(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168840
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】チップ型電子部品包装用カバーテープ
(51)【国際特許分類】
B65D 85/86 20060101AFI20221031BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20221031BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20221031BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B65D85/86 300
B65D77/20 L
B32B27/18 Z
B32B27/00 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067134
(22)【出願日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2021074309
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594146906
【氏名又は名称】株式会社ラインプラスチック
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大庭 幸子
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 健司
(72)【発明者】
【氏名】篠田 誠
(72)【発明者】
【氏名】田村 要
【テーマコード(参考)】
3E067
3E096
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AA24
3E067AB47
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4F100AK03B
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4F100JN01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高温下での保管や、シール圧力が低圧力においても、適正範囲のピールオフ強度を保持でき、巻き芯部とテープ基材とのブロッキングによるカバーテープの透明性の低下が良好に抑制された、チップ型電子部品包装用カバーテープを提供する。
【解決手段】チップ型電子部品包装用カバーテープであって、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、及び、ナイロン(登録商標)のいずれか一種からなる二軸延伸プラスチックフィルムの基材2と、ポリオレフィンからなる中間層4と、基材及び中間層を接着する接着剤層3と、シール層5と、基材の外側とシール層の外側に形成された帯電防止層1または導電層とを備えるチップ型電子部品包装用カバーテープ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ型電子部品を収納する収納ポケットが形成されたエンボスキャリアテープに熱シールされるチップ型電子部品包装用カバーテープであって、
ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、及び、ナイロン(登録商標)のいずれか一種からなる二軸延伸プラスチックフィルムの基材と、
ポリオレフィンからなる中間層と、
前記基材及び前記中間層を接着する接着剤層と、
前記エンボスキャリアテープに熱シールされるシール層と、
前記基材の外側と前記シール層の外側に形成された帯電防止層または導電層と、
を備え、
前記シール層が、熱可塑性樹脂と、粘着付与樹脂と、スチレン・ブタジエンブロック共重合樹脂の部分水添化物と、を含む樹脂混合物からなり、
前記シール層を構成する前記樹脂混合物が、前記熱可塑性樹脂を15~69.5質量%、前記粘着付与樹脂を30~80質量%、前記スチレン・ブタジエンブロック共重合樹脂の部分水添化物を0.5~5質量%含むことを特徴とするチップ型電子部品包装用カバーテープ。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、水添スチレン・イソプレンブロック共重合樹脂、水添スチレン・イソプレン・ブタジエンブロックブロック共重合樹脂、水添スチレン・ブタジエンブロック共重合樹脂、水添スチレン・ブタジエン・ブチレンブロック共重合樹脂、及び、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合樹脂のいずれか一種又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のチップ型電子部品包装用カバーテープ。
【請求項3】
前記中間層の密度が、0.80~0.99g/cm3であることを特徴とする請求項1に記載のチップ型電子部品包装用カバーテープ。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は、スチレン成分を15~70質量%含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のチップ型電子部品包装用カバーテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ型電子部品包装用カバーテープに関し、特に、チップ型電子部品等を保管、搬送、実装する包装体に使用されるエンボスキャリアテープの電子部品を収納する収納部の開口面を、熱シールにて被覆するチップ型電子部品包装用カバーテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チップ型電子部品包装用カバーテープ(以下、単にカバーテープとも称する)による部品実装方式には、抵抗、コンデンサ、ダイオード、及びICチップ等の小型電子部品の形状に合わせて、個々に収納する収納部(以下、収納ポケットとも称する)を形成するために打ち抜き加工が施された板紙打ち抜きキャリアテープに、その収納ポケットの開口面を覆うためのカバーテープを熱シールにより被覆する方式と、小型電子部品の形状に合わせて個々に収納する収納ポケットを形成するエンボス加工が施されたエンボスキャリアテープに、その収納ポケットの開口面を覆うためのカバーテープを熱シールにより被覆する方式の二種類が一般的に採用されている。小型電子部品を収納ポケットに収納してカバーテープで被覆した後、リール状に巻き取られた形状の包装体で包装して保管、搬送し、電子回路基板に電子部品を装着する自動組み込み装置に利用している。
【0003】
このエンボスキャリアテープからカバーテープを剥離させる際、カバーテープを剥離させる強さを剥離強度(以下、ピールオフ強度と記す)と呼び、このピールオフ強度の強弱によって収納された電子部品の脱落、或いは収納ポケットから飛び出すジャンピングトラブルという現象が発生している。この問題を解決するため、従来のカバーテープでは、ピールオフ強度を適正範囲内に制御することが容易で、経時的にも安定したピールオフ強度が得られる凝集破壊タイプのカバーテープが主に使用されている。例えば、チップ型電子部品包装用カバーテープの接着層が帯電防止処理され、電子部品とカバーテープとの接触、或いはカバーテープの剥離時に発生する静電気を抑え、且つその帯電防止効果が使用環境や経時変化にも安定し、シール性能にも影響を及ぼさないチップ型電子部品包装用カバーテープが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のチップ型電子部品包装用カバーテープは、高温下で保管された場合、経時変化により接着層の凝集力が低下してピールオフ強度を適正範囲内に保持することが困難となり、さらにシール圧力が低いとそれがより顕著になることや、巻き芯部とテープ基材とのブロッキングによりカバーテープの透明性が大幅に低下する問題がある。
【0006】
本発明は以上の点に着目し成されたもので、高温下での保管や、シール圧力が30psiという低圧力においても、適正範囲のピールオフ強度を保持でき、巻き芯部とテープ基材とのブロッキングによるカバーテープの透明性の低下が良好に抑制された、チップ型電子部品包装用カバーテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するため、以下の(1)~(4)のように特定される。
(1)チップ型電子部品を収納する収納ポケットが形成されたエンボスキャリアテープに熱シールされるチップ型電子部品包装用カバーテープであって、
ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、及び、ナイロン(登録商標)のいずれか一種からなる二軸延伸プラスチックフィルムの基材と、
ポリオレフィンからなる中間層と、
前記基材及び前記中間層を接着する接着剤層と、
前記エンボスキャリアテープに熱シールされるシール層と、
前記基材の外側と前記シール層の外側に形成された帯電防止層または導電層と、
を備え、
前記シール層が、熱可塑性樹脂と、粘着付与樹脂と、スチレン・ブタジエンブロック共重合樹脂の部分水添化物と、を含む樹脂混合物からなり、
前記シール層を構成する前記樹脂混合物が、前記熱可塑性樹脂を15~69.5質量%、前記粘着付与樹脂を30~80質量%、前記スチレン・ブタジエンブロック共重合樹脂の部分水添化物を0.5~5質量%含むことを特徴とするチップ型電子部品包装用カバーテープ。
(2)前記熱可塑性樹脂が、水添スチレン・イソプレンブロック共重合樹脂、水添スチレン・イソプレン・ブタジエンブロックブロック共重合樹脂、水添スチレン・ブタジエンブロック共重合樹脂、水添スチレン・ブタジエン・ブチレンブロック共重合樹脂、及び、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合樹脂のいずれか一種又はそれらの混合物であることを特徴とする(1)に記載のチップ型電子部品包装用カバーテープ。
(3)前記中間層の密度が、0.80~0.99g/cm3であることを特徴とする(1)に記載のチップ型電子部品包装用カバーテープ。
(4)前記熱可塑性樹脂は、スチレン成分を15~70質量%含むことを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載のチップ型電子部品包装用カバーテープ。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、高温下での保管や、シール圧力が30psiという低圧力においても、適正範囲のピールオフ強度を保持でき、巻き芯部とテープ基材とのブロッキングによるカバーテープの透明性の低下が良好に抑制された、チップ型電子部品包装用カバーテープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るチップ型電子部品包装用カバーテープの断面模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るエンボスキャリアテープに熱シールされたカバーテープを巻き取ったリールの外観模式図である。
【
図3】本発明の別の実施形態に係るチップ型電子部品包装用カバーテープの断面模式図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るグラビアコート法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のチップ型電子部品包装用カバーテープの実施形態について説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0011】
<チップ型電子部品包装用カバーテープの構成>
図1に、本発明の実施形態に係るチップ型電子部品包装用カバーテープ10(以下、単にカバーテープ10とも称する)の断面模式図を示す。
図2に、本発明の実施形態に係るエンボスキャリアテープ12に熱シールされたカバーテープ10を巻き取ったリール11の外観模式図を示す。
【0012】
図2に例として示すカバーテープ10による部品実装方式は、チップ型電子部品14の形状に合わせて、チップ型電子部品14を個々に収納する収納ポケット13を形成するエンボス加工が施されたエンボスキャリアテープ12に、その収納ポケット13の開口面を覆うためのカバーテープ10を熱シールにより被覆する方式である。このチップ型電子部品14を収納ポケット13に収納してカバーテープ10で被覆した後、電子部品搬送体20のリール11に巻き取って保管される。
【0013】
カバーテープ10は、基材2、接着剤層3、中間層4及びシール層5がこの順に積層されており、基材2の外側とシール層5の外側に帯電防止層1が形成されている。
【0014】
基材2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、及び、ナイロン(登録商標)のいずれか一種からなる透明(ISO14782/13468で規定)の二軸延伸プラスチックフィルムで構成されている。基材2の厚みは特に限定されず、使用するカバーテープ10の大きさに合わせて適宜設計することができる。カバーテープ10の細幅化に伴い、テープ切れを防止するためのテープ切れ強度を大きくする必要性から、基材2の厚みは6~100μmであるのが好ましい。基材2の厚みが6μm以上であると引裂性が良好となり、100μm以下であると硬くなり過ぎることが抑制され、熱シールによる接着が安定となる。基材2の厚みは9~25μmであるのがより好ましい。
【0015】
また、基材2は、後述する接着剤層3と接する面に、コロナ処理、プラズマ処理、又はサンドブラスト処理等の表面処理を施して密着力を向上させることができる。
【0016】
接着剤層3は、基材2及び中間層4を接着する。接着剤層3は、基材2と中間層4との積層によりテープ切れ強度を向上させることを目的としている。接着剤層3は、基材2と中間層4とを良好に接着させることができるものであれば特に限定されないが、例えば、イソシアネート化合物を材料とするポリウレタン系接着剤とイミン系の乾燥固化硬化剤によるラッカー型の接着剤層3であるのが好ましい。接着剤層3の厚みは0.5~5μmであるのが好ましく、1~3μmであるのがより好ましい。
【0017】
中間層4は、ポリオレフィンからなり、接着剤層3によって基材2と接着されている。中間層4は、熱及び圧力に対するクッション機能と耐引裂性を向上させることを目的として、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、エチレンビニルアセテート(EVA)フィルム、エチレンメチルアクリレート(EMA)フィルム、及びアイオノマフィルム又はポリオレフィンフィルムの一種以上を用途に応じて選択してもよい。
【0018】
中間層4は、20~100μmの厚みを有していることが好ましい。中間層4の厚みが20μm以上であると、クッション機能が良好となる。中間層4の厚みが100μm以下であると、耐引裂性が良好となる。中間層4の厚みは、25~60μmであるのがより好ましい。
【0019】
中間層4は、0.80~0.99g/cm3の密度を有することが好ましい。中間層4の密度が0.80g/cm3以上であると、クッション機能が良好となる。中間層4の密度が0.99g/cm3以下であると、耐引裂性が良好となる。中間層4は、0.88~0.96g/cm3の密度を有することがより好ましい。
【0020】
シール層5は、中間層4の表面に形成されており、エンボスキャリアテープ12に熱シールされる層である。シール層5は、熱可塑性樹脂と、粘着付与樹脂と、スチレン・ブタジエンブロック共重合樹脂の部分水添化物と、を含む樹脂混合物からなる。
【0021】
シール層5を構成する樹脂混合物は、熱可塑性樹脂を15~69.5質量%、粘着付与樹脂を30~80質量%、スチレン・ブタジエンブロック共重合樹脂の部分水添化物を0.5~5質量%含む。このような構成によれば、ピールオフ強度の経時安定性がより向上する。熱可塑性樹脂の含有量の下限値は、16質量%以上、18質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上であってもよく、上限値は、69質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下であってもよい。粘着付与樹脂の含有量の下限値は、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上であってもよく、上限値は、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下であってもよい。部分水添化物の含有量の下限値は、0.8質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上であってもよく、上限値は、4.5質量%以下、4質量%以下、3.5質量%以下であってもよい。
【0022】
シール層5における熱可塑性樹脂としては、水添スチレン・イソプレンブロック共重合樹脂、水添スチレン・イソプレン・ブタジエンブロックブロック共重合樹脂、水添スチレン・ブタジエンブロック共重合樹脂、水添スチレン・ブタジエン・ブチレンブロック共重合樹脂、及び、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合樹脂のいずれか一種又はそれらの混合物であってもよい。
【0023】
シール層5における熱可塑性樹脂は、スチレン成分を15~70質量%含むことが好ましい。このような構成によれば、ピールオフ強度の制御性がより向上する。シール層5の厚みは0.5~5μmであるのが好ましく、1~3μmであるのがより好ましい。
【0024】
シール層5には、シール層5を所望の色に着色する着色剤が含有されていてもよい。着色剤としては、シール層5自体やシール層5に接触する他の層の透明性を阻害しない又は阻害しにくいものであれば特に制限されない。具体的に、着色剤としては、有機顔料、ドライカラー、リキッドカラー等を用いることができる。
【0025】
シール層5は、収納ポケット13側に露出することになるため、静電気防止のために、導電性を有していてもよい。シール層5に含有されていてもよい導電性材料としては、シール層5の透明性等を阻害しない限り制限されず、例えば、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン等の酸化金属を挙げることができる。
【0026】
帯電防止層1は、
図1に示す形態では、基材2の外側とシール層5の外側に形成されている。帯電防止層1は、帯電防止剤を含む。帯電防止剤としては、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、及び、両イオン性界面活性剤のいずれか一つであるのが好ましい。カバーテープ10が帯電防止層1を備えることで、電子部品包装体を保管、搬送する際に電子部品包装体のエンボスキャリアテープ12との摩擦により発生する静電気を抑えることができる。
【0027】
また、帯電防止層1は、
図3に示すように基材2の外側のみに形成されていてもよい。この場合、シール層5の外側には導電層6が形成されている。導電層6は、導電粒子とバインダーとしての樹脂成分との導電性材料を用いてもよく、導電性樹脂を用いてもよい。当該導電性材料に含まれる導電粒子としては、特に限定されないが、酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ(ITO)、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)などが挙げられる。当該導電性材料に含まれる樹脂成分としては、特に限定されないが、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。また、当該導電性樹脂としては、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)、ポリチオフェン、ポリピロールなどが挙げられる。このうち、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)、ポリチオフェン、ポリピロールは、酸化金属系導電性微粒子によく含まれるアンチモンを含んでいないこと、及び、比較的コストを低減することができるという利点がある。
【0028】
カバーテープ10は、内側面(収納ポケット13側の面)における表面抵抗率が1012Ω/sq以下であることが好ましく、1010Ω/sq以下であることが更に好ましい。また、カバーテープ10の内側面(収納ポケット13側の面)における帯電減衰時間は2秒以下であることが好ましい。ここで、帯電減衰時間とは、温度:23±3℃、相対湿度:12±3%(室温)の環境条件で、サンプルに±5KVを印加し、20ミリ秒以内に拡散させ、50±5Vになるまでに要する時間である。
【0029】
カバーテープ10は、ヘイズが30%以下であることが好ましく、20%以下であることが特に好ましい。ここで、カバーテープ10のヘイズは、拡散透過光の全光線透過光に対する割合として測定することができる。
【0030】
カバーテープ10は、全光線透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることが更に好ましい。ここで、カバーテープ10の全光線透過率は、試験片の入射光束に対する全透過光束の割合として測定することができる。
【0031】
カバーテープ10は、全体の厚み(全厚)が30~80μmであることが好ましく、40~70μmであることが更に好ましい。ここで、カバーテープ10の全厚とは、カバーテープを構成する各層の積層方向(各層が延在する方向に垂直な方向)における長さ(厚み)である。
【0032】
カバーテープ10は、引張強度が30~80MPaであることが好ましく、40~70MPaであることが更に好ましい。なお、引張強度はJIS K7127に準じて測定することができる。
【0033】
カバーテープ10は、引き裂き強度が70~180MPaであることが好ましく、80~170MPaであることが更に好ましい。なお、引き裂き強度はJIS K7128-1に準じて測定することができる。
【0034】
カバーテープ10は、剥離強度(ピールオフ強度)が0.2~0.9N/mmであることが好ましく、0.3~0.8N/mmであることが更に好ましい。なお、剥離強度はJIS C0806-3に準じて測定することができる。
【0035】
本発明の実施形態に係るチップ型電子部品包装用カバーテープ10によれば、凝集破壊タイプのカバーテープの構造が、所定の材料で構成された二軸延伸プラスチックフィルムの基材2、基材2と中間層4の積層強度を向上させるための接着剤層3、熱及び圧力に対するクッション機能と耐引裂性を向上させたポリオレフィンからなる中間層4、及び、熱可塑性樹脂と粘着付与樹脂とスチレン・ブタジエンブロック共重合樹脂の部分水添化物との樹脂混合物からなるシール層5に帯電防止層1からなる六層構造を備えることで、例えば、50~60℃の高温下で保管された場合でも経時変化による接着剤層3の凝集力の低下が抑制でき、適正範囲のピールオフ強度を保持することができる。また、シール圧力が30psiという低圧力においても、適正範囲のピールオフ強度を保持することができる。さらに、光学機器による部品識別を容易にするためカバーテープ10の透明性を高める必要があるが、この点においても、チップ型電子部品包装用カバーテープ10によれば、リール11の巻き芯部におけるカバーテープ10とエンボスキャリアテープ12とのブロッキングによるカバーテープ10の透明性の低下が良好に抑制される。
【0036】
また、リール状に巻かれたチップ型電子部品14の包装体が、搬送される際に発生する振動により、カバーテープ10の内側とチップ型電子部品14とが接触して摩擦が生じることで発生する静電気、或いはカバーテープ10を剥離する際に発生する静電気によりチップ型電子部品14が帯電し、カバーテープ10に付着して飛び出してしまう問題の発生を良好に抑制することができる。
【0037】
<チップ型電子部品包装用カバーテープの製造方法>
次に、本発明の実施形態に係るチップ型電子部品包装用カバーテープ10の製造方法について説明する。
まず、基材2と中間層4とを準備する。
次に、基材2の表面に接着剤をコート(ドライラミネート)し、基材2と中間層4とを接着剤で貼り合わせることで、基材2、接着剤層3及び中間層4の積層体を形成する。
次に、中間層4の表面にシール剤をコートすることで、シール層5を形成する。
【0038】
次に、シール層5の表面及び基材2の表面に、それぞれ帯電防止剤をコートすることで、帯電防止層1をそれぞれ形成する。なお、帯電防止剤に加えて、導電粒子とバインダーとしての樹脂成分を含んだ材料をコートして帯電防止層1をそれぞれ形成してもよい。当該コートは、グラビアコート法によって実施することができる。グラビアコート法は、例えば、
図4に示すような方法である。
図4は、グラビアコート法の概要を示す説明図である。
【0039】
図4に示すように、帯電防止層1を形成する前のカバーテープ10のシール層5側の表面に、グラビア版51のコート面52を押し当てることにより帯電防止層1を形成する。カバーテープ10は、回転するグラビア版51と、グラビア版51とは逆向きに回転するバックアップローラ57との間を通過する際に、バックアップローラ57によって、グラビア版51のコート面52へと押し当てられる。グラビア版51は、その一部がコート剤(帯電防止剤)55に浸漬するように構成されており、グラビア版51が回転することによりコート剤55の一部がグラビア版51のコート面52の表面に付着する。コート面52に付着する余分なコート剤55を除去するためにドクターブレード59が設けられている。
【0040】
なお、
図3の形態のように、シール層5の表面に導電層6を形成する場合は、導電粒子とバインダーとしての樹脂成分を含んだ材料を、上記と同様にグラビアコート法によってコートすることで、当該導電層6を形成してもよい。
【0041】
カバーテープ10において帯電防止層1を形成する方法は、グラビアコート法に限定されず、コート剤55をインクジェットによって噴霧する方法や、その他のプリント方法を採用することもできる。
【実施例0042】
以下に本発明の実施例を示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0043】
<実施例1>
厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の二軸延伸プラスチックフィルムである基材と、厚み30μmのポリエチレン(PE)フィルムである中間層とを準備した。中間層の密度は、0.90g/cm
3とした。
次に、イソシアネート化合物を材料とするポリウレタン系接着剤とイミン系の乾燥固化硬化剤によるラッカー型の接着剤を準備し、基材の表面に当該接着剤をコート(ドライラミネート)し、基材と中間層とを接着剤で貼り合わせることで、基材、接着剤層及び中間層の積層体を形成した。接着剤層の厚みは2μmとした。
次に、中間層の表面にシール剤をコートすることで、シール層を形成した。シール層の材料は、23質量%の熱可塑性樹脂と、75質量%の粘着付与樹脂と、2質量%のスチレン・ブタジエンブロック共重合樹脂の部分水添化物と、を含む樹脂混合物を用いた。また、当該熱可塑性樹脂は、スチレン成分を16質量%含む水添スチレン・イソプレンブロック共重合樹脂を用いた。シール層の厚みは2μmとした。
次に、シール層の表面及び基材の表面に、それぞれ帯電防止剤(カチオン系界面活性剤)を
図4に示したグラビアコート法によってコートすることで、帯電防止層をそれぞれ形成した。帯電防止層の厚みは1μmとした。
これにより、チップ型電子部品包装用カバーテープを作製した。
次に、チップ型電子部品を収納する収納ポケットが形成されたエンボスキャリアテープを準備し、
図2に示すように、当該エンボスキャリアテープにその収納ポケットの開口面を覆うように、作製したカバーテープを熱シールにより被覆することで実施例1に係るサンプルを作製した。このとき、中間層の表面に形成したシール層側からエンボスキャリアテープに熱シールした。熱シールは30psiという低圧力でのシールと、200psiという一般的な圧力でのシールと両方実施した。また、エンボスキャリアテープに熱シールされたカバーテープは
図2に示すようにリールで巻き取った。
【0044】
<実施例2~4、比較例1、2>
基材、中間層、接着剤層及び帯電防止層は実施例1と同様の材料を用いた。シール層は表1に記載の成分及び厚みとした。
実施例1と同様の材料及び手順を用いて、チップ型電子部品包装用カバーテープを作製した。
次に、実施例1と同様にして、エンボスキャリアテープにその収納ポケットの開口面を覆うように、作製したカバーテープを熱シールにより被覆することで、実施例2~4、比較例1、2に係るサンプルをそれぞれ作製した。また、エンボスキャリアテープに熱シールされたカバーテープは
図2に示すようにリールで巻き取った。
以上の実施例1~4、比較例1、2に係る試験条件を表1に示す。
【0045】
<評価>
1.ピールオフ強度(低圧力)
各サンプルについて、30psiという低圧力で熱シールしたものを、温度23℃、相対湿度40%の雰囲気下に於いて、PEEL-BACK-TESTER(バンガードシステムズ社製、商品名)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°で測定した。0.1N/1mm幅未満を不良であるとして「C」判定とした。0.1~0.4N/1mm幅未満を良好であるとして「B」判定とした。0.4~0.7N/1mm幅を非常に良好であるとして「A」判定とした。
【0046】
2.ピールオフ強度(通常圧力)
各サンプルについて、200psiという一般的な圧力で熱シールしたものを、それぞれ60℃の高温下で10時間保管した。次に、保管後のサンプルについて、30psiという低圧力で熱シールしたものを、温度23℃、相対湿度40%の雰囲気下に於いて、PEEL-BACK-TESTER(バンガードシステムズ社製、商品名)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°で測定した。0.1N/1mm幅未満を不良であるとして「C」判定とした。0.1~0.4N/1mm幅未満を良好であるとして「B」判定とした。0.4~0.7N/1mm幅を非常に良好であるとして「A」判定とした。
【0047】
3.カバーテープの透明性
200psiという一般的な圧力で熱シールしたサンプルについて、それぞれリールの巻き芯部と基材とのブロッキングによるカバーテープの透明性を目視で評価した。カバーテープの透明性の低下が抑制されたものを好ましい結果であるとして「A」判定とした。
以上の評価結果を表1に示す。
【0048】