、蓋部材142をエンド部14の矩形凹部145に嵌めて、貫通孔142bにネジを挿通させて小径貫通孔146に螺合させる。これによって、操作部16は、第1円筒部162の両端部が夫々第2貫通孔144及び貫通孔142aに支持され、第1円筒部162の軸心回りに回転できる。
【0037】
図7は、第1半環部10の第1移動部材15を示す図である。図7Aは、第1移動部材15の正面図であり、図7Bは、図7AのB-B線による矢視図である。図3A及び図3Cに示すように、第1移動部材15は、半長円形部13において短寸直線部14a及び長寸直線部14bを除くエンド部14に厚み方向へ並設されている。
【0038】
第1移動部材15は、エンド部14に相似であって、エンド部14より少し厚みが薄い板形状の湾曲板部153を有している(図1B参照)。湾曲板部153において、エンド部14と対向する一面の中央部には、周面にネジ山が形成された円柱形状の第1ネジ柱151が設けられている。幅方向において、第1ネジ柱151の両側には、等間隔を隔てて円柱152が突設されており、湾曲板部153の両端部にも円柱152が夫々突設されている。即ち、第1移動部材15では、第1ネジ柱151の両側に、対称的に、円柱152が2つずつ設けられている。各円柱152は、湾曲板部153の前記一面からエンド部14に向けて垂直に突出してある。
【0039】
各円柱152の径は、第1ネジ柱151よりも大きい。各円柱152は、第1移動部材15を半長円形部13に取り付けた場合、エンド部14の第1貫通孔143に対応する位置に設けられている。第1ネジ柱151は、第1移動部材15を半長円形部13に取り付けた場合、操作部16の第1円筒部162(長孔163)に対応する位置に設けられている。円柱152の径は第1貫通孔143よりも少し小さい。
第1移動部材15が半長円形部13に取り付けられる場合、各円柱152はエンド部14の第1貫通孔143に挿入され(図3B参照)、第1ネジ柱151は操作部16の第1円筒部162と螺合する(図3C参照)。
【0040】
このように、第1移動部材15が半長円形部13に取り付けられた場合、第1ネジ柱151は操作部16の第1円筒部162と螺合するので、作業者が操作部16(操作円盤161)を正転又は逆転させることによって、第1ネジ柱151(第1移動部材15)がエンド部14の厚み方向、即ち、エンド部14に接近する方向、又は、エンド部14から離隔する方向に移動する。この際、上述の如く、第1移動部材15の各円柱152が、エンド部14の対応する第1貫通孔143に挿入された状態で、第1貫通孔143の長さ方向に第1貫通孔143内を摺動する。よって、エンド部14の前記一面全範囲において、第1移動部材15の湾曲板部153の前記一面との間隔が一定に保たれる。なお、作業者は操作部16を回転させる際、操作部16の長孔164にドライバー等細い棒を挿入してレバーとして用いることが出来る。
【0041】
一方、第2半環部50は、半長円形部53と、厚み方向に移動可能に、半長円形部53へ取り付けられた第2移動部材55とを有する。
半長円形部53は、ボビン治具100の幅方向に延びるエンド部54(介在部分)を有している。エンド部54は両端が湾曲しており、エンド部54の両端には、一端部51に係る長寸直線部54aと、他端部52に係る長寸直線部54aとが夫々連設されている。
【0042】
半長円形部53は厚み方向の両端面が平坦面であり、両端面のうち一面に第2移動部材55が取り付けられている(図1B参照)。また、半長円形部53のエンド部54には、第2移動部材55を移動させる操作部56(図8A参照)が埋設されている。エンド部14と同様、エンド部54にも受容凹部(図示せず)が形成されており、操作部56(第2回転部材)はエンド部54の一面側から受容凹部に受容され、蓋部材542によって覆われている。操作部56の一部が、半長円形部53の外周面からはみ出ている。
【0043】
また、エンド部54にも、エンド部14の第1貫通孔143及び第2貫通孔144に相当する貫通孔(図示せず)が形成されている。更に、第2移動部材55にも、第1移動部材15の第1ネジ柱151及び円柱152に相当する第2ネジ柱及び円柱(図示せず)が形成されている。
【0044】
更に、半長円形部53では、長寸直線部54aの外周部が切り取られ、幅方向の寸法が減少した減幅部511が形成されており、減幅部511に、連結機構20の第2部材22がネジ止めされている。また、半長円形部53では、短寸直線部54bの外周部が切り取られ、幅方向の寸法が減少した減幅部521が形成されており、減幅部521に防止機構30の被係合部32がネジ止めされている(図1B参照)。
【0045】
その他、第2半環部50における半長円形部53、第2移動部材55、操作部56及び蓋部材542の構成は、第1半環部10における半長円形部13、第1移動部材15、操作部16及び蓋部材142の構成と同じである。操作部56は、操作部16の第1円筒部162に相当する第2円筒部(図示せず)を有する。
【0046】
また、第2半環部50においても、作業者が操作部56を正転又は逆転させたとき、第2移動部材55がエンド部54の厚み方向、即ち、エンド部54に接近する方向、又は、エンド部54から離隔する方向に移動する。
【0047】
防止機構30は、例えば、アジャストファスナーであり、第2半環部50の短寸直線部54bの減幅部521にネジ止めされた被係合部32はフック形状であり、第1半環部10の長寸直線部14bの減幅部121にネジ止めされた係合部31はリング形状であって被係合部32と係合する(図1B参照)。更に、防止機構30は、係合部31及び被係合部32の係合及び解除に用いられるレバー33を有する。アジャストファスナーはそれ自体公知であり、詳細な説明を省略する。
【0048】
連結機構20は、上述の如く、第1半環部10に設けられた第1部材21と、第2半環部50に設けられた第2部材22とを有する。
図1図2に示すように、第1部材21は、ボビン治具100の長さ方向に沿って延びる。第1部材21は、半長円形部13の短寸直線部14aの減幅部111の外側面にネジ止めされている直方体形状の固定部211を有している。固定部211は短寸直線部14aに沿って延び、固定部211の先端面には、短寸直線部14aの厚み方向に所定の間隔を隔てて、一対のレール部212が連設されている。各レール部212は細長い板形状であり、先端の両角がR面取りされている。また、各レール部212の中央部には、長手方向に沿って延びる長円形状の長円貫通孔213が形成されており、各レール部212は半長円形部13の厚み方向で対向する、固定部211の両面と面一をなしている。レール部212同士間の間隔は、半長円形部53の厚み方向における第2部材22の寸法よりも少し大きい。
【0049】
第2部材22は、ボビン治具100の長さ方向に沿って延びる直方体形状であり、上述の如く、半長円形部53の長寸直線部54aにネジ止めされ、一面が減幅部511の外側面と当接している。第2部材22では先端の両エッジがR面取りされている。
【0050】
また、第2部材22の先端部であって、前記一面と隣り合う両対向面に、係合突起221が夫々突設されている。係合突起221は円柱形状を成す。第1部材21及び第2部材22が結合する際、各係合突起221は対応するレール部212の長円貫通孔213と係合する。
【0051】
更に、第2部材22の前記両対向面間の間隔、即ち第2部材22の厚みは、半長円形部53(長寸直線部54a)の厚みよりも薄く、第2部材22の前記両対向面と、長寸直線部54aとの間には段差が形成されている(図1B参照)。第2部材22の厚みは、第1半環部10の第1部材21のレール部212同士間の間隔よりも少し薄い。
【0052】
これによって、第1半環部10及び第2半環部50が結合した場合、即ち、第1部材21及び第2部材22が結合した場合、各係合突起221は対応するレール部212の長円貫通孔213と夫々係合し、一対のレール部212の間に第2部材22が介在する。
【0053】
よって、第2部材22は、第1部材21のレール部212(長円貫通孔213)に沿って、且つ、第2部材22の前記両対向面と、長寸直線部54aとの間に形成された段差に案内されてボビン治具100の長さ方向に移動可能である。この際、係合突起221は長円貫通孔213に案内されて、長円貫通孔213内を摺動する。換言すれば、第1半環部10及び第2半環部50は、連結機構20を介して上述のように連結された状態にて、互いに接離する方向に移動可能である。
【0054】
上述の如く、第2部材22又は第1部材21の移動は、レール部212の移動が、係合突起221、並びに、第2部材22の前記両対向面と長寸直線部54aとの間の段差に案内されるので、ボビン治具100の長さ方向に制限される。
【0055】
しかし、レール部212は先端の両角がR面取りされているので、レール部212の先端部が、第2部材22の先端部位置まで移動した場合、換言すれば、係合突起221が長円貫通孔213の長さ方向の端部と内接する場合、前記制限は解除される。よって、第1部材21(第1半環部10)は、係合突起221を軸として係合突起221回りに回転できる(図8B参照)。
【0056】
図8は、本実施の形態のボビン治具100をボビン200に装着する方法を説明する説明図である。
ボビン200は、変圧器等のコイル巻回に用いられるものであり、中空矩形の環状をなす樹脂製である。ボビン200の外周面には周方向に延びる溝がボビン200の全周に亘って形成されている。斯かる溝は2分割されている。即ち、前記溝の底には、径方向外向きに突設された仕切り壁が形成されている。該仕切り壁は周方向に延び、ボビン200の全周に亘って設けられている。
【0057】
ボビン治具100のボビン200への装着に先立って、作業者が第1半環部10の操作部16を適宜回転操作することによって、第1移動部材15を半長円形部13側に接近させ、第2半環部50の操作部56を適宜回転操作することによって、第2移動部材55を半長円形部53側に接近させておき、斯かる装着作業の利便性を高めても良い。
【0058】
図8Aに示すように、作業者は、防止機構30のレバー33を操作して、第1半環部10の係合部31及び第2半環部50の被係合部32の係合を解錠し、互いに離隔する方向に第1半環部10及び第2半環部50を移動させる。この際、連結機構20は第1半環部10及び第2半環部50の移動を案内する。作業者は、第2半環部50の係合突起221(図示せず)が長円貫通孔213の長さ方向の端部と内接するまで移動させる。この際、第1半環部10及び第2半環部50は連結機構20を介して連結されている。
【0059】
次いで、作業者は、第2半環部50の係合突起221を回転軸として、係合部31及び被係合部32間の間隔が広くなるよう、図8Bの黒塗り矢印方向に第1半環部10を回転させる。
【0060】
そして、作業者は、係合部31及び被係合部32間の間隔を広くした状態で、ボビン200にボビン治具100を内嵌させる。先ずは、第2半環部50を、ボビン200の2つの溝のうち一方の内側に嵌めた後、係合部31及び被係合部32間の間隔が狭くなるよう、図8Cの黒塗り矢印方向に第1半環部10を回転させる。
【0061】
この後、作業者は、第1半環部10の操作部16を適宜回転操作することによって、第1移動部材15を半長円形部13から離隔する方向に移動させる。また、作業者は、第2半環部50の操作部56を適宜回転操作することによって、第2移動部材55を半長円形部53から離隔する方向に移動させる。
【0062】
この後、作業者は、互いに接近する方向に第1半環部10及び第2半環部50を移動させる。この際、連結機構20は第1半環部10及び第2半環部50の移動を案内する。続けて、作業者は、防止機構30のレバー33を操作して、第1半環部10の係合部31及び第2半環部50の被係合部32を係合させる(図8D参照)。
【0063】
以上の一連の操作によって、ボビン治具100のボビン200への装着が完了する。ボビン治具100はボビン200の前記一方の溝内に装着され、半長円形部13及び第1移動部材15と、半長円形部53及び第2移動部材55とがボビン200の前記一方の溝の内側面及び仕切り壁と圧着する。これによって、仕切り壁が一方の溝側から支えられる。以降、ボビン治具100が装着されたボビン200に対して、巻回装置が、他方の溝にコイル巻回を開始する。
【0064】
また、ボビン200の他方の溝へのコイル巻回が終了した場合、図8D図8C図8B図8Aの順にボビン治具100を取り外せばよい。
【0065】
一方、ボビンの外周面に溝を有し、斯かる溝が仕切り壁によって分割されている場合、先ずは、一方の溝にコイルが巻回され、その後他方の溝にコイルが巻回される。しかし、先に行われる一方の溝へのコイル巻回の際、コイルの巻回量が増えることにつれて、仕切り壁へ与えられる押圧力が増えるので、仕切り壁は斯かる押圧力に耐え切れず、空洞である隣の他方の溝側に倒れて変形する。
【0066】
このような問題を解決するため、一般には、作業者がハンマーを用いて空洞である他方の溝内にブロックを叩き込むことにより、仕切り壁の変形を防いでいる。しかし、このようにブロックを叩きこむ作業及びブロックを取り外す作業は手間がかかるうえに、作業者の熟練度、力加減等によって、ブロックの叩き込み具合が変わるので、作業性の低下及び完成品の品質のばらつきを招く。
【0067】
これに対して、本実施の形態のボビン治具100は、以上のように、簡単にボビン200へ取り付け、また取り外し可能であり、作業性を高めることができる。また、作業者の熟練度等に関係なく、一定した品質を担保できる。
【0068】
以上においては、防止機構30がアジャストファスナーである場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、第1半環部10及び第2半環部50の離隔を防止できる機構であれば良い。
【0069】
また、以上においては、ボビン治具100が4つの円柱152を有する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、円柱152が1以上あれば良い。
【0070】
更に、以上においては、操作部16、操作部56、第1移動部材15及び第2移動部材55がボビン治具100のエンド部に設けられ、防止機構30及び連結機構20がボビン治具100の直線部に設けられた場合について説明したが、これに限定されるものではない。操作部16、操作部56、第1移動部材15及び第2移動部材55がボビン治具100の直線部に設けられ、防止機構30及び連結機構20がボビン治具100のエンド部に設けられた構成であっても良い。
【0071】
開示された実施の形態1はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
10:第1半環部、14:エンド部(介在部分)、15:第1移動部材、16:操作部(第1回転部材)、20:連結機構、21:第1部材(第1部材)、22:第2部材、30:防止機構、31:係合部、32:被係合部、50:第2半環部、54:エンド部(介在部分)、55:第2移動部材、56:操作部(第2回転部材)、100:ボビン治具、151:第1ネジ柱、162:第1円筒部、200:ボビン、212:レール部、221:係合突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8