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  • 特開-ロードコーン本体の製造方法 図1
  • 特開-ロードコーン本体の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168705
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】ロードコーン本体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/623 20160101AFI20221031BHJP
   E01F 13/02 20060101ALI20221031BHJP
   E01F 9/608 20160101ALI20221031BHJP
   E01F 9/654 20160101ALI20221031BHJP
【FI】
E01F9/623
E01F13/02 A
E01F9/608
E01F9/654
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074359
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】594054520
【氏名又は名称】株式会社ユニチカテクノス
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山名 道則
【テーマコード(参考)】
2D064
2D101
【Fターム(参考)】
2D064AA11
2D064AA21
2D064BA03
2D064CA03
2D064DA04
2D064HA13
2D064JA01
2D101CA11
2D101CB01
2D101DA05
2D101GA26
(57)【要約】
【課題】 穿設という手段を用いずに合理的な方法で、風圧を低減しうるロードコーン本体の製造方法を提供する。
【解決手段】 芯成分がポリエチレンテレフタレートで、鞘成分がポリエチレンテレフタレートの融点よりも低い融点を持つ共重合ポリエステル又はポリオレフィンよりなる芯鞘型複合フィラメントを準備する。この芯鞘型複合フィラメントを複数本集束してマルチフィラメント糸を得る。このマルチフィラメント糸を編機に掛けて、伸長性筒状編地を編成する。伸長性筒状編地を截頭円錐体の成型用型の表面に沿わせる。この際に、適宜に伸長して透かし目を設けた状態にする。そして、加熱及び加圧して、マルチフィラメント糸中の芯鞘型複合フィラメントの鞘成分を溶融させる。その後、冷却することにより、芯鞘型複合フィラメント相互間を融着一体化させ、透かし目を持つロードコーン本体を得る。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯成分が高融点重合体よりなり、鞘成分が前記高融点重合体の融点よりも低い低融点重合体よりなる芯鞘型複合フィラメントよりなるマルチフィラメント糸を用いて、伸長性筒状編地を編成する工程と、
前記筒状編地に透かし目を設けた状態で前記筒状編地を中空錐体に成型すると共に、前記低融点重合体を溶融させて芯鞘型複合フィラメント相互間を融着一体化させる工程とを具備することを特徴とするロードコーン本体の製造方法。
【請求項2】
高融点重合体がポリエチレンテレフタレートであり、低融点重合体が共重合ポリエステル又はポリオレフィンである請求項1記載のロードコーン本体の製造方法。
【請求項3】
筒状編地が、一工程で編成される緯編又は経編である請求項1記載のロードコーン本体の製造方法。
【請求項4】
中空錐体が、中空截頭円錐体、中空截頭三角錐体、中空截頭四角錐体、中空円錐体、中空三角錐体又は中空四角錐体である請求項1記載のロードコーン本体の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法で得られたロードコーン本体の底部に底体を取り付けてなるロードコーン。
【請求項6】
さらに、ロードコーン本体の頂部に発光体を取り付けてなる請求項5記載のロードコーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路上での交通規制に用いるロードコーンの本体の製造方法に関し、特に風圧によって移動又は転倒しにくいロードコーンを得るのに好適なロードコーン本体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路工事や交通事故等で交通規制を行う際に、自動車の走行通路の確保又は遮断等にロードコーンが用いられている。ロードコーンは、円錐体等の錐体のロードコーン本体11と、ロードコーン本体11の底部に設けられた平板状の底板12と、必要によりロードコーン本体の頂部に設けられた発光体とよりなるものである。そして、ロードコーン本体11は、一般的に、赤色や黄色に着色された合成樹脂製中空錐体で形成されている。かかるロードコーンは、ロードコーン本体11に強い風圧が負荷されると、移動したり転倒しやすいものであった。
【0003】
このため、図1に示すように、ロードコーン本体11に複数の開口13を設け、風圧による移動又は転倒を防止することを提案されている(特許文献1)。かかる開口13を複数設けることにより、風が開口13を通過するため、ロードコーン本体11に負荷される風圧が低減され、移動又は転倒しにくいロードコーンが得られる。特許文献1には、合成樹脂製ロードコーン本体11を穿設することにより、開口13を設けると記載されている(特許文献1、段落0019)。しかしながら、穿設による開口13は、開口縁にバリが生じたり、作業効率が悪いという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2010-285759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、穿設という手段を用いずに合理的な方法で、風圧を低減しうるロードコーン本体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、編地の伸長性を利用して、透かし目を持つロードコーン本体を製造するものである。すなわち、芯成分が高融点重合体よりなり、鞘成分が前記高融点重合体の融点よりも低い低融点重合体よりなる芯鞘型複合フィラメントよりなるマルチフィラメント糸を用いて、伸長性筒状編地を編成する工程と、前記筒状編地に透かし目を設けた状態で前記筒状編地を中空錐体に成型すると共に、前記低融点重合体を溶融させて芯鞘型複合フィラメント相互間を融着一体化させる工程とを具備することを特徴とするロードコーン本体の製造方法に関するものである。なお、本発明でいう透かし目とは、編地の編目列間に形成される空間のことである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る方法は、筒状編地を伸長させて透かし目を設けた状態で筒状編地を中空錐体に成型すると共に、編目列を形成している芯鞘型複合フィラメント相互間を融着一体化させてロードコーン本体を製造するものである。この方法で得られたロードコーン本体は、透かし目と融着一体化されている編目列とよりなる。そして、融着一体化された編目列は、溶融した低融点重合体の母体中に繊維形態の芯成分が存在した剛直なプラスチック様部位となっている。したがって、融着一体化された編目列によって所定の形態を維持し、透かし目により風圧を低減することができる。よって、穿設という手段を採用することなく、風圧を低減しうるロードコーン本体が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】特許文献1記載のロードコーンの一例を示す斜視図である。
図2】本発明の一例に係る方法で得られたロードコーン本体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いるマルチフィラメント糸は、芯成分が高融点重合体よりなり、鞘成分が前記高融点重合体の融点よりも低い低融点重合体よりなる芯鞘型複合フィラメントが複数本集束されてなるものである。高融点重合体としては、ポリエチレンテレフタレートを用いるのが好ましい。ポリエチレンテレフタレートは耐候性に優れているため、ロードコーン本体が劣化しにくくなるからである。低融点重合体としては、共重合ポリエステル又はポリエチレン等のポリオレフィンを用いるのが好ましい。芯成分としてポリエチレンテレフタレートを採用し、鞘成分として共重合ポリエステルを採用した場合、両者共にポリエステル樹脂の範疇であるため、廃棄したロードコーン本体から再生ポリエステル樹脂を得ることができ、好ましいものである。また、鞘成分として、ポリエチレン等のポリオレフィンを採用すると、ポリオレフィンは流動性が良好で、芯鞘型複合フィラメント相互間が融着一体化したプラスチック様部位の母体となりやすく、好ましいものである。
【0010】
芯成分と鞘成分の質量比は、芯成分:鞘成分=1~3:1であるのが好ましい。鞘成分である低融点重合体は、プラスチック様部位の母体となるものである。したがって、鞘成分の質量比がこの範囲より低いと、母体になりにくくなる傾向が生じる。また、鞘成分の質量比がこの範囲より高いと、芯成分の径又は数が小さくなり、プラスチック様部位に割れが生じやすくなったり、強力が低下する傾向が生じる。芯鞘型複合フィラメントの繊度は、1~20デシテックス程度である。かかる芯鞘型複合フィラメントを複数本集束して、マルチフィラメント糸を得る。集束本数としては、30~400本程度である。また、芯鞘型複合フィラメントは赤色又は黄色に着色された原着フィラメントであるのが好ましい。かかる原着フィラメントを用いると、得られるロードコーン本体が視認しやすくなるからである。
【0011】
マルチフィラメント糸を用いて伸長性筒状編地を編成する。ここで、筒状編地とは、当初から筒状となっている編地のみではなく、伸長又は拡開することにより筒状となる編地をも含むものである。かかる伸長性筒状編地は、従来公知の編成方法で得ることができる。たとえば、一層の緯編地又は経編地を得た後、これを筒状にし長手両端を縫製して伸長性筒状編地を得ることもできる。しかしながら、一工程で二層の編地よりなる二重編地を得るのが、合理的で好ましい。かかる二重編地は、ダブル緯編機又はダブル経編機で得ることができる。ダブル緯編機の場合、分離した二層の編地を同時に編成すると共に両端を編成連結することにより、伸長性筒状編地を得ることができる。特に、ホールガーメント(登録商標)横編機で編成して伸長性筒状編地を得るのが好ましい。ダブル経編機の場合、二枚の筬で分離した二層の編地を同時に編成すると共に両端を連結糸で編成連結することにより、伸長性筒状編地を得ることができる。また、緯編の一種であるが、丸編機で筒状に編成することにより、伸長性筒状編地を得ることもできる。
【0012】
伸長性筒状編地の透かし目は、緯編の場合、一般的にコース方向の編目列間に形成される。したがって、ウェール方向に伸長すれば、伸長の程度により所定の大きさの透かし目を得ることができる。また、伸長性筒状編地の透かし目は、経編の場合、一般的にウェール方向の編目列間に形成される。したがって、コース方向に伸長すれば、伸長の程度により所定の大きさの透かし目を得ることができる。よって、錐体の成型用型の表面に、筒状編地を所定の程度に伸長させながら被せて沿わせることにより、任意の箇所に任意の大きさで透かし目を形成することができる。成型用型に対するかかる筒状編地の適用は、分離した二層の編地間を拡開(又は必要により収縮)させながら、成型用型に挿入することにより、行うことができる。なお、丸編機で編成された筒状丸編地や筒状に縫製された編地の場合は、当初から筒状となっているため、筒内を拡開又は収縮させながら、成型用型に挿入することにより、行うことができる。
【0013】
透かし目の大きさは任意であり、たとえば、5~100cm2程度であるのが好ましい。透かし目の大きさが小さすぎると、風圧の低減効果が不十分となる傾向が生じる。また、透かし目の大きさが大きすぎると、ロードコーン本体の強力が低くなる傾向が生じる。ロードコーン本体の表面積に対する透かし目の総面積の割合も任意であるが、たとえば、30~75%程度であるのが好ましい。透かし目の総面積の割合が低くなると、風圧の低減効果が不十分となる傾向が生じる。また、透かし目の総面積の割合が高くなると、ロードコーン本体の強力が低くなる傾向が生じる。
【0014】
錐体の成型用型の表面に被せて沿わせ、筒状編地に所定の透かし目を設けた状態で、加熱及び必要により加圧を施す。これにより、透かし目外の編目列を構成しているマルチフィラメント糸中の芯鞘型複合フィラメントの鞘成分が溶融する。そして、冷却すると、芯鞘型複合フィラメント相互間が融着一体化したプラスチック用部位が形成され、プラスチック用部位外が透かし目となる。プラスチック様部位は、芯鞘型複合フィラメントの鞘成分である低融点重合体を母体とし、この母体中に芯鞘型複合フィラメントの芯成分である高融点重合体が繊維形態で存在しているものである。錐体の成型用型は任意の形状であり、たとえば、截頭円錐体、截頭三角錐体、截頭四角錐体、円錐体、三角錐体又は四角錐体の成型用型が用いられる。したがって、得られるロードコーン本体の形状は、中空截頭円錐体、中空截頭三角錐体、中空截頭四角錐体、中空円錐体、中空三角錐体又は中空四角錐体となる。図2は、得られた中空截頭円錐体のロードコーン本体1の正面図であり、3は透かし目である。透かし目3外の灰色に着色された部位は、編目列が融着一体化したプラスチック様部位である。
【0015】
得られたロードコーン本体の底部には底板を取り付けることにより、ロードコーンとなる。底板としては、従来公知のものが用いられ、ロードコーン本体の底部から周方向に拡がる平板状のものが用いられる。この底板は錘の役割を果たすものでもあるから、ロードコーン本体よりも重量の重い材料を用いるのが好ましい。また、夜間でも使用可能なように、ロードコーン本体の頂部に発光体を取り付けるのも好ましいことである。発光体としては、電球又は蓄光体等が用いられる。電球を用いた際に、電線で電力供給する必要があるが、この電線は透かし目を通して電球と連結することができる。
【符号の説明】
【0016】
1 ロードコーン本体
3 透かし目
11 ロードコーン本体
12 底板
13 開口
図1
図2