(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168748
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】引張試験器用把持具及びそれを備えた引張試験器
(51)【国際特許分類】
G01N 3/04 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
G01N3/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074426
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】518024150
【氏名又は名称】日本ヘルスケアエンジニア協会合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】特許業務法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花之内 健仁
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA01
2G061AB01
2G061CC04
2G061EA01
2G061EA02
2G061EB02
2G061EB05
(57)【要約】
【課題】試験対象の被把持物を挟むときの力を簡単に自在に調節し、把持を緩みにくくする。また、被把持物において挟み代を十分に確保できない場合にも対応可能で、ピンポイントで所望の箇所を掴めるようにする。
【解決手段】引張試験器用把持具3,3’は、基部32,42と反対側の先端部33,43どうしが互いに離間した第1及び第2挟持部30,40と、第1及び第2挟持部30,40の先端部33,43に設けられた第1及び第2爪部34,44と、第1及び第2挟持部30,40の外周を取り囲むようにまとめて挿通し第1及び第2挟持部30,40の長手方向に移動自在な移動部材50と、を有する。移動部材50を基部32,42側に移動させると第1爪部34と第2爪部44とが離間し、移動部材50を先端部33,43側に移動させると第1爪部34と第2爪部44とが近接する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張試験器に装着され、試験対象の被把持物を把持するための引張試験器用把持具であって、
基部どうしが互いに連結されるとともに、常には前記基部と反対側の先端部どうしが互いに離間するように構成された第1挟持部及び第2挟持部と、
前記第1挟持部及び前記第2挟持部の前記先端部に、互いに歯先が向かい合うようにそれぞれ設けた第1爪部及び第2爪部と、
互いに連結された前記第1挟持部及び前記第2挟持部の外周を取り囲むようにそれら第1挟持部及び第2挟持部をまとめて挿通し、当該第1挟持部及び当該第2挟持部の長手方向に移動自在に設けられた移動部材と、
を有し、
前記移動部材を前記基部側に移動させると前記第1爪部と前記第2爪部とが離間し、前記移動部材を前記先端部側に移動させると前記第1爪部と前記第2爪部とが近接する
ように構成したことを特徴とする、引張試験器用把持具。
【請求項2】
請求項1記載の引張試験器用把持具において、
前記第1挟持部及び前記第2挟持部それぞれの前記基部が設けられるベース部材をさらに有し、
前記第1挟持部及び前記第2挟持部それぞれの前記基部は、
前記ベース部材を介し、互いに連結されている
ことを特徴とする引張試験器用把持具。
【請求項3】
請求項2記載の引張試験器用把持具において、
前記第1挟持部及び前記第2挟持部それぞれの前記基部は、
前記ベース部材に対し、着脱可能に取り付けられている
ことを特徴とする引張試験器用把持具。
【請求項4】
試験対象の被把持物の一方側と他方側とをそれぞれ把持する一対の引張試験器用把持具と、
前記一対の引張試験器用把持具を互いに遠近させる駆動手段と、
を有する引張試験器であって、
前記一対の引張試験器用把持具のそれぞれを、
基部どうしが互いに連結されるとともに、常には前記基部と反対側の先端部どうしが互いに離間するように構成された第1挟持部及び第2挟持部と、
前記第1挟持部及び前記第2挟持部の前記先端部に、互いに歯先が向かい合うようにそれぞれ設けた第1爪部及び第2爪部と、
互いに連結された前記第1挟持部及び前記第2挟持部の外周を取り囲むようにそれら第1挟持部及び第2挟持部をまとめて挿通し、当該第1挟持部及び当該第2挟持部の長手方向に移動自在に設けられた移動部材と、
を有し、
前記移動部材を前記基部側に移動させると前記第1爪部と前記第2爪部とが離間し、前記移動部材を前記先端部側に移動させると前記第1爪部と前記第2爪部とが近接する
ように構成したことを特徴とする、引張試験器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験対象の被把持物を把持するための引張試験器用把持具及びそれを備えた引張試験器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試験対象の被把持物の引張試験を行うための引張試験器においては、試験対象の被把持物の両端部をそれぞれ把持する一対のグリップ(引張試験器用把持具)を備えており、引張試験器用把持具同士が接近・離反可能に構成されている。そして、引張試験の際には、引張試験器用把持具間を離反させることによって、被把持物に引張負荷を与えることができる。ここで、引張試験器用把持具としては、把持具本体に収容された一対の掴み歯を把持具本体に形成された斜面に沿って移動させることによって被把持物を挟着/解放する形式の把持具(例えば、特許文献1参照)など、種々の形式のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の引張試験器用把持具では、掴み歯同士の間で試験対象の被把持物を挟むときの力を調節することが難しく、被把持物への把持が緩みやすいことがある。特に、生体などが試験対象となる場合には、被把持物への把持が緩まない程度の力加減で被把持物を挟むことが要求される。
また、上記従来の引張試験器用把持具では、掴み歯の挟み代が大きいため、被把持物における挟み代を確保することが必要になる。しかし、生体などが試験対象となる場合には、連続的に形成された硬さの異なる複数の組織の一部だけを挟むことが必要になることもあり、このような場合には、被把持物において挟み代を確保することが難しく、ピンポイントで被把持物の所望の箇所を掴むことが難しい。
【0005】
本発明の目的は、試験対象の被把持物を挟むときの力を簡単に自在に調節でき、被把持物への把持を緩みにくくできる引張試験器用把持具及びそれを備えた引張試験器を提供することにある。また、被把持物において挟み代を十分に確保できない場合にも対応可能で、ピンポイントで被把持物の所望の箇所を掴むことができる引張試験器用把持具及びそれを備えた引張試験器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、引張試験器に装着され、試験対象の被把持物を把持するための引張試験器用把持具であって、基部どうしが互いに連結されるとともに、常には前記基部と反対側の先端部どうしが互いに離間するように構成された第1挟持部及び第2挟持部と、前記第1挟持部及び前記第2挟持部の前記先端部に、互いに歯先が向かい合うようにそれぞれ設けた第1爪部及び第2爪部と、互いに連結された前記第1挟持部及び前記第2挟持部の外周を取り囲むようにそれら第1挟持部及び第2挟持部をまとめて挿通し、当該第1挟持部及び当該第2挟持部の長手方向に移動自在に設けられた移動部材と、を有し、前記移動部材を前記基部側に移動させると前記第1爪部と前記第2爪部とが離間し、前記移動部材を前記先端部側に移動させると前記第1爪部と前記第2爪部とが近接するように構成したことを特徴とする。
【0007】
本願発明の引張試験器用把持具では、移動部材を基部側に移動させたり先端部側に移動させたりすることで第1・第2爪部の間の距離を調整できるため、爪部同士の間で試験対象の被把持物を挟むときの力を簡単に自在に調節できる。その際、移動部材と第1・第2挟持部との間の適宜の摩擦により移動部材を任意の場所で固定できるので、被把持物への把持が緩むことがない。
【0008】
また、本願発明の引張試験器用把持具では、爪部を十分に細くしても所望の把持力を得ることができるので、被把持物において挟み代を十分に確保できない場合にも対応可能であり、ピンポイントで被把持物の所望の箇所を掴むこともできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、試験対象の被把持物を挟むときの力を簡単に自在に調節でき、被把持物への把持を緩みにくくできる。また、被把持物において挟み代を十分に確保できない場合にも対応可能で、ピンポイントで被把持物の所望の箇所を掴むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による引張試験器を表す全体構造図である。
【
図2】本発明の一実施形態による引張試験器用把持具を表す斜視図(第1爪部と第2爪部とが離間した状態)である。
【
図7】本発明の一実施形態による引張試験器用把持具を表す斜視図(第1爪部と第2爪部とが近接した状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
<引張試験器の全体構造及び動作>
本実施形態による引張試験器1を説明する図を
図1に示す。本実施形態による引張試験器1は、マイクロメータヘッド12を利用して引張試験器用把持具3,3’を駆動する構造を有している。マイクロメータヘッド12は、ねじの回転に対応して軸線方向に移動するスピンドルの送り量を、スリーブ及びシンブルの目盛によって読み取ることが可能な測定器であり、精密で超低速の駆動が可能となっている。また、引張試験器1は、力を測定するためのロードセル5を有する。マイクロメータヘッド12はシンブルを回転させることにより駆動する。シンブルにはプーリ11が固定され、そのプーリ11を駆動するための駆動源としては、サーボモータ8が用いられ、駆動伝達装置としては、ベルト10等が用いられる。駆動によりシンブルの位置が動くため、それを補う十分な幅のプーリ11を有するものが好ましい。
【0013】
具体的には、引張試験器1は、基礎台4の上にマイクロメータヘッド11、ロードセル5等を支える支持台6が脚7により設けられている。上側の引張試験器用把持具3はロードセル5の下端部に固定されている。下側の引張試験器用把持具3’は、マイクロメータヘッド12のスピンドルの上端部に固定され、サーボモータ8により上下に昇降するように駆動される。サーボモータ8の駆動力はそのシャフトに設けられたプーリ9からベルト10によりプーリ11に伝達され、
プーリ11のシャフトからマイクロメータヘッド12を介して引張試験器用把持具3’に伝達される。これにより、引張試験器用把持具3’は微速度で昇降を制御することができるようになっている。つまり、サーボモータ8、プーリ9、ベルト10、プーリ11、及び、マイクロメータヘッド12は、一対の引張試験器用把持具3,3’を互いに遠近させる駆動手段として機能している。
【0014】
なお、ここでは、引張試験器1として、マイクロメータヘッド12を有する構造を使用しているが、これに限定されるものではなく、他の構造の引張試験器を使用してもよい。
【0015】
<引張試験器用把持具の構造>
次に、本実施形態による引張試験器用把持具3,3’を説明する図を
図2~
図8に示す。なお、引張試験器用把持具3と引張試験器用把持具3’はいずれも同じ構造であるため、以下の説明では両把持具3,3’の各部に同じ符号を付している。
【0016】
引張試験器用把持具3,3’は、第1及び第2挟持部30,40と、第1及び第2爪部34,44と、移動部材50と、を有している。
【0017】
第1及び第2挟持部30,40はそれぞれ、細長い略板状の部材であり、基部32,42と反対側の先端部33,43どうしが互いに離間して配置されている。ここでは、軸心Oを挟んで互いに左右に対向するように第1及び第2挟持部30,40が設けられている(
図2、
図3、
図5、
図7及び
図8参照)。具体的には、第1挟持部30は、基部32から軸心Oから離れる方向に傾斜しながら延びる傾斜部31を有しており、傾斜部31の先端に軸心Oに近づく方向に延びる先端部33が形成されている。第2挟持部40は、基部32に対して軸心Oを挟んで左右に対向するように配置された基部42から軸心Oから離れる方向に傾斜しながら延びる傾斜部41を有しており、傾斜部41の先端に軸心Oに近づく方向に延びる先端部43が形成されている。これにより、第1挟持部30の傾斜部31と第2挟持部40の傾斜部41とは、基部32,42側から先端部33,43側に向かうにつれて離間距離が大きくなっている。なお、傾斜部31,41の離間距離は、基部32,42付近で最小(=離間距離W1)になっている(
図3参照)。基部32,42はそれぞれ、傾斜部31,41の基端から軸心Oから離れる方向に延びる部分である。基部32,42にはそれぞれ、ベース部材60(後述)にネジ止めするための固定孔35,45と、ベース部材60に係止するための係止爪36,46と、が形成されている。なお、ここでは、基部32,42のそれぞれに2つの係止爪36,46が形成されているが(
図5参照)、これに限定されるものではない。
【0018】
第1及び第2爪部34,44は、被把持物2を把持する部分であり、第1及び第2挟持部30,40の先端部33,43にそれぞれ設けられている。第1及び第2爪部34,44は、軸心Oを挟んで互いに歯先が向かい合うように設けられている(
図2及び
図7参照)。
【0019】
また、引張試験器用把持具3,3’は、第1挟持部30及び第2挟持部40それぞれの基部32,42が設けられるベース部材60をさらに有している。そして、第1挟持部30及び第2挟持部40それぞれの基部32,42は、ベース部材60を介し、互いに連結されている。具体的には、ベース部材60は、略円形状の部材であり、基部32,42の固定孔35、45に対応する位置に固定孔62,64と、基部32,42の係止爪36,46を嵌め込むための係止孔63,65と、が形成されている(
図3、
図6及び
図8参照)。これにより、第1挟持部30及び第2挟持部40それぞれの基部32,42は、係止爪36,46をベース部材60の係止孔63,65に嵌め込むことによって係止され、固定孔35、45及び固定孔62,64の位置で基部固定ネジ70,80によってネジ止めされている(
図2、
図3、
図5、
図7及び
図8参照)。言い換えれば、基部32,42は、ベース部材60に対して、基部固定ネジ70,80や係止爪36,46によって、着脱可能に取り付けられている。また、ベース部材60には、軸心Oを中心とする固定孔61が形成されており(
図6参照)、ベース固定ネジ90によってロードセル5の下端部やマイクロメータヘッド12のスピンドルの上端部に回転不能に固定されている(
図2、
図3、
図7及び
図8参照)。
【0020】
移動部材50は、第1及び第2挟持部30,40の外周を取り囲むようにまとめて挿通し第1及び第2挟持部30,40の長手方向に移動自在な部材である。具体的には、移動部材50は、略平板状の部材であり、略中央に第1及び第2挟持部30,40の傾斜部31,41を挿通する角孔51が形成されている。傾斜部31,41が離間する方向の角孔51の寸法W2は、傾斜部31,41の最小離間距離W1と略同じ又はわずかに大きくなるように設定されている(
図2、
図3及び
図4参照)。移動部材50には、移動部材50を第1及び第2挟持部30,40の長手方向に移動させる際に、移動部材50を指で摘みやすくするための摘み部52が形成されている。ここでは、摘み部52は、水平方向に突出した略円形状の部分である。これにより、移動部材50を基部32,42側(すなわち、
図7及び
図8の矢印Cとは反対の方向)に移動させると、傾斜部31,41が
図7及び
図8の矢印Dとは反対の方向に移動して、引張試験器用把持具3,3’は、
図2及び
図3に示されるように、第1爪部34と第2爪部44とが離間した被把持物2を把持しない状態になる。また、移動部材50を先端部33,43側(すなわち、
図7及び
図8の矢印Cの方向)に移動させると、傾斜部31,41が
図7及び
図8の矢印Dの方向に移動して、引張試験器用把持具3,3’は、
図7及び
図8に示されるように、第1爪部34と第2爪部44とが近接した被把持物2を把持する状態になる。
【0021】
<引張試験器用把持具の操作>
本実施形態による引張試験器用把持具3,3’では、移動部材50の操作によって、試験対象の被把持物2を把持することができるようになっている。ここで、本実施形態による引張試験器用把持具3,3’は、生体などが試験対象となる場合に有利な構造を有している。
【0022】
引張試験器用把持具3,3’によって試験対象の被把持物2を把持する際には、まず、
図2及び
図3に示すように、移動部材50の摘み部52を指で摘んで第1及び第2挟持部30,40の基部32,42側に移動させることによって、第1爪部34と第2爪部44とが離間した状態にしておく。
【0023】
次に、
図3に示すように、第1爪部34と第2爪部44との間に被把持物2を挟む。このとき、第1及び第2爪部34,44が細いため、被把持物2の挟み代を確保する必要がない。また、生体などが試験対象となる場合には、連続的に形成された硬さの異なる複数の組織の一部だけを挟むことができる。
【0024】
次に、
図7及び
図8に示すように、移動部材50の摘み部52を指で摘んで第1及び第2挟持部30,40の先端部33,43側に移動させることによって(
図7及び
図8の矢印C参照)、第1爪部34と第2爪部44とが近接した状態(
図7及び
図8の矢印D参照)にして、引張試験器用把持具3,3’によって被把持物2を把持する。このとき、移動部材50を移動させる程度によって、被把持物2を挟む力を簡単に調節することができるため、生体などが試験対象となる場合であっても、被把持物2への把持が緩まない程度の力加減で被把持物2を挟むことができる。
【0025】
上記のようにして引張試験器用把持具3,3’によって試験対象の被把持物2を把持した後は、引張試験器1の駆動手段(サーボモータ8、プーリ9、ベルト10、プーリ11、及び、マイクロメータヘッド12)によって引張試験器用把持具3,3’を駆動して引張試験を行う。
【0026】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の引張試験器1では、試験対象の被把持物2を把持するための引張試験器用把持具3,3’が、基部32,42と反対側の先端部33,43どうしが互いに離間した第1及び第2挟持部30,40と、第1及び第2挟持部30,40の先端部33,43に設けられた第1及び第2爪部34,44と、第1及び第2挟持部30,40の外周を取り囲むようにまとめて挿通し第1及び第2挟持部30,40の長手方向に移動自在な移動部材50と、を有しており、移動部材50を基部32,42側に移動させると第1爪部34と第2爪部44とが離間し、移動部材50を先端部33,43側に移動させると第1爪部34と第2爪部44とが近接するように構成されている。
【0027】
このような構成を有する本実施形態の引張試験器1では、引張試験器用把持具3,3’において、移動部材50を基部32,42側に移動させたり先端部33,43側に移動させたりすることで第1・第2爪部34,44の間の距離を調整できるため(
図2、
図3、
図7及び
図8参照)、爪部34,44同士の間で試験対象の被把持物2を挟むときの力を簡単に自在に調節できる。その際、移動部材50と第1・第2挟持部30,40との間の適宜の摩擦により移動部材を任意の場所で固定できるので、被把持物2への把持が緩むことがない。
【0028】
また、本実施形態の引張試験器1では、引張試験器用把持具3,3’において、爪部34,44を十分に細くしても所望の把持力を得ることができるので、被把持物2において挟み代を十分に確保できない場合にも対応可能であり、ピンポイントで被把持物2の所望の箇所を掴むこともできる。
【0029】
また、本実施形態では特に、引張試験器用把持具3,3’が、第1挟持部30及び第2挟持部40それぞれの基部32,42が設けられるベース部材60をさらに有しており、第1挟持部30及び第2挟持部40それぞれの基部32,42が、ベース部材60を介し、互いに連結されている。しかも、第1挟持部30及び第2挟持部40それぞれの基部32,42は、ベース部材60に対し、着脱可能に取り付けられている。このため、用途や被把持物2の態様に応じて、種々の種類の第1・第2挟持部30,40を交換することが可能である。
【0030】
<変形例>
上記実施形態の引張試験器用把持具3,3’においては、ベース部材60が、軸心Oの位置でベース固定ネジ90によって、ロードセル5の下端部やマイクロメータヘッド12のスピンドルの上端部に回転不能に固定されている(
図2、
図3、
図7及び
図8参照)。この場合には、2つの挟持部30,40(爪部34,44)で試験対象の被把持物2を把持する角度が常に同じ角度となる。
【0031】
そこで、本変形例では、ベース部材60を軸心Oの位置でロードセル5の下端部やマイクロメータヘッド12のスピンドルの上端部に回転可能な状態で固定するようにしている。例えば、ベース固定ネジ90の締め付け力を調整してベース部材60を回転可能に構成することができる。これにより、ベース部材50が回転することで2つの挟持部30,40で試験対象の被把持物2をいろいろな角度から自在に把持することができる。なお、このとき、抵抗なく回転するようでは不安定になるおそれがあるため、回転するとしても摩擦抵抗を有する状態にするか、若しくは、ダイヤル式になっていて、力を入れないと回転しないようにすることが好ましい。
【0032】
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0033】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0034】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 引張試験器
2 被把持物
3,3’ 引張試験器用把持具
8 サーボモータ(駆動手段)
9,11 プーリ(駆動手段)
10 ベルト(駆動手段)
12 マイクロメータヘッド(駆動手段)
30 第1挟持部
40 第2挟持部
32,42 基部
33,43 先端部
34 第1爪部
44 第2爪部
50 移動部材
60 ベース部材