(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168809
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】非酸化型染毛剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/368 20060101AFI20221031BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20221031BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
A61K8/368
A61Q5/10
A61K8/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021097643
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】399091120
【氏名又は名称】株式会社ピカソ美化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 弘之
(72)【発明者】
【氏名】川上 昌宏
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB332
4C083AB352
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC152
4C083AC182
4C083AC232
4C083AC302
4C083AC472
4C083AC491
4C083AC492
4C083AC932
4C083AD212
4C083AD351
4C083AD352
4C083CC36
4C083DD06
4C083EE01
4C083EE24
(57)【要約】
【課題】施術の簡便性に優れ、且つ、金属塩を含む第2剤の製剤安定性が良好であり、予め混合して使用したとしても染色効果に悪影響を及ぼさない非酸化型の染毛剤の提供。
【解決手段】金属塩と反応して発色する物質のうち少なくともラッカイン酸を含む酸性の第1剤と、金属塩を含む酸性の第2剤とを少なくとも備え、用時混合してなる非酸化型染毛剤であって、前記第2剤は、有機酸と、カラギーナンとを含むことを特徴とする非酸化型染毛剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属塩と反応して発色する物質のうち少なくともラッカイン酸を含む酸性の第1剤と、金属塩を含む酸性の第2剤とを少なくとも備え、用時混合してなる非酸化型染毛剤であって、
前記第2剤は、有機酸と、カラギーナンとを含むことを特徴とする非酸化型染毛剤。
【請求項2】
前記ラッカイン酸の含有量が、0.5~4質量%である請求項1に記載の非酸化型染毛剤。
【請求項3】
前記第1剤のpHが1.8~5の範囲であり、前記第2剤のpHが1.8~5の範囲である請求項1又は2に記載の非酸化型染毛剤。
【請求項4】
白髪隠し用であることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の非酸化型染毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非酸化型染毛剤に関する。さらに詳しくは、第1剤と第2剤とを少なくとも備えており、用時混合して用いられる非酸化型染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
髪を染色する染毛剤には、一時染毛剤、半永久染毛剤、永久染毛剤がある。これら染毛剤の中でも永久染毛剤は、染色性が高く、染毛後の色落ちが抑えられることから、最も幅広く普及している。一般的な永久染毛剤としては、酸化染料とアルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤からなる酸化染毛剤がある。これら酸化染毛剤は、第1剤と第2剤とを予め混合して使用することから、施術における簡便性にも優れている。
【0003】
しかしながら、酸化染毛剤は、アルカリ剤や酸化剤の影響により、毛髪がダメージを受けるだけでなく、一部の酸化染料によってアレルギー反応を引き起こすリスクがあり安全性に問題があると言われている。そこで従来から、毛髪へのダメージが低く、かつ、アレルギー反応を引き起こさない安全性の高い染毛手段として、タンニン、没食子酸、ラッカイン酸などのポリフェノール類と金属塩との反応を利用して染色することを特徴とする非酸化型の染毛剤が提案されている(例えば、特許文献1~5を参照)。
【0004】
このような非酸化型の染毛剤の多くは、主に中性領域に調製した第1剤中に含まれるポリフェノール類と、主に酸性領域に調製した第2剤中に含まれる金属塩とを毛髪上で反応させることにより発色させるメカニズムを有している。即ち、より良好な染色効果を発揮させるには、ポリフェノール類を含む第1剤を毛髪に塗布し、一定時間放置後に金属塩を含む第2剤を毛髪に塗布することで反応を促して染色するという、剤の個別塗布による施術方法が採用されている。
【0005】
そのため、従来の非酸化型の染毛剤は、酸化染毛剤と比較して施術工程における簡便性に劣るといった欠点がある。また、上記の如く、特有の発色メカニズムであるが故に、酸化染毛剤のように予め混合すると、混合と同時にポリフェノール類と金属塩とが反応して発色してしまうため、毛髪上での染色効果に劣るといった問題がある。そのため、従来の非酸化型の染毛剤では、予め混合して使用することが非常に困難であった。加えて、予め混合して使用するためには、金属塩を含む第2剤のpHを第1剤と同様に酸性領域にする必要があるが、酸性領域では発色性に劣り、望む髪色に染色することが難しいといった課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05-170629号公報
【特許文献2】特開平07-069850号公報
【特許文献3】特開2004-353150号公報
【特許文献4】特開2005-029550号公報
【特許文献5】特開2014-009160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、施術の簡便性に優れ、且つ、金属塩を含む第2剤の製剤安定性が良好であり、予め混合して使用したとしても染色効果に悪影響を及ぼさない非酸化型の染毛剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、金属塩と反応して発色する物質のうち少なくともラッカイン酸を含む酸性の第1剤と、金属塩を含む酸性の第2剤とを少なくとも備え、用時混合してなる非酸化型染毛剤であって、前記第2剤は、有機酸と、カラギーナンとを含むことを特徴とする非酸化型染毛剤を提供する。
【0009】
上記ラッカイン酸の含有量が、0.5~4質量%であることが好ましい。
【0010】
上記第1剤のpHが1.8~5の範囲であり、上記第2剤のpHが1.8~5の範囲であることが好ましい。
【0011】
本発明の非酸化型染毛剤は、白髪隠し用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の非酸化型染毛剤は、従来の非酸化型染毛剤の施術方法とは異なり、各剤を塗布後にそれぞれ一定時間放置させる必要がなく、予め混合して使用することから、施術時間の短縮が図れ、かつ、施術自体に手間がかからず、簡便性に格段に優れた効果を発揮する。
【0013】
また、本発明の非酸化型染毛剤は、予め混合したとしても、第2剤中に含まれる金属塩が、第1剤中に含まれる金属塩と反応して発色する物質と、穏やかに反応するように処方設計されていることから、染色に悪影響を及ぼさず、良好な染色効果を発揮させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の非酸化型染毛剤は、金属塩と反応して発色する物質のうち少なくともラッカイン酸を含む酸性の第1剤と、金属塩を含む酸性の第2剤とを少なくとも備え、用時混合してなる非酸化型染毛剤であって、上記第2剤は、有機酸と、カラギーナンとを含むことを特徴とする。
【0015】
以下、本発明の非酸化型染毛剤に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0016】
本発明の非酸化型染毛剤の第1剤は、金属塩と反応して発色する物質を含有する。これら物質を用いることにより、毛髪にダメージを与えることなく、安全に染色させることができる。
【0017】
本発明においては、上記物質の中でも、ラッカイン酸を必須成分として用いることを特徴とする。ラッカイン酸は、その配合量に応じて白髪を茶色~黒色に染色させる成分として非常に有用である。その反面、調整するpHの領域しだいでは、染色性に劣り、所望の染色効果が得られないといった欠点がある物質でもある。
【0018】
なお、上記ラッカイン酸は、市販品を用いることができる。ラッカイン酸の市販品としては、例えば、ネオレッドF(商品名,日本シェラック工業社製)などが挙げられる。
【0019】
本発明の非酸化型染毛剤の第1剤中のラッカイン酸の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、良好な染色効果を発揮させるため、第1剤100質量%中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。0.5質量%未満では、染色効果に劣るために好ましくない。また、ラッカイン酸自体の析出を抑えて製剤の安定性を維持するため、第1剤100質量%中、4質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。4質量%よりも多く配合しても発色効果に差は認められない。なお、上記ラッカイン酸の含有量は、純分に換算した量である。
【0020】
上記ラッカイン酸以外の成分としては、例えば、金属塩と反応して発色する有機化合物、並びに金属塩と反応して発色する植物抽出物などが挙げられる。これら金属塩と反応して発色する物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0021】
上記有機化合物の具体例としては、例えば、タンニン酸、没食子酸、没食子酸オクチル、没食子酸プロピル、アリザリン、イソクエルセチン、柿タンニン、カテコール、ガロタンニン、クエルセチン、クルクミン、ゲチジン、テトラヒドロパルマチン、パルマチン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、5-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、ピロガロール、フェナントラキノン、ブラジリン、フロログルシン、ヘマテイン、ベルベリンなどが挙げられる。これら有機化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0022】
上記植物抽出物の具体例としては、例えば、アカブドウ、アカメガシワ、アカネ、アセンヤク、ウーロン茶、ウコン、ウツボグサ、ウワウルシ、オウゴン、オウバク、オウレン、オオイタドリ、オトギリソウ、キハダ、クルミ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゲンノショウコ、紅茶、コウホネ、コガネバナ、コノテガシワ、五倍子、ザクロ、サンザシ、シオン、シャクヤク、ジユ、スイカズラ、スオウ、セイヨウノコギリソウ、センナ、チョウジ、ドクダミ、ニワトコ、ネジキ、ハマビシ、ビンロウ、フキタンポポ、ブラジルウッド、ヘンナ、ボタン、マグワ、ミノバラニノキ、メハジキ、メリッサ、ヤマモモ、ユキノシタ、緑茶、レンゲソウ、ローズマリー、ログウッドなどが挙げられる。これら植物抽出物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0023】
本発明においては、良好な染色効果を発揮させる観点から、上記ラッカイン酸の他、上記した金属塩と反応して発色する物質の中でも、有機化合物を用いることが好ましく、染色効果を高める観点から、これら有機化合物の中でも、タンニン酸、没食子酸、クルクミンおよびヘマテインから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0024】
なお、上記金属塩と反応して発色する物質は、市販品を用いることができる。タンニン酸の市販品としては、例えば、タンニン酸(商品名,富士化学工業社製)などが挙げられる。没食子酸の市販品としては、例えば、没食子酸(商品名,ディー・エス・エス社製)などが挙げられる。クルクミンの市販品としては、例えば、S-カラーイエローUI(商品名,丸善製薬社製)などが挙げられる。ヘマテインの市販品としては、例えば、ヘマテイン<イチマル>(商品名,一丸ファルコス社製)などが挙げられる。
【0025】
本発明の非酸化型染毛剤の第1剤中、上記ラッカイン酸以外の金属塩と反応して発色する物質の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、良好な染色効果を発揮させるため、第1剤100質量%中、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、安全性を担保するため、第1剤100質量%中、2質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましい。なお、上記金属塩と反応して発色する物質の含有量は、純分に換算した量である。また、本発明の非酸化型染毛剤の第1剤中に配合されるラッカイン酸以外の金属塩と反応して発色する物質の含有量の合計量である。
【0026】
本発明の非酸化型染毛剤の第1剤中には、上記金属塩と反応して発色する物質を毛髪内部へと浸透させ、優れた染色効果を発揮させる観点から、浸透剤を含有させることが好ましい。
【0027】
用いられる浸透剤としては、例えば、炭素数3~8の一価アルコール、芳香族アルコール、環状アルコール、N-アルキルピロリドン、炭酸アルキレンなどが挙げられる。これら浸透剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0028】
上記浸透剤の具体例としては、例えば、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールなどの炭素数2~8の一価アルコール;ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、1-フェノキシ-2-プロパノール、フェニルジグリコール、α-メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、p-アニシルアルコール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、フェネチルアルコール、POE(2)ベンジルアルコールエーテルなどの芳香族アルコール;シクロヘキサノールなどの環状アルコール;N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-オクチルピロリドンなどのN-アルキルピロリドン;炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどの炭酸アルキレンなどが挙げられる。なお、上記「POE」とは、酸化エチレンを表し、括弧内の整数は、酸化エチレンの付加モル数を表す。
【0029】
本発明においては、上記金属塩と反応して発色する物質の毛髪内への浸透性を高めるため、上記浸透剤の中でも、芳香族アルコールを用いることが好ましく、これら中でも、格段に優れた浸透効果を発揮させるため、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェネチルアルコールおよびPOE(2)ベンジルエーテルから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0030】
本発明の非酸化型染毛剤の第1剤中の浸透剤の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、上記金属塩と反応して発色する物質の浸透性を高めるため、第1剤100質量%中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、製剤の安定性を維持するため、さらには、安全性を担保するため、第1剤100質量%中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。なお、上記浸透剤の含有量は、純分に換算した量である。また、本発明の非酸化型染毛剤の第1剤中に配合される浸透剤の含有量の合計量である。
【0031】
本発明の非酸化型染毛剤の第1剤中には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に、例えば、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、多価アルコール、高級アルコール、脂肪酸エステル油、粘度調整剤、皮膜形成剤、防腐剤、香料、エタノールなどを目的に応じて適宜配合することができる。また、本発明の非酸化型染毛剤の第1剤の残部には精製水が用いられる。
【0032】
なお、本発明の非酸化型染毛剤の第1剤は、後述する第2剤との混合時における発色反応を穏やかにする観点、並びに上記ラッカイン酸の優れた発色効果を促し、毛髪内にて優れた染色効果を発揮させる観点から、pHを酸性領域に調整する。本発明においては、上記第1剤のpHを酸性領域に調整することができるのであれば、pH調整剤を用いても、また用いなくとも構わない。上記pH調整剤を用いる場合、その含有量は、目的とするpHに調整できる量であれば特に限定されない。
【0033】
pH調整剤を用いる場合は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、リン酸、クエン酸、乳酸、アルギニン、グリオキシル酸などを例示でき、これらの緩衝液として用いても構わない。これら成分の中でも、水酸化ナトリウム、乳酸、グリオキシル酸を用いることが好ましい。
【0034】
本発明では、混合時において金属塩と該金属塩と反応して発色する物質とが穏やかに反応するようにし、かつ、上記ラッカイン酸の優れた発色効果を促し、毛髪内にて優れた染色効果を発揮させ得る好ましいpHの範囲は、pH1.8~5の範囲であることが好ましく、pH2~4の範囲であることがより好ましい。なお、本発明において、第1剤のpHが上記pHの範囲外、特に、pH<1.6の領域やpH≧6の領域になると、ラッカイン酸に期待する色味へと毛髪を染色することができなくなるために好ましくない。また、混合時において反応が早く進み発色してしまい、毛髪内での染色効果に劣ってしまうため、望む髪色へと染めることが難しくなる。
【0035】
本発明の非酸化型染毛剤の第1剤の剤型は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、例えば、液状、ジェル状、乳液状、クリーム状などが挙げられる。
【0036】
本発明の非酸化型染毛剤の第1剤の製造方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、上記各構成成分を混合し、公知の方法、例えば、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミルなどを用いて攪拌する方法が挙げられるが、本発明はこれら製造方法にのみ限定されるものではない。
【0037】
次に、本発明の非酸化型染毛剤の第2剤について説明する。
【0038】
本発明の非酸化型染毛剤の第2剤は、金属塩を含有する。本発明において金属塩は、上記第1剤中に含まれる金属塩と反応して発色する物質を発色させる成分であり、金属塩を用いることで毛髪にダメージを与えることなく、安全に染色することができる。
【0039】
用いられる金属塩としては、例えば、鉄塩、亜鉛塩、銅塩などが挙げられる。これら金属塩は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。本発明においては、良好な染色効果を発揮させる観点から、上記金属塩の中でも、鉄塩を用いることが好ましい。
【0040】
上記鉄塩の具体例としては、例えば、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、酢酸第一鉄、酢酸第二鉄、グルコン酸第一鉄、硝酸第一鉄、乳酸第一鉄などが挙げられる。これら鉄塩は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。本発明においては、格段に優れた染色効果を発揮させるため、上記した鉄塩の中でも、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄を用いることがより好ましく、汎用性に優れる硫酸第一鉄を用いることが最も好ましい。
【0041】
なお、上記金属塩は市販品を用いることができる。硫酸第一鉄の市販品としては、例えば、硫酸第一鉄(商品名,富士化学工業社製)などが挙げられる。
【0042】
本発明の非酸化型染毛剤の第2剤中の金属塩の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、良好な染色効果を発揮させるため、第2剤100質量%中、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上である。また、製剤の保存安定性の観点から、第2剤100質量%中、25質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。なお、上記金属塩の含有量は、純分に換算した量である。また、本発明の非酸化型染毛剤の第2剤中に配合される金属塩の含有量の合計量である。
【0043】
本発明の非酸化型染毛剤の第2剤は、有機酸を含有する。本発明においては、有機酸を用いてpHを酸性領域に調整することにより、第2剤自体の安定性を高めることができる。また、混合時における金属塩との反応による発色を穏やかにすることで、上記第1剤中に含まれるラッカイン酸の優れた発色効果を発揮させることができるようになる。
【0044】
上記有機酸の具体例としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸などのジカルボン酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸などの直鎖脂肪酸;グルタミン酸、アスパラギン酸などの酸性アミノ酸;グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、α-オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などのオキシ酸などが挙げられる。これら有機酸は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0045】
本発明においては、上記第2剤自体の製剤安定性を高め、かつ、混合時における金属塩との反応による発色を穏やかにし、ラッカイン酸の優れた染色効果を発揮させることから、上記有機酸の中でも、オキシ酸を用いることが好ましく、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、クエン酸および/又はリンゴ酸を用いることが最も好ましい。
【0046】
本発明では、上記第2剤の好ましいpHの範囲は、pH1.8~5の範囲であり、pH2~4の範囲であることがより好ましい。なお、本発明において、第2剤のpHが上記pHの範囲外、特にpH≧7の領域になると混合時に反応が進み発色してしまい、毛髪内での染色性に劣ってしまうため、望む髪色へと染めることが難しくなる。
【0047】
本発明の非酸化型染毛剤の第2剤中の有機酸の含有量は、上記pHに調整できる量であり、かつ、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、上記第2剤自体の製剤安定性を高め、かつ、上記第1剤と上記第2剤との混合時における金属塩との反応による発色を穏やかにし、毛髪にて優れた染色効果を発揮させるため、第2剤100質量%中、0.05質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上である。また、使用時の安全性、並びに染色性を向上させるため、第2剤100質量%中、5質量%以下が好ましく、より好ましくは4質量%以下である。なお、上記有機酸の含有量は、純分に換算した量である。また、本発明の非酸化型染毛剤の第2剤中に配合される有機酸の含有量の合計量である。
【0048】
本発明の非酸化型染毛剤の第2剤は、カラギーナンを含有する。カラギーナンを用いることにより、第2剤自体の製剤安定性を高めるだけでなく、上記第1剤と上記第2剤の混合後の金属塩と該金属塩と反応して発色する物質との反応を穏やかにすることにも寄与する。また、塗布時の毛髪からの垂れ落ちも抑えることができ、格段に優れた染色効果を発揮させることにも寄与する。
【0049】
上記カラギーナンには、ミュー型、カッパ型、ニュー型、イオタ型、ラムダ型、クシー型、シータ型などの異性体がある、これらカラギーナンは、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。本発明においては、製剤安定性を高めることから、カッパ型、イオタ型のカラギーナンを用いることが好ましい。
【0050】
なお、上記カラギーナンは市販品を用いることができる。カッパ型カラギーナンの市販品としては、例えば、カラギーナンCSK-1(商品名,三栄源エスエフアイ社製)、カラギーナンCS-1(商品名,伊那食品工業社製)、ゲニューゲルWG、ゲニューゲルWR(商品名,何れもコペンハーゲンペクチンファクトリー社製)などが挙げられる。イオタ型カラギーナンの市販品としては、例えば、カラギーナンCSI-1(商品名,三栄源エスエフアイ社製)、ラギーナンCS-2(商品名,伊那食品工業社製)、ゲニュービスコJ-J、ゲニューゲルCJ、ゲニュービスコPJ-JPE(商品名,何れもコペンハーゲンペクチンファクトリー社製)などが挙げられる。
【0051】
本発明の非酸化型染毛剤の第2剤中のカラギーナンの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、第2剤自体の製剤安定性を良好にし、かつ、塗布時の垂れ落ちを抑えるため、第2剤100質量%中、0.3質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上である。また、上記第1剤との混合性を良好にするため、第2剤100質量%中、4質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下である。なお、上記カラギーナンの含有量は、純分に換算した量である。また、本発明の非酸化型染毛剤の第2剤中に配合されるカラギーナンの含有量の合計量である。
【0052】
また、本発明の非酸化型染毛剤の第2剤中には、混合時における酸化を防止し、金属塩との反応による発色の度合いを制御するため、例えば、アスコルビン酸および/又はその誘導体、若しくはシステインおよび/又はその誘導体などの安定化剤を更に配合させることが好ましい。
【0053】
本発明の非酸化型染毛剤の第2剤中の安定化剤の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、混合時における酸化を防止するため、第2剤100質量%中、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上である。また、安定化剤自体の変色、析出を抑え、かつ、発色反応が穏やかになり過ぎることによる染色性の低下を抑えるため、第2剤100質量%中、3質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以下である。なお、上記安定化剤の含有量は、純分に換算した量である。また、本発明の非酸化型染毛剤の第2剤中に配合される安定化剤の含有量の合計量である。
【0054】
本発明の毛髪処理剤の第2剤中には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に、例えば、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、多価アルコール、高級アルコール、脂肪酸エステル油、皮膜形成剤、上記カラギーナン以外の粘度調整剤、防腐剤、香料などを目的に応じて適宜配合することができる。また、本発明の非酸化型染毛剤の第2剤の残部には精製水が用いられる。
【0055】
本発明の非酸化型染毛剤の第2剤の剤型は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、例えば、液状、ジェル状、乳液状、クリーム状などが挙げられる。
【0056】
本発明の非酸化型染毛剤の第2剤の製造方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、上記各構成成分を混合し、公知の方法、例えば、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミルなどを用いて攪拌する方法が挙げられるが、本発明はこれら製造方法にのみ限定されるものではない。
【0057】
上記した本発明の非酸化型染毛剤では、上記第1剤と上記第2剤とを混合する際の混合比は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、良好な染色効果を発揮させる観点から、質量比(第1剤:第2剤)として、1:2~12:1であることが好ましく、1:1~10:1であることがより好ましい。
【0058】
本発明の非酸化型染毛剤は、上記第1剤と上記第2剤とを少なくとも備えることを特徴とする。即ち、本発明の非酸化型染毛剤は、上記第1剤と上記第2剤とを少なくとも備える非酸化型染毛剤キットである。本発明の非酸化型染毛剤は、上記第1剤および上記第2剤に加えて、第3剤をさらに備えていてもよい。第3剤としては、例えば、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアトリートメント剤、ヘアコンディショニング剤などが挙げられる。
【0059】
本発明の非酸化型染毛剤は、上記第1剤と上記第2剤とを少なくとも備えることで用時混合が可能となり、従来の非酸化型染毛剤ではなし得なかった施術時の手間を省くことでき、より簡便に染色を行える簡便性に優れた効果を発揮する染毛剤であると言える。また、予め混合したとしても従来の非酸化型染毛剤と同様の染色効果を発揮させることができるのも本発明の非酸化型染毛剤の特徴の一つである。
【0060】
次に、本発明の非酸化型染毛剤を用いた毛髪処理方法について説明する。
【0061】
本発明の非酸化型染毛剤は、上記第1剤と上記第2剤とを少なくとも備え、用時混合して用いられることを特徴とする。本発明においては、混合時における発色を抑えて、毛髪内で優れた染色効果を発揮させる観点から、上記第1剤と上記第2剤とを施術の直前に混合し、毛髪上に塗布することが望ましい。
【0062】
本発明の非酸化型染毛剤を用いた施術方法は、所望の効果を十分に発揮できるのであれば特に限定されないが、毛髪内への浸透をより効果的にする観点から、乾いた毛髪に混合した非酸化型染毛剤と塗布する方法を例示することができる。毛髪内で非酸化型染毛剤を馴染ませる時間は、特に限定されないが、毛髪内への上記金属塩と反応して発色する物質の浸透を高め、良好な染色効果を発揮させる観点から、10~40分間放置させることが望ましい。また、放置後は温水にて洗い流し(濯ぎ)を行うことが望ましい。
【0063】
本発明の非酸化型染毛剤は、第1剤を毛髪に塗布して一定時間放置後、第2剤を塗布して更に一定時間放置することで染色する従来の非酸化型染毛剤の施術方法と比べ、施術工程が少なく、かつ、施術時間も短縮することができるという利点がある。即ち、本発明の非酸化型染毛剤は、施術時の簡便性に格別顕著な効果を発揮するものであると言える。
【実施例0064】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。また、配合量は、特記しない限り「質量%」を表し、評価は全て恒温下(25±2℃)で実施した。
【0065】
(試料の調製1)
表1および表2に記した組成に従い、本発明の非酸化型染毛剤の第1剤を常法に準じて調製し、下記評価に供した。なお、表中の配合量は、特に表示がないものは全て純分の値である。
【0066】
(試験例1:第1剤の製剤安定性の評価)
調製した各第1剤を50mL容の透明ガラス容器に封入し、25±2℃の恒温下にて4週間保管したときの剤の状態について、下記評価基準に従い目視評価した。なお、評価は、5名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合して決定した。
【0067】
<第1剤の製剤安定性の評価基準>
○(良好):オリや析出物、若しくは変色が殆ど認められず、調製直後の状態を維持している
△(不十分):若干のオリや析出物、若しくは変色が認められるが、状態を維持している
×(不良):明らかなオリや析出物、若しくは著しい変色が認められる
【0068】
【0069】
【0070】
(試料の調製2)
表3~表6に記した組成に従い、本発明の非酸化型染毛剤の第2剤を常法に準じて調製し、表1に記した第1剤の(1-1)、若しくは(1-2)を用いて二剤式の非酸化型染毛剤を準備し、下記評価に供した。なお、表中の配合量は、特に表示がないものは全て純分の値である。
【0071】
(試料の調製3)
表7に記した組成に従い、本発明の非酸化型染毛剤の構成を充足しない第2剤を常法に準じて調製し、同様に評価した。
【0072】
(試験例2:第2剤の製剤安定性の評価)
調製した各第2剤(実施例1~16の第2剤、並びに比較例1~4の第2剤)を50mL容の透明ガラス容器に封入し、45℃の恒温槽にて4週間保管したときの剤の状態について、下記評価基準に従い目視評価した。なお、評価は、5名の専門評価員が実施し、各評価員の評価を総合して決定した。
【0073】
<第2剤の製剤安定性の評価基準>
○(良好):オリや析出物、若しくは変色が殆ど認められず、調製直後の状態を維持している
△(不十分):若干のオリや析出物、若しくは変色が認められるが、状態を維持している
×(不良):明らかなオリや析出物、若しくは著しい変色が認められる
【0074】
(試験例3:混合後の色変化の評価)
表3~4の実施例1~12、並びに表6の実施例17~20の第1剤と第2剤とを混合し、混合後、1分、5分、10分、20分、30分経過した時点における混合組成物の色の変化(濃色化)について、下記評価基準に従ってスコア付けを行った。なお、スコア付けは、5名の専門評価員が実施し、各評価員のスコア値から決定した。
【0075】
<スコア値の基準>
1:鮮やかな赤色
2:やや暗い赤色
3:暗い赤色
4:暗褐色
5:黒褐色~黒色
【0076】
(試験例4:染色性の評価)
表3~4の実施例1~12、並びに表6の実施例17~20の第1剤と第2剤とを混合し、混合直後の組成物0.8gを人毛白髪毛束(ビューラックス製)0.4gに塗布後、馴染ませるように延び広げてもらい、恒温下(25±2℃)で30分間放置した。次いで、毛髪をぬるま湯で濯ぎを行い風乾させた。
なお、毛髪の「染色性」については、染色後の毛髪と、未処理の人毛白髪毛束(ビューラックス製)の明度を、カラーリーダー(コニカミノルタ社製)を用いて測定し、未処理の白髪との明度差を示すΔL値およびΔa値から評価した。
【0077】
因みに、明度差が大きいほど染色効果が高いと言え、Δa値が高いほど赤味が強く、白髪染めには不向きとなる。したがって、本発明では、ΔL値が20より大きく(ΔL値>20)、かつ、Δa値が20よりも小さく(Δa値<20)なることが白髪染めとして優れた染色力を有していると判断した。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
本発明の非酸化型染毛剤は、予め混合して使用することから、従来の非酸化型染毛剤のように各剤を塗布後にそれぞれ一定時間放置させる必要がなく、施術時間の短縮が図れ、かつ、施術自体に手間がかからず、簡便性に格段に優れた効果を発揮していることが分かる。
【0084】
また、本発明の非酸化型染毛剤は、予め混合したとしても、第2剤中に含まれる金属塩が、第1剤中に含まれる金属塩と反応して発色する物質と穏やかに反応することから、染色に悪影響を及ぼさず、優れた染色効果を発揮していることが分かる。これに対し、本発明の非酸化型染毛剤の構成を充足しない比較例では、第2剤の製剤安定性が著しく劣っていることが分かる。このような製剤安定性に劣る第2剤では、例え混合したとしても穏やかに反応させることができないことから、染色に悪影響を及ぼし、優れた染色効果を発揮できないことは明白である。