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特開2022-168839荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168839
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/18 20060101AFI20221031BHJP
   B66D 3/20 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B66D3/18 E
B66D3/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066032
(22)【出願日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2021073905
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄
(57)【要約】
【課題】操作性の改善を図った荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法の提供。
【解決手段】荷役物を係止する係止部5、スリング4を介して係止部5を昇降させる昇降作動部16、昇降作動部16を駆動するモータ部11、昇降作動部16に加わる重量値を検出して送信する重量検出部12、荷役物の昇降の位置値を検出して送信する位置検出部13、操作の指令を制御部10へ送信する操作指令部20、を有し、制御部10は、操作指令部20からのバランス指令に基づき、重量検出部12から重量値を受信して登録重量として記憶する記憶手段と、重量検出部12から受信する重量値を登録重量に等しくする制御値を演算してモータ部へ指令するバランス制御手段と、を有し、操作指令部20から低速バランス指令を受信している期間は、さらに昇降の速度を所定の速度以下に制限する制御値を演算してモータ部へ指令する低速バランス制御手段を有する荷役助力装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係止部と、昇降作動部と、モータ部と、重量検出部と、位置検出部と、操作指令部と、制御部と、を有して荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置であって、
前記係止部は、前記荷役物を係止し、
前記昇降作動部は、スリングを介して前記係止部を昇降させ、
前記モータ部は、前記昇降作動部を駆動し、
前記重量検出部は、前記昇降作動部に加わる重量値を検出して前記制御部へ送信し、
前記位置検出部は、前記荷役物の昇降の位置値を検出して前記制御部へ送信し、
前記操作指令部は、操作の指令を前記制御部へ送信し、
前記制御部は、前記操作指令部からのバランス指令に基づき、
前記重量検出部から前記重量値を受信して登録重量として記憶する記憶手段と、
前記重量検出部から受信する前記重量値を前記登録重量に等しくする制御値を演算して前記モータ部へ指令するバランス制御手段と、を有し、
前記制御部は、前記操作指令部から低速バランス指令を受信している期間は、
前記重量検出部から受信する前記重量値を前記登録重量に等しくすると共に昇降の速度を所定の速度以下に制限する制御値を演算して前記モータ部へ指令する低速バランス制御手段を有する荷役助力装置。
【請求項2】
前記記憶手段が、前記低速バランス指令の受信期間終了時に、前記昇降作動部に加わっている重量を前記重量検出部から受信して前記登録重量として記憶及び更新する請求項1に記載の荷役助力装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記低速バランス指令の受信期間終了時に、前記昇降作動部を現在位置で保持させる請求項1に記載の荷役助力装置。
【請求項4】
係止部と、昇降作動部と、モータ部と、重量検出部と、位置検出部と、操作指令部と、制御部と、を有して荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置の制御方法であって、
前記係止部は、前記荷役物を係止し、
前記昇降作動部は、スリングを介して前記係止部を昇降させ、
前記モータ部は、前記昇降作動部を駆動し、
前記重量検出部は、前記昇降作動部に加わる重量値を検出して前記制御部へ送信し、
前記位置検出部は、前記荷役物の昇降の位置値を検出して前記制御部へ送信し、
前記操作指令部は、操作の指令を前記制御部へ送信し、
前記制御部が、前記操作指令部からのバランス指令に基づき、
前記重量検出部から前記重量値を受信して登録重量として記憶する記憶ステップと、
前記重量検出部から受信する前記重量値を前記登録重量に等しくする制御値を演算して前記モータ部へ指令するバランス制御ステップと、を有し、
前記制御部は、前記操作指令部から低速バランス指令を受信している期間は、
前記重量検出部から受信する前記重量値を前記登録重量に等しくすると共に昇降の速度を所定の速度以下に制限する制御値を演算して前記モータ部へ指令する低速バランス制御ステップを含む荷役助力装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、令和3年4月26日付けの出願を基礎とする国内優先権主張の出願である。本発明は、製造分野の製造組立てや搬送などに用いる荷役助力装置であって、例えば荷役物を昇降させる際にモータによるアシストにより僅かな操作力で上下移動させる荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から工業製品の組立てを行う工場では、大きな重量を有する工具、作業用機器、製品、半完成品などを移動させる荷役装置を使用している。その荷役装置の中でも、大きな重量の荷役物に対して使用者が軽い操作力で任意の高さに昇降移動できるように助力(アシスト力)を発生させる荷役助力装置が一部で使用されている。このように助力を発生させる荷役助力装置は、モータによって助力を行い、荷役物に小さな操作力を加えることでスムーズに移動させている。したがって単に上下動作を電動モータで行うものとは異なり、荷役物の荷重やこれに加わる操作力を例えば荷重検出器で検出して、回転角検出器と繋がったACサーボモータ等で外力の印加による重量変化を元に制御を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-52007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、荷役助力装置に関する技術が開示されている。このような荷役助力装置を使用して、液体や粉体を入れた容器を宙吊りとしてその重量値を登録しておき、この重量値に基づいてモータによって助力を行いつつ、作業者は容器を傾けて被注入設備等に移し替える作業を行うことができる。しかしながら容器の傾き角度と液体や粉体の残量によって注ぎ口の高さが変わってしまうことから改善の余地があった。
【0005】
このような問題に鑑みて、本発明は荷役作業において、操作性の改善を図った荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る荷役助力装置は、上記の目的を達成するために、
係止部と、昇降作動部と、モータ部と、重量検出部と、位置検出部と、操作指令部と、制御部と、を有して荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置であって、
係止部は、荷役物を係止し、
昇降作動部は、スリングを介して係止部を昇降させ、
モータ部は、昇降作動部を駆動し、
重量検出部は、昇降作動部に加わる重量値を検出して制御部へ送信し、
位置検出部は、荷役物の昇降の位置値を検出して制御部へ送信し、
操作指令部は、操作の指令を制御部へ送信し、
制御部は、操作指令部からのバランス指令に基づき、
重量検出部から重量値を受信して登録重量として記憶する記憶手段と、
重量検出部から受信する重量値を登録重量に等しくする制御値を演算してモータ部へ指令するバランス制御手段と、を有し、
制御部は、操作指令部から低速バランス指令を受信している期間は、
重量検出部から受信する重量値を登録重量に等しくすると共に昇降の速度を所定の速度以下に制限する制御値を演算してモータ部へ指令する低速バランス制御手段を有するように構成されている。
【0007】
また、記憶手段が、低速バランス指令の受信期間終了時に、昇降作動部に加わっている重量を重量検出部から受信して登録重量として記憶及び更新するように構成されている。
【0008】
また、制御部が、低速バランス指令の受信期間終了時に、昇降作動部を現在位置で保持させるように構成されている。
【0009】
本発明の一態様に係る荷役助力装置の制御方法は、上記の目的を達成するために、係止部と、昇降作動部と、モータ部と、重量検出部と、位置検出部と、操作指令部と、制御部と、を有して荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置の制御方法であって、
係止部は、荷役物を係止し、
昇降作動部は、スリングを介して係止部を昇降させ、
モータ部は、昇降作動部を駆動し、
重量検出部は、昇降作動部に加わる重量値を検出して制御部へ送信し、
位置検出部は、荷役物の昇降の位置値を検出して制御部へ送信し、
操作指令部は、操作の指令を制御部へ送信し、
制御部が、操作指令部からのバランス指令に基づき、
重量検出部から重量値を受信して登録重量として記憶する記憶ステップと、
重量検出部から受信する重量値を登録重量に等しくする制御値を演算してモータ部へ指令するバランス制御ステップと、を有し、
制御部は、操作指令部から低速バランス指令を受信している期間は、
重量検出部から受信する重量値を登録重量に等しくすると共に昇降の速度を所定の速度以下に制限する制御値を演算してモータ部へ指令する低速バランス制御ステップを含んで構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の荷役助力装置によれば、液体や粉体の荷役物を入れた容器を移動して荷役物を他の容器等に載せ替えする作業においても良好な操作性を有する荷役助力装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る荷役助力装置と吊り具と容器の斜視構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の本体装置の一部を省略した斜視構成図と操作指令部の斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る荷役助力装置の電子回路のブロック構成図である。
図4】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図6】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図7】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図8】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図9】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図10】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図11】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図12】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図13】本発明の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図14】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置の制御部が実行するフローチャートである。
図15】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置のタイムチャートである。
図16】本発明の第2の実施形態に係る荷役助力装置の制御部が実行するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る荷役助力装置について、図面を基に詳細な説明を行う。図1は本発明の実施形態の一例である荷役助力装置1と吊り具30及び容器38の斜視構成図である。
【0013】
荷役助力装置1は、本体装置2と、吊下げフック3と、リンクチェーン4と、吊り具用フック5と、操作指令部20と、を含んで構成されている。本体装置2は、リンクチェーン4を介して、吊り具用フック5と、吊り具用フック5に係止された吊り具30と、吊り具30に嵌め込まれた容器38と、の昇降を行う。吊り具用フック5は、この本体装置2から鉛直下方向へ伸びたリンクチェーン4の下方に設けられている。本体装置2の天面部には吊下げフック3が設けられている。したがって本体装置2は建物の梁や、図4以降で表される水平移動用のレール42に沿って水平方向に移動自在な移動ブロック41などに吊して使用することができる。
【0014】
吊り具用フック5は、リンクチェーン4の一端に設けられた荷役物用のフックであって、吊り具30を係止する係止部である。本発明に於いては、吊り具用フック5に係止される部分、具体的には吊り具30と容器38との部分を荷役物と呼ぶ。吊り具30は、容器38を支持するものである。容器38は、有底の円筒型で、円筒側面の上端部に鍔が設けられたものである。容器38は、本実施形態では浅胴な有底円筒型であるがこれに限らず、深胴型であっても良い。吊り具30は、吊りアーム32と、容器ホルダ33と、容器押え板34と、回転軸35と、回転操作アーム36と、ハンドル37とを含んでいる。
【0015】
吊りアーム32は、門型の部材であって、その中心部にはアイボルト31が取り付けられていて、アイボルト31を介して吊り具用フック5によって係止され、荷役助力装置1に吊り下げ可能な構成となっている。アイボルト31はボルトの頭部がリング状になっているものである。
【0016】
容器ホルダ33は、容器38の鍔の下面部分に当接して鉛直下方から容器38を支持する。一方、容器押え板34は、容器ホルダ33とで容器38の鍔を挟むように、容器38の鍔の上面付近に設けられる。容器38は、容器ホルダ33に矢印A方向から挿入することで装着される。回転操作アーム36は回転軸35を介して容器ホルダ33及び容器押え板34と結合し、容器ホルダ33と容器押え板34とを吊りアーム32に対して制限された範囲で回転自在である。ハンドル37は回転操作アーム36の端部に取り付けられている。したがって作業者はハンドル37を握って回転操作アーム36を操作することで、容器ホルダ33及び容器押え板34を制限された範囲で回転させることができる。回転操作アーム36のハンドル37の隣には、操作指令部20が着脱可能な領域が設けられている。よって操作指令部20が装着されている場合には作業者はハンドル37を握りながら操作指令部20のスイッチを押して、荷役助力装置1の操作が可能である。
【0017】
図2は本発明の実施形態の荷役助力装置1の本体装置2の一部を省略した斜視構成図と操作指令部20の拡大斜視図である。
【0018】
本体装置2はカバーを備えていて、その内部には制御部10、モータ部11、昇降作動部16、重量検出部12、位置検出部13等が収納されている。
【0019】
本体装置2の制御部10はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他の記憶装置及び入出力装置を備えて、リンクチェーン4を介して吊り具用フック5の上下移動の制御等を行う。また制御部10は本体装置2を構成する電気電子部品等に電気を供給する回路を含んでいる。
【0020】
モータ部11は、昇降作動部16を作動させてリンクチェーン4によって吊り具用フック5を上下移動させるための駆動源である。モータ部11のモータの負荷側には減速機が取り付けられている。このモータは例えば交流サーボモータである。
【0021】
この減速機はモータの回転速度を所定の速度に減速している。減速機は例えば波動歯車減速機である。波動歯車減速機は、ウェーブジェネレータと、フレクスプラインと、サーキュラスプラインとを有している。ウェーブジェネレータは、楕円状のカムの外周に薄肉のボールベアリングが嵌め込まれ、全体が楕円形状をしている。ベアリングの内輪は楕円カムに固定されていて、外輪はボールを介して弾性変形する。フレクスプラインは、外周に多数の外歯が形成されウェーブジェネレータに外嵌されてウェーブジェネレータの回転により円周方向へ撓まされる位置が変化するようにした弾性変形可能なものである。サーキュラスプラインは、フレクスプラインの外周側にあってフレクスプラインの外歯と嵌合する内歯を備えている。そして動力は、フレクスプラインを回転出力として繋げた出力軸15に取り出されて伝達される。このモータ部11の減速機に例えば波動歯車減速機のようなバックラッシが微小なものを使用することで、モータの正逆回転切り換えを頻繁に行って上下移動を行う時に、切り換え時の制御不能な領域をなくし、スムーズな操作感を実現できる。なお減速機は波動歯車減速機に限るものではない。
【0022】
出力軸15は、減速機にて回転速度を減速し、増大させたトルクを出力する回転軸であり、昇降作動部16に連結され、昇降作動部16を連続的に正逆に回転させるものである。
【0023】
リンクチェーン4はスリングであって、半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交差して交互に連接されたものである。リンクチェーン4の一端は吊り具用フック5に繋がっていて、他端(無負荷側)はチェーン収納部17に収納されている。
【0024】
昇降作動部16は、駆動源のモータ部11からの動力の伝達によって回転する回転部材を含んで構成される。本実施形態では昇降作動部16の回転部材は中空円柱の形状であって、中空部で出力軸15と繋がっていて、外側円柱面でリンクチェーン4を巻回し、リンクチェーン4の巻き上げ及び繰り出しを行う。リンクチェーン4が巻回される位置は、おおよそ吊下げフック3の鉛直下付近であって、本体装置2の重心位置に近いところに設けられる。リンクチェーン4は昇降作動部16の外側円柱面に設けられたポケット溝に嵌入されておおよそ180度ほど巻回される。本実施形態では吊り具用フック5に繋がって昇降作動部16に巻回されるものにリンクチェーン4を用いたが、これに限らずワイヤーロープであっても良い。ワイヤーロープを使用した時は、昇降作動部16はドラム形状でワイヤーロープはその一端が固定されて回転部材に巻回される。
【0025】
位置検出部13は、モータ部11の反負荷側に連結されている。位置検出部13は、モータの回転角位置を検出する。位置検出部13は例えばアブソリュートエンコーダであって、光学式にてモータの回転角位置を検出して位置値を出力する。したがってこの位置検出部13は、吊り具用フック5の繰り出し位置すなわち吊り具用フック5の昇降位置を検出することができる。
【0026】
重量検出部12は、起歪体と起歪体に貼られた歪みゲージを備えている。起歪体は昇降作動部16に巻きつけられているリンクチェーン4から伝達される力を検出できるように弾性変形する形状を有している。歪みゲージは重量に応じて起歪体に生ずる歪みを電気信号に変換するホイートストーンブリッジ回路に組み込まれ、重量検出部12は昇降作動部16に加わる重量を検出して、重量値を出力する。
【0027】
そして本体装置2の制御部10が本体装置2内の昇降作動部16の近傍に配置されている。本体装置2の制御部10は、位置検出部13から位置値を、重量検出部12から重量値をそれぞれ受信し、これらを基に演算を行い、モータ部11を制御する。本体装置2の制御部10を含む電装部は、本体装置2を粉粒や水滴のかかる場所での使用も可能にするためにカバー内に配置されている。
【0028】
本実施形態では、位置検出部13はモータ部11の反負荷側に配置したがこれに限らず、減速機の出力である出力軸15や昇降作動部16に設けられても良く、また両方に設けられても良い。さらに光学式に限らず磁気式や静電容量式等であっても良い。
【0029】
また重量検出部12は昇降作動部16に加わる重量を検出できれば良く、減速機と昇降作動部16との間に設けた回転軸の捻れからトルクを検出するような回転型の構造や、モータ部11が受ける反力を検出するフランジ型や鼓型の構造のものであっても良い。さらに歪みゲージ式に限らず磁歪式や静電容量式等であっても良い。
【0030】
本体装置送受信部14が、本体装置2の制御部10の回路基板と並んで配置されている。本体装置送受信部14は、操作指令部20と無線にて通信するための電子回路を有している。
【0031】
操作指令部20は、本体装置2を遠隔にて操作するためのものであって、本実施形態では電波によって通信している。操作指令部20は、電池によって駆動される。操作指令部20は、操作手段として例えばバランス釦22、保持釦23、上昇釦24及び下降釦25を有している。操作の内容詳細については後述する。
【0032】
図3は本発明の実施形態に係る荷役助力装置1の電子回路のブロック構成図である。荷役助力装置1は、本体装置2と操作指令部20とを含んで構成されている。
【0033】
本体装置2の制御部10は本体装置2全体の制御を行っている。本体装置2の制御部10は、モータ部11を駆動する駆動回路を含んでいる。そして本体装置2の制御部10は、重量検出部12から昇降作動部16に加わる重量値を受信し、位置検出部13からモータ部11の回転角の位置値を受信し、本体装置送受信部14と信号の送受信を行う。本体装置送受信部14と本体装置2の制御部10とは有線で繋がっていて、極めて短い時間間隔で高速に信号の送受信を行う。なお制御部10内には、記憶手段10a、バランス制御手段10b、低速バランス制御手段10cが含まれている。
【0034】
本体装置送受信部14は、操作指令部20の操作指令送受信部26と無線にて通信を行う。本体装置送受信部14及び操作指令送受信部26は無線通信を行う電子回路で構成され、電波による送信器と受信器を有する他、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有する場合がある。
【0035】
操作指令制御部21は操作指令部20全体の制御を行っている。操作指令制御部21は各操作手段(操作釦)による操作指令を受けて、操作の指令信号を操作指令送受信部26へ送信する。そして操作指令送受信部26は操作指令制御部21から受信した操作の指令を、本体装置送受信部14へ無線にて送信する。この指令を含んだ信号には、操作指令部20と本体装置2のペアリングを行う操作指令部20の識別情報が付与されている。
【0036】
次いで操作指令部20に設けられている操作手段である各操作釦の役割について説明する。各操作釦は例えばモーメンタリ動作のプッシュスイッチであって、押している期間中はONとなって離すと自己復帰でOFFになる。作業者がバランス釦22を押すと操作指令部20からバランス指令が送信され、本体装置2の制御部10はこれを受信してバランス制御を開始する。本体装置2の制御部10は操作指令部20からバランス指令を受信すると、重量検出部12が昇降作動部16に加わる重量値を検出して出力した重量値を登録値として記憶手段10aに記憶する。この後は、本体装置2の制御部10内のバランス制御手段10bは、重量検出部12から昇降作動部16に加わる重量値(負荷)を受信して、これが記憶手段10aに記憶された登録値と等しくなるように制御値の演算を行って、モータ部11を制御する。この制御を本発明ではバランス制御と言い、本体装置2の制御部10がバランス制御を行っている期間中、吊り具用フック5以下の部材(吊り具30、容器38、注入物50など)はバランス状態にあると言う。換言すると、本体装置2の制御部10は、登録した重量で生じるリンクチェーン4のテンションと、重量検出部12が検出した重量で生じるリンクチェーン4のテンションとが同じになるように演算してモータ部11を制御し、この制御がバランス制御である。そして作業者がこのバランス制御中に吊り具30に鉛直下向きの外力を加えると、昇降作動部16に加わる重量が大きくなることから、本体装置2の制御部10は、これを登録重量へ近づけるように制御値を演算し、さらにリンクチェーン4を繰り出す方向にモータ部11を制御し、吊り具30以下は下降する。一方、作業者がこのバランス制御中に吊り具30に鉛直上向きの外力を加えると、昇降作動部16に加わる重量が小さくなることから、本体装置2の制御部10は、これを登録重量へ近づけるように制御値を演算し、さらにリンクチェーン4を巻き上げる方向にモータ部11を制御し、吊り具30以下は上昇する。そして作業者が外力の印加をやめると、重量検出部12が検出する重量が登録重量と等しくなるのですぐさま吊り具30以下は静止した状態となる。この制御値は例えば加速度などを含んでいる。
【0037】
一方で、作業者が保持釦23を押すと、本体装置2の制御部10は、保持指令を受信し、昇降作動部16を現在位置にて保持、すなわち吊り具用フック5及び吊り具30の昇降位置を保つようにモータ部11を制御する。
【0038】
作業者が上昇釦24若しくは下降釦25を押すと、本体装置2の制御部10はこれを受けてモータ部11を制御して、吊り具用フック5を上昇若しくは下降させる。作業者は上昇釦24若しくは下降釦25を連続的に押すことで、モータ部11により吊り具用フック5及び吊り具30を連続的に昇降させることができる。本体装置2が保持状態及びバランス状態いずれにあっても、作業者が上昇釦24若しくは下降釦25を押すと、上昇若しくは下降を行い、押した上昇釦24若しくは下降釦25から手を離すと保持状態に戻る。
【0039】
またバランス釦22は所定の時間以上継続的に押された期間中、低速バランス指令を操作指令送受信部26から送信し、本体装置2の制御部10はこれを受けて、低速バランス制御を行う。低速バランス指令及び低速バランス制御についての詳細については後述する。
【0040】
図4から図13は、作業者が本発明の実施形態に係る荷役助力装置1を用い、吊り具30及び容器38を扱う一連の作業状態を表した模式図である。また図14は本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置1の本体装置2の制御部10が実行するフローチャートである。図4から図14を用いて吊り具用フック5及び吊り具30及び容器38の動きとその時の本体装置2の制御部10が実行する制御方法の各ステップについて説明する。
【0041】
図4において、レール42は作業構内の天井等に水平方向に設けられた軌道レールである。移動ブロック41はレール42に沿って略水平方向に移動可能な部材であって、吊下げフック3と連結して本体装置2を吊している。したがって移動ブロック41は吊下げフック3以下を水平方向に移動自在にしている。床40には被注入設備43が固定設置されていて、被注入設備43は注入口44と注入受け部45を有する。
【0042】
ここでは床40に置かれた容器38の中に入れた注入物50を被注入設備43の注入口44へ注ぎ込む手順について説明する。図15において、まず荷役助力装置1の電源が入っていない状態にて、作業者が、本体装置2の不図示の電源スイッチをONにすると、本体装置2の制御部10が起動して、本体装置2の制御部10はステップS101を実行して、ステップS102へ進む。本体装置2の制御部10はステップS101にて、昇降作動部16を現在位置にて保持する(保持モード)。次いで作業者は、操作指令部20の下降釦25を押して吊り具用フック5を下降させ、吊り具30が容器38を装着できる鉛直方向の位置まで吊り具用フック5を下降させる。したがって図4に示すようにリンクチェーン4は鉛直方向に弛んだ状態となっている。そして作業者は吊り具30を水平方向に移動させて容器38を吊り具30に装着する。容器38に入れられた注入物50は例えば液体、粉体、液体と粉体の混合物などである。なお作業としては、注入物50は予め容器38に入れられてあって、その後容器38が吊り具30に装着される場合もあるが、空の容器38が吊り具30に予め装着してあって、容器38が床40に置かれた時に注入物50が容器38に注ぎ込まれる場合もある。
【0043】
次いで、作業者が操作指令部20の上昇釦24を押して吊り具用フック5、吊り具30及び容器38を上昇させた状態が図5に示されている。図14において、本体装置2の制御部10はステップS102にて、上昇釦24が押されたと判断して、ステップS103を実行する。本体装置2の制御部10はステップS103にて、昇降作動部16を作動させて吊り具用フック5及び吊り具30及び容器38を上昇させステップS101へ戻って、その位置での保持状態となる。作業者が操作指令部20の上昇釦24を連続的に押し続けると、本体装置2の制御部10はステップS103を継続して吊り具用フック5及び吊り具30及び容器38を上昇させる。
【0044】
吊り具用フック5が、昇降作動部16によるリンクチェーン4の巻き上げにより上昇して、吊り具30及び容器38が床40から離れ、吊り具30及び容器38が宙吊り状態となった時、作業者は上昇釦24を押すのを止めると本体装置2の制御部10は保持状態となる。この状態を表したのが図5である。次いで作業者は、ハンドル37から手を離してバランス釦22を押すと、本体装置2の制御部10はステップS104にてバランス釦22が押されたことを検出して(Yes)、ステップS105へ進みバランス制御モードへ遷移する。作業者がバランス釦22を押していなければ、本体装置2の制御部10はステップS104にてバランス釦22が押されていないことを検出して(No)ステップS101へ戻って保持モードを保つ。
【0045】
本体装置2の制御部10内の記憶手段10aはステップS105(記憶ステップ)にて、重量検出部12が昇降作動部16に加わる重量を検出して出力した重量値を登録値として記憶する。
【0046】
本体装置2の制御部10はステップS106にて、この登録値を基にして、吊り具用フック5及び吊り具30及び容器38をバランス状態に保つバランス制御を実行する。この状態で作業者が吊り具用フック5、吊り具30、容器38のいずれかに外力を加えることで吊り具30及び容器38を昇降させることができる。この場合の昇降速度は制限されるものではあるが例えば比較的速い速度v4まで動作可能である(図15)。作業者は吊り具30のハンドル37を握って吊り具30及び容器38に鉛直上向きの外力を加え続けることで吊り具30及び容器38を上昇させると共に、容器鍔端部38aが注入受け部45の近傍に位置するように本体装置2を水平方向にも移動させる(図6参照)。そして本体装置2の制御部10はステップS106にて、バランス制御を実行しつつステップS107へ進む。
【0047】
もし仮にバランス制御中に作業者が上昇釦24又は下降釦25を押すと、本体装置2の制御部10はステップS107にて、上昇釦24又は下降釦25が押されたと判断して(Yes)、バランス制御を解除してステップS103に進む。なお本体装置2の制御部10はステップS107にて、上昇釦24又は下降釦25が押されたと判断して(Yes)、単にステップS103の上昇/下降を実行して、再びステップS106のバランス制御に戻るという変形であっても良い。またこの変形の制御切り替えは、操作指令部20に別途設けた切り替えスイッチ等によって行うことも可能である。
【0048】
本体装置2の制御部10はステップS107にて、上昇釦24又は下降釦25が押されていないと判断すると(No)、ステップS108へ進む。次いで仮にここで作業者が保持釦23を押すと、本体装置2の制御部10はステップS108にて、保持釦23が押されたと判断して(Yes)、バランス制御を解除してステップS101に進む。本体装置2の制御部10はステップS108にて、保持釦23が押されていないと判断すると(No)、ステップS109へ進む。次いで本体装置2の制御部10はステップS109にて、バランス釦22が押されていないと判断すると(No)、ステップS106へ進んで、バランス制御を継続する。
【0049】
本体装置2の制御部10はステップS109にて、バランス釦22が押されていると判断すると(Yes)、ステップS110へ進む。本体装置2の制御部10はステップS110にて、バランス釦22が所定の時間以上継続的に押されていると判断すると(Yes)、ステップS111へ進む。この操作指令部20のバランス釦22の所定の時間以上(例えば2秒以上)の継続的な押下は、低速バランス制御指令を意味し、本体装置2の制御部10はこれを受けて、ステップS111(低速バランス制御ステップ)によって低速度でのバランス制御を行い、ステップS112へ進む。すなわち、本体装置2の制御部10はステップS111にて、バランス制御は保ちつつ、吊り具30及び容器38に外力が加わるなどして重量検出部12に重量変化が生じたことを検出した場合、所定の低速v1を上限リミットとしたバランス制御を行う。なおこの所定の低速v1は、予め管理者や作業者によって定められるものである。また低速は、通常の作業において用いられる昇降速度と相対的に比較して遅い速度、例えば1/3以下程度の速度を指す。
【0050】
この状態で作業者はバランス釦22を継続的に押しながらハンドル37を反時計回りに回転させて、容器38を傾け始める(図7)。そしてさらに作業者はバランス釦22を継続的に押しながらハンドル37を反時計回りに回転させて、容器38を傾けると注入物50は容器鍔端部38aから流出して、被注入設備43の注入受け部45を伝わって注入口44へと注がれる(図8図11)。注入物50が容器38から流出していることから、重量検出部12が検出する重量は徐々に減って行き、図12に示すように容器38が空になると、最終的には吊り具30と容器38の重量和となる。この重量減少期間において制御部10がバランス制御のために参照する重量はステップS105で記憶した登録値、すなわち注入物50を注ぎ出す前の重量である。したがって、注入物50の減少は吊り具30と容器38に鉛直上向きの外力が加わっていることと等価であるため、本体装置2の制御部10は吊り具30及び容器38を鉛直上方向に移動させる。制御部10は、本体装置2が通常のバランス制御モードにある場合、作業者が作業効率を上げることができるように吊り荷を比較的高速度で動かすことを許可している。しかしながら容器鍔端部38aと注入受け部45との鉛直方向の距離が作業中に速い速度で離れていくことは作業性を考えると好ましくない。
【0051】
そこで本発明は、本体装置2の制御部10が、バランス釦22を継続的に押している期間は、吊り荷の移動速度を通常作業の速度よりも相対的に低速に制限するものである。すなわち本体装置2の制御部10は、バランス釦22が所定の時間以上継続的に押されると、低速バランス制御指令を受信したと判断して、低速バランス制御を実行する。
【0052】
図12に示すように容器38内の注入物50が空になった時、作業者はバランス釦22を押すのをやめる。すると本体装置2の制御部10はステップS112にて、バランス釦22が所定の時間以上継続的に押されているのが解除、すなわち低速バランス制御指令の受信期間終了と判断すると(Yes)、ステップS113へ進む。本体装置2の制御部10はステップS113にて、バランス制御時の吊り荷の移動速度の低速制限を解除して、ステップS105へ進む。ここで再度のこのステップS105で記憶される登録値は、吊り具30と空の容器38の重量となることから、作業者はハンドル37を握って操作して、吊り具30と空の容器38をバランス状態にて昇降させることができる(図13)。すなわち作業者がバランス釦22を継続的に押すのをやめた瞬間と、ステップS104におけるバランス釦22を短く押して離した瞬間が操作上の機能では等価としている。
【0053】
なお注入が完了していない例えば図10の状態で、作業者がバランス釦22を継続的に押すのをやめた場合には、未だ残っている注入物50を含めた重量値が新たな登録値となってこれを基に通常のバランス制御が始まる。したがって再度作業者がバランス釦22を継続的に押し始めることで、再度低速バランス制御状態として作業は続行できる。
【0054】
図15は本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置1において、荷役助力装置1の制御モードと、吊り荷の速度、バランスに使用する登録重量及び検出重量の遷移との関係を模式的に示したチャートの例である。図15は、上から各釦(バランス釦22、上昇釦24、下降釦25)の押下状態、制御部10の制御モード、吊り荷の速度(上向き速度を正、下向き速度を負としている。)、記憶手段10aが登録記憶している登録値、重量検出部12が検出して制御部10が受信した検出重量をそれぞれ示している。
【0055】
先に示した作業に沿って、図15を用いて荷役助力装置1の状態を説明する。荷役助力装置1の制御部10は電源がONとなった時点で保持モードから開始となる。この時登録値は前回の電源OFF時のものが残っているため登録重量W1となっている。登録重量W1は、ここでは吊り具用フック5に係止された吊り具30と容器38の重量に相当する。図4に示された状態から、作業者が上昇釦24を押すと(時刻t1)、吊り荷の速度はすぐに速度v2に達し、作業者が上昇釦24を押すのをやめる(時刻t2)と吊り荷の速度は速度0となる。この期間中、重量検出部12が検出した重量は、当初のリンクチェーン4が弛んでいる期間は変わらないが、リンクチェーン4が張って来ると同時に上昇し、重量W3へ達する。重量検出部12が検出した重量が重量W3へ達した時、吊り荷は宙吊り状態となっている。
【0056】
次いで作業者はバランス釦22を押すと(時刻t3)、制御部10はバランス制御モードに遷移する。したがって制御部10は、この時の重量検出部12が検出した重量W3を登録値として記憶手段10aへ記憶し、この重量W3を基に吊り荷をバランス状態に保つように制御する。
【0057】
次に作業者は、ハンドル37を持って吊り荷を上昇させると、制御部10は速度v4を最大として吊り荷を上昇させる。この時作業者によって吊り荷に上向きの外力が加わることから、重量検出部12が検出する正味の重量は破線で示すように減少する。しかし制御部10は、重量検出部12が検出する重量がW3になるようにバランス制御を実行している。すなわち制御部10は、作業者によって吊り荷に上向きの外力が加わることからリンクチェーン4のテンションが緩むため、このテンションを一定に保つように吊り荷を上昇させる制御を実行する。
【0058】
次に作業者は、図6の状態からバランス釦22を継続的に押し始め(時刻t4)、同時にハンドル37を操作して容器38を、回転軸35を中心として回転させる。すると容器38内の注入物50は被注入設備43の注入口44へ注入されるので、重量検出部12の検出重量は徐々に略重量W1へと減少する。この期間中、制御部10は低速バランス制御モードとなって、吊り部の速度を低速v1に制限する。本来、制御部10は、重量検出部12が検出する重量がW3になるようにバランス制御を実行しているが、吊り部の速度を低速v1に制限しているので検出重量をW3に保つことの優先度が低くなって、重量検出部12の検出重量は正味の重量に近いものとなっている。
【0059】
作業者が、容器38内の注入物50を注ぎ終わってバランス釦22を継続的に押し続けるのをやめた時(時刻t5)、制御部10は現時点の重量検出部12の検出した重量W1を記憶手段10aへ登録値として記憶及び更新し、この重量W1を基に吊り具30と容器38をバランスさせ、バランス制御モードとなる。
【0060】
作業者は、ハンドル37を操作して容器38を下降させて床40付近まで降ろしたところで、下降釦25を押して(時刻t6)容器38をさらに下降させて床40に着地させる。なお作業者が下降釦25を押すことで、制御部10は保持モードに切り替わる。
【0061】
作業者は、容器38に注入物50を入れるか、注入物50の入った容器38と交換し、上昇釦24を押して容器38を上昇させる(時刻t7)。この先の作業は同じであるので省略するが、注入物50の量が異なる場合は、時刻t9で登録記憶される登録値が重量W2となる。そして時刻t10から時刻t11の期間が、制御部10は低速バランス制御モードである。
【0062】
図16は本発明の第2の実施形態に係る荷役助力装置1の本体装置2の制御部10が実行するフローチャートである。第2の実施形態は、ステップS113までは第1の実施形態と同じであるが、制御部10はステップS113を終了した後、ステップS101へ戻るという点で相違する。すなわち作業者がバランス釦22を継続的に押すのをやめると、制御部10は低速バランス制御モードから保持モードに遷移する。第1の実施形態と第2の実施形態は、作業の運用によって、予め制御部10における設定若しくは操作指令部20による操作切換えにより適宜選択することが可能である。
【0063】
以上説明したように本発明の荷役助力装置によれば、バランス中に吊り荷の重量が減少する場合においても、作業者の操作性の向上を図った荷役助力装置及びその制御方法を提供できる。
【0064】
本発明を好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の活用例として、荷役物の移動を助力して行う荷役機械への適用が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 :荷役助力装置
2 :本体装置
3 :吊下げフック
4 :リンクチェーン(スリング)
5 :吊り具用フック(係止部)
10 :制御部(本体装置制御部)
10a :記憶手段
10b :バランス制御手段
10c :低速バランス制御手段
11 :モータ部
12 :重量検出部
13 :位置検出部
14 :本体装置送受信部
15 :出力軸
16 :昇降作動部
17 :チェーン収納部
20 :操作指令部
21 :操作指令制御部
22 :バランス釦
23 :保持釦
24 :上昇釦
25 :下降釦
26 :操作指令送受信部
30 :吊り具
31 :アイボルト
32 :吊りアーム
33 :容器ホルダ
34 :容器押え板
35 :回転軸
36 :回転操作アーム
37 :ハンドル
38 :容器
38a :容器鍔端部
40 :床
41 :移動ブロック
42 :レール
43 :被注入設備
44 :注入口
45 :注入受け部
50 :注入物




図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16