(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168695
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】混練機
(51)【国際特許分類】
B01F 27/60 20220101AFI20221031BHJP
B01F 35/00 20220101ALI20221031BHJP
【FI】
B01F7/02 Z
B01F15/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074340
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】愿山 靖子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 晃史
(72)【発明者】
【氏名】大濱 徳也
【テーマコード(参考)】
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4G037DA21
4G037EA03
4G078AA09
4G078AA13
4G078AB06
4G078BA01
4G078CA12
4G078DA30
4G078DB10
4G078EA08
4G078EA10
4G078EA20
(57)【要約】
【課題】混練機において、撹拌翼と円筒状スペーサとの接触箇所において混練物の付着を軽減する。
【解決手段】混練機1は、筒状のハウジング2と、ハウジング2の内部に軸支された少なくとも1本の回転シャフト3と、回転シャフト3に軸方向に間隔をあけて取り付けられた複数の撹拌翼4とを有する。撹拌翼4は、回転シャフト3に回転一体に結合する結合用孔5aが形成された軸受金具5と、軸受金具5に回転一体に固定される撹拌翼本体4aとを備える。複数の撹拌翼4間は、円筒状スペーサ6を設けることで軸方向の間隔を調整可能に構成されており、円筒状スペーサ6は、一定外径を有するスペーサ本体6aと、スペーサ本体6aの軸方向端部に形成され、撹拌翼4に近付くにつれて外径が大きくなる拡径テーパ部6bとを有し、拡径テーパ部6bの最大径D1は、軸受金具5の最大径D2よりも大きく、拡径テーパ部6bが軸受金具5の全体を覆うように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングと、
上記ハウジングの内部に軸支された少なくとも1本の回転シャフトと、
上記回転シャフトに軸方向に間隔をあけて取り付けられた複数の撹拌翼とを有する混練機であって、
上記撹拌翼は、
上記回転シャフトに回転一体に結合する結合用孔が形成された軸受金具と、
上記軸受金具に回転一体に固定される撹拌翼本体とを備え、
上記複数の撹拌翼間は、円筒状スペーサを設けることで軸方向の間隔を調整可能に構成されており、
上記円筒状スペーサは、
一定外径を有するスペーサ本体と、
上記スペーサ本体の軸方向端部に形成され、上記撹拌翼に近付くにつれて外径が大きくなる拡径テーパ部とを有し、
上記拡径テーパ部の最大径は、上記軸受金具の最大径よりも大きく、該拡径テーパ部が該軸受金具の全体を覆うように構成されている
ことを特徴とする混練機。
【請求項2】
請求項1に記載の混練機であって、
上記軸受金具は、上記円筒状スペーサよりも耐食性が低く強度が高い材料で形成されている
ことを特徴とする混練機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状のハウジングと、このハウジングの内部に軸支された少なくとも1本の回転シャフトと、この回転シャフトに軸方向に間隔をあけて取り付けられた複数の撹拌翼とを有する混練機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の混練機として、例えば、特許文献1のようなものが知られているが、複数の撹拌翼の軸方向間隔を確保するためには、例えば円筒状スペーサが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の混練機では、円筒状スペーサの軸方向端面と撹拌翼の軸方向端面との間の隅角部に混練物が付着するという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、撹拌翼と円筒状スペーサとの接触箇所において混練物の付着を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、円筒状スペーサの形状に工夫を加えた。
【0007】
具体的には、第1の発明では、筒状のハウジングと、
上記ハウジングの内部に軸支された少なくとも1本の回転シャフトと、
上記回転シャフトに軸方向に間隔をあけて取り付けられた複数の撹拌翼とを有する混練機を対象とし、
上記撹拌翼は、
上記回転シャフトに回転一体に結合する結合用孔が形成された軸受金具と、
上記軸受金具に回転一体に固定される撹拌翼本体とを備え、
上記複数の撹拌翼間は、円筒状スペーサを設けることで軸方向の間隔を調整可能に構成されており、
上記円筒状スペーサは、
一定外径を有するスペーサ本体と、
上記スペーサ本体の軸方向端部に形成され、上記撹拌翼に近付くにつれて外径が大きくなる拡径テーパ部とを有し、
上記拡径テーパ部の最大径は、上記軸受金具の最大径よりも大きく、該拡径テーパ部が該軸受金具の全体を覆うように構成されている。
【0008】
上記の構成によると、円筒状スペーサの撹拌翼に接する軸方向端部に徐々に外径が大きくなる拡径テーパ部を設けたので、円筒状スペーサが回転シャフトに接する隅角部に混練物が溜まりにくくなる。しかも、拡径テーパ部が撹拌翼の軸受金具の全体を覆うので、軸受金具の結合孔と回転シャフトとの間に混練物が入り込まなくなり、軸受金具の経年劣化が抑えられ、その再利用も可能となる。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、
上記軸受金具は、上記円筒状スペーサよりも耐食性が低く強度が高い材料で形成されている。
【0010】
上記の構成によると、軸受金具の軸方向端面を円筒状スペーサの拡径テーパ部で容易に覆うことができ、軸受金具は混練物に接触しない。軸受金具は、円筒状スペーサに比べて耐食性には劣るが、強度が高く、費用も高い。このため、耐久性の高い円筒状スペーサで覆うことで、耐食性が補完される。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、撹拌翼と円筒状スペーサとの接触箇所において混練物の付着を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る混練機の概要を示す断面図である。
【
図2】両端に拡径テーパ部を有する円筒状スペーサを示す正面図である。
【
図3】一端にのみ拡径テーパ部を有する円筒状スペーサを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態の混練機1を示し、この混練機1は、例えば、溶媒中で重合される樹脂や脱モノマーが必要な樹脂溶液など、漏洩しやすく気密性が要求される原材料を混練する際に用いられる。混練機1は、筒状のハウジング2と、ハウジング2の内部に軸支された少なくとも1本の回転シャフト3と、回転シャフト3に軸方向に間隔をあけて取り付けられた複数の撹拌翼4とを有する。
【0015】
詳しくは図示しないが、例えば、回転シャフト3が2本平行に並べられる場合には、断面がひょうたん型筒状のハウジング2で構成され、その外周面の一端上部に原材料の投入口2aを有し、外周面の他端下部に混練物の排出口2bを有する。なお、投入口2aは、ハウジング2の側面や下部に設けてもよい。回転シャフト3は、ハウジング2両端面の図示しない軸受により回転可能に支持され、図示しない電動機などの駆動装置により、所定範囲の回転速度で回転されるように構成されている。
【0016】
そして、ハウジング2の投入口2aから原材料を投入すると、回転シャフト3と一体に回転する撹拌翼4により原材料は撹拌されて混練物となりハウジング2内を排出口2bに向けて送られ、最後は排出口2bから混練物が排出されることになる。
【0017】
図5に示すように、撹拌翼4は、回転シャフト3に回転一体に結合する結合用孔5aが形成された軸受金具5と、軸受金具5に回転一体に固定される撹拌翼本体4aとを備えている。撹拌翼本体4aの形状は特に限定されないが、例えば、
図5に示すような正三角形状のものであり、先端に交換可能な爪部4bが設けられていてもよい。
【0018】
撹拌翼本体4aは、例えば、SUS316で構成されている。SUS316はクロム(CR)-18%、ニッケル(Ni)-12%、モリブデン(MO)-2.5%を添加したオーステナイト系ステンレス鋼である。後述するSUS630よりも硬度が劣るが、耐食性は良好でSUS630よりも安価である。
【0019】
軸受金具5は、例えば、SUS630で構成されている。SUS630は、析出硬化系ステンレスであり、固溶化熱処理後、析出硬化を行って硬化させる析出硬化処理により、マルテンサイト地に金属間化合物を生じさせ、高硬度化を図ったステンレスである。耐食性は、オーステナイト系のSUSU316と比べると劣るものの、フェライト系よりも優れている。つまり、軸受金具5は、撹拌翼本体4aや円筒状スペーサよりも耐食性が劣るが、強度の高い材料で形成されている。
【0020】
本実施形態では、複数の撹拌翼4間は、円筒状スペーサ6を設けることで軸方向の間隔を調整可能に構成されている。円筒状スペーサ6は、例えば、SUS316で構成されており、一定外径を有する直管円筒状のスペーサ本体6aと、スペーサ本体6aの軸方向端部に形成され、撹拌翼4に近付くにつれて外径が大きくなる拡径テーパ部6bとを有する。
図2のように軸方向両端に拡径テーパ部6bを設ける場合と、
図3のように軸方向一端にのみ拡径テーパ部6bを設ける場合とがある。スペーサ本体6aの軸方向長さは、任意に設定可能である。また、細かい軸方向間隔の調整は、円環状のシム7により行う。軸受金具5の結合用孔5aには、回転シャフト3にスプライン結合するスプライン孔が形成されている。このスプライン結合部分に回転トルクが加わるため、軸受金具5は、撹拌翼本体4aよりも硬くて耐久性の優れた材料で形成されている。また、撹拌翼本体4aが経年劣化した場合には、この軸受金具5は再利用可能である。本実施形態では、軸受金具5は、例えば、軸方向から見て正八角形の外周面を有し、撹拌翼4に形成した正八角形貫通孔4cに嵌め込まれているが、この形状には限定されない。
【0021】
そして、拡径テーパ部6bの最大径D1は、軸受金具5の最大径D2よりも大きく(D1>D2)、拡径テーパ部6bが軸受金具5の全体を覆うように構成されている。
【0022】
本実施形態では、円筒状スペーサ6の撹拌翼4に接する軸方向端部に徐々に外径が大きくなる拡径テーパ部6bを設けたので、円筒状スペーサ6が回転シャフト3に接する隅角部に混練物が溜まりにくくなる。しかも、拡径テーパ部6bが撹拌翼4の軸受金具5の全体を覆うので、軸受金具5の結合孔と回転シャフト3との間に混練物が入り込まなくなり、軸受金具5の経年劣化が抑えられ、その再利用も可能となる。
【0023】
軸受金具5は、硬くて強度の高い材料で構成されているものの、耐食性は撹拌翼4やスペーサ6よりも劣る。スプライン結合部分などは、隙間を完全に無くすことができず、この隙間に混練材料が入り込むと、経年劣化が早まってしまう。しかし、本実施形態では、拡径テーパ部6bを有する円筒状スペーサ6によって外周全体が覆われるので、より高価な材料で構成され、再利用可能な軸受金具5の経年劣化を効果的に防ぐことができる。
【0024】
したがって、本実施形態に係る混練機1によると、撹拌翼4と円筒状スペーサ6との接触箇所において混練物の付着を軽減することができる。
【0025】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0026】
1 混練機
2 ハウジング
2a 投入口
2b 排出口
3 回転シャフト
4 撹拌翼
4a 撹拌翼本体
4b 爪部
4c 正八角形貫通孔
5 軸受金具
5a 結合用孔
6 円筒状スペーサ
6a スペーサ本体
6b 拡径テーパ部
7 シム