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特開2022-168697電子線硬化型印刷インキ組成物及び電子線硬化型印刷インキ組成物を印刷して得られた印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168697
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】電子線硬化型印刷インキ組成物及び電子線硬化型印刷インキ組成物を印刷して得られた印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20221031BHJP
【FI】
C09D11/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074342
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】臣 直毅
(72)【発明者】
【氏名】西本 安衣香
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AC01
4J039AD09
4J039AE06
4J039AE11
4J039BB01
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE16
4J039BE22
4J039BE27
4J039BE28
4J039CA01
4J039EA08
4J039EA36
4J039EA37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来の重合開始剤を含有しなくても、印刷後に、接着性、耐スクラッチ性及び耐熱性等の特性を十分に兼ね備える、電子線硬化型印刷インキ組成物を提供する。
【解決手段】顔料、硬化性樹脂、下記一般式の化合物、ジメチルポリシロキサンを含む。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、硬化性樹脂 、一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物、ジメチルポリシロキサンを含み、組成物全体に対して、一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物を合計で1.0~80.0質量%、ジメチルポリシロキサンを0.01~10.0質量%含有する電子線硬化型印刷インキ組成物。

一般式(1)
Rはそれぞれ独立して、-CH2-CH2-O-又は -CH2-CH(CH3)-O-
l+m+n=3~21
一般式(2)
Rは、-CH2-CH(CH3)-O-
l+m+n=3~21
【請求項2】
硬化性樹脂としてポリエステルアクリレートオリゴマーを含む請求項1に記載の電子線硬化型印刷インキ組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子線硬化型印刷インキ組成物を印刷して得られた印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線硬化型印刷インキ組成物及び電子線硬化型印刷インキ組成物を印刷して得られた印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境保全を目標として、様々な業界や業種で環境負荷低減活動が展開されており、かつ各種の観点から環境負荷低減を促す活動が行われている。例えば、塗料やインキ等に含まれている揮発性有機化合物(VOC)は、地球温暖化に繋がる化学物質であることから、VOC使用の自主規制・削減による環境負荷低減活動が行われている。
VOC削減の観点から、紫外線や電子線等の活性エネルギー線で硬化する活性エネルギー線硬化型印刷インキ組成物の活用が検討されている。活性エネルギー線硬化型印刷インキ組成物は、活性エネルギー線の照射により重合する重合性化合物と、活性エネルギー線の照射により重合開始機能を発現する重合開始剤等とを含むものである。
活性エネルギー線硬化型組成物は、VOCの使用量を抑制し、ひいてはVOCの大気中への揮発量をゼロ又は少なくすることにより、環境負荷低減を可能とする。さらに、急速に硬化する(速乾性を有している)ことから、省エネルギー化と生産性向上が可能であるため、塗料や印刷インキ用組成物として実際に使用されてきている。
【0003】
印刷業界においては、各種方式で印刷された印刷物は、表面のインキを十分乾燥させないと、印刷物を重ねた際に裏移りしたり、印刷物に触れた指等にインキが付着したりする。その結果、十分に乾燥しないと、後工程に回すことや商品流通させることができない。そのため、印刷直後の印刷物に活性エネルギー線を照射して、印刷物表面のインキを瞬時に硬化(乾燥)できる活性エネルギー線硬化型インキが普及してきている。
このような活性エネルギー線硬化型インキは、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載のように広く知られている。
【0004】
さらに、活性エネルギー線硬化型印刷インキ組成物については、環境負荷低減を目指した各種対応が行われている。例えば、より少ない活性エネルギー線照射量で硬化(乾燥)できる製品の開発や、電力消費が大きく短波長の紫外線によるオゾンの発生を招く高圧水銀灯等から、省電力でオゾンの発生の少ない紫外線LEDランプや低出力紫外線ランプへの置換え等の対応が行われている。
【0005】
また、インキ組成物として、重合開始剤の使用量を削減することが好ましい場合があるが、上記のように活性エネルギー線硬化型印刷インキ組成物には、ラジカルを極めて発生しやすい性質を備えた重合開始剤を含有させることが行われている。
例えば、特許文献1に記載されるように、紫外線硬化型インクジェット用インク組成物には、光重合開始剤を配合させることは必須であり、任意成分として未変性シリコーンオイルや変性シリコーンオイル等の各種シリコーン系界面活性剤を含む多種の界面活性剤を配合できることは知られている。
また特許文献2に記載されるように、紫外線硬化型インクジェット用インク組成物には、光重合開始剤を配合させることは必須であり、任意成分として未変性シリコーンオイルではない変性シリコーンオイル等の各種シリコーン系界面活性剤を含む多種の界面活性剤を配合できることは知られている。
そしてこのような重合開始剤を含有しない、広範囲の印刷形式、組成及び用途の活性エネルギー線硬化型印刷インキ組成物は、いまだ実用化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-178832号公報
【特許文献2】特開2018-86726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、従来の重合開始剤を含有させなくても、印刷後において、接着性、耐スクラッチ性及び耐熱性等の基本的特性が十分に兼ね備えた電子線硬化型印刷インキ組成物を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、下記の電子線硬化型印刷インキ組成物とすることにより、上記課題を解決しうることを見出し、以下の本発明とするに至った。
1.顔料、硬化性樹脂、一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物、ジメチルポリシロキサンを含み、組成物全体に対して、一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物を合計で1.0~80.0質量%、ジメチルポリシロキサンを0.01~10.0質量%含有する電子線硬化型印刷インキ組成物。
一般式(1)
Rはそれぞれ独立して、-CH2-CH2-O-又は -CH2-CH(CH3)-O-
l+m+n=3~21
一般式(2)
Rは、-CH2-CH(CH3)-O-
l+m+n=3~21
2.硬化性樹脂としてポリエステルアクリレートオリゴマーを含む1に記載の電子線硬化型印刷インキ組成物。
3.1又は2に記載の電子線硬化型印刷インキ組成物を印刷して得られた印刷物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光重合開始剤等の重合開始剤を含有させなくても、接着性、耐スクラッチ性及び耐熱性等の基本的特性を十分に兼ね備えた電子線硬化型印刷インキ組成物を得ることができ、さらにバイオマス由来の原料比率を高めることも可能となる。そして重合開始剤を含有することによる安定性の低下を防止することもできる。
またラミネート用として使用した場合においては、優れたラミネート適性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物は、従来の印刷物の用途と同じ用途に使用される。
本発明における硬化性樹脂はオリゴマー及びポリマーを示す。本明細書における硬化性成分は、オリゴマー及びポリマー加えて、モノマー等のように反応して硬化する成分全体を示す。
本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物は、一般的な印刷インキと同様に、樹脂成分、顔料、添加剤及び必要に応じて溶剤等を含有する。
そして印刷インキとして、印刷方法を問わず実施でき、フレキソ、グラビア、インクジェット等、電子線を照射して硬化するインキ組成物を使用する公知の方式に採用できる。また印刷媒体を限定せずに使用することもできる。
なお、本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物を、単にインキ組成物ということもある。
また、「固形分中」とは硬化する成分が電子線照射により硬化した成分、及び、硬化前において既に固体又は溶解した固形分であるものを合計した固形分中を意味する。
さらに、硬化性樹脂の組成を問わないので、バイオマス由来の原料を積極的に採用できる。
【0011】
[硬化性樹脂]
本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物が含有する硬化性樹脂成分としては、不飽和結合を有し、硬化して樹脂となるオリゴマー及びポリマーから1種以上を使用することができる。
これらの硬化性樹脂は電子線硬化型印刷インキ組成物の固形分中20.0質量%以上が好ましく、30.0質量%以上がより好ましく、40.0質量%以上がさらに好ましい。また同じく固形分中90.0質量%以下が好ましく、85.0質量%以下がより好ましく、80.0質量%以下がさらに好ましい。含有量が20.0質量%未満であると電子線硬化型印刷インキ組成物全体の硬化性が悪化する可能性があり、90.0質量%を超えるとインキ組成物としての取り扱い性に劣る可能性がある。
但し、硬化性樹脂は電子線により発生したラジカルとラジカル重合反応をすることができる樹脂成分であることが必要であり、例えば以下のものを採用できる。
【0012】
(オリゴマー)
オリゴマーは、分子内に有するエチレン性不飽和結合が重合して高分子量化する成分である。もともと比較的高分子量の成分であるので、インキ組成物に適度な粘性や弾性を付与する目的にも用いられる。また、オリゴマーは比較的極性が高く、硬化後のインキ組成物に非吸収性媒体への接着性を付与する効果も期待できる。
硬化性成分全体に対するオリゴマーの含有量は20.0質量%以上が好ましく、30.0質量%以上がより好ましく、35.0質量%以上がさらに好ましい。また、60.0質量%以下が好ましく、55.0質量%以下がより好ましく、50.0質量%以下がさらに好ましい。
このオリゴマーとしては、エポキシ樹脂等といったエポキシ化合物に含まれるエポキシ基を酸や塩基で開環させた後に生じる水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるエポキシ変性(メタ)アクリレート、ロジン変性エポキシアクリレート、二塩基酸とジオールとの縮重合物の末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるポリエステル変性(メタ)アクリレート、ポリエーテル化合物の末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるポリエーテル変性(メタ)アクリレート、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との縮合物における末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるウレタン変性(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
このようなエチレン性不飽和結合を備えたポリマー又はオリゴマーとしては、例えば、ポリジアリルフタレート、ネオペンチルグリコールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ロジン変性エポキシ(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエーテル(メタ)アクリレート、未反応の不飽和基を備えたアクリル系樹脂、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ポリウレタン、アクリル変性フェノール系樹脂、アクリル化アミン化合物のオリゴマー等が挙げられる。
このようなオリゴマーは市販されており、例えば、サートマー社の「CN」、「SR」シリーズ、東亜合成社の「アロニックスM-6000」シリーズ、「7000」シリーズ、「8000」シリーズ、「アロニックスM-1100」、「アロニックスM-1200」、「アロニックスM-1600」、新中村化学工業社の「NKエステル」、「NKオリゴ」、共栄社化学工業社の「ライトアクリレート」、「ライトエステル」、「エポキシエステル」、「ウレタンアクリレート」及び「高機能性オリゴマー」シリーズ、大阪有機化学工業社の「特殊アクリルモノマー」シリーズ、三菱レイヨン社の「アクリエステル」及び「ダイヤビームオリゴマー」シリーズ、日本化薬社の「カヤラッド」及び「カヤマー」シリーズ、日本触媒社の「(メタ)アクリル酸/メタクリル酸エステルモノマー」シリーズ、日本合成化学工業社の「NICHIGO-UV紫光ウレタンアクリレートリゴマー」シリーズ、信越酢酸ビニル社の「カルボン酸ビニルエステルモノマー」シリーズ、興人社の「機能性モノマー」シリーズ、ダイセルオルネクス社の「EBECRYL」、「ACA」、「KRM」、「IRR」、「RDX」及び「OTA」シリーズ、BASF社「Laromer」シリーズ、コグニス社「フォトマー」シリーズ、根上工業社「アートレジン」シリーズ、日油化学社の「ブレンマー」シリーズ、第一工業製薬社の「ニューフロンティア」シリーズ、MIWON社の「Miramer」シリーズ、DSM社の「AgiSyn」シリーズ等の商品名で入手することができる。
【0013】
また環境面を考慮して植物由来のジカルボン酸成分やジオール成分を使用して得たポリエステルポリオールを原料としたポリウレタンオリゴマー及び/又はポリウレタンポリウレアオリゴマーを採用することもできる。
植物油変性多官能ポリエステルアクリレートオリゴマーとしては、アクリレート基を分子内に2~6つ有する植物油変性ポリエステルアクリレートオリゴマーであれば制限なく用いることができる。
このうち、例えば、EBECRYL 450、452、820、1622や、トール油脂肪酸変性6官能ポリエステルアクリレート(例えば、AgiSyn 716等)からなる群より選ばれる1種以上を用いると、電子線硬化型印刷インキ組成物のバイオマス度を高くでき好ましい。
これらのオリゴマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
(ポリマー)
エチレン性不飽和結合を備えた硬化性樹脂としてのポリマーは、上述のモノマーやオリゴマーとともに高分子量化する成分であり、活性エネルギー線が照射される前から大きな分子量を備えているので、インキ組成物の粘弾性の向上に役立つ成分である。このようなポリマーは、例えば、低粘度の液体であるモノマー中に溶解又は分散された状態で用いられる。エチレン性不飽和結合を備えたポリマーとしては、ポリジアリルフタレート、未反応の不飽和基を備えたアクリル樹脂、アクリル変性フェノール樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、ポリジアリルフタレートは、上記モノマーやオリゴマーとの相溶性が特に優れているので好ましく用いることができる。
また、硬化性成分全体に対するエチレン性不飽和結合を備えたポリマーの含有量としては、0~50.0質量%が好ましく、0~30.0質量%がより好ましく、0~20.0質量%がさらに好ましい。ポリマーの含有量が上記の範囲であることにより、版を使用する印刷の場合には、インキ組成物に適度な粘弾性を付与してミスチング等の発生を抑制できるとともに、インキ組成物の良好な硬化性を確保することができるので好ましい。
【0015】
電子線硬化型印刷インキ組成物の固形分中における、不飽和結合を有するオリゴマー及びポリマーから選ばれた1種以上の化合物の合計の含有量は、60.0質量%以上が好ましく、70.0質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましい。また同じく固形分中90.0質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、82質量%以下がさらに好ましい。含有量が60.0質量%未満であると硬化型印刷インキ組成物全体の硬化性が悪化する可能性があり、90.0質量%を超えるとインキ組成物としての取り扱い性、印刷適性及び塗布適性に劣る可能性がある。
【0016】
(一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物)
下記のモノマーとは別に、本発明のインキ組成物においては、トリメチロールプロパントリアクリレートのアルキレンオキシド変性物である一般式(1)で示される化合物、及び/又は、グリセリントリアクリレートのプロピレンオキサイド変性物である一般式(2)で示される化合物を含有する。

一般式(1)
Rはそれぞれ独立して、-CH2-CH2-O-又は -CH2-CH(CH3)-O-
l+m+n=3~21
一般式(1)の中でも、一分子当たり3~21単位のエチレンオキサイドで変性したトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA;3官能)、例えば、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP(EO)3TA、TMP(EO)6TA、TMP(EO)9TA、TMP(EO)12TA、TMP(EO)15TA、TMP(EO)18TA、TMP(EO)21TA等)が好ましい。
また、一般式(1)中のRは全て同じでも良く、異なっていても良い。

一般式(2)
Rは、-CH2-CH(CH3)-O-
l+m+n=3~21
一般式(2)の中でも、例えば、3PO変性グリセリントリアクリレート、6PO変性グリセリントリアクリレート、9PO変性グリセリントリアクリレート、12PO変性グリセリントリアクリレート、15PO変性グリセリントリアクリレート等が好ましい。
本発明のインキ組成物の硬化性成分中において、本発明の効果を毀損しない範囲で上記一般式(1)及び一般式(2)以外の3官能モノマーを含有しても良い。
本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物全体に対する、上記一般式(1)及び/又は一般式(2)に示す化合物の含有量は合計で1.0~80.0質量%である。中でも5.0質量%以上が好ましく、10.0質量%以上がより好ましく、20.0質量%以上がさらに好ましく、30.0質量%以上が最も好ましい。また、70.0質量%以下が好ましく、60.0質量%以下がより好ましく、50.0質量以下がさらに好ましく、40.0質量%以下が最も好ましい。
又は、本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物中の硬化性成分全体に対する、上記一般式(1)及び/又は一般式(2)に示す化合物の含有量は、合計で5.0質量%以上が好ましく、10.0質量%以上がより好ましく、20.0質量%以上がさらに好ましく、30.0質量%以上が最も好ましい。また、80.0質量%以下が好ましく、70.0質量%以下がより好ましく、60.0質量以下がさらに好ましく、55.0質量%以下が最も好ましい。
【0017】
(モノマー)
モノマーは、エチレン性不飽和結合を有し、硬化性成分として重合して高分子量化する成分であるが、重合する前の状態では比較的低分子量の液体成分であることが多い。モノマーは別に配合した樹脂成分を溶解させてワニスとする際の溶媒としたり、インキ組成物の粘度を調節したりする目的にも用いられる。
このようなモノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を1つ備える単官能モノマーや、分子内にエチレン性不飽和結合を2つ以上備える2官能以上のモノマーが挙げられる。2官能以上のモノマーは、インキ組成物が硬化するのに際して分子と分子とを架橋することができるので、硬化速度を速めたり、強固な皮膜を形成させたりするのに寄与する。単官能のモノマーは、上記のような架橋能力を持たない反面、架橋に伴う硬化収縮を低減させるのに寄与する。これらのモノマーは、必要に応じて各種のものを組み合わせて用いることができる。
硬化性成分のうちのモノマーと上記一般式(1)及び/又は一般式(2)の化合物の合計含有量は25.0質量%以上が好ましく、30.0質量%以上がさらに好ましく、33.0質量%以上がより好ましい。また、85.0質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。25.0質量%未満であるとインキ組成物の硬化性が低下する可能性があり、85.0質量%を超えるとインキ組成物としての取り扱い性が低下する可能性がある。
下記の1官能以上のモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する。
【0018】
単官能モノマーとしては、不飽和カルボン酸系化合物、アルキル(メタ)アクリレート系化合物、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物、ハロゲン含有(メタ)アクリレート系化合物、エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物、その他の(メタ)アクリレート系化合物、スチレン系化合物、N-ビニル系化合物、アリレート系化合物、その他のエチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物を使用できる。
硬化性成分中の単官能モノマーの含有量は20.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下がさらに好ましく、又は含有しなくてもよい。
【0019】
-不飽和カルボン酸系化合物-
不飽和カルボン酸系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、それらの塩及びそれらの酸無水物等が挙げられる。
【0020】
-アルキル(メタ)アクリレート系化合物-
アルキル(メタ)アクリレート類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
-ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-エチルヘキシルEO変性(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールEO変性アクリレート、p-クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール変性(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0022】
-ハロゲン含有(メタ)アクリレート系化合物-
ハロゲン含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、2,6-ジブロモ-4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノール3EO(エチレンオキサイド)付加(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
-エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、1,3-ブチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、クレジルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)エチル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(EO繰返し単位数400、700等)、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アルコキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート(エトキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等)、アルコキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート(エトキシ化(4)ノニルフェノールアクリレート等)、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、エトキシ化コハク酸(メタ)アクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート、等のアルコキシ系及び又はフェノキシ系(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0024】
-カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート等が挙げられる。
【0025】
-ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1-ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸-2-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1,1-ジメチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-5-ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸-6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-m-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-o-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル等が挙げられる。
【0026】
-その他の(メタ)アクリレート系化合物-
その他の(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、ジフェニル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、カプロラクトン変性-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシ-1-(メタ)アクリロキシ-3-メタクリロキシプロパン、アクリオロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトールアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロライド4級塩、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、クレゾール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、1-(メタ)アクリロイルピペリジン-2-オン、2-(メタ)アクリル酸-1,4-ジオキサスピロ[4,5]デシ-2-イルメチル、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、イミドアクリレート、(メタ)アクリル酸ビニル、マレイミド等が挙げられる。
【0027】
-スチレン系化合物-
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、p-ヒドロキシスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-t-ブトキシスチレン、p-t-ブトキシカルボニルスチレン、p-t-ブトキシカルボニルオキシスチレン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0028】
-N-ビニル系化合物-
N-ビニル系化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニルカルバゾール、ビニルメチルオキサゾリジノン等が挙げられる。
【0029】
-アリレート系化合物-
アリレート系化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、イソシアヌル酸トリアリレート等が挙げられる。
【0030】
-その他のエチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物-
エチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物として、前記化合物以外の「その他のエチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物」を用いることができる。
そのような化合物としては、例えば、酢酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバル酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、三員環化合物類(例えば、ビニルシクロプロパン類、1-フェニル-2-ビニルシクロプロパン類、2-フェニル-3-ビニルオキシラン類、2,3-ジビニルオキシラン類等)、環状ケテンアセタール類(例えば、2-メチレン-1,3-ジオキセパン、ポジオキソラン類、2-メチレン-4-フェニル-1,3-ジオキセパン、4,7-ジメチル-2-メチレン-1,3-ジオキセパン、5,6-ベンゾ-2-メチレン-1,3-ジオセパン等)等が挙げられる。
【0031】
2官能以上のモノマー(エチレン性不飽和結合を2つ以上備えた化合物)としては、公知のエチレン性不飽和結合を2つ以上備えた例えば下記の化合物を用いることができる。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ルジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ルジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート等、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン及びジペンタエリスリトール等の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート等の2官能モノマー;
【0032】
グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー;
トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタ(メタ)アクリレート等の4官能以上のモノマー;等を挙げることができる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA;3官能)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DITMPTA;4官能)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA;6官能)、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA;2官能)等を好ましく挙げることができる。
【0033】
[ジメチルポリシロキサン]
本発明にて使用するジメチルポリシロキサンは、未変性のものであり、化学的に極めて安定とされ、高温下にて酸化される性質を有する。
未変性ジメチルポリシロキサンは、ジメチルシロキサンからなる単位が重合してなる構造を有する。そのような未変性ジメチルポリシロキサンは下記の式で示される構造を有する。下記の一般式(3)においてnの値により分子量が異なるが、官能基を有しない構造であれば、nの値によらず本発明において使用できる。
また下記の式に示す直鎖状でも良く、好ましくは下記の式におけるnが3~30、より好ましくはnが4~20である。
さらに、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状のジメチルポリシロキサンでも良い。
本発明のインキ組成物全体に対するジメチルポリシロキサンの含有量は、0.01~10.0質量%である。さらに0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。また5.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましい。
0.01質量%未満の含有量であるときには、レトルト試験の前後共に十分な耐スクラッチ性を有さず、耐熱性も不十分である。
10.0質量%を超えて含有した場合には、印字されたインキ組成物にジメチルポリシロキサンが分離して存在する可能性があり、この表面のジメチルポリシロキサンはインキ組成物の硬化に寄与しない。そして分離したジメチルシロキサンが硬化前後において塗膜表面から剥がれたり、接触する別の物品を汚したりする可能性がある。
一般式(3)
上記未変性のジメチルポリシロキサンではない、水酸基、アミノ基、(ポリ)エーテル基、エポキシ基、カルボキシ基、カルビノール基、メルカプト基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基、ハロゲン原子アラルキル基、アラルキル基、長鎖アルキル基、高級脂肪酸エステル変性、高級脂肪族アミド基等により置換された構造を有する変性ポリシロキサンは、本発明における未変性ジメチルポリシロキサンとは異なり、電子線を照射されて重合性モノマー等と共に硬化する作用を有しない。
しかしながら、これら変性ポリシロキサンは、本発明による効果を毀損しない範囲において添加することができる。
【0034】
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射を受けてラジカルを発生させる成分であり、生じたラジカルが上記エチレン性不飽和結合を備えた化合物を重合させ、インキ組成物を硬化させる。本発明のインキ組成物は、光重合開始剤を含有しなくても、電子線を照射されることにより重合して硬化する。
但し、光重合開始剤を含有させる場合には、電子線が照射された際にラジカルを生じる例えば下記のものであれば特に限定されない。
アシルフォスフィンオキサイド系化合物、トリアジン系化合物、芳香族ケトン系化合物、芳香族オニウム塩系化合物、有機過酸化物、チオキサントン系化合物、チオフェニル系化合物、アントラセン系化合物、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、ケトオキシムエステル系化合物、ボレート系化合物、アジニウム系化合物、メタロセン系化合物、活性エステル系化合物、ハロゲン化炭化水素系化合物及びアルキルアミン系化合物、ヨードニウム塩系及びスルフォニウム塩系等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
【0035】
具体的には、光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス-2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンジル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等が挙げられる。このような光重合開始剤は市販されており、例えばIGM Resins B.V.社からOmnirad907、Omnirad369、Omnirad184、Omnirad379、Omnirad819、Omnirad TPO等の商品名で、Lamberti社からDETX等の商品名で入手することができる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
インキ組成物中に光重合開始剤を含有させる場合の含有量としては、ジメチルポリシロキサンを添加したことによる効果を毀損しない範囲であることが必要であり、さらに、本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物の硬化性に影響を与えるほどに、光重合開始剤を含有させないことが好ましく、含有させなくても良い。
【0037】
[顔料]
本発明のインキ組成物は顔料を含有する。顔料は、インキ組成物に着色力や隠蔽力等を付与するために添加される成分であり、例えば着色顔料、白色顔料、金属パウダー等が挙げられる。このような顔料としては、従来からインキ組成物に使用されている例えば下記の有機及び/又は無機顔料を特に制限無く挙げることができる。
【0038】
顔料としては、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料及び各種無機顔料等が挙げられる。
これらの顔料の中でもジスアゾイエロー(ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー1)、ハンザイエロー等のイエロー顔料、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウオッチングレッド等のマゼンタ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー等のシアン顔料、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、鉄黒、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料(白色、黒色等の無彩色の着色顔料も含める)アルミニウムペースト、ブロンズパウダー等の金属パウダー等が例示される。
【0039】
顔料の含有量としては、目的とする着色の程度に応じて、インキ組成物の全体に対して8~30質量%程度が例示されるが、特に限定されない。なお、着色されたインキ組成物を調製する場合、補色として他の色の顔料や染料を併用したり、他の色のインキ組成物を添加したりすることも可能である。
【0040】
(顔料分散剤・顔料分散用樹脂)
本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物が着色剤として顔料を採用するとき、顔料分散剤及び/又は顔料分散用樹脂を配合してもよい。
顔料分散剤としては、公知のノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
界面活性剤としては、例えば、シリコン系界面活性剤(例えば、ポリエーテル変性シリコンオイル、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン等)、フッ素系界面活性剤、オキシアルキレンエーテル系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、リン系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
また、顔料分散用樹脂として、高分子分散剤(例えば、カルボジイミド系、ポリエステル系、ポリアミン系、ポリエステルアミン系、ポリウレタン系、脂肪酸アミン系分散剤、ポリアクリレート系、ポリカプロラクトン系、ポリシロキサン系、多鎖型高分子非イオン系、高分子イオン系の分散剤等)等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物が顔料分散剤や顔料分散用樹脂を含む場合には、使用する顔料の合計量を100質量%としたときに、1~200質量%含有することが好ましい。
【0041】
[その他の成分]
本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物には、上記の各成分に加えて、必要に応じて他の成分を添加することができるが、含有させなくても良い。また、印刷方法及び塗布方法に合わせて必要な成分を添加することもできる。このような成分としては、体質顔料、非硬化性樹脂成分、重合禁止剤、リン酸塩等の塩類、PTFE、ポリエチレン系ワックス・オレフィン系ワックス・フィッシャートロプシュワックス等のワックス類、消泡剤、アルコール類、植物油や鉱物油等の油成分等が挙げられる。
【0042】
体質顔料は、インキ組成物に適度な印刷適性や粘弾性等の特性を付与するための成分であり、特にインキ組成物の調製において通常用いられる各種のものを用いることができる。このような体質顔料としては、クレー、カオリナイト(カオリン)、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化ケイ素(シリカ)、ベントナイト、タルク、マイカ、酸化チタン等が例示される。こうした体質顔料の添加量としては、インキ組成物全体に対して0~33質量%程度が例示されるが、特に限定されない。
【0043】
非硬化性樹脂成分は、本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物に適度な印刷適性や粘弾性等の特性を付与するのに寄与する成分であり、重合に寄与する不飽和結合を有しない。 このような樹脂成分としては、従来から印刷用インキ組成物の用途に用いられてきた各種の樹脂を挙げることができる。
上記モノマーやオリゴマーとの相溶性を有するものであることが好ましく、スチレン-アクリル樹脂、アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、ロジン変性石油樹脂、ロジンエステル樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、ブロックポリマー、グラフトポリマー(コアシェルポリマー)、アクリル変性フェノール樹脂、石油樹脂変性フェノール樹脂、植物油変性アルキド樹脂、脂肪酸変性ロジン樹脂、石油樹脂変性フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂、炭化水素樹脂(ポリブテン及びポリブタジエン等)、フッ素樹脂(テトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂ワックス等)等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。特に好ましくは、スチレン-アクリル樹脂、アルキド樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、ロジンエステル樹脂、脂肪酸変性ロジン樹脂、植物油変性アルキド樹脂、テルペンフェノール樹脂からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。中でもロジン変性マレイン酸樹脂やテルペンフェノール樹脂が接着性の点から好ましい。
このような樹脂としては、重量平均分子量は500~300,000のものが好ましい。また、活性エネルギー線を照射した際の速乾性の観点等から、酸価が1~100mgKOH/gであることが好ましい。
【0044】
スチレン-アクリル樹脂は、スチレンとアクリル酸エステルとの共重合体であり、市販のものを各種用いることができる。スチレン-アクリル樹脂を用いる場合、固形であるスチレン-アクリル樹脂を上記モノマーに溶解させてワニスとし、それをインキ組成物の調製の際に添加して用いるのが簡便である。この場合、ワニス中におけるスチレン-アクリル樹脂の含有量としては、ハンドリング性等を考慮して適宜決定されればよいが、一例として5~50質量%程度を挙げることができる。
【0045】
電子線硬化型印刷インキ組成物の固形分中の非硬化性樹脂の含有量を80.0質量%以下とすることが好ましく、60.0質量%以下とすることがより好ましく、50.0質量%以下とすることがさらに好ましい。また30.0質量%以上とすることが好ましく、40.0質量%以上とすることがさらに好ましい。30.0~80.0質量%とすることにより、電子線による良好な硬化性を損なうことなく、インキ組成物に適度な粘弾性を付与してミスチング等の発生を抑制できるので好ましい。本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物においては、非硬化性樹脂として脂肪酸変性ロジン樹脂又はロジン変性アルキド樹脂を用いることで、バイオマス度等の特性を向上させることができる。
【0046】
電子線硬化型印刷インキ組成物の保存時の重合を防止する目的で、公知の重合禁止剤を含んでいてもよい。重合禁止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン等のフェノール化合物や、酢酸トコフェロール、ニトロソアミン、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン等を好ましく例示することができ、中でもブチルヒドロキシトルエンをより好ましく例示することができる。このような重合禁止剤が添加されることにより、保存時に重合反応が進行してインキ組成物が増粘するのを抑制できる。インキ組成物中の重合禁止剤の含有量としては、0.1~1.0質量%程度を例示することができる。
但し、電子線硬化型印刷インキ組成物が従来の重合開始剤を含有しない場合には、重合禁止剤を含有させないこともできる。
【0047】
(ワックス)
ワックスとしては、スクラッチ性向上のために平均粒子径8.0μm以下で、従来から印刷インキに使用されているワックスを使用することができる。
具体的には、蜜蝋、ラノリンワックス、鯨蝋、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木蝋、ホホバ油等の動植物系ワックス、モンタンワックス、オゾゲライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の鉱物、石油系ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックス、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス、硬化ヒマシ油、硬化ヒマシ油誘導体等の水素化ワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス等の平均粒子径が8.0μm以下、好ましくは、6.0μm以下、さらに好ましくは4.0μm以下、最も好ましくは耐スクラッチ性の点から1.0~2.0μmのものが使用できる。
これらの中でも、摩擦性の点より、ポリテトラフルオロエチレンワックスやポリエチレンワックスが良好である。
使用するワックスの平均粒子径は、電子線硬化型印刷インキ組成物の粘度等に応じて適宜選択して使用される。
【0048】
本発明のインキ組成物はワックスを含有しなくても良い。仮にワックスを含有する際には、電子線硬化型印刷インキ組成物中のワックスの含有量は、5.0質量%以下の範囲が好ましい。
ワックスの含有量が5.0質量%より多いとインキの転移性が低下する傾向にある。
【0049】
(溶剤)
電子線硬化型印刷インキ組成物は、低粘度化及び基材への濡れ広がり性を向上させる等のために、公知の溶剤を含んでいてもよい。
溶剤としては、例えば、水、グリコールモノアセテート類、グリコールジアセテート類、グリコールエーテル類、乳酸エステル類等が挙げられる。これら中でも、水、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチルジグリコールが好ましい。
電子線硬化型印刷インキ組成物が溶剤を含む場合には、その含有量を0~50.0質量%とすることができる。
【0050】
(表面調整剤)
本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物は、公知の表面調整剤を含んでいてもよい。
表面調整剤としては、例えば、シリコン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、アセチレングリコール系表面調整剤等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
表面調整剤の具体例としては、ビックケミー社のBYKシリーズ、エボニックデグサジャパン社のTEGOシリーズ、共栄社化学社のポリフローシリーズ等からなる群より選ばれる1種以上を用いることできる。
電子線硬化型印刷インキ組成物が表面調整剤を含む場合には、その含有量を0.01~1.0質量%とすることができる。
【0051】
[製造方法]
本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
例えば、前記の各成分を全て添加してビーズミルや3本ロールミル等で混合して調製することができる。
また、顔料、顔料分散剤及び各種の電子線硬化型化合物を混合することによってあらかじめコンクベースを得た後、所望の組成となるよう電子線硬化型化合物、重合開始剤、必要に応じて界面活性剤等の添加剤をコンクベースに添加して調製することもできる。
【0052】
また、前記の各成分を混合した後にビーズミルや3本ロールミル等で練肉して顔料(すなわち着色顔料及び体質顔料)を分散させた後、必要に応じて添加剤(重合開始剤、重合禁止剤、ワックス等のその他の添加剤等)を加え、さらにほかの成分の添加により粘度調整することもできる。
本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物の粘度としては、用途等に応じて適宜調整され限定されるものではないが、例えば2000mPa・s以下、好ましくは1500mPa・s以下、より好ましくは400~1500mPa・sである。
【0053】
本発明の電子線硬化型印刷インキ組成物を印刷及び塗布する対象の基材としては、プラスチック、紙、カルトン等であり、これらの複数の基材から構成される積層体等の複合基材であってもよい。
【0054】
このうち、電子線硬化型印刷インキ組成物を印刷又は塗布する対象のプラスチック基材としては、例えば、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等)、セルロース系ポリマー(例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアクリル系ポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート等)、塩化ビニル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状又はノルボルネン構造を有するポリオレフィンポリマー、エチレン・プロピレン共重合体ポリマー等)、ポリアミド系ポリマー(例えば、ナイロン、芳香族ポリアミドポリマー等)、ポリスチレン系ポリマー(例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体ポリマー等)、ポリイミド系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニルスルフィド系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリ塩化ビニリデン系ポリマー、ポリビニルブチラール系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、及びポリエポキシ系ポリマー、これらのポリマーのブレンド物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
【0055】
(印刷及び塗布方法)
本発明中の電子線硬化型印刷インキ組成物を用いて印刷するには、公知の印刷方法及び、電子線硬化型インキ組成物の硬化条件を採用できる。
【実施例0056】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」「質量部」を意味するものである。また、表中の各材料の分量の数字についても「質量部」である。
【0057】
(電子線硬化型印刷インキ組成物)
下記表1にて使用した成分は以下のとおり
PB15:3 :LIONOL BLUE FG-7330(トーヨーカラー社)
ポリエステルアクリレートオリゴマー :CN704(サートマー社)
6EO変性TMPTA(6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
9EO変性TMPTA(9EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
15EO変性TMPTA(15EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
3PO変性TMPTA(3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
3PO変性GPTA(3PO変性グリセリントリアクリレート)
9PO変性GPTA(9PO変性グリセリントリアクリレート)
15PO変性GPTA(15PO変性グリセリントリアクリレート)
TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)
DTMPTA(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
PETA(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)
ジメチルシリコンオイル1 :TSF-451-5M(モメンティブ社)
ジメチルシリコンオイル2 :TSF-451-15M(モメンティブ社)
ジメチルシリコンオイル3 :TSF-451-30M(モメンティブ社)
側鎖エポキシ変性ジメチルシリコンオイル :KF-1001(信越化学工業社)
側鎖脂環式エポキシ変性ジメチルシリコンオイル:KF-102(信越化学工業社)
側鎖長鎖アルキル変性ジメチルシリコンオイル :KF-4701(信越化学工業社)
側鎖高級脂肪酸エステル変性ジメチルシリコンオイル:X-22-715(信越化学工業社)
両末端アクリル変性ジメチルシリコンオイル:X-22-2445(信越化学工業社)
【0058】
(電子線硬化型印刷インキ組成物の調整)
表1の記載の配合組成(質量%)となるように各成分を配合し、撹拌混合して、実施例及び比較例の電子線硬化型印刷インキ組成物を得た。
【0059】
(塗膜の作成方法)
厚さ0.25μmのコロナ処理L-LDPEフィルム(直鎖状低密度ポリエチレン、三井化学東セロ社)の片面に対して、φ0.2mmのバーコーターを用いて、下記各実施例及び各比較例のインキ組成物を塗布した。
【0060】
(電子線硬化)
上記により得られたL-LDPEフィルムのインキ組成物塗布面に対して、電子線を照射した。
電子線を発生させる加速電圧は90kV、10kGy、処理速度は30m/min、1パスであった。
【0061】
(接着性)
電子線照射し硬化した後のインキ塗膜に対して、ニチバン製セロテープ(登録商標)を貼り付けた後に剥がした。これを塗膜の同じ箇所で5回繰り返して評価した(レトルト前)。
さらに、紫外線硬化処理後のインキ塗膜を120℃の熱水に30分浸漬させた後、インキ塗膜に対して、ニチバン製セロテープを貼り付けた後に剥がした。これを塗膜の同じ箇所で5回繰り返して評価した(レトルト後)。
○:インキ塗膜の剥がれなし
×:インキ塗膜の剥がれあり
【0062】
(耐スクラッチ性)
紫外線硬化処理後のインキ塗膜を爪の背で擦った。これを塗膜の同じ箇所で10回繰り返した(レトルト前)。さらに、紫外線硬化処理後のインキ塗膜を120℃の熱水に30分浸漬させた後においても、同様に評価した(レトルト後)。
○:インキ塗膜の脱落なし
△:インキ塗膜に多少の脱落あり
×:インキ塗膜のほとんどが脱落あり
【0063】
(耐熱性)
硬化処理後のインキ塗膜に対して、熱傾斜試験機HG-100(東洋精機社)にて、アルミ艶面を加圧圧着(-2kg/cm2、1分間)させた後、アルミ箔を剥離した際にインキ塗膜の取られる限界温度を測定した。
○:200℃以上でも取られなし
×:200℃未満で取られあり
【0064】
【表1】
【0065】
本発明に沿ったインキ組成物による実施例1~9によれば、インキ塗膜は十分に硬化された。さらに、硬化した後のレトルト前後の接着性及び耐スクラッチ性、さらに耐熱性に優れていた。従来の光重合開始剤等を含有しなくても、これらの性質は良好であった。
これに対して、ジメチルシリコンオイル(ジメチルポリシロキサン)を含有しない比較例1、ジメチルシリコンオイル(ジメチルポリシロキサン)に代えて、変性されたジメチルシリコンオイル(ジメチルポリシロキサン)を含有した比較例2~6によれば、レトルト試験の前後における耐スクラッチ性に劣り、かつ耐熱性が不十分であった。また、一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物を含有しない比較例7~10によれば、レトルト試験の前後における接着性及び耐熱性に劣り、レトルト試験前後における耐スクラッチ性が不十分な場合があった。