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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168677
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】エンジン梱包用部材
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/68 20060101AFI20221031BHJP
   B65D 81/05 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B65D85/68 R
B65D81/05 500A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074303
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000212647
【氏名又は名称】ナビエース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100198856
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 聡
(72)【発明者】
【氏名】酒匂 章
【テーマコード(参考)】
3E037
3E066
【Fターム(参考)】
3E037AA20
3E037BA03
3E037BA07
3E037BB02
3E037BB03
3E037CA05
3E066AA73
3E066BA06
3E066CA04
3E066FA13
3E066GA05
3E066HA03
3E066JA04
3E066MA09
3E066NA21
3E066NA60
(57)【要約】
【課題】軽量化、部材の材質の数を低減化、資材管理の簡略化、作業工数の削減、搬送コストの削減等が可能であり、かつ、使用後のリサイクル作業の簡素化及び廃棄コストの低減化を図ることの可能なエンジン梱包用部材の提供を課題とする。
【解決手段】エンジン梱包用部材1は、切り込み部16が形成された複数の仕切り板17を格子状に組み合わせて形成され、仕切り板17によって囲まれたエンジン収容空間18を有するエンジン載置台本体14と、エンジン載置台本体14の本体上面部14bに被設され、エンジン100に合わせて形成された開口部21を有し、開口部21の開口端縁21aが仕切り板17によって支持された平板状の載置パッド部15とを備え、開口部21を介してエンジン100の一部をエンジン収容空間18に収容し、載置可能な段ボール製のエンジン載置台2を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの搬送時に使用されるエンジン梱包用部材であって、
前記エンジンを載置可能な段ボール製のエンジン載置台を具備し、
前記エンジン載置台は、
切り込み部が形成された複数の仕切り板を格子状に組み合わせて形成され、前記仕切り板によって囲まれたエンジン収容空間を有するエンジン載置台本体と、
前記エンジン載置台本体の本体上面部に被設され、前記エンジン収容空間に相対する位置に前記エンジンの下部形状に合わせて形成された開口部を有し、前記開口部の開口端縁が前記仕切り板によって支持された平板状の載置パッド部と
を備え、
前記開口部を介して前記エンジンの一部を前記エンジン収容空間に収容するエンジン梱包用部材。
【請求項2】
前記載置パッド部は、
前記開口端縁から水平方向に延設され、
前記開口部を介して前記エンジンの一部を前記エンジン収容空間に収容する際に、前記エンジンの挿入方向に沿って前記開口端縁を基点として折り曲げ可能な段ボール製のフラップを更に有する請求項1に記載のエンジン梱包用部材。
【請求項3】
前記載置パッド部は、
複数の前記開口部が並設され、
複数の前記エンジンをまとめて梱包する請求項1または2に記載のエンジン梱包用部材。
【請求項4】
前記エンジン載置台及び前記エンジン載置台に載置された前記エンジンの側方を囲んで被覆する段ボール製の胴枠部を更に具備し、前記エンジン載置台は、前記エンジン載置台本体の互いに対向する側面に沿ってそれぞれ形成され、前記エンジン載置台及び前記胴枠部を連結する一対の段ボール製の連結部と、前記連結部に取設される一対の木製の胴枠部固定用木材と
を備える請求項1~3のいずれか一項に記載のエンジン梱包用部材。
【請求項5】
前記エンジン載置台及び前記胴枠部を補強する木枠部を更に具備する請求項4に記載のエンジン梱包用部材。
【請求項6】
前記エンジン収容空間に収容される前記エンジンの一部は、
オイルパンである請求項1~5のいずれか一項に記載のエンジン梱包用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン梱包用部材に関する発明である。更に詳しくは、自動車用等の各種エンジンの搬送に使用される、段ボールを基材として用いたエンジン梱包用部材に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、船舶、農機具、重機、建設機械、或いは発電機等の種々の産業分野における機械製品の主要部品として、ガソリン等の石油燃料によって回転駆動し、駆動力や電力等を発生させる内燃機関の一種であるエンジンが多く用いられている。かかるエンジンは、その製品重量が100kg~500kgの重量物となることが多い。
【0003】
エンジンは、高精度の部品加工技術や組立技術等が必要なため、エンジン専用の製造工場で製造された後、当該製造工場とは別の場所に設置された最終組立工場まで搬送され、自動車や船舶等の最終製品を製造するための組み付けが行われている。
【0004】
したがって、エンジン専用の製造工場から最終組立工場までの間を、上記のように100kg以上もある重量物のエンジンを搬送する必要があった。このエンジンの搬送には、トラックや鉄道等の陸上輸送機関を用いた陸上輸送や、貨物船等の海上輸送機関を用いた海上輸送がそれぞれ実施されている。更に、国内の製造工場で生産されたエンジンを海外の最終組立工場まで海上輸送等で輸出する、若しくは、海外の製造工場で製造されたエンジンを国内の最終組立工場まで海上輸送等で輸入することも行われている。
【0005】
したがって、トラック等の走行時に加わる振動や衝撃、或いは貨物船等の揺れなどによるエンジンへの影響を緩和や吸収しつつ、長期間に亘って安定した状態でエンジンを支持しながら搬送することが可能なエンジン専用に設計されたエンジン梱包用部材が必要となっている。なお、エンジンの搬送は、製造工場及び最終組立工場が近接する場合であっても、製造後のエンジンを所定の保管場所まで搬送したり、保管場所から実際に組立を行う作業現場まで搬送する必要があり、製造後の保管等のためにエンジンの梱包がなされることもある。
【0006】
一般に海上輸送等に使用されるエンジン専用のエンジン梱包用部材として、例えば、木箱梱包や木枠梱包等と称される、主として木材を基材として構築されたものが多く使用されている。木箱梱包等は、梱包対象となるエンジンを内部の空間に収容可能な木箱や木枠を形成し、更に形成された木箱等を補強するためのスチール材(金属材料)等が用いられるものが多い。また、木箱等やエンジンの外装を被覆し、保護するための段ボールや、その他の副資材(釘、養生シート、ボルト及びナット等)等が用いられることもある。このように梱包された状態のエンジンがコンテナに積み込まれ、搬送される。
【0007】
上記に示したように、木材を基材とし、その他に多種の材質(金属や段ボール等)で形成された資材によって構成される「複合資材」によって、エンジン梱包用部材が構築されることがこれまでにおいて一般的であった。なお、一部において段ボールを基材として使用するための梱包用部材も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭59-72287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の複合資材を多用した木箱梱包等によるエンジンの梱包は、下記に掲げる問題点を生じる可能性があった。例えば、基材として木材を多く使用するため、エンジン梱包用部材の重量が嵩むことがあった。そのため、重量物であるエンジンに加え、重いエンジン梱包用部材を併せて搬送する必要があり、搬送のための要するコストが増大するおそれがあった。
【0010】
更に、木材以外のスチール材、段ボール、及びその他副資材を含めた多種類の部材が用いられるため、これらを部材毎に準備する等の管理作業が煩雑になることがあった。更に、木材やスチール材に、梱包対象となるエンジンを固定するための固定作業が必要となったり、かかる固定作業のために新たな作業工具を準備する必要がある等の問題を生じることがあった。このように、エンジンの梱包作業の複雑化、作業工数や作業時間の増大化等の問題を生じる可能性があった。
【0011】
また、木箱梱包等の場合、梱包対象となるエンジンを一度吊り上げた状態で保持し、エンジンとの正確な位置決め作業を行った後でボルト及びナット等を用いて木枠やスチール材に固定する困難な作業を行う必要があり、かかる作業に不慣れな作業者の場合、梱包作業に要する作業工数や作業時間が更に増大するおそれがあった。また、経験の少ない作業者による梱包作業によって、作業事故が発生するおそれがあり、労働環境における安全面に問題を生じることもあった。
【0012】
加えて、複合資材によって構築される木箱梱包等の場合、エンジンの梱包後及び搬送後であっても問題を生じることがあった。すなわち、使用後のエンジン梱包用部材を廃棄する場合、複数の異なる材質からなる複合資材によって構築されているため、リサイクル可能な部材と廃棄する部材とをそれぞれ分別する作業が必要となり、作業者に過度の負担を強いることがあった。加えて、リサイクル不可の部材の場合、廃棄費用が別途必要になるなど、環境面及び廃棄コストの増大の点で問題となることがあった。
【0013】
したがって、エンジン梱包用部材自体の軽量化、梱包作業の容易化、及び梱包コストの削減を図り、かつリサイクルが可能であり、かつ廃棄コストの削減が可能なエンジン梱包用部材の開発が期待されている。
【0014】
更に、従来の木箱梱包等に使用されるエンジン梱包用部材の場合、一つのエンジンに対して一つのエンジン梱包用部材を用いる「個別梱包(個別包装)」の状態で梱包されることがほとんどであった。これに対し、複数個のエンジンを一つの梱包用部材にまとめて梱包することの可能な「集合梱包(集合包装)」の状態で梱包し、搬送することが搬送コストや梱包コストの削減の観点から期待されることがあった。
【0015】
一方、特許文献1に開示されたエンジンのための梱包用部材の場合、基材として段ボールを用いるものであり、梱包用部材自体の軽量化等の問題についてはある程度の解消が期待されるものが示唆されている。しかしながら、上記特許文献1の場合、方形状の段ボールを形成し、その上にエンジンを載置するものが開示されている。一般に、段ボールの角部は、当該段ボールの厚みによって直角に折り曲げることが難しく、所定の曲率で形成された曲面が形成されることが多い。また、段ボールの段目の影響により、罫線から数mmずれた所で折れ曲がる等の誤差を生じるため、安定した載置内寸を得ることができなかった。
【0016】
このような曲面や内寸は、エンジンの搬送時の揺れや衝撃等によって当該箇所に外力が加わることで変形と隙間が生じる等の不具合が発生する可能性があった。これにより、隙間が生じることによりエンジンが動き易い状態となり、方形状の段ボールでエンジンを確実に支持することができず、安定した搬送ができないことがあった。更に、確実に支持することができないエンジンは、搬送時の振動等によって動きやすくなり、振動や衝撃を吸収することができず、エンジンが損傷するおそれがあった。したがって、特許文献1に開示されたエンジン梱包用部材では、エンジンを確実に保持することができず、衝撃等によってエンジンが損傷したり、十分な性能を発揮できないおそれがあった。
【0017】
更に、特許文献1に開示されたエンジン梱包用部材の場合、段ボール内に梱包された梱包対象のエンジンの上部と木材(門型の木枠)の天板(または梁部)との間にプラスチック製の弾性発泡体で構成された緩衝材を充填する必要があった。
【0018】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、段ボールを基材とした場合であっても、エンジンを安定した状態で搬送可能とするとともに、エンジン梱包用部材自体の軽量化、使用する部材の材質の数を低減化、資材管理の簡略化、搬送に要する作業工数の削減、搬送コストの削減等が可能であり、かつ、使用後のリサイクル作業の簡素化及び廃棄コストの低減化を図ることのできるエンジン梱包用部材の提供を課題とするものである。
【0019】
更に、エンジン梱包用部材の軽量化及び搬送時におけるエンジンの荷重を分散させることにより、複数のエンジンをまとめて梱包し、搬送する「集合梱包」が可能なエンジン梱包用部材の提供を更なる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、上記課題を解決したエンジン梱包用部材が提供される。
【0021】
[1] エンジンの搬送時に使用されるエンジン梱包用部材であって、前記エンジンを載置可能な段ボール製のエンジン載置台を具備し、前記エンジン載置台は、切り込み部が形成された複数の仕切り板を格子状に組み合わせて形成され、前記仕切り板によって囲まれたエンジン収容空間を有するエンジン載置台本体と、前記エンジン載置台本体の本体上面部に被設され、前記エンジン収容空間に相対する位置に前記エンジンの下部形状に合わせて形成された開口部を有し、前記開口部の開口端縁が前記仕切り板によって支持された平板状の載置パッド部とを備え、前記開口部を介して前記エンジンの一部を前記エンジン収容空間に収容するエンジン梱包用部材。
【0022】
[2] 前記載置パッド部は、前記開口端縁から水平方向に延設され、前記開口部を介して前記エンジンの一部を前記エンジン収容空間に収容する際に、前記エンジンの挿入方向に沿って前記開口端縁を基点として折り曲げ可能な段ボール製のフラップを更に有する前記[1]に記載のエンジン梱包用部材。
【0023】
[3] 前記載置パッド部は、複数の前記開口部が並設され、複数の前記エンジンをまとめて梱包する前記[1]または[2]に記載のエンジン梱包用部材。
【0024】
[4] 前記エンジン載置台及び前記エンジン載置台に載置された前記エンジンの側方を囲んで被覆する段ボール製の胴枠部を更に具備し、前記エンジン載置台は、前記エンジン載置台本体の互いに対向する側面に沿ってそれぞれ形成され、前記エンジン載置台及び前記胴枠部を連結する一対の段ボール製の連結部と、前記連結部に取設される一対の木製の胴枠部固定用木材とを備える前記[1]~[3]のいずれかに記載のエンジン梱包用部材。
【0025】
[5] 前記エンジン載置台及び前記胴枠部を補強する木枠部を更に具備する前記[4]に記載のエンジン梱包用部材。
【0026】
[6] 前記エンジン収容空間に収容される前記エンジンの一部は、
オイルパンである前記[1]~[5]のいずれかに記載のエンジン梱包用部材。
【発明の効果】
【0027】
本発明のエンジン梱包用部材によれば、段ボールを基材として用いることにより、エンジン梱包用部材自体の軽量化を図るとともに、使用する部材点数を減らすことで管理を簡略化することができる。更に、段ボールを基材とすることにより、使用後の解体作業が容易となり、更にリサイクルがしやすくなり、環境に対する影響を低減することができる。また、廃棄処理をする場合であっても廃棄コストの削減が可能となる。
【0028】
更に、従来は困難であった複数個のエンジンをまとめた状態で梱包することができる集合梱包が可能となり、梱包や搬送にかかるコストや作業時間、作業工数等を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態のエンジン梱包用部材の概略構成を示す分解斜視図である。
図2】本実施形態のエンジン梱包用部材のエンジン梱包後の概略構成を示す斜視図である。
図3】本実施形態のエンジン梱包用部材におけるエンジン載置台本体の概略構成を示す説明図である。
図4】エンジン載置前のエンジン及びエンジン梱包用部材の一例を示す説明図である。
図5】エンジン載置後のエンジン及びエンジン梱包用部材の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ、本発明のエンジン梱包用部材の実施の形態について説明する。なお、本発明のエンジン梱包用部材は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、種々の設計の変更、修正、改良等を加え得るものである。
【0031】
本発明の一実施形態のエンジン梱包用部材1(以下、単に「梱包用部材1」と称す。)は、図1図5に示されるように、段ボールを基材として構築され、自動車用や船舶用等のエンジン100を陸上輸送や海上輸送によって搬送する際に使用されるものであり、特に、段ボール製のエンジン載置台2を具備することを特徴とするものである。
【0032】
本実施形態の梱包用部材1は、図1及び図2に主に示されるように、木製のパレット101の上に設置されるものであり、エンジン100を載置可能な段ボール製のエンジン載置台2と、パレット101の上面部101a及びエンジン載置台2の間に敷設される段ボール製の底箱部3と、エンジン載置台2に載置されたエンジン100の側方を囲んで被覆する段ボール製の胴枠部4と、胴枠部4の胴枠部上面部4aに被設される段ボール製の蓋箱部5とを具備して主に構成されている。なお、本実施形態の梱包用部材1を設置するものとして、木製のパレット101を例示したがこれに限定されるものではなく、例えば、段ボール製や樹脂製等のその他材質によって形成されたパレットを用いるものであっても構わない。
【0033】
上記構成を備えることで、エンジン載置台2、胴枠部4、及び蓋箱部5によって囲まれた内部の収容空間6にエンジン100を収容し、梱包することができる(図2参照)。ここで、図2において、底箱部3、胴枠部4、及び蓋箱部5の周囲に架け渡される梱包用ベルト等の構成やエンジン載置台2と胴枠部4とを連結するための連結用ビス等の構成については図示を省略している。このように、本実施形態の梱包用部材1は、ほとんどの部材が段ボールによって構成されている。なお、特に説明をしない限りにおいて、段ボール同士の接合は、後述する切り込み部16同士を組み合わせるものや、一方の部材に設けられた係止孔に対し、他方の部材に設けられた係止片を挿入し、一方の部材及び他方の部材を係合させることにより固定する等の周知の接合手段を用いることが可能である。更に、接着剤、釘、ビス等の接合手段を用いるものであっても構わない。
【0034】
更に、梱包用部材1は、その他の構成として、平面視略矩形状を呈するエンジン載置台2の互いに対向する側面7a,7bに沿ってそれぞれ形成され、エンジン載置台2及び胴枠部4を連結する、上方に開口した略断面コの字形状を呈する一対の段ボール製の連結部8a,8bと、連結部8a,8bに取設される角柱状の一対の木製の胴枠部固定用木材9a,9bとを備えている。これにより、連結部8a,8bに胴枠部4の下端側(図示しない)を挿入し、胴枠部固定用木材9a,9bとともにビス等により固定することで、エンジン載置台2、胴枠部4、及びパレット101を強固に接合し、一体化することができる。これにより、リフト荷役時のエンジン荷重によるパレット101の湾曲を防ぐことが可能となり、悪路等を走行する場合であっても安定した荷役を行うことができる。
【0035】
梱包用部材1の底箱部3は、図1に示すように、段ボール製の平板状部材から構成され、矩形状を呈する底面部3aと、当該底面部3aの四つの辺からそれぞれ延設された四つの側辺部3bとを備えるものであり、底面部3aの各辺(底面部3a及び側辺部3bの境界線に相当)に沿って、底面部3aに対して側辺部3bを直角方向に折り曲げ、互いに隣接する側辺部3b同士を接合することにより、上方に開口した平箱状に形成されたものである。
【0036】
一方、蓋箱部5は、図1に示すように、段ボール製の平板状部材から構成され、矩形状を呈する蓋面部5aと、当該蓋面部5aの四つの辺からそれぞれ延設された四つの側辺部5bとを備えるものであり、蓋面部5aの各辺(蓋面部5a及び側辺部5bの境界線に相当)に沿って、蓋面部5aに対して側辺部5bを直角方向に折り曲げ、互いに隣接する側辺部5b同士を接合することにより、下方に開口した平箱状に形成されたものである。
【0037】
上記の通り、底箱部3及び蓋箱部5は、基本的に同一の構成を有し、開口方向のみが相違するものである。そのため、同一サイズの底箱部3(または蓋箱部5)を二つ作成し、いずれか一方の開口方向を変化させることにより、蓋箱部5(または底箱部3)とするものであっても構わない。
【0038】
一方、胴枠部4は、エンジン載置台2に載置されるエンジン100の側方を囲み、被覆するものであって、矩形状の段ボール製の平板状部材を断面略コの字形状となるように折り曲げて形成したものであり、一対の第一胴枠部10と、一対の第二胴枠部11とによって構成されている。
【0039】
第一胴枠部10は、中央に配置された第一中央部12aと、第一中央部12aのそれぞれの端辺から延びた一対の第一端部12b,12cとによって構成されており、第二胴枠部11は、中央に配置された第二中央部13aと、第二中央部13aのそれぞれの端辺から延びた一対の第二端部13b,13cとによって構成されている。更に、第二胴枠部11には、第二中央部13aの中央付近を二枚重ねにするための平板状の重ね部13dが積層されている。
【0040】
ここで、第一胴枠部10の第一中央部12aの幅と、エンジン載置台2、底箱部3、及び蓋箱部5の短辺側の側面の長さとが略一致し、一方、第二胴枠部11の第二中央部13aの幅とエンジン載置台2等の長辺側の側面の長さ(短辺側の長さに直交する方向の長さ)とが略一致するように形成されている。
【0041】
なお、胴枠部4は、第一胴枠部10または第二胴枠部11を支持するための略コの字形状を呈する一対の木枠部20a,20bを更に備え、第一胴枠部10及び第二胴枠部11の内側に沿って取設され、エンジン載置台2、及び胴枠部4の立設状態を補強することができる(図1参照)。
【0042】
更に、本実施形態の梱包用部材1を構成するエンジン載置台2は、エンジン載置台本体14と、載置パッド部15とを備えている。エンジン載置台本体14は、所定の位置に予め複数の切り込み部16が設けられた複数の仕切り板17を組み合わせることによって構成され、互いの仕切り板17の切り込み部16同士を相対させながら差し込むことにより、一方の仕切り板17に対し、他方の仕切り板17を組み合わせて接続することができる。
【0043】
切り込み部16は、仕切り板17の所定の位置に予め設けられており、複数の仕切り板17をそれぞれ組み合わせることにより、複数の格子状(或いは井桁状)に区画された箇所が形成される。かかる格子状に区画された箇所の一部が本発明におけるエンジン収容空間18であり、本実施形態の梱包用部材1においては、三つのエンジン収容空間18が所定の間隔で並設されている(図3参照)。なお、エンジン載置台本体14には、上記のエンジン収容空間18の他に、更に強度を高めるために格子状に区画された複数の格子空間19が形成されている。なお、図3は、エンジン載置台本体14の概略構成を示すものであり、本発明の梱包用部材1のエンジン載置台本体14及びエンジン載置台2はこれに限定されるものではない。
【0044】
このように、エンジン載置台本体14は、上記の通り、複数の仕切り板17を組み合わせて格子状に形成され、エンジン収容空間18及び格子空間19を備えることにより、荷重方向に力が加わった場合であっても、当該力に抗する十分な強度を備えることができる。そのため、100kg以上の重量物であるエンジン100であっても段ボール製の仕切り板17から形成されたエンジン載置台本体14が当該エンジン100の荷重を支えることができる。
【0045】
図1及び図3に特に示すように、格子状に組み合わされた複数の仕切り板17によって形成されたエンジン載置台本体14は、本体下面部14aが底箱部3の底面部3aと当接している。すなわち、本体下面部14aとエンジン載置台本体14の本体上面部14bとの間に所定の高さを形成することができる。
【0046】
すなわち、上述したエンジン収容空間18及び格子空間19は、所定の高さを有して構成されており、エンジン収容空間18の高さは、当該エンジン収容空間18に収容されるエンジン100の一部の高さよりも大きくなるように設定されている。これにより、エンジン100の下端が、エンジン載置台本体14に底箱部3の底面部3aから離間した位置、すなわち、エンジン100の下端が底面部3aと接することのない状態でエンジン載置台2に支持される。なお、エンジン収容空間18の高さと、前述した格子空間19の高さは略一致する。
【0047】
更に、エンジン載置台本体14の本体上面部14bに被設される載置パッド部15は、段ボール製の平板状部材によって構成され、上述したエンジン収容空間18に相対する位置にエンジン100の下部形状に合わせて形成された開口部21を有している。更に、開口部21の開口端縁21aは下方から仕切り板17で支持されている。エンジン載置台本体14及び載置パッド部15の接合は、上述した係止孔及び係止片の係合等の周知の接合手段によって行うことができる。すなわち、エンジン載置台本体14の形成も含め、本実施形態のエンジン載置台2は、特別な作業工具を必要とすることなく組み立てることができる。更に、これらの接合状態を補強するために、接着剤やビス等を用いるものであっても構わない。
【0048】
これにより、開口部21を介してエンジン100の一部をエンジン収容空間18までエンジン挿入方向A(図4における矢印参照)に沿って挿入することができる。開口部21は、エンジン100の下部形状に合わせて形成されているため、エンジン収容空間18にエンジン100の一部(例えば、オイルパン102)が収容されると、開口部21の開口端縁21aとエンジン100の開口部21も大きな部分とが当接し、それ以上の下方に向かう挿入が規制される。
【0049】
その結果、エンジン100がエンジン載置台2に支持される。このとき、前述したように格子状に区画された複数の格子空間19等を備えるエンジン載置台本体14によって当該エンジン100の荷重を十分に支えることができる。更に、上述したようにエンジン載置台本体14の高さに対し、エンジン収容空間18に挿入されるエンジン100の一部の挿入深さが小さいため、エンジン100は本体下面部14aから浮いた状態でエンジン載置台2に支持される(図5参照)。
【0050】
エンジン100が段ボール製の載置パッド部15に嵌まることとなり、エンジン100のエンジン載置台2による支持が更に安定的なものとなる。また、かかる載置パッド部15は、エンジン100の表面に形成される擦り傷を防止する緩衝材としての機能を備えている。
【0051】
加えて、本実施形態の梱包用部材1における載置パッド部15は、更に開口端縁21aから水平方向に延設された段ボール製のフラップ22を更に備えて構成されている。このフラップ22は、開口部21からのエンジン100のオイルパン102の挿入に伴って、開口端縁21aを基点として、エンジン100のエンジン挿入方向Aに沿って折り曲げ可能に形成されている。このようにフラップ22の基点となる開口端縁21aが載置パッド部15に設けられていることにより、段ボールのエッジ部分が直に剥き出しの状態とならず、狭いエンジン収容空間18に開口部21を介してオイルパン102を挿入するためのガイドとしての機能を有することになる。
【0052】
段ボール製のフラップ22が所定の厚みを有するため、エンジン100のオイルパン102の形状に合わせて開口した開口部21の開口幅が、オイルパン102より小さくなる(図5参照)。
【0053】
その結果、段ボールを潰して押し拡げながらオイルパン102を収容することとなり、オイルパン102の固定度が高まることによって、エンジン収容空間18に収容されたオイルパン102が脱落し難くなり、当該エンジン収容空間18に安定した保持される。これにより、本実施形態の梱包用部材1を用いて、エンジン100を搬送する際に、搬送時に衝撃や振動が加わったとしても、エンジン収容空間18のオイルパン102の収容状態が安定し、かつ載置パッド部15の一部がエンジン100の形状に合わせて変形することによって、安定した搬送を行うことが可能となる。
【0054】
更に、図1及び図3に主として示されるように、本実施形態の梱包用部材1におけるエンジン載置台本体14には、複数の開口部21、及び当該開口部21に相対する位置に合わせてエンジン収容空間18が並設されている。これにより、複数のエンジン100(本実施形態においては、三つ)を一つにまとめた状態で梱包することができる。
【0055】
エンジン載置台2を構成する複数の仕切り板17が端から端まで一体で形成されていることで、載置された複数のエンジン100の荷重を分散して受けとめることが可能であり、更に、フォークリフト等による荷役作業における曲げ荷重を主として受けるパレット101の負担の低減とともに、パレット101を薄肉化することができる。
【0056】
ここで、図1及び図2において、三つの開口部21を並設し、三つのエンジン100を一つにまとめて収容する例を示したがこれに限定されるものではなく、まとめて収容するエンジン100の個数は適宜変更するものであってもよい。
【0057】
本実施形態の梱包用部材1は、上記のように、段ボールを基材として構築することが可能であり、従来の木箱梱包等と比較して、梱包用部材1自体の重量を大幅に軽減することができる。更に、エンジン100の荷重を十分に支える強度を有するため、複数のエンジン100をまとめて梱包する集合梱包が可能となり、梱包に要する作業工数や作業時間を削減し、かつ梱包コストの低減を図った状態で搬送が可能となる。更に従来と比較して作業を簡略化することができるため、作業事故等の発生を抑制し、安全面における向上を図ることができる。加えて、従来の梱包用部材の場合、梱包対象の跳ね上がりやぐらつきを抑えるために、上押さえ用の部材を設置するものの、本実施形態の梱包用部材1の場合、開口部21の固定度合いを高めることにより、係る上押さえ用の部材を不要とすることができる。
【0058】
特に、段ボールで形成されているため、エンジン100の形状等に応じてエンジン載置台2の一部が変形したり、或いは、段ボール製のフラップ22を備えることにより、エンジン収容空間18に一部が収容されたエンジン100の水平方向の転倒や傾き等を防止することができ、梱包状態を安定することができる。また、従来から周知の段ボールの組み立て技術や接合技術を用いることにより、新たな作業工具が必要とならず、また使用後の分解作業も容易に行える。
【0059】
その結果、長期間における海上輸送等が実現可能となり、更に、従来の木箱梱包等で必要なボルト及びナット等による締結作業数の低減等が可能となる。加えて、エンジン100の自重による段ボールの変形で梱包状態を安定させることができるため、例えば、収容されたエンジン100と蓋箱部5の蓋面部5aとの間に充填材を充填する作業等を行う必要がない。
【0060】
更に、複数のエンジン100をまとめて梱包する集合梱包が可能となり、梱包に要する作業工数や作業時間の削減を図り、かつ、エンジン100の一個当たりの梱包サイズをコンパクトにできる。
【0061】
加えて、本実施形態の梱包用部材1は、段ボールを基材として用いることにより、従来の複合資材を用いるものと比較して、資材毎の分別が容易であったり、リサイクル率を高めることができ、廃棄する場合の廃棄コストの削減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のエンジン梱包用部材は、自動車用や船舶用等の各種エンジンの搬送において好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1:梱包用部材(エンジン梱包用部材)、2:エンジン載置台、3:底箱部、3a:底面部、3b,5b:側辺部、4:胴枠部、4a:胴枠部上面部、5:蓋箱部、5a:蓋面部、6:収容空間、7a,7b:側面、8a,8b:連結部、9a,9b:胴枠部固定用木材、10:第一胴枠部、11:第二胴枠部、12a:第一中央部、12b,12c:第一端部、13a:第二中央部、13b,13c:第二端部、13d:重ね部、14:エンジン載置台本体、14a:本体下面部、14b:本体上面部、15:載置パッド部、16:切り込み部、17:仕切り板、18:エンジン収容空間、19:格子空間、20a,20b:木枠部、21:開口部、21a:開口端縁、22:フラップ、100:エンジン、101:パレット、101a:上面部、102:オイルパン(エンジンの一部)、A:エンジン挿入方向。
図1
図2
図3
図4
図5