(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168693
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】光コム発生器制御装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/01 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
G02F1/01 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074337
(22)【出願日】2021-04-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】503249810
【氏名又は名称】株式会社XTIA
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】興梠 元伸
(72)【発明者】
【氏名】今井 一宏
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA10
2K102AA21
2K102BA01
2K102BA19
2K102BB04
2K102BC01
2K102BC04
2K102BD01
2K102BD09
2K102CA00
2K102DA04
2K102DB01
2K102DB02
2K102EA25
2K102EB06
2K102EB22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光コムの発生方法が完全な単一モードでない場合や、変調周波数が切り替えられる光コム発生器であっても、光コムが最も広く発生する位置に制御点を位置させるように共振器長の又は光源周波数の制御を行い、安定した出力が得られるようにした光コム発生器制御装置を提供する。
【解決手段】光コム発生器2の光共振器から透過光又は反射光として出射される光コムのキャリア周波数成分を光フィルタ5により減衰させ、上記光フィルタ5を介して抽出された光周波数成分を光検出器6により受光して光強度を検出し、上記光検出器6による検出信号を用いて、上記光共振器の光共振長又は上記入射光の光源周波数を光共振制御部8により帰還制御する
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光の光変調を行う光変調器を光共振器内に備える光コム発生器の制御装置であって、
上記光共振器から透過光又は反射光として出射される光コムのキャリア周波数成分を減衰させる光フィルタと、
上記光コムから上記光フィルタを介して抽出された光周波数成分を受光して光強度を検出する光検出器と、
上記光検出器の検出信号が供給される共振制御部とを備え、
上記光フィルタによりキャリア周波数成分が減衰された上記光コムの光強度を上記光検出器により検出して、上記光共振器の光共振長又は上記入射光の光源周波数を上記光共振制御部により帰還制御することを特徴とする光コム発生器制御装置。
【請求項2】
上記光検出器の検出信号の信号レベルのボトム位置を弁別するボトム位置弁別器を備え、
上記共振制御部は、上記ボトム位置弁別器による弁別出力に基づいて、上記光検出器の検出信号の信号レベルのボトム位置を基準にした安定点とする帰還制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の光コム発生器制御装置。
【請求項3】
変調周波数の異なる複数の変調信号が切り替えられて上記光変調器に供給されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光コム発生器制御装置。
【請求項4】
上記光フィルタは、上記光コムのキャリア周波数成分を減衰させるノッチフィルタであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の光コム発生器制御装置。
【請求項5】
上記光フィルタは、上記光コムのキャリア周波数近傍に遮断周波数を有するハイパスフィルタであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の光コム発生器制御装置。
【請求項6】
上記光フィルタは、上記光コムのキャリア周波数成分近傍に遮断周波数を有するローパスフィルタであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の光コム発生器制御装置。
【請求項7】
上記光フィルタは、上記光コムのキャリア周波数成分近傍に一方の遮断周波数を有するバンドパスフィルタであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の光コム発生器制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムや光計測システムにおいて用いられる光コム発生器制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば光周波数を高精度に測定する場合に光コム発生器(Optical Frequency Comb Generator)が使用されている。すなわち、2つのレーザ光をヘテロダイン検波してその差周波数を測定する場合、その帯域は受光素子の帯域で制限され、おおむね数十GHz程度であるので、光コム発生器を用いて広帯域なヘテロダイン検波系を構築するようにしている。光コム発生器は、入射したレーザ光の側波帯を等周波数間隔毎に数百本以上発生させるもので、発生される側波帯の周波数安定度はもとのレーザ光のそれとほぼ同等である。そこで、この側波帯と被測定レーザ光をヘテロダイン検波することにより、数THz以上に亘る広帯域なヘテロダイン検波系を構築することができる。
【0003】
光コムは、例えば、光通信に応用することで、大量のデータを高速伝送することができる。また、光コムを距離計測の分野に応用することで、ミクロン単位からkm単位までの距離計測を高精度に行うことができる。
【0004】
入射光の光変調を行う光変調器を光共振器内に備える光コム発生器は、光共振器の共振器長に変動が有ると安定した光コム出力を得ることができない。
【0005】
そこで、安定化した光コム出力を得るために、光コム発生器から透過光又は反射光として取り出される光コム出力の強度を検出して、共振器長を帰還制御するようにしている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
また、本件発明者等は、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある基準光と測定光を出射する2つの光コム発生器を備え、基準面に照射される基準光と測定面に照射される測定光との干渉光を基準光検出器により検出するとともに、上記基準面により反射された基準光と上記測定面により反射された測定光との干渉光を測定光検出器により検出して、上記基準光検出器と測定光検出器により得られる2つ干渉信号の時間差から、上記基準面までの距離と上記測定面までの距離の差を求めることにより、高精度で、しかも短時間に行うことの可能な光コム距離計を先に提案している(例えば、特許文献3、4参照。)。
【0007】
すなわち、周波数が異なる2種類の変調信号により駆動される2つの光コム発生器から出射される干渉性のある基準光と測定光を用いることにより、基準光検出器により得られる干渉信号(以下、参照信号と言う。)と、測定光検出器により得られる干渉信号(以下、測定信号と言う。)について周波数解析を行い、光コムの中心周波数から数えたモード番号をNとして、参照信号と測定信号のN次モード同士の位相差を計算して光コム発生器から基準点までの光コム生成、伝送過程の光位相差を相殺した後、周波数軸で次数1あたりの位相差の増分を計算して測定信号パルスと参照信号パルスの位相差を求めることにより、基準点から測定面までの距離を算出することができる。
【0008】
ここで、マイクロ波帯域の変調周波数fm(例えば25GHz)、周波数差Δf(例えば、500kHz)である1対の変調信号により駆動される2つの光コム発生器から出力される基準光と測定光を用いて測定される距離は、基準点から測定面までの全体の距離(絶対距離という)から変調周波数fmの半波長の整数倍の距離を差し引いた剰余の部分である。干渉信号にはΔfの周期性があり、最も近い参照信号と測定信号の位相差が求められる。半波長を超える距離を測定する場合、2πに整数をかけた位相が基準時刻から比較している参照信号までの時間差に相当する位相として内在する。1組の周波数設定ではその整数値を判別することができない。fmをわずかに変えて複数回距離測定を実行することにより、複数の測定条件に合致する値としてその整数が逆算できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3976756号公報
【特許文献2】特開2006-337832号公報
【特許文献3】特許第5231883号公報
【特許文献4】特開2020-12641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光コム発生器では、入力光の周波数を光共振器のいずれかのモードの周波数に一致させて光コムを発生させるので、光コムを効率よく発生させるには、入力光の周波数を光共振器の特定のモードの周波数に一致させるための共振器長の制御が必要である。
【0011】
従来より、光コム発生器から透過光又は反射光として取り出される光コム出力の強度を検出して、共振器長を帰還制御することにより、安定化した光コム出力を得るようにしているが、光コム発生器には光共振器の共振モードが複数あり、光コムを発生しないモード(入力波長成分が大きい)も存在し、このモードでは光コム出力を安定化することができないという問題があった。
【0012】
例えば電気光学変調器型の場合では光共振器には偏光の異なる2モードが存在(TE,TMモードなど)する。光コムを発生する偏光モードは(どちらか選択され)FSRが変調周波数の整数分の1に設定され、電気光学定数が大きく光コムの発生効率が大きい。しかしそれ以外の偏光モードはFSRも異なり、電気光学定数も異なるため周波数レンジが大きい光コムにならない。
【0013】
電気光学効果を用いた光コム発生器の場合、主モード以外の偏光モードは等価屈折率が異なるためFSRも異なり、また電気光学定数も小さい。そのため、主要な偏光モード以外のモードはほとんど光コムを発生できず、多少発生できてもキャリア成分が主要になる。主要な偏光モード以外は偏光子などで除去されるが、偏光子の消光比の限界、あるいは組み立て精度によって出力光に混ざり合い共振器長の制御に悪影響をもたらす場合がある。これは主モードでない偏光モードの共振周波数が主モードの共振周波数に対して相対的に制御できないことも影響している。
【0014】
また、横モードがある場合も同様であり、出力光に混ざり合い共振器長の制御に悪影響をもたらす場合がある。これは光コムの発生方法が完全な単一モードでない場合に発生し、電気光学効果以外の光コム発生方法でも避けることができない。
【0015】
ここで、
図17は、光コムモジュールの変調入力のバイアスTを介してDCバイアスで共振器長を掃引した場合の出力光強度をプロットした特性図である。偏光モードが重なった場所を
図17中に丸印であらわしている。
図17では光コムが発生しているモードが複数あり、問題のないモードも存在するが、〇印のところにゆがみが見える。偏光モードは電気光学定数が異なり、モードと重なるか予測できない。また、わずかな入力光の周波数変化や環境変化にも影響される。光コムのキャリアとの干渉による影響によるためか形状も安定しない。このためこのようなモードが混ざったデバイスは製品に使用できず製品の歩留まりが悪化する。
【0016】
上述の如く、光導波路に閉じ込めた光を共振させる導波路型光共振器を用いた光コム周波数発生器における光コム発生において、直交する偏光成分は、光コム発生器の共振周波数をレーザ周波数に一致させるための制御を不安定にすることがあり、制御点のずれ、制御の発振等の原因となり、光コムを例えば測定対象までの距離や高さを測定する計測装置に利用する場合に、直交する偏光成分が計測誤差の要因になっていた。
【0017】
また、光コム距離計を絶対距離計として使用する場合には、測定対象物を固定した状態で光コム発生器の変調周波数を切り替えて、干渉信号の位相の変化から半波長の整数倍の距離を算出することにより、半波長の整数倍の距離の曖昧さを解消するようにしているが、切り替えに時間がかかる場合に曖昧さを十分に解消することができないという問題点があった。
【0018】
すなわち、変調周波数の切替えの間に、振動や空気屈折率変動の影響などが入り込むと、変調周波数の切替えによる位相差が測定されているのか、振動や屈折率変動により付加されたのか判別困難である。
【0019】
そのため変調周波数の切換えはできる限り素早く短時間に行われることが重要である。変調周波数の切替えにはマイクロ波スイッチが用いられ、切替の過渡期は、短時間(約30ns)であるが、
図18に示すように変調信号が出力されないことが起きる、さらに短時間であっても変調周波数のずれが大きいことが起こる。
【0020】
図18は、光コム発生器の変調周波数を切り替える場合に発生する無変調区間を有する変調信号を示す波形図である。
【0021】
変調信号が出力されない場合、その瞬間は入力された光が変調されないためコム状の光にならず、入力波長を主成分とする光が出力される。
【0022】
また、変調周波数のずれが大きい場合も、光コム発生器の光共振器や電極の構成は特定の変調周波数に対して変調の効率が高くなるように設計されていることに起因して、ずれた周波数に対しては変調効率が低く、結果として入力波長を主成分とする光が出力される。
【0023】
変調されたサイドバンド(入力波長以外の光コム)のパワーと比較して、無変調やごく弱い変調状態の出力波長パワーは高いため、短時間の現象であっても影響は大きい。
【0024】
なお、特許文献1の開示技術では、変調の対象となる光を通過させる電気光学結晶からなる光変調器を光共振器内に備える光コム発生器において、上記電気光学結晶から出射された光コムから光フィルタにより抽出された光周波数成分を受光して光強度を検出する光検出器の検出信号に基づいて、上記光共振器の光共振長を帰還制御するようにしている。しかしながら、上記光フィルタは、上記光コムの中心周波数から離れた上記光コムが急激に減衰する端付近の光周波数成分を抽出するものであって、中心周波数のキャリア成分を減衰させるものではない。
【0025】
そこで、本発明の目的は、上述の如き従来の実情に鑑み、光コムの発生方法が完全な単一モードでない場合であっても、光コムが最も広く発生する位置に制御点を位置させるように共振器長又は光源周波数の制御を行い、安定した出力が得られるようにした光コム発生器制御装置を提供することにある。
【0026】
また、本発明の他の目的は、変調周波数が切り替えられる光コム発生器であっても、光コムが最も広く発生する位置に制御点を位置させるように共振器長の又は光源周波数の制御を行い、安定した出力が得られるようにした光コム発生器制御装置を提供することにある。
【0027】
本発明の他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明では、入射光の光変調を行う光変調器を光共振器内に備える光コム発生器から出射される光コムのキャリア周波数成分を減衰させる光フィルタを介して抽出された光周波数成分の光強度を検出して光共振器の光共振長又は入射光の光源周波数を帰還制御することにより、光コムを安定化する。
【0029】
すなわち、本発明は、入射光の光変調を行う光変調器を光共振器内に備える光コム発生器の制御装置であって、上記光共振器から透過光又は反射光として出射される光コムのキャリア周波数成分を減衰させる光フィルタと、上記光コムから上記光フィルタを介して抽出された光周波数成分を受光して光強度を検出する光検出器と、上記光検出器の検出信号が供給される共振制御部とを備え、上記光フィルタによりキャリア周波数成分が減衰された上記光コムの光強度を上記光検出器により検出して、上記光共振器の光共振長又は上記入射光の光源周波数を上記光共振制御部により帰還制御することを特徴とする。
【0030】
本発明に係る光コム発生器制御装置は、上記光検出器の検出信号の信号レベルのボトム位置を弁別するボトム位置弁別器を備え、上記光共振制御部は、上記ボトム位置弁別器による弁別出力に基づいて、上記光検出器の検出信号の信号レベルのボトム位置を安定点とする帰還制御を行うものとすることができる。
【0031】
また、本発明に係る光コム発生器制御装置は、変調周波数の異なる複数の変調信号が切り替えられて上記光変調器に供給されるものとすることができる。
【0032】
また、本発明に係る光コム発生器制御装置において、上記光フィルタは、上記光コムのキャリア周波数成分を減衰させるノッチフィルタであるものとすることができる。
【0033】
また、本発明に係る光コム発生器制御装置において、上記光フィルタは、上記光コムのキャリア周波数近傍に遮断周波数を有するハイパスフィルタであるものとすることができる。
【0034】
また、本発明に係る光コム発生器制御装置において、上記光フィルタは、上記光コムのキャリア周波数成分近傍に遮断周波数を有するローパスフィルタであるものとすることができる。
【0035】
また、本発明に係る光コム発生器制御装置において、上記光フィルタは、上記光コムのキャリア周波数成分近傍に一方の遮断周波数を有するバンドパスフィルタであるものとすることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る光コム発生器制御装置では、入射光の光変調を行う光変調器を光共振器内に備える光コム発生器から出射される光コムのキャリア周波数成分を減衰させる光フィルタを介して抽出された光周波数成分の光強度を検出して光共振器の光共振長を帰還制御することにより、光コムを安定化するので、光コムの発生方法が完全な単一モードでない場合であっても、光コムが最も広く発生する位置に制御点を位置させるように共振器長の制御を行い、安定した出力が得られるようにした光コム発生器制御装置を提供することができる。
【0037】
また、本発明では、入射光の光変調を行う光変調器を光共振器内に備える光コム発生器から出射される光コムのキャリア周波数成分を減衰させる光フィルタを介して抽出された光周波数成分の光強度を検出して光共振器の光共振長を帰還制御することにより、光コムを安定化するので、変調周波数が切り替えられる光コム発生器であっても、光コムが最も広く発生する位置に制御点を位置させるように共振器長の制御を行い、安定した出力が得られるようにした光コム発生器制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明を光コム発生装置に適用した光コム発生器制御装置の基本的な構成を示すブロック図である。
【
図2】上記光コム発生装置に備えられた光コム発生器の構造を模式的に示す断面図である。
【
図3】上記光コム発生器において共振器長を掃引して得られる光コム発生器の透過光パワーをプロットした特性図であり、(A)は光コムにならないモードの光出力を示し、(B)は光コムとして動作しているモードの光出力を示し、(C)は各モードが混在している場合の光出力を示している。
【
図4】上記光コム発生器の光出力スペクトルと光フィルタを介して得られる光出力スペクトルを示すスペクトル図であり、(A)は上記各モードが混在している場合の光出力のスペクトルを示し、(B)はノッチフィルタによりキャリア周辺を除去した光出力のスペクトルを示し、(C)はバンドパスフィルタ、ハイパスフィルタ又はローパスフィルタによりキャリア周辺を除去した光出力のスペクトルを示している。
【
図5】共振器長を掃引した場合に、上記光コム発生器から光フィルタを介して得られる透過光パワーをプロットした特性図である。
【
図6】本発明に係る光コム発生器制御装置を適用した絶対距離計測を行う光コム距離計に用いられる2つの光コム発生器を備える光コム発生装置の構成例を示すブロック図である。
【
図7】上記光コム発生装置において、2つの光コム発生器に供給される駆動信号の状態遷移を示す状態遷移図である。
【
図8】上記駆動信号により光コム発生器を駆動して、光フィルタを挿入しない状態で光コム出力を受光した光検出器により得られる検出信号の観測結果を示す図である。
【
図9】上記駆動信号により光コム発生器を駆動して、光フィルタを介して光コム出力を受光した光検出器により得られる検出信号の観測結果を示す図である。
【
図10】光コム発生発装置の構成例を示す模式的なブロック図であり、(A)は反射光として光コムが取り出される光コム発生発器を備える光コム発生発装置を示し、(B)はリング型光コム発生器を備える光コム発生発装置を示している。
【
図11】(A)は光コム発生発器の反射モードの光出力パワーの特性図であり、(B)は光フィルタによりキャリア成分を除去した上記反射モードの光出力パワーの特性図である。
【
図12】光コム発生器から透過光として出射される光コムを用いて光コム共振器長を制御するようにした光コム発生器制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図13】上記光コム発生器制御装置のロックインアンプの動作説明に供する波形図であり、(A)は共振器長またはレーザ周波数を変化させた際の透過光強度を入力光のパワーで規格化した信号を示し、(B)は上記規格化光強度信号の微分信号を示している。
【
図14】光コム発生器から透過光として出射される光コムを用いて光コム共振器長を制御するようにした光コム発生器制御装置の他の構成例を示すブロック図である。
【
図15】光コム発生器から反射光として出射される光コムを用いて光コム共振器長を制御するようにした光コム発生器制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図16】光コム発生器から反射光として出射される光コムを用いて光コム共振器長を制御するようにした光コム発生器制御装置の他の構成例を示すブロック図である。
【
図17】光コムモジュールの変調入力のバイアスTを介してDCバイアスで共振器長を掃引した場合の出力光強度をプロットした特性図である。
【
図18】光コム発生器の変調周波数を切り替える場合に発生する無変調区間を有する変調信号を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、共通の構成要素については、共通の指示符号を図中に付して説明する。また、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0040】
本発明を適用した光コム発生器制御装置10の基本的な構成例を
図1のブロック図に示すように、本発明は、光源1から入射光が入力され、この入射光を光変調することにより光コムを発生する光コム発生器2を備える光コム発生装置3に適用される。
【0041】
光コム発生器2は、例えば、
図2に示すように、一対の反射鏡21A,21Bで構成される光共振器21の内部に光位相変調器22を挿入してなるもので、単一周波数の連続波の光を入力し、光共振器21の自由スペクトル域(FSR)の整数倍に一致した周波数で光位相変調器22を駆動すると、光共振器21内の多重往復の周期と変調信号周期の同期がとれるため共振器のない光位相変調器と比べて極めて効率の良い変調が行われ、サイドバンドの本数は数百から数千本に達し、数テラヘルツのスペクトル広がりを持つ光周波数コムを出力として得ることができる。光周波数コム発生器2では、時間的にも短いパルスを発生することが可能で、時間幅1ピコ秒以下の光パルスを発生することができる。光コム発生器2の出力は、中心周波数が入力周波数と等しく周波数間隔が変調周波数に等しいコム(櫛)状の光であり、時間軸では、変調周波数を繰り返し周波数とするパルス列である。変調指数を上げてスペクトルの広がりを大きくするほど時間幅の短いパルスを得ることができる。
【0042】
すなわち、光コム発生器制御装置10は、入射光の光変調を行う光変調器を光共振器21内に備える光コム発生器2の制御装置であって、上記光共振器21から透過光又は反射光として出射される光コムが光カプラやサーキュレータなどのカプラ4により分岐されて、上記光コムの一部が入射される光フィルタ5と、上記光フィルタ5を介して上記光コムの一部を受光して光強度を検出する光検出器6と、上記光検出器6の検出信号が供給される共振制御部8を備え、上記共振制御部8により上記光共振器21の光共振長又は上記入射光の光源周波数を帰還制御するようになっている。
【0043】
この光コム発生器制御装置10に備えられた上記光フィルタ5は、カプラ4を介して入射される光コムのキャリア周波数成分を減衰させる光学特性を有する。
【0044】
ここで、光コム発生器2において、光コムが発生する光共振器21の光コム発生モードは特定のモードだけであり、光コムにならないモードの透過光パワーを共振器長を掃引してプロットした時の概略図を
図3の(A)に示すように、光コムにならないモードの透過光パワーは入射光の中心周波数であるキャリア周波数成分が主成分であるのに対し、光コムとして動作しているモードの透過光パワーを共振器長を掃引してプロットした時の概略図を
図3の(B)に示すように、光コムとして動作しているモードでは、中心周波数の両側に存在する2つのピークの間のボトム位置b0に共振器長を制御することにより、光コムを最も広い範囲に亘って発生することができる。しかしながら、上記光コムにならないモードの上記光コムとして動作しているモードが混在している場合には、その透過光パワーを共振器長を掃引してプロットした時の概略図を
図3の(C)に示すように、2つのピークの間に複数のボトム位置b1,b2が存在することになり、共振器長の制御点が複数になってしまうことの安定した光コムを得ることができなくなる。
【0045】
すなわち、上記光コムにならないモードの上記光コムとして動作しているモードが混在している場合に上記光コム発生器2から出射される光コムのスペクトルは、
図4の(A)に太線にて示すように、上記光コムにならないモードでの無変調状態に近いキャリア周波数の近傍成分が存在することになるが、光コム発生器制御装置10では、上記光フィルタ5として、例えばノッチフィルタを用いることにより、
図4の(B)に示すように、上記キャリア周波数の近傍成分を除去することができる。
【0046】
また、上記光フィルタ5として、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタあるいはバンドパスフィルタを用いることにより、
図4の(C)に示すように、キャリア周波数成分とともに片側側波帯成分を除去するようにしても良い。
【0047】
すなわち、この光コム発生器制御装置10に備えられる上記光フィルタ5は、上記光コムのキャリア周波数成分を減衰させるノッチフィルタであるものとすることができる。
【0048】
また、上記光フィルタ5は、上記光コムのキャリア周波数近傍に遮断周波数を有するハイパスフィルタであるものとすることができる。
【0049】
また、上記光フィルタ5は、上記光コムのキャリア周波数成分近傍に遮断周波数を有するローパスフィルタであるものとすることができる。
【0050】
さらに、上記光フィルタ5は、上記光コムのキャリア周波数成分近傍に一方の遮断周波数を有するバンドパスフィルタであるものとすることができる。
【0051】
この光コム発生器制御装置10では、入射される光コムのキャリア周波数成分を減衰させる光学特性を有する上記光フィルタ5を介して上記光コムの一部を受光する光検出器6により、上記キャリア周波数成分が減衰された光コムの光強度を検出するので、上記光コムにならないモードの上記光コムとして動作しているモードが混在している場合であっても、上記光検出器6の検出信号は2つのピークの間に複数のボトムが存在することなく、
図5に示すように、1つのボトム位置b0になるので、上記共振制御部8により、上記光検出器6の検出信号を用いて、上記光共振器21の光共振長又は上記入射光の光源周波数を帰還制御することにより、上記光コム発生器2から安定した光コムを出射させることができる。
【0052】
なお、この光コム発生器制御装置10では、上記光検出器6の検出信号の信号レベルのボトム位置を弁別するボトム位置弁別器7を備え、上記光共振制御部8は、上記ボトム位置弁別器7による弁別出力に基づいて、上記光検出器6の検出信号の信号レベルのボトム位置b0を安定点とする帰還制御を行うようにしている。
【0053】
このように、この光コム発生器制御装置10では、上記光コムにならないモードの上記光コムとして動作しているモードが混在している場合であっても、上記共振制御部8により、上記光検出器6の検出信号を用いて、上記光共振器21の光共振長又は上記入射光の光源周波数を帰還制御することにより、光コム発生器2から安定した光コムを得ることができるので、例えば、2つの光コム発生器の各変調周波数を切り替えて絶対距離計測を行う光コム距離計に適用することにより、変調周波数の切り替え時に発生する無変調期間の影響による共振器長制御の乱れをなくして、安定した2種類の光コムを用いて絶対距離計測を行うことができる。
【0054】
図6は、絶対距離計測を行う光コム距離計に用いられる2つの光コム発生器15A,15Bを備える光コム発生装置50の構成を示すブロック図である。
【0055】
この光コム発生装置50は、シンセサイザ回路53から出力される4種類の周波数信号をスイッチ回路54を介して循回的に切り替えて入力することにより、変調周期が循回的に切り替えられた互いに周期が異なる2種類の周波数信号を第1,第2の周波数変換器14A,14Bに供給するようにしたものである。
【0056】
この光コム発生装置50は、例えば、差周波数が500kHzの独立した4つ周波数信号(F1:1000MHz、F2:1010MHz、F3:1000.5MHz、F4:1010.5MHz)を出力するシンセサイザ回路53と、上記シンセサイザ回路53から4つ周波数信号がそれぞれアイソレータ57A,57B,57C,57Dを介して入力される4入力2出力のスイッチ回路54を備え、上記スイッチ回路54の2つの出力端子に上記第1,第2の周波数変換器14A,14Bが接続されている。
【0057】
この光コム発生装置50において、第1の発振器13は、基準発振器11から5分岐のパワーデバイダ52を介して供給される基準周波数信号FREFに位相同期されて発振位相が固定された周波数F0(例えば、24GHz)の周波数信号を上記第1,第2の周波数変換器14A,14Bに2分岐のパワーデバイダ12とアイソレータ17A,17Bを介して供給する。
【0058】
上記シンセサイザ回路53は、基準発振器11から5分岐のパワーデバイダ52を介して供給される基準周波数信号FREFにそれぞれ位相同期されて周波数が固定された互いに異なる4種類の周波数F1,F2,F3,F4の周波数信号を発生する4つの発振器53A,53B,53C,53Dを備える。
【0059】
第2の発振器53Aは、上記基準発振器11により発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて第1の周波数F1(1000MHz)に固定された第1の周波数信号を発生する。
【0060】
また、第3の発振器53Bは、上記基準発振器11により発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて第2の周波数F2(1010MHz)に固定された第2の周波数信号を発生する。
【0061】
また、第3の発振器53Cは、上記基準発振器11により発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて周波数が第3の周波数1000.5MHzに固定された第3の周波数信号F3を発生する。
【0062】
さらに、第4の発振器53Dは、上記基準発振器11により発生される基準周波数信号FREFにPLL回路により位相同期されて周波数が第4の周波数F4(1010.5MHz)に固定された第4の周波数信号を発生する。
【0063】
上記スイッチ回路54は、上記シンセサイザ回路53から上記アイソレータ57A,57B,57C,57Dを介して入力される1GHz帯の4種類の周波数信号を巡回的に切り替えて2つの出力端子から交互に出力する。すなわち、上記スイッチ回路54は、上記2つの出力端子に接続されている上記第1,第2の周波数変換器14A,14Bに供給する1GHz帯の4種類の周波数信号を巡回的に切り替える4入力2出力のセレクタスイッチとして機能する。
【0064】
ここで、上記シンセサイザ回路53とスイッチ回路54の間にアイソレータ57A,57B,57C,57Dを挿入して、上記シンセサイザ回路53からアイソレータ57A,57B,57C,57Dを介してスイッチ回路54に周波数信号を入力することにより、スイッチ回路54以降の回路の遮断や解放などによる負荷変動で信号源の動作が不安定になるのを防止することができる。
【0065】
上記記アイソレータ57A,57B,57C,57Dには、リバースアイソレーションが大きいマイクロ波増幅器、パイ型抵抗減衰器や抵抗減衰器、フェライトを用いたマイクロ波アイソレータなどのアイソレーション素子や、可変減衰器と帯域通過フィルタとを組み合わせたアイソレーション回路やアイソレーション増幅器と抵抗減衰器や帯域通過フィルタとを組み合わせたアイソレーション回路など用いることができる。
【0066】
そして、上記第1,第2の周波数変換器14A,14Bは、上記第1の発振器13から供給される周波数F0(例えば、24GHz)の周波数信号と、上記スイッチ回路54から巡回的に切り替えて交互に出力される1GHz帯の4種類の周波数F1,F2,F3,F4の周波数信号から、上記スイッチ回路54により巡回的に切り替えられた上記1GHz帯の4種類の周波数F1,F2,F3,F4の周波数信号を25GHz帯域の4種類の変調周波数Fm1,Fm2,Fm3,Fm4に周波数変換した第1、第2の変調信号Fma、Fmbを得て、上記第1、第2の光コム発生器15A,15Bにバンドパスフィルタ16A,16Bを介して駆動信号として供給する。
【0067】
すなわち、上記第1,第2の周波数変換器14A,14Bは、1GHz帯の周波数信号を上記第1、第2の光コム発生器15A,15Bに駆動信号として供給する25GHz帯域の第1、第2の変調信号Fma,Fmbに周波数変換するアップコンバータとして機能する。
【0068】
ここで、この光コム発生装置50は、特許文献1,2等に記載されている光コム距離計や三次元形状測定機において周波数の切り替えを要する絶対距離測定を行うための基準光と測定光として2種類の光コムを発生するものであって、上記1GHz帯の4種類の周波数F1,F2,F3,F4の周波数信号を上記スイッチ回路54により巡回的に切り替えて上記第1,第2の周波数変換器14A,14Bにより25GHz帯域の4種類の変調周波数Fm1,Fm2,Fm3,Fm4にアップコンバートして得られる第1、第2の変調信号Fma,Fmbを上記第1、第2の光コム発生器15A,15Bに駆動信号として供給することにより、上記第1、第2の光コム発生器15A,15Bから、表1に示すように、変調周期が循回的に切り替えられた互いに変調周期が異なる2種類の光コムが出力される。
【表1】
【0069】
表1は、#1~4の設定における第1,第2の光コム発生器15A,15Bの駆動信号の遷移状態OFCG1/OFCG2と位相差を示しており、駆動信号の周波数は、Δf=500kHz、Δfm=10MHz、fm=Fm1(25000MHz)、fm+Δfm=Fm2(25010MHz)、fm+Δf=Fm3(25000.5MHz)、fm+Δfm+Δf=Fm4(25010.5MHz)となっている。
図7は、この光コム発生装置50において、2つ光コム発生器15A,15Bに供給される駆動信号の状態遷移を示す状態遷移図である。
【0070】
ここで、光コム距離計では、原理的に周波数が異なる2種類の変調信号により駆動される2つの光コム発生器から出射される干渉性のある基準光と測定光を用いることにより、信号処理部において、基準光検出器により得られる干渉信号(以下、参照信号と言う。)測定光検出器により得られる干渉信号(以下、測定信号と言う。)について周波数解析を行い、光コムの中心周波数から数えたモード番号をNとして、参照信号と測定信号のN次モード同士の位相差を計算して光コム発生器から基準点までの光コム生成、伝送過程の光位相差を相殺した後、周波数軸で次数1あたりの位相差の増分を計算して信号パルスの位相差を求めることにより、基準点から測定面までの距離を算出する。
【0071】
なお、測定距離が変調周波数fmの半波長を超えると物体光の周期性によりその半波長の整数倍の距離が不明となって一義的に距離を求められないので、表1に示す4通りの変調周波数に設定した基準光と測定光を用いて4回測定して、信号処理部において、同じ処理を行うことにより得られる各位相差を用いて、半波長相当の多義性距離(La=c/2fm c:光速)を超える距離を算出する。
【0072】
すなわち、表1に示す4通りの変調周波数に設定して測定して得られる参照信号と測定信号の位相差は、2つの光コム発生器(OFCG1,OFCG2)を駆動する変調信号の変調周波数がfmとfm+Δfである#1の設定では-2πfmTとなり、変調信号の変調周波数がfm+Δfmとfm+Δfm+Δfである#2の設定では-2π(fm+Δfm)Tとなり、変調信号の変調周波数がfm+Δfとfmである#3の設定では-2π(fm+Δf)Tとなり、変調信号の変調周波数がfm+Δfm+Δfとfm+Δfmである#4の設定では-2π(fm+Δfm+Δf)Tとなる。
【0073】
距離(La=c/2fm c:光速)も長い場合、参照信号と測定信号の位相差(-2πfmT)は、mを整数としてφ+2mπの形であり、計算によりφの部分だけが求められるが、整数値mは不明である。
【0074】
一方、#1の設定での参照信号と測定信号の位相差-2πfmTと#2の設定での参照信号と測定信号の位相差-2π(fm+Δfm)Tの差は2πΔfmTであり、また、#3の設定での参照信号と測定信号の位相差-2π(fm+Δf)Tと#4の設定での参照信号と測定信号の位相差-2π(fm+Δfm+Δf)Tの差は2πΔfmTであり、1/Δfmの波長に相当する距離(Δfm=10MHzであればLaは15m)までならば、一義的に位相が決まる。
【0075】
そして、この位相をfm/Δfm倍して#1の位相差との比較により整数mを判定することができる。
【0076】
さらに、表1の#1の設定での位相差-2πfmTと#3の設定での位相差-2π(fm+Δf)Tの差から2πΔfが得られる。
【0077】
ここで、fm=25GHz、Δf=500kHz、Δfm=10MHzとした場合、Δf=500kHzであるからLa=300mまでの距離計測を行うことができる。
【0078】
この光コム発生装置50を搭載した光コム距離計では、表1に示す4通りの変調周波数に設定して測定して得られる参照信号と測定信号を用いて絶対距離計測が行われる。すなわち、1つの状態を一定時間保持した後に他の状態に移り、一定の区間でその状態の信号位相計測を行い、#1、#2、#3、#4の設定状態の位相を使って絶対距離の計算処理を実行する。
【0079】
光コム距離計における計測速度は、6mm以内の相対距離測定ではΔfに等しく500kHzであるのに対し、周波数の切り替えを要する絶対距離測定では、周波数の切り替え時間と絶対距離計算時間を含めたものとなる。
【0080】
上記光コム発生装置50では、上記シンセサイザ回路53と上記スイッチ回路54の間にアイソレータ57A,57B,57C,57Dが挿入されているので、上記4種類の周波数F1,F2,F3,F4の周波数信号を上記スイッチ回路54により巡回的に切り替えた瞬間における負荷変動により上記シンセサイザ回路53の動作が不安定になることがなく、光コム発生器15A,15Bの駆動信号を迅速に切り替えて駆動状態を遷移させることができる。すなわち、上記スイッチ回路54により、上記4種類の変調周波数Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を巡回的に切り替えて、第1,第2の光コム発生器15A,15Bの駆動状態を迅速に遷移させることができ、参照信号と測定信号の変調周波数を切り替えて絶対距離計測を行う2つの光コム光源として用いることにより、絶対距離の測定時間を短縮することができる。
【0081】
なお、距離計測だけであれば、#1と#2の設定のみ、あるいは、#3と#4の設定のみでも可能であるが、上述のごとく#1,#2,#3,#4の設定、すなわち、上記4種類の変調周波数Fm1,Fm2,Fm3,Fm4を上記スイッチ回路54により巡回的に切り替えることにより、測定対象以外の信号伝送経路による位相オフセットを補正して高精度に絶対距離結果を得ることができる。すなわち、2つの光コム発生器(OFCG1,OFCG2)の変調周波数を入れ替えたときに測定対象距離に由来の位相は絶対値が変わらず符号が反転する。一方、干渉信号伝送路のケーブル長に由来するオフセットは符号が変わらず一定値になる。したがって、2回の位相測定の結果を差し引いて2で割るとオフセットを除外した位相値を求めることができる。
【0082】
ここで、この光コム発生装置50では、上述の如く上記シンセサイザ回路53と上記スイッチ回路54の間にアイソレータ57A,57B,57C,57Dを挿入することにより、上記4種類の周波数F1,F2,F3,F4の周波数信号を上記スイッチ回路54により巡回的に切り替えた瞬間における負荷変動により上記シンセサイザ回路53の動作が不安定になるのを防止しているが、上記スイッチ回路54の切り替え動作の際に、極めて短い時間ではあるが回路が毎回遮断され、無変調状態が発生する。
【0083】
そこで、この光コム発生装置50では、第1,第2の光コム発生器15A,15Bから出射される各光コムをカプラ4A,4Bにより分離して、各光コムの一部を本発明に係る光コム発生器制御装置10A,10Bに入射するようにして、第1,第2の光コム発生器15A,15Bに備えられている各光共振器の共振器長を帰還制御するようにしている。
【0084】
上記光コム発生器制御装置10A,10Bには、
図1のブロック図に示した光コム発生装置3に適用した光コム発生器制御装置10が用いられる。
【0085】
上記光コム発生装置3における光源1から周波数が192.8THzの入射光を光コム発生器2に入射させた状態で、第1の光コム発生器15Aに供給した駆動信号により上記光コム発生器2を駆動して上記光検出器6により得られる検出信号について、上記スイッチ回路54の切り替え動作の周波数より低い周波数成分をローパスフィルタを介して観測したところ、上記光検出器6の前に光フィルタ5を挿入しない状態では、
図8に示すように、ダブルピークの中間の小さなピークの発生が確認され、この状態では、SW遷移を連続的に続けている場合に共振制御の妨げになるが、上記光検出器6の前に光フィルタ5を挿入した状態では、
図9に示すように、ダブルピークの中間の小さなピークの発生は確認されず、SW遷移を連続的に続けている場合に安定した共振制御を行うことができる。
【0086】
DWM用に190THzを中心としてCH番号が100GHz置きに規定されたバンド幅が100GHzのWDMフィルタが市販されているので、上記光フィルタ5としてCH27(192.7THz 1555.75nm)、CH28(192.8THz 1554.94nm)、CH29(192.7THz 1555.75nm)、CH30(193.0THz 1553.33nm)のWDMフィルタを試したところ、入力レーザ波長のCH28(92.8THz 1554.94nm)以外のWDMフィルタではSW遷移時の小ピークは消え、ディザを加えることにより光共振器21の共振長をロックすることができた。また、スイッチ選択固定の場合の透過モードにも問題は見られなかった。
【0087】
なお、透過モードの信号レベルが下がるが、これは光フィルタ5として用いたWDMフィルタ光フィルタのバンド幅がせまいためである。上記光フィルタ5は、入力レーザの波長付近を除く特性を持っているのであれば帯域は広くてもよい。また、入力レーザの波長付近を除く特性を持っているのであればノッチフィルタでもよい。
【0088】
ここで、上記光コム発生装置3における光コム発生器2には、光共振器21から透過光として光コムを出射するもの以外に、
図10の(A)に示す光コム発生器2Bのように、光共振器21から反射光として光コムをカプラ4Cを介して取り出すものや、
図10の(B)に示すリング型光コム発生器2Cを採用することもできる。これらの方式では光共振器にカップリングしないキャリア成分が強く、出力のパワーの平均値を測定すると、共振器長又はレーザ周波数を横軸にした
図11の(A)に示すような特性となる。このような場合でも、キャリア除去する光フィルタ5を用いれば計測される出力は
図11の(B)になり上記と同様な信号が得られる。また、変調方式も電気光学変調を用いたものや、カー効果を用いたものもありさまざまであるが、変調方式は関係なく各種方式の光コム発生器に本発明を適用することができる。
【0089】
次に、光コム発生器2から透過光として出射される光コムを用いて光コム共振器長を制御するようにした本発明に係る光コム発生器制御装置110Aについて、
図12のブロック図を用いて説明する。
【0090】
この
図12に示す光コム発生器制御装置110Aは、光コム発生装置3Aの光源1から光コム発生器2に入射される光ビームを分岐する入射側カプラ114Aを介して、上記光ビームの一部を受光する第1の光検出器116Aと、上記光コム発生器2から透過光として出射される光コムが出射側カプラ114Bにより分岐された上記光コムの一部が入射される光フィルタ5と、この光フィルタ5を介して上記光コムの一部を受光する第2の光検出器116Bを備える。
【0091】
この光コム発生器制御装置110Aでは、共振制御部120Aの発振器122が発生する変調信号SDを用いて光源1の光源周波数に変調をかけて光コム発生器2のレーザ周波数と光共振器のモードの周波数差を制御信号発生部123Aが発生する共振器長制御信号SCTLを用いて光コム発生器2の共振器長制御を行う。
【0092】
上記第1の光検出器116Aは、上記入射側カプラ114Aを介して上記光ビームの一部を受光することにより、上記光源1から出射されて上記光コム発生装置3Aに入射される光ビームの光強度Aを示す入射光検出信号SAを得て、この入射光検出信号SAを共振制御部120Aのロックインアンプ121に供給する。
【0093】
また、上記第2の光検出器116Bは、上記出射側カプラ114Bを介して上記光コムの一部を受光することにより、上記光コム発生器2から透過光として出射される光コムの光強度Bを示す出射光検出信号SBを得て、この出射光検出信号SBを上記ロックインアンプ121に供給する。
【0094】
この光コム発生器制御装置110Aにおける共振制御部120Aでは、光コム発生装置3Aの光源1から出射されるの上記光ビームの光強度Aは変調入力や環境変化により変動するので、その影響を信号から除去するために、ロックインアンプ121により、上記入射光検出信号S
Aにより示される上記光ビームの光強度Aと出射光検出信号S
Bにより示される光コムの光強度Bについて、デジタル処理等でB’=B/Aとすることにより、
図13の(A)に示すように、入力光のパワー変動に依存しない光コムの光強度B’を示す光強度信号S
B’を得て、上記光コム発生装置3Aの光源1の光源周波数を変調する変調信号S
Dを発生する発振器122により与えられる同期信号に基づいて、
図13の(B)に示すように、上記光コムの光強度B’を示す光強度信号S
B’の微分信号S
Cを出力する。
【0095】
図13の(B)に示すように、微分信号Cには、
図13の(A)に示す光コムの光強度B’を示す光強度信号のボトム位置に符号反転が発生する。
【0096】
そして、制御信号発生部123Aは、上記光コムの光強度B’を示す光強度信号S
B’の中で光コムが効率よく発生するダブルピーク間のボトムを含む範囲をあらかじめ規定しておいた
図13の(A)に示すe-fの範囲から判断し、微分信号S
Cの中の複数ある符号反転点から光コムが効率よく発生する点に一致する符号反転点を判別し、符号反転点になるように上記光コム発生器2の共振器長を制御する共振器長制御信号S
CTLを発生し、この共振器長制御信号S
CTLにより上記光コム発生器2の共振器長を制御する。すなわち、この制御信号発生部123Aは、上記ボトム位置弁別器7の機能を有しており、上記光コムの光強度B’を示す光強度信号S
B’の信号レベルのボトム位置を安定点とする帰還制御を行う。この制御信号発生部123Aによる上記光コム発生器2の共振器長の帰還制御は、上記光コムの光強度B’を示す光強度信号S
B’の信号レベルのボトム位置を基準としてオフセットを与えた安定点とするものであってもよい。
【0097】
なお、ここでは、変調信号SDを用いて上記光源1の光源周波数に変調をかけて上記光コム発生器2のレーザ周波数と光共振器のモードの周波数差を共振器長制御により制御しているが、上記光コム発生器2の共振器長制御は、例えば、光コムモジュールの変調入力のバイアスTを介してDCバイアスを変化させることにより行うようにすることもできる。
【0098】
次に、光コム発生器2から透過光として出射される光コムを用いて光源周波数を制御するようにした本発明に係る光コム発生器制御装置120Bについて、
図14のブロック図を用いて説明する。
【0099】
この
図14に示す光コム発生器制御装置110Bは、上記光コム発生器制御装置110Aにおける共振器長制御信号S
CTLを発生する制御信号発生部123Aに替えて、制御信号発生部123Bにより光コム発生装置3Aの光源1の光源周波数を制御することにより光コム発生器2のレーザ周波数と光共振器のモードの周波数差を制御する共振制御信号S
CTFを得て、光源1の光源周波数を制御するようにしたものである。
【0100】
なお、この光コム発生器制御装置110Bにおいて、上記光コム発生器制御装置110Aと同一の構成要素は、
図14中に同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0101】
この光コム発生器制御装置110Bにおける共振制御部120Bは、ロックインアンプ121により、上記第1の光検出器116Aにより入射光検出信号S
Aと上記第2の光検出器116Bにより得られる出射光検出信号S
Bから、
図13の(A)に示すように、入力光のパワー変動に依存しない光コムの光強度B’を示す光強度信号S
B’を得て、
図13の(B)に示すように、上記光コムの光強度B’を示す光強度信号S
Bの微分信号S
Cを出力する。
【0102】
そして、制御信号発生部123Bは、上記光コムの光強度B’を示す光強度信号S
B’の中で光コムが効率よく発生するダブルピーク間のボトムを含む範囲を予め規定しておいた
図13の(A)に示すe-fの範囲から判断し、微分信号S
Cの中の複数ある符号反転点から光コムが効率よく発生する点に一致する符号反転点を判別し、符号反転点になるように上記光源1の光源周波数を制御する共振制御信号S
CTFを発生して、発振器122が発生する光源1の光源周波数を変調する変調信号S
Dに加算器124により上記共振制御信号を加算することにより、上記光源1の光源周波数を帰還制御する。すなわち、この制御信号発生部123Bは、上記ボトム位置弁別器7の機能を有しており、上記光コムの光強度B’を示す光強度信号S
B’の信号レベルのボトム位置を安定点とする帰還制御を行う。
【0103】
次に、光コム発生器2Bから反射光として出射される光コムを用いて光コム共振器長を制御するようにした本発明に係る光コム発生器制御装置110Cについて、
図15のブロック図を用いて説明する。
【0104】
この
図15に示す光コム発生器制御装置110Cは、上記光コム発生器制御装置110Aにおける光コム発生装置3Aの光コム発生器2から透過光として出射される光コムを分岐させて光フィルタ5を介して第2の光検出器116Bに上記光コムの一部を受光させる出射側カプラ114Bに替えて、光コム発生装置3Bの光コム発生器2Bから反射光として出射される光コムを入射側カプラ114により分岐させ、光フィルタ5を介して第2の光検出器116Bに上記反射光として出射される光コムの一部を受光させるようにしたものである。
【0105】
なお、この光コム発生器制御装置110Cにおいて、上記光コム発生器制御装置110Aと同一の構成要素は、
図15中に同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0106】
この光コム発生器制御装置110Cにおいて、光コム発生装置3Bに備えられている入射側カプラ114は、上記光コム発生器2Bから反射光として出射される光コムを分岐させて上記光フィルタ5を介して第2の光検出器116Bに上記反射光として出射される光コムの一部を受光させるとともに、光源1から光コム発生器2Bに入射される光ビームを分岐させて第1の光検出器116Aに上記光ビームの一部を受光させる機能を有している。
【0107】
この光コム発生器制御装置110Cにおける共振制御部120Cでは、ロックインアンプ121により、上記第1の光検出器116Aで得られる入射光検出信号S
Aにより示される上記光ビームの光強度Aと上記第2の光検出器116Bで得られる反射光検出信号S
Bにより示される光コムの光強度Bについて、デジタル処理等でB’=B/Aとすることにより、
図13の(A)に示すように、入力光のパワー変動に依存しない光コムの光強度B’を示す光強度信号S
B’を得て、上記光コム発生装置3Bの光源1の光源周波数を変調する変調信号S
Dを発生する発振器122により与えられる同期信号に基づいて、
図13の(B)に示すように、上記光コムの光強度B’を示す光強度信号S
Bの微分信号S
Cを出力する。
【0108】
そして、制御信号発生部123Cは、上記光コムの光強度B’を示す光強度信号S
B’の中で光コムが効率よく発生するダブルピーク間のボトムを含む範囲を予め規定しておいた
図13の(A)に示すe-fの範囲から判断し、微分信号S
Cの中の複数ある符号反転点から光コムが効率よく発生する点に一致する符号反転点を判別し、符号反転点になるように上記光コム発生器2Bの共振器長を制御する共振器長制御信号S
CTLを発生して、この共振器長制御信号S
CTLにより上記光コム発生器2Bの共振器長を帰還制御する。すなわち、この制御信号発生部123Cは、上記ボトム位置弁別器7の機能を有しており、上記光コムの光強度B’を示す光強度信号S
B’の信号レベルのボトム位置を安定点とする帰還制御を行う。
【0109】
さらに、光コム発生器2Aから反射光として出射される光コムを用いてレーザ周波数を制御するようにした本発明に係る光コム発生器制御装置110Dについて、
図16のブロック図を用いて説明する。
【0110】
この
図16に示す光コム発生器制御装置110Dは、上記光コム発生器制御装置110Cにおける共振器長制御信号S
CTLを発生する制御信号発生部123Cに替えて、制御信号発生部123Dにより光コム発生装置3Bの光源1の光源周波数を制御することにより光コム発生器2のレーザ周波数と光共振器のモードの周波数差を制御する共振制御信号S
CTFを得て、光源1の光源周波数を制御するようにしたものである。
【0111】
なお、この光コム発生器制御装置110Dにおいて、上記光コム発生器制御装置110Cと同一の構成要素は、
図16中に同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0112】
この光コム発生器制御装置110Dにおける共振制御部120Dは、ロックインアンプ121により、上記第1の光検出器116Aにより得られる入射光検出信号S
Aと上記第2の光検出器116Bにより得られる反射光検出信号S
Bから、
図13の(A)に示すように、入力光のパワー変動に依存しない光コムの光強度B’を示す光強度信号S
B’を得て、
図13の(B)に示すように、上記光コムの光強度B’を示す光強度信号S
Bの微分信号S
Cを出力する。
【0113】
そして、制御信号発生部123Dは、上記光コムの光強度B’を示す光強度信号S
B’の中で光コムが効率よく発生するダブルピーク間のボトムを含む範囲を予め規定しておいた
図13の(A)に示すe-fの範囲から判断し、微分信号S
Cの中の複数ある符号反転点から光コムが効率よく発生する点に一致する符号反転点を判別し、符号反転点になるように上記光源1の光源周波数を制御する共振制御信号S
CTFを発生して、発振器122が発生する光源1の光源周波数を変調する変調信号S
Dに加算器124により上記共振制御信号を加算することにより、上記光源1の光源周波数を帰還制御する。すなわち、この制御信号発生部123Dは、上記ボトム位置弁別器7の機能を有しており、上記光コムの光強度B’を示す光強度信号S
B’の信号レベルのボトム位置を安定点とする帰還制御を行う。
【符号の説明】
【0114】
1 光源、2,2A,2B,2C 光コム発生器、3,3A,3B 光コム発生装置、4,4A,4B,114A,114B カプラ、5 光フィルタ、6,116A,116B 光検出器、7 ボトム位置弁別器、8,120A,120B,120C,120D 共振制御部、10,10A,10B,110A,110B,110C,110D 共振制御装置、11 基準発振器、12,52 パワーデバイダ、13,53A,52B,53C,53D 発振器、14A,14B 周波数変換器、15A,15B 光コム発生器、16A,16B バンドパスフィルタ、17A,17B,57A,57B,57C,57D アイソレータ、21 光共振器、21A,21B 反射鏡、22 光位相変調器、53 シンセサイザ回路、54 スイッチ回路、121 ロックインアンプ、122 発振器、123A,123B,123C,123D 制御信号発生部、
124 加算器