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  • 特開-植物の生育方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168807
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】植物の生育方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/04 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
A01G7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021097641
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】712007935
【氏名又は名称】赤松 里志
(71)【出願人】
【識別番号】513034844
【氏名又は名称】京浜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤松 里志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 靖雄
(57)【要約】
【課題】磁場を用いた植物の生育の調節方法を提供する。
【解決手段】地磁気程度の直流磁界と、それに直交する周波数スイープ方式によって形成された10KHz以下の交流磁界を用いて植物の生育の調整をおこなう。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超低周波交流磁界と直流磁界が直交するよう構成した磁界中に植物を曝露せしめる植物の生育方法であって、前記超低周波交流磁界が周波数スイープ方式によって形成されている植物の生育方法。
【請求項2】
請求項1の植物生育方法であって、前記超低周波交流磁界を、直交磁界の面内で約±5度以内の範囲で揺動せしめる植物生育方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、植物に交流磁界と直流磁界からなる直交磁界を曝露することによる植物の栽培方法および植物の生育促進装置を提供する。
【発明に属する技術分野】
【0002】
本発明は、植物の生育促進・抑制と植物の特定物質の調節に関する。
特に地磁気レベルから10mT(100ガウス)以下の直流磁界と、10KHz以下の超低周波(VLF以下)交流磁界からなる直交磁界に植物を曝露せしめることにより、植物の生育に必要な特定物質の活性化をおこない植物の生育促進・抑制をおこなう方法及び装置に関する。
なお、本件において「超低周波交流磁界」とは、10KHz以下の周波数の交流磁界を意味する。
【背景技術・従来技術】
【0003】
植物は、光、水、温度、二酸化炭素、肥料などの植物の生育に必要な物質によって生育するが、物理的な電磁波、電界、磁界などに曝露されることで刺激を受け発芽、生育に反応を示す事が知られている。
【0004】
文献(1)は、『低周波刺激による光合成促進方法』に関し、その概要は1000Hz以下の低周波刺激を植物に付与し、植物を栽培する方法に係るものである。
【0005】
次に文献(2)は、『植物の生長促進方法』に関し、その概要は、複数に変化する赤外線、低周波の交番磁気若しくは超低周波音波等の微粒子、又は静電気の全部又は一部からなる情報信号を直接又は一定の物質を介して植物に供与して生育の促進を図る方法に係るものである。
【0006】
次に文献(3)は、『植物の生長促進方法』に係り、その概要は、クロスコイルを用いた300Hz以下の交流磁界と100μT以下の直流磁界が直交する磁界中に植物を曝露させることによる生長促進方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献1】特開2004-89031号公報
【特許文献2】特開平3-183419号公報
【特許文献3】特開2014-14297号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来の植物生育方法は、単に物理的な電磁波、電界、磁界などを植物体に曝露せしめて刺激を与えることにより発芽、生育促進がおこなわれていた。
また、LED光を利用した植物の生育促進に用いる光の波長は非常に短い波長のため、植物体内、培養液、水、土壌内部などに浸透しない問題があった。
【0008】
文献3は直交磁界を用いて植物の生育に必要な成分を励起・活性化するものであるが、植物の生育に必要な複数の成分を同時に励起・活性化できないことに加え、必然的に存在する直流磁界である地磁気に揺らぎや交流磁界発生装置の設置誤差などにより磁界の直交性が得られず、十分な励起・活性化ができないなどの問題があった。
【0009】
本発明は、これらの問題を解決するために、植物の生育に必要な特定物質(必須元素)の核種を励起状態とすることで、植物によるその特定成分の吸収を調整可能として、植物の生育促進・抑制を図る方法を提供するものであって、特に「核磁気共鳴原理」に基づく方法を用いつつ、複数の特定成分を同時に励起可能とするとともに、地磁気の存在下でもその複数の特定成分の同時励起を可能とする方法に関する。
また、本発明方法は超低周波交流磁界と直流磁界を用いることで植物体内、液体(培養液、水など)、土壌内部への浸透が可能となり、より広い領域の活性化が可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、超低周波磁界の発生に任意波形発生回路手段を用いて周波数スイープ方式とすることで、複数のターゲット物質(核種)を同時期に励起・活性化を図ることを意図する。
【0011】
また超低周波交流磁界を用いることにより植物体内、液体、土壌内部に浸透を図ることを意図とする。
【0012】
請求項2の発明は、地磁気の全磁力の変動(磁界の強さ・方向)と設置誤差・精度を補い、核種の励起・活性化の確度を図ることを意図とする。
【0013】
またヘルムホルツコイルによる交流磁界と地磁気を利用することで曝露領域の均一性を高め植物の励起・活性化領域の拡大を図ることを意図とする。
【0014】
本発明者は上記した課題を達成するために、前記植物に直流磁界と波長の長い超低周波交流磁界を直交させ植物のCO2吸収量の光合成調査、生育調査(乾物重、生体重など)と構成物質の含有量の実験を繰り返した。
【0015】
その結果、植物、薬用植物の生育段階(発芽期、成長期、成熟期)において直流磁界とその強度に対応した周波数の交流磁界を直交させた直交磁界中に植物を曝露させ、植物の生育に必要な特定成分の核種に核磁気共鳴を生起せしめ、当該核種を励起することで、より細かな前記植物の生長促進・抑制と植物の特定物質の調節もおこなうことを提供するとともに、水、養液、土壌への活性化も提供する。
【0016】
前記の直流磁界の強度と超低周波交流磁界周波数の関係式は
2πf=γH (1式)
(fは交流磁界の周波数(共鳴周波数)、γは核のジャイロ磁気係数(磁気回転比)、Hは直流磁界の強度で、直流磁界の強度と交流磁界の強度は依存しない。)
ただし、上記(1式)関係式は、交流磁界と直流磁界の直交が絶対条件となる。
【0017】
前記条件下におき、特定物質(植物の必須元素・核種)に対応した前記関係式(1)式の2πf=γHより直流磁界と超低周波(VLF以下)交流磁界を植物に曝露することで植物の生長促進・抑制と構成物質の調節が可能であることを見出した。
【0018】
任意波形発生回路手段1で複数の周波数を有する周波数スイープ方式を用い複数の特定物質を同時に活性化をさせる装置を提供する。直流磁界、超低周波交流磁界は土壌、液体(水、養液)、植物体内に十分に浸透することを特徴とする植物の生育促進方法。
【0019】
また、直流磁場の変動(大きさ・方向)による共鳴・活性化の低下を補うために超低周波交流磁界コイル5a、5bを約±5度以内で回転させる揺動手段7を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の態様(形態)を説明する。
図2は地球の地磁気の磁界(約50μT)を利用した植物栽培方法で、図3は任意波形とスイープ波形を表す。図4は各核種の直流磁界に対応した交流磁界周波数(共鳴周波数)の値を示す。
超低周波交流磁界は前記地磁気に直交交差の作用下で核磁気共鳴をおこし植物、水、培養液の特定物質を共鳴・活性化する。
又、本発明では地磁気に重畳させて直流電源3と直流用ヘルムホルツコイル6a、6bで、人為的に50μT~10mT(0.5ガウス~100ガウス)以下の直流磁界を作用させてもよい。
【0021】
任意波形発生回路手段1は、植物体の目的にあった波形(サイン波、方形波、周波数スイープ)を設定する。前記手段は電力増幅器2を介して交流用ヘルムホルツコイル5a、5bから超低周波交流磁界を植物体8に曝露する。前記交流用ヘルムホルツコイル5a、5bは、揺動手段7により、直交磁場平面内で±5度以内回転の揺動運動をおこない、直交磁場の形成確度を高めつつ植物の光合成・活性化の向上を高め生育促進をおこなう。
【実施例0022】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例では、播種から収穫期間を発芽、成長、成熟期の3段階に分け、水の水素、根のカリウム、葉の窒素、細胞のカルシュウムの4種類の特定物質(核種)の励起・活性化をおこなった。
交流磁界周波数は、調査実験地の地磁気と各核種のジャイロ係数(磁気回転比)より前記1式から算出し、前記4種類の核種に関する交流磁界周波数(共鳴周波数)で周波数スイープさせつつ、直流磁界強度と同程度の交流磁界強度を40μTとし、交流磁界発生装置を±5度の範囲で揺動させて実験地の地磁気による直流磁界と磁界を直交させて植物に曝露し、光合成、生育、成分調査実験をおこなった。
なお、交流磁界の強度は直流磁界の強度に依存しないが、動植物への影響、消費電力量等を考慮して直流磁界と同程度の磁界強度を採用した。
【実施例0024】
<小松菜の光合成調査>
小松菜(品種名:コマツナ、カネコ種苗社)の種子を養液栽培器の栽培スポンジに播種し、定期的に培養液(OTAアグリ(株):1号、2号混合)を注入しながら光合成調査を約1カ月間おこなった。
発芽期、成長期、成熟期で前記4種類の特定物質を活性化し、二酸化炭素計(株式会社FUSO製:TES-1370型)で光合成量を測定した。密閉された養液栽培器内のCO2量、1000ppmで計測スター
調査をおこなった。
その結果、本調査で植物の環境磁場を調節すること、すなわち直流磁場に超低周波交流磁界を直交せしめた直交磁場に植物を曝露すること(以下同様)でCO2吸収量の調節が出来、植物の生育調節・抑制と構成物質の調節が可能であることを確認した。
【0025】
表-1〈光合成調査〉
なお、下記の表-1中、成熟期の2回目の実験結果は1回目の結果と異なる「抑制」の結果となってるが、表-2に示した重量に関する実験結果では、1回目、2回目ともに重量増加、すなわち成長促進の結果が得られていることから、何らかの外的要因で生じたものと推察される。
【実施例0026】
<小松菜の生育調査>
実施例1と同様に小松菜(品種名:コマツナ、カネコ種苗社)の種子を養液栽培器の栽培スポンジに播種し、定期的に培養液(OTAアグリ(株):1号、2号混合)を注入し小松菜の生育状況の実験をおこなった。試験区には毎日朝6時~17時間まで実験地の地磁気による直流磁界と直交する超低周波交流磁界を曝露せしめる。なおターゲット物質の核種、スイープ周波数は実施例1の光合成調査と同様である。標準区は曝露なし(実験地の地磁気による直流磁界のみ)で両区とも約1カ月後に収穫し生育調査(生体重と乾物重)をおこなった。
その結果、植物の環境磁場を調節することで光合成産物(乾物重)の増加を確認した。
【0027】
表-2〈生育調査〉
【実施例0028】
<カイワレの成分調査>
カイワレの種子を養液栽培器に播種し、培養液はOTAアグリ(株):1号、2号混合で10日後に収穫し定量成分分析をおこなった。
直交磁場を形成する交流磁場のターゲット物質の核種は、前記実施例1の小松菜の発芽、成長、成熟期と同様でおこなった。
成分分析はICP発光分析装置(神奈川県産業技術センター)でおこなった。
本調査で植物の環境磁場を調節することでターゲット核種とした構成物質の増加を確認した。
なお、マグネシウム(Mg)は励起ターゲット核種ではないが、その共鳴周波数が成長期のスイープ範囲に含まれていたためターゲット核種と同様に励起されたものと考えられる。
【0029】
表-3〈成分調査〉
【0030】
実施例1~3の結果より、光合成が核磁気共鳴原理を基とした交流磁場の曝露によって、植物の成長の抑制、促進の効果の確認ができた。また、生育調査の生体重、乾物重測定から交流磁場の有効性を確認した。
又、成分調査より、交流磁場を重畳した直交磁界に曝露された試験区の必須元素(K、Ca)の含有量が多く含まれることを確認した。
【発明の効果】
【0031】
本発明の植物の生育方法は培養液を用いた水耕栽培、ハウス栽培と圃場栽培において植物体の地上部、地下部と養液へ直流磁場と交流磁場の2種類の磁界を直交曝露することにより、植物の光合成活性を人為的に操作することができる。
【0032】
また、植物の生育途中で適切な核種に直交曝露をおこない励起・活性化をおこない成長促進と抑制及び植物の構成物質の調節をすることができる。
【0033】
更に、栄養素の欠乏や過剰などにより生育が阻害されるような条件下において、植物体の光合成能力が低下した場合においても、光合成活性を回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】変動磁場(交流磁場)を用いた水耕栽培の模式図。
図2】本発明の植物生育促進装置の説明図。
図3図1に表した任意波形発生回路手段の波形の種類。
図4】特定物質(ターゲット物質・核種・植物の必須元素)の交流磁界周波数(共鳴周波数)値と直流磁界値の一覧表
【符号の説明】
【0035】
1…任意波形発生回路手段、2…電力増幅器、3…直流電源、4…切替器、5a、5b,…交流磁界用ヘルムホルツコイル、6a、6b…直流磁界用ヘルムホルツコイル、7…揺動手段、8…植物体、9…養液栽培器
図1
図2
図3
図4