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特開2022-168696対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168696
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/02 20060101AFI20221031BHJP
   F16D 55/228 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
F16D65/02 B
F16D55/228
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074341
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓彦
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA66
3J058AA73
3J058AA84
3J058AA87
3J058BA46
3J058BA68
3J058CC25
3J058EA05
3J058EA08
(57)【要約】
【課題】剛性の確保と軽量化との両立を図れる、対向ピストン型ディスクブレーキ用のキャリパを実現する。
【解決手段】キャリパ2を構成するインナボディ5の周方向外側の端部とアウタボディ6の周方向外側の端部とを軸方向に連結する、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8に、軸方向に伸長しかつ外表面に開口した凹部28と、凹部28を両側から挟むように配置され、かつ、それぞれの軸方向内側の端部が、インナボディ5に備えられた取付ボス部11a、11bに接続された、第1梁部29及び第2梁部30とを設ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個以上のインナシリンダ部と、前記少なくとも1個以上のインナシリンダ部の周方向両外側に配置され、それぞれに径方向に貫通したボルト挿通孔が形成された1対の取付ボス部と、を有し、ロータの軸方向内側に配置されたインナボディと、
少なくとも1個以上のアウタシリンダ部を有し、前記ロータの軸方向外側に配置されたアウタボディと、
前記ロータを径方向外側から覆うように配置され、前記インナボディの周方向両外側の端部と前記アウタボディの周方向両外側の端部とを軸方向に連結する1対のサイドブリッジと、を備え、
前記1対のサイドブリッジのうち、少なくとも一方のサイドブリッジは、軸方向に伸長し、かつ、前記サイドブリッジの外表面に開口した凹部と、前記凹部を両側から挟むように配置され、かつ、それぞれの軸方向内側の端部が、前記取付ボス部に対して、直接又は前記サイドブリッジのうち前記取付ボス部の近傍に位置する部分を介して接続された、第1梁部及び第2梁部と、を有する、
対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
【請求項2】
前記凹部は、軸方向外側の端部に軸方向底部を有する、請求項1に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
【請求項3】
前記凹部は、前記サイドブリッジの外周面及び/又は周方向外側面に開口している、請求項1又は請求項2に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
【請求項4】
前記凹部は、前記サイドブリッジの軸方向内側面に開口している、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
【請求項5】
前記第1梁部の稜線は、前記サイドブリッジのうち前記取付ボス部の近傍に位置する部分の稜線を介して、前記取付ボス部の径方向内側の端部に接続されている、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
【請求項6】
前記第2梁部は、前記取付ボス部の径方向外側の端部に直接接続されている、請求項1~5のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
【請求項7】
前記第1梁部及び第2梁部は、前記凹部を挟んで周方向に配置されている、請求項1~6のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
【請求項8】
前記第1梁部と前記第2梁部との少なくともいずれかは、軸方向外側に向かうほど断面積が大きくなる、請求項1~7のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
【請求項9】
前記第2梁部は、軸方向外側に向かうほど円周方向幅が大きくなる、請求項8に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
【請求項10】
前記第1梁部は、軸方向外側に向かうほど径方向幅が大きくなる、請求項8又は請求項9に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
【請求項11】
前記サイドブリッジは、前記凹部の開口部において、前記凹部の開口面積を小さくする方向に張り出した張出部をさらに備える、請求項1~10のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
【請求項12】
前記張出部は、前記凹部の開口部の軸方向外側部に備えられている、請求項11に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
【請求項13】
前記張出部は、前記凹部の開口部の周方向内側部及び/又は周方向外側部に備えられている、請求項11又は請求項12に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
【請求項14】
前記凹部の中心軸は、前記インナシリンダ部の中心軸に対して、軸方向外側に向かうほど周方向内側に向かう方向に傾斜している、請求項1~13のうちのいずれか1項に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向ピストン型ディスクブレーキ装置を構成するキャリパに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の制動を行うために、ディスクブレーキ装置が広く使用されている。ディスクブレーキ装置による制動時には、車輪とともに回転するロータの軸方向両側に配置された1対のパッドを、ピストンによりロータの軸方向両側面に押し付ける。このようなディスクブレーキ装置として、従来から各種構造のものが知られているが、ロータの軸方向両側にピストンを備える対向ピストン型ディスクブレーキ装置は、安定した制動力を得られることから、近年使用例が増えている。
【0003】
対向ピストン型ディスクブレーキ装置は、たとえば特開2010-78055号公報(特許文献1)に記載されているように、車輪とともに回転するロータを径方向外側から覆うように配置され、車体に固定されるキャリパと、キャリパに対し軸方向の移動を可能に支持され、ロータの軸方向両側に配置される1対のパッドとを備える。
【0004】
キャリパは、ロータの軸方向内側に配置されるインナボディと、ロータの軸方向外側に配置されるアウタボディと、ロータを径方向外側から覆うように配置され、インナボディの周方向両外側の端部とアウタボディの周方向両外側の端部とを連結する、1対のサイドブリッジとを有する。
【0005】
インナボディは、ロータに対向する軸方向外側面に開口したインナシリンダ部を有しており、該インナシリンダ部には、インナピストンが嵌装されている。また、インナボディは、インナシリンダの周方向両外側に、キャリパを車体に固定するための1対の取付ボス部を有している。アウタボディは、ロータに対向する軸方向内側面に開口したアウタシリンダ部を有しており、該アウタシリンダ部には、アウタピストンが嵌装されている。
【0006】
制動時には、インナシリンダ部及びアウタシリンダ部のそれぞれに、マスターシリンダからブレーキオイルが送り込まれる。これにより、インナシリンダ部に嵌装したインナピストンを軸方向に押し出し、インナボディに支持したパッドを、ロータの軸方向内側面に押し付ける。同様に、アウタシリンダ部に嵌装したアウタピストンを軸方向に押し出し、アウタボディに支持したパッドを、ロータの軸方向外側面に押し付ける。この結果、ロータが、1対のパッドにより軸方向両側から強く挟持され、車両の制動が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-78055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
制動時には、インナ、アウタ両ピストンにより、1対のパッドをロータの軸方向両側面に押し付ける反作用として、インナ、アウタ両ボディに、軸方向に互いに離れる方向の力が加わる。このため、インナボディとアウタボディとを軸方向に連結するサイドブリッジの剛性が十分でないと、インナ、アウタ両ボディ同士が互いに離れる方向に弾性変形し、所期の制動力が得られなくなる可能性がある。
【0009】
一方、ディスクブレーキ装置は、車両のうちで懸架装置を構成するバネよりも路面側に設けられるため、いわゆるバネ下荷重となる。このため、車両の燃費性能や走行性能の向上を目的として、軽量化を図ることが求められている。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、剛性の確保と軽量化との両立を図れる、対向ピストン型ディスクブレーキ用のキャリパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパは、インナボディと、アウタボディと、1対のサイドブリッジとを備える。
前記インナボディは、少なくとも1個以上のインナシリンダ部と、前記少なくとも1個以上のインナシリンダ部の周方向両外側に配置され、それぞれに径方向に貫通したボルト挿通孔が形成された1対の取付ボス部とを有し、ロータの軸方向内側に配置される。
前記アウタボディは、少なくとも1個以上のアウタシリンダ部を有しており、前記ロータの軸方向外側に配置される。
前記1対のサイドブリッジは、前記ロータを径方向外側から覆うように配置され、前記インナボディの周方向両外側の端部と前記アウタボディの周方向両外側の端部とを軸方向に連結する。
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパでは、前記1対のサイドブリッジのうち、少なくとも一方のサイドブリッジは、軸方向に伸長し、かつ、前記サイドブリッジの外表面に開口した凹部と、前記凹部を両側から挟むように配置され、かつ、それぞれの軸方向内側の端部が、前記取付ボス部に対して、直接又は前記サイドブリッジのうち前記取付ボス部の近傍に位置する部分を介して接続された、第1梁部及び第2梁部とを有している。
【0012】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパでは、前記凹部を、軸方向外側の端部に軸方向底部を有するものとすることができる。
【0013】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパでは、前記凹部を、前記サイドブリッジの外周面及び/又は周方向外側面に開口させることができる。
【0014】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパでは、前記凹部を、前記サイドブリッジの軸方向内側面に開口させることができる。
【0015】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパでは、前記第1梁部の稜線を、前記サイドブリッジのうち前記取付ボス部の近傍に位置する部分の稜線を介して、前記取付ボス部の径方向内側の端部に接続することができる。
【0016】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパでは、前記第2梁部を、前記取付ボス部の径方向外側の端部に直接接続することができる。
【0017】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパでは、前記第1梁部及び第2梁部を、前記凹部を挟んで周方向に配置することができる。
【0018】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパでは、前記第1梁部と前記第2梁部との少なくともいずれかの断面積を、軸方向外側に向かうほど大きくすることができる。
この場合には、前記第2梁部の円周方向幅を、軸方向外側に向かうほど大きくすることができる。追加的又は代替的に、前記第1梁部の径方向幅を、軸方向外側に向かうほど大きくすることができる。
【0019】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパでは、前記サイドブリッジに、前記凹部の開口部において、前記凹部の開口面積を小さくする方向に張り出した張出部をさらに備えさせることができる。
この場合には、前記張出部を、前記凹部の開口部の軸方向外側部に備えることができる。追加的又は代替的に、前記張出部を、前記凹部の開口部の周方向内側部及び/又は周方向外側部に備えることができる。
【0020】
本発明の一態様にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパでは、前記凹部の中心軸を、前記インナシリンダ部の中心軸に対して、軸方向外側に向かうほど周方向内側に向かう方向に傾斜させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、剛性の確保と軽量化との両立を図れる、対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施の形態の第1例にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置を径方向外側から見た平面図である。
図2図2は、実施の形態の第1例にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置を軸方向内側から見た図である。
図3図3は、実施の形態の第1例にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置を軸方向外側から見た図である。
図4図4は、図2の左側から見た側面図である。
図5図5は、図2の右側から見た側面図である。
図6図6は、実施の形態の1例にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置を径方向内側から見た底面図である。
図7図7は、図1のA-A線断面図である。
図8図8は、図1のB-B線断面図である。
図9図9は、実施の形態の第1例にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置を、軸方向内側かつ径方向外側から見た斜視図である。
図10図10は、実施の形態の第1例にかかる対向ピストン型ディスクブレーキ装置を、軸方向外側かつ径方向外側から見た斜視図である。
図11図11は、図9の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、図1図11を用いて説明する。
【0024】
本例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置1は、自動車用として用いられるもので、キャリパ2と、1対のパッド3(インナパッド及びアウタパッド)とを備えている。
【0025】
本明細書及び特許請求の範囲で、「軸方向」、「周方向」及び「径方向」とは、特に断らない限り、円板状のロータ4(図1参照)の軸方向、周方向及び径方向をいう。また、周方向内側とは、対向ピストン型ディスクブレーキ装置1の周方向中央側をいい、周方向外側とは、対向ピストン型ディスクブレーキ装置1の周方向両側をいう。また、回入側とは、周方向外側のうち、車両の前進時の状態で車輪とともに回転するロータ4が、キャリパ2の内側に入り込む側を言い、回出側とは、周方向外側のうち、ロータ4がキャリパ2の外側に抜け出す側をいう。
【0026】
〔キャリパ〕
キャリパ2は、ロータ4を径方向外側から覆うように配置され、1対のパッド3を、軸方向(図1の上下方向、図2及び図3の表裏方向、図4及び図5の左右方向)に移動可能に支持するものであり、アルミニウム合金などの軽合金や鉄系合金製の素材に、鋳造加工などを施すことにより一体に成形されている。
【0027】
キャリパ2は、軸方向視で略弓形状を有しており、ロータ4を軸方向両側から挟むように配置されたインナボディ5及びアウタボディ6と、インナ、アウタ両ボディ5、6の周方向両外側の端部同士を軸方向に連結する、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8と、インナ、アウタ両ボディ5、6の周方向中間部同士を軸方向に連結するセンターブリッジ9とを備えている。
【0028】
〈インナボディ〉
インナボディ5は、ロータ4の軸方向内側に配置されている。インナボディ5は、2個のインナシリンダ部10a、10bと、2個の取付ボス部11a、11bとを備えている。
【0029】
インナシリンダ部10a、10bは、周方向に離隔して配置されている。インナシリンダ部10a、10bのそれぞれは、有底円筒状に構成され、内部に円柱状のシリンダ空間を有している。インナシリンダ部10a、10bのそれぞれは、インナボディ5の周方向中間部に配置されており、ロータ4に対向するインナボディ5の軸方向外側面に開口している。インナボディ5の軸方向内側面には、有底円筒状であるインナシリンダ部10a、10bの外郭形状の一部が現れている。具体的には、インナボディ5の軸方向内側面には、インナシリンダ部10a、10bを構成する筒部12a、12bの軸方向内側部及び円形状の底部13a、13bが現れている。インナシリンダ部10a、10bには、図示しないインナピストンを軸方向に関する変位を可能に嵌装している。
【0030】
取付ボス部11a、11bは、インナシリンダ部10a、10bの周方向両外側に配置されている。このため、取付ボス部11a、11bは、インナボディ5の周方向両外側部に配置されている。取付ボス部11a、11bのそれぞれは、略円筒形状を有しており、内部に径方向に貫通したボルト挿通孔14a、14bが形成されている。キャリパ2は、ボルト挿通孔14a、14bを径方向外側から挿通した図示しないボルトを、車体の懸架装置を構成するナックルに対し、直接固定するか又は図示しないアダプタを介して固定される。このため、取付ボス部11a、11bのそれぞれの径方向内側の端面は、座面として機能する。そして、本例のキャリパ2は、ラジアルマウント式のキャリパとなる。
【0031】
インナボディ5は、軸方向内側面に、合計4本のサイドリブ15a、15b、16a、16b、及び、1本のセンタリブ17を備えている。インナボディ5は、周方向両外側部にサイドリブ15a、15b、16a、16bを2本ずつ備えており、周方向中間部にセンタリブ17を備えている。サイドリブ15a、15b、16a、16b及びセンタリブ17は、他の部分に比べて肉厚が大きくなった(軸方向内側に向けて盛り上がった)厚肉部である。このため、インナボディ5は、サイドリブ15a、15b、16a、16b及びセンタリブ17のそれぞれが設けられた部分で、肉厚が増大しており、剛性が向上している。
【0032】
サイドリブ15a、15bは、インナボディ5の軸方向内側面のうち、回入側(図1及び図2の左側)の周方向外側部に備えられている。サイドリブ15a、15bは、それぞれ周方向に伸長しており、径方向に互いに離隔して配置されている。別な言い方をすれば、サイドリブ15a、15b同士の間には、軸方向に凹んだ除肉部18aが備えられている。サイドリブ15a、15bは、互いに非平行に配置されている。サイドリブ15a、15bのそれぞれは、インナシリンダ部10aの中心軸O10aに近づく方向に伸長している。サイドリブ15a、15bは、回入側に配置された取付ボス部11aと、該取付ボス部11aの周方向内側に隣接配置されたインナシリンダ部10aの軸方向内側部とを、周方向に連結している。
【0033】
サイドリブ16a、16bは、インナボディ5の軸方向内側面のうち、回出側(図1及び図2の右側)の周方向外側部に備えられている。サイドリブ16a、16bは、それぞれ周方向に伸長しており、径方向に互いに離隔して配置されている。別な言い方をすれば、サイドリブ16a、16b同士の間には、軸方向に凹んだ除肉部18bが備えられている。サイドリブ16a、16bは、互いに非平行に配置されている。サイドリブ16a、16bのそれぞれは、インナシリンダ部10bの中心軸O10bに近づく方向に伸長している。サイドリブ16a、16bは、回入側に配置された取付ボス部11bと、該取付ボス部11bの周方向内側に隣接配置されたインナシリンダ部10bの軸方向内側部とを、周方向に互いに連結している。
【0034】
センタリブ17は、インナボディ5の軸方向内側面の周方向中間部に備えられている。センタリブ17は、周方向に伸長しており、インナシリンダ部10a、10bのそれぞれの底部13a、13bの径方向中間部を、周方向に横切るようにして、軸方向内側から覆っている。このため、インナシリンダ部10a、10bの底部13a、13bの径方向外側部及び径方向内側部は、センタリブ17によって覆われずに、該センタリブ17から径方向にそれぞれはみだしている。センタリブ17の周方向両外側の端部は、回入側に配置されたサイドリブ15bの周方向内側の端部、及び、回出側に配置されたサイドリブ16bの周方向内側の端部に、それぞれ周方向につながっている。
【0035】
対向ピストン型ディスクブレーキ装置1の組立状態では、ロータ4の軸方向内側に配置されるパッド3を、インナボディ5に対して軸方向に移動可能に支持する。このために、インナボディ5には、軸方向外側面の周方向両外側部に、それぞれ軸方向に張り出したインナ側パッド支持部19を有する。また、インナ側パッド支持部19は、径方向内側部に、周方向内側に向けて突出したインナ側係合凸部20を有している。
【0036】
〈アウタボディ〉
アウタボディ6は、ロータ4の軸方向外側に配置されている。アウタボディ6は、2個のアウタシリンダ部21a、21bを備えている。
【0037】
アウタシリンダ部21a、21bは、周方向に離隔して配置されている。アウタシリンダ部21a、21bのそれぞれは、アウタボディ6の周方向中間部に配置されており、ロータ4に対向するアウタボディ6の軸方向内側面に開口している。アウタボディ6の軸方向外側面には、有底円筒状であるアウタシリンダ部21a、21bの外郭形状の一部が現れている。具体的には、アウタボディ6の軸方向外側面には、アウタシリンダ部21a、21bを構成する筒部22a、22bの軸方向外側部及び円形状の底部23a、23bが現れている。アウタシリンダ部21a、21bのそれぞれには、図示しないアウタピストンを軸方向に関する変位を可能に嵌装している。
【0038】
アウタボディ6は、軸方向外側面に、1本の補助リブ24及び1本のメインリブ25を備えている。本例では、アウタボディ6の径方向外側部のうち回出側の周方向外側部に、補助リブ24を備えており、アウタボディ6の径方向中間部に、メインリブ25を備えている。補助リブ24及びメインリブ25は、他の部分に比べて肉厚が大きくなった(軸方向外側に向けて盛り上がった)厚肉部である。このため、アウタボディ6は、補助リブ24及びメインリブ25のそれぞれが設けられた部分で、肉厚が増大しており、剛性が向上している。
【0039】
補助リブ24は、周方向に伸長しており、アウタシリンダ部21bの中心軸O21bに近づく方向に伸長している。補助リブ24は、回出側サイドブリッジ8のうちの周方向内側部分の軸方向外側面と、アウタシリンダ部21bの軸方向外側部分とを、周方向に連結している。
【0040】
メインリブ25は、アウタボディ6の軸方向外側面の径方向中間部に、周方向全長にわたり備えられている。メインリブ25は、周方向に伸長しており、アウタシリンダ部21a、21bのそれぞれの底部23a、23bの径方向中間部を、周方向に横切るようにして、軸方向外側から覆っている。このため、アウタシリンダ部21a、21bの底部23a、23bの径方向外側部及び径方向内側部は、メインリブ25によって覆われずに、該メインリブ25から径方向にそれぞれはみだしている。メインリブ25の径方向幅は、アウタシリンダ部21a、21bの底部23a、23bを覆った周方向内側部分が、周方向両外側部分よりも大きくなっている。メインリブ25の周方向両外側の端部は、回入側サイドブリッジ7の周方向外側部分の軸方向外側面、及び、回出側サイドブリッジ8の周方向外側部分の軸方向外側面に、それぞれ周方向につながっている。
【0041】
対向ピストン型ディスクブレーキ装置1の組立状態では、ロータ4の軸方向外側に配置されるパッド3を、アウタボディ6に対して軸方向に移動可能に支持する。このために、アウタボディ6には、軸方向内側面の周方向両外側部に、それぞれ軸方向に張り出したアウタ側パッド支持部26を設けている。また、アウタ側パッド支持部26の径方向内側部に、周方向内側に向けて突出したアウタ側係合凸部27を設けている。
【0042】
〈サイドブリッジ〉
回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8のそれぞれは、ロータ4を径方向外側から覆うように配置されており、インナボディ5の周方向両外側の端部とアウタボディ部6の周方向両外側の端部とを軸方向に互いに連結している。具体的には、回入側サイドブリッジ7は、インナボディ5の回入側の周方向外側の端部とアウタボディ6の回入側の周方向外側の端部とを、互いに軸方向に連結している。これに対し、回出側サイドブリッジ8は、インナボディ5の回出側の周方向外側の端部とアウタボディ6の回出側の周方向外側の端部とを、互いに軸方向に連結している。回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8のそれぞれは、ロータ4の外周縁に沿って円弧状に湾曲しており、所定の隙間を介して、ロータ4を径方向外方から覆う。インナ、アウタ両ボディ5、6と回入側、回出側両サイドブリッジ7、8とにより四周を囲まれた部分は、径方向に貫通する、平面視略矩形状の開口部となっている。
【0043】
回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8のそれぞれは、凹部28と、第1梁部29及び第2梁部30とを有する。
【0044】
《凹部》
凹部28は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の周方向中間部に備えられている。凹部28は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の外表面に開口している。本例では、凹部28は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の外周面(径方向外側面)及び軸方向内側面のそれぞれに開口している。凹部28の軸方向内側の開口部は、図2に示すように、略角丸三角形状を有している。凹部28の径方向外側の開口部は、図1に示すように、略長円形状を有している。
【0045】
凹部28は、軸方向に伸長した凹溝であり、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の軸方向内側の半部に備えられている。
【0046】
凹部28は、軸方向外側の端部に軸方向底部31を有し、周方向両側に周方向壁部32a、32bを有し、径方向内側の端部に径方向底部33を有する。
【0047】
軸方向底部31は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の軸方向中間部に位置している。本例では、回入側サイドブリッジ7に備えられた凹部28の軸方向底部31は、アウタボディ6の軸方向内側面とほぼ同じ軸方向位置に配置されている。回出側サイドブリッジ8に備えられた凹部28の軸方向底部31は、回入側サイドブリッジ7に備えられた凹部28の軸方向底部31よりも軸方向内側に位置している。つまり、回入側サイドブリッジ7に備えられた凹部28の軸方向長さは、回出側サイドブリッジ8に備えられた凹部28の軸方向長さよりも長くなっている。この理由は、キャリパ2には、回入側部分よりも回出側部分でより高い剛性が求められるとともに、キャリパ2の回入側部分と回出側部分とで変形パターンが異なるからである。
【0048】
周方向外側に配置された周方向壁部32aは、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の周方向外側面と略平行に配置されている。これに対し、周方向内側に配置された周方向壁部32bは、取付ボス部11a、11bの中心軸O11に対して、径方向内側に向かうほど周方向外側に向かう方向にわずかに傾斜している。
【0049】
径方向底部33は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の径方向中間部に位置している。本例では、径方向底部33は、インナシリンダ部10a、10bの中心軸O10a、O10bよりも少しだけ径方向外側に位置している。径方向底部33は、周方向壁部32a、32bの径方向内側の端部同士を周方向に滑らかに接続している。
【0050】
凹部28の内面を構成する軸方向底部31と、周方向壁部32a、32bと、径方向底部33とは、相互に滑らかに接続されている。つまり、凹部28の内面は、滑らかな凹曲面である。ただし、本発明を実施する場合には、凹部の内面を、平坦面を含んで構成しても良い。
【0051】
凹部28の軸方向寸法は、凹部28の周方向寸法よりも大きく、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の軸方向寸法のおよそ1/2である。凹部28の径方向寸法(深さ)は、凹部28が備えられた部分における回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の径方向寸法の1/2よりも大きい。このため、凹部28は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の径方向外側部から径方向中間部にわたる範囲に備えられている。これにより、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8は、周方向中間部のうち径方向外側部から径方向中間部にわたる範囲が、中空状に構成されている。
【0052】
図1に示すように、凹部28の中心軸O28は、インナシリンダ部10a、10bの中心軸O10a、O10bと略平行に配置されている。ただし、本発明を実施する場合には、凹部の中心軸を、インナシリンダ部の中心軸に対して、軸方向外側に向かうほど周方向内側に向かう方向に傾斜させることもできる。この場合には、凹部の中心軸を、インナシリンダ部の中心軸に対して、軸方向外側に向かうほど周方向内側に向かう方向に、0°よりも大きく30°以下傾斜させることができる。これにより、凹部を挟むように配置される第1梁部及び第2梁部を、アウタシリンダ部に近づくように伸長させることができる。
【0053】
《第1梁部及び第2梁部》
第1梁部29及び第2梁部30は、それぞれが軸方向に伸長し、凹部28を挟むように配置されている。本例では、第1梁部29及び第2梁部30は、凹部28を挟んで周方向に配置されている。具体的には、第1梁部29は、凹部28の周方向外側に配置されており、第2梁部30は、凹部28の周方向内側に配置されている。第1梁部29及び第2梁部30は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の軸方向内側の半部のうち、径方向外側部から径方向中間部にわたる範囲に備えられている。
【0054】
《第1梁部》
第1梁部29は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の周方向外側の端部に備えられている。第1梁部29の周方向内側面は、凹部28の周方向壁部32aであり、第1梁部29の周方向外側面は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の周方向外側面を構成する平坦面である。第1梁部29の径方向外側面は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の外周面を構成する凸曲面である。
【0055】
第1梁部29の軸方向内側の端部は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8のうち、取付ボス部11a、11bの周方向外側部の近傍に位置し、かつ、取付ボス部11a、11bの周方向外側部に接続された、ボス接続部34に対し接続されている。したがって本例では、第1梁部29の軸方向内側の端部は、ボス接続部34を介して、取付ボス部11a、11bに接続されている。これに対し、第1梁部29の軸方向外側の端部は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8のうち軸方向外側の半部を構成する部分に接続されている。
【0056】
ボス接続部34は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の軸方向内側部を構成しており、ロータ4よりも軸方向内側に配置されている。
【0057】
第1梁部29の外表面を構成する径方向外側面と周方向外側面との間の稜線R29は、軸方向内側に向かうほど径方向内側かつ周方向内側に向かう方向に湾曲しており、ボス接続部34の周方向外側の稜線R34に対して滑らかに接続されている。ボス接続部34の周方向外側の稜線R34は、径方向内側に向かうほど周方向内側に向かう方向に伸長しており、取付ボス部11a、11bの径方向内側の端部に接続されている。したがって本例では、第1梁部29の稜線R29は、ボス接続部34の稜線R34を介して、取付ボス部11a、11bの径方向内側の端部に接続されている。具体的には、第1梁部29の稜線R29は、ボス接続部34の稜線R34を介して、取付ボス部11a、11bの外周側面のうち、径方向内側の端部の周方向外側部分に接続されている。
【0058】
第1梁部29の円周方向幅は、軸方向にわたりほぼ一定である。第1梁部29の径方向外側面は、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に湾曲した凸曲面であるため、第1梁部29の径方向幅は、軸方向外側に向かうほど大きくなる。このため、ロータ4の中心軸に直交する仮想平面に関する第1梁部29の断面積は、軸方向外側に向かうほど大きくなる。
【0059】
《第2梁部》
第2梁部30は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の周方向中間部に備えられている。第2梁部30は、第1梁部29よりも周方向内側に配置されている。第2梁部30の周方向外側面は、凹部28の周方向壁部32bであり、第2梁部30の周方向内側面は、軸方向外側に向かうほど周方向内側に向かう方向に伸長した平坦面状の段差面35を有する。第2梁部30の径方向外側面は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の外周面を構成する凸曲面である。第2梁部30の軸方向内側の端面は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の軸方向内側面を構成している。
【0060】
第2梁部30の軸方向内側の端部は、取付ボス部11a、11bの径方向外側の端部に対して直接接続されている。具体的には、第2梁部30の軸方向内側の端部は、取付ボス部11a、11bの外周側面のうち、径方向外側の端部の周方向外側部分に接続されている。これに対し、第2梁部30の軸方向外側の端部は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8のうち軸方向外側の半部を構成する部分に接続されている。
【0061】
第2梁部30の周方向内側面を構成する段差面35は、インナシリンダ部10a、10bの中心軸O10a、O10bに対して、軸方向外側に向かうほど周方向内側に向かう方向に傾斜している。このため、第2梁部30の円周方向幅は、軸方向外側に向かうほど大きくなる。また、第2梁部30の径方向外側面は、軸方向外側に向かうほど径方向外側に向かう方向に湾曲した凸曲面であるため、第2梁部30の径方向幅も、軸方向外側に向かうほど大きくなる。したがって、ロータ4の中心軸に直交する仮想平面に関する第2梁部30の断面積は、軸方向外側に向かうほど大きくなる。
【0062】
回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8は、図7及び図8に示すように、凹部28の開口部に、軸方向張出部36、周方向内側張出部37及び周方向外側張出部38をさらに備える。
【0063】
軸方向張出部36は、図7に示すように、凹部28の開口部のうちの軸方向外側部に備えられており、凹部28の開口面積を小さくする方向、すなわち軸方向内側に向けて張り出している。すなわち、軸方向張出部36は、凹部28の軸方向底部31の径方向外側の端部に沿って備えられている。軸方向張出部36の軸方向の張出量は、凹部28の軸方向寸法の5%~30%程度の大きさである。軸方向張出部36の径方向厚さは、凹部28の径方向深さの10%~50%程度である。
【0064】
周方向内側張出部37は、図8に示すように、凹部28の開口部のうちの周方向内側部に備えられており、凹部28の開口面積を小さくする方向、すなわち周方向外側に向けて張り出している。すなわち、周方向内側張出部37は、第2梁部30の周方向外側面(凹部28の周方向壁部32b)の径方向外側の端部に沿って備えられている。周方向内側張出部37の周方向の張出量は、軸方向張出部36の張出量よりも小さく、かつ、凹部28の周方向寸法の10%~35%程度の大きさである。周方向内側張出部37の径方向厚さは、軸方向張出部36の径方向厚さとほぼ同じである。
【0065】
周方向外側張出部38は、図8に示すように、凹部28の開口部のうちの周方向外側部に備えられており、凹部28の開口面積を小さくする方向、すなわち周方向内側に向けて張り出している。すなわち、周方向外側張出部38は、第1梁部29の周方向内側面(凹部28の周方向壁部32a)の径方向外側の端部に沿って備えられている。周方向外側張出部38の周方向の張出量は、周方向内側張出部37の張出量とほぼ同じか、又は周方向内側張出部37の張出量よりも大きく、凹部28の周方向寸法の10%~45%程度の大きさである。周方向外側張出部38の径方向厚さは、軸方向張出部36及び周方向内側張出部37の径方向厚さとほぼ同じである。
【0066】
軸方向張出部36の周方向両側の端部と、周方向内側張出部37の軸方向内側の端部及び周方向外側張出部38の軸方向内側の端部とは、相互に滑らかに接続されている。
【0067】
本例では、凹部28の開口部に、軸方向張出部36、周方向内側張出部37及び周方向外側張出部38を備えているため、これら軸方向張出部36、周方向内側張出部37及び周方向外側張出部38を備えない場合に比べて、凹部28の開口部(開口面積)が小さくなっている。
【0068】
センターブリッジ9は、ロータ4の外周縁よりも径方向外側に配置されている。センターブリッジ9は、周方向に関して回入側サイドブリッジ7と回出側サイドブリッジ8との間部分に配置されており、インナ、アウタ両ボディ5、6の周方向中間部同士を軸方向に連結している。センターブリッジ9は、軸方向両側部が二股形状を有している。センターブリッジ9の軸方向内側の端部は、1対のインナシリンダ部10a、10bの径方向外側部に接続されている。センターブリッジ9の軸方向外側の端部は、1対のアウタシリンダ部21a、21bの径方向外側部に接続されている。
【0069】
1対のパッド3のそれぞれは、ライニング(摩擦材)39と、ライニング39の裏面を支持した金属製の裏板(プレッシャプレート)40とから構成されている。
【0070】
本例では、ロータ4の軸方向内側に配置されたパッド3(インナパッド)を、1対のインナ側パッド支持部19同士の間に配置するとともに、該パッド3を構成する裏板40の径方向内側部の周方向両外側の端部を、1対のインナ側係合凸部20に対し軸方向の移動を可能に係合させている。これにより、該パッド3を、インナボディ5に対して軸方向に移動可能に支持する。
【0071】
また、ロータ4の軸方向外側に配置されたパッド3(アウタパッド)を、1対のアウタ側パッド支持部26同士の間に配置するとともに、該パッド3を構成する裏板40の径方向内側部の周方向両外側の端部を、1対のアウタ側係合凸部27に対し軸方向の移動を可能に係合させている。これにより、該パッド3を、アウタボディ6に対して軸方向に移動可能に支持する。
【0072】
なお、図示は省略するが、1対のパッド3のそれぞれを構成する裏板40の周方向両外側面と、インナ側パッド支持部19及びアウタ側パッド支持部26のそれぞれの周方向内側面との間に、パッドクリップを介在させることもできる。
【0073】
以上のような本例の対向ピストン型ディスクブレーキ装置1の場合にも、制動時には、インナシリンダ部10a、10b及びアウタシリンダ部21a、21bのそれぞれに、マスターシリンダからブレーキオイルが送り込まれる。これにより、インナシリンダ部10a、10bのそれぞれに嵌装したインナピストンを軸方向に押し出し、インナボディ5に支持したパッド3を、ロータ4の軸方向内側面に押し付ける。同様に、アウタシリンダ部21a、21bのそれぞれに嵌装したアウタピストンを軸方向に押し出し、アウタボディ6に支持したパッド3を、ロータ4の軸方向外側面に押し付ける。この結果、ロータ4が、1対のパッド3により軸方向両側から強く挟持され、車両の制動が行われる。
【0074】
特に本例の場合には、対向ピストン型ディスクブレーキ装置1を構成するラジアルマウント式のキャリパ2に関して、剛性の確保と軽量化との両立を図れる。
【0075】
本例のキャリパ2は、インナボディ5に備えられた取付ボス部11a、11bがナックルに対して結合固定される。このため、キャリパ2は、制動時に、アウタボディ6がインナボディ5から軸方向に離れるように弾性変形する傾向になる。キャリパ2がこのように弾性変形する際、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8には、軸方向の引っ張り力が径方向内側部に作用するのに対し、軸方向の圧縮力が径方向外側部に作用する傾向になる。
【0076】
本例では、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8のそれぞれに、凹部28を形成することで、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8のうちで、制動時に軸方向の引っ張り力及び軸方向の圧縮力のいずれも作用しにくい径方向中間部を、中空状に構成している(除肉している)。このため、本例のキャリパ2によれば、剛性の低下を抑制しつつ、軽量化を図ることができる。
【0077】
別の言い方をすれば、凹部28は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8のそれぞれを径方向に貫通する貫通孔ではなく、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の径方向中間部に、径方向底部33を備えている。このため、凹部28を設けたことにより、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の軸方向の引っ張り剛性を低下させずに済む。したがって、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の軸方向の引っ張り剛性を低下させずに、軽量化を図ることができる。
【0078】
また、凹部28は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8のそれぞれを軸方向に貫通する貫通孔ではなく、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の軸方向中間部に、軸方向底部31を備えている。このため、凹部28を設けたことにより、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の軸方向外側部の剛性を低下させずに済む。
【0079】
凹部28は、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の外表面に開口しており、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の径方向外側部にも形成されている。このため、凹部28を設けることは、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の軸方向の圧縮力に対する剛性を確保する面では不利になる。ただし、本例では、凹部28を両側から挟むように第1梁部29及び第2梁部30を設け、第1梁部29の軸方向内側の端部を、ボス接続部34を介して取付ボス部11a、11bに接続し、かつ、第2梁部30の軸方向内側の端部を、取付ボス部11a、11bに対して直接接続している。
【0080】
取付ボス部11a、11bはナックルに結合固定される部分であり、キャリパ2のその他の部分に比べて、制動時に弾性変形しにくい部分である。このため、第1梁部29の軸方向内側の端部及び第2梁部30の軸方向内側の端部が、制動時に軸方向に変位することを抑制できる。したがって、本例のキャリパ2によれば、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8に作用する軸方向の圧縮力を、第1梁部29及び第2梁部30により効果的に支承できるため、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の軸方向の剛性を十分に確保できる。この結果、本例のキャリパ2によれば、剛性の確保と軽量化との両立を図ることができる。
【0081】
そして、本例のキャリパ2によれば、制動時における弾性変形を抑制できるため、対向ピストン型ディスクブレーキ装置1により、所期の制動力を得ることができる。
【0082】
また、第1梁部29の稜線R29を、ボス接続部34の稜線R34を介して、取付ボス部11a、11bの径方向内側の端部に接続し、第2梁部30の軸方向内側の端部を、取付ボス部11a、11bの径方向外側の端部に直接接続している。取付ボス部11a、11bの径方向内側の端部及び径方向外側の端部は、ボルト挿通孔14a、14bを挿通したボルトの頭部とナックル(又はアダプタ)との間で径方向に挟持される部分であり、取付ボス部11a、11bの中でも制動時に弾性変形しにくい部分である。このため、第1梁部29の軸方向内側の端部及び第2梁部30の軸方向内側の端部が、制動時に軸方向に変位することを効果的に抑制できる。したがって、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の軸方向の剛性を十分に確保できる。
【0083】
また、第1梁部29及び第2梁部30のそれぞれの断面積を、軸方向外側に向かうほど大きくしている。このため、第1梁部29及び第2梁部30の断面二次モーメントを、第1梁部29及び第2梁部30の軸方向外側部ほど大きくできるため、第1梁部29及び第2梁部30の弾性変形量(たわみ量)を小さくできる。したがって、制動時における、キャリパ2の弾性変形を抑制できる。
【0084】
また、凹部28の開口部の周方向内側部に周方向内側張出部37を設け、かつ、凹部28の開口部の周方向外側部に周方向外側張出部38を設けている。周方向内側張出部37及び周方向外側張出部38は、第1梁部29及び第2梁部30の一部分と考えることができるため、第1梁部29及び第2梁部30のそれぞれの径方向外側の端部における断面積を大きくできる。このため、周方向内側張出部37及び周方向外側張出部38を設けない場合に比べて、第1梁部29及び第2梁部30の断面二次モーメントを大きくすることができ、第1梁部29及び第2梁部30の弾性変形量を小さくできる。
【0085】
また、凹部28の開口部の軸方向内側部に、軸方向張出部36を設けている。これにより、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の軸方向外側部の周方向の剛性を高めることができる。したがって、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8の軸方向外側部が、周方向に変形するのを抑制できる。また、軸方向張出部36の周方向両側の端部を、周方向内側張出部37の軸方向内側の端部及び周方向外側張出部38の軸方向内側の端部にそれぞれ接続している。このため、回入側サイドブリッジ7及び回出側サイドブリッジ8に作用する軸方向の圧縮力を、軸方向張出部36を通じて、第1梁部29及び第2梁部30に分けて支承させることもできる。
【0086】
さらに本例では、インナボディ5の軸方向内側面の周方向両外側部に2本ずつ配置されたサイドリブ15a、15b、16a、16bにより、取付ボス部11a、11bとインナシリンダ部10a、10bの軸方向内側部とを、周方向に連結している。このため、インナシリンダ部10a、10bの底部13a、13bの軸方向に関する剛性を向上することができる。したがって、制動時に、インナシリンダ部10a、10bの底部13a、13bが、軸方向内側に弾性変形するのを抑制でき、インナボディ5とアウタボディ6とが、軸方向に互いに離れる方向に弾性変形するのを抑制できる。また、インナボディ5の周方向に関する剛性を向上することもできるため、制動時に、アウタボディ6がインナボディ5に対して、周方向(ロータ4の回転方向)に変位するように弾性変形するのを抑制でき、振動や騒音を抑制することもできる。
【0087】
また、センタリブ17により、インナシリンダ部10a、10bのそれぞれの底部13a、13bを軸方向内側から覆っている。このため、インナボディ5の軸方向及び周方向の剛性を向上することができる。特に、センタリブ17は、インナシリンダ部10a、10bの底部13a、13bの径方向中間部を、周方向に横切るように軸方向内側から覆っているため、制動時に、インナシリンダ部10a、10bの底部13a、13bが、軸方向内側に弾性変形するのを有効に抑制できる。
【0088】
さらに、1対のサイドリブ15a、15bを互いに非平行に配置するとともに、1対のサイドリブ16a、16bを互いに非平行に配置し、サイドリブ15a、15b、16a、16bのそれぞれをインナシリンダ部10a、10bの中心軸O10a、O10bに近づく方向に伸長させている。このため、インナボディ5のねじれ剛性を向上することができる。
【0089】
また、サイドリブ15a、16aのそれぞれの周方向外側の端部を、取付ボス部11a、11bの径方向外側の端部に連結するとともに、サイドリブ15b、16bのそれぞれの周方向外側の端部を、取付ボス部11a、11bの径方向内側の端部に連結している。このため、サイドリブ15a、15b、16a、16bの剛性の向上を図れる。したがって、インナボディ5の剛性を向上する面で有利になる。
【0090】
さらに、アウタボディ6の軸方向外側面に備えられたメインリブ25により、アウタシリンダ部21a、21bのそれぞれの底部23a、23bの径方向中間部を、周方向に横切るように軸方向外側から覆っているため、制動時に、アウタシリンダ部21a、21bの底部23a、23bが、軸方向外側に弾性変形するのを有効に抑制できる。また、補助リブ24により、回出側サイドブリッジ8とアウタシリンダ部21bとを周方向に連結しているため、アウタシリンダ部21bの軸方向に関する剛性を向上することができる。
【0091】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0092】
実施の形態では、回入側サイドブリッジと回出側サイドブリッジのそれぞれに、凹部と第1梁部及び第2梁部とを備える場合について説明したが、本発明を実施する場合には、回入側サイドブリッジと回出側サイドブリッジとのいずれか一方に、凹部と第1梁部及び第2梁部とを備えることができる。
【0093】
また、実施の形態では、凹部を、サイドブリッジの外周面及び軸方向内側面に開口させた場合について説明したが、本発明を実施する場合には、凹部の開口位置は特に限定されない。たとえば、凹部を、サイドブリッジの外周面又は周方向外側面にのみ開口させることもできるし、サイドブリッジの外周面及び周方向外側面に開口させることもできる。凹部を、サイドブリッジの周方向外側面にのみ開口させた場合には、第1梁部と第2梁部とは、凹部を挟んで径方向に配置される。
【0094】
また、実施の形態では、第1梁部の軸方向内側の端部を、取付ボス部の径方向内側の端部に対してボス接続部を介して接続した場合について説明したが、本発明を実施する場合には、第1梁部の軸方向内側の端部を、取付ボス部の径方向内側の端部に対して直接接続することもできる。
【0095】
実施の形態では、凹部の開口部に、軸方向張出部、周方向内側張出部及び周方向外側張出部をそれぞれ設けた場合について説明した。ただし、本発明を実施する場合には、軸方向張出部、周方向内側張出部及び周方向外側張出部は省略することもできる。また、軸方向張出部、周方向内側張出部及び周方向外側張出部を、いずれか1つ又は2つ備えることもできる。
【0096】
本発明を実施する場合に、対向ピストン型ディスクブレーキ用キャリパは、たとえばアルミニウム合金などの材料により一体的に構成されたモノコック構造(一体構造)としても良いし、インナ側の部材とアウタ側の部材とをボルトにより連結した構造としても良い。また、インナシリンダ部及びアウタシリンダ部の数は、実施の形態で説明した2個に限定されず、1個でも良いし、3個以上としても良い。
【符号の説明】
【0097】
1 対向ピストン型ディスクブレーキ装置
2 キャリパ
3 パッド
4 ロータ
5 インナボディ
6 アウタボディ
7 回入側サイドブリッジ
8 回出側サイドブリッジ
9 センターブリッジ
10a、10b インナシリンダ部
11a、11b 取付ボス部
12a、12b 筒部
13a、13b 底部
14a、14b ボルト挿通孔
15a、15b サイドリブ
16a、16b サイドリブ
17 センタリブ
18a、18b 除肉部
19 インナ側パッド支持部
20 インナ側係合凸部
21a、21b アウタシリンダ部
22a、22b 筒部
23a、23b 底部
24 補助リブ
25 メインリブ
26 アウタ側パッド支持部
27 アウタ側係合凸部
28 凹部
29 第1梁部
30 第2梁部
31 軸方向底部
32a、32b 周方向壁部
33 径方向底部
34 ボス接続部
35 段差面
36 軸方向張出部
37 周方向内側張出部
38 周方向外側張出部
39 ライニング
40 裏板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11