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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168724
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20221031BHJP
   B60N 2/70 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074390
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
(72)【発明者】
【氏名】今成 勝利
(72)【発明者】
【氏名】寺田 悠馬
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DB09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】クッションスプリングに取り付けられたユニットが乗員着座時に傾くのを防止又は抑制することができる車両用シートを得る。
【解決手段】クッションスプリング12Cのシート幅方向左端側の領域に設けられた被締結部52には、アクチュエータユニット34の締結部が締結される。クッションスプリング12Cのシート幅方向右端側の領域には、平面状に形成されて水平方向に沿って配置された上向きの座面部56が設けられ、アクチュエータユニット34には座面部56に対応して摺動部72が設けられている。この摺動部72の平面状の摺動面は、クッションスプリング12Cに設けられた座面部56の上にシート幅方向に沿って摺動可能に配置される。また、摺動部72のシート前後方向の変位は変位規制機構80によって規制される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座する着座部を構成し、骨格を構成するフレーム部と、前記フレーム部に架け渡されたクッションスプリングと、前記クッションスプリングによってシート下方側から弾性的に支持されるクッションパッドと、を備えるシートクッションと、
前記シートクッションに設けられ、前記クッションパッドのシート下方側に配置されるユニットと、
前記クッションスプリングのシート幅方向左端側の領域、シート幅方向右端側の領域及びシート幅方向中央部の領域のうちのいずれか一つの領域に設けられた被締結部と、
前記ユニットにおいて前記被締結部に対応して設けられ、前記被締結部に締結された締結部と、
前記クッションスプリングのシート幅方向左端側の領域及びシート幅方向右端側の領域において前記被締結部が設けられていない領域に設けられ、平面状に形成されて水平方向に沿って配置された上向きの座面部と、
前記ユニットにおいて前記座面部に対応して設けられ、前記座面部の上にシート幅方向に沿って摺動可能に配置される平面状の摺動面を備える摺動部と、
前記摺動部の近傍に位置して少なくとも一部が前記クッションスプリングに設けられ、前記摺動部のシート前後方向の変位を規制する変位規制部と、
を有する車両用シート。
【請求項2】
前記クッションスプリングには、前記摺動部の上面の少なくとも一部を覆うカバー部が設けられている、請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記クッションスプリングには、前記座面部のシート前後方向両側に立設されてかつその上端位置が前記摺動部の上面よりもシート上方側の高さ位置に設定された隆起部が設けられている、請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいてはシートクッショッンのクッションスプリングに部材が取り付けられる場合がある。例えば、下記特許文献1には、両端にシートのスプリングワイヤのうち近接する2本のワイヤ部がそれぞれ嵌合する一対の嵌合部と、前記一対の嵌合部の間に設けられてセンサ用コネクタが嵌合されるプラグ部と、を有する取り付け具に関する技術が開示されている。そして、この先行技術では、少なくとも一方の嵌合部内でスプリングワイヤが摺動可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4009985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用シートにおいては、シートクッションのクッションスプリングに、例えばアクチュエータユニット等のようなユニットを取り付けて支持させる場合がある。そして、上記特許文献1に記載の取り付けに関する技術をクッションスプリングへのユニットの取り付けに転用するも可能である。
【0005】
しかしながら、そのように転用した場合、乗員着座時にユニットが嵌合部内のスプリングワイヤの軸線回りに傾いてしまうことが懸念される。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、クッションスプリングに取り付けられたユニットが乗員着座時に傾くのを防止又は抑制することができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載する本発明の車両用シートは、乗員が着座する着座部を構成し、骨格を構成するフレーム部と、前記フレーム部に架け渡されたクッションスプリングと、前記クッションスプリングによってシート下方側から弾性的に支持されるクッションパッドと、を備えるシートクッションと、前記シートクッションに設けられ、前記クッションパッドのシート下方側に配置されるユニットと、前記クッションスプリングのシート幅方向左端側の領域、シート幅方向右端側の領域及びシート幅方向中央部の領域のうちのいずれか一つの領域に設けられた被締結部と、前記ユニットにおいて前記被締結部に対応して設けられ、前記被締結部に締結された締結部と、前記クッションスプリングのシート幅方向左端側の領域及びシート幅方向右端側の領域において前記被締結部が設けられていない領域に設けられ、平面状に形成されて水平方向に沿って配置された上向きの座面部と、前記ユニットにおいて前記座面部に対応して設けられ、前記座面部の上にシート幅方向に沿って摺動可能に配置される平面状の摺動面を備える摺動部と、前記摺動部の近傍に位置して少なくとも一部が前記クッションスプリングに設けられ、前記摺動部のシート前後方向の変位を規制する変位規制部と、を有する。
【0008】
なお、請求項1記載の「シート幅方向中央部の領域」とは、シート幅方向中央及びその近傍からなる領域をいう(以下、本明細書において同じ)。また、請求項1記載の「シート幅方向左端側の領域」とは、シート幅方向左側の領域からシート幅方向中央部の領域の左側部分を除いた領域をいい、「シート幅方向右端側の領域」とは、シート幅方向右側の領域からシート幅方向中央部の領域の右側部分を除いた領域をいう(以下、本明細書において同じ)。
【0009】
上記構成によれば、乗員が着座するシートクッションにおいては、骨格を構成するフレーム部にクッションスプリングが架け渡され、このクッションスプリングによってクッションパッドがシート下方側から弾性的に支持される。また、シートクッションに設けられたユニットは、クッションパッドのシート下方側に配置される。
【0010】
また、クッションスプリングのシート幅方向左端側の領域、シート幅方向右端側の領域及びシート幅方向中央部の領域のうちのいずれか一つの領域には、被締結部が設けられ、ユニットには、被締結部に対応して締結部が設けられている。ユニットに設けられた締結部は、クッションスプリングに設けられた被締結部に締結されている。また、クッションスプリングのシート幅方向左端側の領域及びシート幅方向右端側の領域において被締結部が設けられていない領域には、平面状に形成されて水平方向に沿って配置された上向きの座面部が設けられ、ユニットには座面部に対応して摺動部が設けられている。この摺動部の平面状の摺動面は、クッションスプリングに設けられた座面部の上にシート幅方向に沿って摺動可能に配置され、摺動部のシート前後方向の変位は、変位規制部によって規制される。そして、乗員着座時にユニットに設けられた摺動部が座面部と面接触状態でシート幅方向に沿って摺動することで、クッションスプリングのシート幅方向への変形が許容されつつ、ユニットの傾きが防止又は抑制される。
【0011】
請求項2に記載の車両用シートは、請求項1記載の構成において、前記クッションスプリングには、前記摺動部の上面の少なくとも一部を覆うカバー部が設けられている。
【0012】
上記構成によれば、乗員着座時にクッションパッドの下面が下降しても、クッションパッドの下面と摺動部の上面との接触がカバー部によって防止又は抑制される。したがって、摺動部が容易に摺動できると共にクッションパッドの下面が摺動部と擦れるのを防止又は抑制することができる。
【0013】
請求項3に記載の車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記クッションスプリングには、前記座面部のシート前後方向両側に立設されてかつその上端位置が前記摺動部の上面よりもシート上方側の高さ位置に設定された隆起部が設けられている。
【0014】
上記構成によれば、乗員着座時にクッションパッドの下面が下降した場合に、クッションパッドの下面が摺動部の上面側に接近するのを隆起部によって抑制することができる。よって、摺動部の摺動性の確保及びクッションパッドの下面の摩擦損傷の防止に寄与し得る。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の車両用シートによれば、クッションスプリングに取り付けられたユニットが乗員着座時に傾くのを防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
図2図1におけるシートクッションの骨格構造を拡大して示す斜視図である。
図3図2の矢印3方向から見た状態を拡大して示す斜視図である。
図4A図1の車両用シートにおいて骨盤サポートが非押圧状態にある場合を示す模式的な側面図である。
図4B図1の車両用シートにおいて骨盤サポートが押圧状態にある場合を示す模式的な側面図である。
図5図2のアクチュエータユニットがクッションスプリングに取り付けられている状態を拡大して示す斜視図である。
図6図2の矢印6方向から見た状態を拡大して示す平面図である。
図7図6の7-7線に沿って切断した状態を拡大して示す断面図である。
図8】クッションスプリングとアクチュエータユニットとを分解した状態を示す分解斜視図である。
図9】クッションスプリングとアクチュエータユニットとを分解した状態を示す分解側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る車両用シートについて図1図9を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRはシート前方側を示しており、矢印UPはシート上方側を示しており、矢印Wはシート幅方向を示している。
【0018】
(実施形態の構成)
図1には、本実施形態に係る車両用シート10が斜視図で示されている。車両用シート10はシート本体10Hを有している。シート本体10Hは、乗員が着座する着座部を構成して着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、着座乗員の背部を支持するシートバック14と、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト16と、を備えている。シートクッション12は、骨格を構成するフレーム部としてのシートクッションフレーム12F(図2参照)にクッションパッド12Pが被せられている。また、シートバック14は、シートバックフレーム(図示省略)にシートバックパッド14Pが被せられている。
【0019】
図2には、シートクッション12の骨格構造が拡大した状態の斜視図で示されている。シートクッションフレーム12Fは、シートクッション12のシート幅方向の両サイドに設けられてシート前後方向に延在する左右一対のサイドフレーム12Sと、左右一対のサイドフレーム12Sの後端部同士を連結してシートバック14(図1参照)のリクライニング中心となるリクライニングロッド12Bと、左右一対のサイドフレーム12Sの前端部同士を連結するシートパン(広義には「フロントフレーム」として把握される要素)12Aと、を備えている。また、シートクッションフレーム12Fにおけるシートパン12Aとリクライニングロッド12Bとの間には、クッションスプリング12Cがシート前後方向に掛け渡されている。クッションスプリング12Cは、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するクッションパッド12P(図1参照)をシート下方側から弾性的に支持する。
【0020】
クッションスプリング12Cは、シート幅方向に並んで配置された複数(ここでは4個)のSバネ12C1,12C2,12C3,12C4を備えている。Sバネ12C1,12C2,12C3,12C4は、シート幅方向に隣り合う部分同士が所定の位置において樹脂製の連結部12Xによってシート幅方向に連結されている。クッションスプリング12Cの後部でリクライニングロッド12Bよりも前側の部分は、側面視でシート後方側へ向けてシート上方側に急激に立ち上がるように傾斜している。図3には、図2の矢印3方向から見た状態が拡大された斜視図で示されている。図2及び図3に示されるように、クッションスプリング12Cは、後端部を含む後側上部に後側取付部12CXを備えている。後側取付部12CXは、側面視で略逆U字状に形成され、リクライニングロッド12Bに取り付けられている。また、図2に示されるように、クッションスプリング12Cの後部には、シート幅方向に延在する樹脂製の後側パネル12Rが一体に形成されている。
【0021】
図4A及び図4Bに示されるように、シート本体10Hには、骨盤サポート18(図4A及び図4Bでは簡略化して模式的に図示)が設けられている。骨盤サポート18は、図4Bに示される着座乗員Pの骨盤Ppを押圧する押圧状態と、図4Aに示される着座乗員Pの骨盤Ppを押圧しない非押圧状態と、の間で切り替え可能に構成されている。本実施形態では、骨盤サポート18がONの状態で押圧状態となり、骨盤サポート18がOFFの状態で非押圧状態となる。以下、骨盤サポート18の構成の一例について説明する。
【0022】
骨盤サポート18は、シートバック14に設けられるバックロアサポート20と、シートクッションに設けられるクッションサポート30と、を備えている。図4A及び図4Bに示されるように、バックロアサポート20は、モータ22(広義には駆動部)が駆動することでシートバックパッド14Pのうち着座乗員Pの骨盤Ppに対応する部位をシート前後方向に変位させる。また、クッションサポート30は、モータ(広義には駆動部)40が駆動することでクッションパッド12Pのうち着座乗員Pの骨盤Ppに対応する部位をシート上下方向に変位させる。なお、バックロアサポート20には、各種の公知機構が適用できるため、バックロアサポート20の詳細説明は省略する。
【0023】
モータ22及びモータ38は、ECU40(図中ではブロック化して図示)に電気的に接続されている。ECU40は、CPU、ROM、RAM、ストレージ及び通信インタフェースを有し、これらの各構成部は、バスを介して相互に通信可能に接続されている。また、ECU40は、機能構成として、制御部42を有する。制御部42は、一例として着座乗員が操作可能な操作スイッチ(図示省略)のON/OFFの信号に基づいて、モータ22及びモータ38の作動を制御するようになっている。
【0024】
図2に示されるように、クッションサポート30は、クッションスプリング12Cの後側の部分に対して上側にフラップ32(図中では想像線(二点鎖線)で外形線のみを示す)を備えている。フラップ32は、クッションパッド12P(図1参照)の後部をシート上方側に押圧するための回動部材とされる。
【0025】
フラップ32は、平面視でシート前方側が開放された略U字状に形成されると共に、側面視で後端部が立ち上がった略L字状に形成されている。フラップ32は、その左右両端を構成するサイド部32Sにおける前後方向中間部同士がクロスバー32Cによってシート幅方向に連結されている。また、フラップ32は、その後側上端においてシート幅方向に延在する後辺部32Rと、クロスバー32Cとが、側面視で略L字状の連結部32Lによって連結されている。
【0026】
また、フラップ32の前端部には、平面視で互いに接近する側に短く延出された一対の取付軸部32Aが形成されている。一対の取付軸部32Aは、クッションスプリング12Cのシート前後方向中間部の両サイド側に一体に形成された樹脂製の支持片50の軸支持部50Aにシート幅方向の軸線回りに回転可能に支持されている。これらにより、フラップ32は、図2に示される非押圧位置と図示を省略する押圧位置との間でシート幅方向の軸線回りに回動可能とされている。なお、フラップ32において、非押圧位置は、クッションパッド12P(図1参照)の後部をシート上方側に押圧しない位置であり、押圧位置は、クッションパッド12P(図1参照)の後部をシート上方側に押圧する位置である。
【0027】
クッションサポート30は、フラップ32を回動させるユニットとしてのアクチュエータユニット34を備えている。図2では、アクチュエータユニット34を模式的にブロック化した状態で示している(図3図9においても同様)。アクチュエータユニット34は、シートクッション12の後部に搭載されてクッションパッド12P(図1参照)のシート下方側に配置され、モータ38(図4A参照)の駆動によって作動することでフラップ32を回動させて、クッションパッド12P(図1参照)のうち着座乗員Pの骨盤Pp(いずれも図4A参照)に対応する部位を、フラップ32を介してシート上下方向に変位させる。
【0028】
アクチュエータユニット34には、各種の公知技術が適用できる。このため、アクチュエータユニット34の詳細説明は省略するが、アクチュエータユニット34の構成の一例について簡単に説明する。アクチュエータユニット34は、例えば、シート幅方向に延在してモータ38(図4A参照)によって回転するリードスクリューと、前記リードスクリューと噛み合って前記リードスクリューの回転に応じてシート幅方向に沿って互いに接離するように移動する左右一対のスライダと、前記左右一対のスライダに対応して左右一対で設けられかつ前記左右一対のスライダの間にシート前後方向の回動中心を有すると共に前記左右一対のスライダの移動に応じて前記回動中心回りに回動してフラップ32を押し上げることが可能な回動部材と、を備え、それらがベース部材に搭載されているような構成としてもよい。
【0029】
図5には、アクチュエータユニット34がクッションスプリング12Cに取り付けられている状態の拡大斜視図が示され、図6には、図2の矢印6方向から見た状態を拡大した平面図が示されている。また、図8には、クッションスプリング12Cとアクチュエータユニット34とが分解された状態の分解斜視図が示され、図9には、クッションスプリング12Cとアクチュエータユニット34とが分解された状態の分解側面図が示されている。
【0030】
図8に示されるように、クッションスプリング12Cの後部におけるシート幅方向左端側(図中の右側)の領域には、被締結部52が設けられている。被締結部52は、樹脂からなり、インサート成形等によってSバネ12C1と一体に形成されている。被締結部52は、水平方向に沿って配置されている。被締結部52には、締結孔52Aがシート上下方向に沿って貫通形成されている。なお、図5に示されるように、被締結部52の周囲には補強用のリブ53が形成されているが、他図においては適宜図示を省略する。
【0031】
図8に示されるように、被締結部52には、アクチュエータユニット34において被締結部52に対応して設けられた締結部62が締結されている。本実施形態では、締結部62は、一例として第一取付ブラケット60の一部とされ、平板状に形成されている。締結部62には、締結孔62Aが貫通形成されている。図9に示されるように、締結部62の下面には締結孔62A(図8参照)の外周部にウエルドナット68Aが予め固着されている。そして、図8に示されるボルト69Aが被締結部52の締結孔52A及び締結部62の締結孔62Aを貫通してウエルドナット68A(図9参照)に螺合されることで、被締結部52に締結部62が締結される。
【0032】
第一取付ブラケット60は、締結部62と、締結部62のシート幅方向内側の端部から垂下された垂下部64と、垂下部64の下端からシート幅方向内側に延出されてアクチュエータユニット34に固定される下壁部66と、を備えている。なお、図8では、第一取付ブラケット60は、アクチュエータユニット34から分離された状態で示されている。図8及び図9に示されるように、第一取付ブラケット60は、一例として、下部側が二股に分かれており、二股に分かれたそれぞれが締結具69B(図6参照)によってアクチュエータユニット34に締結される。
【0033】
図8に示されるように、クッションスプリング12Cの後部におけるシート幅方向右端側(図中の左側)の領域には、受け部54が設けられている。受け部54は、平面状に形成されて水平方向に沿って配置された上向きの座面部56と、座面部56のシート前後方向両側におけるシート幅方向内側の部分からシート幅方向内側に延出された一対の延出部57と、を備えている。座面部56は、Sバネ12C4のうち平面視でシート幅方向内側に開口したU字状とされている部分のU字形状内側に設定されている。一対の延出部57は、互いにシート前後方向に対向する一対の対向端面部57Aと、を備えている。
【0034】
図5及び図6に示されるように、アクチュエータユニット34には、座面部56に対応して摺動部72が設けられている。本実施形態では、摺動部72は、第二取付ブラケット70の一部とされ、平板状に形成されている。摺動部72は、座面部56の上にシート幅方向に沿って摺動可能(図6の矢印72X参照)に配置される平面状の摺動面72A(図7参照)を備えている。なお、図7は、図6の7-7線に沿って切断した状態を示す拡大断面図である。
【0035】
図8に示されるように、第二取付ブラケット70は、摺動部72と、摺動部72のシート幅方向内側の端部から垂下された垂下部74と、垂下部74の下端からシート幅方向内側に延出されてアクチュエータユニット34に固定される下壁部76と、を備えている。第二取付ブラケット70は、一例として、下部側が二股に分かれており、二股に分かれたそれぞれが締結具78によってアクチュエータユニット34に締結される。また、図5及び図6に示されるように、垂下部74の上部は、一対の対向端面部57Aに隣接配置されている。摺動部72の近傍に位置する垂下部74の上部及び一対の対向端面部57Aは、摺動部72を含む第二取付ブラケット70のシート前後方向の変位を規制する変位規制部としての変位規制機構80を構成している。言い換えれば、第二取付ブラケット70の上部は、一対の対向端面部57Aの間に差し込まれるように(嵌合されるように)配置されて受け部54に対してシート幅方向に摺動可能とされている。
【0036】
図6に示されるように、クッションスプリング12Cには、摺動部72の上面72Bの一部を覆うカバー部58が設けられている。また、図7に示されるようにクッションスプリング12Cには、座面部56のシート前後方向両側に立設されてかつその上端位置が摺動部72の上面72Bよりもシート上方側の高さ位置に設定された隆起部59が設けられている。隆起部59は、座面部56のシート前後方向両端に沿ってシート幅方向に延在しており、「土手部」としても把握することができる。前述したカバー部58は、前後一対の隆起部59の上端部付近から互いに接近する方向に延出されている。座面部56、延出部57(図6参照)、カバー部58及び隆起部59は、樹脂からなり、インサート成形等によってSバネ12C4と一体に形成されている。
【0037】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0038】
図2に示されるように、シートクッション12においては、シートクッションフレーム12Fにクッションスプリング12Cが架け渡され、このクッションスプリング12Cによってクッションパッド12P(図1参照)がシート下方側から弾性的に支持される。また、図4A及び図4Bに示されるように、シートクッション12に設けられたアクチュエータユニット34は、クッションパッド12Pのシート下方側に配置されてクッションパッド12Pのうち着座乗員Pの骨盤Ppに対応する部位をシート上下方向に変位させる。
【0039】
また、図5に示されるように、クッションスプリング12Cのシート幅方向左端側(図中の右側)の領域には、被締結部52が設けられ、アクチュエータユニット34には、被締結部52に対応して締結部62(図8参照)が設けられている。アクチュエータユニット34に設けられた締結部62(図8参照)は、クッションスプリング12Cに設けられた被締結部52に締結されている。また、クッションスプリング12Cのシート幅方向右端側(図中の左側)の領域には、平面状に形成されて水平方向に沿って配置された上向きの座面部56が設けられ、アクチュエータユニット34には座面部56に対応して摺動部72が設けられている。この摺動部72の平面状の摺動面72A(図7参照)は、クッションスプリング12Cに設けられた座面部56の上にシート幅方向に沿って摺動可能に配置され、摺動部72のシート前後方向の変位は変位規制機構80によって規制される。そして、乗員着座時にアクチュエータユニット34に設けられた摺動部72が座面部56と面接触状態でシート幅方向に沿って摺動することで、クッションスプリング12Cのシート幅方向への変形が許容されつつ、アクチュエータユニット34の傾きが防止又は抑制される。
【0040】
また、本実施形態では、クッションスプリング12Cには、摺動部72の上面72Bの一部を覆うカバー部58が設けられている。これにより、乗員着座時に図1に示されるクッションパッド12Pの下面が下降しても、クッションパッド12Pの下面と図5に示される摺動部72の上面72Bとの接触がカバー部58によって防止又は抑制される。したがって、摺動部72が容易に摺動できると共にクッションパッド12P(図1参照)の下面が摺動部72と擦れるのを防止又は抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、クッションスプリング12Cには、座面部56のシート前後方向両側に立設されてかつその上端位置が摺動部72の上面72Bよりもシート上方側の高さ位置に設定された隆起部59が設けられている。これにより、乗員着座時に図1に示されるクッションパッド12Pの下面が下降した場合に、クッションパッド12Pの下面が図5に示される摺動部72の上面72B側に接近するのを隆起部59によって抑制することができる。よって、摺動部72の摺動性の確保及びクッションパッド12P(図1参照)の下面の摩擦損傷の防止に寄与することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の車両用シート10(図1参照)によれば、クッションスプリング12Cに取り付けられたアクチュエータユニット34が乗員着座時に傾くのを防止又は抑制することができる。その結果、アクチュエータユニット34の作動軸への負荷を抑えることができる。
【0043】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、クッションスプリング12Cのシート幅方向左端側(図中の右側)の領域に被締結部52が設けられると共にこれに対応してアクチュエータユニット34に締結部62(図8参照)が設けられ、クッションスプリング12Cのシート幅方向右端側(図中の左側)の領域に座面部56が設けられると共にこれに対応してアクチュエータユニット34に摺動部72が設けられているが、このような構成を左右逆にしてもよい。すなわち、上記実施形態の変形例として、クッションスプリング(12C)のシート幅方向右端側の領域に被締結部(52)が設けられると共にこれに対応してアクチュエータユニット(34)に締結部(62)が設けられ、クッションスプリング(12C)のシート幅方向左端側の領域に座面部(56)が設けられると共にこれに対応してアクチュエータユニット(34)に摺動部(72)が設けられている、という構成でもよい。
【0044】
また、他の変形例として、クッションスプリング(12C)のシート幅方向中央部の領域に被締結部(52)が設けられると共にこれに対応してアクチュエータユニット(34)に締結部(62)が設けられ、クッションスプリング(12C)のシート幅方向左端側の領域及びシート幅方向右端側の領域のそれぞれに座面部(56)が設けられると共にこれらに対応してアクチュエータユニット(34)に摺動部(72)が設けられている、という構成でもよい。このような変形例では、クッションスプリング(12C)のシート幅方向中央部の領域でアクチュエータユニット(34)の位置決めをすることができるので、部品の寸法精度のばらつきによる偏りを軽減することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、図8に示される締結部62を備えた第一取付ブラケット60がアクチュエータユニット34に固定されると共に摺動部72を備えた第二取付ブラケットがアクチュエータユニット34に固定されているが、アクチュエータユニット(34)のベース部材の一部が締結部(62)を構成していてもよいし、アクチュエータユニット(34)のベース部材の一部が摺動部(72)を構成していてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、図5及び図6に示されるように、変位規制部としての変位規制機構80が第二取付ブラケット70の垂下部74の上部とクッションスプリング12Cに設けられた一対の対向端面部57Aとで構成されているが、変位規制部は、クッションスプリング(12C)に設けられて摺動部(72)の前後端面に隣接配置される前後一対のガイド端面等のように他の構成の変位規制部とされてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、クッションスプリング12Cには、摺動部72の上面72Bの一部を覆うカバー部58が前後一対で設けられているが、クッションスプリング(12C)に設けられるカバー部は、上記実施形態の前後一対のカバー部58同士をシート前後方向に繋げたようなものでもよいし、前後一対の隆起部59の上端部付近からの上面(72B)の全部を覆うようなものでもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、カバー部58は、前後一対の隆起部59の上端部付近から互いに接近する方向に延出されているが、例えば座面部(56)のシート幅方向外側に凸部が立設されると共にカバー部が前記凸部の上端部付近からシート幅方向内側に延出されて摺動部(72)の上面(72B)の一部又は全部を覆うような構成でもよい。
【0049】
さらに、他の変形例として、例えば、摺動部(72)の上方にカバー部(58)を設けるスペースを確保できないような場合等では、上記実施形態のカバー部58に相当する構成部が設けられていない、という構成も採り得る。
【0050】
また、上記実施形態の変形例として、上記実施形態の隆起部59に相当する構成部が設けられていない、という構成も採り得る。
【0051】
また、上記実施形態では、図4Bに模式的に示されるように、アクチュエータユニット34が作動することでフラップ32を回動させて、クッションパッド12Pのうち着座乗員Pの骨盤Ppに対応する部位を、フラップ32を介してシート上下方向に変位させているが、アクチュエータユニットは、直接的にクッションパッド(12P)のうち着座乗員(P)の骨盤(Pp)に対応する部位をシート上下方向に変位させるものであってもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、車両用シート10が骨盤サポート18としてバックロアサポート20とクッションサポート30とを備えているが、上記実施形態の変形例として、車両用シートは、骨盤サポートとしてバックロアサポート(20)を備えずにクッションサポート(30)のみを備えるような構成でもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、図2に示されるクッションスプリング12Cに取り付けられたユニットがアクチュエータユニット34である場合を例に挙げて説明したが、クッションスプリング(12C)に取り付けられるユニットは、例えば送風用の送風ユニット等のようにアクチュエータユニット以外のユニットでもよい。
【0054】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0055】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
10 車両用シート
12 シートクッション
12F シートクッションフレーム(フレーム部)
12C クッションスプリング
12P クッションパッド
34 アクチュエータユニット(ユニット)
52 被締結部
56 座面部
58 カバー部
59 隆起部
62 締結部
72 摺動部
72A 摺動面
72B 摺動部の上面
80 変位規制機構(変位規制部)
P 着座乗員
Pp 骨盤
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9