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特開2022-168816光学フィルタ、光学フィルタの製造方法及び光源
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168816
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】光学フィルタ、光学フィルタの製造方法及び光源
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
G02B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155751
(22)【出願日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2021073943
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】西澤 正泰
(72)【発明者】
【氏名】楠瀬 治彦
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148AA05
2H148AA07
2H148AA09
2H148AA27
(57)【要約】
【課題】デブリ緩和効果を向上させ、所望の波長領域の光を透過させることができる光学フィルタ、光学フィルタの製造方法及び光源を提供する。
【解決手段】本発明に係る光学フィルタ1は、複数本のカーボンナノチューブを含むCNT薄膜10と、CNT薄膜10上に堆積された炭素及びシリコンのうち少なくともいずれかを含む堆積層20と、を備え、所定の波長の光を透過させる。CNT薄膜10は、複数の隙間がある網目構造を有し、堆積層20は、隙間を塞いでもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のカーボンナノチューブを含む薄膜と、
前記薄膜上に堆積された炭素及びシリコンのうち少なくともいずれかを含む堆積層と、
を備え、
所定の波長の光を透過させる光学フィルタ。
【請求項2】
前記薄膜は、複数の隙間がある網目構造を有し、
前記堆積層は、前記隙間を塞いでいる、
請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記堆積層は、アモルファスカーボン、アモルファスシリコンもしくはポリシリコンの少なくともいずれかを含み、
前記所定の波長は、13.5nmを含む、
請求項1または2に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
複数本のカーボンナノチューブを含む薄膜を準備するステップと、
前記薄膜上に炭素及びシリコンのうち少なくともいずれかを含む堆積層を堆積させるステップと、
を備え、
所定の波長の光を透過させる光学フィルタの製造方法。
【請求項5】
前記薄膜を準備するステップにおいて、
複数の隙間がある網目構造を有する前記薄膜を準備し、
前記堆積層を堆積させるステップにおいて、
前記隙間を塞ぐように前記堆積層を堆積させる、
請求項4に記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項6】
前記堆積層を堆積させるステップにおいて、
前記堆積層を化学気相成膜法により堆積させ、前記カーボンナノチューブの周方向に渡って前記カーボンナノチューブの径方向に前記堆積層を堆積させることにより前記隙間を塞ぐ、
請求項5に記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項7】
前記堆積層を堆積させるステップにおいて、
前記堆積層は、アモルファスカーボン、アモルファスシリコンもしくはポリシリコンの少なくともいずれかを含み、
前記所定の波長は、13.5nmを含む、
請求項4~6のいずれか1項に記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項8】
前記堆積層を堆積させるステップにおいて、
透過させる前記所定の波長に基づいて、前記アモルファスカーボン、前記アモルファスシリコン及び前記ポリシリコンの中から前記堆積させる材料を選択し、
前記所定の波長を透過させる透過率に基づいて、前記堆積層の厚さを選択する、
請求項7に記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項9】
前記堆積層を堆積させるステップにおいて、
透過させる前記所定の波長が、13.5nm及び226nmを含む場合に、前記堆積させる材料として前記アモルファスカーボンを選択し、
前記所定の波長を透過させる透過率に基づいて、前記堆積層の厚さを5nm~100nmから選択する、
請求項7に記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項10】
前記堆積層を堆積させるステップにおいて、
透過させる前記所定の波長が、13.5nmを含む場合に、前記堆積させる材料として前記アモルファスシリコンを選択し、
前記所定の波長を透過させる透過率に基づいて、前記堆積層の厚さを5nm~100nmから選択する、
請求項7に記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項11】
所定の波長の光を含む照明光を出射する照明光生成装置と、
一端及び他端が開口した筒状で、前記一端の開口から入射した前記照明光を前記他端の開口から出射させるように前記照明光の光路を覆う光路カバーと、
前記光路カバーの内部にガスを供給するガス供給管と、
前記他端を塞ぐように配置され、前記所定の波長の光を透過させる光学フィルタと、
を備え、
前記光学フィルタは、
複数本のカーボンナノチューブを含む薄膜と、
前記薄膜上に堆積された金属、炭素及びシリコンのうち少なくともいずれかを含む堆積層と、
を有する、
光源。
【請求項12】
前記薄膜は、複数の隙間がある網目構造を有し、
前記堆積層は、前記隙間を塞いでいる、
請求項11に記載の光源。
【請求項13】
前記堆積層は、アモルファスカーボン、アモルファスシリコンもしくはポリシリコンのうち少なくともいずれかを含み、
前記所定の波長は、13.5nmを含む、
請求項11または12に記載の光源。
【請求項14】
前記光路カバーは、前記一端の開口径よりも前記他端の開口径の方が大きく、
前記一端の開口から前記他端の開口に向かって径が大きくなるコーン状である、
請求項11~13のいずれか1項に記載の光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルタ、光学フィルタの製造方法及び光源に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高輝度EUV光源用の光学フィルタとして、金属ジルコニウム(Zr)やカーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube、CNT)製の薄膜フィルタが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-187098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属Zr薄膜は、厚さを100nm程度にした場合に、EUV光の透過率を高くすることができる。よって、金属Zr薄膜は、可視光をカットし、EUV光を透過させる光学フィルタとして用いられる。また、金属Zr薄膜は、液体金属にレーザを照射することによりプラズマ発光させてEUV光を生成する場合に、液体金属から飛び散ったデブリを捕獲するためのフィルタとしても広く用いられている。生成されたEUV光を取り出すコレクターミラー等の光学部材にデブリが到達しないようにすることをデブリ緩和と呼ぶ。
【0005】
このように、金属Zr薄膜は、EUV光の透過率及びデブリ緩和に優れているが、厚さ100nm程度の場合には、機械的強度が弱く、金網等のサポート無しに大面積フィルタを作製することが困難である。
【0006】
CNT薄膜は、物理的強度に優れており、破れにくく、金網等のサポート無しで大面積のフィルタを容易に作製することができる。また、CNT薄膜は、高強度EUV光照射環境に対して耐性を備え、しかも、EUV光の透過率が高い、というEUV光学フィルタとして優れた性質を持つ。しかしながら、不織布のような網目構造を持つため、デブリ緩和の効果が低く、ガス透過率が高い、という欠点を持つ。
【0007】
さらに、CNT薄膜が物理的強度に優れているとはいえ、EUV光の透過率が高い比較的薄い薄膜の場合には、数μmサイズの高速なデブリが当たることにより破れる場合がある。また、CNT薄膜を含む光学フィルタを、EUV光源用光学フィルタとして用いる場合に、DUV光をカットする機能を有することが望ましい場合がある。
【0008】
デブリ緩和の一つの方法として、光路に一定のガス圧力を保持した領域を設置する方法がある。ガス圧力の高い領域は、デブリを散乱させるので、デブリ緩和として機能する。CNT薄膜は、網目構造のため、そのようなガス圧力を保持する隔壁に用いても、デブリ緩和を期待することができない。
【0009】
本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたものであり、デブリ緩和効果を向上させ、所望の波長領域の光を透過させることができる光学フィルタ、光学フィルタの製造方法及び光源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態の一態様に係る光学フィルタは、複数本のカーボンナノチューブを含む薄膜と、前記薄膜上に堆積された炭素及びシリコンの少なくともいずれかを含む堆積層と、を備え、所定の波長の光を透過させる。
【0011】
上記の光学フィルタでは、前記薄膜は、複数の隙間がある網目構造を有し、前記堆積層は、前記隙間を塞いでもよい。
【0012】
上記の光学フィルタでは、前記堆積層は、アモルファスカーボン、アモルファスシリコンもしくはポリシリコンのうち少なくともいずれかを含み、前記所定の波長は、13.5nmを含んでもよい。
【0013】
本実施形態の一態様に係る光学フィルタの製造方法は、複数本のカーボンナノチューブを含む薄膜を準備するステップと、前記薄膜上に炭素及びシリコンの少なくともいずれかを含む堆積層を堆積させるステップと、を備え、前記光学フィルタは所定の波長の光を透過させる。
【0014】
上記の光学フィルタの製造方法では、前記薄膜を準備するステップにおいて、複数の隙間がある網目構造を有する前記薄膜を準備し、前記堆積層を堆積させるステップにおいて、前記隙間を塞ぐように前記堆積層を堆積させてもよい。
【0015】
上記の光学フィルタの製造方法では、前記堆積層を堆積させるステップにおいて、前記堆積層を化学気相成膜法により堆積させ、前記カーボンナノチューブの周方向に渡って前記カーボンナノチューブの径方向に前記堆積層を堆積させることにより前記隙間を塞いでもよい。
【0016】
上記の光学フィルタの製造方法では、前記堆積層を堆積させるステップにおいて、前記堆積層は、アモルファスカーボン、アモルファスシリコンもしくはポリシリコンのうち少なくともいずれかを含み、前記所定の波長は、13.5nmを含んでもよい。
【0017】
上記の光学フィルタの製造方法では、前記堆積層を堆積させるステップにおいて、透過させる前記所定の波長に基づいて、前記アモルファスカーボン、前記アモルファスシリコン及び前記ポリシリコンの中から前記堆積させる材料を選択し、前記所定の波長を透過させる透過率に基づいて、前記堆積層の厚さを選択してもよい。
【0018】
上記の光学フィルタの製造方法では、前記堆積層を堆積させるステップにおいて、透過させる前記所定の波長が、13.5nm及び226nmを含む場合に、前記堆積させる材料として前記アモルファスカーボンを選択し、前記所定の波長を透過させる透過率に基づいて、前記堆積層の厚さを5nm~100nmから選択してもよい。
【0019】
上記の光学フィルタの製造方法では、前記堆積層を堆積させるステップにおいて、透過させる前記所定の波長が、13.5nmを含む場合に、前記堆積させる材料として前記アモルファスシリコンもしくはポリシリコンを選択し、前記所定の波長を透過させる透過率に基づいて、前記堆積層の厚さを5nm~100nmから選択してもよい。
【0020】
本実施形態の一態様に係る光源は、所定の波長の光を含む照明光を出射する照明光生成装置と、一端及び他端が開口した筒状で、前記一端の開口から入射した前記照明光を前記他端の開口から出射させるように前記照明光の光路を覆う光路カバーと、前記光路カバーの内部にガスを供給するガス供給管と、前記他端を塞ぐように配置され、前記所定の波長の光を透過させる光学フィルタと、を備え、前記光学フィルタは、複数本のカーボンナノチューブを含む薄膜と、前記薄膜上に堆積された炭素及びシリコンのうち少なくともいずれかを含む堆積層と、を有する。
【0021】
上記の光源では、前記薄膜は、複数の隙間がある網目構造を有し、前記堆積層は、前記隙間を塞いでもよい。
【0022】
上記の光源では、前記堆積層は、アモルファスカーボン、アモルファスシリコンもしくはポリシリコンのうち少なくともいずれかを含み、前記所定の波長は、13.5nmを含んでもよい。
【0023】
上記の光源では、前記光路カバーは、前記一端の開口径よりも前記他端の開口径の方が大きく、前記一端の開口から前記他端の開口に向かって、径が大きくなるコーン状でもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、デブリ緩和効果を向上させ、所望の波長領域の光を透過させることができる光学フィルタ、光学フィルタの製造方法及び光源を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態1に係る光学フィルタを例示した斜視図である。
図2】実施形態1に係る光学フィルタの構造を模式的に例示した断面図である。
図3】比較例1に係る光学フィルタの構造を模式的に例示した断面図である。
図4】実施形態1に係る光学フィルタの製造方法を例示したフローチャート図である。
図5】実施形態1に係る光学フィルタの製造方法において、堆積層の堆積方法を例示した図である。
図6】実施形態1に係る光学フィルタの製造方法において、化学気相成膜法により堆積層を堆積させる前の表側から見た状態を模式的に例示した図である。
図7】実施形態1に係る光学フィルタの製造方法において、化学気相成膜法により堆積層を堆積させた後の表側から見た状態を模式的に例示した図である。
図8】実施形態2に係る光源を例示した断面図である。
図9】比較例2に係る光源を例示した断面図である。
図10】カーボン、および、シリコンのDUV光及びEUV光の透過率を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本実施形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0027】
(実施形態1)
実施形態1に係る光学フィルタを説明する。図1は、実施形態1に係る光学フィルタを例示した斜視図である。図2は、実施形態1に係る光学フィルタの構造を模式的に例示した断面図である。
【0028】
図1及び図2に示すように、光学フィルタ1は、薄い膜状であり、例えば、ステンレス製のフレームFRMに支持されている。光学フィルタ1は、複数本のカーボンナノチューブを含む薄膜10と、カーボンナノチューブを含む薄膜10上に堆積された堆積層20と、を備えている。カーボンナノチューブを含む薄膜10を、以下では、CNT薄膜10と呼ぶ。堆積層20は、例えば、炭素もしくはシリコンの少なくともいずれかを含む。具体的には、堆積層20として堆積された炭素は、例えば、アモルファスカーボン(a-C)である。また、堆積層20として堆積されたシリコンは、例えば、アモルファスシリコン(a-Si)もしくはポリシリコン(p-Si)である。なお、CNT薄膜10及び堆積層20の厚さは、光学フィルタ1が透過させようとする光の波長に応じて、適宜、選択されてもよい。
【0029】
図3は、比較例1に係る光学フィルタの構造を模式的に例示した断面図である。図3に示すように、比較例の光学フィルタ101は、CNT薄膜10を備えるが、堆積層20を有していない。図2及び図3に示すように、CNT薄膜10は、網目構造を有している。網目構造は、複数本のカーボンナノチューブが網目状に重なった構造である。網目構造において、各カーボンナノチューブの一部が相互に重なり、各カーボンナノチューブの間に隙間が形成されている。隙間は、CNT薄膜10の膜厚方向の隙間でもよいし、膜面に平行な方向の隙間でもよい。また、隙間は、様々な方向の隙間でもよいし、それらがつながった隙間でもよい。このように、CNT薄膜10は、複数の隙間がある網目構造を有している。
【0030】
図3に示すように、CNT薄膜10のみの光学フィルタ101は、ガス30を透過させる。よって、比較例1の光学フィルタ101は、ガスの透過率が高い。また、比較例1の光学フィルタ101は、網目構造を有するCNT薄膜10のみであるので、デブリ緩和の効果が低い。
【0031】
一方、図2に示すように、本実施形態の光学フィルタ1では、堆積層20は、網目構造における複数の隙間を塞いである。よって、本実施形態の光学フィルタ1は、ガスの透過率を低下させることができる。また、光学フィルタ1は、デブリ緩和効果を向上させることができる。
【0032】
光学フィルタ1は、所定の波長の光を透過させる光学フィルタ1として使用される。例えば、光学フィルタ1は、13.5nmの波長を含むEUV光を透過させる。なお、前述したように、光学フィルタ1は、EUV光以外の所定の波長の光を透過させるように、堆積層20のCNT薄膜10及び堆積層20の厚さを設定してもよい。
【0033】
次に、実施形態1に係る光学フィルタ1の製造方法を説明する。図4は、実施形態1に係る光学フィルタ1の製造方法を例示したフローチャート図である。図4のステップS11に示すように、複数本のカーボンナノチューブを含むCNT薄膜10を準備する。CNT薄膜10を準備する際に、例えば、複数の隙間がある網目構造を有するCNT薄膜10を準備する。CNT薄膜10は、所定の波長の光を透過させる厚さを有するものを準備する。
【0034】
次に、ステップS12に示すように、CNT薄膜10上に炭素またはシリコンの少なくともいずれかを含む堆積層20を堆積させる。堆積層20を堆積させる際に、CNT薄膜10の隙間を塞ぐように堆積層20を堆積させる。また、堆積層20は、所定の波長の光を透過させる厚さを有するように堆積させる。これにより、図1及び図2に示すように、所定の波長の光を透過させる光学フィルタ1を製造することができる。
【0035】
図5は、実施形態1に係る光学フィルタ1の製造方法において、堆積層20の堆積方法を例示した図である。図5に示すように、例えば、堆積層20を堆積するためには、真空蒸着法を用いることができる。具体的には、グラファイトの電極等の供給源21から放電によりa-CをCNT薄膜10上に堆積させる。
【0036】
図6及び図7は、実施形態1に係る光学フィルタ1の製造方法において、化学気相成膜法(Chemical Vapor Deposition)により、堆積層20を堆積させる前及び堆積させた後の表側から見た状態を模式的に例示した図である。図6に示すように、堆積層20を堆積させる前では、複数本のカーボンナノチューブが網目構造を構成している。
【0037】
一方、図7に示すように、堆積層20を堆積させた後では、複数本のカーボンナノチューブがカーボンまたはシリコンと反応する。よって、複数本のカーボンナノチューブの周囲に堆積層20が形成される。これにより、隙間が塞がれる。化学気相成膜法の場合には、カーボンナノチューブの周方向に渡ってコンフォーマルに堆積させ、カーボンナノチューブの径方向に堆積層20を一様に堆積させる。よって、CNT薄膜10の膜厚方向の隙間、及び、膜面に平行な方向の隙間等、様々な方向の隙間を塞ぐことができる。
【0038】
このように、堆積層20を堆積させる際に、堆積層20を化学気相成膜法により堆積させ、カーボンナノチューブの周方向に渡ってカーボンナノチューブの径方向に堆積層20を堆積させることにより隙間を塞いでもよい。なお、化学気相成膜法は、プラズマCVD法も含む。
【0039】
堆積層20を堆積させる方法には、スパッタリング法及び真空蒸着法等もある。これらの堆積方法では、CNT薄膜10の膜厚方向に主に堆積層20が成長する。よって、膜厚方向に延びた貫通孔状の隙間(膜面に平行な方向の隙間が膜厚方向に重なることにより形成)があると、膜厚方向の隙間を塞ぐことが難しくなるため、光学フィルタのデブリ緩和機能が不十分となるとともに、ガス透過率を十分に低下させることができない場合がある。特に、CNT薄膜10が薄い場合には、堆積層20を厚くしたとしても、貫通孔状の隙間が多く残存するため、光学フィルタのデブリ緩和を向上させることができず、ガス透過率を十分に低下させることが困難な場合がある。
【0040】
これに対して、化学気相成膜法による堆積方法では、カーボンナノチューブの周方向に渡って、コンフォーマルに堆積層20を堆積させることができる。すなわち、カーボンナノチューブの周りに一様に堆積層20を堆積させることができる。よって、CNT薄膜10が薄い場合でも、CNT薄膜10の膜厚方向の隙間、及び、膜面に平行な方向の隙間等、様々な方向の隙間を塞ぐことができる。よって、光学フィルタのデブリ緩和機能を向上させ、ガス透過率を低下させることができる。なお、カーボンナノチューブ上への化学気相成膜法による堆積方法では、カーボンはアモルファスカーボンとして、シリコンはアモルファスシリコンもしくはポリシリコンとして堆積される。
【0041】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の光学フィルタ1は、CNT薄膜10上に堆積層20を有している。よって、機械的強度を向上させ、デブリ緩和効果を向上させることができる。また、CNT薄膜10の網目構造の隙間を塞ぐことにより、デブリ緩和効果を向上させるとともに、ガス透過率を低減させることができる。
【0042】
堆積層20の堆積方法として、化学気相成膜法を用いることにより、CNT薄膜10が薄い場合でも、CNT薄膜10全体のデブリ緩和効果を向上させ、ガス透過率を低下させることができる。
【0043】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る光源を説明する。図8は、実施形態2に係る光源を例示した断面図である。図8に示すように、光源2は、照明光生成装置40、光路カバー50、ガス供給管60、及び、光学フィルタ1を備えている。
【0044】
照明光生成装置40は、所定の波長の光を含む照明光を生成し、光学系に対して照明光を出射する。照明光生成装置40は、例えば、スズ等の液体金属に対してレーザを照射させることにより、プラズマ発光させ、EUV光を生成する。スズ等の液体金属は、回転るつぼに保持されてもよいし、ドロップレットとして滴下されてもよい。照明光生成装置40において、このような液体金属にレーザを照射させた場合に、液体金属が飛び散り、デブリ41を発生させる場合がある。デブリ41は、コレクターミラー70等の光学系に付着すると、反射率を低下させる等の悪影響を及ぼす。本実施形態の光源2は、以下に示す構成により、デブリ緩和効果を向上させることができる。
【0045】
光路カバー50は、一端及び他端が開口した筒状である。一端の開口は、照明光生成装置40に向いている。照明光生成装置40から出射した照明光は、光路カバー50の一端の開口に入射する。光路カバー50は、一端の開口から入射した照明光を他端の開口から出射させるように照明光の光路を覆う。一端及び他端の開口は、照明光の入射口及び出射口として機能する。
【0046】
光路カバー50の他端の開口は、光学フィルタ1により塞がれている。すなわち、光学フィルタ1は、他端の開口を塞ぐように配置され、所定の波長の光を透過させる。光路カバー50は、一端の開口径よりも他端の開口径の方が大きい。そして、光路カバー50は、一端の開口から他端の開口に向かって径が大きくなるコーン状でもよい。なお、光路カバー50は、照明光の入射口及び出射口がある空洞の容器であれば、コーン状に限らず、円筒状、角筒状でもよい。
【0047】
ガス供給管60は、光路カバー50に形成された供給孔61に取り付けられている。ガス供給管60は、供給孔61を介して、光路カバー50の内部にガス30を供給する。ガス供給管60から供給されるガス30は、例えば、アルゴン、窒素、ヘリウム等の不活性ガスでもよい。
【0048】
ガス供給管60から供給されたガス30は、光路カバー50の内部に充填される。これにより、光路カバー50の内部は、ガス圧が高くなる。よって、光路カバー50の一端の開口から照明光とともに侵入したデブリ41は、光路カバー50の内部のガス圧のため、散乱する。こうして、光学フィルタ1に到達するデブリ41の量を低減することができる。また、光学フィルタ1は、CNT薄膜10に加えて堆積層20を有している。よって、光学フィルタ1は、デブリ41の透過を抑制することができる。
【0049】
また、光路カバー50を、一端の開口から他端の開口に向かって径が大きくなるコーン状とした場合には、光路カバー50の一端の開口から排出されるガスを絞ることができ、光路カバー50の内部のガス圧を高くすることができる。よって、光路カバー50の他端側の圧力を高くすることができ、光学フィルタ1に到達するデブリ41の量を低減することができる。また、供給孔61を光路カバー50の他端側に設けてもよい。これにより、光路カバー50の他端側の圧力を高くすることができる。
【0050】
図9は、比較例2に係る光源を例示した断面図である。図9に示すように、比較例2に係る光源102は、照明光生成装置40、光路カバー50、ガス供給管60、及び、光学フィルタ101を備えている。
【0051】
比較例2の光学フィルタ101は、堆積層20が形成されていない。よって、ガスの透過率が高い。したがって、ガス供給管60から光路カバー50の内部にガス30を供給しても、光路カバー50の内部のガス圧を高くすることができない。よって、光路カバー50の一端の開口から照明光とともに侵入したデブリ41は、光路カバー50の内部で散乱されずに直進する。そのため、光学フィルタ1に到達するデブリの量を低減することができない。また、光学フィルタ1は、堆積層20を有していないので、デブリ41の透過を抑制することができない。
【0052】
本実施形態によれば、光源2は、光学フィルタ1を備えているので、光学フィルタ1を透過するデブリ41を抑制し、デブリ緩和効果を向上させることができる。また、光源2は、光路カバー50の内部のガス圧を高め、デブリ41を散乱させるので、デブリ緩和効果を向上させることができる。よって、コレクターミラー70等の光学系に到達するデブリ41を抑制することができる。
【0053】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係る光学フィルタを説明する。本実施形態の光学フィルタは、CNT薄膜10上にアモルファスシリコン(a-Si)、もしくは、ポリシリコン(p-Si)等のシリコン(Si)を堆積させる。よって、堆積層20は、アモルファスシリコン、もしくは、ポリシリコン等のシリコンを含む。シリコンをCNT薄膜10上に堆積させる方法は、CVD法が望ましい。
【0054】
アモルファスシリコンもしくはポリシリコンのEUV光の透過率は高い。一方、アモルファスシリコンもしくはポリシリコンのDUV光の透過率は低い。DUV光は、例えば、150~250nmの波長を含む。アモルファスシリコンもしくはポリシリコンをCNT薄膜10上に堆積させることにより、光学フィルタのDUV光の吸収率を高めることができる。
【0055】
図10は、カーボン(C)、および、シリコン(Si)のDUV光(例えば、波長226nmを示す。)及びEUV光(例えば、波長13.5nmを示す。)の透過率を例示した図である。図10では、各材料の厚さが5nm、20nm、50nm、100nm及び150nmの透過率を代表させて示している。カーボンおよびシリコンを同じ波長で比較するために、DUV光の波長を226nmとしている。図10に示すように、EUV光及びDUV光の透過率は、各材料によって異なる。また、EUV光及びDUV光の透過率は、同じ材料でも、厚さによって異なる。厚さが5nm~150nmの間の透過率は、公知のものを使用してもよいし、実測してもよい。
【0056】
例えば、カーボンのDUV光の透過率は、厚さ5nmの場合には、90.9%であり、厚さ100nmの場合には、14.8%である。シリコンのDUV光の透過率は、厚さ5nmの場合には、49.7%であり、厚さ100nmの場合には、0.0%である。
【0057】
一方、カーボンのEUV光の透過率は、厚さ5nmの場合には、96.8%であり、厚さ100nmの場合には、52.6%である。シリコンのEUV光の透過率は、厚さ5nmの場合には、99.2%であり、厚さ100nmの場合には、84.4%である。
【0058】
例えば、EUV光及びDUV光の両方の透過率を大きくするためには、堆積層20は、カーボンを含むことが望ましい。堆積層20がカーボンを含む場合には、堆積層20の厚さを5nmから100nmの間から選択することにより、EUV光の透過率を96.8%から52.6%までの間から選択することができ、DUV光の透過率を90.9%から14.8%までの間から選択することができる。また、カーボンは、カーボンナノチューブを含むCNT薄膜10上への堆積が良好で隙間を埋める効果が高い。
【0059】
一方、EUV光及びDUV光の選択性、すなわち、EUV光の透過率を大きくしつつ、DUV光の透過率を小さくするためには、堆積層20は、シリコンを含むことが望ましい。堆積層20がシリコンを含む場合には、堆積層の厚さを5nmから100nmの間から選択することにより、EUV光の透過率を99.2%から84.4%までの間から選択することができ、DUV光の透過率を49.7%から0.0%までの間から選択することができる。
【0060】
このように、堆積層20を堆積させる際に、透過させる波長に基づいて、カーボン、及び、シリコンの中から堆積させる材料を選択し、透過させる透過率に基づいて、堆積層20の厚さを選択してもよい。
【0061】
本実施形態によれば、CNT薄膜10上にシリコンを含む堆積層20を堆積することにより、EUV光を透過させつつ、DUV光の透過率を低下させることができる光学フィルタを提供することができる。よって、CNT薄膜10の隙間を塞ぐ材料として、シリコンを用いることにより、CNT薄膜10が持つデブリ緩和に適した性質を残しつつ、デブリ捕獲効果を高めるとともに、ガス透過率及びDUV透過率を低減させることができる。
【0062】
また、堆積層20を堆積させる際に、光学フィルタを透過させる所定の波長及び透過率に基づいて、堆積させる材料及び厚さを選択してもよい。これにより、EUV光及びDUV光の所望の透過率に基づいて光学フィルタを設計することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。また、実施形態1及び2の各構成を組み合わせたものも、実施形態の技術的思想の範囲である。
【符号の説明】
【0064】
1 光学フィルタ
2 光源
10 薄膜
20 堆積層
30 ガス
40 照明光生成装置
41 デブリ
50 光路カバー
60 ガス供給管
61 供給孔
70 コレクターミラー
101 光学フィルタ
102 光源
FRM フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10